JP4510997B2 - シリコン半導体基板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン半導体基板及びその製造方法に関するもので、特に、ゲッタリング特性に優れ、かつ表面欠陥が少なくTDDB特性に優れた品質のシリコン半導体基板、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高集積MOSデバイスの基板として用いられるチョクラルスキー法により製造されるシリコン半導体基板には結晶製造中に混入した酸素が過飽和に存在しており、それが後のデバイスプロセス中に析出してウエハ内部に酸素析出物が形成される。この酸素析出物がウエハ内部に十分な量存在した場合、デバイスプロセス中に混入してくる重金属はウエハ内部に吸収され、デバイス活性層であるウエハ表面は清浄に保たれる。このような技術をイントリンシックゲッタリングと呼び、重金属汚染によるデバイス特性劣化を防止する効果があるため、シリコン単結晶基板にはデバイスプロセス中に適度の酸素析出が起こることが求められている。
【0003】
近年、高品質デバイス用の基板として、シリコン単結晶ウエハの上に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積させた、シリコン半導体基板(所謂エピウエハ)が用いられてきている。しかし、エピウエハは、その製造プロセス上で1100℃以上の高温熱処理を経るため、デバイスプロセス中の酸素析出が起こらなくなり、ゲッタリング特性がシリコン単結晶ウエハに比べて劣ることが分かってきた。この原因は、エピ層堆積プロセスの高温熱処理中に、その後のデバイスプロセスにおいて酸素析出の核となる酸素析出核が消滅するためと考えられる。
【0004】
このようなエピ層堆積による酸素析出不足を補うため、例えば特開平8-250506号公報には、ウエハ内部に酸素析出物を形成する熱処理工程と、酸素析出物密度を制御するための温度保持工程を施した後、ウエハ表面にエピ層を成長させたエピウエハが提案されている。また、特開平9-199507号公報では、特定の熱処理により、表面よりほぼ均一にSiO2析出物を所定量含有させた後に、エピ層成長させたエピウエハが提案されている。これらの結晶では、エピ層堆積の高温熱処理中でも消えないような酸素析出核が作り込まれているため、エピウエハになった後もデバイスプロセス中で酸素析出が十分起こり、ゲッタリング特性に優れている。しかし、上記方法では、エピ層堆積プロセス中でも消えないような酸素析出物を作り込むためのウエハの熱処理工程が複雑なものとなるため、生産性を損なうとともにウエハコストを増大させるという問題点があった。
【0005】
これとは別に、不純物元素を添加して析出を促進させる手法も提案されている。特に、窒素を添加した場合、酸素析出の核が安定となりエピ層堆積後も酸素析出が起こることが分かってきた。例えば、特開平11-189493号公報には、窒素を1×1013/cm3以上添加したシリコンウエハにエピ層を堆積することで、その後のプロセス熱処理で十分な析出が起こり、ゲッタリング特性に優れたエピウエハを製造することが提案されている。本方法は、OSF領域がシリコン単結晶ウエハ内に存在するような窒素添加シリコン単結晶ウエハを使うことを特徴としている。しかし、そのような窒素添加シリコン単結晶ウエハにエピ層を堆積した場合、シリコン単結晶ウエハのOSF領域に当たる部分に堆積されたエピ層の中に結晶欠陥が発生し、TDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown:経時絶縁破壊)特性などのデバイス特性を低下させてしまう。そのため、この方法では、エピウエハとして実用的ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
窒素添加されたシリコン単結晶ウエハにエピ層を堆積した時に発生する結晶欠陥は、エピ層堆積する前のシリコン単結晶ウエハの品質に起因していることがわかってきた。よって、窒素添加シリコン単結晶ウエハをエピウエハの基板として使用する場合は、従来の酸素析出という品質の他に、エピ層に欠陥が発生しないような品質の窒素添加シリコン単結晶ウエハを作り込む必要がある。
【0007】
本発明は、窒素添加シリコン単結晶ウエハの結晶品質を改善することにより、エピ層に欠陥がなく、更にデバイスプロセス中の酸素析出能に優れ、重金属のゲッタリング能力も良好であるようなシリコン半導体基板、及びそのようなシリコン半導体基板の製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、シリコン融液中に窒素を添加し、種々の育成条件でシリコン単結晶を製造し、その結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハにエピ層堆積を行って、エピ層に生成する結晶欠陥を調査した。同時に、エピ層堆積前の状態でのシリコン単結晶ウエハの品質も詳細に調査した。その結果、エピ層には、後に述べる二種類の結晶欠陥が発生し、これら結晶欠陥は、エピ層堆積前の窒素添加シリコン単結晶ウエハに存在している微小欠陥の内、シリコン単結晶ウエハ表面に露出していたものが、エピ層に転写されて形成されたものであることがわかった。詳細な検討の結果、エピ層結晶欠陥の発生を防止するためには、
(a) 結晶製造条件の最適化により窒素添加シリコン単結晶ウエハの微小欠陥をなくす、
(b) エピ層堆積前の前処理で窒素添加シリコン単結晶ウエハの微小欠陥を消滅させる、
と言う二つの方法が有効であることが判明し、これらの知見を以て、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1) チョクラルスキー法により製造された窒素含有シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積してなるシリコン半導体基板であって、前記シリコン単結晶ウエハの窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上1×1016atoms/cm3以下であり、前記シリコン半導体基板の全面に渡って、{111}面上の格子間原子型積層欠陥(リング状分布積層欠陥)が、エピ層中に0.5個/cm2以下であることを特徴とするシリコン半導体基板、
(2) チョクラルスキー法により製造された窒素含有シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積してなるシリコン半導体基板であって、前記シリコン単結晶ウエハの窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上1×1016atoms/cm3以下であり、前記シリコン半導体基板の全面に渡って、選択エッチング後に観察される転位(転位ピット欠陥)が、エピ層中に0.5個/cm2以下であることを特徴とするシリコン半導体基板、
(3) チョクラルスキー法により製造された窒素含有シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積してなるシリコン半導体基板であって、窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上1×1016atoms/cm3以下であり、かつ該ウエハ全面に渡って、サイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上5×107/cm3以下であるシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりエピ層を堆積してなることを特徴とするシリコン半導体基板、
(4) チョクラルスキー法により製造された窒素含有シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積してなるシリコン半導体基板であって、窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上1×1016atoms/cm3以下であり、かつ該ウエハ全面に渡って、直径1μm以上の転位ループが1×104/cm3以下であるシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりエピ層を堆積してなることを特徴とするシリコン半導体基板、
(5) 前記シリコン単結晶ウエハの炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上1×1018atoms/cm3以下である(1)〜(4)の何れか1項に記載のシリコン半導体基板、
(6) 窒素を1×1016atoms/cm3以上1.5×1019atoms/cm3以下含有するシリコン融液を用いて、チョクラルスキー法により、引上速度をV[mm/min]、融点〜1350℃までの結晶成長軸方向の平均温度勾配をG[℃/mm]とした時、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.5Ωcm<ρ<30Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≦0.13であり、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≦0.32である条件で、シリコン単結晶を成長させた後に、該単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層を堆積することを特徴とするシリコン半導体基板の製造方法、
(7) 窒素を1×1016atoms/cm3以上1.5×1019atoms/cm3以下含有するシリコン融液を用いて、チョクラルスキー法により製造されたシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハを、非酸化性雰囲気あるいは水素雰囲気で1100℃以上で60秒以上熱処理した後に、該ウエハ表面にエピタキシャル法によりシリコン単結晶層を堆積することを特徴とするシリコン半導体基板の製造方法、
(8) 窒素を1×1016atoms/cm3以上1.5×1019atoms/cm3以下含有するシリコン融液を用いて、チョクラルスキー法により、引上速度をV[mm/min]、融点〜1350℃までの結晶成長軸方向の平均温度勾配をG[℃/mm]とした時、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.5Ωcm<ρ<30Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≧0.15であり、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≧0.36である条件で、成長させたシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層を堆積することを特徴とするシリコン半導体基板の製造方法、
(9) 窒素を1×1016atoms/cm3以上1.5×1019atoms/cm3以下含有するシリコン融液を用いて、チョクラルスキー法により、引上速度をV[mm/min]、融点〜1350℃までの結晶成長軸方向の平均温度勾配をG[℃/mm]とした時、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.5Ωcm<ρ<30Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≦0.10であり、基板抵抗率ρ[Ωcm]を0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmとする場合、V/G[mm2/℃min]≦0.30である条件で、成長させたシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層を堆積することを特徴とするシリコン半導体基板の製造方法、
(10) 前記シリコン融液に、さらに炭素を1×1017atoms/cm3以上1×1019atoms/cm3以下含有する(6)〜(9)の何れか1項に記載のシリコン半導体基板の製造方法、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
エピ層堆積後の酸素析出とゲッタリング能力を確保するためには、ある一定値以上の窒素を添加する必要がある。窒素濃度としては、1×1013atoms/cm3以上、より望ましくは2×1013atoms/cm3以上が適当である。窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満の場合、エピ層堆積後の酸素析出物密度が108/cm3未満となるため、ゲッタリング能力が不足してしまう。窒素濃度が高くなると多結晶化しやすくなるため、窒素濃度上限は1×1016atoms/cm3以下が適当である。窒素添加のみでもゲッタリング能としては十分であるが、ユーザーの要望として、より高密度の酸素析出物が求められることもある。その場合は、窒素と同時に炭素を添加することが効果的である。炭素は、800℃以下の低温熱処理における析出促進に効果があるのに対し、窒素は、900℃以上の高温熱処理における析出促進に効果があるため、両者を添加することで、デバイスプロセス中の低温・高温両方で酸素析出が起こり、析出物密度を増やすことが出来る。炭素濃度としては、1×1016atoms/cm3以上、より好ましくは3×1016atoms/cm3以上が適当である。炭素濃度が1×1016atoms/cm3未満の場合は、特に1100℃以下の熱処理で構成される低温CMOSプロセスの場合に109/cm3未満の析出物密度となるため、添加効果が認められない恐れがある。また、炭素濃度が高くなると多結晶化しやすくなるため、炭素濃度上限は1×1019atoms/cm3以下が適当である。
【0011】
窒素添加したCZ-Si結晶には、図1に示すような3種類の欠陥領域(ボイド領域、OSF領域、I領域)が存在する。これらの欠陥領域の分布は、炭素添加の有無に関わらず、V/G(結晶成長速度/固液界面の結晶軸方向温度勾配)と窒素濃度、基板抵抗率のパラメーターで一義的に決定される。ボイド領域とは、結晶育成中に過剰の原子空孔が導入される領域であり、それらの原子空孔が凝集してできたボイド欠陥が存在する。OSF領域は、シリコン単結晶ウエハを酸化熱処理したときに、酸化誘起積層欠陥(Oxidation induced Stacking Fault:以後OSFと呼ぶ)が発生する領域である。I領域とは、結晶育成中に過剰の格子間原子が導入される領域である。V/Gが大きくなると、ボイド領域がウエハ全面に渡って広がり、V/Gが小さくなると、ボイド領域がウエハ中心に収縮し、I領域がウエハ全面に広がるようになる。OSF領域は、ボイド領域とI領域の境界に位置する。
【0012】
このような欠陥領域を含む窒素添加CZ-Si結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハにエピ層を堆積した場合、基板となるシリコン単結晶ウエハとは別に、エピ層のみに形成される特有な結晶欠陥として、リング状分布積層欠陥と転位ピット欠陥の2種類が発生することが明らかになった。
【0013】
リング状分布積層欠陥は、図2に示すように、シリコン単結晶ウエハとエピ層界面からエピ層表面へ伸びる{111}面上の格子間原子型積層欠陥であり、(100)ウエハにエピ堆積を行った場合、エピ膜厚をT[μm]としたときに、辺長がほぼT×√2[μm]となる正三角形の構造を取る。このリング状分布積層欠陥は、表面異物計で見たときに、ウエハ上の異物と同じような散乱像として見えることから、エピ層堆積後のウエハを表面異物計で測ることにより、その個数を評価することが出来る。
【0014】
転位ピット欠陥は、図3に示すように、エピ層界面からエピ層表面へ伸びる一本あるいは数本の転位である。この転位ピット欠陥は、エピ層堆積後のウエハをそのまま表面異物計等で測っても検出されず、エピ層堆積後のウエハ表面をライトエッチ・セコエッチ等の選択エッチングを行うことでできるピットを数えることによって、その個数を評価することが出来る。なお、その際、選択エッチングのエッチング量[μm]は、エピ層膜厚T[μm]より少なくする。
【0015】
リング状分布積層欠陥が0.5個/cm2超、あるいは転位ピット欠陥が0.5個/cm2超存在した場合、例えば電極面積20mm2のデバイスにおいて、これらの欠陥によって破壊が引き起こされる確率が10%を越える。これらの欠陥が多数存在する電極は、TDDB特性などの電気特性が劣化するため、このような欠陥を多数内在するウエハは、高品質デバイス用のシリコン半導体基板として使うことができない。
【0016】
上記エピ層特有の欠陥のウエハ面内の発生位置を詳細に調査した結果、図4に示すように、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハの欠陥状態と対応していることがわかった。
【0017】
リング状分布積層欠陥が発生する領域は、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハにおいて、OSF領域の内側(すなわちボイド領域寄り)であることがわかった。この領域では、サイズ50nm以上になりきれなかった原子空孔集合体が微小酸素析出物となり、自らの体積膨張で吐き出した格子間原子が周囲に凝集して、微小な格子間原子型積層欠陥を形成していると考えられる。そのような格子間原子型積層欠陥の上にエピ層を堆積することにより、格子間原子型積層欠陥がエピ層に転写して、リング状分布積層欠陥が形成されると推察される。種々の結晶でシリコン単結晶ウエハの欠陥分布とリング状分布積層欠陥分布との位置関係を詳細に調査した結果、ウエハ全面でサイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上になっているようなウエハ、もしくは、ボイド領域がウエハ中心に収縮し消滅してしまっているウエハにおいては、エピ層堆積後のリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下に抑えられることが明らかとなった。なお、前者のような、ウエハ全面でサイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上になっているウエハはOSF領域がウエハ外側に完全に除外されたものである。サイズ50nmのボイド密度が0/cm3以上5×105/cm3未満であるような領域には、リング状分布積層欠陥が0.5個/cm2超発生することもわかった。そのような領域では、上述したような微小な格子間原子型積層欠陥が存在しているものと考えられる。必要以上にボイドが多くなると、エピ層へのボイドの転写が起こり、エピ層のTDDB特性が劣化するので、ボイド密度は5×107/cm3以下に抑えておくことが望ましい。
【0018】
転位ピット欠陥が発生する領域は、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハにおいてOSF領域であり、かつ前記リング状分布積層欠陥が発生する領域の外側であることがわかった。また、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハの前記領域には、直径が1μm以上の転位ループが存在することが明らかとなった。この領域では、原子空孔集合体から形成された微小酸素析出物の個数がリング状分布積層欠陥領域より多いため、吐き出される格子間原子の濃度が増加した結果、析出物周囲の積層欠陥がアンフォールトして前述のような転位ループとなったと考えられる。なお、この転位ループとは従来より発見されているI領域の転位クラスター(H. Takeno et al. Mat. Res. Soc. Symp. Proc. vol. 262, 1992)とは発生原因が異なる別の欠陥である。すなわち、I領域の転位クラスターは過剰に導入されたIそのものが自然に集合してできたものであるのに対して、ここで述べている転位ループは微小酸素析出物が発生原因であり、転位ループの中心付近に酸素析出物が存在していることが特徴である。そのような転位ループは、エピ堆積したときに消滅することなしにエピ層に転写されてしまうため、転位ピット欠陥が形成されると推察される。種々の結晶で転位ループと転位ピット欠陥の関係を詳細に調査した結果、直径1μm以上の転位ループが1×104/cm3超存在する領域では、転位ループが0.5個/cm2超になることがわかった。このことは、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハにおいて、ウエハミラー面から0.5μmより浅い領域に存在する転位ループが、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハ表面に顔を出し、エピ層堆積後、エピ層に転写されるためと考えられる。
【0019】
このように、エピ層欠陥は、窒素添加シリコン単結晶ウエハのOSF領域に存在するgrown-in結晶欠陥がエピ層に転写して発生することがわかった。そのため、エピ層堆積前にgrown-in結晶欠陥を低減する、あるいは消去する方策を取ることがエピ層欠陥低減に有効である。
【0020】
エピ膜厚については特に規定しないが、一般的に膜厚の制御性から0.5μm以上が望ましい。0.5μm未満のエピ膜厚では面内の膜厚均一性を達成するのが困難になる。またスループットから20μm以下が望ましい。20μm超のエピ膜厚ではエピ堆積工程が30分以上となるため生産性が落ちて実用的ではない。
【0021】
次に、上記エピ層欠陥が発生しない窒素添加シリコン半導体基板、及び窒素・炭素添加シリコン半導体基板の製造方法について、以下に説明する。
【0022】
窒素を1×1013atoms/cm3以上含むシリコン単結晶を育成するためには、偏析の関係から、シリコン融液中に1×1016atoms/cm3以上の窒素を添加する必要がある。シリコン融液中に窒素が1.5×1019atoms/cm3超添加された場合、窒素濃度が高くなって、多結晶化が起こりやすくなるため、実用には不適当である。
【0023】
炭素を1×1016atoms/cm3以上含むシリコン単結晶を育成するためには、偏析の関係から、シリコン融液中に3×1017atoms/cm3以上の炭素を添加する必要がある。シリコン融液中に炭素が1×1019atoms/cm3超添加された場合、炭素濃度が高くなって、多結晶化が起こりやすくなるため、実用には不適当である。
【0024】
窒素添加シリコン単結晶ウエハ、及び窒素・炭素添加シリコン単結晶ウエハを用い、かつリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下になるエピウエハの製造方法として、例えば以下の方法がある。
【0025】
(A) 結晶育成時のV/Gを、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.13に、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.32に制御し、育成したシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハに、エピタキシャル法により所定厚みのエピ層を堆積する。
【0026】
(B) 結晶育成時のV/Gを、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.15に、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.36に制御し、育成したシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハに、エピタキシャル法により所定厚みのエピ層を堆積する。
【0027】
結晶育成時のV/Gが、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時に0.13<V/G[mm2/℃min]<0.15であり、0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時に0.32<V/G[mm2/℃min]<0.36である場合は、リング状分布積層欠陥の発生原因となる欠陥がシリコン単結晶ウエハに形成されてしまうため、エピ層堆積後にリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2超発生してしまう。V/Gの上限及び下限は特に規定しないが、生産性の問題から、下限は0.05[mm2/℃min]以上、上限は結晶引上装置の冷却能力から0.40[mm2/℃min]以下が、現実的である。なお、(B)の方法で製造したシリコン単結晶ウエハは、ウエハ全面に渡ってサイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上になっており、OSF領域がウエハ外側に完全に除外されている。
【0028】
窒素添加シリコン単結晶ウエハ、及び窒素・炭素添加シリコン単結晶ウエハを用い、かつ転位ピット欠陥が0.5個/cm2以下になるようなエピウエハの製造方法として、例えば以下の方法がある。
【0029】
(C) エピ層堆積前に、非酸化性雰囲気あるいは水素雰囲気で、1100℃以上で60秒以上熱処理したシリコン単結晶ウエハに、エピタキシャル法により所定厚みのエピ層を堆積する。
【0030】
(D) 結晶育成時のV/Gを、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.10に、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.30に制御し、育成したシリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハに、エピタキシャル法により所定厚みのエピ層を堆積する。
【0031】
(C)のような熱処理は、エピ層堆積前のシリコン単結晶ウエハ表層に存在していた転位ピット欠陥の発生原因となる転位ループを消滅させるものと考えられる。非酸化性雰囲気としては、不純物が5ppm以下であり、熱処理後の酸化膜厚が2nm以下に押さえられていればよく、ガスとしては、例えばArなどの希ガスが有効である。熱処理後の酸化膜厚が2nm超となる酸化雰囲気中では、微小転位ループが消滅せず、それに加えてOSFも形成されるため好ましくない。1100℃未満、60秒未満では、エピ層堆積後の転位ピット欠陥が0.5個/cm2にならない。原因として、1100℃未満では、点欠陥反応が活性化せず、転位ループ消滅現象が起こらなかったため、また、60秒未満では、転位ループ消滅に要する時間として不十分だったためと考えられる。結晶育成時のV/Gが、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]>0.10であり、0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]>0.30である場合は、転位ピット欠陥の発生原因となる転位ループがシリコン単結晶ウエハに形成されてしまうため、エピ層堆積後に転位ピット欠陥が0.5個/cm2超発生してしまう。なお、(D)の方法で製造したシリコン単結晶ウエハは、ウエハ全面に渡って直径1μm以上の転位ループが1×104/cm3以下になっている。
【0032】
エピ堆積方法については特に規定はしないが、市販されているジクロルシラン、トリクロルシランを原料ガスとする枚葉エピ堆積装置・バッチ式エピ堆積装置を使った方法で、いわゆるエピ後の輝点の原因となるようなシリコン単結晶ウエハ上の異物がエピ堆積前の洗浄で十分排除されているようなプロセスであれば問題はない。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例の記載によって制限されるものではない。
【0034】
実施例1
本実施例に用いられるシリコン単結晶製造装置は、通常のCZ法によるシリコン単結晶製造に用いられるものであれば、特に制限されるものではない。この装置を利用して育成されたシリコン単結晶は、伝導型:p型(ボロンドープ)、結晶径:8インチ(200mm)、抵抗率:0.004〜10.5Ωcm、酸素濃度6.0〜8.0×1017atoms/cm3(日本電子工業振興協会による酸素濃度換算係数を用いて算出)である。窒素添加は、シリコン融液中に窒化膜付きウエハを投入することによって行った。シリコン融液中の窒素濃度は、投入した窒化膜付きウエハについていた窒素の総量とシリコン融液の量から算出した。引上速度V[mm/min]、融点〜1350℃までの結晶成長軸方向の平均温度勾配G[℃/mm]としたときのV/Gを変化させるため、結晶成長速度あるいはシリコン単結晶製造装置の内部構造を変えた複数の結晶育成条件にて、シリコン単結晶を育成した。この結晶から切り出して作成したシリコン単結晶ウエハに、エピタキシャル法により5μmのシリコン単結晶層(エピ層)を堆積して、シリコン半導体基板(エピウエハ)を作成した。
【0035】
窒素濃度は、エピ層堆積後のシリコン半導体基板からサンプルを採取し、表面のエピ層を除去するために20μmのポリッシュを行った後、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて測定した。
【0036】
エピ層のリング状分布積層欠陥は、以下の手順で評価した。先ず、エピウエハをそのまま、Tencor社製表面異物計SP1を用い、測定条件として0.1μm以上の異物を評価するモードにて、異物の個数と分布を調査した。その後、エピウエハをSC1洗浄にかけて異物を除去し、再び表面異物計にて異物を測定し、洗浄前後で残っている異物をリング状分布積層欠陥と判定して、その個数をカウントした。密度を算出するためにウエハ全体を覆うように1cm2の正方形状格子を作って、各格子に含まれるリング状分布積層欠陥の個数から、各格子におけるリング状分布積層欠陥の面積密度を算出し、面積密度の最大値を求めた。
【0037】
エピ層堆積後の酸素析出挙動を評価するために、エピウエハに対して表1に示す4段のデバイスプロセスを模した熱処理を施し、エピ表面から100μmの深さの酸素析出物を赤外干渉法で測定した。市販されている赤外干渉法による欠陥評価装置として、HYT社のOPP(Optical Precipitate Profiler)を用いた。
【0038】
また、エピ層堆積後のゲッタリング挙動を評価するため、表1に示す4段のデバイスプロセスを模した熱処理を施した後に、スピンコート法にてNiをウエハ表面に1014atoms/cm2塗布し、MOSダイオードを実装した。ゲート酸化の条件は1000℃、30分、dry O2で、酸化膜厚は300nmとした。その後、MOS-C-t法による発生ライフタイム測定を行った。
【0039】
【表1】
【0040】
TDDBを評価するため、電極面積20mm2のポリシリMOSをエピウエハ上に作成した。酸化膜厚は25nmとした。連続ストレス電流密度を−5mA/cm2とし、破壊判定電界を10MV/cmとした時のQbdが10C/cm2以上であるような歩留まりを調査した。
【0041】
評価結果を比較例も含めて表2に示す。融液窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上であるものは、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上になり、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上でライフタイムが20msec以上とゲッタリング特性に優れていた。また、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.13であり、基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.32である場合は、エピ層のリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上とエピ層品質が良好であった。
【0042】
【表2】
【0043】
実施例2
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素の添加法は、実施例1と同様である。この結晶から切り出して作成したシリコン単結晶ウエハに、実施例1と同様に5μmのエピ層を堆積した。但し、実施例1とは異なり、エピ層堆積前の熱処理として、エピ層堆積装置チャンバー内での熱処理、あるいはRTAによる熱処理、あるいはバッチ式縦型炉による熱処理を行った。
【0044】
エピ層の転位ピット欠陥を評価した。評価は、ライトエッチ液にてエピ層表面3μmをエッチングし、1μm以上のサイズを持つ菱形もしくは流線型状のピットの個数を、光学顕微鏡観察にてカウントした。エピ層堆積後の析出挙動、ゲッタリング挙動、TDDB評価は、実施例1と同様である。
【0045】
評価結果を比較例も含めて表3に示す。融液窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上であるものは、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上になり、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。また、100%H2、あるいは100%Arで、1100℃、60秒以上の熱処理を行ったものは、エピ層の転位ピット欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0046】
【表3】
【0047】
実施例3
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素の添加法は、実施例1と同様である。
【0048】
シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハのボイド欠陥評価はOPPを用い、両面を鏡面化したシリコン単結晶ウエハにおいて、ウエハ表層から300μmの位置に焦点を合わせて、対角長が50nm以上のボイド総数を測定し、密度を算出した。エピ層堆積後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価は、実施例1と同様である。
【0049】
評価結果を比較例も含めて表4に示す。融液窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上であるものは、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上になり、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。また、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.15であり、0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.36である場合は、サイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上となり、エピ層のリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0050】
【表4】
【0051】
実施例4
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素の添加法は実施例1と同様である。
【0052】
シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウエハの転位ループ密度評価はOPPを用い、両面を鏡面化したシリコン単結晶ウエハにおいて、ウエハ表層から300μmの位置に焦点を合わせて、直径1μm以上の転位ループを測定し、密度を算出した。エピ層堆積後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価は、実施例2と同様である。
【0053】
評価結果を比較例も含めて表5に示す。融液窒素濃度が1×1016atoms/cm3以上であるものは、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上になり、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。また、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.10であり、基板抵抗率ρが0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.30である場合は、直径1μm以上の転位ループが1×104/cm3以下となり、エピ層の転位ピット欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0054】
【表5】
【0055】
実施例5
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素の添加法は実施例1と同様である。炭素添加は、シリコン融液中に炭素粉を投入することで行った。融液中の炭素濃度は、投入した炭素の総量とシリコン融液の量から算出した。シリコン単結晶ウエハ中のエピ層堆積後の酸素析出挙動及びゲッタリング挙動を評価するため、表6に示す5段の低温デバイスプロセスを模した熱処理を行った。熱処理以外の評価項目(エピ層堆積後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価)は、実施例1と同様である。シリコン半導体基板の炭素濃度は、エピ層堆積後のウエハをFTIRにて測定し、日本電子工業振興協会による濃度換算係数を用いて算出した。抵抗値が0.5Ωcm以下のシリコン半導体基板は、20μmのポリッシュを行って、表面のエピ層を除去した後SIMSを用いて測定した。
【0056】
【表6】
【0057】
評価結果を比較例も含めて表7に示す。融液炭素濃度が1×1017atoms/cm3以上であるものは、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上になった。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものは、熱処理後の析出物密度が109/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3未満であり、ライフタイムが10msec以下と、実施例に比べて劣った。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上109/cm3未満となり、ライフタイムが10msec以上20msec未満であった。この結晶のゲッタリング特性は、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものよりは優れているが、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものに比べると多少劣っていた。また、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.13であり、基板抵抗率ρが0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.32である場合は、エピ層のリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0058】
【表7】
【0059】
実施例6
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素・炭素の添加法は、実施例5と同様である。エピ層堆積前の熱処理として、エピ層堆積装置チャンバー内での熱処理、あるいはRTAによる熱処理、あるいはバッチ式縦型炉による熱処理を行った。エピ層堆積後の酸素析出挙動及びゲッタリング挙動を評価するため施した低温のデバイスプロセスを模した熱処理は、実施例5と同様である。熱処理以外の評価項目(エピ層堆積後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価)は、実施例2と同様である。
【0060】
評価結果を比較例も含めて表8に示す。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものは、熱処理後の析出物密度が109/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上109/cm3未満となり、ライフタイムが10msec以上20msec未満であり、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものに比べて多少劣った。また、100%H2、あるいは100%Arで、1100℃、60秒以上の熱処理を行ったものは、エピ層の転位ピット欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0061】
【表8】
【0062】
実施例7
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素・炭素の添加法は実施例5と同様である。エピ層堆積前の欠陥評価は、実施例5と同様である。エピ層堆積後の酸素析出挙動及びゲッタリング挙動を評価するため施した、低温のデバイスプロセスを模した熱処理は、実施例5と同様である。熱処理以外の評価項目(エピ層堆積前後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価)は、実施例3と同様である。
【0063】
評価結果を比較例も含めて表9に示す。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものは、熱処理後の析出物密度が109/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3未満であり、ライフタイムが10msec以下と、実施例に比べて劣った。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上109/cm3未満となり、ライフタイムが10msec以上20msec未満であった。この結晶のゲッタリング特性は、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものよりは優れているが、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものに比べると多少劣っていた。また、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.15であり、基板抵抗率ρが0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≧0.36である場合は、サイズ50nm以上のボイド密度が5×105/cm3以上となり、エピ層のリング状分布積層欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0064】
【表9】
【0065】
実施例8
シリコン単結晶の引き上げ及び窒素・炭素の添加法は実施例5と同様である。エピ層堆積前の欠陥評価は、実施例5と同様である。エピ層堆積後の酸素析出挙動及びゲッタリング挙動を評価するため施した低温のデバイスプロセスを模した熱処理は、実施例5と同様である。熱処理以外の評価項目(エピ層堆積前後の欠陥評価、析出評価、ゲッタリング評価、TDDB評価)は実施例4と同様である。
【0066】
評価結果を比較例も含めて表10に示す。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものは、熱処理後の析出物密度が109/cm3以上で、ライフタイムが20msec以上と、ゲッタリング特性に優れていた。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3未満であり、ライフタイムが10msec以下と、実施例に比べて劣った。基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3未満のものは、熱処理後の析出物密度が108/cm3以上109/cm3未満となり、ライフタイムが10msec以上20msec未満であった。この結晶のゲッタリング特性は、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3未満のものよりは優れているが、基板窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上、かつ、基板炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上のものに比べると多少劣っていた。また、基板抵抗率ρが0.5Ωcm<ρ<30Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.10であり、基板抵抗率ρが0.0Ωcm<ρ≦0.5Ωcmの時V/G[mm2/℃min]≦0.30である場合は、直径1μm以上の転位ループが1×104/cm3以下となり、エピ層の転位ピット欠陥が0.5個/cm2以下、TDDBが90%以上と、エピ層品質が良好であった。
【0067】
【表10】
【0068】
【発明の効果】
本発明のシリコン半導体基板は、エピ層があるにも係らず、デバイスプロセス後の酸素析出が十分起こり、重金属のゲッタリング能力に優れている。そして、基板表面の結晶欠陥がなく、TDDBなどのデバイス特性に優れているため、高集積度の高い信頼性を要求されるMOSデバイス用ウエハを製造するのに最適なシリコン半導体基板である。
【0069】
また、本発明のシリコン半導体基板の製造方法は、従来のシリコン単結晶引上炉やエピ層堆積装置の改造をすることなく、品質の優れた上記シリコン半導体基板を歩留り良く製造することができるため、経済的にも工業的にも、その効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 窒素添加シリコン単結晶ウエハの欠陥領域分布模式図である。
【図2】 リング状分布積層欠陥の構造の模式図である。
【図3】 転位ピット欠陥の構造の模式図である。
【図4】 窒素添加シリコン単結晶ウエハの欠陥領域とエピ層を堆積したシリコン半導体基板のエピ層欠陥分布との関連を示す模式図である。
Claims (4)
- 窒素を1×1016atoms/cm3以上1.5×1019atoms/cm3以下含有するシリコン融液を用いて、チョクラルスキー法により、引き上げ速度をV[mm/min]、融点〜1350℃までの結晶成長軸方向の平均温度勾配をG[℃/mm]とした時、
基板抵抗率ρ[Ωcm]が1.9Ωcm≦ρ≦10Ωcmの場合、V/G[mm2/℃min]≧0.15であり、
基板抵抗率ρ[Ωcm]が0.006Ωcm≦ρ≦0.385Ωcmの場合、V/G[mm2/℃min]≧0.36である条件で、シリコン単結晶(伝導型:p型(ボロンドープ)を成長させた後に、
該単結晶から切り出したシリコン単結晶ウェハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層を堆積させたことを特徴とするシリコン半導体基板製造方法。 - 請求項1の融液にさらに炭素を1×1017atoms/cm3以上1.0×1019atoms/cm3以下含有させるシリコン半導体基板製造方法。
- チョクラルスキー法により製造された窒素含有シリコン単結晶から切り出したシリコン単結晶ウェハの表面に、エピタキシャル法によりシリコン単結晶層(エピ層)を堆積してなるシリコン半導体基板であって、
窒素濃度が1×1013atoms/cm3以上1×1016atoms/cm3以下であり、かつ前記シリコン半導体基板の全面に渡って、{111}面上の格子間原子型積層欠陥(リング状分布積層欠陥)が、エピ層中に0.5個/cm2以下であることを特徴とする請求項1または2で製造されたシリコン半導体基板。 - 前記シリコン単結晶ウエハの炭素濃度が1×1016atoms/cm3以上1×1018atoms/cm3以下である請求項3記載のシリコン半導体基板。
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