JP4517407B2 - 光情報記録媒体の記録再生用光ピックアップ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は光源から出射した光束を集光光学系で情報記録面に集光させ、光情報記録媒体上に情報を記録再生する光情報記録媒体の記録再生方法、該方法を実施するための光ピックアップ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、短波長赤色半導体レーザの実用化に伴い、従来の光情報記録媒体(光ディスクとも云う)であるCD(コンパクトディスク)と同程度の大きさで大容量化させた高密度の光情報記録媒体であるDVDの開発がなされた。このDVDでは、635nmの短波長半導体レーザを使用したときの対物レンズの光ディスク側の開口数NAを0.6としている。なお、DVDは、トラックピッチ0.74μm、最短ピット長0.4μmであり、CDのトラックピッチ1.6μm、最短ピット長0.83μmに対して半分以下に高密度化されている。また、上述したCD、DVDの他に、種々の規格の光ディスク、例えばCD−R(追記型コンパクトディスク)LD(レーザディスク)MD(ミニディスク)MO(光磁気ディスク)なども商品化されて普及している。表1に種々の光ディスクの透明基板の厚さと、必要開口数を示す。
【表1】
【0003】
上記光情報記録媒体中、CD−Rについては光源波長λ=780nmである必要があるが、他の光ディスクにおいては、表1に記載した光源波長以外の波長の光源を使用することが出来、使用する波長に応じて必要開口数が変わり、例えば、CDの場合は必要開口数NA=λ(μm)/1.73、DVDの場合は必要開口数NA=λ(μm)/1.06で近似されることはよく知られている。
【0004】
このように、サイズ、基板厚、記録密度、使用波長などが種々異なる様々な光ディスクに対応するため、異なる光ディスクそれぞれに対応した集光光学系を備え、記録再生する光ディスクにより集光光学系を切替る光ピックアップ装置が提案されている。しかし、この光ピックアップ装置では、集光光学系が複数必要となり、コスト高を招くばかりでなく、集光光学系を切替るための駆動機構が必要となり装置が複雑化し、その切替精度も要求されると云う問題がある。
【0005】
そこで、1つの集光光学系によって複数の光ディスクを記録再生する光ピックアップ装置が種々提案されている。
その1つとして特開平7−302437号公報には、対物レンズの屈折面をリング状の複数領域に分割し、各々の分割面が厚さの異なる光ディスクのうちの1つにビームを結像させることにより、記録再生する光ピックアップ装置が開示されている。
【0006】
また、特開平7−57271号公報には、透明基板の厚さt1の第1の光ディスクのときには、集光されるビームの有する波面収差が0.07λ以下となるように設計した対物レンズを用い、透明基板の厚さt2の第2光ディスクのときには少しデフォーカスした状態で集光スポットを形成する光ピックアップ装置が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−302437号公報開示の光ピックアップ装置は、1つの対物レンズで2つの焦点に入射光量を分割するため、レーザ出力を大きくする必要があり、コスト高を招く。また、特開平7−57271号公報開示の光ピックアップ装置は、第2光ディスク記録再生時にはサイドローブによるジッターの増加が起こる。特に、第1の光ディスクで波面収差が0.07λ以下とされた対物レンズで、第2光ディスクをむりやり記録再生しているため、第2光ディスクの記録再生可能な開口数には限界が生じる。
【0008】
本発明は、1つの集光光学系で複数の光情報記録媒体を記録再生出来、低コストかつ簡素な構成で実現でき、さらに、高NAの光情報記録媒体にも対応できる光情報記録媒体の記録再生方法、該方法を実施するための光ピックアップ装置および該ピックアップ装置のための対物レンズを得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の光ピックアップ装置は、波長λ1の光束を出射する第1光源と、波長λ2(ただしλ2≠λ1)の光束を出射する第2光源と、集光光学系とを有し、第1光情報記録媒体に対して、前記波長λ1の光束を前記集光光学系で厚さt1の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生し、前記第1光情報記録媒体とは異なる第2光情報記録媒体に対して、前記波長λ2の光束を前記集光光学系で厚さt2(ただし、厚さt2≠t1)の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生する光ピックアップ装置において、前記集光光学系を構成する少なくとも1つの光学面を前記光学面の中央に位置する光軸近傍の第1分割面と、前記第1分割面との間に第2分割面を挟んで位置する第3分割面とに分割された光学面で構成し、前記第2分割面は少なくとも前記波長λ1の光束又は前記波長λ2の光束を回折し、前記第1光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面および前記第3分割面を通過した光束および前記第2分割面で回折された光束又は前記分割面を透過した光束によりビームスポットを形成し、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面を通過した光束及び前記第2分割面を透過した光束又は前記第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成し、前記第1光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ1の光束の回折次数と、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ2の光束の回折次数とは、異なっており、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第3分割面を通過した光束はフレアとなることを特徴とする。
【0010】
本発明の対物レンズは、波長λ1の光束を出射する第1光源と、波長λ2(ただしλ2≠λ1)の光束を出射する第2光源と、対物レンズとを有し、第1光情報記録媒体に対して、前記波長λ1の光束を前記対物レンズで厚さt1の透明基板を介して情報記録面集光させ、情報記録面上に情報を記録再生し、前記第1情報記録媒体とは異なる第2光情報記録媒体に対して、前記波λ2の光束を前記対物レンズで厚さt2(ただし、厚さt2≠t1)の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生する光ピックアップ装置で用いられる対物レンズにおいて、前記対物レンズの少なくとも1つの光学面は、前記光学面の中央に位置する光軸近傍の第1分割面と、前記第1分割面との間に第2分割面を挟んで位置する第3分割面とに分割され、前記第2分割面は少なくとも前記波長λ1の光束又は前記波長λ2の光束を回折し、前記第1光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面および前記第3分割面を通過した光束および前記2分割面で回折された光束又は前記第2分割面を透過した光束によりビームスポットを形成し前記第2光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面を通過した光束及び前記第2分割面を透過した光束又は前記第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成し前記第1光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ1の光束の回折次数と、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ2の光束の回折次数とは、異なっており、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第3分割面を通過した光束はフレアとなることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
上記の分割面は、対物レンズに設けることが出来、光学面の中央に位置する光軸近傍の第1分割面と、該第1分割面との間に第2分割面を挟んで位置する第3分割面とに分割された光学面で構成し、
透明基板の厚さがt1の第1光情報記録媒体の記録再生の際には上記第1分割面および第3分割面を通過した光束および第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成し、
透明基板の厚さがt2(ただし、t2≠t1)の第2光情報記録媒体の記録再生の際には上記第1分割面を通過した光束および第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成するようにすることが出来る。
【0012】
このとき、対物レンズは、透明基板の厚さがt1の第1光情報記録媒体の記録再生に必要な光情報記録媒体側の開口数NA1の範囲内において、厚さt1の透明基板を介して第1光情報記録媒体に集光させた光束の最良波面収差が、0.05λrms以下となるように第1非球面と共通屈折面とを設計すると共に、
透明基板の厚さがt2(ただし、t2≠t1)の第2光情報記録媒体に1次光により集光させた光束の球面収差の発生量が、第2の光情報記録媒体に第1非球面を介して集光させたときの球面収差の発生量より少なくなるように、前記共通屈折面に対する第1回折面を、その光軸側縁の開口数が0.35以上であるように設計する。
第1光情報記録媒体の記録再生を行なう場合、回折面によって回折された第2光情報記録媒体用の光束がフレアとなるのを避けることは出来ない。対物レンズへの入射光束が、ガウシアン分布であれば、光軸付近の光強度が大きいので、開口数を小さくすればこの強度の大きい部分を回折することとなり、スポット光量が不足し、一方、ボトムジッターが悪化する。従って、第2分割面である回折面の光軸側縁の開口数は0.35以上であることが望ましい。
これら第1非球面と第1回折面とを、上記第2光情報記録媒体の記録再生に必要な対物レンズの情報記録面側の開口数をNA2(ただし、NA2<NA1)としたとき、上記第1非球面の上記NA2近傍の光束が通過する部分に上記第1回折面が位置するように合成する。
このとき、上記第1非球面の軸上曲率半径と、上記第1回折面の軸上曲率半径とを同一として設計することが好ましく、
上記第1非球面は、合成する第1回折面よりも光軸側に位置する第1非球面を通過し、透明基板の厚さがt2の第2光情報記録媒体に集光させた光束の最良波面収差が0.07λrms以下であることが望ましい。
対物レンズの構成は、実施例の説明中でより具体的に記載にする。
【0013】
【実施例】
以下図面を参照して、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
実施例に先立ち、本発明を実施する光ピックアップ装置について説明する。図5は本発明を実施する光ピックアップ装置の構成を示す概念図であり、光ピックアップ装置10は光源である半導体レーザ11、偏光ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13、1/4λ板14、絞り17、対物レンズ16、非点収差素子であるシリンドリカルレンズ18、光検出器30、およびフォーカス制御およびトラッキング制御のための2次元アクチュエータ15などからなる。
【0014】
光源である半導体レーザ11からの光束は、偏光ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13および1/4λ板14を透過して円偏光の平行光束となり、絞り17により絞られ、対物レンズ16によって光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22上に集光される。情報記録面22で情報ピットにより変調された反射光束は、再び対物レンズ16、1/4λ板14、コリメータレンズ13により収束光となり、偏光ビームスプリッタ12で反射し、シリンドリカルレンズ18を経て光検出器30に入射する。その出力信号を用いて光ディスク20に情報記録された情報の読み取り信号が得られる。一方、光検出器30上でのスポットの形状変化による光量分布変化を検出して合焦検出やトラック検出を行なう。光検出器30からの出力を用いて周知のように図示しない演算回路によってフォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号が生成され、このフォーカスエラー信号に基づいて2次元アクチュエータ15が、光束を情報記録面22上に結像するように対物レンズ16を光軸方向に移動させ、同時にトラッキングエラー信号に基づいて光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ16を光軸と垂直な方向に移動させる。
【0015】
このような光ピックアップ装置10において、透明基板の厚さがt1の第1光ディスク、例えばDVD(t1=0.6mm)を記録再生する際には、ビームスポットが最小錯乱円を形成するよう(ベストフォーカス)に対物レンズ16を、2次元アクチュエータ15により駆動する。この対物レンズ16を用いて、透明基板の厚さがt1と異なるt2(好ましくはt2>t1)で情報記録密度が第1光ディスクよりも低い第2光ディスク、例えばCD(t2=1.2mm)を記録再生する際には、透明基板の厚さが異なる(好ましくはお大きくなる)ことで球面収差が発生し、ビームスポットが最小錯乱円となる位置(近軸焦点位置より後方の位置)では、スポットサイズが大きく第2光ディスクのピット(情報)を読むことは出来ない。しかしながら、この最小錯乱円となる位置より対物レンズ16に近い前側位置(前ピン)では、スポット全体の大きさは最小錯乱円よりも大きいが、中央部に光量が集中した核と、核の周囲に不要光であるフレアとが形成される。この核を第2光ディスクのピット(情報)を読むために利用し、第2光ディスク記録再生時には、対物レンズ16をデフォーカス(前ピン)状態になるように2次元アクチュエータ15を駆動する。
【0016】
次に、上記のような透明基板の厚さが異なる第1光ディスクと第2光ディスクを1つの光ピックアップ装置10で再生するために、対物レンズ16に本発明を実施した例を説明する。図1は、対物レンズ16を模式的に示した断面図である。なお、一点鎖線は光軸を示している。図示の第1光ディスク20は、その透明基板の厚さt1は、第2の光ディスクの透明基板の厚さt2よりも薄く、情報記録密度は第2光ディスクよりも大きい。
【0017】
本実施例において、対物レンズ16は、光源側の面S1および光ディスク20側の屈折面S2は共に非球面形状を呈した正の屈折力を有した凸レンズである。また、対物レンズ16の光源側の面S1は光軸と同心状に複数(本実施例では3つ)の第1分割面Sd1〜第3分割面Sd3から構成されている。分割面Sd1〜Sd3の境界は段差を設けて、かつ第2分割面Sd2にはホログラムが形成されている。この対物レンズ16において、光軸を含む第1分割面Sd1を通過する光束(第1光束)は第1光ディスクに記録された情報の再生および第2光ディスクに記録された情報の再生に利用し、第1分割面Sd1より外側の第2分割面Sd2で回折される光束(第2光束)は主に0次光、すなわち透過光が第1光ディスクおよび1次回折光が第2ディスクに記録された情報の再生に利用し、第2分割面Sd2より外側の第3分割面Sd3を通過する光束(第3光束)は主に第1光ディスクに記録された情報の再生に利用するような形状となっている。
【0018】
このように、光源から出射される光束を、光軸近傍の第1光束を第1光ディスクの再生および第2光ディスクの再生に利用し、第1光束より外側の第2光束を第1光ディスクおよび第2光ディスクの再生に利用し、第2光束より外側の第3光束を主に第1光ディスクの再生に利用することにより、光源からの光を光量損失を抑えつつ、1つの集光光学系で複数(本実施例では2つ)の光ディスクの再生が可能となる。しかもこの場合、第2光ディスクの再生時には第3光束の大部分は不要光であるが、この不要光が第2光ディスクの再生には利用されないので、絞り17を第1光ディスクの再生に必要な開口数にしておくだけで、絞り17の開口数を変える手段を何ら必要とせずに再生することが出来る。
【0019】
さらに詳述すると、本実施例の対物レンズ16は、第1光ディスクを再生する際には(図2参照)第1分割面Sd1および第3分割面Sd3を通過する第1光束および第3光束(斜線で示される光束)および第2分割面Sd2の0次回折光は、ほぼ同一の第1結像位置に結像し、その波面収差(第2分割面Sd2を通過する第2光束を除いた波面収差)は、0.05λrms以下となっている。ここでλは光源の波長である。
これにより、第1光束、第2光束および第3光束で第1光ディスクの再生が行なわれる。
【0020】
このとき、第2分割面Sd2を通過する第2光束の1次回折光(破線で示される光束)は、第1結像位置とは異なった第2結像位置に結像する。この第2結像位置は第1結像位置を0(零)として、それより対物レンズ16側を負、その反対側を正とすると、第1結像位置から−27μm以上−4μm以下の距離にする(第2結像位置を第1結像位置より対物レンズに近付ける。)。この下限−27μmを越えると、球面収差の補正し過ぎとなり、第1光ディスクの再生時のスポット状況が悪くなり、また、上限−4μmを越えると、第2光ディスクの再生時のスポット径、サイドローブが大きくなる。なお、本実施例では、t1<t2、NA1>NA2であるので、第2結像位置を第1結像位置から−27μm〜−4μmとしたが、t1>t2、NA1<NA2の場合は、第2結像位置を第1結像位置から4μm〜27μmにする。
【0021】
また、上記の対物レンズ16を所定の厚さ(t2=1.2mm)の透明基板を有する第2光ディスクの再生に使用する際には、図2に示すように対物レンズ166に入射する所定の光束(平行光束)の場合、第1光束(右肩上がりの斜線で示す)のうち光軸近傍を通過する光線が光軸と交わる位置と、光軸と直交する方向で第1分割面Sd1の端部(第2分割面Sd2側)を通過する光線が光軸と交わる位置との間に、第2光束(右肩下がりの斜線で示す)の1次回折光が光軸と交わる(結像する)ようになる。よって、第1光束および第2光束は、第2光ディスクの情報記録面近傍に集光され、第2光ディスクの再生が行なわれる。このとき、第3光束(途中まで破線で示される)はフレアとなるが、第1光束および第2光束で形成される核により第2光ディスクの再生が可能となる。
【0022】
換言すると、本発明は、開口数の小さい光軸近傍を通過する第1光束を、再生できる全ての光ディスクの再生に利用し、また、第1分割面より外側を通過する第2光束を再生する各光ディスクに対応するように分け、分けられた各光束を各光ディスク(本実施例では第1、第2光ディスク)の再生に利用する。さらに、光ディスクの情報を再生するために必要な開口数が大きい方の光ディスク(本実施例では第1光ディスク)の再生には分けられた光束のうち第1光束から離れた光束(本実施例では第3光束)を利用する。
【0023】
このような光学系(本実施例では対物レンズ16)を用いると、透明基板の厚さが異なる複数のディスクを1つの光学系で再生することが可能となり、また、任意に分割面径を設定できることにより、第2光ディスクの再生に必要な開口数NA2を大きくすることが出来る。また、光軸近傍の光束を複数の光ディスクの再生に利用することで、光源からの光束の光量損失が少なくなる。しかも、第2光ディスク再生時には、ビームスポットのサイドローブを減少させ、ビーム強度の強い核を形成し、正確な情報が得られる。さらに、絞り17の開口数を変更する特別な手段を必要とせずに複数のディスクを1つの集光光学系で再生することができる。
【0024】
なお、本実施例では、分割面Sd1〜Sd3および回折面を対物レンズ16の光源側の面S1に設けたが、ディスク20側の屈折面に設けてもよく、また、他の集光光学系の光学素子(例えば、コリメータレンズ13など)の1つにこのような機能を持たせてもよく、さらに、新たにこのような機能を有する光学素子を光路上に設けてもよい。また、各分割面Sd1〜Sd3の機能を異なる光学素子に分解して設けてもよい。
【0025】
また、本実施例では、コリメータレンズ13を用いた、いわゆる無限系の対物レンズ16を用いたが、コリメータレンズ13がなく、光源からの発散光が直接または発散光の発散度合いを減じるレンズを介した発散光が入射するような対物レンズや、光源からの光束を収斂光に変更するカップリングレンズを用い、その収斂光が入射するような対物レンズに適用してもよい。
【0026】
また、本実施例では、面S1を3つの分割面Sd1〜Sd3で構成したが、これに限らず、少なくとも3つ以上の分割面で構成すればよい。たとえば、面S1を5つの分割面Sd1〜Sd5で構成したこの場合、第2および第4分割面をホログラムとし、第3分割面と第4分割面の境界の開口数をNA3、第4分割面と第5分割面との境界の開口数をNA4としたとき、0.60(NA2)<NA3<1.3(NA2)、0.01<NA4−NA3<0.12の条件を満足することが好ましい。これにより、第1ディスクに集光させる光スポットの強度を落とすことなく、第2光ディスクとしてより大きな必要開口数のディスクを再生することが出来る。さらに、NA3の上限はNA3<1.1(NA2)であることが実用上好ましく、またNA3の下限は0.80(NA2)<NA3が好ましく、さらに0.85(NA2)<NA3であることが実用上好ましい。また、NA4−NA3の上限は、NA4−NA3<0.1であることが好ましい。
【0027】
また、本実施例では、光源から対物レンズ16を見たときに、第2分割面Sd2を光軸と同心円状の環形状のホログラムを設けたが、これに限られず、フレネルで構成してもよい。なお、0次光と1次光とに分けた光束の一方を第1光ディスクの再生に利用し、他方を第2光ディスクの再生に利用する。このとき、第2光ディスクの再生に利用する光束の光量を大きくしてもよい。さらに、主に0次光と1次光とを利用する回折面を設けたが、1次光と2次光を利用する回折面としたり、高次光を利用する回折面としてもよい。
【0028】
また、本実施例において、第1ディスクを再生する際(すなわち、厚さt1の透明基板を介したとき)第1分割面Sd1および第3分割面Sd3を通過する光束による最良波面収差が0.05λrms(ただし、λ(nm)は第1ディスクを再生する際に使用する光源の波長)を満たすだけでなく、さらに、第2光ディスクを再生する際(すなわち、厚さt2の透明基板を介したとき)第1分割面Sd1を通過する光束による最良波面収差が回折限界である0.07λrms(ただし、λ(nm)は第2ディスクを再生する際に使用する光源の波長)を満たすことにより、第2光ディスクの再生信号を良好にすることが出来る。
【0029】
次に、第2の実施例について、対物レンズ16の球面収差図を模式的に示した図である図3を参照して説明する。図3において(a)は第1ディスクを再生、すなわち厚さt1の透明基板を介したときの球面収差であり、(b)は第2ディスクを再生、すなわち、厚さt2(本実施例ではt2>t1)の透明基板を介したときの球面収差である。ここで、第1光ディスクの情報を再生するために必要な集光光学系の光ディスク側の必要開口数をNA1、第2光ディスクの情報を再生するために必要な集光光学系の光ディスク側の必要開口数をNA2(ただし、NA2<NA1)、対物レンズ16の分割面Sd1とSd2との境界を通過する光束の光ディスク側の開口数をNAL、対物レンズ16の分割面Sd2とSd3との境界を通過する光束の光ディスク側の開口数をNAHとする。
【0030】
なお、第2の実施例は上記の第1実施例として記載した対物レンズ16を別の観点(球面収差、形状、波面収差など)から見たものであって、以下に記載しない部分は上記実施例と同様である。
【0031】
上記第1実施例のような対物レンズ16は、まず、透明基板の厚さがt1の第1光ディスクに集光させた光束の最良波面収差が0.05λrms以下となるように第1屈折面S1の第1非球面(輪帯状分割面)と第2屈折面S2(共通屈折面)を設計する。この設計により得られたレンズの球面収差が図3(a)である。そして、0次光は第1光ディスク使用時には球面収差に影響を与えず、1次回折光はこの第1非球面を有するレンズを介して透明基板の厚さがt2(t2≠t1)の第2光ディスクに集光させたときの球面収差の発生量(図3(c))よりも、少ない球面収差となるように第2屈折面S2(共通屈折面)はそのままで第1回折面を設計する。このとき第1回折面の近軸曲率半径と第1非球面の近軸曲率半径とは同じにすることが、デフォーカス状態で再生を行なう第2光ディスクの再生を良好に行なうために好ましい。この設計により得られたレンズの第2光ディスクに集光させたときの球面収差が図3(d)であり、また、このレンズで第1光ディスクに集光させたときのレンズの収差図が図3(a)である。そして、この第1非球面の第2光ディスクの必要開口数NA2近傍で第1回折面を合成する。
【0032】
従って、この対物レンズ16の屈折面S1における面形状としては、光軸を含む第1分割面Sd1と第1分割面Sd1より外側の第3分割面Sd3とは同じ非球面形状(第1非球面)となり、その第1分割面Sd1と第3分割面Sd3との間(第2光ディスクの再生に必要な開口数NA2近傍、すなわち、NAL〜NAH)の第2分割面Sd2は、第1分割面Sd1および第3分割面Sd3とは異なる面形状となる。得られたレンズが本実施例の対物レンズ16となり、この対物レンズ16を用いて第1光ディスクに集光させたときの球面収差図は図3(a)となり、第2光ディスクに集光させたときの球面収差図は図3(b)となる。
【0033】
上述したように、本実施例において得られた対物レンズ16は、開口数NA2の近傍の少なくとも2つの開口位置(NALとNAH)で、透明基板の厚さが異なる複数のディスクを1つの集光光学系で再生できるように、球面収差が不連続に変化するように構成している。このように球面収差が不連続に変化するようにしたので、各々の開口数の範囲(本実施例では光軸〜NALの第1分割面、NALからNAHの第2分割面、NAH〜NA1の第3分割面)を通過する光束(本実施例では第1光束〜第3光束)を任意に構成することが出来、第1光束を再生する複数の光ディスク全ての再生に利用し、第2光束および第3光束をそれぞれ複数の光ディスクのうち所定の光ディスクの再生に利用することが可能となり、1つの集光光学系(本実施例では対物レンズ16)で複数の光ディスクを再生出来、低コストかつ複雑化しないで実施出来、さらに、高NAの光ディスクにも対応できる。しかも絞り17は、高NAであるNA1に対応するように設けるだけでよく、光ディスク再生に必要な開口数が変化(NA1或いはNA2に)したとしても、絞り17を変化させる手段を何ら設ける必要もない。なお、「球面収差が不連続に変化する」とは、球面収差図で見たときに急激な球面収差の変化が見られることを云う。
【0034】
さらに、球面収差の不連続に変化する方向は、小さい開口数から大きい開口数へと見たときに、開口数NALでは球面収差が負の方向に、開口数NAHでは球面収差が正の方向になっている。これにより、薄い透明基板の厚さt1の光ディスクの再生が良好になるとともに、これより厚い透明基板の厚さt2の光ディスクの再生が良好に行なうことが出来る。なお、本実施例ではt2>t1、NA1>NA2であるために、上述したように球面収差は、開口数NALでは負の方向に、開口数NAHでは正の方向に不連続に変化するが、t2<t1、NA1>NA2の場合は、開口数NALでは正の方向に、開口数NAHでは負の方向に球面収差が不連続に変化することになる。
【0035】
さらに、透明基板の厚さt2の第2光ディスクを再生する際には、開口数NALから開口数NAHまでの間の球面収差(第2分割面Sd2により回折された光束による球面収差)が正となるようにすることにより、光ピックアップ装置10のS字特性が向上する。なお、本実施例ではt2<t1、NA1>NA2であるために、開口数NALから開口数NAHまでの間の球面収差が正となるようにしたが、t2<t1、NA1>NA2の場合は、負とするとよい。
【0036】
また、本実施例の対物レンズ16の波面収差を図4に示す。図4は縦軸に波面収差(λ)、横軸に開口数をとった波面収差曲線であり、(a)は第1光ディスクの透明基板(厚さt1)を介したときを、(b)は第2光ディスクの透明基板(厚さt2)を介したときの波面収差を実線で表している。なお、この波面収差は、それぞれの透明基板を介したときに最良の波面収差となる状態で干渉計などを用いて波面収差を測定して得る。
【0037】
図4(b)からわかるように、本実施例の対物レンズ16は、波面収差曲線でみると、開口数NA2近傍の2か所(具体的にはNALとNAH)で波面収差が不連続となっている。また、不連続となっている部分に発生する最大の波面収差の不連続量は、長さの単位(mm)で表すと、0.05(NA2)2(mm)以下、位相の単位(rad)で表すと、2π{0.05(NA2)2}/λ(rad)以下(ただし、この場合λは使用波長で単位はmm)とすることが望ましい。これ以上では、波長変動による波面収差の変動が大きくなり、半導体レーザの波長のバラツキを吸収出来なくなる。さらに、この不連続の部分(NALとNAHの間)の波面収差の傾きは、不連続となっている部分の両側の曲線の端部を結ぶ曲線(図4(a)の破線)の傾きとは異なっている。
なお、本実施例では分割面Sd1〜SD3を対物レンズ16の光源側の面S1に設けたが、光ディスク20側の屈折面に設けてもよい。
【0038】
また、本実施例では、コリメータレンズ13を用いた、いわゆる無限系の対物レンズ16を用いたが、コリメータレンズ13がなく、光源からの発散光が直接または発散光の発散度合いを減じるレンズを介した発散光が入射するような対物レンズや、光源からの光束を収斂光に変更するカップリングレンズを用い、その収斂光が入射するような対物レンズによってもよい。
【0039】
本実施例において、第1非球面を設計する際には、前述のように厚さt1の透明基板を介したとき第1分割面Sd1と第3分割面Sd3を通過する光束による最良波面収差が0.05λrms(ただし、λ(nm)は第1ディスクを再生する際に使用する光源の波長)以下とするだけでなく、厚さt2の透明基板を介したとき第1分割面Sd1を通過する光束による最良波面収差が回折限界である0.07λrms(ただし、λ(nm)は第2ディスクを再生する際に使用する光源の波長)を満たすように設計を行なうことにより、第2光ディスク再生信号を良好にすることができる。
【0040】
次に、波長の異なる2つの光源を有する光ピックアップ装置における実施例を示す。図5の光ピックアップ装置は1つの光源111を用いるものであったが、図6に示す光ピックアップ装置10は光源111と112の2つを用いる。図5中の素子と同じ素子は同じ符号で示す。
第1光ディスクの再生用に、第1光源である第1半導体レーザ111(波長λ1=610nm〜670nm)と、第2光ディスクの再生用に第2光源である第2半導体レーザ112(波長λ1=740nm〜870nm)とを有している。また、合成手段19は、第1半導体レーザ111から出射された光束と第2半導体レーザ112から出射された光束とを合成することが可能な手段であって、両光束を1つの集光光学系を介して光ディスク20に集光させるために、同一光路とする手段である。
【0041】
まず、第1ディスクを再生する場合、第1半導体レーザ111からビームを出射し、出射された光束は合成手段19、偏光ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13、1/4波長板14を透過して円偏光の平行光束となる。この光束は、絞り17によって絞られ、対物レンズ16により第1光ディスク20の透明基板21を介して情報記録面22上に集光される。そして情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ16、1/4波長板14、コリメータレンズ13を透過して偏光ビームスプリッタ12に入射し、ここで反射してシリンドリカルレンズ18により非点収差が与えられ光検出器30上へ入射し、光検出器30から出力される信号を用いて第1光ディスク20に記録された情報の読み取り信号が得られる。また、光検出器30上でのスポットの形状変化による光量分布変化を検出して合焦検出やトラック検出を行なう。この検出に基づいて2次元アクチュエータ15が、半導体レーザ111からの光束を第1光ディスクの情報記録面22上に結像するように対物レンズ16を光軸方向に移動させるとともに、光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ16を光軸と垂直な方向に移動させる。
【0042】
一方、第2ディスクを再生する場合、第2半導体レーザ112からビームを出射し、出射された光束は合成手段19により光路を変更され、その後、偏光ビームスプリッタ12、コリメータレンズ13、1/4波長板14、絞り17、対物レンズ16を介して第2光ディスク20上に集光される。そして、情報記録面22で情報ピットにより変調されて反射した光束は、再び対物レンズ16、1/4波長板14、コリメータレンズ13、偏光ビームスプリッタ12、シリンドリカルレンズ18を介して光検出器30上へ入射し、光検出器30から出力される信号を用いて第2光ディスク20に記録された情報の読み取り信号が得られる。また、光検出器30上でのスポットの形状変化による光量分布変化を検出して合焦検出やトラック検出を行なう。この検出に基づいて2次元アクチュエータ15が、半導体レーザ112からの光束を第1光ディスクの情報記録面22上にデフォーカス状態で結像するように対物レンズ16を光軸方向に移動させるとともに、光束を所定のトラックに結像するように対物レンズ16を光軸と垂直な方向に移動させる。
【0043】
このような光ピックアップ装置10の集光光学系の1つである対物レンズ16に、先の実施例のような対物レンズを用いる。すなわち、対物レンズ16は、光源側の面S1および光ディスク側の屈折面S2は共に非球面形状を呈した正の屈折力を有する凸レンズであり、光源側の面S1は、光軸と同心上に複数(本実施例では3つ)の第1分割面Sd1〜第3分割面Sd3から構成され、分割面Sd1〜Sd3の境界は段差を設ける。そして、第1分割面Sd1および第3分割面Sd3は、第1光源111から出射して第1光ディスクに集光させた光束の最良波面収差が0.05λrms以下となるような第1非球面で形成し、また、第2分割面は、第1非球面を有するレンズを介して第2光源112の光束を透明基板の厚さがt2(t2≠t1)の第2光ディスクに集光させたときの球面収差の発生量よりも少ない球面収差となるように回折面で形成し、この第1非球面の第2光ディスクの必要開口数NA2近傍であるNAL〜NAHに、回折面を合成した対物レンズとする。
得られた対物レンズ16は、以下の点を除き先の実施例と同様の構成、作用、効果を持つこととなり、さらに、2つの光源を用いるので、複数の光ディスクを再生するに際して自由度が大きくなる。
【0044】
本実施例では、2つの光源111、112を用いるので、以下の好ましい範囲が先の実施例と異なる。
すなわち、t1=0.6mm、t2=1.2mm、610nm<λ1<670nm、740nm<λ2<870nm、0.4<NA2<0.51としたき、0.60(NA2)<NAL<1.1(NA2)の条件(この下限0.60(NA2)は実用上、0.80(NA2)が好ましく、さらに0.85(NA2)であることが好ましい。)を満たすことが好ましい。この下限を超すとサイドローブが大きくなり、情報の正確な再生が出来ず、上限を超すと波長λ2とNA2において想定される回折限界スポット径以上に絞られ過ぎる。なお、ここで云うNALは第2光源112を用いたときの第2分割面Sd2上でのNALを指す。
【0045】
また、0.01<NAH−NAL<0.12(この上限0.12は、実用上、0.1であることがさらに好ましい。)の条件を満たすことが好ましい。この下限を超すと第2光ディスクの再生時のスポット形状が悪化し、サイドローブ・スポット径が大きくなり、上限を超すと第1光ディスクの再生時のスポット形状が乱れ、光量低下を引き起こす。なお、ここでいうNAHおよびNALは、第2光源112を用いたときの第2分割面Sd2上でのNAHおよびNALを指す。
【0046】
また、第2光ディスクの再生時(t2の厚さの透明基板を介した際)に、開口数NALから開口数NAHの間の球面収差が、−2(λ2)/(NA2)2以上、5(λ2)/(NA2)2以下の条件を満たすことが好ましい。さらに、この条件は、再生の場合は3(λ2)/(NA2)2以下が好ましく、或いは、記録をも考慮すると(もちろん、再生もできる。)0(零)より大きいことが好ましい。この下限を超すと球面収差の補正し過ぎとなり第1光ディスク再生時のスポット形状が悪化し、上限を超すと第2光ディスクの再生時のスポット形状が悪化し、サイドローブ・スポット径が大きくなる。特に、この条件は、0〜2(λ2)/(NA2)2の範囲を満足することがさらに好ましく、この場合、フォーカスエラー信号が良好に得られる。
【0047】
また、別の観点から見ると、0.60(NA2)<NA3<1.1(NA2)の条件(この下限0.60(NA2)は実用上0.80(NA2)が好ましく、さらに0.85(NA2)であることが好ましい。)を満足すると共に、0.01<NA4−NA3<0.12(好ましくは0.1)の条件を満足する対物レンズ16の光ディスク側の開口数NA3と開口数NA4の間に、前述したNALとNAHとを設ける(すなわち、主に第2光ディスクの再生に利用する分割面を設ける。)ことである。これにより、第1光ディスクに集光させる光スポットの強度を落とすことなく、第2光ディスクとしてより大きな必要開口数の光ディスクを再生することが出来る。
【0048】
特に、t2>t1、NA1>NA2で、光軸から円周方向へとみたとき、開口数NALでは、屈折面の法線と光軸との交点が、光源側の屈折面に近づく方向に不連続に変化し、開口数NAHでは、屈折面の法線と光軸との交点が、光源側の屈折面から遠のく方向に不連続に変化している。これにより、薄い透明基板の厚さt1の光ディスクの再生が良好になると共に、これより厚い透明基板の厚さt2の光ディスクの再生が良好に行なうことが出来る。
【0049】
また、先の実施例と同様に、別の観点から本実施例を見ると、少なくとも一方の面を光軸と同心状に分割された複数の分割面(本実施例では3つの分割面)を有する対物レンズ16において、第1分割面Sd1を透過した光と、第3分割面Sd3を透過した光とが、所定の厚さ(第1光ディスク)の透明基板を介して、ほぼ同じ位相となるようにしたとき、第1分割面Sd1を透過し透明基板を介した光と、第2分割面Sd2のほぼ中央位置より光軸側の第2分割面Sd2を透過し透明基板を介した光と、の位相差を(△1L)π(rad)とし、第3分割面Sd3を透過し透明基板を介した光と、前記中央位置より光軸側とは反対側の第2分割面Sd2を透過し透明基板を介した光と、の位相差を(△1H)π(rad)とすると、(△1H)>(△1L)を満足する。この場合も上記と同様に、t1>t2、NA1>NA2の場合は、(△1H)<(△1L)とする。したがって、(△1H)≠(△1L)とする。
【0050】
なお、先の実施例と同様、分割面Sd1〜Sd3を対物レンズ16の屈折面S1に設けること、無限系の対物レンズを用いること、分割面に段差を設けること、分割面の数、第2分割面の面形状など、本実施例についての記述に限られるものではない。
また、第1光源111と第2光源112とを合成手段19により合成するようにしたが、これに限られず、図1に示した光ピックアップ装置において光源11を第1光源111と第2光源112とに切り替わるようにしてもよい。
【0051】
また、本実施例において、第1光ディスクを再生する際(すなわち、厚さt1の透明基板を介したとき)第1分割面Sd1および第3分割面Sd3を通過する光束による最良波面収差が0.05λrms(ただし、λ(nm)は第1光ディスクを再生する際に使用する光源の波長)を満たすだけでなく、さらに、第2光ディスクを再生する際(すなわち、厚さt2の透明基板を介したとき)第1分割面Sd1を通過する光束による最良波面収差が回折限界である0.07λrms(ただし、λ(nm)は第2光ディスクを再生する際に使用する光源の波長)を満たすことにより、第2光ディスクの再生信号を良好にすることが出来る。
【0053】
なお、本実施例においては、第1光源111と第2光源112とをほぼ同じ倍率で使用しているので、1つの光検出器30とすることができ、構成を簡単にすることが出来るが、各々の光源111、112に対応させて2つの光検出器を設けてもよく、さらに倍率を異ならせてもよい。
【0054】
以下、本発明を対物レンズ16の光源側の屈折面に適用した場合の1例のレンズデータを示す。第1光ディスクとしてDVD(透明基板の厚さt1=0.6mm、必要な開口数NA1=0.60(λ=635nm))を用い、第2光ディスクとしてCD(透明基板の厚さt2=1.2mm、必要な開口数NA2=0.366(λ=635nm)あるいはNA2=0.45(λ=780nm))或いはCD−R(透明基板の厚さt2=1.2mm、必要な開口数NA2=0.50(λ=780nm)(ただし、再生のみの場合は、NA2=0.45(λ=780nm))を用いることにする。なお、以下の対物レンズ16の例においては、コリメータレンズ13は、設計を最適にすることにより対物レンズ16へはほぼ無収差の平行光束を入射させることができるため、以下の例においては対物レンズ16へ平行光束が入射して以降の構成を示す。また、対物レンズ16の光源側に配置される絞りを第1面として、ここから順に第i番目のレンズ面の曲率半径をri、DVD再生時の第i番目の面と第i+1番目の面との間の距離をdi(CD再生時は、di’に記載がある場合はその数値に変わり、記載がない場合はdiと同じである。)、その間隔のレーザ光源の光束の波長での屈折率をniで表している。また、光学面に非球面を用いた場合は、上述した非球面の式に基づくものとする。
【0055】
(実施例1)
実施例1は上述した先の実施例の1光源の光ピックアップ装置10に搭載する対物レンズ16であって、第1分割面Sd1〜第3分割面Sd3の境界に段差を設けた対物レンズ16に本発明を実施した例である。
本実施例において、非球面は次式に基づくものとする。
【数1】
但しXは光軸方向の軸、Hは光軸と垂直方向の軸、光の進行方向を正とし、rは近軸曲率半径、κは円錐形数、Ajは非球面係数、Pjは非球面のべき数(ただし、Pj≧3)である。なお、上式以外の他の非球面の式を用いてもよい。非球面形状から非球面の式を求める際には、上式を用い、Pjを10≧ Pj≧3の自然数とし、κ=0として求める。
また、第1回折面は高屈折率の薄膜として表すものとする。光路差関数は
Φ(h)=C1h2+C2h4+C2h6+C4h8+C5h10
で表し、基板面からの削り量は
L={Φ(h)+iλ}/(n−1) i=0,1,2・・・
である。
【0056】
【表2】
【表3】
【0057】
また、図3(a)に厚さt1(=0.6mm)の透明基板を介したとき(以下、DVD再生時という)の球面収差図を、図3(b)に厚さt2(=1.2mm)の透明基板を介したとき(以下、CD再生時という)の球面収差図を示している。また、図4(a)にDVD再生時の最良波面収差が得られる位置にデフォーカスした状態で見たときの波面収差図を、図4(b)にCD再生時の最良波面収差が得られる位置にデフォーカスした状態で見たときの波面収差図を示している。DVD使用時のNA1での波面収差量は0.025λrms、CD使用時の第1分割面内での波面収差量は0.054λrmsである。
また、図7(a)にDVD再生時の最良スポット形状が得られたときの集光スポットの相対強度分布図を示し、図7(b)にCD再生時に最良のスポット形状が得られたときの集光スポットの相対強度分布図を示す。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明においては、1つの集光光学系で複数の光情報記録媒体の記録再生が出来、低コストかつ複雑化しないで実現出来、さらに、高NAの光情報記録媒体にも対応できる。さらに、本発明では、球面収差の発生を積極的に利用し、複数の光情報記録媒体の記録再生を1つの集光光学系で行なうことができる。また、本発明は、開口数の小さい光軸近傍を通過する第1光束を、第1光情報記録媒体と第2光情報記録媒体の再生に利用し、また、第1分割面より外側を通過する第2光束も第1光情報記録媒体と第2光情報記録媒体の再生に利用する。このような光学系を用いると、透明基板の厚さが異なる複数のディスクを1つの光学系で再生することが可能となり、光軸近傍の光束を複数の光情報記録媒体の再生に利用することで、光源からの光束の光量損失が少なくなる。しかも、第2光情報記録媒体再生時には、ビームスポットのサイドローブを減少させ、ビーム強度の強い核を形成し、正確な情報が得られる。さらに、絞り17の開口数を変更する特別な手段を必要とせずに複数のディスクを1つの集光光学系で再生することができるという特有の効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ピックアップ装置用対物レンズの断面模式図であり、第1光情報記録媒体への集束状況を示す。
【図2】本発明の光ピックアップ装置用対物レンズの断面模式図であり、第2光情報記録媒体への集束状況を示す。
【図3】本発明の対物レンズの各分割面の球面収差の補正状況を示す説明図である。
【図4】本発明の対物レンズの各分割面の波面収差の補正状況を示す収差図である。
【図5】本発明を実施する光ピックアップ装置の構成の一例を示す概念図である。
【図6】本発明を実施する光ピックアップ装置の構成の他の例を示す概念図である。
【図7】本発明の対物レンズの最良のスポット形状の相対強度分布を示すグラフである。
【符号の説明】
11 半導体レーザ 12 偏向ビームスプリッタ
13 コリメータレンズ 14 1/4λ板
15 アクチュエータ 16 対物レンズ
17 絞り 18 シリンドリカルレンズ
19 光束合成手段 20 光ディスク
21 透明版 22 情報記録面
30 光検出器
Claims (12)
- 波長λ1の光束を出射する第1光源と、
波長λ2(ただしλ2≠λ1)の光束を出射する第2光源と、
集光光学系とを有し、
第1光情報記録媒体に対して、前記波長λ1の光束を前記集光光学系で厚さt1の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生し、
前記第1光情報記録媒体とは異なる第2光情報記録媒体に対して、前記波長λ2の光束を前記集光光学系で厚さt2(ただし、厚さt2≠t1)の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生する光ピックアップ装置において、
前記集光光学系を構成する少なくとも1つの光学面を前記光学面の中央に位置する光軸近傍の第1分割面と、前記第1分割面との間に第2分割面を挟んで位置する第3分割面とに分割された光学面で構成し、前記第2分割面は少なくとも前記波長λ1の光束又は前記波長λ2の光束を回折し、
前記第1光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面および前記第3分割面を通過した光束および前記第2分割面で回折された光束又は前記分割面を透過した光束によりビームスポットを形成し、
前記第2光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面を通過した光束及び前記第2分割面を透過した光束又は前記第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成し、
前記第1光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ1の光束の回折次数と、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ2の光束の回折次数とは、異なっており、
前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第3分割面を通過した光束はフレアとなることを特徴とする光ピックアップ装置。 - 前記第2分割面の光軸側縁を通る光束の光情報記録媒体側の開口が0.35以上であることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
- 前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第2分割面と前記第3分割面の境界において球面収差が不連続になることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ装置。
- 前記球面収差の不連続に変化する方向は、小さい開口数から大きい開口数へと見たときに前記第2分割面と前記第3分割面の境界においては球面収差が正の方向に変化していることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
- 前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第1分割面と前記第2分割面の境界において球面収差が不連続になることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光ピックアップ装置。
- 前記球面収差の不連続に変化する方向は、小さい開口数から大きい開口数ヘと見たときに前記第1分割面と前記第2分割面の境界においては球面収差が負の方向に変化していることを特徴とする請求項5記載の光ピックアップ装置。
- 波長λ1の光束を出射する第1光源と、波長λ2(ただしλ2≠λ1)の光束を出射する第2光源と、対物レンズとを有し、第1光情報記録媒体に対して、前記波長λ1の光束を前記対物レンズで厚さt1の透明基板を介して情報記録面集光させ、情報記録面上に情報を記録再生し、前記第1光情報記録媒体とは異なる第2光情報記録媒体に対して、前記波λ2の光束を前記対物レンズで厚さt2(ただし、厚さt2≠t1)の透明基板を介して情報記録面に集光させ、情報記録面上に情報を記録再生する光ピックアップ装置で用いられる対物レンズにおいて、
前記対物レンズの少なくとも1つの光学面は、前記光学面の中央に位置する光軸近傍の第1分割面と、前記第1分割面との間に第2分割面を挟んで位置する第3分割面とに分割され、前記第2分割面は少なくとも前記波長λ1の光束又は前記波長λ2の光束を回折し、
前記第1光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面および前記第3分割面を通過した光束および前記2分割面で回折された光束又は前記第2分割面を透過した光束によりビームスポットを形成し
前記第2光情報記録媒体の記録再生の際には前記第1分割面を通過した光束及び前記第2分割面を透過した光束又は前記第2分割面で回折された光束によりビームスポットを形成し
前記第1光情報記録媒体の記録再生の際に前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ1の光束の回折次数と、前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第2分割面を通過して前記ビームスポットを形成する前記波長λ2の光束の回折次数とは、異なっており、
前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第3分割面を通過した光束はフレアとなることを特徴とする対物レンズ。 - 前記第2分割面の光軸側縁を通る光束の光情報記録媒体側の開口数が0.35以上であることを特徴とする請求項7記載の対物レンズ。
- 前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第2分割面と前記第3分割面の境界において球面収差が不連続になることを特徴とする請求項7または8記載の対物レンズ。
- 前記球面収差の不連続に変化する方向は、小さい開口数から大きい開口数へと見たときに、前記第2分割面と前記第3分割面の境界においては球面収差が正の方向に変化していることを特徴とする請求項9記載の対物レンズ。
- 前記第2光情報記録媒体の記録再生の際に、前記第1分割面と前記第2分割面の境界において球面収差が不連続になることを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の対物レンズ。
- 前記球面収差の不連続に変化する方向は、小さい開口数から大きい開口数へと見たときに、前記第1分割面と前記第2分割面の境界においては球収差が負の方向に変化していることを特徴とする請求項11記載の対物レンズ。
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