JP4643147B2 - 耐錆性に優れるFe−Ni合金材料 - Google Patents
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Description
(1)特開昭61-113746号公報には、シャドウマスク用Fe-Ni合金表面への酸化物の形成を抑制することにより、シャドウマスク用素材の、エッチング穿孔性を改善する例が開示されている。
(2) 特開平8-319540号公報には、表面酸化皮膜中の酸素濃度を抑えることによって、スジムラやレジスト不良等の発生を抑制し、製品歩留まりを改善したシャドウマスク用Fe-Ni合金薄板が開示されている。
(3)特開昭平-150232号公報には、エッチング性及び黒化膜密着性を改善するために、Si含有量の上限を0.07wt%に規定することにより、光輝焼鈍後の合金表面にSiの濃縮が起こらないようにように、水素濃度と焼鈍雰囲気の露点を制御する方法が開示されている。
Fe + 3/4O2 + 1/2H2O = FeOOH
さらに、溶接性改善成分として、S:0.003wt%以下、Ca:0.005wt%以下、Ti:0.1wt%以下、N:0.01wt%以下、B:0.002wt%以下、O:0.0005〜0.01wt%、Mg:0.005wt%以下、H:0.001wt%以下のいずれか1種以上の成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる合金材料の表面に、耐錆用のSi、Mn、CrおよびAlのいずれか少なくとも一種以上の酸化物を含む非鉄系複合酸化物層を形成してなる耐錆性に優れるFe−Ni合金材料である。
(1) Cは、固溶強化元素であり、また、組織の低温安定性にも寄与する元素である。0.01wt%未満では十分な強度が得られない。しかし、0.05wt%を超える過剰のCを含有すると、多量の炭化物を生成して、靭性、耐疲労特性が劣化する。特に、優れた強度、耐疲労特性及び低温特性を得るためには、このCの含有量を厳しく制限する必要があり、本発明では、0.01〜0.05wt%、望ましくは0.02〜0.04wt%に限定する。
(2) Siは、安定な酸化皮膜を形成する元素であり、表面にSiの酸化物層(皮膜)を形成することによって錆によるカソード促進反応を抑制し、防錆効果を上げる働きがある。また、このSiは強度の向上にも寄与する他、脱酸剤として、さらには良好な溶接性を維持するためにも有効である。このSiの含有量が0.01wt%未満では溶接時に十分な溶け込み深さが得られないと共に、光輝焼鈍後の製品表面にSi濃度の高い層(Si酸化皮膜)を形成できない。一方、このSiの含有量が0.4wt%超では熱膨張係数が大きくなり、溶接時に凝固割れや再熱割れが発生する。このような観点から、本発明においては、Si含有量を0.01〜0.4wt%とし、好ましくは0.05〜0.3wt%、より好ましくは0.15〜0.25wt%とする。
(3) Mnは、固溶強化元素であると共に酸化皮膜の形成元素であり、脱酸剤としても有効な元素である。また、MnSを形成してSの固定を促進し、熱間加工性と耐溶接割れ性を向上させる。このような効果を得るためには0.05wt%以上の添加が必要である。しかし、1.0wt%を超える過剰のMnを含有すると、Fe-Ni系合金の熱膨張係数が増大し、加工性も劣化する。そのため、本発明においては、Mn含有量を0.05〜1.0wt%に限定する。好ましくは、0.2〜0.7wt%とする。
(4) Sは、0.003wt%を超えると熱間加工性を阻害し、耐溶接割れ性も劣化する。そのため、S含有量は0.003wt%以下に抑制した。好ましくは、0.002wt%以下とする。
(5) Niは、Fe-Ni系合金の熱膨張係数を低く維持する上で重要な合金化元素である。このNi含有量は30〜45wt%であるが、好ましくは34〜39wt%である。これらの範囲を外れると、熱膨張係数が増大する。そこで、Ni含有量は、30〜45wt%の範囲に設定し、好ましくは、34〜39wt%、より好ましくは、35〜37wt%とする。
(6) Crは、酸化皮膜形成元素であり、0.01wt%未満の場合は十分な酸化皮膜を形成しない。一方、1.0wt%を超えると熱膨張係数が高くなり本来の低熱膨張特性を失う。また、このCrは、Siと同様に、酸化皮膜を安定化する元素でもあり、製品表面に、Siと一緒になって複合酸化物皮膜を生成することによって、耐錆性をより一層向上させる。そこで、本発明においては、このCrの含有量を0.01〜1.0添加することとし、好ましくは、0.02〜0.2wt%とする。
(7) Alは、脱酸剤として使用しているが、酸化層(皮膜)の形成元素でもある。このAlを適正な量を合金中に残留させると、防錆性を有する複合酸化物皮膜を効果的に形成し、耐錆性を一層向上する。このAlの含有量は0.001wt%未満の場合、十分な酸化皮膜を形成できない。一方、0.10wt%を超えると熱膨張係数が高くなり、溶接の溶け込み性が劣化する。そのため、本発明においてAlは、0.001〜0.10wt%の範囲に規制する。好ましくは0.002〜0.020wt%とする。
(8) Tiは、0.1wt%を超えると、熱膨張係数が高くなり、溶接ビードにおける溶接割れが生じ、溶接ビードの品質が劣化する。このTiは非添加元素であるが、原料から混入する場合がある。従って、Tiの混入を極力抑えることが必要である。本発明においては、Tiの含有量の上限を0.1wt%に規定した。好ましくは、0.01wt%以下、より好ましくは0.005wt%以下とする。
(9) Bは、0.002wt%を超えると、溶接ビードにおける割れが生じ、溶接ビードの品質が劣化する。そのため、本発明においては、B含有量を厳しく制限する必要があり、その上限は0.002wt%に限定した。
(10) Mgは、0.005wt%を超えると、大型な酸化系介在物が多量に形成し、溶接ビードの品質が劣化するため、0.005wt%以下に抑制する。好ましくは、0.0010wt%以下とする。
(11) Caは、0.002wt%を超えると、酸化系介在物が多量に形成し、溶接時低融点酸化系介在物によって溶接ビードの品質が劣化する。そのため、0.005wt%以下に抑制する。好ましくは、0.0010wt%以下とする。
(12) Nは、0.01wt%を超えると、溶接ビードの品質が劣化する。また、窒化物を形成し、機械的性質を著しく低下させるため、N含有量の上限を0.01wt%に限定した。好ましくは、0.0005wt%以下とする。
(13) Oは、0.0005wt%以下では溶接時の溶け込み性が不十分となり、一方、0.01wt%を超える過剰なOを含有すると、溶接時の溶け込み深さが深すぎ、また、溶接金属の粘度が著しく低下し、良好な溶接ビードを得ることができなくなる。また、酸化物系介在物の生成も著しく、溶接ビードの品質と表面の耐錆性が劣化する。優れた溶接性と防錆性を得るためにはO含有量を著しく制限する必要がある。本発明では、O含有量を0.0005〜0.01wt%の範囲に設定する。好ましくは、0.001〜0.005wt%以下とする。
(14) Hは、0.001wt%を超えると、熱間加工性が著しく劣化し、溶接ビードの品質が低下するため、0.001wt%以下に抑制する。
このような熱処理は、酸化物層(皮膜)を形成する加熱炉中での雰囲気、または加熱後の冷却中の雰囲気はすべて、Feは酸化しない雰囲気とする一方で、Fe以外の元素(Si、Mn、Cr、Al)については、酸化するという雰囲気に維持する条件で行う。
即ち、そのような雰囲気としては、水素濃度5〜80vol.%以上の水素ガスと窒素ガスとの混合ガス(H2+N2)で構成し、かつ、図1に示すように、混合ガスの露点をx=3.5Dp+220以上7Dp+75以下に抑制する。ここで、xは水素の濃度(vol.%)、Dpは露点(゜C)である。
◎:赤錆発生面積率 5%以下、○:赤錆発生面積率 5%〜10%、△:赤錆発生面積率 10%〜20%、×:赤錆発生面積率 20%以上
図2は、発明例3(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図3は、発明例5(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図4は、発明例6(表2)を示し、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸化層のもようを明らかにするグラフである。
図5は、比較例1(表2)を示し、十分な酸化皮膜を生成していない例のグラフである。
上記の各図に明らかなように、本発明適合例では、Si、Mn、Cr、Alを含む複合酸下層を有するため耐錆性が優れていることであり、一方、比較例では、十分な酸化皮膜を生成していないため、耐錆性が非常に劣ることである。
Claims (2)
- C:0.01〜0.05wt% Ni:30〜45wt%
Si:0.01〜0.4wt%
Cr:0.01〜1.0wt%
Mn:0.05〜1.0wt%
Al:0.001〜0.1wt%
を主要成分として含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる合金材料の表面に、耐錆用のSi、Mn、CrおよびAlのいずれか少なくとも一種以上の酸化物を含む非鉄系複合酸化物層を形成してなる耐錆性に優れるFe−Ni合金材料。 - C:0.01〜0.05wt% Ni:30〜45wt%
Si:0.01〜0.4wt%
Cr:0.01〜1.0wt%
Mn:0.05〜1.0wt%
Al:0.001〜0.1wt%
を主要成分として含有し、
さらに、溶接性改善成分として、
S:0.003wt%以下 Ca:0.005wt%以下
Ti:0.1wt%以下
N:0.01wt%以下
B:0.002wt%以下 O:0.0005〜0.01wt%
Mg:0.005wt%以下
H:0.001wt%以下
のいずれか1種以上の成分を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる合金材料の表面に、耐錆用のSi、Mn、CrおよびAlのいずれか少なくとも一種以上の酸化物を含む非鉄系複合酸化物層を形成してなる耐錆性に優れるFe−Ni合金材料。
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