JP4644560B2 - 質量分析システム - Google Patents
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(1)分析対象とするイオンの質量情報(質量m、電荷数z)、LC保持時間、及び、タンデム質量分析スペクトル情報(解離イオンのm/zや強度など)を登録することができる内部データベースを有し、質量分析スペクトルが取得されると、内部データベース検索を実施し、タンデム質量分析における前駆イオン候補数に応じるなどして、前駆イオン群をイオン強度やタンデム質量分析スペクトル情報に基づいて幾つかのグループに分類し、グループ毎に纏めてタンデム質量分析を実施する分析シーケンスを実時間で決定し、実施することができる高スループット質量分析システム。
(2)得られたタンデム質量分析スペクトルに対し、内部データベースを用いて実時間でデータ解析を実施することにより、未知物質由来の解離イオンがタンデム質量分析スペクトルに含まれているか否かを判別し、未知物質由来の解離イオンがタンデム質量分析スペクトルに含まれている場合には、そのイオンを推定し、そのイオンのみを前駆イオンとするタンデム質量分析スペクトルを取得することができる高スループット質量分析システム。
(3)さらに、(1)と(2)を組み合わせた構成としても勿論よい。
(4)また、タンデム質量分析スペクトルを取得する必要のない場合には、分析対象とするイオンの質量情報(質量m、電荷数z)やLC保持時間を登録することができる内部データベースを有し、質量分析スペクトルが取得されると、内部データベース検索を実施し、分析イオン候補数に応じるなどして、前駆イオン群を幾つかのグループに分類し、グループ毎に纏めて高周波電界(Rf)を用いたアイソレーションを実施することによりスペースチャージ効果を低減させ、定量解析のための質量スペクトルを取得する。
図2に、前駆イオンが一種類のタンデム質量分析を行なう場合の、アイソレーション過程を示す。図2の上図に、典型的な質量スペクトルを示す。何種類かのイオンが検出される他、多量の化学ノイズによるベースラインの盛り上がりも観測される。このようなベースラインの盛り上がりは、生体抽出サンプルにおいて、しばしば見られる。一種類の前駆イオンが決定されると、イオントラップのイオン取り込み過程において、大雑把に他のイオンが取り込まれないように、イオントラップのQ値を変更するなど高周波電源を制御することができる。その結果、イオントラップに取り込まれるイオンは中央図に示すように、前駆イオン、及び、近接するイオンや化学ノイズとなる。さらに、イオン取り込み終了後に、前駆イオン以外のイオンを正確に排出するように、高周波電界を高周波電源からイオントラップに印加することにより、前駆イオンのみをアイソレーションすることが可能となる。ここでは、フィルタード・ノイズ・フィールド(FNF)(例えば米国特許第5206507号)を用いることが可能である。そして、アイソレーションされた前駆イオンを解離させることにより、前駆イオンのMS/MSスペクトルを得ることができる。イオン取り込み過程では他のイオンが取り込まれても、その後に、前駆イオン以外のイオンを排出するように高周波電源からイオントラップに高周波電界を印加することにより、前駆イオンのみをアイソレーションすることも可能である。ただ、取り込み過程で多量のイオンがイオントラップに取り込まれた場合、空間電荷効果により正確に前駆イオンのみをアイソレーションすることが困難となることがある。
イオントラップでは、以下の過程により、同時に複数の前駆イオンをアイソレーションすることができる。即ち、図3に示すように、最初に得られる質量スペクトルで検出されるイオンの中から、グループ毎に前駆イオンが選択される。前駆イオンの選択においては、データベース検索でヒットするイオンの中から、イオン強度や解離イオンの重複防止などを考慮して、グループ化が実施される。一つのグループに選択された前駆イオンを、白丸で示す。これらの複数の前駆イオンに対し、イオントラップのイオン取り込み過程において、大雑把に他のイオンが取り込まれないように高周波電源を制御することができる。その結果、イオントラップに取り込まれるイオンは中央図に示すように、前駆イオン、及び、近接するイオンや化学ノイズとなる。さらに、イオン取り込み終了後に、前駆イオン以外のイオンを排出するように高周波電源からイオントラップに高周波電界を印加することにより、前駆イオンのみをアイソレーションすることが可能となる。そして、アイソレーションされた前駆イオンを同時に解離させることにより、複数の前駆イオンに対するMS/MSスペクトルを得ることができる。イオン取り込み過程では他のイオンが取り込まれても、その後に、前駆イオン以外のイオンを排出するように高周波電源からイオントラップに高周波電界を印加することにより、前駆イオンのみをアイソレーションすることも可能である。ただ、取り込み過程で多量のイオンがイオントラップに取り込まれた場合、空間電荷効果により正確に前駆イオンのみをアイソレーションすることが困難となることがある。ここで、分析に先立ち、図21に示す画面でタンデム質量に関する設定を表示部(入力部)で入力を行なうことにより、前駆イオン数の上限を設定し、空間電荷効果によるアイソレーションの困難性を排除し、かつ制御部の情報処理能力に適した条件を設定することができる。特にタンデム質量のイベント設定では、取得するMS/MSスペクトルについて、通常のMS/MSスペクトル(一種類の前駆イオンに対するフラグメントイオンの質量スペクトルを得るモード、シングル前駆イオン選択モード)と、複数の前駆イオンに対するMS/MSスペクトル(マルチ前駆イオン選択モード)とが区別されて設定可能である点が特徴的である。また、利用可能な内部データベースが複数存在する場合には、表示部での図22に示すような表示内容を確認しながら、入力部で選択などを行なう必要がある。
質量分析システムの一実施例における取得データ例を、図4に示す。非常に多種類のイオンが検出される他、多量の化学ノイズによるベースラインの盛り上がりも観測される。このようなベースラインの盛り上がりは、生体抽出サンプルにおいて、しばしば見られる。以下では、MSスペクトル1枚取得後、3枚のMS/MSスペクトルを取得する設定の場合について述べる。得られたMSスペクトルでは、非常に多数のイオンが検出されており、これら全てのイオンは内部データベースでヒットし、前駆イオンとして選択されるべきものである。ところが、上記設定ではこれらの検出イオン全てを個別に前駆イオンに選択することはできない。そこで、イオン強度に応じて、3つのグループに分類し、それぞれのグループに属するイオンはCIDの前駆イオンとして同時にタンデム質量分析される。先ず、第一のグループに分類された比較的強度の高いイオン(図中、白丸で表示)のみに対してアイソレーションを実施し、他のイオンや化学ノイズ成分を除去する。(図4で、アイソレーションされた質量スペクトルは仮想的なもので、実際には表示部で実時間に表示されなくてもよい。)このアイソレーションにおいては、イオン取り込み時や取り込み後にイオントラップ4に様々な周波数や強度の高周波電界を高周波電源より印加される。この高周波電源の制御には、多数のパラメータが使用されるが、それらは情報処理部において計算されるか、予め様々なケースに対応する最適値(計算結果)を保存し、それに基づいて情報処理部でアイソレーション条件に応じた計算を施すことにより、決定することができる。アイソレーションされた前駆イオンは同時にCIDなどの解離過程を受け、MS/MSスペクトルが取得される。前駆イオン強度が充分に高い場合には、一回の分析で充分なS/NのMS/MSスペクトルが取得可能である。しかし、そうでない場合には、何回かの分析を繰り返し、分析結果を積算したMS/MSスペクトルを取得する必要がある。この積算回数やイオントラップにおけるイオン取り込み時間を、グループ毎に最適化することが、分析全体におけるスループット向上に重要である。イオントラップにおけるイオン取り込み時間は、取り込めるイオン量に制限があると考えられるため、ある程度以上に長く設定することは困難である。そのため、積算回数を変化させれば、より確実に分析対象イオンを取り込むことができる。定量解析を行なうため、得られるMS/MSスペクトルには、イオン取り込み時間や積算回数などの分析条件が表示されても構わないが、イオン強度を一定の条件に規格化された値で表示されても構わない。次に、第二のグループに分類された比較的中間的な強度のイオン(図中、黒丸で表示)のみに対してアイソレーションを実施し、纏めて解離させることにより、MS/MSスペクトルを取得する。さらに、第三のグループに分類された比較的強度の低いイオン(図中、三角で表示)のみに対してアイソレーションを実施し、纏めて解離させることにより、MS/MSスペクトルを取得する。このように、前駆イオン候補が多い場合においても、分析スループットの低下を抑制し、MS/MS分析を実施することが可能である。
データ取得における積算回数は、第三のグループが最も多く、第一のグループは最も少ない設定である。得られるMS/MSスペクトルは、一種類の前駆イオンに対して得られた単独のMS/MSスペクトルよりも複雑だが、内部データベースに登録された単独のMS/MSスペクトル情報を組み合わせることにより、解析が可能である。即ち、データベースに登録されたイオン情報に従って、解離イオン情報が得られる。そして、解離イオン情報(MS/MSスペクトルパターン)の重ねあわせにより実際に得られるMS/MSスペクトルを予測することができる。そのため、未知物質が含まれる場合には、予測されるMS/MSスペクトルにはない解離イオンの存在が確認できるので、そのことを速やかに検知することができる。また、内部データベース検索による前駆イオン選択においても、未知物質を検知することができ、その場合には、未知物質のみの単独のMS/MSスペクトルを取得することができる(図5,6の説明を参照)。なお、表示部では、MSスペクトル、あるいは/及び、MS/MSスペクトルが表示される。
以上により質量分析システムで取得したMS/MSスペクトルでは、複数の前駆イオンに対するMS/MSスペクトル取得が可能である。そのため、MS/MSスペクトルデータには関連する複数種類の前駆イオン情報(質量など)が含まれる点が特徴的である。また、質量範囲で前駆イオン選択が行なわれている訳ではなく、複数の前駆イオンの選択においては、前駆イオン強度や内部データベース情報が利用される。
本発明に基づく質量分析システムで取得したMS/MSスペクトルの前駆イオンは、基本的に内部データベースに登録されているため、分析終了後のデータ解析も内部データベース情報を利用することが可能である。
質量分析システムの一実施例における取得データ例を、図5に示す。ここで、黒塗りの逆三角形は、前駆イオン選択において候補から排除すべきイオンを示し、これらのイオン情報も予め内部データベース(イクスクルージョン データベース)に登録されている。MSスペクトルでは、図4の例と同様に、多数のイオンや化学ノイズが検出されており、プレカーサー選択において強度の高いグループに分類されたイオンは白丸で表示されている。これらのグループ化されたイオンを前駆イオンとし、MS/MSスペクトルを取得し、内部データベースに登録されたMS/MSスペクトル情報と照合する。図における上から四番目のスペクトルにおいて、分析結果に対して照合・検証できたイオンは破線で示す。幾つかの実線で示すイオンは、内部データベースに登録されたMS/MSスペクトル情報と不整合のあったものである。このことから、グループ化された前駆イオンの中には、内部データベースに登録されていない未知物質が含まれたことが分かる。さらに、そのフラグメントイオン情報(m、z、イオン強度)から、元の親イオンを推定することが可能である。その推定を確認するために、本実施例では、推定される前駆イオンのみに対し、単独のMS/MSスペクトルを取得している。その結果が、先の実線で示すフラグメントイオン情報と整合が見られると、その情報を新規に内部データベースに登録することができる。図23に示すように、上記各プロセスにおいて、情報処理部で計算が実施されるが、計算時間は分析スループットに影響を与えない短時間である必要があり、典型的には数ミリ秒である。
定量解析においては、これまで述べたイオン強度を測定する方法では、イオン化過程において競合する物質が存在するとイオン化効率が低下することも想定される。より高精度な定量方法としては、安定同位体標識試薬や、培養細胞でアミノ酸(リジン、アルギニン、他)を同位体標識する相対定量法を用いることができる。この場合、分析対象サンプルと比較対象のサンプルとを個別に標識し、混合したサンプルを調整し、分析を実施する。図7(一番上の図)に、典型的なMSスペクトルを示す。一定の質量数が異なるイオンのペアが何組か検出されている。これらのペアは、化学的性質は殆ど同一の物質だが、標識する同位体のみが異なる。そのため、液体クロマトグラフの保持時間もほぼ同時に検出される。相対定量解析においては、それぞれイオン強度を時間軸に沿って積算し、面積を求める。そして、面積の比率を決定することにより、相対的な存在比を決定する。分析においては、前駆イオンの決定を内部データベース検索により実施するが、内部データベースにはイオンのペアについての情報(図17に示すデータベース情報では、前駆イオン番号で数字は共通化し末尾にLとHなどの同位体標識であることを示す記号が付加されるなど)が登録されている。そして、前駆イオンの決定に際しては、内部データベースに登録されているイオンのペアで一方のみのイオンにヒットした場合でも前駆イオンとして選択する。このことにより、イオンペアの強度比が著しく異なる場合でも、高精度で定量解析が可能となる。インクルージョンデータベース及びイクスクルージョンデータベースを用いる場合のフローチャートを図27に、インクルージョンデータベースのみを用いる場合のフローチャートを図28に各々示す。
図7の例では、MSスペクトルで検出されたイオンに対し、内部データベース検索を実施する。そして、前駆イオン候補から排除するイオン(逆三角形で表示)と、ペアを形成している前駆イオン候補(白丸で表示)を区別し、前駆イオン候補を纏めてタンデム質量分析している。そして、得られるMS/MSスペクトルに対して、内部データベース検索を実施し、整合性を確認している。このような分析における内部データベースの作成では、比較対象サンプルを調製したものを用いて、予め分析を実施し、解析イオン情報を登録する。次に、同位体標識した場合に変化するイオン質量を考慮し、予測されるイオンペアの情報を内部データベースに登録する。このことにより、イオンペアの一方のみが検出された場合でも、タンデム質量分析の前駆イオンに選定することができる。
質量分析システムの一実施例における取得データ例を、図8に示す。MSスペクトルで検出されたイオンに対し、内部データベース検索を実施した結果、前駆イオン候補から排除するイオン(逆三角形で表示)が一種類検出されている。その他のイオンは、全て同位体標識されたペアで検出されているが、矢印で示すイオンのペアは内部データベースに登録されていない未知物質であり、質量差から同位体標識ペアのイオンであると推測される。そこで、先ず、未知物質のイオンペアを前駆イオンとするタンデム質量分析を実施し、得られるMS/MSスペクトルの情報を内部データベースに登録する。次に、イオン強度で二つのグループに前駆候補イオンを分類し、(ペアを形成するイオンのうち、イオン強度の低い方のイオンにおいて、)強度の比較的高いグループ[1](白丸で表示)の前駆イオンを纏めてタンデム質量分析を行なう。そして、得られたMS/MSスペクトルを取得し、内部データベースに登録されたMS/MSスペクトル情報と照合し確認する。最後に、強度の比較的低いグループ[2](黒丸で表示)の前駆イオンを纏めてタンデム質量分析を行なう。そして、得られたMS/MSスペクトルを取得し、内部データベースに登録されたMS/MSスペクトル情報と照合し確認する。内部データベース情報を用いたMS/MSスペクトルの確認作業においては、異なるフラグメントイオンのm/zが数Da以下になるとイオンピーク(同位体ピークの一部)が重なり合うため、解析精度が低くなる場合が発生する。このような状況を避けるように前駆イオンのグループ化を行うと、上記のような状況を回避することができる。そのため、本実施例では、グループ[2]に分類された前駆イオンの中に、グループ[1]に分類された前駆イオンと比較して強度が同等のものが幾つか含まれている。
また、MS/MSスペクトルを取得せず、MSスペクトルで検出されるイオンの強度のみで定量分析を実施することも可能である。この場合、図16に示すように、内部データベースに登録されたイオンに対して、アイソレーションを実施することが、空間電荷効果を受ける可能性のあるイオントラップや化学ノイズが無視できないサンプルを分析する場合に重要である。モノアイソトピックイオン質量/電荷(m/z)が例えば5Da程度と非常に近接した場合、アイソレーションにおいてイオンのロスが発生することがある。そのため、アイソレーション対象のイオンの選択においては、イオンのm/zにある程度差を持たせるようにグループ化することが重要である。得られるMSスペクトルは、アイソレーションを実施せずに取得したMSスペクトルと比較して、空間電荷効果が低減するため、イオン強度が高くなることがある点が特徴的である。
質量分析システムの一実施例における取得データ例を、図9に示す。MSスペクトルで検出されたイオンに対し、内部データベース検索を実施した結果、図6のような場合と異なり、全てのイオンが内部データベース検索でヒットしている。そこで、前駆イオンはイオン強度に応じて三つのグループに分類され、それぞれに対して纏めてタンデム質量分析が実施される。
さて、検出器9で検出されたイオンの情報は、制御部のデータベース検索手段でデータベース検索が実施され、データベースでヒットしたイオン情報に基づき、タンデム質量分析の前駆イオンが決定される。そして、特定の前駆イオンがイオントラップ4に取り込まれるように、制御部の電源制御手段は第1高周波電源を制御する。そして、イオントラップ4で最終的にアイソレーションされた前駆イオンは、高周波電界の印加による過熱か、衝突減衰器5へのイオン輸送で過熱するかなどの手段により、残留ガスとの衝突誘起解離(CID)を受け、複数種類の解離イオン(フラグメントイオン)に変換される。前駆イオンが多価イオンの場合には、イオントラップ4で最終的にアイソレーションされた前駆イオンは、Qデフレクター10によりECD反応部11に導入される。ECD反応部11では、導入された多価の前駆イオンに対し、低エネルギー電子を照射し、再結合に伴う解離が実現し、多数のフラグメントイオンが生成される。ペプチドやタンパク質の多価イオンにECDを施すと、主鎖が優先的に解離する点が特徴的である。これらのイオンは、Qデフレクター10よりイオン加速部7に導入される。そして、飛行時間型質量分析計6において質量分離され、検出器9で検出される。検出器9の出力信号は情報処理部に伝えられ、情報処理部に入力された検出イオン情報は、表示部でタンデム質量スペクトル(MS/MSスペクトル)として表示される。複数種類のMS/MSスペクトルを取得する場合には、分析開始前に入力部において設定することができる。また、使用可能なデータベースが複数ある場合には、分析開始前に入力部で選択することができる。最終的な分析設定条件は分析開始前に表示部で確認でき、分析の開始を入力部で入力することができる。
サンプル液は液体クロマトグラフに導入される。そこで、サンプルに含まれる多種類の物質は分離され、カラム末端部から分離物質が順次イオン源に導入され、エレクトロスプレーイオン化法などの噴霧イオン化法により、気体状イオンに変換される。生成されたイオンは、質量分析装置の第一細孔2から真空部に導入され、一定の高周波電界を発生させるイオン輸送部3を通って、イオントラップ4に導入される。第2高周波電源で制御されるイオントラップ4では、10ミリ秒程度の一定時間だけ、導入されるイオンを取り込みが行われる。そして、取り込まれたイオンは、第2高周波電源からイオントラップ4に印加される高周波電界に従って、イオンのm/zに対応するタイミングで、検出器9で検出される。非常に多種類の物質が混合したサンプルを分析する場合、液体クロマトグラフの分離カラムでは完全に各成分を分離することができず、検出器9には複数種のイオンが検出されることが多い。情報処理部に入力された検出イオン情報は、ディスプレーなどの表示部で質量スペクトル(MSスペクトル)として表示される。
さて、検出器9で検出されたイオンの情報は、制御部のデータベース検索手段でデータベース検索が実施され、データベースでヒットしたイオン情報に基づき、タンデム質量分析の前駆イオンが決定される。そして、特定の前駆イオンがイオントラップ4に取り込まれるように、制御部の電源制御手段は第2高周波電源を制御する。そして、イオントラップ4で最終的にアイソレーションされた前駆イオンは、高周波電界のイオン過熱による残留ガスとの衝突誘起解離(CID)や、炭酸ガスレーザー等を用いた赤外多光子解離(IRMPD:図示せず)や紫外線レーザー等の手段により、複数種類の解離イオン(フラグメントイオン)に変換される。検出器9の出力信号は情報処理部に伝えられ、情報処理部に入力された検出イオン情報は、表示部でタンデム質量スペクトル(MS/MSスペクトル)として表示される。複数種類のMS/MSスペクトルを取得する場合には、分析開始前に入力部において設定することができる。また、使用可能なデータベースが複数ある場合には、分析開始前に入力部で選択することができる。最終的な分析設定条件は分析開始前に表示部で確認でき、分析の開始を入力部で入力することができる。
サンプル液は液体クロマトグラフに導入される。そこで、サンプルに含まれる多種類の物質は分離され、カラム末端部から分離物質が順次イオン源に導入され、エレクトロスプレーイオン化法などの噴霧イオン化法により、気体状イオンに変換される。生成されたイオンは、質量分析装置の第一細孔2から真空部に導入され、一定の高周波電界を発生させるイオン輸送部3を通って、イオントラップ4に導入される。第2高周波電源で制御されるイオントラップ4では、10ミリ秒程度の一定時間だけ、導入されるイオンを取り込みが行われる。そして、取り込まれたイオンは、第2高周波電源からイオントラップ4に印加される高周波電界や静電界により、高真空状態にあるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計12に導入される。そして、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計12には磁石13による磁界が印加され、イオンはそのm/zに従った周期運動を行なう。イオンの周期運動は電界の変化として検知され、運動周期よりイオンのm/zを正確に決定することができる。なお、磁界を用いるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計12の代わりに、磁界を用いないフーリエ変換質量分析計(オービトラップ)を用いても構わない。非常に多種類の物質が混合したサンプルを分析する場合、液体クロマトグラフの分離カラムでは完全に各成分を分離することができず、検出器9には複数種のイオンが検出されることが多い。情報処理部に入力された検出イオン情報は、ディスプレーなどの表示部で質量スペクトル(MSスペクトル)として表示される。
さて、検出器9で検出されたイオンの情報は、制御部のデータベース検索手段でデータベース検索が実施され、データベースでヒットしたイオン情報に基づき、タンデム質量分析の前駆イオンが決定される。そして、特定の前駆イオンがイオントラップ4に取り込まれるように、制御部の電源制御手段は第2高周波電源を制御する。そして、イオントラップ4で最終的にアイソレーションされた前駆イオンは、高周波電界のイオン過熱による残留ガスとの衝突誘起解離(CID)や、炭酸ガスレーザーを用いた赤外多光子解離(IRMPD:図示せず)等の手段により、複数種類の解離イオン(フラグメントイオン)に変換される。検出器9の出力信号は情報処理部に伝えられ、情報処理部に入力された検出イオン情報は、表示部でタンデム質量スペクトル(MS/MSスペクトル)として表示される。複数種類のMS/MSスペクトルを取得する場合には、分析開始前に入力部において設定することができる。また、使用可能なデータベースが複数ある場合には、分析開始前に入力部で選択することができる。最終的な分析設定条件は分析開始前に表示部で確認でき、分析の開始を入力部で入力することができる。
サンプル液は液体クロマトグラフに導入される。そこで、サンプルに含まれる多種類の物質は分離され、カラム末端部から分離物質が順次イオン源に導入され、エレクトロスプレーイオン化法などの噴霧イオン化法により、気体状イオンに変換される。生成されたイオンは、質量分析装置の第一細孔2から真空部に導入され、一定の高周波電界を発生させるイオン輸送部3を通って、イオントラップ4に導入される。第1高周波電源で制御されるイオントラップ4では、10ミリ秒程度の一定時間だけ、導入されるイオンを取り込みが行われる。そして、取り込まれたイオンは、第2高周波電源で制御される多重極ポールからなる衝突セル14を通過し、別のイオントラップ15に導入される。そして、イオントラップ15に取り込まれたイオンは、第2高周波電源からイオントラップ15に印加される高周波電界に従って、イオンのm/zに対応するタイミングで、検出器9で検出される。非常に多種類の物質が混合したサンプルを分析する場合、液体クロマトグラフの分離カラムでは完全に各成分を分離することができず、検出器9には複数種のイオンが検出されることが多い。情報処理部に入力された検出イオン情報は、ディスプレーなどの表示部で質量スペクトル(MSスペクトル)として表示される。非常に多種類の物質が混合したサンプルを分析する場合、液体クロマトグラフの分離カラムでは完全に各成分を分離することができず、検出器9には複数種のイオンが検出されることが多い。情報処理部に入力された検出イオン情報は、ディスプレーなどの表示部で質量スペクトル(MSスペクトル)として表示される。
さて、検出器9で検出されたイオンの情報は、制御部のデータベース検索手段でデータベース検索が実施され、データベースでヒットしたイオン情報に基づき、タンデム質量分析の前駆イオンが決定される。そして、特定の前駆イオンがイオントラップ4に取り込まれるように、制御部の電源制御手段は第2高周波電源を制御される。そして、イオントラップ4で最終的にアイソレーションされた前駆イオンは、ヘリウムなどの不活性ガスが充填された衝突セル14に加速されて導入される。そして、衝突セル14における不活性ガスとの多重衝突により前駆イオンは解離し、解離イオンは別のイオントラップ15に導入される。高周波電源からイオントラップ15に印加される高周波電界に従って、イオンのm/zに対応するタイミングで、検出器9で検出される。検出器9の出力信号は情報処理部に伝えられ、情報処理部に入力された検出イオン情報は、表示部でタンデム質量スペクトル(MS/MSスペクトル)として表示される。複数種類のMS/MSスペクトルを取得する場合には、分析開始前に入力部において設定することができる。また、使用可能なデータベースが複数ある場合には、分析開始前に入力部で選択することができる。最終的な分析設定条件は分析開始前に表示部で確認でき、分析の開始を入力部で入力することができる。
Claims (9)
- 複数の物質の情報を格納する少なくとも1つのデータベースと、
試料をイオン化するイオン源と、
前記イオン源でイオン化されたイオンの質量分離を行うイオントラップ部を有する質量分析部と、
複数のイオンからなるイオン群毎にタンデム質量分析を行うための条件設定をするための入力部と、
前記入力部からの入力に基づいて前記イオントラップ部への印加電圧が制御される電源部と、
前記質量分析部で質量分離されたイオンを検出する検出部とを有し、
前記検出部で検出されたイオンと前記データベースの情報によりタンデム質量分析を同時に実施する前記イオン群が選定され、選定された前記イオン群の前記検出部の出力により前記入力部の情報が決定されることを特徴とする質量分析システム。 - 前記データベースは、タンデム質量分析優先対象イオンの情報を格納する第1データベースを含むことを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
- 前記少なくとも1つのデータベースは、タンデム質量分析優先対象イオンの情報を格納する少なくとも1つの第1データベースと、タンデム質量分析対象外イオンの情報を格納する少なくとも1つの第2データベースであることを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
- データベース検索手段と情報処理部とをさらに有し、前記情報処理部は、前記データベース検索手段により前記データベースから検索される前記複数の物質の情報に基づき、タンデム質量分析の予測スペクトルを算出することを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
- 前記情報処理部は、前記予測スペクトルに基づき、前記イオン群を決定することを特徴とする請求項4に記載の質量分析システム。
- 前記情報処理部は、前記検出部で検出される1次質量分析結果のイオン強度とm/z情報に基づき、前記イオン群を決定することを特徴とする請求項4に記載の質量分析システム。
- 前記データベースは複数有り、前記入力部は、前記データベースを選択するためのデータベース選択部と、質量分析の条件を選択するための質量分析条件選択部とを有することを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
- 前記入力部からの入力の結果を表示する表示部をさらに有し、前記表示部は、前記イオン群をタンデム質量分析する質量分析条件の選択の有無を表示することを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
- 前記複数の物質の情報は、前記物質のイオン質量、電荷、及びタンデム質量分析スペクトルを含むことを特徴とする請求項1に記載の質量分析システム。
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