JP4527516B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents
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かかる偏光板は、一般に偏光能を有する偏光フィルムの両面あるいは片面に接着剤層を介して保護フィルムが接着されて構成されている。現在、知られている代表的なPVA系偏光フィルムには、PVA系フィルムにヨウ素を染色・吸着させたものや有機染料を染色・吸着させたものが挙げられるが、中でもヨウ素を染色・吸着させた偏光フィルムは、偏光性能が特に優れる点から好ましく用いられる。
このように、PVA系フィルムにヨウ素や有機染料などの二色性の材料を染色・吸着させた偏光フィルムとしては、PVAの水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色、あるいは染色した後一軸延伸した後に、好ましくはホウ素化合物で耐久化処理を行ったものが用いられており、また、保護フィルムとしては、酢酸セルロース系フィルムが光学的透明性、無配向性等に優れているため汎用されている。
最近では、高品位で高信頼性の要求される機器、特に大画面の液晶ディスプレー等への用途展開が行われ、それに伴う要求物性である大型化、面内均一性等の高品位化への改善が強く求められている。
そこで、本発明ではこのような背景下において、染色ムラが改善された、偏光性能の面内均一性に優れた偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明で用いるPVA系フィルムの原料となるPVA系樹脂は、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有させた変性ポリビニルアルコール系樹脂であっても良い。また、かかる変性以外にポリビニルアルコール系樹脂にシリル基を含有させたものでも良く、ポリビニルアルコールにシリル化剤を用いて後変性させたり、シリル基含有オレフィン性不飽和単量体と酢酸ビニルを共重合して得られる共重合体をケン化させる等の方法が挙げられる。シリル基含有オレフィン性不飽和単量体としてはビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等が挙げられる。
尚、粘度平均重合度は、JIS K 6726に準じて測定が行われる。
更に、PVA系樹脂のケン化度は80モル%以上であることが好ましく、特には85〜100モル%、更には98〜100モル%が好ましい。かかるケン化度が80モル%未満では偏光フィルムとする場合に充分な偏光性能が得られず好ましくない。
また、更に好ましくはフィルムの製膜時の基材(ロールやベルト等)からの剥離性を向上させるために、各種剥離剤の一種又は二種以上をPVA系樹脂に対して5重量%以下、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.001〜2重量%含有させることも可能である。該剥離剤が5重量%を越えるとフィルムの表面の外観不良やフィルム同士のブロッキングが起こり好ましくない。
PVA系樹脂水溶液中のPVA系樹脂の濃度は5〜50重量%が実用的である。
かかるドラム型ロールの材質としては、特に限定されないが、通常ステンレスが好適に用いられ、かかるロール表面は傷つき防止のため金属メッキが施されていることが好ましい。金属メッキの種類としては、例えばクロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ等が好適に用いられ、単独で又は2種以上の多層の組み合わせで使用することができ、特に表面平滑化の容易さやその耐久性の点から最表面がクロムメッキであることが好ましい。ドラムの表面は平滑性を保持することが望ましく、表面粗さが3S以下、特に0.5S以下が望ましい。
必要に応じて、乾燥後、熱処理や調湿が行われ、芯管にロール状態に巻き取られてPVA系フィルムが得られる。得られるPVA系フィルムの膜厚としては、10〜100μmが好ましく、更には20〜90μm、特に好ましくは30〜80μmで、膜厚が10μm未満では延伸が難しく、100μmを越えると膜厚精度が低下して好ましくない。
フィルムの幅は任意であり、50cm〜4m程度が一般的であるが、近時の市場の要求が強い幅広フィルムの場合、2m以上、好ましくは2.5m以上、特に3m以上が有用である。フィルムの長さも1000m〜10000m程度と任意である。
本発明においては、PVA系フィルムを少なくとも水洗工程、ヨウ素染色工程、ホウ素化合物処理工程の順に通過させて偏光フィルムを製造するのが好ましく、又、水洗工程とヨウ素染色工程の間に、PVA系フィルムを膨潤させる膨潤工程を設けることもPVA系フィルムの過度の膨潤によるシワ発生を防止する点で好ましい。
偏光フィルムの製造方法としては、上記のPVA系フィルムを、例えば、水洗した後(必要に応じて更に膨潤させた後)、延伸してヨウ素染色液に浸漬し染色する、又は延伸と染色を同時に行う、又はヨウ素染色液により染色して延伸を行い、その後、ホウ素化合物により固定化処理する方法が挙げられる。又、水洗工程や膨潤工程中に延伸したり、染色した後ホウ素化合物の溶液中で延伸する方法等もあり、適宜選択して用いることができるが、特には、少なくとも染色中及び/又はホウ素化合物処理中で延伸を行うことが光学性能の向上の点で好ましい。更に必要に応じていずれかの工程を二回またはそれ以上行ってもよい。
次に、ヨウ素染色工程中のヨウ素染色液は、通常ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2.0g/l、ヨウ化カリウムの濃度は10〜100g/l、ヨウ素/ヨウ化カリウムの重量比は20〜100が適当である。ヨウ素染色液の温度は5〜50℃が好ましい。水溶媒以外にも水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。またホウ酸等の架橋剤が含まれていてもよい。接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
処理方法としては浸漬法が望ましいが、勿論塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は40〜70℃程度、処理時間は1〜20分程度が好ましく、又、必要に応じて処理中に延伸操作を行うことも好ましい。
本発明では、かかるホウ素化合物による固定化処理工程において、ホウ素化合物水溶液中に界面活性剤を添加してもよい。かかる界面活性剤の種類は、上記と同様のものが挙げられるが、中でもアニオン系界面活性剤が好ましく、特にはアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アルカノールアミド硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型のアニオン系界面活性剤が均一な偏光フィルムが得られる点で好ましい。
かかる保護フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルム又はシートが挙げられる。
尚、例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
粘度平均重合度2600、ケン化度99.7モル%のPVA系樹脂を用いて、35%濃度のPVA系樹脂水溶液(PVA系樹脂に対して、可塑剤としてグリセリン10%、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル0.1%を含む)を調製した後、該水溶液をT型スリットダイよりドラム型ロールで流延製膜し、含水率10%まで乾燥、更に120℃で3分間熱処理を行い、最後に調湿を行って芯管に巻き取ることにより、フィルムロールとして含水率が4%のPVA系フィルム(幅3.0m、フィルム厚さ75μm)を得た。
得られた偏光板をクロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだ後に、暗室で表面照度14000ルックスのライトボックスを用いて、透過モードで染色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
○・・・染色ムラなし
×・・・染色ムラあり
得られた偏光板の片面に粘着層(25μm厚)を設け、ガラス板に貼合後、60℃、90%RH条件下に20日間放置した後、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだ後に、暗室で表面照度14000ルックスのライトボックスを用いて、透過モードで染色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
○・・・染色ムラなし
×・・・染色ムラあり
実施例1において、ドデシル硫酸ナトリウム5ppmの代わりにポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム80ppmとした以外は同様に行い、偏光フィルムを得、実施例1と同様の評価を行った。
実施例1において、粘度平均重合度4000、ケン化度99.7モル%のPVA系樹脂を用いて、25%濃度のPVA系樹脂水溶液(PVA系樹脂に対して、可塑剤としてグリセリン10%、ポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル0.1%を含む)を調製した以外は同様に製膜を行い、幅3.3m、フィルム厚さ75μmのPVA系フィルムを得た。
次に、得られたPVA系フィルムを1.25m/分で巻き出し、水洗槽(24℃)で水洗し、引き続きドデシル硫酸ナトリウム濃度が水溶液に対して2ppmの膨潤槽(30℃、ホウ酸濃度0.01g/l)で膨潤させた後、ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム濃度がヨウ素染色液に対して20ppmのヨウ素染色槽(20℃、ヨウ素濃度0.22g/l、ヨウ化カリウム濃度60g/l)に浸漬し、1.4倍の一軸延伸を行った。続いてホウ酸槽(50℃、ヨウ素濃度0.0012g/l、ヨウ化カリウム濃度30g/l、ホウ酸濃度47g/l)に浸漬し、2.5倍の一軸延伸を行いつつ固定化処理を行い、トータル5.0倍の一軸延伸を行った後、40℃の乾燥機で乾燥して、偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。
実施例1において得られたPVA系フィルムを、120℃の雰囲気下、2.7倍に一軸延伸し、緊張状態を保ったままポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム濃度がヨウ素染色液に対して150ppmのヨウ素染色槽(20℃、ヨウ素濃度0.2g/l、ヨウ化カリウム濃度30g/l)に浸漬して染色を行った後、ホウ酸槽(55℃、ヨウ素濃度0.001g/l、ヨウ化カリウム濃度40g/l、ホウ酸濃度60g/l)に浸漬し、2倍の一軸延伸を行いつつ固定化処理を行い、トータル6.0倍の一軸延伸を行った後、40℃の乾燥機で乾燥して、偏光フィルムを得た。
得られた偏光フィルムについて実施例1と同様の評価を行った。
実施例1において、ヨウ素染色槽にドデシル硫酸ナトリウムを添加しなかった以外は同様に行い、偏光フィルムを得、実施例1と同様の評価を行った。
実施例1において、ヨウ素染色槽にドデシル硫酸ナトリウムを添加せずに、ヨウ素染色槽のヨウ素水溶液を2m/秒の水流を用いて、水流がフィルムに直接当てないようにしながら撹拌した以外は同様に行い、偏光フィルムを得、実施例1と同様の評価を行った。
実施例、比較例の結果を表1に示す。
Claims (6)
- ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素染色して偏光フィルムを製造するにあたり、ヨウ素染色工程中のヨウ素染色液にアニオン系界面活性剤を含有させることを特徴とする偏光フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系フィルムを少なくとも水洗工程、ヨウ素染色工程、ホウ素化合物処理工程の順に通過させて偏光フィルムを製造することを特徴とする請求項1記載の偏光フィルムの製造方法。
- アニオン系界面活性剤の含有量が、ヨウ素染色液に対して0.1〜1000ppmであることを特徴とする請求項1又は2記載の偏光フィルムの製造方法。
- アニオン系界面活性剤が、硫酸エステル塩型アニオン系界面活性剤であることを特徴とする請求項1記載の偏光フィルムの製造方法。
- 水洗工程とヨウ素染色工程の間に、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させる膨潤工程を設けることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の偏光フィルムの製造方法。
- 膨潤工程中の膨潤液に界面活性剤を含有させることを特徴とする請求項5記載の偏光フィルムの製造方法。
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