[第1実施例]
図1,2は、本発明の第1実施例による反射型液晶表示装置10の1画素分の領域を示す平面図および断面図である。
図1,2を参照するに、前記反射型液晶表示装置10は、概略的には下側ガラス基板11と、これに対向する上側ガラス基板14と、間に封入された負の誘電率異方性を有する液晶層13とよりなり、前記下側ガラス基板はTFT11A、およびこれに協働するゲート電極11B,データ電極11Cを担持する。前記ガラス基板11としては、透過型液晶表示パネルのTFT基板を使うことが可能で、その場合には、前記ガラス基板11上にITOなどの透明導電体よりなる画素電極11Dが、前記TFT11Aに電気的に接続された状態で形成される。
前記TFT11Aおよびゲート電極11B,データ電極11Cは樹脂等の絶縁膜11Eにより覆われており、前記絶縁膜11E上にはレジストパターンよりなる凹凸パターン12が形成されている。
前記凹凸パターン12はAl等よりなる反射電極12Aにより覆われており、前記反射電極12Aは前記画素領域の中央部において前記画素電極11Dと、前記絶縁膜11E中に形成されたコンタクトホール11Fにより電気的に接続されている。
前記反射電極12Aは前記凹凸パターン12に対応する凹凸パターンを形成するが、コンタクトホール11Fに対応する部分には凹凸パターンは形成されておらず、このため画素領域の中央部に平坦な領域が形成される。
一方前記対向基板14には、前記基板11に対面する側に対向電極14Aが一様かつ連続的に形成されており、前記対向電極14A上には、前記コンタクトホール11Fに対応する部分に、液相層13よりも小さな誘電率を有する樹脂材料あるいは誘電体材料よりなり、液晶層13中の液晶分子13Aの配向方向を制御する配向制御構造物12Bが、突起の形で形成されている。
さらに前記基板11上には前記凹凸パターン12および反射電極12Aを覆うように垂直分子配向膜12Cが形成されており、また前記基板14上にも、前記対向電極14Aおよび配向制御構造物12Bを覆うように別の垂直分子配向膜12Dが形成されている。
前記分子配向膜12C,12Dは、前記液晶層13中の液晶分子13Aを、前記液晶層13に駆動電界が印加されていない非駆動状態において、図2中に点線で示したように前記基板11あるいは14に略垂直な方向に配向させようとするが、図1,2の実施例による液晶表示装置10では画素領域の中央部に前記配向制御構造物12Bを形成しているため、液晶分子は前記配向制御構造物12Bの方向にチルトし、その結果、前記画素領域中には、図3に矢印で示す方向に液晶分子がチルトしたドメインA〜Dが形成される。
また前記基板14の外側には、厚さ方向のリタデーションが約100nmのTAC(トリアセテートセルロース)膜15が形成され、前記TAC膜15上には可視光波長の約1/4のリタデーションを有する位相差板16と偏光板17とが順次積層されている。
図1,2に示す反射型液晶表示装置10では、前記反射電極12Aと対向電極14Aとの間に駆動電圧を印加しない非駆動状態においては、前記偏光板17に斜めに入射する環境光が偏光板17により直線偏光に変換され、さらにこれが1/4波長位相差板16により円偏光に変換されて液晶層13に入射する。このような非駆動状態では前記液晶層13中において液晶分子は図2に示すように基板11あるいは14に略垂直に配向しており、液晶層13中に入射した前記円偏光は反射電極12Aにより反射され、液晶層13およびTAC膜15,1/4波長位相差板16を順次逆方向に通過することにより、当初の偏光面に対して90°回転した偏光面を有する直線偏光に変換される。このようにして得られた直線偏光は、前記偏光板17により遮断される。
一方、前記反射電極12Aと対向電極14Aとの間に駆動電圧が印加された場合、液晶層13中の液晶分子13Aは液晶層13に略平行に、もしくは傾斜して配向し、前記1/4波長位相差板16およびTAC膜15を通って液晶層13に入射した円偏光は、液晶層13が生じるリタデーションにより直線偏光に変換され、反射電極12Aで反射された後、前記1/4波長位相差版16およびTAC膜15を逆方向に通過し、前記偏光板17を通過した入射光と同じ偏光面を有する直線偏光に変換され、偏光板17を通って出射する。
このような構成の反射型液晶表示装置10では、反射電極12Aにコンタクトホール11Fが形成されている結果、コンタクトホール11Fに対応する部分においては凹凸パターン12が形成されず、従って基板14に対して斜めに入射した環境光は、前記反射電極12Aのコンタクトホール形成部分においては観測者の方に反射されることがない。このため図1,2の構成の反射型液晶表示装置10では、画素領域中心部の反射率が低下する問題が避けられない。
一方、前記配向制御構造物12Bは、光損失が最小になるように一般に透明な樹脂により形成されるが、それでも前記配向制御構造物12Bによる光損失は避けられない。
このため、例えば図4に示すように前記配向制御構造物12Bを画素領域の中央に形成し、コンタクトホール11Fを、画素領域端のTFT11C近傍に形成したような構成では、画素領域内に反射率の低い部分が、前記基板14に垂直な方向から見た場合に複数個所に形成されてしまい、得られる表示の明るさが大きく損われてしまう。これに対し、図1,2に示す液晶表示装置10では、基板14に垂直な方向から見た場合に前記配向制御構造物12Bがコンタクトホール11Fと重なるため、反射率の低下が最小限に抑制される。
また図2の断面図よりわかるように、液晶表示装置10では突出部を形成する配向制御構造物12Bに対応して、コンタクトホール11F形成領域に凹部が、前記配向制御構造物12Bの高さに対応する幅および深さで形成されるため、このような配向制御構造物形成領域においても他の領域とほとんど同一の液晶セル厚が維持される。
次に、図1,2の反射型液晶表示装置10の製造工程について説明する。
本実施例では、先にも説明したように透過型液晶表示装置用に製造された、TFT11Aおよびゲート電極11B,データ電極11C,透明画素電極11Dを担持する基板をTFT基板11として使い、前記TFT基板11上に前記TFT11A、ゲート電極11B,データ電極11Cおよび透明画素電極11Dを覆うようにポジ型レジスト膜を約1.2μmの厚さにスピンコートにより塗布し、レジスト層を形成する。
このようにして形成されたレジスト層は平坦な表面を有しており、90℃で30分間プリベークを行った後、画素中心のコンタクトホール形成位置以外の領域に凹凸パターンを形成するマスクを使って紫外光照射を行う。このようにして露光されたレジスト層を現像処理し、さらに135℃で40分間の第1ベーク処理、200℃で60分間の最終ベーク処理を行うことで、前記凹凸パターン12が形成される。
このようにして形成された凹凸パターン12上にAl膜を蒸着し、さらにフォトリソグラフィー工程により前記Al膜をパターニングすることにより、画素領域に対応した反射電極12Aが形成される。
前記配向制御構造物12Bは、以下のようにして形成される。
まず前記対向基板14上に前記対向電極14Aを覆うように、誘電率が3.2のポジ型感光性透明樹脂を、約1.2μmの厚さでスピンコートにより塗布する。次にこのようにして形成された樹脂層を90℃で30分間プリベークした後、マスクを使って紫外光露光を行う。さらに現像処理、ポスト露光処理、130℃で2分間の第1ベーク処理および220℃で6分間の最終ベーク処理を行うことにより、前記配向制御構造物12Bを画素領域の中央部に形成する。
さらに前記TFT基板11および対向基板14の表面に、それぞれ前記凹凸パターン12および反射電極12Aを覆うように、また前記対向電極14Aおよび配向制御構造物12Bを覆うように、側鎖型ジアミンを垂直配向成分として含む垂直分子配向膜12Cおよび12Dを塗布する。
さらにこのようにして形成した基板11および14を、径が3μmのスペーサを介して積層し、間の空隙に負の誘電率異方性(Δε=−3.5)を有し異常光と常光の屈折率差Δnが0.067の液晶を注入して、垂直配向モードの液晶パネルを形成する。
さらに前記基板14の外側面に前記TAC膜15と位相差板16と偏光板17とを順次積層することにより、所望の反射型液晶表示装置10が完成する。
図5は、本実施の形態による反射型液晶表示装置において、垂直配向膜12C,12D中の垂直配向成分(側鎖型ジアミン)の全アミン成分に対する比率を5%、10%、25%と変化させた場合の黒表示状態を示す図である。
図5を参照するに、垂直配向膜中の前記垂直配向成分の比率が5%および10%の場合には大々的な光漏れが生じており、これに伴ってコントラスト比が低下する。これに対し、前記垂直配向膜中の垂直配向成分の比率が25%の場合には光漏れがわずかであり、このことから、反射型液晶表示装置10において垂直配向膜12C,12D中における垂直配向成分の比率は25%以上であるのが好ましいことが結論される。
一般に、光漏れは液晶分子がわずかでもチルトすると生じるものであるが、生じた光漏れが人間に視認されるのは、液晶分子のチルト角があるしきい値を超えた場合であると考えられている。表面に凹凸が形成されない透過型の液晶表示装置では、垂直配向膜中の垂直配向成分は5%もあれば十分なコントラスト比が得られるが、図5の結果は、表面に凹凸パターン12が形成される反射型の液晶表示装置10では、垂直配向成分の割合を25%以上に設定しないと十分なコントラスト比が確保できないことを意味している。
以下の表1に、このようにして得られた反射型液晶表示装置10について、基板法線方向から見た白表示状態での反射率(明るさ)とコントラスト比を、積分球光源を使って測定した結果を、比較例1および比較例2による反射型液晶表示装置の結果と比較しながら説明する。ただし前記比較例1では前記配向制御構造物12Bの代わりに対向電極14Aに斜めスリットが形成されており、また比較例2では前記対向基板14上に前記配向制御構造物12Bと同様な配向制御構造物が2.0μmの高さで形成されている。
表1を参照するに、本実施例の反射型液晶表示装置10において垂直配向膜12C,12D中の垂直配向成分(側鎖型ジアミン)の全ジアミン成分に対する割合を5%〜50%の範囲で変化させているが、いずれの場合も、比較例1,2より優れた明るさが実現されていることがわかる。またコントラスト比も、垂直配向膜中の垂直配向成分が25%以上である場合、23以上になることがわかる。TNモード反射型液晶表示装置の場合の明るさが13%程度、コントラスト比が最大で18程度であることを考えると、本実施例の反射型液晶表示装置10はTNモード反射型液晶表示装置よりも優れた表示特性を示すことがわかる。
表1において、比較例1の白表示状態の明るさは本実施例の液晶表示装置10の明るさよりも30%も低下しているが、この原因は、対向電極中に形成したスリット近傍において液晶層がスイッチングしないことによるものと考えられる。また比較例2において明るさが8%程度低下しているが、この原因は、配向制御構造物の高さが本実施例のものよりも高く、従って構造物上における液晶層のリタデーションが、凹凸パターン12上のリタデーションよりも減少することに起因すると考えられる。
なお、本実施の形態による反射型液晶表示装置10において、前記配向制御構造物12Bとして、液晶層13の誘電率よりも大きな誘電率を有する材料を使う場合には、図6に示すように、前記配向制御構造物12Bを、前記TFT基板11の側に、前記導体プラグ11Fに対応して形成された凹部を埋めるように形成することにより、所望の画素領域中央に向って傾斜する液晶分子の配向を実現することが可能である。
[第2実施例]
次に、本発明の第2実施例による反射型液晶表示装置20について説明する。
図7は、前記反射型液晶表示装置20の構成を示す。ただし図7中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図7を参照するに、本実施例の反射型液晶表示装置20は先の反射型液晶表示装置10と類似した構成を有するが、先の実施例において基板11あるいは14上に形成されていた配向制御構造物12Bが省略されている。
その代わり、本実施例の液晶表示装置20では、液晶層13中に配向性を有するポリマ鎖13Bが形成されており、かかるポリマ鎖13Bの作用により、液晶分子13Aが画素領域の中央部に向ってチルトする。ただし図7中、符号13Bは前記ポリマ鎖を概略的に示すものであり、ポリマ鎖の具体的な構造あるいは個々のポリマ鎖を示すものではない。
より詳細に説明すると、本実施例ではTFT基板11上に凹凸パターン12を、図8に示すように凸部が基板の縦方向あるいは横方向に延在する細長い形状に形成し、また前記分子配向膜12C,12Dを、垂直配向成分の比率が25%の垂直配向膜を使って形成する。
図8を参照するに、凹凸パターン12はおおよそ図3に示したドメイン領域A〜Dの各々に対応して形成されており、それぞれの領域A〜Dにおいて、領域の外縁に沿って縦方向あるいは横方向に延在するように形成されている。
さらに前記基板11および12を径が3μmのスペーサを介して積層し、間の空隙に、紫外線照射によりポリマー鎖を形成する樹脂を0.3重量%混合された液晶を注入し、これを液晶層13とする。本実施例では、前記ポリマー鎖を形成する樹脂として、I線の照射強度が2000mJ/cm2以上になった場合に光重合が生じる樹脂を使う。
このようにして形成された反射型液晶表示装置では、前記TFT基板11上に縦方向あるいは横方向に延在する凸部により凹凸パターン12を形成することにより、前記凹凸パターン12が形成する反射光の反射強度が、図8に示すように基板の縦方向および横方向において、斜め方向よりも2倍程度増大する。これに対し、図1の凹凸パターン12では、図9に示すように反射光の強度に指向性は生じない。
そこで、本実施例では得られた液晶表示装置に4Vの駆動電圧を印加し、この状態で基板14に垂直に、前記凹凸パターン12による反射光の光量が、液晶層13中、縦方向および横方向において2000mJ/cm2以上となるように、紫外光を照射する。このような紫外光照射により形成された縦方向および横方向への反射光により、前記液晶層13中には、基板の縦方向および横方向に延在するポリマー鎖13Bが形成され、前記垂直配向膜12C,12Dおよびかかるポリマー鎖13Bの作用により、液晶分子13Aの配向方向が図2に示すように規制される。
このようにして形成した反射型液晶表示装置について、明るさとコントラスト比を測定したところ、先の実施例1の場合と同等の結果が得られた。
なお本実施例によれば、前記凹凸パターン12の形状を最適化し、液晶層13中に光重合性化合物を導入することにより、紫外光照射で液晶層13中において光強度が大きくなる任意の方向に、光重合性化合物を重合させることが可能になる。
[第3実施例]
図10は、本発明の第3実施例による反射型液晶表示装置30の構成を示す。ただし図中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図10を参照するに、本実施例は先の第1実施例の特徴と第2実施例の特徴を合わせた構成となっており、前記ガラス基板14には配向制御構造物12Bが形成されている一方、前記凹凸パターン12を構成する各々の凸部は図8に示したような基板の縦方向あるいは横方向に延在する細長い形状を有し、前記液晶層13中には光重合ポリマー鎖13Bが形成されている。
さらに図10の液晶表示装置30では、偏光板17の吸収軸方位を基板の縦方向に設定し、位相差板の遅相軸方位を偏光板17の吸収軸方位に対して45°ずらした。
以下の表2は、このようにして得られた反射型液晶表示装置30の白表示状態の明るさとコントラスト比を、偏光板17の吸収軸の方位を、前記基板の縦方向から45°ずらして形成した、同様な反射型液晶表示装置(比較例3)について得られた明るさおよびコントラスト比と比較して示す。
表2を参照するに、本実施例および比較例とも、明るさはほとんど変わらないが、本実施例によりコントラスト比が改善されていることがわかる。これは、本実施例において、偏光板17の吸収軸を前記凹凸パターン12による反射強度が極大となる方向に配向させることにより、黒表示がより暗くなることによるものと考えられる。
[第4実施例]
図11は、本発明の第4実施例による反射型液晶表示装置40の構成を、図12は図11の反射型液晶表示装置40中における光線の伝搬の様子を示す。また図12には、光線の光路長に影響する部分のみを示し、その他の部分の図示は省略している。
図11を参照するに、本実施例の液晶表示装置40は、概略的には下側ガラス基板41と、これに対向する上側ガラス基板44と、間に封入された負の誘電率異方性を有する液晶層43とよりなり、前記下側ガラス基板は図示を省略したTFT、およびこれに協働するゲート電極41Cや図示されていないデータ電極を担持する。前記ガラス基板41としては、透過型液晶表示パネルのTFT基板を使うことが可能で、その場合には、前記ガラス基板41上にITOなどの透明導電体よりなる画素電極41Dが、前記TFTに電気的に接続された状態で形成される。
前記TFTおよびゲート電極,データ電極41Cは樹脂等の絶縁膜41Eにより覆われており、前記絶縁膜41E上にはレジストパターンよりなる凹凸パターン42が形成されている。
前記凹凸パターン42はAl等よりなる反射電極42Aにより覆われており、前記反射電極42Aは前記画素領域の好ましくは中央部において前記画素電極41Dと、前記絶縁膜41E中に形成されたコンタクトホール41Fにより電気的に接続されている。
一方前記対向基板44には、前記基板41に対面する側に対向電極44Aが一様かつ連続的に形成されている。
さらに前記基板41上には前記凹凸パターン42および反射電極42Aを覆うように垂直分子配向膜42Cが形成されており、また前記基板44上にも、前記対向電極44Aを覆うように別の垂直分子配向膜42Dが形成されている。
前記分子配向膜42C,42Dは、前記液晶層43中の液晶分子43Aを、前記液晶層43に駆動電界が印加されていない非駆動状態において、前記基板41あるいは44に略垂直な方向に配向させようとするが、前記基板41上には凹凸パターン42が形成されているため、前記凹凸パターン12に接する液晶分子は図12に示すようにチルトする。
また前記基板44の外側には、好ましくはTAC(トリアセテートセルロース)膜よりなる位相差板45が形成され、さらに前記位相差板45上には1/4波長板46および偏光板47が積層されている。
本実施例の反射型液晶表示装置40では、前記液晶層43を構成する液晶分子43Aは負の誘電率異方性を有するものに限定されるものではなく、正の誘電率異方性を有するものであってもよい。一方液晶分子43Aは、非駆動状態において基板41,44の面に略垂直な方向に配向しており、従って液晶表示装置40は反射型の垂直配向液晶表示装置である。
先の各実施例において説明した反射型の垂直配向液晶表示装置10〜30では、環境光が斜め入射することにより、また液晶分子13Aが凹凸パターン12によりチルトさせられるため、非駆動状態においても液晶層13はリタデーションを有し、所望の完全な黒表示は得られない。従って、非駆動状態において黒表示を得るためには、非駆動状態における液晶層13のリタデーションを、位相差板等により補償する必要がある。
透過型の垂直配向液晶表示装置については、垂直配向した液晶層のリタデーションを、位相差板を使って補償する技術が、すでに英国特許1462978号公報や特開平10−153802号公報に提案がなされている。これらの提案では、位相差板の厚さをdf、位相差板のx方向、y方向、z方向への屈折率をnx,ny,nz、液晶層の厚さをdlc、液晶層中における異常光と常光との間の屈折率差をΔnとして、式df{(nx+ny)/2−nz}で与えられる位相差板のリタデーションを、液晶層のリタデーションdlc・Δnに略等しくなるように設定する。
しかし、これら透過型垂直配向液晶表示装置の技術では、位相差板は黒表示状態において斜め方向から入射する光の通過を阻止し、視野角特性を改善するために使われているものであり、反射型の垂直配向液晶表示装置に適用しても、黒表示状態を補償することができない。
表面に凹凸パターンを形成された反射型垂直配向液晶表示装置では、できるだけ多くの環境光を取り込んで、これを観測者の方に反射するように設計されている。
図12を参照するに、外部から斜めに、入射角θ1で入射した環境光は、空気と位相差板45の屈折率比で決まる屈折角θ2で屈折され、さらに液晶層43に屈折角θ3で入射する。
液晶層43と基板44との界面においては、図12に図示を省略している垂直分子配向膜42Dの作用により、液晶分子43Aは、前記液晶層43に駆動電界が印加されない非駆動状態においては、基板44の面に略垂直な方向に配向が規制されている。このため、入射光は前記液晶層43の基板44との界面近傍においては、液晶分子に対してθ3の角度で入射する。液晶層43の屈折率は約1.5で位相差板45の屈折率とほとんど同じであるため、前記入射角θ3は入射角θ2とほとんど等しいとみなすことができる。
一方、このような反射型液晶表示層40では、先の実施例でも説明したように、基板44に対して斜めに入射する環境光を基板44に対して垂直な方向に出射させる必要があり、このためTFT基板41上に凹凸パターン42が形成されている。
図12ではこのような凹凸パターン42を、断面が二等辺三角形となる円錐により近似しているが、前記凹凸パターン42上においては液晶分子43Aは、配向方向が、前記凹凸パターン42を覆う垂直分子配向膜42Cの作用により、前記凹凸パターン42が基板41の面に対して角度ζで形成する斜面に対して垂直に規制される。すなわち、前記液晶層43中においては、液晶分子43Aはチルト角を、前記基板44との界面における0°の値から前記凹凸パターン42上におけるζまで、徐々に増加させる。そこで、前記液晶層43の基板41との界面近傍においては、液晶分子43Aに入射する入射光の入射角は、液晶分子43Aの凹凸パターン42により誘起されたチルトにより、前記角度θ3よりも角度ζだけ減少する。
そこで、前記位相差板45から液晶層43に入射した入射光は前記凹凸パターン42に入射角ζで入射し、反射角ζで反射され、その結果、前記凹凸パターン42上において配向規制されている液晶分子43Aに入射角ζで再び入射する。
一方液晶層43と基板41との界面においては液晶分子43Aは基板41の面に垂直に配向方向が規制されているため、液晶分子43Aは配向方向を基板41から44に向って徐々に変化させていく。これに伴い、液晶分子43Aに入射する反射光の入射角も徐々に減少し、前記基板44との界面においてはゼロになる。
図12の光学系において入射光が凹凸パターン42に到達するまでの往路光路長のうち、位相差板45中の光路長部分は、図12中に示すようにdv/cosθ2で与えられるが、これはθ2≒θ3であることを考えると、おおよそdv/cos2ζに等しくなる(dv/cosθ2≒dv/cos2ζ)。また液晶層13中における入射光の光路長部分は、dlc/cos2ζで与えられる。これに対し、前記凹凸パターン42で基板41の主面に垂直方向に反射された反射光の光路長は、液晶層43中においてはdlc、位相差板45中においてはdvとなる。
このように斜め方向から環境光が入射する反射型液晶表示装置40では入射光の光路長と反射光の光路長とが異なるため液晶表示装置が非駆動状態にあってもリタデーションが発生し、その大きさが入射角θ1および凹凸パターン42のなす角度ζに依存することになる。
例えば液晶層43の厚さdlcが3μm、液晶層43中における異常光と常光との屈折率差Δnが0.067であり、凹凸パターン42の傾斜角分布(傾斜角ζとその存在の割合)から求まる平均傾斜角<ζ>が13°で、入射光の入射角θ1が25°である場合、非駆動状態、すなわち駆動電界が印加されていない状態における液晶層43のリタデーションは、以下の表3の場合Aに示すように、33nmとなる。
表3中には、前記場合Aに加えて、平均傾斜角<ζ>が9°の場合(B)、7.7°の場合(C)および7.5°の場合(D)が例示されている。
図11,12の反射型液晶表示装置40においてこのような液晶層43の斜め方向のリタデーションを補償するには、前記位相差板45として、基板に垂直な方向に負の誘電率異方性を有する膜を使うことが考えられる。
前記表1には、前記位相差板45として基板面に平行な方向と垂直な方向の屈折率差{(Nx+Ny)/2−Nz}が0.0006のもの(位相差(1))、0.0013のもの(位相差(2))、0.0017のもの(位相差(3))、0.0024のもの(位相差(4))を使った場合の、斜め方向へのリタデーション値および補償率を例示している。
以下に、このような負の誘電率異方性を有する位相差板45を使って行う斜め方向へのリタデーション補償について説明する。
図13(A)は、基板に垂直な方向に負の誘電率異方性を有する位相差板45の屈折率楕円体を、また図13(B)は、正の誘電率異方性を有する液晶層43の屈折率楕円体を示す。また図14(A)は、図13(A)の屈折率楕円体をY−Z面で切った状態を、さらに図14(B)は図13(B)の屈折率楕円体をY−Z面で切った状態を示す。以下の議論では、位相差板45および液晶層43のいずれにおいても、面内における屈折率異方性はないものと仮定する(Nx=Ny)。
図13(A),13(B)および図14(A),14(B)を参照するに、X−Y面に対し、入射角θで入射した光の常光屈折率および異常光屈折率は、X軸回りでXY平面を−θ回転させた平面で屈折率楕円体を切断した切り口に形成される楕円の長軸と短軸、あるいは短軸と長軸に相当する。
図14(A),14(B)を参照するに、入射光が基板法線方向(Z軸方向)から角度θだけ傾斜して入射した場合、Y方向およびZ方向への見かけの屈折率Ny',Nz'は、
により、求められる。
先の表3において、液晶層および位相差板のリタデーションの値、および各位相差板について示されている補償率は、このようにして求められた見かけの屈折率Nx',Ny',Nz'および入射角θを使って計算されており、従って入射光の斜め入射の効果が取り入れられている。
表3を再び参照するに、位相差板(1)および(4)では十分な補償を実現することができないが、位相差板(2)および(3)では、ほぼ100%に近い、最適な補償を行うことが可能であるのがわかる。
このようなリタデーションの補償は、当然ながら液晶層のリタデーションdlc・Δnにより変化し、液晶層のリタデーションが変化すると、これに比例して変化させる必要がある。一般にリタデーションの値は基板面に平行もしくは垂直な方向における値で表されるため、位相差板のリタデーションも、斜め方向への実効的な値ではなく基板面に平行または垂直方向の値で示すのが好ましい。そこで、上記の結果に基づいて位相差板の好ましいリタデーションを規定すると、平均傾斜角ζが13°の反射板Aの場合、
0.5≦[df・{(Nx+Ny)/2−Nz}]/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲となる。この範囲であれば、位相差板のリタデーションは最適値から10%程度ずれることがあるが、それでもなお黒表示の補償として顕著な効果が得られる。
一方、平均傾斜角ζが7〜9°の範囲の反射板B〜Dを使った場合には、非駆動状態において液晶層43は11〜16nmの範囲のリタデーションを有し、これに対応する位相差板としては位相差板(2)が適当である。この場合も、最適値からの許容範囲を考えると、好ましい位相差板のリタデーションは、
0.4≦[df・{(Nx+Ny)/2−Nz}]/(dlc・Δn)≦0.6
となる。
そこで上記の結果を総合すると、反射型液晶表示装置40として好ましいリタデーションの範囲は、
0.4≦[df・{(Nx+Ny)/2−Nz}]/(dlc・Δn)≦0.7
であると結論される。
前記傾斜角ζが7°以下になると環境光を取り込む入射角θ1が過小になってしまい、環境光を効率的に取り込むことが困難になる。
特に図11の構成において位相差板45として、面内方向に10nm程度、垂直方向に50nm程度のリタデーションを有するTAC膜を積層して使うのが好都合である。これにより、安い費用で黒表示の実質的に完全な補償を実現することが可能になる。
なお、偏光板47もTAC膜よりなる防湿膜を有するが、この防湿膜は1/4波長板46と偏光板47との間に配設されるため、位相差板45が示すような補償効果は得られない。これについては後述する。
さらに図11の液晶表示装置40では、1/4波長板46が位相差板45と偏光板47との間に配設されている。このような1/4波長板46は液晶層43よりも波長分散性が小さい。そこで、このような波長分散性の小さい位相差板を偏光板47と液晶層43との間に配置し、偏光面の90°回転を行うことにより、波長分散性の少ない、すなわち一部の可視光波長が漏れない、優れた黒表示を実現することができる。その際、前記1/4波長板46、すなわち前記第2の位相差板は、位相差板45、すなわち第1の位相差板の外側に配置するのが好ましく、位相差板45と液晶層43との間に配置するのは好ましくない。位相差板45の屈折率楕円体は方位角依存性を有しており、1/4波長板46を位相差板45と液晶層43との間に配置してしまうと、偏光板を透過した直線偏光の光で補償することになり、ある方位では効果的な補償が行われるが、ある方位では行われなくなり、全体として補償効果が小さくなってしまう。これに対し、前記1/4波長板46を位相差板45の外側に形成しておいた場合、1/4波長板46を透過した円偏光の光で補償することになり、方位角依存性の影響を受けなくなる。すなわち、円偏光の光は全方位で等価であるため、例え位相差板45の屈折率楕円体に方位角依存性があっても、全方位の和として光学補償が行われることになる。
ところで、TAC膜45のような位相差板は面内遅相軸を有するため、このように1/4波長板46と積層した場合、1/4波長板46のリタデーション特性が影響される。例えばそれぞれの遅相軸を平行に配置した場合、基板面に平行な方向のリタデーションが位相差板45と1/4波長板46との和になり、これらを直交して配向すると、差になる。そこで前記1/4波長板46として1/2波長板と1/4波長板との積層による波長分散性が最小化された素子を使った場合、位相差板45の面内遅相軸が前記積層1/4波長板46の面内遅相軸からずれると、積層構造に位相差板45が実効的に含まれてしまい、波長分散特性に影響が出てしまう。
この問題を回避するためには、TAC膜45の面内遅相軸を、前記積層1/4波長板を構成する1/2波長板あるいは1/4波長板の面内遅相軸に一致させるのが好ましい。この場合には、リタデーションの増減以外の影響は生じない。
特に前記位相差板45と1/4波長板46とを、それぞれの面内遅相軸が略平行になるように配置し、さらに面内リタデーションの和が可視光波長のほぼ1/4になるようにすることで、位相差板45の面内リタデーションにより生じる1/4波長板46のリタデーション作用のずれが抑制され、完全な黒表示の補償が可能になる。
特に1/4波長板46が先に説明したような積層構造の素子である場合、位相差板45の面内遅相軸は積層構造を構成する1/4波長板あるいは1/2波長板のいずれかの面内遅相軸に合わせればよい。また1/4波長板と位相差板45の面内リタデーションの和が1/4波長になるように、あるいは1/2波長板と位相差板45の面内リタデーションの和が1/2波長になるように、リタデーションの調整を行う。この場合には、必ずしも位相差板45と積層1/4波長板46の面内リタデーションの和が可視光波長の1/4になるわけではないが、積層1/4波長板46が全体として可視光波長の1/4の面内リタデーションを有するようにどちらかの位相差板のリタデーションが調整されておれば、同様の意味となる。
次に図11の反射型液晶表示装置40の製造工程について説明する。
本実施例ではTFT基板41上にレジスト膜を約1μmの厚さでスピンコートし、90℃,30分間のプリベークの後、前記凹凸パターン42に対応するマスクを使って前記レジスト膜を紫外光により露光した。さらにこれを現像し、135℃で40分間ベーク処理し、さらに200℃で60分間最終ベーク処理することにより、前記平均傾斜角<ζ>が7.7°の凹凸パターン42を形成した。なお、凹凸パターン42の傾斜角は、ベーク温度および時間を変えることで任意に設定できる。
さらにこのようにして形成された凹凸パターン42表面にAl膜42Aを200nmの厚さに蒸着した。
さらに、このようにして処理されたTFT基板41および対向基板42に垂直分子配向膜42Cおよび42Dを塗布し、3μm径のスペーサを介して貼り合わせ空パネルを形成した。
次に前記TFT基板41と対向基板42との間の空隙に負の誘電率異方性(Δε=−3.5)を有し、異常光と常光との屈折率差Δnが0.067の液晶を注入し、液晶パネルを形成した。
さらに前記基板44上に、面内リタデーションが10nmで垂直方向のリタデーションが47nmの2軸性のTAC膜を前記位相差板45として2枚積層し、面内遅相軸の方位を85°に設定して形成し、この上に面内リタデーションWが135nmの1/4波長板と面内リタデーションが250nmの1/2波長板とを、それぞれ140°および85°の遅相軸方位に積層することにより、積層1/4波長板46を形成した。さらに前記1/4波長板46上に偏光板47を、吸収軸方位が75°になるように形成する。
このように構成された垂直配向反射型液晶表示装置40では積層1/4波長板を1/4波長板46として使うことにより、波長分散性を抑制することが可能である。また位相差板45の面内遅相軸を、積層1/4波長板46中の1/2波長板の面内遅相軸に一致させることにより、1/2波長板の面内リタデーションの値を位相差板45の面内リタデーションの分だけ減少させ、1/4波長板46全体として視感度の高い緑波長(540nm)において1/2波長に相当する面内リタデーションを実現している。一方、前記位相差板45は電圧印加時における液晶層のリタデーションを補償するために設けられた負の屈折率異方性を有する位相差板であり、位相差板45の面内リタデーションdf・{(Nx+Ny)/2−Nz}は、液相層43の面内リタデーションdlc・Δnに対して、
df・{(Nx+Ny)/2−Nz}/(dlc・Δn)=0.47
となる。
以下の表4は、このようにして得られた反射型液晶表示装置40について、所定の駆動電圧を印加して白表示および黒表示を行い、得られた白および黒表示について、積分球光源を用いた分光輝度計により反射率を測定した結果を示す(実施例4)。積分球光源は全角度、全方位に光が出射する拡散光源であり、室内照明や太陽光などの環境光に近い照明が得られる。
表4を参照するに、本実施例により、反射型液晶表示装置40の黒表示反射率は0.53,白表示反射率は12.64となり、24.1のコントラスト比が実現されていることがわかる。
表4中には比較のため、比較例4〜7の結果も示してある。
比較例4では、位相差板45と積層1/4波長板46の積層順序を逆転し、前記基板44上に最初に積層1/4波長板46の1/4波長板を、次に積層1/4波長板46の1/2波長板を積層し、前記位相差板45を前記1/2波長板上に積層している。各々の膜44〜47および凹凸パターン42の構成を含む液晶層43の構成自体は先の実施例4と同じである。
比較例5では、先の実施例4と同じ構成の液晶表示装置において、積層1/4波長板46の上部層を構成する1/2波長板を面内リタデーションが270nmの一軸性フィルムとしている。また積層1/4波長板46中の1/4波長板を、その遅相軸が液晶層のアンカリング方位(ラビング方位)と一致するように配置し、これにより、面内リタデーションを、実施例4の場合の1/4波長板よりも20nm減少させている。
これに対し、比較例6では、実施例4の装置において位相差板45を省略し、また積層1/4波長板46中の1/2波長板として、面内リタデーションが270nmの一軸性フィルムを使っている。
さらに比較例7では、基板41,44表面に水平配向膜を塗布し、径が3μmのスペーサを介してこれらを貼り合せた後、間の空隙に正の誘電率異方性(Δε=6.0)を有し異常光と常光の屈折率差Δnが0.067の液晶を封入した。すなわち、比較例7の装置はTNモードの反射型液晶表示装置である。
再び表4を参照するに、実施例4で示した、本実施例による反射型液晶表示装置40においては黒表示の反射率が他の液晶表示装置のいずれよりも低く、その結果として、他の装置のいずれよりも高いコントラスト比が得られているのがわかる。
図15,16は、このようにして得られた本実施例(実施例4)による垂直配向反射型液晶表示装置40について黒表示状態での反射率およびコントラスト比を、前記液晶表示装置40をスポット光源を使い25°の入射角で照射した場合についてそれぞれ示す。また図15、16中には、同様な測定を、前記実施例6の装置に対して行った場合を比較のため示している。
図15,16を参照するに、本実施例の反射型液晶表示装置40では、全方位角について黒反射率が比較例よりも低下し、コントラスト比が向上していることがわかる。一般に単一の偏光板を使った反射型液晶表示装置では、黒表示の反射率は偏光板の吸収軸方位に対応する方位角で最も低くなり、透過軸方位に対応する近傍の方位角で最も高くなる傾向がある。
図15,16においても、黒表示の反射率が偏光板47の吸収軸方位に対応する255°近傍の方位角において最小になっており、またコントラスト比が最大になっているのがわかる。
以下の表5は、前記実施例4の液晶表示装置40および比較例6の液晶表示装置で、偏光板の吸収軸方位における黒表示および白表示の反射率およびコントラスト比の方位角依存性を比較して示す。
表5を参照するに、本実施例では、偏光板の吸収軸方位に対応する255°近傍の方位角において比較例よりも黒表示の反射率が18%も減少していることがわかる。また、この方位においてはコントラスト比も48.7%から67.5%まで増大しているのがわかる。
[第5実施例]
次に、本発明の第5実施例による反射透過型液晶表示装置について説明する。
図17は従来の反射透過型液晶表示装置50の概略的構成を示す。
図17を参照するに、反射透過型液晶表示装置50は概略的には一対のガラス基板51,52と、間に封入された液晶層53とよりなっており、前記ガラス基板52の内面には一様に透明電極52Aが形成されている。一方、前記ガラス基板51の内面には平坦化膜51Aが形成されており、前記平坦化膜51A中には透過光窓として開口部51aが形成されている。
前記平坦化膜51Aの表面には凹凸を有する反射電極51Bが形成されており、また前記開口部51aにおいては前記基板51上に透明電極51Cが形成されている。
さらに前記基板51の外側には円偏光子54が、また前記基板52の外側には別の円偏光子55が形成されている。
このような構成の反射透過型液晶表示装置50では、光学スイッチングを液晶層53のリタデーションを変調することにより実現しているが、このためには前記ガラス基板52を通って入射し、反射電極51Bで反射されて出射する光の液晶層53中における光路長と、前記基板51から光学窓51aを通って液晶層53に入射し、液晶層53およびガラス基板52を通過して出射する光の光路長とが等しい必要があり、従って前記平坦化膜51Aを液晶層53の厚さの1/2の厚さに形成する必要がある。
しかしこのような液晶表示装置を製造しようとすると、基板51上に厚い平坦化膜51Aを形成する工程と、前記平坦化膜51A上に反射電極51Bを形成する工程と、光学窓51aを形成する工程と、前記基板51上に光学窓51aに対応して透明電極51Cを形成する工程とが、通常の透過型液晶表示装置の製造工程に加えて必要になり、製造工程が非常に複雑になってしまう。
また図17の反射透過型液晶表示装置50では、Al反射電極51BとITOなどよりなる透明電極51Cとの境界部に、電池効果による腐食を阻止するためにバリアメタル層51bを設ける工程がさらに必要になる。
これに対し、図18は、上記の課題を解決した本発明の第5実施例による反射透過型液晶表示装置60の構成を示す。
図18を参照するに、液晶表示装置60は概略的には一対のガラス基板61,62と、間に封入されたポリマネットワーク液晶層63とよりなり、前記ガラス基板62の内面には一様に透明電極62Aが形成されている。
一方前記ガラス基板61の内面にはスリット状開口部61aを有する反射電極パターン61Aが形成されており、前記液晶層63を構成するポリマネットワーク液晶としては、例えば特開平5−27228号公報に記載されたものを使うことが可能で、駆動電界が印加されていない非駆動状態において光学的に透明な状態をとり、駆動電界が印加されている駆動状態において散乱状態をとることを特徴とする。
さらに前記ガラス基板61の外側には円偏光子64が、ガラス基板62の外側には直線偏光子65が設けられる。
図19(A),(B)は図18の反射透過型液晶表示装置60の、それぞれ黒表示状態および白表示状態における動作を説明する図である。
19(A)を参照するに、左側は黒表示状態における反射モード動作を、右側は透過モード動作を示しており、反射モード動作では液晶パネル前面からの入射光は直線偏光子65により直線偏光に変換され、さらに遅相軸が偏光板65の吸収軸に対して45°になるように形成され、入射光の約1/4波長のリタデーションを有する非散乱状態の液晶層63により円偏光に変換される。なお、液晶層63の非散乱状態におけるリタデーションは入射光波長、すなわち可視光波長λの1/4に限定されるものではなく、λ/4+0.5n;n=0,1,2…、nは自然数)であってもよい。
円偏光に変換された入射光は前記反射電極61Aにより円偏光の状態で反射され、液晶層63中を逆の経路で通過する際に、当初の偏光面に対して直交する偏光面を有する直線偏光に変換される。そこで、このようにして液晶層63を出射する直線偏光状態の反射光は前記直線偏光板65により遮断され、所望の黒表示が得られる。
一方、透過モード動作では、前記基板61に液晶パネル前面から入射する入射光は前記円偏光板64を通る際に円偏光に変換され、さらに前記反射電極61A中の光学窓61aを通って液晶層63中に導入される。
液晶層63は非散乱状態にあり、従って入射円偏光は液晶層63を通過する際に、先の反射円円偏光の場合と同様に、直線偏光子65の吸収軸に対して直交する偏光面を有する直線偏光に変換される。これにより、液晶層63中を透過する透過光も直線偏光子65により遮断されることになる。
一方図19(B)の白表示状態では、前記液晶層63は散乱状態にあり、従って前記直線偏光子65を通過して液晶層63中に入射する直線偏光は液晶層63中において散乱され、散乱された状態で反射電極61Aにより反射される。このような散乱光は液晶層63中を反射光として逆方向に通過する際にも散乱を受け、その結果、前記入射側直線偏光子65には、吸収軸に平行な偏光面を有する偏光成分のみならず、様々な偏光面を有する偏光成分が入射する。
従って、偏光子65中を、これらの偏光成分のうち、吸収軸に垂直な偏光面を有する成分が、直線偏光の形で通過し、所望の白表示が得られる。
透過光の場合も同様で、基板61に円偏光子64を通って入射する入射光は前記液晶層63中において散乱され、散乱により形成された偏光成分のうち、偏光子65の吸収軸に直交する偏光面を有する偏光成分が、偏光子65を通過する。
かかる構成の反射透過型液晶表示装置60では、図17の従来の反射透過型液晶表示装置50におけるのような厚い平坦化膜51Aや表面散乱形状を有する電極51B、さらに光学窓51aに対応した透明電極51Cを形成する必要がなく、単にスリット状にパターニングされた反射電極61Aを基板61の内面に形成するだけでよい。また、反射電極61Aは透明電極とコンタクトすることがなく、従ってバリアメタル層を形成する必要もない。このため、装置製造が非常に容易になり、反射透過型液晶表示装置の製造費用を大きく低下させることが可能になる。
このような液晶層の非散乱状態と散乱状態との間における状態の遷移を光学的スイッチングに利用する液晶表示装置では、視野角が制限されることがなく、非常に優れた視野角特性を実現できる。
図18の例では、非散乱状態において液晶層が入射光の1/4波長のリタデーションを有していたが、本発明の別の態様として、図20に示すように液晶層のリタデーションが非常に小さい場合の構成がある。ただし図20中、先に説明した部分に対応する部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
図20を参照するに、反射透過型液晶表示装置70では液晶層63の代わりに、非散乱状態における面内リタデーションが、散乱層として使われる液晶の複屈折Δnとセル厚dの積Δn・dに比べて小さく、好ましくはおおよそ無視できるようなポリマ分散型液晶層73が使われ、これに伴って直線偏光子65が円偏光子66に置き換えられている。
図21(A),(B)は、図20の反射透過型液晶表示装置70の、それぞれ黒表示状態および白表示状態における動作を説明する図である。
図21(A)を参照するに、左側は黒表示状態における反射モード動作を、右側は透過モード動作を示しており、反射モード動作では液晶パネル前面からの入射光は円偏光子66により円偏光に変換され、さらに非散乱状態にありリタデーションが実質的に無視できる程度に小さい液晶層73中を円偏光のまま通過する。
前記液晶層73中を通過した入射光は前記反射電極61Aにより円偏光のまま反射され、液晶層73中を円偏光のまま逆の経路で通過する。さらに前記液晶層73を通過した円偏光は円偏光板66に逆の経路で入射し、遮断される。
一方、透過モード動作では、前記基板61にパネル裏面から入射する入射光は前記円偏光板64を通る際に円偏光に変換され、さらに前記反射電極61A中の光学窓61aを通って液晶層73中に導入される。
液晶層73は非散乱状態にあり、従って入射円偏光は円偏光のまま液晶層73を通過し、先の反射円円偏光の場合と同様に、円偏光子66により遮断される。
一方図19(B)の白表示状態では前記液晶層73は散乱状態にあり、従って前記円偏光子66を通過して液晶層73中に入射する円偏光は液晶層73中において散乱され、散乱された状態で反射電極61Aにより反射される。このような散乱光は液晶層73中を反射光として逆方向に通過する際にも散乱を受け、その結果、前記入射側円偏光子66には様々な偏光面を有する偏光成分が入射する。
従って、偏光子66中を、これらの偏光成分のうち、吸収軸に垂直な偏光面を有する成分が通過し、所望の白表示が得られる。
透過光の場合も同様で、基板61に円偏光子64を通って液晶パネル裏面から入射する入射光は前記液晶層73中において散乱され、散乱により形成された偏光成分のうち、偏光子66の吸収軸に直交する偏光面を有する偏光成分が、偏光子66を通過する。
かかる構成の反射透過型液晶表示装置70では、図17の従来の反射透過型液晶表示装置50におけるのような厚い平坦化膜51Aや表面散乱形状を有する電極51B、さらに光学窓51aに対応した透明電極51Cを形成する必要がなく、単にスリット状にパターニングされた反射電極61Aを基板61の内面に形成するだけでよい。また、反射電極61Aは透明電極とコンタクトすることがなく、従ってバリアメタル層を形成する必要もない。このため、装置製造が非常に容易になり、反射透過型液晶表示装置の製造費用を大きく低下させることが可能になる。
このような液晶層の非散乱状態と散乱状態との間における状態の遷移を光学的スイッチングに利用する液晶表示装置では、視野角が制限されることがなく、非常に優れた視野角特性を実現できる。
以下の表6は、図17の従来の反射透過型液晶表示装置50と本発明の反射透過型液晶表示装置60,70との間での製造工程の比較を示す。
表6を参照するに、本発明では平坦化膜51Aの形成工程が不要になり、また平坦化膜51Aの表面に凹凸パターン51Bを形成する工程が不要になり、さらに光学窓領域に透明電極51Cを形成する工程が不要になる。
本発明では単に反射電極をパターニングするだけでよく、反射透過型液晶表示装置の製造工程が実質的に簡素化される。
ところで、図18の反射透過型液晶表示装置60あるいは図20の反射透過型液晶表示装置70のように、対向基板62上に一様な透明対向電極62Aを有し反射電極61Aとしてスリット形状の電極パターンを使った構成の液晶表示装置では、液晶層63あるいは73に駆動電界を印加する際に、図22〜24に示すようにいくつかの駆動モードが考えられる。
図22は、横電界モードあるいはIPSモードとよばれる駆動方式であり、櫛型の反射電極の隣接する一対の電極指の間に駆動電圧を印加する。これに対し図23は、前記IPSモードと区別するために仮に縦電界方式あるいはSモードとよぶ駆動方式であり、前記対向電極62と反射電極61Aとの間に駆動電圧を印加する。さらに図24は仮に片側縦電界方式あるいはsSモードとよぶ駆動方式で、IPSモードとSモードとを組合せた駆動方式になっている。すなわち図24の駆動モードでは対向電極62と一つの電極指が第1の電位に駆動され、前記電極指の両側の電極指が第2の電位に駆動されている。
図25(A)は、図23のSモード駆動方式に使われる反射電極61Aの構成例を、図25(B)は図22のIPSモードあるいは図24のsSモード駆動方式に使われる反射電極61Aの構成例を示す。
図25(A)を参照するに、ガラス基板61上にはTFT61Tおよびゲート電極61G,データ電極61Dが形成されており、透過領域61aに対応したスリットを有する電極が反射電極61Aとして形成されている。
これに対し図25(B)の構成ではガラス基板61上に同様なTFT61T,ゲ−ト電極61G,データ電極61Dのほかに、複数の櫛型電極61A1および61A2が交互に形成されており、前記櫛型電極61A1は共通にTFT61Tに接続され、前記櫛型電極61A2は共通にコモンライン61Cに接続されている。電極61A1と電極61A2との間には、透過領域61aに対応した隙間が形成されている。
図25(A)あるいは25(B)の構成のTFT基板を前記基板61として使い、5μm径のスペーサを介して基板61および62を貼り合せることにより、図18の液晶表示装置18を、IPS駆動方式、Sモード駆動方式およびsSモード駆動方式のそれぞれについて作製した。その際、前記基板61および62上に水平配向膜を形成し、これに液晶分子がスリット方向に直交する方向にホモジニアス配向するようにラビングを行った。さらに基板61と62との間の空隙にUVキュアラブル液晶と複屈折Δnが0.2306で誘電率異方性Δεが15.1の液晶とを混合した混合液晶を封入し、さらに紫外光照射を行うことにより、液晶層63中にポリマネットワーク散乱層を形成した。
図26は、このようにして形成した反射透過型液晶表示装置60について、印加電圧と透過率の関係を、電極パターン61Aの幅Eを4μmに設定し、スリット61aの幅Gを様々に変化させながら測定した結果を示す。図26中、電極幅スリット幅Gはμm単位で示してある。また透過率は非駆動状態での透過率により規格化されている。
図26より、スリット幅Gが小さいほど駆動電圧が低下しており、またSモード駆動方式を使った場合に、最も駆動電圧を低下させることができるのがわかる。
また本実施例の別の実験において、図25(A)あるいは(B)に示す構成のTFT基板を基板61として使い、図18の反射透過型液晶表示装置60を形成した。
この実験では、前記基板61および対向基板62の表面にPVAあるいは可溶性ポリイミドよりなる水平分子配向膜を形成し、液晶分子がホモジニアス配向するようにラビング処理を行った後、基板61および62を径が2.3μmのスペーサを介して貼り合せ、空隙に複屈折Δnが0.067のネマチック液晶に重合開始材を含むUVキュラブル液晶を10重量%加えた混合液晶を封入した。これに紫外光照射を行い、リタデーションが154nmのポリマネットワーク液晶を形成した。さらに、対向基板62の外側に、直線偏光板65を透過軸は液晶配向方位から略45°になるように形成し、さらに基板61の外側に円偏光板64を形成した。
これにより、安い費用で反射透過型液晶表示装置60を製作することが可能になった。
また本実施例の別の実験において、図25(A)あるいは(B)に示す構成のTFT基板を基板61として使い、図20の反射透過型液晶表示装置70を形成した。
この実験では、前記基板61および対向基板62を、径が6μmのスペーサを介して貼り合せ、空隙に複屈折Δnが0.23の液晶にUV硬化樹脂モノマを20重量%加えた混合液晶を封入し、これに紫外光照射を行い、ポリマ分散型液晶73を形成した。さらに、TFT基板61の外側および対向基板62の外側に、円偏光板64および66を形成することにより、駆動電圧を印加しない非駆動状態で白表示が得られ、駆動状態で黒表示が得られる反射透過型液晶表示装置70が形成された。
また本実施例の別の実験において、図25(A)あるいは(B)に示す構成のTFT基板を基板61として使い、図20の反射透過型液晶表示装置70を形成した。
この実験では、前記基板61および対向基板62表面にPVAあるいは可溶性ポリイミドよりなる垂直配向膜を形成し、径が5μmのスペーサを介して貼り合せ、空隙に複屈折Δnが0.23の液晶に重合開始剤を含むUVキュアブル液晶を10重量%加えた混合液晶を封入し、これに紫外光照射を行い、ポリマネットワーク液晶73を形成した。さらに、TFT基板61の外側および対向基板62の外側に、円偏光板64および66を形成することにより、駆動電圧を印加しない非駆動状態で黒表示が得られ、駆動状態で白表示が得られる反射透過型液晶表示装置70が形成された。
図27は、図18の反射透過型液晶表示装置60あるいは図20の反射透過型液晶表示装置70にカラーフィルタCFを設ける際の構成例を示す。
図27を参照するに、対向基板62を通ってパネル前面から入射し、反射電極61Aで反射される光は対向基板62の内側に形成されたカラーフィルタCFを往復で2回通過するのに対し、TFT基板61を通ってパネル裏面から入射する光はカラーフィルタCFを一度通過するだけである。
このため、カラーフィルタCFの色純度が一様であると、反射光と透過光とで色度が異なってしまう。
このため、図27の構成では、前記カラーフィルタCFのうち、透過領域61aに対応する部分CF1においてカラーフィルタCFの厚さを他の部分の2倍に増大させて透過光および反射光がいずれも同一の色度を有するようにしている。
図28は図27の一変形例であり、カラーフィルタCFを基板61上に形成し、カラーフィルタCFの厚さを、反射電極61Aを使って調整している。
すなわち、カラーフィルタCFを前記基板61上に反射電極61Aの厚さの倍の厚さに形成することで、前記透過領域61a上におけるカラーフィルタCFの厚さを前記電極61A上における厚さの2倍に設定することが可能である。図29の構成では、このようなカラーフィルタCFの膜厚の調整が自己整合的になされ、特別なパターン工程を行う必要がない。
図29は図30の一変形例であり、前記反射電極61Aの下に、レジスト膜等により、反射電極61Aに整合した形状のパターン61Bを形成する。かかる構成によれば、反射電極61Aが図28の場合よりも基板61上の高い位置に形成される。図29の構成は、特に反射電極61Aの厚さが薄く、図28の構成では反射光を十分に着色できない場合に特に有効である。
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記)
(付記1) 第1の基板と、
前記第1の基板に対向して設けられ、表面に凹凸が形成された第2の基板と、
前記第2の基板上に前記凹凸を覆うように形成され、コンタクトホールを介して前記第2の基板上に形成されたスイッチング素子と電気的に接続され、前記凹凸に対応した凹凸を有する反射電極と、
前記第1の基板と第2の基板との間に設けられた負の誘電率異方性を有する液晶層とよりなる垂直配向モードの反射型液晶表示装置において、
前記コンタクトホールを前記反射電極の中心に配置し、さらに前記第2の基板をこれに垂直な方向から見た場合に、前記コンタクトホールに重なる位置に、液晶層中の液晶分子の配向を制御する構造物を配置したことを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記2) 前記構造物は、前記反射電極上に形成されることを特徴とする付記1記載の反射型液晶表示装置。
(付記3) 前記構造物は、前記第1の基板の、前記第2の基板に面する側に設けられることを特徴とする付記1記載の反射型液晶表示装置。
(付記4) 前記構造物は、前記第2の基板に垂直な方向から見た場合、前記コンタクトホールの大きさと概ね同じ大きさを有することを特徴とする付記1〜3のうち、いずれか一項記載の反射型液晶表示装置。
(付記5) 前記構造物は、前記反射電極に前記コンタクトホールにより形成される段差に対応する高さを有することを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載の反射型液晶表示装置。
(付記6) 第1の基板と、前記第1の基板に対向して設けられ、表面に反射能を有する凹凸が形成された第2の基板と、前記第1および第2の基板の間に設けられた負の誘電率異方性を有する液晶層と、前記第1および第2の基板の間に設けられた光重合性ポリマ構造物を挟持してなる垂直配向モードの反射型液晶装置の製造方法であって、
前記基板の法線方向に光を照射し、前記凸凹により基板面内方向に光を反射して前記ポリマ構造物を構成する化合物を光重合させる工程を含み、
前記ポリマを光重合する工程では、前記凸凹の形状により基板面内の反射強度に指向性を持たせ、前記指向性に対応する方位に前記化合物の光重合を行うことを特徴とする反射型液晶表示装置の製造方法。
(付記7) 第1の基板と、
前記第1の基板に対向して設けられ、表面に反射能を有する凹凸が形成された第2の基板と、
前記第1の基板と第2の基板との間に設けられた負の誘電率異方性を有する液晶層と、
前記第1の基板と第2の基板の表面に形成された垂直配向膜とよりなる垂直配向モードの反射型液晶表示装置において、
前記垂直配向膜中における全ジアミン成分に対する垂直配向成分の比率を25%以上にしたこと特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記8) 第1の基板と、
前記第1の基板に対向して設けられ、基板表面に反射能を有する凹凸が形成された第2の基板と、
前記第1および第2の基板の間に保持された負の誘電率異方性を有する液晶層とよりなる垂直配向モードの反射型液晶表示装置において、
前記第1の基板外側に偏光板を配置し、その吸収軸を前記凸凹による反射強度が極大となる方位に略平行に配置したことを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記9) 第1の基板と、
前記第1の基板に対向して設けられ、反射能を有する凹凸を形成された第2の基板と、
前記第1の基板と第2の基板との間に保持された、正又は負の誘電率異方性を有する液晶層と、
前記第1の基板の外側に配設された偏光板とよりなる反射型液晶表示装置において、
前記第1の基板と前記偏光板との間に、前記第1の基板の面に対して垂直な方向に負の屈折率異方性を有する位相差板を配設し、
前記位相差板のx,y,z軸方向の屈折率をそれぞれnx,ny,nz、前記液晶層の厚さをdlc、前記液晶層中における異常光と常光との屈折率差をΔnとして、前記位相差板のリタデーションdf・{(nx+ny)/2−nz}の値を、
0.4≦[df・{(nx+ny)/2−nz}]/(dlc・Δn)≦0.7
の範囲に設定したことを特徴とする反射型液晶表示装置。
(付記10) 前記位相差板は、前記第1の基板に平行な方向に遅相軸を有することを特徴とする付記9記載の反射型液晶表示装置。
(付記11) さらに前記偏光板と前記位相差板との間に、前記第1の基板の面に平行な方向に正の屈折率異方性を有し、リタデーションが可視光波長の約1/4となる別の位相差板を配設したことを特徴とする付記9記載の反射型液晶表示装置。
(付記12) 前記位相差板および前記別の位相差板は、前記第1の基板に平行な方向に遅相軸を有することを特徴とする付記11記載の反射型液晶表示装置。
(付記13) 前記位相差板および前記別の位相差板の、前記第1の基板に平行な方向のリタデーションの和が、可視光波長の約1/4に設定されていることを特徴とする付記12記載の反射型液晶表示装置。
(付記14) 第1の基板と、
前記第1の基板に対向するように設けられた第2の基板と、
前記第1の基板の、前記第2の基板に面する側に設けられた透明電極と、
前記第2の基板の、前記第1の基板に面する側に設けられ、開口部を有する反射電極と、
前記第1の基板と第2の基板との間に挟持され、液晶層を含み、光の散乱能を散乱状態と非散乱状態との間で変化させる散乱層と、
前記第1の基板、前記第2の基板および前記散乱層とにより構成される液晶パネルの外側に、前記液晶パネルを挟持するように設けられた一対の偏光子とよりなり、
前記一対の偏光子の少なくとも一方は、円偏光子よりなることを特徴とする反射透過型液晶表示装置。
(付記15) 前記一対の偏光子は、いずれも円偏光子よりなることを特徴とする付記14記載の反射透過型液晶表示装置。
(付記16) 前記一対の偏光子の一方は、直線偏光子であることを特徴とする付記14記載の反射透過型液晶表示装置。
(付記17) 前記散乱層は非散乱状態において、可視光波長域の略λ/4位相差板(0.5n+λ/4;n=0,1,2,・・・nは自然数)に相当するリタデーションを有することを特徴とする付記14〜16のうちいずれか一項記載の反射透過型液晶表示装置。
(付記18) 前記散乱層は、非散乱状態における面内リタデーションが、前記散乱層を構成する液晶層の複屈折Δnとセル厚dの積Δn・dよりも小さいことを特徴とする付記14記載の反射透過型型液晶表示装置。
(付記19) 前記反射電極は、スリット形状を有することを特徴とする付記14〜18のうち、いずれか一項記載の反射透過型液晶表示装置。
(付記20) さらに前記第1および第2の基板のいずれか一方にカラーフィルタを備え、前記カラーフィルタは、前記反射電極に対応する反射領域と、前記開口部に対応する透過領域において異なる色純度を有することを特徴とする付記14〜19のうち、いずれか一項記載の反射透過型液晶表示装置。
(付記21) 前記カラーフィルタは、前記反射電極上に設けられていることを特徴とする付記20記載の反射透過型液晶表示装置。