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JP4535530B2 - 3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法 - Google Patents

3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法に関する。
3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物は、例えば一般に広く用いられている経口用抗生剤セフチブテン(最新抗生物質要覧第9版、酒井克治著、第85頁、1994)等の広範囲な抗菌スペクトルを有する有用な抗菌剤の重要な合成中間体である。
【0002】
【従来の技術】
式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法としては、3−ヒドロキシ−3−セフェム誘導体に対して、スルホニルハライドやスルホン酸無水物を有機塩基の存在下で反応させて3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物に導く方法が一般的である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、J. Org. Chem.,54, 4962(1989)に記載の如く、Rがメチル基又はトリフルオロメチル基である式(2)のスルホニルハライドを用いた場合、しばしば二重結合の異性体であるΔ2−セフェム化合物が多量に副生する(参考例1参照)。
Δ2−セフェム化合物の副生を抑えるためには、極低温で反応を行ったり、ヒュウニッヒ塩基のような特殊な有機塩基を用いて反応を行わなければならない。また、Rがp−トリル基の場合、Chemistry and Biology of β-Lactam Antibiotics, 164(1982)に記載の如く、有機塩基として塩基性の比較的緩い芳香族塩基であるピリジンを用いて反応を行っているが、この場合でさえΔ3−セフェム化合物とΔ2−セフェム化合物との混合物となってしまう。
【0004】
また、Pure & Appl. Chem., 59,1041(1987)には、反応溶媒にジメチルホルムアミドを用い、上記と同様に有機塩基を用いるメタンスルホニル化反応が記載されている。しかしながら、該文献記載の方法では、0〜5℃でΔ2−セフェム化合物が約10%副生し、また−30℃付近でさえΔ2−セフェム化合物が約4%副生する(参考例2及び3参照)。
【0005】
Δ2−セフェム化合物が副生することは、セファロスポリンの活性母核であるΔ3−セフェム化合物の純度及び収率の低下につながり、精製工程に大きな負荷がかかることになる。有機塩基を用いる反応では、最初から塩基がすべて反応溶媒に溶解している状態となり、塩基によるC2位の水素原子の脱離反応による二重結合の異性化が進行し、Δ2−セフェム化合物が副生し易い。そのため、本反応の工業化に大きな問題を残している。
【0006】
本発明の課題は、Δ2−セフェム化合物の副生の問題を回避し、高純度、高収率で3−スルホニルオキシ−Δ3−セフェム化合物をより簡便で、実用性の高い方法で製造することの可能な製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、式(1)で表される3−ヒドロキシ−3−セフェム化合物を有機溶媒中アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下、式(2)で表されるスルホン酸ハライド化合物と反応させることを特徴とする式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法に係る。
【0008】
【化4】
Figure 0004535530
【0009】
[式中、R フェニルアセトアミド基又は基Ar−CH=N−(Arは置換基として低級アルコキシ基を有す リール基)を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アシル基、保護された水酸基又は保護された水酸基を置換基として有することのある低級アルキル基を示す。Rは水素原子又はカルボン酸保護基を示す。]
【0010】
【化5】
Figure 0004535530
(式中、Rは置換基を有することのある低級アルキル基又は置換基を有することのあるアリール基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)
【0011】
【化6】
Figure 0004535530
(式中、R〜Rは上記と同じ。)
【0012】
本発明者等は、3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造法を開発するにあたり、二重結合の異性化が起こりやすい有機塩基を採用せず、アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩の無機塩基を用いた工業化の可能な穏和な反応条件下で反応が行える反応系を見いだし、本発明の完成に至った。
本発明によれば、式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物を、殆どΔ2−セフェム化合物を副生させることなく、高純度で且つ高収率で製造することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本明細書において示される各基は、具体的には以下の通りである。尚、本明細書において特に断らない限りは、ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、低級アルキル基とは、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の直鎖又は分枝状の炭素数1〜4のアルキル基を意味する。又、アリール基とは、例えば、フェニル基、ナフチル基等を意味する。
【0014】
で示される保護されたアミノ基としては、Protective Groups in Organic Synthesis, Theodora W. Greene著、1981年(以下、単に「文献」という)の第7章(第218〜287頁)に記載されている各種の基の他、フェノキシアセトアミド、p−メチルフェノキシアセトアミド、p−メトキシフェノキシアセトアミド、p−クロロフェノキシアセトアミド、p−ブロモフェノキシアセトアミド、フェニルアセトアミド、p−メチルフェニルアセトアミド、p−メトキシフェニルアセトアミド、p−クロロフェニルアセトアミド、p−ブロモフェニルアセトアミド、フェニルモノクロロアセトアミド、フェニルジクロロアセトアミド、フェニルヒドロキシアセトアミド、フェニルアセトキシアセトアミド、α−オキソフェニルアセトアミド、チエニルアセトアミド、ベンズアミド、p−メチルベンズアミド、p−tert−ブチルベンズアミド、p−メトキシベンズアミド、p−クロロベンズアミド、p−ブロモベンズアミド、フェニルグリシルアミドやアミノ基の保護されたフェニルグリシルアミド、p−ヒドロキシフェニルグリシルアミドやアミノ基及び水酸基の一方又は両方が保護されたp−ヒドロキシフェニルグリシルアミド等のアミド類、フタルイミド、ニトロフタルイミド等のイミド類を例示できる。フェニルグリシルアミド及びp−ヒドロキシフェニルグリシルアミドのアミノ基の保護基としては、上記文献の第7章(第218〜287頁)に記載されている各種基を例示できる。又、p−ヒドロキシフェニルグリシルアミドの水酸基の保護基としては上記文献の第2章(第10〜72頁)に記載されている各種基を例示できる。
【0015】
で示される低級アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなどの直鎖又は分枝状の炭素数1〜4のアルコキシ基を例示できる。
【0016】
で示される低級アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルなどの直鎖又は分枝状の炭素数1〜4のアシル基を例示できる。
【0017】
で示される水酸基又は保護された水酸基を置換基として有する低級アルキル基の保護された水酸基、及びRで示される保護された水酸基の保護基としては、上記文献の第2章(第10〜72頁)に記載されている基を例示できる。
【0018】
で示される上記置換低級アルキル基は、水酸基又は上記で示される保護された水酸基の中から選ばれる同一又は異なる種類の置換基で、同一又は異なる炭素上に1つ以上置換されていてもよい。
【0019】
で示されるカルボン酸保護基としては、上記文献の第5章(第152〜192頁)に示されている各種基の他、アリル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、p−ニトロベンジル基、ジフェニルメチル基、トリクロロメチル基、トリクロロエチル基、tert−ブチル基等を例示できる。
【0020】
Arで表される置換基を有することのあるアリール基並びにRで表される置換基を有することのある低級アルキル基またはアリール基に置換していてもよい置換基の種類としては、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アリール基、低級アルキル基、モノ低級アルキルアミノ基、ジ低級アルキルアミノ基、メルカプト基、基RS−(Rは低級アルキル基又はアリール基)で表されるアルキルチオ基又はアリールチオ基、ホルミルオキシ基、基RCOO−(Rは前記に同じ)で表されるアシルオキシ基、ホルミル基、基RCO−(Rは前記に同じ)で表されるアシル基、基RO−(Rは前記に同じ)で表されるアルコキシ基又はアリールオキシ基、カルボキシル基、基ROCO−(Rは前記に同じ)で表されるアルコキシカルボニル基又はアリールオキシカルボニル基などが例示でき、Rにおける低級アルキル基またはアリール基は、上記置換基から選ばれる同一又は異なる種類の置換基で、同一又は異なる炭素上に1つ以上置換されていてもよい。
【0021】
本発明の出発原料として用いられる式(1)で表される3−ヒドロキシ−3−セフェム化合物は、例えばケミストリーレターズ,1867(1990)に記載の方法で製造することができる。
【0022】
本発明では、式(1)で表される3−ヒドロキシ−3−セフェム化合物をアルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下、式(2)で表されるスルホン酸ハライド化合物と反応させることで、式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物を製造することができる。
【0023】
アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等が挙げられる。これら炭酸塩の形状としては特に制限はなく、粉状、塊状等の広範囲から適宜選択出来るが、より好ましくは粉状のものを使用するのが良い。粉状のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩の粒子径は、広い範囲から適宜選択できるが、10〜500メッシュ程度のものを使用するのが望ましい。これらアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の使用量は、式(1)の化合物に対して、通常0.1〜50倍モル量程度、好ましくは 0.5〜10倍モル量程度とするのが良い。
【0024】
式(2)で表されるスルホン酸ハライド化合物としては、具体的にはメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド等が挙げられ、式(1)の化合物に対して、通常0.1〜50倍モル量程度、好ましくは1〜10倍モル量程度とするのが良い。
【0025】
本発明の反応は、アミド系溶媒又は環状エーテル系溶媒の単独もしくは混合溶媒中か、或いはこれら溶媒と他の有機溶媒とを組み合わせた溶媒中で行われるのが好ましい。使用できるアミド系溶媒または環状エーテル系溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド類、N−メチルピロリジノン(NMP)等の環状アミド類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジオキソラン等の環状エーテル類が挙げられる。
【0026】
また上記溶媒に組み合わせて使用可能な有機溶媒としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の低級アルキルカルボン酸の低級アルキルエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、アニソール等の置換もしくは無置換の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン(MDC)、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジブロモエタン、プロピレンジクロライド、四塩化炭素、フロン類等のハロゲン化炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のシクロアルカン類を挙げることができる。
【0027】
好ましい溶媒の組み合わせとしては、DMF/THF、DMF/酢酸エチル、DMF/MDC、DMF/トルエン、DMF/アセトン、DMF/エーテル、DMF/アセトニトリル、THF/アセトン、THF/アセトニトリル、NMP/トルエン、NMP/MDC、NMP/アセトニトリル、DMA/トルエン、DMA/アセトン、DMA/アセトニトリル、DMA/MDC、DMF/アセトン/アセトニトリル、DMF/MDC/アセトニトリル等が挙げられる。
【0028】
本発明において使用される溶媒は、前記アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の炭酸塩の反応に必要な量を適宜溶解させることで反応系に供給されるよう調整することができる。
【0029】
これらの有機溶媒には、必要に応じて水が含有されていてもよい。これらの溶媒は、式(1)の化合物1kg当たり、通常2〜200L程度、好ましくは3〜100L程度使用されるのがよい。反応は−50〜100℃、好ましくは−35〜40℃の範囲で行なわれる。
【0030】
式(3)の化合物は、反応終了後、通常の抽出操作或いは晶析操作を行なうことによりほぼ純品として得ることができるが、その他の方法によっても勿論精製することができる。
【0031】
式(1)で表される3−ヒドロキシ−3−セフェム化合物を出発原料とし、アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下、スルホン酸ハライド化合物と反応させることにより、殆どΔ2−セフェム化合物を副生させることなく、式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物を高純度で且つ高収率で製造することができる。
【0032】
本発明により製造される式(3)の化合物を、例えば、Pure & Appl. Chem., 59,1041(1987)記載の方法により、経口用抗生剤セフチブテンに導くことができる。また、式(3)の化合物を、特願平11−247272号記載の方法により3−ビニル−3−セフェム化合物に導き、脱保護工程を経て、特公昭63−20435号公報に記載の方法によって、経口用抗生剤セフィキシム(最新抗生物質要覧第9版、酒井克治著、第83頁、1994)に導くことができるし、セフジニル(最新抗生物質要覧第9版、酒井克治著、第86頁、1994)に導くこともできる。
【0033】
本発明によれば、式(1)の化合物のR、R及びRの置換基は反応に関与せず、その種類に拘わらず反応が進行するため、有用な非天然型抗菌剤の中間体として利用できる式(3)の化合物を得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例及び参考例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0035】
実施例1
式(1)の化合物 (R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=ジフェニルメチル基)(1a)180g及び炭酸ナトリウム70gを秤取り、3〜5℃に冷却したN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)600mL及びメタンスルホニルクロリド52mLを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。反応液を塩化メチレン2L及び水2L中に注ぎ込み、抽出し、得られた有機層を水2Lで洗浄した後、減圧下溶媒を留去した。得られた残査に75%メタノール2Lを加えて結晶化させ、3〜5℃で1時間熟成後、濾別、乾燥して、式(3)の化合物(R〜R=上記に同じ、R=メチル基)(3a)195gを得た。収率:94%(Δ2−セフェム化合物含有率:0.2%)
1H NMR(300MHz,DMSO−d) δ3.17(s,3H),3.48(d,J=14Hz,1H),3.56(d,J=14Hz,1H), 3.74 (d,J=18Hz,1H),4.00(d,J=18Hz,1H),5.26(d,J=4.6Hz,1H),5.82(dd,J=4.6,8.2Hz,1H),6.92(s,1H),7.18−7.52(m,15H),9.23(d,J=8.2Hz,1H).
【0036】
参考例1
化合物(1a)90mgを−5℃のテトラヒドロフラン1mLに溶解させ、メタンスルホニルクロリド19μL及びトリエチルアミン67μLを加え、−5℃で1時間撹拌した。反応液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定した。尚、各生成物の生成量を外部標準法により求めた。その結果、反応液は化合物(1a)が8%残った状態で、化合物(3a)30mg(26%)とΔ2−セフェム化合物71mg(61%)の混合物であった。
【0037】
参考例2
化合物(1a)100mgを0〜5℃のDMF1mL溶解させ、メタンスルホニルクロリド21μL及びトリエチルアミン74μLを加え、0〜5℃で1時間撹拌した。反応液をHPLCで測定した結果、化合物(3a)91mg(82%)とΔ2−セフェム化合物11mg(10%)の混合物が得られた。
【0038】
参考例3
加えるDMFの温度及び反応温度を−30℃とした以外は、参考例2と同様に行った。反応液をHPLCで測定した結果、化合物(3a)98mg(88%)とΔ2−セフェム化合物4mg(4%)の混合物が得られた。
【0039】
実施例2
式(1)の化合物(R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=p−メトキシベンジル基)(1b)100mg及び炭酸ナトリウム43mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF0.4mL及びメタンスルホニルクロリド32μLを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。反応液をジクロロメタン20mL及び水20mL中に注ぎ込み、抽出し、得られた有機層を水20mLで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた後、減圧下溶媒を留去した。得られた残査をカラムクロマトグラフィーで精製して、式(3)の化合物(R〜R=上記に同じ、R=メチル基)(3b)122mgを得た。尚、カラムクロマトグラフィーによる分取ではΔ2−セフェム化合物のフラクションは存在しなかった。収率:96%
1H NMR(300MHz,CDCl) δ3.05(s,3H),3.55(d,J=18Hz,1H),3.59(d,J=16Hz,1H),3.66(d,J=16Hz,1H), 3.77(d,J=18Hz,1H),3.79(s,3H),4.98(d,J=4.9Hz,1H),5.16(d,J=12Hz,1H),5.22(d,J=12Hz,1H),5.83(dd,J=4.9,9.1Hz,1H),6.20(d,J=9.1Hz,1H),6.82−7.40(m,9H).
【0040】
実施例3〜8
反応溶媒を以下の溶媒に変更して実施例2と同様の反応を行って、化合物(3b)を得た。結果を表1に示した。各実施例におけるΔ2−セフェム化合物の生成割合は0.3%以下であった。
【0041】
【表1】
Figure 0004535530
【0042】
実施例9〜13
炭酸ナトリウムを以下のアルカリ金属炭酸塩もしくはアルカリ土類金属炭酸塩に変更して実施例2と同様の反応を行って、化合物(3b)を得た。結果を表2に示した。各実施例におけるΔ2−セフェム化合物の生成割合は0.4%以下であった。
【0043】
【表2】
Figure 0004535530
【0044】
実施例14
化合物(1a)1g及び炭酸ナトリウム360mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF10mL及びp−トルエンスルホニルクロリド648mgを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。以下、実施例2と同様に後処理して、式(3)の化合物(R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=ジフェニルメチル基、R=p−トリル基)(3c)1.26gを得た。尚、カラムクロマトグラフィーによる分取ではΔ2−セフェム化合物のフラクションは確認されなかった。収率:96%
1H NMR(300MHz,CDCl) δ2.37(s,3H),3.42(d,J=18Hz,1H),3.58(d,J=16Hz,1H),3.65(d,J=16Hz,1H),3.77(d,J=18Hz,1H),4.99(d,J=4.8Hz,1H),5.81(dd,J=4.8,8.7Hz,1H), 6.05(d,J=8.7Hz,1H),6.77(s,1H),7.15−7.49(m,19H).
【0045】
実施例15
化合物(1b)1g及び炭酸ナトリウム367mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF10mL及びp−トルエンスルホニルクロリド715mgを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。以下、実施例2と同様に後処理して、式(3)の化合物(R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=p−メトキシベンジル基、R=p−トリル基)(3d)1.27gを得た。尚、カラムクロマトグラフィーによる分取ではΔ2−セフェム化合物のフラクションは確認されなかった。収率:95%
1H NMR(300MHz,CDCl) δ2.45(s,3H),3.34(d,J=19Hz,1H),3.57(d,J=16Hz,1H),3.62(d,J=19Hz,1H),3.64(d,J=16Hz,1H),3.80(s,3H),4.94(d,J=4.8Hz,1H),4.98(d,J=12Hz,1H),5.03(d,J=12Hz,1H),5.79(dd,J=4.8,9.0Hz,1H),6.17(d,J=9.0Hz,1H),6.85−7.75(m,13H).
【0046】
実施例16
化合物(1a)300mg及び炭酸ナトリウム108mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF3mL及びトリフルオロメタンスルホニルクロリド0.12mLを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。以下、実施例2と同様に後処理して、式(3)の化合物(R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=ジフェニルメチル基、R=トリフルオロメチル基)(3e)349mgを得た。尚、カラムクロマトグラフィーによる分取ではΔ2−セフェム化合物のフラクションは確認されなかった。収率:92%
1H NMR(300MHz,DMSO−d) δ3.50(d,J=14Hz,1H),3.58(d,J=14Hz,1H),3.82(d,J=18Hz,1H),4.03(d,J=18Hz,1H),5.32(d,J=4.8Hz,1H),5.90(dd,J=8.1Hz,1H),6.94(s,1H),7.20−7.54(m,15H),9.26(d,J=8.1Hz,1H).
【0047】
実施例17
化合物(1b)300mg及び炭酸ナトリウム119mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF3mL及びトリフルオロメタンスルホニルクロリド0.13mLを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。以下、実施例2と同様に後処理して、式(3)の化合物(R=フェニルアセトアミド基、R=H、R=p−メトキシベンジル基、R=トリフルオロメチル基)(3f)348mgを得た。尚、カラムクロマトグラフィーによる分取ではΔ2−セフェム化合物のフラクションは確認されなかった。収率:90%
1H NMR(300MHz,DMSO−d) δ3.36(d,J=18Hz,1H),3.57(d,J=16Hz,1H),3.65(d,J=16 Hz,1H),3.69(d,J=18Hz,1H),3.79(s,3H), 4.98(d,J=4.6Hz,1H),5.14(d,J=12Hz,1H),5.33(d,J=12Hz,1H),5.85(dd,J=4.6,8.6Hz,1H),6.19(d,J=8.6Hz,1H),6.83−7.40(m,9H).
【0048】
実施例18〜22
反応温度を以下の温度に変更して実施例2と同様の反応を行って、化合物(3b)を得た。結果を表3に示した。各実施例におけるΔ2−セフェム化合物の生成割合は0.5%以下であった。
【0049】
【表3】
Figure 0004535530
【0050】
実施例23
式(1)の化合物 (R=p−CHO−C−CH=N−、R=H、R=ジフェニルメチル基)(1c)300mg及び炭酸ナトリウム117mgを秤取り、3〜5℃に冷却したDMF3mL及びメタンスルホニルクロリド0.09mLを加え、3〜5℃で2時間撹拌した。以下、実施例2と同様に後処理して、式(3)の化合物(3g)318mgを得た。収率:92%(Δ2−セフェム化合物含有率:0.2%)
1H NMR(300MHz,CDCl) δ2.72(s,3H),2.56(d,J=18Hz,1H),3.81(s,3H),3.85(d,J=18Hz,1H),5.16(d,J=4.8Hz,1H),5.34(d,J=4.8Hz,1H),6.88−7.76(m,14H),6.98(s,1H),8.46(s,1H).
【0051】
尚、実施例2〜22で用いたカラムクロマトグラフィーの展開溶媒はベンゼン:ヘキサン=4:1〜6:1である。
【0052】
参考例4[化合物(3a)からセフチブテンの合成]
実施例1で得られた化合物(3a)をPure & Appl. Chem.,59,1041(1987)記載の方法によりセフチブテンへと誘導することができる。
化合物(3a)を塩化メチレン溶媒下に五塩化燐/ピリジン試薬と反応させた後、反応液を−35℃に冷却し、メタノールで処理して、7−アミノ−3−メタンスルホニルオキシセフェム塩酸塩(4)を得る。化合物(4)を酢酸中亜鉛を作用させて還元し、7−アミノ−3−セフェム塩酸塩(5)を得、塩基存在下に酸クロライド(6)を反応させて、前駆体(7)を得る。前駆体(7)の最終の脱保護反応を経て、セフチブテンに導くことができる。
【0053】
【化7】
Figure 0004535530
【0054】
[式中、Phはフェニル基、Zはベンゾイル基、PRNは基−CHCH=C(CHを示す。]
【0055】
参考例5[化合物(3a)からセフィキシムの合成]
実施例1で得られた化合物(3a)を特願平11−247272号記載の方法により、3−ビニル−3−セフェム化合物(8)に導き、塩化メチレン溶媒下に五塩化燐/ピリジン試薬と反応させた後、反応液を−35℃に冷却し、メタノールで処理して、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム塩酸塩(9)を得る。化合物(9)にフェノールを加え、45℃で1時間反応させて、7−アミノ−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(10)を得る。化合物(10)を特公昭63−20435号公報記載の方法により、7位側鎖との反応、最終の脱保護反応を経て、セフィキシムへと導くことができる。
【0056】
【化8】
Figure 0004535530
【0057】
【発明の効果】
本発明では、広範囲な抗菌スペクトルを有する有用な非天然型抗菌剤の中間体である3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物を、殆どΔ2−セフェム化合物を副生させることなく、高純度で且つ高収率で製造することができる。

Claims (2)

  1. 式(1)で表される3−ヒドロキシ−3−セフェム化合物を有機溶媒中アルカリ金属炭酸塩若しくはアルカリ土類金属炭酸塩の存在下、式(2)で表されるスルホン酸ハライド化合物と反応させることを特徴とする式(3)で表される3−スルホニルオキシ−3−セフェム化合物の製造方法。
    Figure 0004535530
    [式中、R フェニルアセトアミド基又は基Ar−CH=N−(Arは置換基として低級アルコキシ基を有す リール基)を示す。Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルコキシ基、低級アシル基、保護された水酸基又は保護された水酸基を置換基として有することのある低級アルキル基を示す。Rは水素原子又はカルボン酸保護基を示す。]
    Figure 0004535530
    (式中、Rは置換基を有することのある低級アルキル基又は置換基を有することのあるアリール基を示す。Xはハロゲン原子を示す。)
    Figure 0004535530
    (式中、R 〜Rは上記と同じ。)
  2. 有機溶媒がアミド系溶媒及び環状エーテル系溶媒から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の製造方法。
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