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JP4520142B2 - 色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュール - Google Patents

色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュール Download PDF

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Description

本発明は、色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールに関する。更に詳しくは、本発明は、特定の集積構造を有する色素増感型太陽電池及び色素増感型太陽電池モジュールに関するものである。
近年、化石燃料に代るエネルギー源として太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。
現在、一部実用化されている太陽電池としては、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池及び薄膜シリコン太陽電池がある。しかし、前者ではシリコン基板の作製コストが高いことが課題となっている。後者は多種の薄膜シリコン製造用ガスや複雑な装置を用いる必要があり、また、高価な透明導電膜付きガラスを必要とする等、製造コストや材料コストが高いことが課題となっている。
そのため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化により、発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、未だ、上記課題を充分解決するには至っていない。
特許第2664194号公報(特許文献1)では、新しいタイプの太陽電池として、金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池を提案している。
この湿式太陽電池は、2枚のガラス基板(透明導電膜付きガラスと対向電極)にそれぞれ形成された電極間に、光電変換材料と、電解質材料を用いて光電変換層を挟んだ構成を有している。
この光電変換材料は、光増感色素を吸着させることで、可視光領域に吸収スペクトルを持つようになる。この太陽電池においては、光電変換層に光が照射されると電子が発生し、電子は外部電気回路を通って対向する電極に移動する。電極に移動した電子は、電解質中のイオンによって運ばれ光電変換材料側にもどる。このようにして電気エネルギーを取り出すことができる。
また、国際公開第WO97/16838号(特許文献2)では、この動作原理を基本に、複数の色素増感型太陽電池を直列接続した色素増感型太陽電池モジュールを提案している。
具体的には、個々の色素増感型太陽電池は、短冊形にパターニングした透明導電膜(電極)を形成したガラス基板上に、酸化チタン層、絶縁性多孔質層及び対極を順次積層した構造を有している。また、1つの色素増感型太陽電池の導電層を、隣接する色素増感型太陽電池と対極を接触するように配置することで、色素増感型太陽電池が直列接続されている。
特許第2664194号公報 国際公開第WO97/16838号パンフレット
上記のとおり、特許第2664194号公報の色素増感型太陽電池の基本構造は、透明導電膜付きガラス上に酸化チタン等の多孔性光電変換層を形成し、その多孔性光電変換層に増感色素を吸着させた基板と、別の透明導電膜付きガラス上に白金を成膜した基板の2枚を一定間隔に保持し、その間に電解液を注入することで単一セルを作製したものである。
したがって、この技術によれば、少なくとも1枚以上の透明導電膜付きガラスを使用する構造となっている。
また、図6に示すWO97/16838号の色素増感型太陽電池モジュールは、特許第2664194号公報の単一セル構造に、アモルファスシリコン太陽電池モジュールに適応させる直列接続方法を用いることにより作製された色素増感型太陽電池モジュールである。図6中、61は透明基板、62は透明導電膜、63は多孔性光電変換層、64は多孔性絶縁層、65は導電層、66は絶縁層、67は電気絶縁性液体密閉用トップカバー、68及び69は端子を意味する。
したがって、基本的には、透明導電膜付きガラスを使用し、更には、透明導電膜を分離するためにレーザースクライブ装置を用いる技術である。
上記のように、いずれの色素増感型太陽電池においても、受光面側の電極にはインジウム−スズ複合酸化物(以下、ITOという)や酸化スズ(SnO2)等の透明導電膜付きガラスを使用している。
しかしながら、この透明導電膜付きガラス基板は、それ自体が高価であり、加えて、これらを加工する機械装置類(スクライブ用レーザ)も高価な装置であるため、これらを用いた色素増感型太陽電池の作製コストは高くなるという課題は、依然として解決されていない。
本発明者らは、上記のような課題に対処すべく鋭意研究した結果、支持体と多孔性光電変換層の間に透明導電膜を形成することなく、また、レーザースクライブのような高価な装置を用いない構造を見出すことで、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、第一支持体と第二支持体間に、第一導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層及び第二導電層を順次備え、前記4つの層は、第一導電層と第二導電層を結ぶキャリア移動方向が第一支持体面と平行になるように、並列して配置された構造を有し、かつ前記第一導電層と前記第二導電層とが、前記第一支持体面に対して垂直方向にオーバーラップしないように配置された構造を有することを特徴とする色素増感型太陽電池が提供される。
更に、本発明によれば、前記第二導電層が、集電体と触媒層から構成されていることを特徴とする色素増感型太陽電池が提供される。
また、本発明によれば、上記色素増感型太陽電池を複数個配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、色素増感型太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の色素増感型太陽電池の第二導電層とを接触させることにより、色素増感型太陽電池を直列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールが提供される。
更に、本発明によれば、前記直列接続させた色素増感型太陽電池を複数群有し、隣接する色素増感型太陽電池群の端部の第一導電層同士を接触させ、かつ隣接する色素増感型太陽電池群の端部の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を直並列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールが提供される。
更に、本発明によれば、上記色素増感型太陽電池を複数個配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、隣接する色素増感型太陽電池の第一導電層同士を接触させ、かつ、隣接する色素増感太陽電池の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を並列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュールが提供される。
本発明によれば、従来よりも安価なコストで色素増感型太陽電池及び色素増感太陽電池モジュールが作製できる。
本発明の色素増感型太陽電池(以下、単に太陽電池と称する)は、第一支持体と第二支持体間に、第一導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層及び第二導電層を順次備えた構造からなる。更に、本発明では、第一導電層、多孔性光電変換層、キャリア輸送層及び第二導電層は、第一導電層と第二導電層を結ぶキャリア移動方向が第一支持体面と平行(略平行)になるように、並列して配置された構造を有することを特徴としている。
以下、本発明の太陽電池をその構成要素ごとに説明する。
第一支持体は、多孔性光電変換層を、製造から製品使用段階まで、機能的に支持することのできる基板であり、光透過性を有し、かつ耐熱性の高い材料からなるものが好適である。ただし、第一支持体は、少なくとも後述の色素に実効的な感度を有する波長の光を、実質的に透過するものであればよく、必ずしも全ての光に対して透過性を有することは要求されない。
第一支持体の材料としては、例えば、ソーダガラス、溶融石英ガラス、結晶石英ガラス等のガラス、可撓性フィルム又はシート等の耐熱性樹脂が挙げられる。
また、第一支持体は、0.2〜5mm程度の厚さで、250℃以上の耐熱性を有するのが好ましい。
可撓性フィルム又はシート(以下、単にフィルムと略称する)は、例えば、ポリエステル、PET、ポリアクリル、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のフィルムが挙げられ、このうち、長期耐候性のあるフィルムであることが好ましい。
中でも第一支持体は、導電層の形成時において200℃前後の高温下で加熱処理される場合があることから、この温度で耐熱性を有するポリイミドフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルムであることが好ましい。
更に、第一支持体は、完成した太陽電池を他の構造体に取り付けるときに利用することも可能である。例えば、ガラスのような支持体を用いる際には、支持体周辺部を、金属加工部品と螺子を用いて他の構造体に容易に取り付けることができる。
第二支持体は、特に限定されない。具体的には、第一支持体材料と同様な支持体材料を使用することができ、更に、第二支持体を形成した後に焼成工程を経ない場合は、第二支持体は耐熱性が低くてもよい。第一支持体側を太陽電池の受光面とする場合は、第二支持体は不透明であってもよい。また、この場合、入射光を効率よく変換するために、第二支持体は、金属等の入射光を反射できる材料からなることが好ましい。
更にまた、太陽電池を軽量化するためには、第一支持体及び/又は第二支持体に、フィルムを用いることが望ましく、太陽電池の長寿命化を図るための防湿性維持・強化の観点から、例えば、PETとアルミニウムの積層フィルムであることが更に好ましい。
第一支持体及び/又は第二支持体がフィルムであるときは、ラミネーション法等を用いることにより、第一導電層、多孔性光電変換層、キャリア輸送層、第二導電層を、相対する第一支持体及び/又は第二支持体と密着させて、第一支持体と第二支持体間に封入させることが可能となり、不要な空隙を少なくすることができる。
第一導電層は、第一支持体上に、多孔性光電変換層と少なくとも一部接する形で形成される。この場合、第一導電層の一部が第二支持体と多孔性光電変換層との間に延在している構造であってもよい。第二導電層は、第一支持体上に、キャリア輸送層と少なくとも一部接する形で形成される。
第一導電層及び第二導電層を形成する材料としては、例えば、フッ素がドープされた酸化スズ、ITO、ボロン、ガリウム又はアルミニウムがドープされた酸化亜鉛、ニオブがドープされた酸化チタン等の透明導電性金属酸化物、金、銀、アルミニウム、インジウム、白金、カーボン(カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン)等が挙げられる。これらの材料は、1又は2以上を組合せてもよい。
また、第二導電層は、集電体と触媒層とからなっていてもよい。集電体を形成する材料として、上記の第一導電層及び第二導電層を形成する材料を1又は2以上組合せて用いることができる。
更に、触媒層を形成する材料は、白金、カーボン(カーボンブラック、グラファイト、ガラス炭素、アモルファス炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン、カーボンホイスカー、カーボンナノチューブ、フラーレン)、又は、これらの組合せであることが好ましい。また、この触媒層を形成する材料には、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の導電性高分子材料を選択してもよい。
この触媒層は、酸化還元反応を促進させるために設けられる。
更に、第一導電層及び第二導電層の光透過性は特に限定はされず、透明でも、不透明であってもよい。
多孔性光電変換層は、半導体層とそれに吸着した色素とからなる。
半導体層を構成する材料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タングステン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム等の公知の半導体が挙げられる。これら材料は、1又は2以上を組合せてもよい。なかでも、変換効率、安定性、安全性の点から酸化チタン又は酸化亜鉛であることが好ましい。
上記の半導体粒子の平均粒径は、市販されているもののうち、例えば、1nm〜500nm程度の平均粒径を有する単一又は化合物半導体の粒子等が適当である。本発明において用いる半導体粒子の平均粒径は、SEM観察により測定した値である。
多孔性光電変換層は、粒子状、膜状等種々な形態の半導体層に色素を吸着させた層を用いることができる。この内、変換効率を高めるためには、膜状であることが望ましい。
膜状の半導体層を基板上に形成する手法としては、公知の種々の手法を使用することができる。
具体的には、スクリーン印刷、インクジェット、ディスペンサー等の基板上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布・焼成する手法等が挙げられる。この内、厚膜化や製造コストの低減を図るには、上記半導体粒子の懸濁液を用いたスクリーン印刷法が好ましい。
半導体層の膜厚は、特に限定されるものではないが、透過性、変換効率等の観点から、0.5〜20μm程度であることが好ましい。
更に、変換効率を向上させるためには、後述する色素を、半導体層により多く吸着させることが必要であることから、膜状の半導体層は比表面積が大きなものが好ましく、具体的には、10m2/g〜200m2/g程度であることが好ましい。なお、本発明において、比表面積とは、BET吸着法により測定した値をいう。
また、この半導体粒子を懸濁するための溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグライム系溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、イソプロピルアルコール/トルエン等の混合溶媒、水等が挙げられる。
上記の半導体層の乾燥及び焼成は、使用する基板や半導体粒子の種類により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することが必要になる。
例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下において、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間の乾燥及び焼成を行うことができる。
この乾燥及び焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行ってもよい。
半導体層に吸着して光増感剤として機能する色素としては、種々の領域の可視光及び/また赤外光を吸収し、かつ半導体層に色素を強固に吸着させるために、色素分子中にカルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等のインターロック基を有するものが好ましい。中でも特に、カルボン酸基及びカルボン酸無水基を有するものがより好ましい。
なお、インターロック基は、励起状態の色素と半導体層の導電帯間の電子移動を容易にする電気的結合機能を有するものである。
これらインターロック基を含有する色素として、例えば、ルテニウム金属錯体系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ベリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素等が挙げられる。
半導体層に色素を吸着させる方法として、例えば、支持体上に形成された半導体層を、色素を溶解した溶液(色素吸着用溶液)に、必要時間浸漬する方法が挙げられる。
色素を溶解させる溶媒としては、色素を溶解するものであればよく、例えば、エタノールのようなアルコール類、アセトンのようなケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリルのような窒素化合物類、クロロホルムのようなハロゲン化脂肪族炭化水素、ヘキサンのような脂肪族炭化水素、ベンゼンのような芳香族炭化水素、酢酸エチルのようなエステル類、水等が挙げられる。また、これらの溶剤は2以上混合して用いることもできる。
溶液中の色素濃度は、使用する色素及び溶剤の種類により、必要に応じて適宜調整することができるが、吸着機能を向上させるためには高濃度であることが好ましく、例えば、5×10-4モル/リットル以上であることが好ましい。
多孔性光電変換層と第二導電層との間に配置するキャリア輸送層は、電子、ホール、イオンを輸送できる導電性材料から構成される。
例えば、ポリカルバゾールのようなホール輸送材、テトラニトロフロオルレノンのような電子輸送材、ポリロールのような導電性ポリマー、液体電解質、高分子電解質等のイオン導電体、ヨウ化銅、チオシアン酸銅等のp型半導体が挙げられる。
上記の導電性材料の中でも、導電効率の高いイオン導電体が好ましく、酸化還元性電解質を含む液体電解質であることが特に好ましい。
このような酸化還元性電解質としては、一般に電池や太陽電池等において使用することができるものであれば特に限定されない。
具体的には、LiI、NaI、KI、CaI2等の金属ヨウ化物とヨウ素の組合せ及びLiBr、NaBr、KBr、CaBr2等の金属臭化物と臭素の組合せであることが好ましく、この中でも特に、高効率の電解性を有するLiIとヨウ素の組合せであることが好ましい。
また、これに用いる溶剤としては、プロピレンカーボネートのようなカーボネート化合物、アセトニトリルのようなニトリル化合物、エタノールのようなアルコール類のほか、水や非プロトン極性物質等が挙げられるが、その中でも、イオン伝導の観点から、カーボネート化合物やニトリル化合物が好ましい。これらの溶剤は2以上を混合して用いることもできる。
酸化還元性電解質の濃度としては、0.01〜1.5モル/リットルの範囲が挙げられるが、この中でも、0.01〜0.7モル/リットルであることが好ましい。
更に、本発明によれば、上記太陽電池を直列及び/又は並列に接続して集積化させた太陽電池モジュールが提供される。本発明では、上記のような構成の太陽電池を集積化することにより、高電圧の出力を必要とする太陽電池モジュールにも適用可能となる。また、太陽電池を構成する部材に、所望の波長の光を透過する部材を使用することで、シースルー型太陽電池モジュールも提供することができる。更に、様々な目的に応じた太陽電池モジュールを安価なコストで提供することができる。
具体的には、
(1)太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の太陽電池の第二導電層とを接触させることにより、太陽電池を直列接続させて集積化させた太陽電池モジュール、
(2)直列接続させた太陽電池を複数群有し、隣接する太陽電池群の端部の第一導電層同士を接触させ、かつ隣接する太陽電池群の端部の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を直並列接続させて集積化させた太陽電池モジュール、
(3)隣接する太陽電池の第一導電層同士を接触させ、かつ、隣接する色素増感太陽電池の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を並列接続させて集積化させた太陽電池モジュール
が挙げられる。
ここで、(1)の場合、太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の太陽電池の第二導電層を構成する集電体を同一材料及び/又は同一工程にて作製することが好ましい。この方法によれば、第一導電層と集電体を、より容易に作製できる。
本発明による太陽電池及び太陽電池モジュールを以下の実施の形態により、更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施の形態によって限定されるものではない。
(実施の形態1):太陽電池の作製例
図1に太陽電池の概略断面図の一例を示す。
図中1は第一支持体、2は第一導電層、3は多孔性光電変換層、4はキャリア輸送層、5は触媒層、6は集電体(触媒層と集電体を合わせて第二導電層7という)、8は第二支持体である。
第一支持体1は、厚さ1mm程度で、450℃以上の耐熱性を有するガラス基板である。
金属酸化物である酸化チタン(TiO2)粉末に溶媒、バインダーを混錬してスラリー状あるいはペースト状とし、これを、別途パターン形成したスクリーン版を用いて、第一支持体1の所定の位置にスクリーン印刷を施し、半導体層の前駆体層を形成した。その後、前駆体層のレベリングを行った後、80℃のオーブン中で乾燥させた。
具体的には、下記の手法により作製した酸化チタンペーストを用いて、スクリーン印刷機(ニューロング精密工業社製LS−150)にて前駆体層を形成した。
すなわち、酸化チタン粒子の作製方法として、チタンイソプロポキシド(キシダ化学社製)125mlを0.1Mの硝酸水溶液(キシダ化学社製)750mlに滴下して加水分解させ、80℃で8時間加熱することにより、ゾル液を作製した。
その後、チタン製オートクレーブにて230℃で11時間、粒子成長させ、超音波分散を30分間行うことにより、平均一次粒径15nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を作製した。(この工程にて作製された酸化チタン粒子を酸化チタンAとする。)
更に、そのコロイド溶液をエバポレーターにて、酸化チタンが15wt%の濃度になるまで緩やかに濃縮を行い、市販の酸化チタン粒子(酸化チタンB)(日本アエロジル社製、商品名P−25、アナターゼ型:ルチル型(7:3)混合、平均一次粒径20nm)を添加し、コロイド溶液の2倍のエタノールを加え、5000rpmにて遠心分離を行った。
この工程により作製した酸化チタン粒子をエタノールで洗浄した後、エチルセルロース(キシダ化学社製)とテルピネオール(キシダ化学社製)を無水エタノール中に溶解させた溶液を加え、攪拌することにより酸化チタン粒子を溶液中に分散させた。
その後、40mbarの真空下において、温度50℃にてエタノールを蒸発させて酸化チタンペーストを作製した。
なお、最終的な組成として、酸化チタン固体濃度20wt%、エチルセルロース10wt%、テルピネオール64wt%となるように濃度調製した。
次に、前駆体層の形成方法と同様にして、第一導電層2及び第二導電層を構成する集電体6の前駆体層を、ITOペーストを用いて形成した後、500℃の空気中で焼成することにより、半導体層、第一導電層2、第二導電層7を構成する集電体6を焼結した。
その後、第二導電層7を構成する触媒層5は、カーボンペーストを用いてスクリーン印刷によってペースト層を形成し、ペースト層を約100℃で乾燥させることで得た。
第一導電層2及び第二導電層7を構成する集電体6の形成に用いたITOペーストは、住友大阪セメント社製のITOペーストを使用し、第二導電層7を構成する触媒層5のカーボンペーストは、以下の方法にて作製したものを使用した。
カーボン粒子であるライオン社製「ケッチェンブラックEC」(商品名)、バインダーであるエチルセルロース、及び、溶媒であるn−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ混合することにより、カーボンペーストを調製した。重量混合比はカーボン40%、バインダー濃度40%、溶媒20%とし、混煉機による分散時間を2時間とした。
また、上記のカーボン粒子のほかに白金等を用いてもよい。
更に、触媒層として、PEDOT等の導電性高分子材料を用いてもよく、またこれらの混合物であっても問題はない。ここで、白金等は、スパッタリングや蒸着等の気相法によって作製してもよい。
第一導電層2、半導体層、第二導電層7の各層の厚み(図1中のX)は約20μm程度とし、各層のキャリア輸送方向に対する幅(図1中のA、B、C、D、E)はそれぞれ、0.1mm、1.0mm、0.1mm、0.1mm、0.1mmとした。
本発明の太陽電池のキャリア輸送方向は、AからE(もしくはEからA)であるため、各層の幅は極端に大きくすると抵抗が大きくなるという問題がある。
次に、このようにして得られた半製品を、色素溶液中に浸漬し、約2時間、還流することにより色素を半導体層に吸着させることで多孔性光電変換層3を得た。
具体的には、色素は、下記(1)の化学構造を有するルテニウム色素(Solaronix社製、商品名Ruthenium535−bisTBA)を用いた。
Figure 0004520142
このルテニウム色素を、アセトニトリルとn−ブタノールエタノールを体積比1:1で混合した溶媒に、色素濃度4×10-4モル/リットルで溶解させて吸着用色素溶液とした。この吸着用色素溶液及び半製品(各部材が形成された第一支持体)を容器に入れ、約30分間還流させることにより色素を半導体層に吸着させた。
その後、上記の色素を吸着させた半製品を、無水エタノールで洗浄し、約60℃で約20分間乾燥させた。
更にその後、キャリア輸送層4である高分子電解質形成用の前駆体を全体に注入した。
続いて、第二支持体8として、PET−アルミニウム−PETの積層フィルムを所定の場所に配置し、約90℃で2時間、架橋重合させることにより、キャリア輸送層4である高分子電解質を形成させ、太陽電池を得た。
高分子電解質中の電解液は、γ−ブチロラクトン(キシダ化学社製)とエチレンカーボネート(キシダ化学社製)の混合溶媒(混合比は、γ−ブチロラクトン:エチレンカーボネート=7:3(容積比))に、ジメチルプロピルイミダゾリウムアイオダイド0.6モル/リットル、リチウムアイオダイド0.1モル/リットル、ヨウ素0.1モル/リットルを溶解させたものを用いた。
高分子材料は、下記の合成方法1により得られた化合物Aと、ジエチルトルエンジアミン(化合物B)を用い、その混合比を、化合物A:化合物B=13:1(重量比)とした。
(合成方法1)
反応容器中にポリテトラメチレングリコール(三菱化成工業社製、商品名PTMG2000)100重量部に対して、トリレンジイソシアネート18重量部と触媒としてのジブチルチンジラウレート0.05重量部を加え、80℃で反応を行い、分子量2350の化合物Aを作製した。
(実施の形態2):太陽電池モジュールの作製例
図2は、太陽電池モジュールの概略断面図の一例を示す。
図2の太陽電池モジュールは、3つの単位セルが、第一支持体201と第二支持体207とに挟持・集積化して構成されている。
第1の単位セルは、第一支持体201上に、第一導電層212、多孔性光電変換層213、キャリア輸送層214、及び第二導電層を構成する触媒層215からなっている。
第2の単位セルは、第一支持体201上に、第一導電層222、多孔性光電変換層223、キャリア輸送層224、及び第二導電層を構成する触媒層225からなっている。
第3の単位セルは、第一支持体201上に、第一導電層232、多孔性光電変換層233、キャリア輸送層234、第二導電層を構成する触媒層235、及び第二導電層である集電体236からなっている。
なお、第1の単位セルの集電体は、第2の単位セルの第一導電層、第2の単位セルの集電体は第3の単位セルの第一導電層と同一としている。
また、各単位セルの各層の厚み及び幅は、実施の形態1で記載した形状と同等なものでよい。
一般的に太陽電池モジュールの光電変換効率を算出するには、電極部の面積を含めた太陽電池モジュール面積が用いられる。そのため、第一導電層と第二導電層それぞれの第一支持体の接触面積(図1のA、及びDとE)は小さいほどよい。
各単位セルの各層の厚み及び幅は、スクリーン印刷法や蒸着法等の製膜工程によって制限されるが、製造コストを考慮すると安価な製造方法であることが好ましい。
例えば、スクリーン印刷法を用いれば、用いる材料の粘性係数にもよるが、比較的安価に50μm程度の厚さの成膜が可能である。
以下に、太陽電池及び太陽電池モジュールを実施例により具体的に説明するが、以下の実施例は単なる例示であり、この方法以外にも当該分野で公知の方法を採用することができる。なお、以下の実施例及び比較例において、特に説明を加えない場合は、実施の形態1及び2の条件を用いて太陽電池及び太陽電池モジュールが作製される。
(実施例1)
第一支持体として、1cm×4cm×1mmのガラス基板上に、スクリーン印刷機により、酸化チタンペースト(酸化チタンAに対して酸化チタンBを10wt%添加したもの)を1mm(図1中B)×3cm、膜厚15μmとなるように多孔性光電変換層3形成用のペースト層を形成した。その後、ペースト層にレベリングを行った後、80℃で30分乾燥を行った。
続いて、ITOペーストを用いて第一導電層2と第二導電層を構成する集電体6形成用のペースト層を、キャリア輸送層形成用の幅(図1中C)が0.1mmになるように、それぞれ0.1mm(図1中A、E)×3cm、膜厚が15μmとなるようにスクリーン印刷により形成し、約80℃で30分乾燥を行った。
その後、約500℃、1.5時間、酸素雰囲気中で各ペースト層を同時に焼成させることにより、多孔性光電変換層3形成用の半導体層、第一導電層2、及び第二導電層を構成する集電体6をそれぞれ形成した。
次に、第二導電層を構成する触媒層5を、0.1mm(図1中D)×3cm、膜厚が15μmとなるようにカーボンペーストをスクリーン印刷で塗布し、約100℃で30分乾燥させることにより形成した。
次に、半導体層に色素を吸着させて多孔性光電変換層3を形成した後、キャリア輸送層4である電解質を多孔性光電変換層3と触媒層5の間に形成し、続いて、PET−アルミニウム−PETの積層構造を持つ第2支持体8を配置することにより、太陽電池を作製した。この電解質は多孔性光電変換層中にも含浸される。
上記の工程にて作製された太陽電池をAM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度12.0mA/cm2、開放電圧値0.7V、FF0.65、変換効率5.5%であった。
(実施例2)
第1支持体として、2.5cm×4cm×1mmのガラス基板上に、スクリーン印刷機により、酸化チタンペースト(酸化チタンAに対して酸化チタンBを10wt%添加したもの)を1mm×3cm、膜厚15μmとなるように多孔性光電変換層213、223、233形成用のペースト層を形成した。その後、各ペースト層のレベリングを行った後、80℃で30分乾燥した。
次に、スクリーン印刷機により、ITOペーストを0.1mm×3cm、膜厚15μmとなるように第一導電層212、222、232と第二導電層を構成する集電体236形成用のペースト層を形成した。その後、各ペースト層のレベリングを行ってから、80℃で30分乾燥させ、約500℃、1.5時間、酸素雰囲気中で焼成させることにより、上記各光電変換層形成用の半導体層と各導電層及び集電体236を形成した。
次に、第二導電層を構成する触媒層215、225、235を、0.1mm×3cm、膜厚は15μmとなるようにカーボンペーストをスクリーン印刷で塗布し、約100℃で30分乾燥させることにより形成した。
次に、それぞれの半導体層に色素を吸着させて多孔性光電変換層を形成した後、各キャリア輸送層214、224、234の電解質を、それぞれの多孔性光電変換層と触媒層の間に形成し、続いて、PET−アルミニウム−PETの積層構造を持つ第二支持体207を配置することにより、太陽電池モジュールを作製した。この電解質は多孔性光電変換層中にも含浸される。
上記の工程によって作製した太陽電池を、実施例1同様に、AM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度11.5mA/cm2、開放電圧値2.07V、FF0.63、変換効率5.0%であった。
(実施例3)
第二導電層を構成する触媒層に白金を用いたこと以外は、実施例2に準じて作製した。ただし、白金による触媒層の形成方法は、スパッタリング法によった。上記の工程によって作製した太陽電池モジュールを、実施例1同様、AM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度12.1mA/cm2、開放電圧値2.13V、FF0.64、変換効率5.5%であった。
(実施例4)
第二導電層を構成する触媒層に導電性高分子材料PEDOT−OTsを用いたこと以外は、実施例2に準じて作製した。なお、PEDOT−OTsは、Bayer社製BaytronM−V2とBayer社製BaytronCB−40を体積1:4で混合し、100℃で1時間重合し、その後、p−トルエンスルホン酸で洗浄することにより作製した。また、この触媒層の形成方法は、ドクターブレード法によった。
上記の工程によって作製した太陽電池モジュールを、実施例1同様、AM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度9.9mA/cm2、開放電圧値2.01V、FF0.61、変換効率4.0%であった。
(実施例5)
第一導電層と多孔性光電変換層の接触部分を図3に記載のように、それぞれの第一導電層312、322、332の一部が第二支持体307とそれぞれの多孔性光電変換層313、323、333の間に延在した構造としたこと以外は、実施例2に準じて作製した。
上記の工程によって作製した太陽電池モジュールを、実施例1同様、AM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度12.6mA/cm2、開放電圧値2.1V、FF0.65、変換効率5.7%であった。
(実施例6)
図4に記載したように、隣接する太陽電池の接続方法を並列接続したこと以外は、実施例2に準じて作製した。ただし、第二導電層の触媒層と集電体に、白金のみを用いてスパッタリングにより形成した。また、モジュールの外部電極取り出しは、第一導電層412、422、442及び第二導電層415と435はモジュール外部でそれぞれ接続した。
上記の工程によって作製した太陽電池モジュールを、実施例1同様、AM1.5の擬似太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度12.0mA/cm2、開放電圧値0.69V、FF0.65、変換効率5.4%であった。
(実施例7)
図5に記載したように、隣接する太陽電池の接続方法を並列接続したこと以外は、実施例2及び実施例6に準じて作製した。第二導電層を構成する触媒層515、525、545は白金を用いてスパッタリングにより形成した。
上記の工程によって作製した太陽電池モジュールを、実施例1同様、AM1.5擬似の太陽光照射下で動作特性を測定した結果、短絡電流密度12.1mA/cm2、開放電圧値0.70V、FF0.66、変換効率5.6%であった。
本発明の色素増感型太陽電池の断面概略図である。 本発明の色素増感型太陽電池モジュールの断面概略図である。 本発明の色素増感型太陽電池モジュールの断面概略図である。 本発明の色素増感型太陽電池モジュールの断面概略図である。 本発明の色素増感型太陽電池モジュールの断面概略図である。 従来の色素増感型太陽電池の断面概略図である。
符号の説明
1、201、301、401、501 第一支持体
2、212、222、232、312、322、332、412、422、442、512、522、532、542 第一導電層
3、63、213、223、233、313、323、333、413、423、433、443、513、523、533、543 多孔性光電変換層
4、214、224、234、314、324、334、414、424、434、444、514、524、534、544 キャリア輸送層
5、215、225、235、315、325、335、415、435、515、525、545 触媒層
6、236、336 集電体
7 第二導電層
8、207、307、407、507 第二支持体
61 透明基板
62 透明導電膜
64 多孔性絶縁層
65 導電層
66 絶縁層
67 電気絶縁性液体密閉用トップカバー
68、69 端子

Claims (9)

  1. 第一支持体と第二支持体間に、第一導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層及び第二導電層を順次備え、前記4つの層は、第一導電層と第二導電層を結ぶキャリア移動方向が第一支持体面と平行になるように、並列して配置された構造を有し、かつ前記第一導電層と前記第二導電層とが、前記第一支持体面に対して垂直方向にオーバーラップしないように配置された構造を有することを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 第一支持体と第二支持体間に、第一導電層、色素を吸着させた多孔性光電変換層、キャリア輸送層及び第二導電層を順次備え、前記4つの層は、第一導電層と第二導電層を結ぶキャリア移動方向が第一支持体面と平行になるように、並列して配置された構造を有し、かつ前記第二導電層が、集電体と触媒層から構成されていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  3. 前記触媒層が少なくとも白金、カーボン又は導電性高分子を含むことを特徴する請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記第一導電層の一部が、第二支持体と多孔性光電変換層の間に延在していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記第一導電層と前記第二導電層とが、それぞれ前記第一支持体及び前記第二支持体に接する請求項1〜のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池。
  6. 請求項1〜のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池を複数個配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、色素増感型太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の色素増感型太陽電池の第二導電層とを接触させることにより、色素増感型太陽電池を直列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
  7. 請求項1〜のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池を複数個配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、色素増感型太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の色素増感型太陽電池の第二導電層とを接触させることにより、色素増感型太陽電池を直列接続させ、かつ前記直列接続させた色素増感型太陽電池を複数群有し、隣接する色素増感型太陽電池群の端部の第一導電層同士を接触させ、かつ隣接する色素増感型太陽電池群の端部の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を直並列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
  8. 請求項1〜のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池を複数個配置した色素増感型太陽電池モジュールであって、隣接する色素増感型太陽電池の第一導電層同士を接触させ、かつ隣接する色素増感太陽電池の第二導電層同士を接触させることにより、色素増感太陽電池を並列接続させて集積化させたことを特徴とする色素増感型太陽電池モジュール。
  9. 色素増感型太陽電池の第一導電層と、それに隣接する他の色素増感型太陽電池の第二導電層を構成する集電体が同一材料及び/又は同一工程にて作製されたことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つに記載の色素増感型太陽電池モジュール。
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