JP4646763B2 - 機能性薄膜の形成方法及び機能性薄膜形成装置 - Google Patents
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Description
なお、我々の研究開発結果によると、パルス幅が数マイクロ秒(以下μsと略記する)乃至数10マイクロ秒の高電圧パルスを印加すると、高密度のプラズマが生成されると同時に高濃度のラジカルが生成され、該ラジカルは数100μs乃至数ミリ秒程度の寿命を有し、該ラジカルが被加工基材表面に拡散して基材表面に薄膜を形成することが明らかになった。
また、支持用電極(11)に、放電プラズマ電位に対して正となる正電圧と放電プラズマ電位に対して負となる負電圧との対、特に前記原料ガスの電離電圧よりも高い波高値の正パルス電圧と、その波高値が前記正パルス電圧の波高値よりも高く、正からの反転時間が1マイクロ秒以下となる負パルス電圧との対から成る正負パルス対をプラスチックやゴム材など絶縁性の被加工基材に印加すると、正パルス電圧によって基材表面は負に帯電し、瞬時に負のパルス電圧に反転させると高エネルギーのイオンを注入することが可能になることも明らかになった。
また、支持用電極を通じて被加工基材に任意のバイアス電圧又はパルス電圧を印加することによって、局所放電やイオン照射等による被加工基材表面への損傷を抑制し、優れた機能性表面を形成することができる。
更に、アスペクト比が1以上の微細孔、或いは微細溝内壁面に機能性薄膜を形成することができる。また、安価な機能性薄膜形成装置を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る機能性薄膜形成方法について図を参照しながら説明する。図1に本発明による高周波放電プラズマを用いた機能性表面形成装置の一実施例の断面模式図を示す。なお、図1には便宜上、本発明の一実施例として機能性薄膜形成装置の要部構成を示しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施例では、被加工基材の例として微細溝を有するシリコン基板を用い、その表面にアモルファスシリコン膜を形成した例について説明する。アモルファスシリコン薄膜は、実施例1で用いた機能性薄膜形成装置を用いて形成した。図7(a)に示すように、シリコン基板30表面に幅50μm、深さ100μmの溝31をドライエッチング法によって形成し、その表面に厚さ0.1μmのシリコン酸化膜(図示せず)を形成した。シリコン基板30の裏面には裏面電極32を設け、基板支持電極11と電気的に接触させた。同図(b)はシリコン基板30の表面に設けた微細溝表面にアモルファスシリコン膜33が形成されたものの断面斜視図である。
アモルファスシリコン膜の形成には、ガス導入口よりシランガスを導入して圧力0.7パスカルに調整した。繰り返し周波数を1kHzとし、プラズマ励起用アンテナ16に周波数13.56MHz、出力0.3kW、持続時間50μsの高周波電力バーストを印加し、高電圧パルス印加用電極13にパルス波高15kV、パルス幅5μsの負のパルス電圧を印加して高密度プラズマを発生させた。シリコン基板30には基板支持電極11を介して、パルス波高2kV、パルス幅10μsの正のパルス電圧とパルス波高3kV、パルス幅5μsの負のパルス電圧を一対にした正負パルス電圧を印加した。
また、負のパルス電圧は、シリコン基材30の表面及び微細溝内の電子を瞬時に吸い出すため、高電圧であることが望ましい。負のパルス電圧の波高値(パルス波高)が放電プラズマ電位より少なくとも300V以上、好ましくは1kV乃至5kVある。
本発明に係る実施例3について説明する。実施例1で用いた機能性薄膜形成装置を用いてゴム基材表面へフッ素を含むDLC膜を形成した例について説明する。シリコンゴム基材表面に設けた突起部にF−DLC膜を形成した実施例の断面斜視図を図8に示す。図8(a)はシリコンゴム基材40に幅1mm、高さ2mmの突起部41を形成した被加工基材12の断面斜視図を、同図(b)はF−DLC膜が形成された断面斜視図を示す。
2kVの正のパルス電圧を印加すると、基材表面近傍のプラズマから電子が加速されて基材表面に入射するため、絶縁物である基材表面は、ほぼマイナス2kVに帯電する。引き続いて5kVの負のパルス電圧を印加すると、基材表面近傍のプラズマから正イオンが加速されて基材表面に入射する。この時、入射イオンは負の帯電電圧2kVと負のパルス電圧5kVとの合計の電位差で加速され、ほぼ7keVのエネルギーを有するイオンが基材表面に入射する。従って、正負パルス電圧対を印加することによって、負のパルス電圧で加速したイオンよりも大きなエネルギーを有するイオンを照射することが可能になる。従って、加速されたイオンは基材表面により深く侵入するため、密着力の強い薄膜が得られる。
11 基板支持電極
12 被加工基材
13 高電圧印加用電極
14 真空排気口
15 原料ガス導入口
16 プラズマ励起用アンテナ
17 高周波電源
18 高電圧パルス電源
19 正負パルス電源
20 バイアス電源
21 インダクタンスコイル
22 コンデンサー
23 放電制御盤
24 重畳装置
30 シリコン基板
31 微細溝
32 裏面電極
33 DLC薄膜
40 シリコンゴム基板
41 突起部
42 F−DLC膜
Claims (9)
- 原料ガス雰囲気の容器(10)内に放電プラズマを励起させる放電プラズマ励起手段(16,17)と、
前記容器の内部で被加工基材を支持するための支持用電極(11)と、
前記容器(10)の内部で前記支持用電極(11)に支持されている被加工基材(12)の表面に対して対向近接して設けられたパルス印加用電極(13)と、
このパルス印加用電極(13)にパルス幅が10マイクロ秒よりも短い第1電圧を印加する第1の電源(18)と、
前記支持用電極(11)に、放電プラズマ電位に対して負となる部分を含む第2電圧を印加する第2の電源(19,20)とを備え、
前記放電プラズマが励起されている状態で、前記第1の電源(18)から前記パルス印加用電極(13)に前記第1電圧を印加して当該パルス印加用電極(13)付近に前記放電プラズマよりも密度の高いプラズマ及びラジカルを発生させ、さらに、前記第2の電源(19,20)から前記支持用電極(11)を通じて前記被加工基材(12)に前記第2電圧を印加することにより、当該被加工基材(12)の表面に、前記原料ガスに含まれる元素成分を含む機能性薄膜を形成させる、
機能性薄膜形成装置。 - 前記放電プラズマ励起手段は、前記容器内に配された高周波アンテナ(16)と、前記容器の外部から前記高周波アンテナ(16)に、高周波電力を給電する高周波電源(17)とを含み、
前記第1の電源(18)は、前記高周波アンテナ(16)への高周波電力の給電に同期して前記パルス印加用電極(13)に印加し、
前記第2の電源(19,20)は、前記第1の電源(18)による前記パルス印加用電極(13)への前記第1電圧の印加直後に前記第2電圧を前記支持用電極(11)に印加するように構成されている、
請求項1記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記第2の電源(19,20)は、所定値のバイアス電圧を重畳した電圧を前記第2電圧として前記支持用電極(11)に印加する、
請求項1又は2記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記第2の電源(19,20)は、放電プラズマ電位に対して負となる負電圧、放電プラズマ電位に対して正となる正電圧と前記負電圧との対から成る正負電圧対、又は、負電圧部分を含む1サイクルの正弦波電圧のいずれかを前記支持用電極(11)に印加する、
請求項1、2又は3記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記容器内に、互いに対向する前記支持用電極(11)と前記パルス印加用電極(13)との組が複数組設けられており、パルス印加用電極同士がそれぞれ前記第1の電源(18)に並列接続されており、支持用電極同士がそれぞれ前記第2の電源(19,20)に並列接続されている、
請求項1乃至4のいずれかの項記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記パルス印加用電極(13)が前記高周波アンテナ(16)と一体に構成されており、
該パルス印加用電極(13)には、前記第1電圧と前記高周波電源(17)の出力とが重畳して印加される、
請求項5記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記パルス印加用電極(13)が、多孔性の導電体で構成されている、
請求項1乃至6のいずれかの項記載の機能性薄膜形成装置。 - 前記パルス印加用電極(13)が、両端を有する線状又は短冊状の導電体で構成されており、この導電体の少なくとも一方端が、張力によって架張されている、
請求項1乃至6のいずれかの項記載の機能性薄膜形成装置。 - 被加工基材(12)を支持するための支持用電極(11)と、この支持用電極(11)で支持された被加工基材(12)に対向して設けられたパルス印加用電極(13)とが配置された容器内を原料ガス雰囲気で所定気圧に維持するとともに、その容器内で放電プラズマを励起させ、この状態で、
前記パルス印加用電極(13)にパルス幅が数10マイクロ秒よりも短い第1電圧を印加して当該パルス印加用電極(13)付近に前記放電プラズマよりも密度の高いプラズマ及びラジカルを発生させ、さらに、
前記パルス印加用電極(13)への第1電圧の印加後、前記支持用電極(11)を通じて、前記被加工基材(12)に、放電プラズマ電位に対して負となる部分を含む第2電圧を印加することにより、当該被加工基材(12)の表面に、前記原料ガスに含まれる元素成分を含む機能性薄膜を形成させる、
機能性薄膜の製造方法。
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