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JP4640565B2 - 表示装置およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、複数の電極を備えた基板を利用した表示装置およびその製造方法に関する。
単純マトリクス型の配線基板は、例えば、ガラス,またはプラスチックなどの樹脂よりなる基板に、銅(Cu)またはアルミニウム(Al)よりなる金属膜を貼り付け、エッチングなどの方法で電極を形成することにより製造されている。
このような配線基板では、電極の腐食を防止するため、表面を各種腐食防止剤でコーティングすることが一般的に行われている。例えば、湿気による腐食を防止するためには、シリル化剤などの疎水性の分子でコーティングする方法が示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、酸化による腐食を防止するためには、ベンゾトリアゾール化合物やエピハロヒドリン変性ポリアミド等でコーティングする方法が示されている(例えば、特許文献2参照。)。この他、電極の表面を金(Au)などの貴金属でメッキする方法(例えば、特許文献3参照。)、配線基板全面をクロムでメッキし、電極以外の部分をエッチングで除去する方法(例えば、特許文献4参照。)なども提案されている。
なお、樹脂基板の全面に硬化性樹脂層を設けたものもある(例えば、特許文献5参照。)が、これは電極の腐食防止のためよりは、樹脂基板の耐薬品性やガスバリア性を向上させるためである。
プラスチック基板に形成した電極の剥離を防止する方法としては、例えば紫外線処理,プラズマ処理,コロナ放電処理,アルカリ処理あるいはオゾン処理のような、基板そのものの表面改質をする方法の他、基板をプライマ処理し、その上に金属膜を形成する方法なども提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
また、配線基板では、電極間を樹脂で埋めて表面を平坦化することが行われている。一般的に、配線基板全面を樹脂でコーティングした後に機械的な研磨を行い、電極表面を露出させる方法が用いられる。この方法は、使う樹脂の種類を選ばず、高い平坦性が得られることから、特にビルドアップ基板の製造で多用されている。例えば、配線基板上に絶縁層を設けたのち機械的研磨により電極表面を露出させ、研磨傷をドライエッチングで低減する方法(例えば、特許文献7参照。)、この機械的研磨の後に感光性材料をコーティングして研磨傷をコーティングし、電極表面を露光現像によって露出させる方法(例えば、特許文献8参照。)、化学的機械的研磨スラリを使うことで平坦化を実現する方法(例えば、特許文献9参照。)等がある。
特開平5−211146号公報 特開2002−105672号公報 特開平5−166967号公報 特開平5−102640号公報 特開平10−111500号公報 特開平6−122777号公報 特開平6−260772号公報 特開平7−235774号公報 特開平11−238709号公報
しかしながら、このような従来の配線基板を、エレクトロデポジション型のような有機溶媒を含む電解液に直接触れる用途に適用した場合、次のような問題が発生するおそれがある。
(1)特に樹脂基板の場合、電解液が基板に浸透して膨潤する。
(2)特に樹脂基板では、基板に電極を接着剤で貼り付ける場合、接着剤が電解液に溶解して電極が剥離する。
(3)特に樹脂基板の場合、基板に含まれる不純物が電解液に溶出する。
(4)2枚の配線基板を対向配置して周縁部を封止し、2枚の配線基板の間の空間に電解液を充填して表示装置を製造する場合、配線基板の周縁部における電極取り出し部分の凹凸のために封止が不完全になり、電解液が漏出する。
(5)電極表面を貴金属でめっきする場合、基板との接触部はめっきされにくい。このため表示装置を実際に駆動したとき、電極と基板の接触部がサイドエッチングされやすい。
このうち、(1)〜(3)のような配線基板への電解液浸透に伴う問題は、電解液に対する耐性が高い樹脂基板を使うことで回避することが出来る。しかし、このような樹脂基板は、例えば液晶ポリマのように接着剤との親和性が低く、封止が困難であったりする。また、基板に電極を接着剤で貼り付ける場合、樹脂基板を屈曲させたとき、電極が細いと基板への接着力が小さくなり剥離しやすくなる。
また、(4)のような電解液の漏出を回避するためには、配線基板の表面の平坦化が有効である。しかし、従来のような機械的研磨による平坦化方法は、設備投資に多大の費用がかかる上、この方法で得られるほどの平坦性を必要としないことも多い。
機械的研磨以外の方法では、カラーフィルタの製造で使われているような光硬化樹脂を使う方法が考えられる。これは、ブラックマトリクスを形成した基板の全面を、着色した光硬化樹脂でコーティングし、フォトマスクを通してブラックマトリクス間を紫外線露光したのち現像して、最後に全面を熱硬化させるものである。この方法を配線基板に適用する場合、露光部の正確な位置合わせを行うアライナーと、電極パターンに合わせて作成した精密なフォトマスクが必要になる。しかも、それでもなお、電極表面を充分な面積で露出させるのは困難である。
あるいは、配線基板に光硬化樹脂を塗布し、塗布面の反対側(背面)から紫外線を全面露光することで電極間の樹脂を硬化させ、電極上に残った未硬化の樹脂を洗い流す方法も考えられる。この方法では電極を完全に露出させることができるが、適用できる基板は紫外線を透過するものに限られるため、ガラスエポキシ樹脂基板や大多数の樹脂基板には適用できない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡単な工程で電極の腐食あるいは剥離を確実に防止することができる表示装置およびその製造方法を提供することにある。
本発明による表示装置は、第1基板および第2基板の間に、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含む電解質と、酸化還元により析出および溶解する析出溶解材料とを含む表示層を有すると共に、第1基板の周縁部に封止部材を備え、第1基板および第2基板のうち少なくとも一方が、表面が貴金属でめっきされた複数の電極が形成された、ガラスエポキシ樹脂または可とう性を有するフィルム状の透明プラスチックよりなる基材と、複数の電極の間の領域および前記複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に形成された、水溶性の樹脂よりなる被覆層とを備え、複数の電極の上面は被覆層に覆われず表示層に直接接触しているものである。ここで、「複数の電極の間の領域」とは、複数の電極の各々の側面および複数の電極の間の基材の表面で囲まれた領域をいい、複数の電極のうち両端に位置する電極の側面をも含む。被覆層は、少なくとも、複数の電極の側面を覆うように形成されていればよく、複数の電極の間の領域の全体を覆うように形成されていればより好ましい。
こに「水溶性」とは、親水性樹脂材料のみを含む場合だけでなく、親水性樹脂材料を主成分として含む場合、および疎水性樹脂材料に親水性のセグメントを導入することにより水溶性が付与されている場合を含む。また、「親水性樹脂材料を主成分として含む場合」とは、親水性樹脂材料と疎水性樹脂材料とを含み水溶性を示す場合をいう。
本発明による表示装置の製造方法は、第1基板の周縁部に封止部材を配設し、第1基板と第2基板とを重ね合わせて封止部材により接着し、第1基板と第2基板との間に、電解質と、酸化還元により析出および溶解する析出溶解材料とを含む表示層を形成するものであって、第1基板および第2基板のうち少なくとも一方を形成する工程が、水溶性の樹脂を水に溶解して樹脂溶液を調製する工程と、表面が貴金属でめっきされた複数の電極が形成された、樹脂よりなる基材に、複数の電極の全体を覆うように樹脂溶液を塗布し、被覆層を形成する工程と、加熱または減圧により被覆層を仮硬化させる工程と、洗浄により複数の電極の上面を露出させると共に複数の電極の間の領域および複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に被覆層を形成する工程とを含み、複数の電極の上面を表示層に直接接触させるようにしたものである。
本発明による表示装置では、複数の電極の間の領域に、樹脂よりなる被覆層が形成されているので、電極の側面が被覆層により保護され、電極のサイドエッチングが防止される。よって、電極の腐食あるいは基板からの剥離が防止され、性能が向上する。
本発明による表示装置の製造方法では、複数の電極が形成された基材に、少なくとも複数の電極を覆うように、樹脂よりなる被覆層が形成される。そののち、洗浄により複数の電極の上面が露出すると共に複数の電極の間の領域および複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に被覆層が形成される。
本発明の表示装置によれば、複数の電極の間の領域および複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に、樹脂よりなる被覆層を形成するようにしたので、電極の側面が被覆層により保護され、電極のサイドエッチングを防止することができる。更に、被覆層により電極を基材に強固に固定することができるので、電極の剥離を抑制することができ、特にフィルム状基材やプラスチックなど柔軟性のある基材を使う場合に好適である。よって、電極の腐食あるいは基板からの剥離が防止され、性能を向上させることができる。
本発明の表示装置の製造方法によれば、洗浄により複数の電極の上面を露出させるようにしたので、アライナーなどの特別な装置あるいはフォトマスクを用いた精密な作業を必要とせず、どのような形状の電極に対しても、電極の間の領域および複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に被覆層を容易に形成すると共に電極の上面を十分に露出させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施の形態に係る基板を第1基板として有する表示装置の構成を表している。この表示装置は、例えばエレクトロデポジション型表示装置として用いられるものであり、第1基板10と第2基板20との間に表示層30を備えている。第1基板10の周縁部11Aには、封止部材40が設けられている。また、図示しないが、表示装置の周辺には、駆動部が設けられている。
第1基板10は、基材11の上に、ストライプ状の複数の第1電極12を形成したものである。この第1基板10では、第1電極12の上面と基材11の表面との間には段差があり、第1電極12の間の電極間領域11Bには、樹脂よりなる被覆層13が形成されている。第1電極12の上面は被覆層13に覆われず表示層30に直接接触している。
基材11の材料は、被覆層13を形成する際に塗布された樹脂がはじかれないものであり、被覆層13を硬化させたときに容易に剥離を起こさない程度の接着力を有するものであれば、特に限定されない。具体的には、ガラス、ガラスエポキシ樹脂、ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンテレフタレート等のエステル、ポリアミド,ポリカーボネート,酢酸セルロース等のセルロースエステル、ポリオキシメチレン等のポリエーテル、ポリアセタール,ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,メチルペンテンポリマー等のポリオレフィン、ポリイミド−アミドやポリエーテルイミド等のポリイミド、およびノルボルネン系樹脂等のポリシクロオレフィンなどがある。基材11は、樹脂の塗工性を向上させるため、または樹脂との接着性を向上させるため、界面活性剤あるいはシランカップリング剤等の処理剤を使う方法、またはUV(紫外線;Ultra Violet radiation)/オゾンあるいはコロナ放電等の活性エネルギー線を使う方法で表面修飾されていてもよい。基材11は、容易に曲がらないような剛性基板状であってもよく、また、可とう性を有するフィルム状の構造体であってもよい。
基材11の対角周辺部の2箇所には、図示しないが、直径例えば1mmないし2mm程度の孔が設けられている。これらの孔は、後述する製造工程において電解液を注入するのに用いられる。また、基板11の第1電極12と反対側の表面全面には、封止フィルム14が接着されている。
第1電極12は、例えば、チタン(Ti),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),ニッケル(Ni),銅(Cu),アルミニウム(Al),モリブデン(Mo),タングステン(W)などの金属あるいは合金、シリコン(Si)、またはグラファイト等の炭素材料により構成されている。この第1電極12は、単層により構成してもよいが、複数層により構成してもよい。第1電極12は、例えば、図示しないが、銀ペースト,エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂あるいはポリアミド樹脂などの接着剤により基材11に固定されていてもよいし、または、めっき法により基材11上に形成されていてもよい。なお、第1電極12は、駆動部と接続するために封止部材40の外部に引き出されている。
被覆層13は、第1電極12の側面を保護してサイドエッチングを抑制し、第1電極12の腐食あるいは基材11からの剥離を防止するものである。
被覆層13は、水溶性の樹脂により構成されていることが好ましい。第1基板10の表示層30に含まれる有機溶媒に対する耐性を高めることができ、例えば、表示層30に含まれる有機溶媒が基材11に浸透するのを防止し、あるいは、基材11に含まれる紫外線吸収剤あるいは触媒等の不純物が表示層30に溶出するのを防止することができるからである。また、第1電極12を基材11に接着剤で固定する場合、接着剤に有機溶媒が浸透するのを防ぎ、接着剤の溶解または膨潤による第1電極12の剥離を抑制することができるからである。更に、後述する製造工程において表示層30を形成する際に電解液を良好にゲル化させることができるからである。
被覆層13は、例えば、ポリビニルアルコールを含む樹脂により構成されていることが好ましい。ポリビニルアルコールは、洗濯糊,錠剤カプセルあるいは切手糊などにも使われ、水を溶媒として用いることができるので、環境負荷が少なく製造コストを低減することができ、しかも量産化に適しているからである。ポリビニルアルコールは、部分的にアセチル化されていてもよい。
ここで、「ポリビニルアルコールを含む樹脂」とは、ポリビニルアルコールのみを含む場合だけでなく、ポリビニルアルコールを主成分として含む場合、すなわちポリビニルアルコールと疎水性樹脂材料とを含み水溶性を示す場合を含む。
また、被覆層13は、水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂を含む樹脂により構成されていてもよい。例えば、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/マレイン酸・クロスポリマー、あるいはカルボキシビニルポリマーが挙げられる。また、疎水性樹脂材料に親水性のセグメントを導入することで水溶性が付与されたものにより構成されていてもよい。
ここで、「水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂を含む樹脂」とは、水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂のみを含む場合だけでなく、水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂を主成分として含む場合、すなわち水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂と疎水性樹脂材料とを含み水溶性を示す場合を含む。
これらの樹脂の重合度には特に制限は無いが、分子量が大きくなるにつれ溶媒への溶解度が低下し、粘度が上昇する。このため、第1電極12の間の電極間領域11Bの樹脂の充填率を上げて第1基板10の平坦化率を高めたい場合は、被覆層13を低重合度の樹脂により構成することが好ましい。なお、ここでいう平坦化率は、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1から、被覆層13の上面の最も低い部分(湾曲底部)と第1電極12の上面との段差S2を差し引き、得られた値を、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1で割り、得られた値に更に100を乗じることによって得られる。
例えば、被覆層13をポリビニルアルコールを含む樹脂により構成する場合、後述の製造工程において樹脂を溶解させる溶媒として水を使用するときは、樹脂のケン化度が、70mol%以上100mol%以下であることが好ましい。一般にケン化度が高いほど水溶性が増し、低くなるにつれてアルコールなど水溶性有機溶媒への溶解性が増す。したがって、樹脂を溶解させる溶媒として水を使う場合、高いケン化度の樹脂を使うことで溶解を容易に行うことができる。逆に、樹脂を溶解させる溶媒としてメタノールなどのアルコール類を使う場合、樹脂のケン化度が、0mol%より大きく50mol%以下であることが好ましい。
また、被覆層13は、充填材(フィラ)を含んでいてもよい。充填剤を含むことにより、被覆層13の機械的強度を高め、熱収縮などに対する寸法安定性を向上させることができる。また、表示層30からの電解液の浸透防止効果を高めたり、樹脂の使用量を減らすことができる。充填材の例としては、酸化チタン、チタン酸カリウム、酸化ジルコン、硫化亜鉛、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、タルク、アルミナ、炭酸カルシウム、カオリンクレー、マイカ、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、ベントナイト、硫酸カルシウム、無水ケイ酸、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、含水ケイ酸カルシウム、石英ガラス、ケイソウ土、カーボン、あるいはシリカ等が挙げられる。これらは2種類以上を併用してもよい。
更に、被覆層13は、顔料および染料のうちの少なくとも一方を含んでいることが好ましい。被覆層13を顔料または染料で着色することにより、後述の製造工程において洗浄により第1電極12の上面を露出させる際に、目視で第1電極12の露出を識別することができるからである。また、被覆層13に顔料または染料を含有させることにより、被覆層13に紫外線遮蔽能力を付与することも可能であるからである。
なお、被覆層13が水溶性の樹脂により構成されている場合には、染料による着色は極めて容易である。また、被覆層13に着色される色は、第1電極12の表面とは異なる色にしておけば第1電極12の露出を識別する際に便利であるが、特に限定されない。例示した水溶性の樹脂は、無色透明、またはそれに準じるものが多いので、顔料あるいは染料により任意の色に着色することができる。顔料または染料の含有量は特に制限されない。
顔料の例としては、有機顔料ではアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、あるいはベンズイミダゾロン系顔料などがある。また、無機顔料では、上記した充填材を着色顔料として利用することもできるほか、チタン(Ti),アンチモン(Sb),クロム(Cr),ニッケル(Ni),鉄(Fe),亜鉛(Zn),コバルト(Co),アルミニウム(Al),ケイ素(Si),銅(Cu),マンガン(Mn),リチウム(Li),リン(P),カルシウム(Ca)あるいはスズ(Sn)などを含む複合酸化物が挙げられ、既に数多くが製造・市販されている。これらの顔料は単独、又は複数の種類を混合して用いることができ、必要に応じて界面活性剤やシランカップリング剤等で表面処理を加えることができる。
被覆層13は、官能基にアミン基またはアミド基を有するシランカップリング剤を含むことが好ましい。被覆層13にアミン基またはアミド基が導入され、被覆層13と表示層30との間で、または被覆層13と封止部材40との間で良好な接着性が得られるからである。このようなシランカップリング剤は、例えば、後述する製造工程において、被覆層13を硬化させる架橋剤としての役割も有している。
被覆層13は、基材11の周縁部11Aにも形成されていることが好ましい。製造工程において、基材11の全面に被覆層13を形成すればよく、パターニングが不要でプロセスが簡単になるからである。また、周縁部11Aに設けられた封止部材40と基材11との親和性を高め、封止部材40の封止性能を良くして、封止部材40と被覆層13との間から表示層30の有機溶媒が漏出するのを効果的に防止することができるからである。更に、被覆層13の材料である樹脂の粘度を調整することにより第1基板10の表面の平坦化率を高くするようにすれば、封止部材40の封止性能をより向上させことができる。
封止フィルム14は、電解液を注入するための孔を封止するものである。また、封止フィルム14は、基材11がプラスチックなど可とう性を有する材料により構成されている場合に、基材11にガスバリア性を付与する機能も有している。封止フィルム14は、例えば、高いガスバリア性を有する薄膜とカバーフィルムとを両面接着フィルムなどの接着層を介して貼り合わせた構成を有している。高いガスバリア性を有する薄膜としては、例えば、アルミニウム箔、プラスチックフィルムの表面にシリカ蒸着したフィルム,またはエチレンビニルアルコール重合体が挙げられる。カバーフィルムとしては、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエタン)または剥離剤を塗布したフィルムなどの剥離フィルムが挙げられる。なお、封止フィルム14は、必ずしも基材11の全面に設けられている必要はなく、電解液を注入するための孔の上だけに設けられていてもよい。
第2基板20は、表示側の基板であり、基材21にストライプ状の複数の第2電極22が設けられた構成を有している。
基材21は、透明性を有する材料、具体的には、石英ガラスなどにより構成されている。また、この他にも、例えば、基材11と同様の合成樹脂により構成されていてもよい。基材21は、基材11と同様に、容易に曲がらないような剛性基板状であってもよく、また、可とう性を有するフィルム状の構造体であってもよい。基材21の第2電極22側の表面は、表示層30との密着性を高めるため、例えばシリル化剤・HMDS(1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン)を例えばスピンコートあるいは噴霧などの方法で付着させたのち、例えばホットプレートあるいはオーブンで加熱乾燥されていてもよい。
第2電極22は、画素として表示する金属を析出させる析出基板として機能するものであり、例えば、透明導電性膜により構成されている。具体的には、酸化インジウム(In2 3 )、酸化スズ(SnO2 )、あるいはスズ(Sn)とインジウム(In)との酸化物であるITO(Indium Tin Oxide)、または、これらにスズあるいはアンチモン(Sb)などをドーピングしたものにより構成されることが好ましい。また、酸化マグネシウム(MgO)あるいは酸化亜鉛(ZnO)などにより構成してもよい。なお、第2電極22は、駆動部と接続するために封止部材40の外部に引き出されている。
表示層30は、例えば、電解質と、酸化還元反応により析出および溶解する析出溶解材料とを含んでいる。
電解質は、高分子材料と、電解質塩と、必要に応じて可塑剤としての溶媒を含んでいる。高分子材料としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミンあるいはポリエチレンスルフィドなどが挙げられる。これらを主鎖構造として、枝分を有していてもよい。また、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデンあるいはポリカーボネートなどでもよい。これらの高分子材料は、いずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。また、これらの高分子材料には、アクリル基などの重合性の官能基が結合されていてもよい。
電解質塩は、表示層30のイオン伝導性を高めることにより、析出溶解材料の析出溶解反応がより効果的に、かつ安定して行われるようにするためのものである。支持電解質塩としては、例えば、LiCl,LiBr,LiI,LiBF4 ,LiClO4 ,LiPF6 あるいはLiCF3 SO3 などのリチウム塩、または、KCl,KIあるいはKBrなどのカリウム塩、または、NaCl,NaIあるいはNaBrなどのナトリウム塩、または、ホウフッ化テトラエチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラエチルアンモニウム塩,ホウフッ化テトラブチルアンモニウム塩,過塩素酸テトラブチルアンモニウム塩あるいはテトラブチルアンモニウムハライド塩などのテトラアルキル四級アンモニウム塩が挙げられる。電解質塩にはいずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、あるいはこれらの混合物などの親水性を有するもの、または、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、スルホラン、ジメトキシエタン、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンあるいはこれらの混合物などの疎水性を有するものが挙げられる。
析出溶解材料は、析出した状態と溶解した状態とで色が変化することを利用して画素の表示を可能にするためのものである。析出溶解材料としては、還元により金属として析出する金属イオンが挙げられる。金属イオンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ビスマスイオン,銅イオン,銀イオン,ナトリウムイオン,リチウムイオン,鉄イオン,クロムイオン,ニッケルイオンあるいはカドミウムイオンが挙げられる。その中でも特に好ましい金属イオンはビスマスイオンあるいは銀イオンであり、更に好ましいのは銀イオンである。ビスマスイオンおよび銀イオンは、可逆的な反応を容易に進めることができると共に、析出時の変色度が高く、特に、銀イオンはイオン価数が通常1であるので、イオン価数が通常3であるビスマスイオンに比べて、1原子を還元させて金属にするのに必要な電荷量が3分の1となるからである。金属イオンは、例えば、金属塩として溶媒に添加されている。金属塩としては、銀塩であれば、例えば、硝酸銀、ホウフッ化銀、ハロゲン化銀、過塩素酸銀、シアン化銀あるいはチオシアン化銀が挙げられる。金属塩には、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
表示層30は、また、必要に応じて着色剤と各種添加剤とを含んでいてもよい。
着色剤は、コントラストを向上させるためのものである。着色剤としては、例えば、無機顔料あるいは有機顔料が挙げられ、これらを単独で用いてもよく、混合して用いてもよい。例えば、銀のように、本実施の形態で利用する電解液組成からの析出色が黒色の場合には、白色の隠蔽性の高い材料が好ましい。このような材料として、例えば、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウムあるいは酸化アルミニウムなどの無機粒子を使用することができる。また、色素を用いることもできる。
封止部材40は、第1基板10と第2基板20との間の空間を封止するためのものであり、スペーサとしての機能も兼ねている。封止部材40は、例えば、熱可塑性樹脂フィルムあるいは熱硬化性樹脂フィルムなどのフィルム状部材でもよく、紫外線硬化型樹脂をディスペンサで枠状に塗布することにより形成されていてもよい。この封止部材40は、単層により構成してもよいが、コア材の両面に接着剤層を形成するなど、複数層により構成してもよい。
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
図3は、本実施の形態に係る表示装置の製造工程を表すものである。まず、例えばケン化度が上述のように調整された、ポリビニルアルコールを含む樹脂を用意する。この樹脂を溶媒としての水に溶解してワニス化し、必要に応じて上述した充填剤、または顔料や染料を添加して、被覆層13を形成するための樹脂溶液を調製する。
なお、このとき、ポリビニルアルコールを含む樹脂のケン化度を調整するのではなく、この樹脂の溶解に使う溶媒の溶解度を調整するようにしてもよい。例えば、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1が小さい場合、樹脂の溶解性が高すぎると、後に第1電極12の上面を覆う被覆層13を洗浄により溶解・除去する際に電極間領域11Bの被覆層13も流れ出したり、逆に、電極間領域11Bから溶出した被覆層13が第1電極12の上面を再び被覆してしまうおそれがある。このため、水とアルコールなどの水溶性有機溶媒とを適当な比率で混合して樹脂の溶解度を調整することにより、電極間領域11Bの被覆層13を残した状態で第1電極12の表面を充分に露出させることが可能となる。
樹脂を水に溶解する際、樹脂の溶解性および基材11への塗工性を高めるために有機溶媒を添加してもよい。使われる有機溶媒は水溶性のものであればよく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン類、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、N−ビニル−2−ピロリジノン等のピロリジノン類を用いることができる。そのほか、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等の極性溶媒も利用できる。これらは2種類以上を併用してもよい。
また、樹脂溶液には、基材11に対する親和性を向上させるために、上述した水溶性の有機溶媒、あるいはレベリング剤を混合してもよい。
次に、図3(A)に示したように、第1電極12が形成された基材11に、上述した樹脂溶液を塗布し、被覆層13を形成する。塗布方法としては、樹脂溶液の粘度に応じて、あるいは被覆層13の厚みに応じて、適当な方法を用いることができる。例えば、樹脂溶液が低粘度の場合はスピンコートあるいは浸漬により、高粘度の場合はバーコータ、テーブルコータ、ヘラなどの塗工装置・器具を用いることが可能である。
基材11に樹脂溶液を塗布する際、基材11の材質や表面状態によってはハジキを生じることがある。これを防ぐため、適宜、基材11に表面処理を施してもよい。表面処理の方法としては、紫外線処理,プラズマ処理,コロナ放電処理,アルカリ処理あるいはオゾン処理などを用いることができる。このほか、アルカリ処理や酸化処理など化学処理を行ってもよい。酸化処理の方法としては、重クロム酸カリウムの硫酸水溶液に浸す方法などがある。
また、樹脂溶液の基材11に対する親和性を向上させるため、基材11をシランカップリング剤あるいはシリル化剤で処理しておくなどの方法を取ることもできる。
基材11の表面に被覆層13を形成したのち、基材11をオーブンあるいはホットプレートなどでごく短時間加熱して溶媒を揮発させることにより、被覆層13を仮硬化させる。乾燥温度は溶媒の揮発を促進させる範囲であればよい。プラスチックよりなる基材11など、加熱で歪みを生じるおそれがある場合は、適宜、減圧を併用して溶媒を揮発させてもよい。
被覆層13を仮硬化させたのち、図3(B)に示したように、洗浄により第1電極12の上面を露出させ、第1電極12の上面が露出したところで洗浄を止める。これにより、第1電極12の間の電極間領域11Bおよび基材11の周縁部11Aに被覆層13を形成する。第1電極12の上面が露出したか否かは、洗浄しながらテスター等を用いて検出するようにしてもよいし、被覆層13に顔料または染料を含ませた場合には目視で識別することも可能である。
洗浄液としては、必要に応じて適宜、加温した水、あるいは有機溶媒を用いる。通常は洗浄液の温度が高くなるほど被覆層13を溶解する速度が速くなるため、第1電極12の上面を露出させる程度に応じて洗浄液の温度と洗浄時間とを調整する。洗浄液には、洗浄速度を調節するために有機溶媒を少量、添加してもよい。このとき添加する有機溶媒としては水溶性のものであればよく、具体例は、例えば溶解速度を速める場合は、樹脂を水に溶解して樹脂溶液を調製する際に、樹脂の溶解性を高めるために添加する有機溶媒として例示したものと同様である。また、第1電極12の露出度を制御するなど精密な洗浄を行う場合には、樹脂の溶解性の低い有機溶媒を添加することで、溶解速度を遅らせる方法をとることが可能である。例えば、被覆層13をポリビニルアルコールを含む樹脂により構成する場合、洗浄液としては、例えば水とメタノールとを比率を調節して混合したものを用いたり、水のみ、またはメタノールのみを用いたりすることにより、樹脂の洗浄液に対する溶解性を調節することができる。ポリビニルアルコールのケン化度、水/メタノール混合比、溶解性の関係は、薬品製造会社あるいは材料メーカなどが提供する資料を通して、一般にも公開されている。
洗浄方法は、スプレーまたはシャワーなどを用いる方法の他、洗浄液を入れた容器に第1基板10を浸し、適宜、超音波を照射したり振動を加えるようにしてもよい。また、洗浄液を含浸した布,スポンジあるいは刷毛で第1基板10の表面をこすったり、ブラシで叩いたりしてもよい。
洗浄を止めたのち、被覆層13を架橋剤で架橋させることにより硬化させる。これにより、被覆層13の強度を高めると共に表示層30に対する耐性を付与することができる。
架橋剤は、ポリビニルアルコールにおけるヒドロキシ基など、水溶性樹脂の側鎖官能基と反応するものであればよく、水、水溶性の有機溶媒、または、水と水溶性の有機溶媒との混合液に溶解するものであることが必要である。
架橋剤としては、例えば、水または水溶性の有機溶媒に溶解するシランカップリング剤が好ましい。例としては、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノシランなどのアミノ系のもの、β−(3, 4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ系のもの、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニル系のものがある。エポキシ系シランカップリング剤は水を酢酸等で弱酸性に調製すると溶解しやすくなる。ビニル系のものは水溶性の有機溶剤に溶解させて用いることができる。これらのうち、水に対する溶解度が高いアミノ系のシランカップリング剤が特に好適に用いられる。これらのシランカップリング剤はそのまま添加してもよいし、あらかじめ加水分解しておいたものを添加してもよい。
シランカップリング剤以外では、尿素、アリル尿素、カルバミル尿素、N−ホルミル尿素、ジメチロール尿素、グリオキザールなどの尿素系化合物、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド類、マロンアルデヒドテトラメチルアセタール、グルタルアルデヒドテトラメチルアセタールなどのアセタール類、親水性セグメントを付与したカルボジイミド系樹脂、2つ以上のカルボキシル基を有する水溶性の樹脂またはオリゴマ、水溶性のジカルボン酸、水溶性イソシアネート、アクリロニトリルなどを用いることができる。
これらの架橋剤の添加量は、使用する樹脂のケン化度や、目的とする被覆層13の硬度によって調整することができるが、通常は樹脂重量に対して0.1重量%ないし5重量%程度、配合すればよい。架橋反応を促進するために、適宜、触媒を混合してもよい。触媒の種類としては各種の無機酸、有機酸などの酸性触媒や有機スズ化合物を用いることができる。
また、架橋剤は、被覆層13を硬化させるだけでなく、被覆層13に樹脂とは異なる官能基を導入する効果もある。これにより、表示層30と被覆層13との接着性、および封止部材40と被覆層13との接着性を高めることができる。そのためには、架橋剤として、例えば、官能基にアミン基またはアミド基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
架橋剤は、被覆層13に架橋剤を付着させたのち被覆層13に含浸させて加熱により架橋を進行させるようにしてもよいし、あるいは、予め架橋剤を添加した樹脂溶液を基材11に塗布して被覆層13を形成したのち加熱により架橋を進行させるようにしてもよい。更に、これらの方法を併用してもよい。
被覆層13に架橋剤を付着させる方法としては、布やスポンジ等による塗布、スプレー、蒸気への露出、浸漬、スピンコートなどの方法がある。架橋剤は、単独で使用してもよいし、必要に応じて水あるいは水溶性の有機溶媒に溶解させた状態で使用してもよい。
加熱にはオーブン、ホットプレート、赤外線ヒータなど、通常の加熱装置を用いることができる。加熱温度は特に限定されないが、溶媒を揮発させることができると共に樹脂と架橋剤との反応を促進させ、かつ、被覆層13に悪影響を与えない程度とすることができ、通常は80℃ないし150℃程度で良好な被覆層13が得られる。
被覆層13を硬化させたのち、適宜、第1基板10の表面を洗浄して、第1電極12の上面に残っている樹脂や架橋剤などの残渣をスプレー洗浄やバフ研磨で除去し、第1電極12の上面を充分に露出させる。これにより、本実施の形態に係る基板である第1基板10が完成する。
第1基板10を形成したのち、図1に示したように、基材11の周縁部11Aに封止部材40を配設し、第1電極12と第2電極22とが直交するように第1基板10と第2基板20とを重ね合わせて、封止部材40により接着する。
そののち、例えば上述した高分子材料,電解質塩および必要に応じて溶媒と、析出溶解材料とを混合し、更に必要に応じて着色剤および各種添加剤を加えた電解液を、第1基板10の孔(図示せず)から第1基板10と第2基板20との間の空間に注入し、加熱する。これにより、電解質と析出溶解材料とを含む表示層30を形成する。なお、このとき、上述した高分子材料として、アクリル基など重合性の官能基を結合させたものを用いた場合には、活性エネルギー線あるいは熱などにより電解液をゲル化させて電解質を形成することもできる。
また、封止フィルム14を作製する。封止フィルム14は、例えば、上述した材料よりなる高いガスバリア性を有する薄膜の上に両面接着フィルムを重ね、この上に上述した材料よりなるカバーフィルムを載せ、例えばロールラミネータを用いたラミネータ法で貼り合わせることにより形成することができる。ロールラミネータの条件は、例えば次のように設定することができる。
ローラー(上・下)温度:140℃
線圧 :3.3kg/cm
ラミネート速度 :0.5m/分
この封止フィルム14を、使用前にカバーフィルムを剥離して第1基板10の全面に重ね、例えば140℃,0.2MPa,4秒間の条件でヒートプレスして接着する。以上により、図1に示した表示装置が完成する。
この表示装置では、第1電極12と第2電極22との間に所定の電圧が印加されると、これら第1電極12と第2電極22との間に存在する表示層30中の金属イオンが第2電極22に移動し、第2電極22において金属イオンが還元されて第2電極22に金属が析出し、書き込みが行われる。析出した金属は第2基板20の基材21を通して画像として認識される。一方、第1電極12と第2電極22との間に所定の逆電圧が印加されると、第2電極22に析出した金属が酸化されて表示層30に金属イオンとなって溶解し、消去が行われる。
このように本実施の形態では、第1電極12の間の電極間領域11Bに、樹脂よりなる被覆層13を形成するようにしたので、第1電極12の側面が被覆層13により保護され、第1電極12のサイドエッチングを防止し、表示装置の性能を向上させることができる。更に、被覆層13により第1電極12を基材11に強固に固定することができるので、第1電極12の剥離を抑制することができ、特にフィルム状の基材11やプラスチックなど柔軟性のある基材11を使う場合に好適である。
また、本実施の形態では、洗浄により第1電極12の上面を露出させるようにしたので、アライナーなどの特別な装置あるいはフォトマスクを用いた精密な作業を必要とせず、どのような形状の第1電極12に対しても、第1電極12の間の電極間領域11Bに被覆層13を容易に形成すると共に第1電極12の上面を十分に露出させることができる。
特に、本実施の形態では、被覆層13を水溶性の樹脂により構成するようにしたので、第1基板10の表示層30に対する耐性を高めることができ、有機溶媒を含む表示層30に直接触れても、有機溶媒の基材11への浸透あるいは基材11からの不純物の溶出を防ぐことができる。よって、ガラスエポキシ樹脂のような有機溶媒への耐性が乏しい基材11を採用することができ、基材11の材料の選択範囲が広がり、低コストで高性能な第1基板10を実現することができる。また、第1電極12を基材11に固定する接着剤に有機溶媒が浸透するのを防ぎ、接着剤の溶解または膨潤による第1電極12の剥離を抑制することができる。
また、特に、本実施の形態では、被覆層13をポリビニルアルコールを含む樹脂により構成するようにしたので、水を溶媒として用いることができ、環境負荷が少なく製造コストが低減され、しかも量産化に適している。
加えて、特に、本実施の形態では、被覆層13を、基材11の周縁部11Aにも形成するようにしたので、封止部材40と基材11との親和性を高め、封止部材40の封止性能を良くすることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
〔実施例1−1〕(低重合度、ガラス電極基板、平坦化率大)
<第1基板の作製>
図1および図3に示した第1基板10を作製した。このとき、被覆層13を、低重合度の樹脂により構成した。
具体的に、まず、88mol%に部分ケン化したポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセノール・GL−05(商品名・品番)」;平均重合度500)・12.5gを蒸留水20gに溶解し、万年筆用の赤色水性インク(パイロット社製)を数滴、添加し、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ、45,000mPa・s(回転数0.5rpm,25℃)であった。
また、第1電極12が形成されたガラスよりなる基材11を用意した。第1電極12は、基材11の片側全面に厚さ12μmの銅(Cu)層をめっきにより形成したのち所定の形状にパターニングし、その上に、厚さ5μmのニッケル(Ni)層、厚さ0.1μmの金(Au)層および厚さ3μmの銀(Ag)層をこの順にめっきにより形成したものである。第1電極12の幅は200μm、間隔は300μm、高さは45μmとした。すなわち、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1は、45μmとした。
続いて、調製した樹脂溶液を、シリコンゴム製のヘラ(厚さ5mm)で、第1電極12が形成された基材11に塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ100℃で5分間加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、スライドガラスにガーゼ(旭化成社製「ベンコット(商品名)」)を巻き、メタノール/水=1/1混合液を含浸させたものを使って、第1電極12の延長方向に基材11の表面を拭き、第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。倍率50倍の顕微鏡で表面を観察し、着色ポリビニルアルコール水溶液の赤色が第1電極12の上面に見えなくなることで第1電極12の露出を確認した。
続いて、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE−903(品番)」)/蒸留水=5/1(重量比)混合液を、基材11表面に噴霧器で吹きつけた。これをオーブンに入れ、100℃で30分間、加熱することにより、被覆層13を硬化させた。そののち、流水中でスポンジを使って表面を軽く拭い、第1電極12上の樹脂残渣を洗い落とした。これにより、図1に示した第1基板10を得た。
得られた第1基板10の段差を接触式段差計で測定し、平坦化率を求めたところ、89%であった。なお、この値は、実施の形態で説明したようにして求めた。具体的には、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1(45μm)から、被覆層13の上面の最も低い部分(湾曲底部)と基材11の表面との段差S2(5μm)を差し引き、得られた値を、第1電極12の上面と基材11の表面との段差S1で割り、得られた値に更に100を乗じた。
<耐溶剤試験>
得られた第1基板10について、電解液として用いる有機溶媒に対する耐性を調べた。具体的には、ステンレス容器にγ−ブチロラクトンを注ぎ、第1基板10を完全に浸した。アルミホイルで蓋をしてオーブンに入れ、100℃で加熱した。4時間後、第1基板10を取り出してエタノールでよく洗い、エアガンを使って乾燥した。第1基板10の重量変化を測定したところ、+0.9%であった。また、第1基板10の表面を目視で確認したところ、第1電極12の剥離および被覆層13の溶解は見られなかった。
〔実施例1−2〕
γ−ブチロラクトンの代わりにジメチルスルホキシドを用いたことを除いては実施例1−1と同様にして耐溶剤試験を行い、第1基板10の重量変化を測定したところ、+2.8%であった。また、第1基板10の表面を目視で確認したところ、第1電極12と基材11との接触部付近で一部、白濁が生じたものの、被覆層13の溶解は見られなかった。
〔実施例1−3〕
<空セルの作製>
実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。得られた第1基板10の周縁部11Aに、封止部材40として、外形30mm×40mm、幅5mmに打ち抜いた3層接着フィルム(55μm厚、愛知プラスチックス社製)を重ねた。また、外形40mm×30mmの基材21にITOよりなる幅250μm、間隔250μmの第2電極22が形成された第2基板20を用意した。この第2基板20を、封止部材40が配設された第1基板10の上に、第1電極12と第2電極22とが直交するように載せ、140℃、0.2MPa、3秒間の条件でヒートプレスした。これにより、表示層30を有しないことを除いては図1に示した表示装置と同様の構成を有する空セルを作製した。
<接着性試験>
得られた空セルを、実施例1−1と同様にして、γ−ブチロラクトンを注いだステンレス容器に浸し、上から重りを乗せて完全に浸した。アルミホイルで容器の蓋をしてオーブンに入れ、100℃で加熱した。4時間後、空セルを取り出してエタノールで洗い、エアガンでエタノールを吹き飛ばした。また、空セルを目視で観察したところ、封止部材40の剥離はまったく確認されなかった。
〔実施例1−4〕
<サイドエッチング試験用の表示装置の作製>
実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。得られた第1基板10の周縁部11Aに、実施例1−3と同様の封止部材40を重ねた。
また、表示層30を形成するための電解液を調製した。具体的には、まず、下記の成分を各配合量で溶媒としてのγ−ブチロラクトンに溶解した。
よう化銀:500mmol/l
よう化ナトリウム:750mmol/l
トリエタノールアミン:67mmol/l
クマリン:5g/l
次に、これに5分の1重量の樹脂液(第一工業製薬(株)製「TA−140(品番)」)を混合した。続いて、白色顔料として、この溶液と等重量の酸化チタン(チタン工業(株)製「JR−805(品番)」を加え、ホモジナイザで分散した。この顔料分散液をデシケータ中に入れて油拡散ポンプで減圧し、顔料分散液から泡が出なくなったところで解圧した。そののち、これに有機化酸化物(日本油脂(株)製「パーオクタO(商品名)」)を樹脂液の2wt%添加し、気泡が入らないように軽く撹拌して電解液を得た。
続いて、実施例1−3と同様にして空セルを作製した。その際、第1基板10には、封止部材40で囲まれた領域内の対角周辺部の2箇所に、直径1mmの孔を設けたものを用いた。得られた空セルについて、第1基板10の一方の孔から注射器を使って、他方の孔から電解液が溢れるまで加圧注入を行った。そののち、エタノールを染み込ませた布で孔の上の電解液を拭き取り、それぞれの孔をセロテープで仮封止し、オーブン中、100℃で10分間、加熱することにより電解液をゲル化させ、電解質と析出溶解材料とを含む表示層30を形成した。続いて、セロテープを剥離し、基材11の裏側全面に封止フィルム14を載せ、140℃、0.2MPa、3秒間の条件でヒートプレスした。これにより、図1に示した表示装置を作製した。
<サイドエッチング試験>
得られた表示装置について、駆動用の電極配線を行い、書き込み、保持、消去および保持を1サイクルとしてそれぞれ下記の駆動条件で行い、10,000サイクルの繰り返し応答を行った。
駆動条件
書込条件:−2.0V,0.10秒、
保持条件: 0.0V,12.00秒、
消去条件:+2.8V,0.12秒、
保持条件: 0.0V,12.00秒
を1サイクルとした。
そののち、表示装置を分解し、第1基板10をエタノールで洗浄したのち、顕微鏡で第1電極12の表面を観察したところ、第1電極12の上部に、銀の析出・溶解に伴う凹凸が生じていた他は、変化が見られなかった。
〔比較例1−1〕
<耐溶剤試験>
実施例1−1で用いたのと同一の第1電極が形成された基材を、被覆層を形成せずに、実施例1−1と同様にして耐溶剤試験に付した。基材の表面を目視で確認したところ、半分以上の本数の第1電極に部分的な剥離が見られた。
〔比較例1−2〕
γ−ブチロラクトンの代わりにジメチルスルホキシドを用いたことを除いては比較例1−1と同様にして耐溶剤試験を行い、基材の表面を目視で確認したところ、比較例1−1と同様の結果が得られた。
〔比較例1−3〕
<接着性試験>
実施例1−1で用いたのと同一の第1電極が形成された基材を用意し、被覆層を形成せずに、実施例1−3と同様にして空セルを作製した。この空セルについて、実施例1−3と同様にして耐溶剤性試験に付したところ、封止部材と基材との間に剥離を生じ、試験中に空セルが分解した。
〔比較例1−4〕
<サイドエッチング試験>
実施例1−1で用いたのと同一の第1電極が形成された基材を用意し、被覆層を形成せずに、実施例1−4と同様にして表示装置を作製した。得られた表示装置について、駆動用の電極配線を行い、実施例1−4と同様にして10,000サイクルの繰り返し応答を行った。表示装置を分解し、基材をエタノールで洗浄した後、顕微鏡で第1電極の表面を観察したところ、第1電極の上部に銀の析出・溶解に伴う凹凸が生じていたのに加え、第1電極と基材との接触部付近を中心に深い侵食が起こり、内部の銅が露出しているのが見られた。
実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−4から分かるように、被覆層13を設けた実施例1−1〜1−4では、被覆層13を設けなかった比較例1−1〜1−4に比べて、有機溶媒に対する耐性、封止部材の接着性およびサイドエッチングに対する耐性のいずれも高かった。すなわち、被覆層13を設けることにより、第1電極12の腐食および剥離を防止することができることが分かった。
〔実施例2〕(中重合度、ガラス電極基板)
<第1基板の作製>
被覆層13を、中重合度の樹脂により構成したことを除いては、実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。
まず、80mol%に部分ケン化したポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセノール・KH−20(商品名・品番)」;平均重合度2,000)・2gを蒸留水20gに溶解し、万年筆用の赤色水性インク(パイロット社製)を数滴、添加し、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ、1,600mPa・s(回転数0.5rpm,25℃)であった。
実施例1−1と同様の第1電極12が形成されたガラスよりなる基材11を用意し、調整した樹脂溶液を、スピンコート法(回転数:2,000rpm,25℃・20秒間、3,000rpm,25℃・20秒間)により、基材11に塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ、100℃で5分間、加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、メタノールのスプレーを基材11の表面に当てて第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。倍率50倍の顕微鏡で表面を観察し、着色ポリビニルアルコール水溶液の赤色が第1電極12の上面に見えなくなることで第1電極12の露出を確認した。
続いて、実施例1−1と同様にして被覆層13を硬化させ、図1に示した第1基板10を得た。得られた第1基板10の段差を接触式段差計で測定し、実施例1−1と同様にして平坦化率を求めたところ、60%であった。
以上の実施例2および実施例1−1から分かるように、樹脂の重合度を低くするほど平坦化率を高めることができた。
〔実施例3〕(低重合度、ガラス電極基板、カルボジイミド架橋)
<第1基板の作製>
使用した架橋剤が異なることを除いては、実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。
まず、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を調製し、この樹脂溶液に、架橋剤としてカルボジイミド系樹脂(日清紡社製「カルボジライトV−02(商品名・品番)」)・2gを混合した。
実施例1−1と同様の第1電極12が形成されたガラスよりなる基材11を用意し、調製した樹脂溶液を、シリコンゴム製のヘラ(厚さ5mm)で塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ、100℃で10分間、加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、実施例1−1と同様にして第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。
これをオーブンに入れ、150℃で30分間、加熱することにより、被覆層13を硬化させた。そののち、流水中でスポンジを使って表面を軽く拭い、第1電極12上の樹脂残渣を洗い落とした。これにより、図1に示した第1基板10を得た。得られた第1基板10の段差を接触式段差計で測定し、実施例1−1と同様にして平坦化率を求めたところ、90%であった。
以上の実施例3および実施例1−1から分かるように、樹脂の重合度が同じであれば架橋剤が異なっても平坦化率は略同じになった。
〔実施例4〕(高重合度+タルク)充填剤入り
<第1基板の作製>
被覆層13を高重合度の樹脂により構成したこと、および被覆層13が充填剤を含むことを除き、実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。
まず、87mol%に部分ケン化したポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセノール・GH−23(商品名・品番)」;平均重合度2300)・1gを蒸留水20gに溶解し、万年筆用の赤色水性インク(パイロット社製)を数滴、添加し、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ、71mPa・s(回転数10rpm,25℃)であった。
この樹脂溶液に、充填剤として、シリカ(日本シリカ工業社製「Nipgel・AZ−200(商品名・品番)」)・2gを加え、ホモジナイザで分散した。減圧脱泡した後、樹脂溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ、640mPa・s(回転数0.5rpm,25℃)であった。
実施例1−1と同様の第1電極12が形成されたガラスよりなる基材11を用意し、調整した樹脂溶液を、シリコンゴム製のヘラ(厚さ5mm)で塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ、100℃で5分間、加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、実施例1−1と同様にして第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。
続いて、シランカップリング剤としてN−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製「KBE−603(品番)」)/蒸留水=1/1(重量比)混合液を、基材11表面に噴霧器で吹きつけた。これをオーブンに入れ、100℃で30分間、加熱することにより、被覆層13を硬化させた。そののち、流水中でスポンジを使って表面を軽く拭い、第1電極12上の樹脂残渣を洗い落とした。これにより、図1に示した第1基板10を得た。得られた第1基板10の段差を接触式段差計で測定し、実施例1−1と同様にして平坦化率を求めたところ、73%であった。
以上の実施例4および実施例1−1から分かるように、樹脂の重合度を高くしても、充填剤を含むことにより平坦化率を高めることができた。
〔実施例5〕(中重合度、ガラエポ基板)
<第1基板の作製>
被覆層13を、実施例1−1よりも重合度のやや高い、中程度の重合度の樹脂により構成したこと、およびガラスエポキシ樹脂よりなる基材11を用いたことを除き、実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。
まず、80mol%に部分ケン化したポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製「ゴーセノール・KH−20(商品名・品番)」;平均重合度2,000)・4gを蒸留水20gに溶解し、万年筆用の赤色水性インク(パイロット社製)を数滴、添加し、樹脂溶液を調製した。この樹脂溶液の粘度を回転粘度計で測定したところ、23,000mPa・s(回転数0.5rpm,25℃)であった。
また、銀よりなる第1電極12が形成されたガラスエポキシ樹脂よりなる70mm×90mmの基材11を用意した。この基材11に、調製した樹脂溶液を、シリコンゴム製のヘラ(厚さ5mm)で塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ、100℃で5分間、加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、スライドガラスにガーゼ(旭化成社製「ベンコット(商品名)」)を巻き、メタノール/水=3/1混合液を含浸させたものを使って、第1電極12の延長方向に基材11の表面を拭き、第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。倍率50倍の顕微鏡で表面を観察し、着色ポリビニルアルコール水溶液の赤色が第1電極12の上面に見えなくなることで第1電極12の露出を確認した。
続いて、実施例1−1と同様にして被覆層13を硬化させ、図1に示した第1基板10を得た。
<空セルの作製>
得られた第1基板10をよく乾燥させたのち、第1基板10の周縁部11Aに、封止部材40として、外形70mm×90mm、幅5mmに打ち抜いた3層接着フィルム(55μm厚、愛知プラスチックス社製)を重ねた。また、外形90mm×90mmのガラスよりなる基材21にITOよりなる第2電極22が形成された第2基板20を用意した。この第2基板20を、封止部材40が配設された第1基板10の上に、第1電極12と第2電極22とが直交するように載せ、140℃,0.2MPa,5秒間の条件でヒートプレスした。
<ゲル化試験>
続いて、実施例1−4と同様の電解液を調製し、この電解液を、第1基板10の一方の孔から注射器を使って、他方の孔から電解液が溢れるまで加圧注入を行った。そののち、エタノールを染み込ませた布で孔の上の電解液を拭き取り、孔をセロテープで仮封止し、ゲル化試験用の表示セルを作製した。このゲル化試験用の表示セルをオーブンに入れ、100℃で10分間、加熱した。これにより、電解液がゲル化し、電解質と析出溶解材料とを含む表示層30が形成された。
〔比較例5〕
<ゲル化試験>
被覆層を形成しないことを除いては実施例5で用いたのと同一の第1基板を用いて、実施例5と同様にして空セルを作製した。この空セルについて、実施例5と同様にして電解液を注入して仮封止し、ゲル化試験用の表示セルを作製した。得られたゲル化試験用の表示セルをオーブンに入れて、100℃で10分間、加熱したが電解液のゲル化は起こらなかった。更に10分間、加熱を続けたところ、ゲル化はまったく起こらず、電解液が部分的に黄ないし橙色に変色した。室温で一晩放置したところ、セル周縁部の封止部材の一部が第1基板から剥離し、電解液が沁み出していた。セルを分解したところ、電解液がガラスエポキシ樹脂よりなる基材に含浸して膨潤し、第1電極の一部が基材から剥離していた。
以上の実施例5および比較例5から分かるように、被覆層13を設けることにより表示層30のゲル化を良好に行うことができた。
〔実施例6〕(低重合度、フィルム基板、ペンディング試験)
可とう性を有するフィルム状の基材11を用いたことを除き、実施例1−1と同様にして第1基板10を作製した。
まず、実施例1−1と同様にして樹脂溶液を調製した。
また、第1電極12が形成された基材11を用意した。その際、基材11としては透明プラスチック(日本ゼオン社製「ゼオノア(登録商標)」)を用い、第1電極12は、基材11にスパッタ法によりニッケル(Ni)を成膜したのち、めっき法により銅(Cu)を付着させ、所定の形状にパターニングし、更にその上からニッケル(Ni),金(Au)および銀(Ag)を順に形成することにより形成した。第1電極12の幅は125μm、間隔は125μm、高さは30μmとした。
続いて、調製した樹脂溶液を、シリコンゴム製のヘラ(厚さ5mm)で、第1電極12が形成された基材11に塗布し、被覆層13を形成した(図3(A)参照)。これをオーブンに入れ、100℃で5分間、加熱乾燥し、仮硬化させた。
そののち、実施例1−1と同様にして第1電極12の上面を露出させた(図3(B)参照)。
続いて、シランカップリング剤としてγ−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業社製「KBE−903(品番)」)/蒸留水=5/1(重量比)混合液を、基材11表面に噴霧器で吹きつけた。これをオーブンに入れ、100℃で30分間、加熱することにより、被覆層13を硬化させた。そののち、流水中でスポンジを使って表面を軽く拭い、第1電極12上の樹脂残渣を洗い落とした。これにより、図1に示した第1基板10を得た。得られた第1基板10の段差を接触式段差計で測定し、実施例1−1と同様にして平坦化率を求めたところ、65%であった。
<サイドエッチング試験>
第1基板10の周縁部11Aに、封止部材40として、外形16mm×43mm、幅3mmに打ち抜いた3層接着フィルム(100μm厚、愛知プラスチックス社製)を重ねた。この上に、23mm×38mmの透明プラスチックよりなる基材21にITOよりなる第2電極22を形成した第2基板20(日本ゼオン社製「ゼオノア(登録商標)」)を、第1電極12と第2電極22とが直交するように載せ、140℃,0.2MPa,5秒間の条件でヒートプレスした。
続いて、実施例1−4と同様の電解液を調製し、この電解液を、第1基板10の一方の孔から注射器を使って、他方の孔から電解液が溢れるまで加圧注入を行った。そののち、エタノールを染み込ませた布で孔の上の電解液を拭き取り、孔をセロテープで仮封止した。これをオーブンに入れ、100℃で10分間、加熱した。これにより、電解液がゲル化し、電解質と析出溶解材料とを含む表示層30が形成された。仮封止用のセロテープを剥離した後、封止フィルム14を、第1基板10の全面に重ね、140℃,0.2MPa,4秒間の条件でヒートプレスして接着し、図1に示した表示装置を得た。
得られた表示装置について、駆動用の電極配線を行い、実施例1−4と同様にして10,000サイクルの繰り返し応答を行った。そののち、表示装置を分解して第1基板10を目視で観察したところ、第1電極12のサイドエッチングや、あるいは第1基板12と基材11との間に電解液が浸透することによる第1電極12の剥離は、まったく発生していなかった。
<ペンディング試験>
得られた第1基板10について、長辺山曲げ、長辺谷曲げ、短辺山曲げおよび短辺谷曲げを1サイクルとし、長辺方向20mm、短辺方向10mm、たわみ速度1回/2秒間で曲げを行い、250サイクルごとに第1電極12の剥離を観察した。1,000サイクルの曲げを繰り返した後、第1電極12を観察したところ、第1電極12の剥離は一つも無かった。
〔比較例6〕
<ペンディング試験>
実施例6で用いたのと同一の第1電極が形成された基材を、被覆層を形成せずに用い、実施例6と同様にして表示装置を作製した。得られた表示装置について、実施例6と同様にしてペンディング試験に付した。この結果、500サイクルの曲げの後で第1電極の剥離が発生した。
以上の実施例6および比較例6から分かるように、フィルム状の基材を用いた場合、被覆層を設けることにより第1電極を基材に強固に固定し、サイドエッチングおよび剥離を抑制することができた。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例においては、基材11の全面に被覆層13を形成した場合について説明したが、被覆層13は、必ずしも全面に形成する必要はなく、図4において斜線を施した領域として示したように、少なくとも第1電極12を覆うように形成すればよい。すなわち、基材11の周縁部11Aには必ずしも被覆層13を設けなくてもよい。
この場合には、被覆層13の形成を望まない部分、例えば基板11の周縁部11Aを、保護フィルム、撥水性塗料あるいはグリス等でマスクしたのちに、被覆層13を基材11の全面に塗布して仮硬化させ、マスクと共に周縁部11Aの被覆層13を剥離するという方法が可能である。
基材11の周縁部11Aに被覆層13を設けない場合には、基材11の周縁部11Aに封止部材40の接着性を高める適切な処理を行うようにしてもよい。
また、例えば、上記実施の形態における第2基板20において、ITOよりなる第2電極22の間の電極間領域に被覆層13を形成するようにしてもよい。
また、例えば、上記実施の形態および上記実施例においては、表示層30がいわゆるゲル状の電解質と析出溶解材料とを含む場合について説明したが、表示層30は、溶媒と析出溶解材料とを含む液状の状態であってもよい。
更に、例えば、上記実施の形態および上記実施例において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
加えて、上記実施の形態では、第1電極12と第2電極22とが互いに直交する複数のストライプ状に形成された単純マトリクス型の表示装置について説明したが、第1電極12が基材11にマトリクス状に配置されており、第2電極22が共通電極として形成されたアクティブマトリクス型の場合にも本発明を適用することができる。
更にまた、上記実施の形態では、基板および表示装置の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。
本発明による基板およびその製造方法は、上面を露出させるべき電極と基材とによる凹凸を有するものであれば、どのような基板に対しても適用可能である。
また、上記実施の形態では、本発明をエレクトロデポジション型の表示装置に適用した場合について説明したが、本発明は、表示層が酸化還元反応により変色する変色材料を含むエレクトロクロミック型の表示装置にも適用可能であり、同様の優れた効果を得ることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る基板を有する表示装置の構成を表す分解斜視図である。 図1に示した表示装置のII−II線に沿った断面図である。 図1に示した表示装置の製造方法を工程順に表す断面図である。 図1に示した表示装置の変形例を表す平面図である。
符号の説明
10…第1基板、11…基材、11A…周縁部、11B…電極間領域、12…第1電極、13…被覆層、14…封止フィルム、20…第2基板、21…基材、22…第2電極、23A,23B…注入孔、30…表示層、40…封止部材

Claims (9)

  1. 第1基板および第2基板の間に、溶媒としてγ−ブチロラクトンを含む電解質と、酸化還元により析出および溶解する析出溶解材料とを含む表示層を有すると共に、前記第1基板の周縁部に封止部材を備え、
    前記第1基板および第2基板のうち少なくとも一方が、
    表面が貴金属でめっきされた複数の電極が形成された、ガラスエポキシ樹脂または可とう性を有するフィルム状の透明プラスチックよりなる基材と、
    前記複数の電極の間の領域および前記複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に形成された、水溶性の樹脂よりなる被覆層と
    を備え、前記複数の電極の上面は前記被覆層に覆われず前記表示層に直接接触している表示装置。
  2. 前記被覆層は、ポリビニルアルコールを含む樹脂により構成されている
    請求項1記載の表示装置。
  3. 前記被覆層は、水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂を含む樹脂により構成されている
    請求項1記載の表示装置。
  4. 前記被覆層は、更に、前記基材の周縁部に、前記基材と前記封止部材との間に形成されている
    請求項1記載の表示装置。
  5. 第1基板の周縁部に封止部材を配設し、前記第1基板と第2基板とを重ね合わせて前記封止部材により接着し、前記第1基板と前記第2基板との間に、電解質と、酸化還元により析出および溶解する析出溶解材料とを含む表示層を形成する表示装置の製造方法であって、
    前記第1基板および第2基板のうち少なくとも一方を形成する工程が、
    水溶性の樹脂を水に溶解して樹脂溶液を調製する工程と、
    表面が貴金属でめっきされた複数の電極が形成された、樹脂よりなる基材に、前記複数の電極の全体を覆うように前記樹脂溶液を塗布し、被覆層を形成する工程と、
    加熱または減圧により前記被覆層を仮硬化させる工程と、
    洗浄により前記複数の電極の上面を露出させると共に前記複数の電極の間の領域および前記複数の電極のうち両端に位置する電極の側面に前記被覆層を形成する工程と
    を含み、前記複数の電極の上面を前記表示層に直接接触させる
    表示装置の製造方法。
  6. 前記被覆層を、ポリビニルアルコールを含む樹脂により構成する
    請求項5記載の表示装置の製造方法。
  7. 前記被覆層を、水性アクリル樹脂またはアミノ樹脂を含む樹脂により構成する
    請求項5記載の表示装置の製造方法。
  8. 前記複数の電極の間の領域に前記被覆層を形成する工程ののち、前記被覆層を架橋剤で架橋させることにより硬化させる工程を含む
    請求項5記載の表示装置の製造方法。
  9. 前記樹脂を水に溶解する際に水溶性の有機溶媒を添加し、
    前記架橋剤として水または水溶性の有機溶媒に溶解するシランカップリング剤を用いる
    請求項8記載の表示装置の製造方法。
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