JP4509491B2 - 差動送りミシン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ミシンに係り、特に、下布の送り量に対して上布の送り量を異ならせて縫製を行う差動送りミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
差動送りミシンの一般的なものとしてデュルコップ アードラー社製の型番550-16-26の差動送りミシンが挙げられる。この差動送りミシンは、針板の上方に配置され,上布の送りを行う第一及び第二の上送り部と、針板上の下布を下方から送る下送り部と、一つの駆動モータにより第一及び第二の上送り部の送り駆動を行う駆動手段と、一つの駆動モータにより下送り部の送り駆動を行う駆動手段とを備えている。
【0003】
また、上記とは別の差動送りミシンとして、針落ち位置を挟んでその両側で上布の送りを行う第一と第二の上送り部と、針落ち位置を挟んでその両側で下布の送りを行う第一と第二の下送り部ととを備え、各送り部ごとに個別の駆動モータを備えるものが挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭63−35287号公報 (第10図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、先に挙げた差動送りミシンにあっては、二つの上送り部が単一の駆動モータにより駆動されるため、各上送り部ごとに上布の送り量の調節を行うことが困難であった。即ち、各上送り部間で異なる送り量で駆動することは、その動力伝達機構の構成、例えば、外径の異なる歯車やベルト送り用のプーリを使用することで可能となるが、さらに、新たな調節を行うためには歯車等の交換が必要となり、事実上はほとんど困難であった。このため、例えば、袖つけ縫製の場合にように、二枚の布地の布端を合わせて縫製する際に、各々がカーブしている場合等にあっては、そのハンドリングが困難となり、生産性の向上や不良率の低減が図れない、という不都合があった。
【0006】
また、特許文献1に記載の差動送りミシンにあっては、各上送り部ごとに異なる駆動モータにより駆動する構成のため、個別の送り量設定は容易に行うことが可能となる。従って、かかる差動送りミシンにあっては、一定の縫製領域(例えば袖つけの縫製範囲全体)について予め設定された送り量で各上送り部の駆動を行うことは可能である。しかしながら、この差動送りミシンは、縫製時に切り替わる複数の縫製区間ごとに上送り部の送り量を変えて縫製を行うことはできなかった。このため、二枚の布地の布端を合わせて縫製する際に、その縫製領域内でいせ込み量に変化をつけることができず、また、布端部のカーブの曲率が途中で変化を生じる場合等にあっては、そのハンドリングが困難となり十分に追従することが困難となる結果、縫製品質が低下するという不都合があった。
また、このミシンでは、上送り部が上下動しつつ上布の送り動作を行うため、布地から離れてしまう期間や針が布地に突き通された期間により送りができないことを原因として正確に布送りが行われず、縫製品質が低下するという不都合があった。
【0007】
本発明は、縫製品質の向上を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、上送り装置と下送り装置により上布と下布のそれぞれの送り量に差を設けて縫製を行う差動送りミシンであって、前記上送り装置は、縫い針の近傍で前記上布の送りを行う第一の上送り部と、前記第一の上送り部に対して送り方向に交差する方向に沿って隣接して配置される共に前記上布の送りを行う第二の上送り部と、前記第一の上送り部に設けられて送り量の制御が可能な第一の上送りモータと、前記第二の上送り部に設けられて送り量の制御が可能な第二の上送りモータとを備え、前記下送り装置は、前記下布の送りを行う下送り部とその駆動源となる下送りモータを備え、縫製時に縫製画面を表示する操作パネルと、前記縫製画面に表示され、縫製時に操作可能で第一の上送り部の送り量を増減する、いせ込み量増減ボタンと、前記縫製画面に表示され、縫製時に操作可能で、前記第一の上送り部の送り量に対する差により第二の上送り部の送り量を増減する、差動量増減ボタンを備え、縫製範囲を連続する複数の縫製区間に分割し、縫製区間ごとの、前記第一の上送り部の送り量を決定する設定入力と前記いせ込み量増減ボタンの操作量に基づいて前記第一の上送りモータの動作制御を行うと共に、前記差動量増減ボタンの操作による前記第一の上送り部の送り量に対する差の設定入力に基づいて前記第二の上送り部の送り量を算出し、当該送り量に基づいて前記第二の上送りモータの動作制御を行う動作制御手段を備える、という構成を採っている。
【0009】
上記構成によれば、縫製区間を切り替えることにより、各送り量を変化させ、縫いピッチ量、後述するいせ込み量、左右の送り量の調節を図り、種々の縫製に対応を図ることができる。
即ち、縫い代の形状が複雑であっても、縫製区間の切替より、いせ込み量,左右の送り量を個別に変化させることが可能であるため、精度良く追従を図り、その縫製品質の向上が図られる。
さらに、上記構成では、第一の上送り部の送り量については縫製区間毎に個別に設定される。一方、第二の上送り部の送り量を決定する設定入力は、第一の上送り部の送り量から所定の条件に従って算出される。なお、ここでいう「所定条件」とは、第一の上送り部の送り量に対して一定の差を生じる送り量とする場合が該当する。
かかる構成によれば、第一の上送り部の送り量(送り速度)が個別に設定された縫製区間を切り替えることにより、各送り量を変化させ、また、第二の上送り部の送り量は第一の上送り部の送り量から算出されるため、縫製区間の切り替わりによる変化に追従し、その結果、縫製区間を切り替えることにより、縫いピッチ量、後述するいせ込み量、左右の送り量の調節を図り、種々の縫製に対応を図ることができる。従って、縫い代の形状が複雑であっても、縫製区間の切替より、いせ込み量,左右の送り量を個別に変化させることが可能であるため、精度良く追従を図り、その縫製品質の向上が図られる。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、動作制御手段は、縫製区間ごとの、前記下送り部の送り部の送り量と当該送り量に対する差の値との入力に基づいて第一の上送りモータの動作制御を行う、という構成を採っている。
上記構成では、請求項1記載の発明と同様の作用を奏すると共に、各縫製区間毎の第一の上送り部の送り量が下送り部の送り量に対する差の値により入力される。
なお、「相対量」とは、他の送り部の送り量に対する当該送り部の送り量の差の値や、他の送り部の送り量に対する当該送り部の送り量の比率、或いは他の送り部の送り量に対する当該送り部の送り量の差を他の送り部の送り量に対する比率で表した値等をいう。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記操作パネルが前記縫製領域を円形で表示すると共に、該円形が前記縫製区間ごとに分割され、前記いせ込み量を前記縫製区間ごとに表示する、という構成を採っている。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1,2又は3記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記動作制御手段は、縫い針の上下動と同じ周期で第一の上送り部,第二の上送り部及び下送り部の各駆動手段の駆動を行うと共に、各駆動手段ごとに縫い針の一周期内のいずれのタイミングで開始から停止までの駆動を行うかを決定する設定入力に基づいて各駆動手段の動作制御を行う動作制御手段とを備える、という構成を採っている。
上記構成では、縫い針の上下周期と同周期で第一の上送り部,第二の上送り部及び下送り部の送り動作を行い、その一周期毎にいずれのタイミングで駆動するかを入力設定することができるので、縫い針が布地に突き通された状態や各上送り部が布地から離間している状態のように布送り不可能なタイミングで布送りを行うことを回避することができ、各送り部について精度良く布送りが行われる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第一の上送り部に対する前記第二の上送り部の送り方向に沿った相対位置を調節する調節機構と、前記第一の上送り部に対する前記第二の上送り部の上下方向に沿った相対位置を調節する調節機構とをそれぞれ備える、という構成を採っている。
また、請求項6記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記第一、第二の上送り部からなる上側回転送り部と、布押さえを交互に上下動させる上下動手段と、前記上側回転送り部と前記布押さえの上昇割合を調整する上昇割合調節手段を備える、という構成を採っている。
【0019】
【発明の実施の形態】
(実施の形態の全体構成)
本発明の実施の形態を図1〜図27に基づいて説明する。本実施形態たる差動送りミシン10は、縫製を行う上布と下布のそれぞれの送り速度に差を設けることによりいせ込みを行いつつ縫製を行うミシンであって、例えば、袖と身頃の縫製等に使用される。
なお、いせ込みとは、上布と下布とで縫製のピッチ幅に差を設けることをいい、その差(いせ込み量)を大きくすることで縫い代に伸縮性を持たせることができる。従って、袖と身頃の縫製を行う場合に、肩側の縫い代について脇側よりもいせ込み量を大きくすることで、縫製後において伸縮性が要求される肩側にゆとりを持たせることができる。
ここで、後述する縫い針11が上下動を行う方向をY軸方向(上下方向)とし、これと直交する一の方向をX軸方向(前後方向)とし、Y軸方向とX軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向(左右方向)と定義する。また、後述する針板15の載置面15aはX−Z平面に平行に配設されているものとする。
【0020】
図1は、差動送りミシン10の全体斜視図である。かかる差動送りミシン10は、上布及び下布を載置し縫製を行う載置面15aが形成された針板15を有する布載置部13と、載置面15aの上側で上下動可能に支持される縫い針11と、縫い針11を上下方向に駆動する針昇降手段20と、載置面15aの上側で上下動可能に支持されると共に縫い針11の貫通部を有する布押さえ12と、布押さえ12に隣接して配置され,載置面15a上の上布を送る上側回転送り部30と、載置面15a上の下布を送る下側回転送り部70と、上側回転送り部30に送り動作の駆動力を付与する上送り駆動手段60と、下側回転送り部70に送り動作の駆動力を付与する下送り駆動手段74と、縫い針11の上下動に同期させて布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させると共に、これらの内の布押さえ12について縫い針11と共に上下動させる上下動手段40と、上記各部の動作制御を行う動作制御手段80と、を備えている。
なお、上記上側回転送り部30と上送り駆動手段60とが、上送り装置として機能すると共に、下側回転送り部70と下送り駆動手段74とが、下送り装置として機能する。
【0021】
(縫い針)
図2は針板15の上方に位置する構成を示す斜視図である。上記縫い針11は、図示しない本体フレームに支持された針昇降手段20によりY軸方向に沿って往復駆動する。縫い針11はその先端近傍に図示しない上糸が通されており、Y軸方向の往復動作により針板15の載置面15a上の上布及び下布を貫通して針板15の下側まで上糸を送り、図示しない釜の繰る下糸と係合して縫製を行う。
【0022】
(針昇降手段)
針昇降手段20は、その下端部において縫い針11を保持すると共にY軸方向に沿って往復可能に支持された針保持軸23と、本体フレームに固定され,針保持軸23の上端部近傍と下端部近傍とをそれぞれ滑動可能に支持する上側スリーブ24及び下側スリーブ25と、ミシンモータ18(図10参照)により回転駆動されると共にその回転中心線をZ軸方向に沿わせた状態で本体フレームに回転可能に支持された主駆動軸21と、この主駆動軸21の端部に固定装備された回転部材22と、針保持軸23の中間部に固定装備された連結体27と、この連結体27と回転部材22の偏心位置とを連結するコンロッド26とを備えている。
【0023】
上記コンロッド26は、その両端部のぞれぞれがいずれもZ軸方向に沿った中心線により回転可能な状態で回転部材22と連結体27とに連結されている。従って、回転部材22がZ軸方向を中心に回転駆動すると、コンロッド26はX軸方向の変位を解消しつつY軸方向に沿った変位のみを連結体27に伝達する。従って、これにより針保持軸23はY軸方向,即ち上下方向に往復駆動させることが可能である。
【0024】
(布押さえ)
図3は縫い針11の周囲の構成を示す拡大斜視図、図4は布押さえ12をZ軸方向から見た側面図である。図4に示すように、布押さえ12は、その全体形状が略L字状に形成され、L字の縦棒に相当する部位の上端部において後述する上下動手段40の布押さえ保持軸49に保持されている。従って、布押さえ12は、縫製時において連続的に上下移動を行い、一往復ごとに上布及び下布を針板15側に押圧して布押さえを行う。
【0025】
また、布押さえ12のL字の横棒に相当する部位の下面(押さえ面とする)が接触する状態で載置面15a上の上布及び下布の上方から押圧して布押さえを行う。
さらに、布押さえ12のL字の横棒相当部はX軸方向に沿った状態で配設されており、各布送り部30,70による布送り方向上流側(図4における右側)となる端部は上方に反りあがった形状に形成されている。かかる形状とすることにより、布押さえ12と下側回転送り部70との間への上布及び下布の送り込みを円滑に行うことを可能としている。
また、布押さえ12は、その横棒相当部が針昇降手段20に保持された縫い針11の下方位置となるように配設されており、縫い針11の直下となる位置には縫い針11を針板15の下方にある釜側に通すための貫通穴12aが形成されている。
【0026】
また、布押さえ12の押さえ面はその断面形状がノコ刃状に形成され、布押さえ時における布送りとは逆方向への上布の移動を防止している。さらに、布押さえ12の押さえ面は、少なくとも縫い針11の中心線Cの通過位置から布送り方向下流側(図4における右側)に向かって距離T1までの領域についてはX−Z平面に沿った平坦状に形成されている。なお、この場合の平坦状とは、ノコ刃形状の複数の先端が一様にX−Z平面に沿う状態をいう。
上記距離T1は、下側回転送り部70による送りピッチ以上とすることが望ましい。送りピッチとは、一針ごとの布送り距離をいい、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定される。動作制御手段80において、送りピッチ幅を可変設定可能とする場合には、距離T1をその最大となる送りピッチ以上とすることが望ましい。
【0027】
(上側回転送り部)
上側回転送り部30は、図3に示すように、布押さえ12を挟んでZ軸方向に沿って並んで設けられた第一の上送り部31及び第二の上送り部32とこれらを連結する連結部材39とを備えている。第一及び第二の上送り部31,32とは、連結部材39により連結されているので、上下動手段40により上下移動を行う際には一体的に移動する。
【0028】
図5は第一の上送り部31をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。かかる第一の上送り部31は、上送り駆動手段60により搬送駆動される第一上ベルト37と、この第一上ベルト37を案内するガイド枠33と、ガイド枠33の先端部で回転自在に支持されると共に第一上ベルト37を折り返すローラ35とを備えている。
上記ガイド枠33は略J字状に形成されており、その上端部で上下動機構40の送り部保持軸48に保持される。また、ガイド枠33は上端部近傍に後述する上送り駆動手段60のガイドアーム64の先端部を軸支する連結ブラケット33cが設けられている。
また、ガイド枠33にはその内側に第一上ベルト37を案内するガイド溝33aが形成され、その底部にはその底面側で第一上ベルト37をX軸方向(さらに詳しくは図5における左方)に沿った搬送を案内するガイド板33bが形成されている。第一上ベルト37は、かかるガイド板33bを搬送される際に上布と接触し、上布の送りを行う。
【0029】
さらに、ガイド板33bは、その一部が平坦状に形成されており、かかる平坦となる部位を通過する第一上ベルト37が上布と接触するように且つガイド板33bの平坦領域がX−Z平面に沿うようにガイド枠33が送り部保持軸48に保持される。仮に第一上ベルト37が湾曲した状態で上布と接すると、第一上ベルト37はその弾性変形により曲率半径が変化し、上布をベルト搬送速度に応じた送り量で精度良く送ることが困難となるが、平坦面にならった状態で第一上ベルト37が上布と接触することにより、上布を精度良く送ることが可能となる。
また、平坦となる領域は、Z軸方向から見た縫い針11の中心線位置から搬送方向上流側について距離T3,下流側について距離T2の範囲で形成される。そして、距離T2,T3はいずれも、下側回転送り部70による送りピッチ以上とすることが望ましく、動作制御手段80において送りピッチ幅を可変設定可能とする場合には、最大となる送りピッチ以上とすることがより望ましい。
【0030】
図6は第二の上送り部32をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。かかる第二の上送り部32は、上送り駆動手段60により搬送駆動される第二上ベルト38と、この第二上ベルト38を案内するガイド枠34と、ガイド枠34の先端部で回転自在に支持されると共に第二上ベルト38を折り返すローラ36とを備えている。
上記ガイド枠34は、連結部材39及びガイド枠33を介して上下動機構40の送り部保持軸48に保持される。また、ガイド枠34にはその内側に第二上ベルト38を案内するガイド溝34aが形成され、その底部にはその底面側で第二上ベルト38をX軸方向(さらに詳しくは図6における左方)に沿った搬送を案内するガイド板34bが形成されている。第二上ベルト38は、ローラ36を搬送される際に上布と接触し、上布の送りを行う。また、このローラ36は、Z軸方向から見て縫い針11の中心線Cと配置が一致しており、従って、第二上ベルト38が上布と接触する位置も中心線Cと一致する。
【0031】
さらに、第二上ベルト38は、第一上ベルト37に比較してその幅が半分以下に設定されている。これは上布及び下布の端縁部に沿って縫製を行う場合に、第二上ベルト38を端縁側とすることで、縫い代を狭くすることが可能となるためである。
なお、かかる第二の上送り部32では、第二上ベルト38の上布との接触部において平坦となる領域を形成していないが、第一の上送り部31と同様に平坦部を形成しても良い。
【0032】
図3に示すように、連結部材39には、第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のX軸方向及びY軸方向に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構3,4が設けられている。即ち、連結部材39は、送り部保持軸48の下端部に装備される軸保持部39aと、この軸保持部39aに対してX軸方向に沿って移動調節可能に装着され,第二の上送り部32を支持する支持部39bとから構成される。
【0033】
第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のX軸方向(送り方向)に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構3は、支持部39bに貫通状態で設けられたX軸方向に沿った長穴3aに挿通され、支持部39bを軸保持部39aに対して締結固定する締結ネジ3bにより構成されている。即ち、締結ネジ3bを緩めると、支持部39bが軸保持部39aに対してX軸方向に沿った移動が可能となり、支持部39bを介して第二の上送り部32をX軸方向について位置決めする。さらに、締結ネジ3bを締結することでX軸方向における所望の位置で第二の上送り部32が固定される。
【0034】
第一の上送り部31に対する第二の上送り部32のY軸方向(上下方向)に沿った相対的な位置関係を調節する調節機構4は、支持部39bの下端部で第二の上送り部32のガイド枠34をZ軸方向を中心に回動自在に支持する支軸ネジ4aと、支持部39aに対してねじ込み可能に支持されると共にそのねじ込み動作によりガイド枠34の上部に設けられた突起部34cのネジ穴に螺合する調節ネジ4bと、支持部39bとガイド枠34の上部との間で張力を付勢する引っ張りバネ4cとを備えている。
第二の上送り部32のガイド枠34は、支軸ネジ4aを緩めることによりZ軸方向を中心とする回動が可能となる。このとき、ガイド枠34は、引っ張りバネ4cにより一方向への回動力が付勢されており、かかる状態で調節ネジ4bを締め付け方向に回転させると、ガイド枠34は、引っ張りバネ4cの張力に抗して支軸ネジ4aを中心として他方向に回動する。ガイド枠34がこのように回動することで第二の上送り部32の下端部に位置するローラ36の高さ調節が行われる。また、高さ調節後は、支軸ネジ4aを締結し、ガイド枠34の回動を規制し固定する。
【0035】
上側回転送り部30は、上述のように、針位置を挟んで両側に第一及び第二の上送り部31,32を配置しているので、縫製の対象物,特に上布の送りに関し、縫い糸の影響を抑制して所期の送り方向に安定して送ることが可能となる。
【0036】
(上下動手段)
上下動手段40について、図2及び図7により詳説する。図7は、上下動手段40及び上送り駆動手段60の斜視図である。
上下動手段40は、上側回転送り部30を上下方向に移動可能に支持する構成と、布押さえ12を上下方向に移動可能に支持する構成と、主駆動軸21の回転駆動力を往復揺動を行う駆動力に変換する構成と、当該往復揺動駆動力により上側回転送り部30と布押さえ12とを交互に上下動させる構成とを備えている。
【0037】
上記上側回転送り部30を上下動可能に支持する構成は、上側回転送り部30をその下端部に保持する送り部保持軸48と、本体フレームに固定され,送り部保持軸48を上下方向に沿って往復可能に支持する第一スリーブ51と、送り部保持軸48に固定装備された第一の軸連結体53と、送り部保持軸48を常時下方に押圧する第一の押圧バネ55とを有している。
第一の軸連結体53は、本体フレームに固定装備された後述するスリーブ保持ブラケット50に設けられたY軸方向に沿った溝50aに係合する図示しない係合突起を備えている。このため、送り部保持軸48は上側回転送り部30と共にY軸方向を中心とする回転を生じることなく上下動を行うことが可能である。
【0038】
上記布押さえ12を上下動可能に支持する構成は、布押さえ12をその下端部に保持する布押さえ保持軸49と、布押さえ保持軸49を上下方向に沿って往復可能に支持する第二スリーブ52と、本体フレームに固定され,第二スリーブ52を保持するスリーブ保持ブラケット50と、布押さえ保持軸49に固定装備された第二の軸連結体54と、後述するX軸変位解消リンク体47を介して布押さえ保持軸49を常時下方に押圧する第二の押圧バネ56とを有している。
第二の軸連結体54は、スリーブ保持ブラケット50に設けられたY軸方向に沿った長穴50bに係合する係合突起54aを備えている。このため、布押さえ保持軸49は布押さえ12と共にY軸方向を中心とする回転を生じることなく上下動を行うことが可能である。
【0039】
主駆動軸21の回転駆動力を往復揺動を行う駆動力に変換する構成は、本体フレームに固定装備された後述するモータブラケット62に回転可能に支持されると共にZ軸方向に沿った揺動軸41と、この揺動軸41の一端部に連結され,当該揺動軸41を中心に揺動する主動揺動リンク体42と、主駆動軸21の中間部にその一端部が連結されると共にその他端部が主動揺動リンク体42の揺動端部に連結された偏心コンロッド43とを有している。
上記偏心コンロッド43は、その一端部において回転可能な偏心車を擁しており、この偏心車がその中心から偏心した位置において主駆動軸21に軸支されている。従って、主駆動軸21の回転駆動により偏心車は偏心状態で共に回転するので偏心コンロッド43はその一端部が主駆動軸21を中心として偏心距離を半径とする円運動を行う。一方、偏心コンロッド43はその他端部がZ軸方向を中心に回転可能な状態で主動揺動リンク体42の揺動端部に連結されている。その結果、偏心コンロッド43の一端部が主動揺動リンク体42から遠ざかる位置に移動すれば当該主動揺動リンク体42の揺動端部を自らの方向に引き寄せ、偏心コンロッド43の一端部が主動揺動リンク体42に近づく位置に移動すれば当該主動揺動リンク体42の揺動端部を自らの位置から遠ざかる方向に押し戻すこととなる。従って、主動揺動リンク体42は、揺動軸41を中心とする往復揺動動作を行うこととなる。また、その際、揺動軸41も主動揺動リンク体42の揺動範囲と同じ角度範囲で往復揺動回転を行うこととなる。
【0040】
また、主動揺動リンク体42は、揺動端部に長穴が形成されている。この長穴には、偏心コンロッド43の他端部がZ軸方向を中心に回転可能な状態で且つ当該長穴の所定位置で連結されている。当該長穴に沿ってコンロッド43の連結位置を変更調節することにより、主動揺動リンク42の揺動半径が変動し、さらにこれにより揺動角度を変更調節するためである。換言すれば、長穴を有する主動揺動リンク体42と、偏心コンロッド43の他端部との連結位置を長穴に沿って変更調節可能とすることにより、布押さえ12及び上側回転送り部30全体の上下方向のストローク調節手段を構成している。
【0041】
往復揺動駆動力により上側回転送り部30と布押さえ12とを交互に上下動させる構成は、三角形の各頂点となる位置に連結点を有すると共にその内の第一の連結点46aが前述した第一の軸連結体53と連結された三点リンク体46と、この三点リンク体46の第二の連結点46bと前述した第二の軸連結体54とを連結するX変位解消リンク体47と、前述した揺動軸41の他端部に固定連結されて揺動軸41を中心とする揺動動作を行う従動揺動リンク体44と、この従動揺動リンク体44の揺動端部と三点リンク体46の第三の連結点46cとを連結する伝達リンク体45とを有している。
上記従動揺動リンク体44と揺動軸41とのみが固定連結され、その他の上記各リンク体44,45,46,47の各連結点はいずれもZ軸方向を中心として回転可能に連結されている。その結果、従動揺動リンク体44は、主駆動軸21の回転駆動力から変換された往復揺動駆動力が付与されることとなる。
【0042】
これにより、三点リンク体46の第三の連結点46cが従動揺動リンク体44側に引き寄せられると、第一の連結点46aから第一の軸連結体53を介して送り部保持軸48が下方に押し下げられ、上側回転送り部30は布地を介して下側回転送り部70に当接した状態となる。さらに、第三の連結点46cが従動揺動リンク体44側に引き寄せられ続けると、三点リンク体46は第一の連結点46aを中心に回動し、その結果、第二の連結点46bからX変位解消リンク体47,第二の軸連結体54を介して布押さえ保持軸49が上方に引き上げられる。なお、このとき、三点リンク体46の第二の連結点46bに生じるX軸方向に沿った変位はX変位解消リンク体47により解消される。
また、三点リンク体46の第三の連結点46cが従動揺動リンク体44から遠ざかる方向に押し戻されると、上記とは逆の状態となり、布押さえ12が下側回転送り部70に当接し、上側回転送り部30が上方に引き上げられる。
つまり、上記構成では、三点リンク体46の一の連結点(第三の連結点46c)を力点とし、当該連結点に往復駆動力を入力することで、残る二つの連結点(第一及び第二の連結点46a,46b)が交互に支点と作用点となる状態を切り替え、布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させている。
【0043】
このようにして、上下動手段40は、布押さえ12と上側回転送り部30とを交互に上下動させることが可能である。また、上下動手段40は、針昇降手段20と同様に、その上下動作の駆動力を主駆動軸21から付与されるので、縫い針11の上下動と布押さえ12及び上側回転送り部30の上下動との同期を容易に取ることが可能である。かかる上下動手段40では、縫い針11と布押さえ12とが共に上下動を行い、上側回転送り部30は縫い針11と交互に上下動行うように構成されている。
【0044】
また、上述の上下動手段40は、主動揺動リンク体42に布押さえ12と上側回転送り部30の上昇割合を調節する上昇割合調節手段を備えている。かかる、上昇割合調節手段は、主動揺動リンク体42の基端部側(揺動軸41との連結端部)に設けられた締め付け可能な揺動軸挿通穴部と締め付けネジ42aとを有している。揺動軸挿通穴部は、主動揺動リンク42の基端部に揺動軸挿通用の貫通穴とその貫通穴から半径方向に沿ったスリットとを形成し、締め付けネジ42aはそのスリット間隔を締め付けることで揺動軸41と主動揺動リンク体42とを固定する。従って、布押さえ12と上側回転送り部30の上昇割合を調節する際には、締め付けネジ42aを緩め、揺動軸41を適宜回動させて再び締め付けネジ42aを締めることにより行うことができる。
【0045】
(上送り駆動手段)
上送り駆動手段60について図2及び図8に基づいて説明する。図8は上送り駆動手段60をZ軸方向から見た図である。
この上送り駆動手段60は、第一の上送り部31の回転送り駆動を行う駆動手段と第二の上送り部31の回転送り駆動を行う駆動手段として機能する。
即ち、上送り駆動手段60は、上側回転送り部30の第一の上送り部31の送り動作の駆動源となる第一の上送りモータ61aと、第二の上送り部32の送り動作の駆動源となる第二の上送りモータ61bと、各上送りモータ61a,61bを保持し本体フレームに固定装備されたモータブラケット62と、第一の上送りモータ61aの出力軸に装備され,第一上ベルト37が巻回されるベルト溝が設けられた第一のプーリ63aと、第二の上送りモータ61bの出力軸に装備され,第二上ベルト38が巻回されるベルト溝が設けられた第二のプーリ63bと、各上送りモータ61a,61bから上側回転送り部30まで第一及び第二上ベルト37,38をガイドするガイドアーム64と、ガイドアーム64の各部に設けられ,第一上及び第二上ベルト37,38をガイドアームに沿わせると共にテンションを与えるテンションプーリ65,66,67,68とを備えている。
【0046】
第二の上送りモータ61bが第一の上送りモータ61aよりも上方となる配置で、上記各上送りモータ61a,61bはその出力軸をZ軸方向に平行となるようにモータブラケット62に支持されている。これら各上送りモータ61a,61bは、回転角度量を制御可能なステッピングモータが使用されており、その回転角度は動作制御手段80の動作指令信号により制御される。前述したように、送りピッチは、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定されるが、送りピッチを変更するために下側回転送り部70の送り量を変更制御する場合には、これに応じて上側回転送り部30の送り量も変更しなければならない。従って、このように上送り量を決定する駆動源を縫い針11の上下動の駆動源とは別個独立したステッピングモータとすることにより、自在な上送り量の変更設定を可能としている。
【0047】
上記第一のプーリ63aのベルト溝に第一上ベルト37が巻回され、第二のプーリ63bのベルト溝には第二上ベルト38が巻回されている。そして、第一の上送りモータ61aと第二の上送りモータ61bとは、その回転量が動作制御手段80により個別に制御されるので、第一の上送り部31と第二の上送り部32との上布の送り量に差を設けることが可能となる(この差を差動量という)と共に、その差動量を自在に設定することが可能である。
従って、第二の上送り部32の送り量が第一の上送り部31よりも多くなる設定とすれば、送り方向下流側に向かって左側にカーブした縫い代(送り方向下流側に向かって見た状態で第二の上送り部32は縫い針11の右側となるので布送り方向は左側にカーブする)の布地の縫製を好適に行い、第二の上送り部32の送り量を第一の上送り部31よりも少なくなる設定とすれば、送り方向下流側に向かって右側にカーブした縫い代の布地の縫製を好適に行うことができる。また、各上送り部31,32を同じ送り量とすることで直進方向の縫製にも容易に対応する。
【0048】
ガイドアーム64は、回動間接により二つのリンク体を連結した構造を備えている。そして、このガイドアーム64の一端部は第一の上送りモータ61aの出力軸の近傍下方においてモータブラケット62に対してZ軸方向を中心に回動可能に連結支持されており、他端部は前述した上側回転送り部30のガイド枠33に対してやはりZ軸方向を中心に回動可能に連結されている。そして、各テンションプーリ65,68はガイドアーム64の一端部側に配設され、各テンションプーリ66,67はガイドアーム64の回動間接付近に配設されている。各上送りベルト37,38は、各テンションプーリ65〜68に半巻回されることで、テンションを維持しながらガイドアーム64に沿って上送りモータ61と各回転送り部31,32間で搬送されることとなる。なお、第二の上送りベルト38は、そのベルト幅が狭く、伸長し易いことから、上送りモータ61とガイドアーム64との間に設けられたもう一つのテンションプーリにも半巻回されている。
ガイドアーム64は、以上の配置で各テンションプーリ65〜68が設けられ、その途中には回動間接が設けられていることから、その先端部が上側回転送り部30に連結され、当該上側回転送り部30と共に上下動が行われても、円滑にベルト搬送を行うことができる。
【0049】
(布載置部)
布載置部13を図3,9に基づいて説明する。図9は布載置部13,下側回転送り部70及び下送り駆動手段74の一部分解した斜視図である。布載置部13は、縫い針11の下方に立設された載置台14と、載置台14の上面に固定装備された針板15とを備えている。載置台14の上部であってそのカバーの内側には前述した釜ハウジング16及び後述する下側回転送り部70のベルトガイド71が支持されている。
【0050】
針板15は、布地の送り方向に長い板状部材であり、載置台14上に固定された状態において、その長手方向中間にX−Z平面に平行な平坦面である載置面15aが形成されている。また、載置面15aから布地の送り方向上流側は、当該上流側に向かうに従ってやや下降勾配気味な布地を送る上流側送り面が形成され、載置面15aから布地の送り方向下流側は、当該下流側に向かうに従ってやや下降勾配気味な布地を送る下流側送り面が形成されている。
そして、針板15の載置面15aの中央には当該針板15を貫通してなる四角い下送り用開口部15bが形成されている。そして、この下送り用開口部15bからは、後述する下側回転送り部70のベルトガイド71の上面及び第一,第二の下ベルト72,73が露出されている。従って、これらにより載置面15a上に載置された布地は背面が下送り用開口部15bから露出した各下ベルト72,73に当接し、その送り方向に送られる。
【0051】
(下側回転送り部)
下側回転送り部70を図3,5,9に基づいて説明する。下側回転送り部70は、前述した載置台14の上部に支持された釜ハウジング16のさらに上部に設けられたベルトガイド71と、下送り駆動手段74に搬送される第一の下送り部としての第一下ベルト72及び第二の下送り部としての第二下ベルト73とを備えている。
【0052】
上記ベルトガイド71は、その上面にX軸方向に沿った二本のガイド溝71a,71bが形成されており、各ガイド溝71a,71bの間であって縫い針11の直下位置には釜ハウジング内の釜まで縫い針11を案内するための貫通穴が形成されている。かかる貫通穴は、縫い針11の挿入時において送り込まれる上糸の環状部に釜が繰る下糸を挿通させて縫製を行うためのものである。
【0053】
また、各下ベルト72,73はそれぞれのガイド溝71a,71bに沿って搬送される。このとき、各下ベルト72,73はその上面が針板15の載置面15aよりも上方に突出するようにガイド溝71a,71bの底面深さが設定されている。
さらに、ベルトガイド71のガイド溝71a,71bを搬送される各下ベルト72,73は、図5に示すように、縫い針11の送り方向の前後において、その上面がX−Z平面に平行な平坦状となるようにベルトガイド71の各ベルト溝71a,71bの底面形状が設定されている。かかる平坦状となる領域は、縫い針11の前後において少なくとも送りピッチ幅で1ピッチ分ずつ形成することが望ましい。このように、各下ベルト72,73に平坦状となる領域を設けることにより、ベルトが湾曲した状態で下布と接した場合に生じる曲率半径の変化が防止され、下布をベルト搬送速度に応じた送り量で精度良く送ることが可能となる。
【0054】
さらに、各下ベルト72,73に平坦状領域を設けた効果を説明する。前述したように、上側回転送り部30の第一の上送り部31は、第一上送りベルト37を縫い針11の前後において送りピッチ幅で1ピッチ分ずつ平坦状として搬送する。また、布押さえ12はその底面が、縫い針11の後(送り方向下流側)において送りピッチ1ピッチ分平坦状に形成されている。かかる場合、人為的に、下布を平坦に維持したまま上布をたわませた状態として布地を送り込むと、第一の上送り部31は上下動を行っていることから、縫い針の手前位置において、上布がたわんだままの状態で1ピッチ幅分だけ布地が挟み込まれることとなる。そして、各送り部30,70の各ベルトの搬送により1ピッチ分の搬送が行われ、そのままの状態で今度は布押さえ12により各布は押さえ込まれると同時に縫い針11による縫いつけが行われる。
つまり、▲1▼縫い針11の前後双方において上ベルトに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、▲2▼縫い針11の前後双方において下ベルトに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、▲3▼縫い針11の後方において布押さえに少なくとも1ピッチ幅で平坦領域を形成する、という三つの条件を満たすことで、人為的にいせ込みを行うことが可能となる。
なお、当然のことながら上下のベルトの1ピッチの送り量に差を設けることによる装置の正常な効果としてのいせ込みは通常通り行われる。従って、「人為的にいせ込みを行う」とは、厳密に言えば、上記人為的な作業を行うことにより1ピッチごとのいせ込み量を増加させることが可能となるという意味である。
【0055】
(下送り駆動手段)
下送り駆動手段74について図9に基づいて説明する。下送り駆動手段74は、下側回転送り部70の送り動作の駆動源となる下送りモータ75と、下送りモータ75の出力軸に装備され,第一及び第二下ベルト72,73が並んで巻回される主動プーリ76と、下送りモータ75から下側回転送り部70までの間において載置台14に支持され,第一及び第二下ベルト72,73にテンションを与えるテンションプーリ77,78とを備えている。
【0056】
上記下送りモータ75はその出力軸をZ軸方向に平行となるように本体フレームに支持されている。この下送りモータ75もステッピングモータが使用されており、その回転角度は動作制御手段80の動作指令信号により制御される。前述したように、送りピッチは、縫い針11の上下動の周期と一針ごとの下側回転送り部70による送り量により決定されるので、送りピッチを変更する際には下送りモータ75の一回の送り角度の変更制御が行われる。このように下送り量を決定する駆動源を縫い針11の上下動の駆動源とは別個独立したステッピングモータとすることにより、自在な上送り量の変更設定を可能としている。
なお、下送り駆動手段74にあっては、第一及び第二下ベルト72,73に個別に対応する下送りモータを設け、各々のモータの駆動量について個別に動作制御手段80により制御を行っても良い。これにより、各下ベルト72,73について異なる送り量で下布を送ることができ、湾曲した縫い代を有する布地に対してハンドリングを容易とし、操作性をより向上させることが可能となる。なお、後述する動作制御手段80及び動作の説明において、「4モータ構成」とは、各下ベルト72,73ごとに個別に下送りモータを備える構成の差動送りミシンのことをいうものとする。
【0057】
(動作制御手段の構成)
動作制御手段80について図10により説明する。図10は差動送りミシン10の制御系を示すブロック図である。まず、動作制御手段80の周囲の構成について説明する。
図10に示す操作パネル17は、所定の画像を表示する表示手段とその表示画面上に設けられたタッチパネルとを備える入出力装置である。かかる表示画面には動作制御手段80から出力される種々の縫製情報や各種設定ボタン等が表示され、タッチパネルは各種表示スイッチに対する入力操作を感知し、接触操作による入力指示位置の座標情報を動作制御手段80に出力する。動作制御手段80は、出力中の画像データに対応する表示エリアの所定の各位置における個別のデータを記憶しており、当該各位置と入力指示位置の位置座標とが一致する場合に、当該位置のデータを読み出し、当該データが選択されたことを認識することができる。
【0058】
図10に示すステップ切替スイッチ92とは、作業者が縫製範囲を区分してなる複数の区間ごとにいせ込み量の設定を行う場合に入力設定の対象となる区間(ステップ)を順次切り替えるためのスイッチである。かかるステップ切り替えスイッチ92に併設された入力回路90により、スイッチ92の操作内容に応じた信号が動作制御手段80に入力される。
ミシン起動ペダル91とは、その踏み込み操作によりミシンモータ18の起動を指示入力するためのON−OFF入力手段である。かかるミシン起動ペダル91に併設された入力回路89により、ミシン起動ペダル91の操作に応じた信号が動作制御手段80に入力される。
【0059】
糸張力ソレノイド19とは、糸を挟みこんで糸に張力を付与する糸狭持部(図示せず)の駆動源として用いられ、動作制御手段80の制御信号により駆動回路97から出力される駆動電流に応じて動作することにより、糸狭持部に狭持された糸に所定の大きさの張力が加わるようになっている。
また、前述した各送りモータ61a,61b,75は、それぞれ駆動回路85a,85b,86により、動作制御手段80の制御信号に応じた回転角度により、その駆動制御が行われる。
また、ミシンモータ18はサーボモータであり、駆動回路88により、動作制御手段80の制御信号に応じた回転量により、その駆動制御が行われる。また、その回転量は角度単位で制御することが可能であることから、動作制御手段80は、ミシンモータ18の現在の回転角度位置を認識することが可能である。
【0060】
動作制御手段80は、差動送りミシン10の後述する各種機能,動作を実行させる制御プログラム,制御データ又は各種縫製データが書き込まれているROM82と、制御プログラムに従って第一及び第二の上送りモータ61a,61b,下送りモータ75,糸張力ソレノイド19及びミシンモータ18等の各部の動作を集中制御すると共に表示データを生成して操作パネル17の表示部に表示させるマイコンであるMPU81と、MPU81の処理データ,いせ込み量設定処理やいせ込み縫製処理に関する各種データをワークエリアに格納するRAM83と、当該RAM83に格納された処理データ記録し保持するEEPROM84とを備えている。
また、上記RAM83には、種々のワークメモリやカウンタなどが設けられており、縫製動作中のワークエリアとしても使用される。
また、EEPROM84には、予め設定された縫製範囲を区分してなる複数の縫製区間(ステップ)毎に設定される各種縫製条件の設定値(例えば、各縫製区間長さ、区間ごとのいせ込み量、糸張力、針数等)や、各縫製区間(ステップ)に共通して設定される各種縫製条件の設定値(例えば、縫いピッチ量等)を記憶するとともに、設定されたいせ込み量に変更が生じた場合にその値も記憶する。
【0061】
(動作制御手段:新規データ作成処理)
上記構成の動作制御手段80は、各種プログラムに従って以下の各種処理を行う。各処理について順を追って説明する。
まず、MPU81は、電源接続時において、ROM82に記録された画像データに基づいて操作パネル17に編集画面G1(図11)を表示する。そして、この編集画面G1の表示中にあっては、新規作成ボタンB1の入力を検知すると、後述する新規データ作成画面G2(図12)に表示を切り替える処理を行う。
【0062】
新規データ作成画面G2は、縫製時に順番に切替可能な縫製区間の設定を入力するための画面であり、この画面に対する入力操作により、ピッチ量(下側回転送り部70の送り量)、各縫製区間ごとのいせ込み量(下送り量に対する第一の上送り部による上送り量の差)、及び各縫製区間の縫製距離の設定入力を受け付け記録する処理が実行される。
【0063】
即ち、MPU81は、新規データ作成画面G2の表示時にピッチ量の入力の受付を行い、ピッチ量が入力されるとそれをRAM83に記録する。
次いで、縫製区間の設定入力を受け付ける。即ち、新規データ作成画面G2の中央にある円形の縫製領域ボタンB2の入力を検知すると、数値入力用の小画面の表示を行う処理を行い、第一の縫製区間の区間距離の数値入力が行われると、RAM83に記憶する。
【0064】
次に、第一の縫製区間のいせ込み量の数値入力用の小画面の表示を行う処理を行い、第一の縫製区間のいせ込み量の入力が行われると、RAM83に記憶する。かかるいせ込み量の入力は、ピッチ量(下側回転送り部70の送り量)に対する第一の上送り部31の送り量の差を数値入力ボタンB4により数値入力することにより行われ、入力が行われると、当該数値とピッチ量とから第一の縫製区間における第一の上送り部31の送り量が算出されると共にRAM83に記録する。
【0065】
次いで、第一の縫製区間の第二の上送り部32の送り量を決定する設定値の入力を受け付ける。このとき、後述する副送りデータ入力方法選択画面G7(図23参照)において全体変化設定が選択されている場合は各縫製区間について一定の条件(例えば、第一の上送り部31の送り量に対して一定の差を設けた送り量としたり、第一の上送り部31の送り量に対して一定の比率となる送り量としたり、送り量を一定値に固定する)で送り量が設定されるので、当該条件を一回のみ入力設定され、区間毎変化設定が選択されている場合は、縫製区間毎に第二の上送り部32の送り量の設定値の入力が行われる。
また、第二の上送り部32の送り量の設定値の入力方法は三種類あり、第二の上送り部32による送り量をそのまま数値入力する方法(絶対値入力)と、第一の上送り部31に対する送り量の差を入力する方法(相対値入力)と、第一の上送り部31の送り量に対する比率(%)を数値入力する方法とが後述する副送りモータデータ設定処理により選択設定可能であり、設定されている方法に従って数値入力ボタンB4により入力を行う。当該設定値の入力が行われると、これによりMPU81は第二の上送り部32の送り量を算出し、RAM83に記録する。
【0066】
ついで、操作パネル17の近傍に設けられたステップ切替ボタンB5(図13参照)の入力が検出されると、第二の縫製区間について同様の入力を受け付ける処理が行われる。即ち、円形の縫製領域ボタンB2を二分割し、その一方には既に設定された第一の縫製区間のいせ込み量を表示する処理を行い、上記と同様に、第二の縫製区間の区間距離,いせ込み量及び第二の上送り部32の送り量を決定する設定値の入力を受け付ける処理が行われる。
【0067】
そして、図13に示すように、必要な区間分の設定入力がなされると、MPU81は、RAM83に記録されたピッチ量と各縫製区間ごとの区間距離、第一の上送り部の送り量31及び第二の上送り部32の送り量とを一つのファイルでEEPROM84に記録する。なお、このファイルにはファイルナンバーが付され、当該ナンバーにより読み出すことが可能である。
【0068】
(動作制御手段:各種データ設定処理)
また、MPU81は、編集画面G1のモード設定ボタンB3の入力を検知すると、ROM82に記録された画像データに基づいて操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3(図14)を表示する。かかる表示状態におけるMPU81の処理を図15のフローチャートに基づいて説明する。送りモータデータ設定画面G3上には、モータ構成選択スイッチB6,出力角度範囲入力方法選択スイッチB7,出力角度範囲設定スイッチB8,副送りデータ入力方法選択スイッチB9,戻りボタンB10が表示される。
【0069】
MPU81は、モータ構成選択スイッチB6の入力の有無を検知する(ステップS1)。入力があった場合は後述するモータ構成選択処理(ステップS2)を行う。
また、MPU81は、入力の有無にかかわらず、出力角度範囲入力方法選択スイッチB7の入力の有無を検知する(ステップS3)。入力があった場合は後述する出力角度入力方法選択処理(ステップS4)を行う。
また、MPU81は、入力の有無にかかわらず、出力角度範囲設定スイッチB8の入力の有無を検知する(ステップS5)。入力があった場合は後述する出力角度範囲設定処理(ステップS6)を行う。
また、MPU81は、入力の有無にかかわらず、副送りデータ入力方法選択スイッチB9の入力の有無を検知する(ステップS7)。入力があった場合は後述する副送りモータデータ設定処理(ステップS8)を行う。
また、MPU81は、入力の有無にかかわらず、戻りボタンB10の入力の有無を検知する(ステップS9)。入力がない場合は、ステップS1に戻り、各スイッチB6〜9の入力検出を繰り返し行う。また、入力があった場合には再び編集画面G1を操作パネル17に表示する処理を行う。
【0070】
(動作制御手段:モータ構成選択処理)
MPU81によるモータ構成選択処理について説明する。かかるモータ構成選択処理では、差動送りミシン10が3モータ式(第一及び第二の上送り手段31,32と下側回転送り部70とで合計三つの駆動モータを制御する形式)であるか4モータ式(第一及び第二の上送り手段31,32で計二つの駆動モータを備え、さらに下側回転送り部70が第一下ベルト72と第二下ベルト73を個別に駆動する二つの駆動モータを備え、合計四つの駆動モータを制御する形式)であるかの設定入力を受け付ける処理が行われる。
【0071】
送りモータデータ設定画面G3の表示状態において、モータ構成選択スイッチB6の入力を検知すると、MPU81は、操作パネル17によりモータ構成選択画面G4(図16)を表示する処理を行う。かかる表示状態におけるMPU81の処理を図17のフローチャートに基づいて説明する。
【0072】
モータ構成選択画面G4上には、3モータ構成選択ボタンB11,4モータ構成選択ボタンB12,保存ボタンB13,キャンセルボタンB14が表示される。
まず、MPU81は、3モータ構成選択ボタンB11の入力の有無を検知する(ステップS11)。入力があった場合は3モータ構成であることを示すフラグをセットする(ステップS12)。また、入力がない場合には、4モータ構成選択ボタンB12の入力の有無を検知する(ステップS13)。入力があった場合は4モータ構成であることを示すフラグをセットする(ステップS14)。
【0073】
そして、いずれかのモータ構成を示すフラグをセットすると、保存ボタンB13の入力の有無を検知し(ステップS15)、入力があった場合にはセットされたモータ構成を示すフラグをEEPROM84に保存する(ステップS16)。そして、MPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
【0074】
また、いずれのモータ構成ボタンB11,B12も入力がない場合にも保存ボタンB13の入力の有無を検知し(ステップS15)、入力があった場合には、それまでEEPROM84に保存されていたモータ構成を示すフラグがそのまま維持される(ステップS16)。そして、この場合もMPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
【0075】
また、ステップS15において、保存ボタンB13の入力を検知しない場合には、MPU81は、キャンセルボタンB14の入力の有無を検知し(ステップS17)、入力があった場合には、ステップS12又はS14でセットされたフラグを解除すると共にそれまでEEPROM84に保存されていたモータ構成を示すフラグがそのまま維持される(ステップS18)。そして、この場合もMPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する
また、入力がない場合には、ステップS11に戻り、3モータ構成ボタンB11の入力の有無の検知から再び同じ処理を繰り返す。
【0076】
(動作制御手段:出力角度入力方法選択処理)
MPU81による出力角度入力方法選択処理について説明する。かかる出力角度入力方法選択処理では、各上送りモータ61a,61b及び下送りモータ75について縫い針11を駆動するミシンモータ18の一回転(360°)に対していずれの角度範囲で駆動を行うかを設定入力するための出力角度範囲設定処理において、各モータごとの角度範囲の入力方法を以下に説明する三種の方法のいずれを選択するかの入力を受け付ける処理が行われる。
【0077】
送りモータデータ設定画面G3の表示状態において、出力角度範囲入力方法選択スイッチB7の入力を検知すると、MPU81は、操作パネル17により出力角度範囲入力方法選択画面G5(図18)を表示する処理を行う。かかる表示状態におけるMPU81の処理を図19のフローチャートに基づいて説明する。
出力角度範囲入力方法選択画面G5上には、絶対値入力ボタンB15,相対値入力ボタンB16,比率入力ボタンB17,保存ボタンB18,キャンセルボタンB19が表示される。
【0078】
まず、MPU81は、絶対値入力ボタンB15の入力の有無を検知する(ステップS21)。入力があった場合は絶対値入力であることを示すフラグをセットする(ステップS22)。また、入力がない場合には、相対値入力ボタンB16の入力の有無を検知する(ステップS23)。入力があった場合は相対値入力であることを示すフラグをセットする(ステップS24)。また、入力がない場合には、比率入力ボタンB17の入力の有無を検知する(ステップS25)。入力があった場合は比率入力であることを示すフラグをセットする(ステップS26)。
【0079】
そして、いずれかの入力方法を示すフラグをセットすると、保存ボタンB18の入力の有無を検知し(ステップS27)、入力があった場合にはセットされた入力方法を示すフラグをEEPROM84に保存する(ステップS28)。そして、MPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
また、いずれの入力ボタンB15,B16,B17も入力がない場合にも保存ボタンB18の入力の有無を検知し(ステップS27)、入力があった場合には、それまでEEPROM84に保存されていたモータ構成を示すフラグがそのまま維持される(ステップS28)。そして、この場合もMPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
【0080】
また、ステップS27において、保存ボタンB18の入力を検知しない場合には、MPU81は、キャンセルボタンB19の入力の有無を検知し(ステップS29)、入力があった場合には、ステップS22,S24,S26でセットされたフラグを解除すると共にそれまでEEPROM84に保存されていた入力方法を示すフラグがそのまま維持される(ステップS30)。そして、この場合もMPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
また、入力がない場合には、ステップS21に戻り、絶対値入力ボタンB15の入力の有無の検知から再び同じ処理を繰り返す。
【0081】
なお、上記絶対値入力とは、後述する図20の出力角度範囲設定画面G6の下部に示す表形式の枠内に示すように、各送りモータごとにその出力開始角度位置と出力終了角度位置とについてその角度の数値をそのまま入力することをいう。また、相対値入力とは、図21(A)に示す表形式の枠内に示すように、一方の上送りモータ又は下送りモータについて絶対値入力を行い、他方の上送りモータ又は下送りモータについては一方の上送りモータ又は下送りモータの設定角度に対する増減角度数値を入力することをいう。
また、比率入力とは、図21(B)に示す表形式の枠内に示すように、一方の上送りモータ又は下送りモータについて絶対値入力を行い、他方の上送りモータ又は下送りモータについては一方の上送りモータ又は下送りモータの設定角度に対する比率を百分率で入力することをいう。
なお、各図における表形式の枠には、例示的に4モータ形式の設定状態が入力されているが、本実施形態に示す3モータ形式の場合には最右欄が空欄となり設定入力を受け付けない状態となる。
【0082】
(動作制御手段:出力角度範囲設定処理)
MPU81による出力角度範囲設定処理について説明する。かかる出力角度範囲設定処理では、各上送りモータ61a,61b及び下送りモータ75について縫い針11を駆動するミシンモータ18の一回転(360°)に対していずれの角度範囲で駆動を行うかの設定入力を受け付ける処理が行われる。
【0083】
送りモータデータ設定画面G3の表示状態において、出力角度範囲設定スイッチB8の入力を検知すると、MPU81は、操作パネル17により出力角度範囲設定画面G6(図20)を表示する処理を行う。かかる表示状態におけるMPU81の処理を図22のフローチャートに基づいて説明する。
出力角度範囲設定画面G6は、その上部に主駆動軸21の一回転(360°)を円形に示すと共に布地に縫い針が刺さっている区間と各上送り部31,32及び下側回転送り部70による送りが可能な区間を示す設定角度範囲表示領域D1が表示され、この設定角度範囲表示領域D1には、各送りモータについて設定された出力角度範囲が矢印により表示される。また、出力角度範囲設定画面G6の下部には、表形式の設定入力ボタンB21〜28,保存ボタンB29,キャンセルボタンB30が表示される。この設定入力ボタンB21〜28は、各送りモータにおける出力開始角度及び出力終了角度を表示するそれぞれの枠が個別に相当し、設定しようする枠について接触すると数値入力用の小画面が開き、出力角度入力方法選択処理により選択設定された方法に応じて角度数値又は比率を入力することができる。
【0084】
まず、MPU81は、出力角度範囲設定画面G6の表示状態において、設定角度範囲表示領域D1内に既に設定されていた角度に応じて各送りモータについての出力角度範囲を矢印により表示する(ステップS31)。
次に、Aモータ(第一の上送りモータ)の出力開始角度の設定入力ボタンB21の入力の有無を検知する(ステップS32)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS33)。また、ボタンB21の入力がない場合には、Aモータ(第一の上送りモータ)の出力終了角度の設定入力ボタンB22の入力の有無を検知する(ステップS34)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS35)。
【0085】
また、ボタンB22の入力がない場合には、Bモータ(第二の上送りモータ)の出力開始角度の設定入力ボタンB23の入力の有無を検知する(ステップS36)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS37)。また、ボタンB23の入力がない場合には、Bモータ(第二の上送りモータ)の出力終了角度の設定入力ボタンB24の入力の有無を検知する(ステップS38)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS39)。
【0086】
さらに、ボタンB24の入力がない場合には、Cモータ(下送りモータ)の出力開始角度の設定入力ボタンB25の入力の有無を検知する(ステップS40)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS41)。また、ボタンB25の入力がない場合には、Cモータ(下送りモータ)の出力終了角度の設定入力ボタンB26の入力の有無を検知する(ステップS42)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS43)。
【0087】
また、ボタンB26の入力がない場合には、MPU81は、モータ構成選択処理によりEEPROM84に記憶されたモータ構成を示すフラグを参照する。本実施形態たる差動送りミシン10は3モータ方式だが、仮に、4モータ方式であって4モータ方式とモータ構成選択処理により選択していた場合には、Dモータ(第二の下送りモータ)の出力開始角度の設定入力ボタンB27の入力の有無を検知する(ステップS45)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS46)。また、ボタンB27の入力がない場合には、Dモータ(第二の下送りモータ)の出力終了角度の設定入力ボタンB28の入力の有無を検知する(ステップS47)。入力があった場合は入力用小画面を表示して設定入力を受け付ける(ステップS48)。
【0088】
また、ステップS33,35,37,39,41,43,46,48のいずれかにおいて、角度設定入力が行われると、その設定角度に応じて設定角度範囲表示領域D1の出力角度範囲を示す矢印表示を更新する(ステップS49)。
そして、設定角度範囲表示領域D1の表示更新処理後、或いはステップS44において3モータ方式と判断された場合、或いは、ステップS47において設定入力ボタンB28の入力がなかった場合には、保存ボタンB29の入力の有無を検知し(ステップS50)、保存ボタンB29の入力があった場合、新たに設定入力された角度数値についてはEEPROM84に保存する(ステップS51)。そして、MPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
【0089】
また、ステップS50において、保存ボタンB29の入力を検知しない場合には、MPU81は、キャンセルボタンB30の入力の有無を検知し(ステップS52)、入力があった場合には、ステップS33,35,37,39,41,43,46,48のいずれかにおいて設定入力された角度データは廃棄され、それまでEEPROM84に保存されていた設定角度がそのまま維持される(ステップS53)。そして、この場合もMPU81は、再び、操作パネル17に送りモータデータ設定画面G3を表示する。
また、キャンセルボタンB30の入力がない場合には、ステップS32に戻り、設定値入力ボタンB32の入力の有無の検知から再び同じ処理を繰り返す。
【0090】
なお、各送りモータは、ピッチ量,いせ込み量又は差動量等により縫製時における送り量が決められているので、この出力角度範囲設定処理において各々の出力角度範囲が決められてしまうと、その角度範囲に応じて出力角度範囲における回転速度を調節しなければならない。従って、縫製時にあっては、MPU81は、その回転角度範囲と送り量とから回転速度を算出し、算出回転速度となるように各送りモータの動作制御を行う。
【0091】
(動作制御手段:副送りモータデータ設定処理)
MPU81による副送りモータデータ設定処理について説明する。かかる副送りモータデータ設定処理は、送りモータデータ設定画面G3の表示状態において、副送りデータ入力方法選択スイッチB9の入力を検知すると、MPU81は、操作パネル17により副送りデータ入力方法選択画面G7(図23)を表示する処理を行う。この副送りデータ入力方法選択画面G7上には、縫製時における副送り(第二の上送り部32による上布の送りをいう)の各種の設定を行う区間毎/全体変化選択ボタンB31,手動/自動選択ボタンB32及び自動選択時の設定ボタンB33と、前述した新規データ作成画面G2により第二の上送り部32の送り量の設定入力を行う際の入力方法を選択するための副送り絶対値入力ボタンB34,副送り相対値入力ボタンB35及び副送り比率入力ボタンB36と、各種設定を保存する保存ボタンB37と、入力した各種設定を破棄するキャンセルボタンB38とが表示される。
【0092】
上記区間毎/全体変化選択ボタンB31は、新規データ作成画面G2において第二の上送り部32の送り量を各縫製区間毎に設定するか、全ての縫製区間に渡って送り量が決定される一定条件又は一定の送り量とするかを選択するボタンである。即ち、前者を選択すると新規データ作成画面G2において第二の上送り部の送り量を設定する際に、各縫製区間毎に設定入力が行われ、後者を選択すると、全縫製区間に対する一定条件(例えば、第一の送り量に対する差動量或いは比率)の入力或いは一定の送り量の設定入力が行われる。
【0093】
手動/自動選択ボタンB32は、新規データ作成画面G2において設定入力された第二の上送り部32の送り量に基づいて縫製が行われる手動モードと、第二の上送り部32の送り量の設定が第一の上送り部31の送り量の設定値によってMPU81の処理により自動的に決定される自動モードとを選択するボタンである。
【0094】
自動選択時の設定ボタンB33は、上述した自動モードに関し、第一の上送り部31の送り量(いせ込み量)に対して第二の上送り部32の送り量をどの程度にするかを設定入力するためのボタンである。即ち、設定ボタンB33の入力を検知するとMPU81は、副送り自動設定画面G8を表示する。この副送り自動設定画面G8(図24)は、いせ込み量範囲ボタンB39と、差動量設定ボタンB40と、数値入力ボタンB41と、決定ボタンB42と、終了ボタンB43とが表示される。
【0095】
第二の上送り部32の送り量を決定するいせ込み量は五段階で範囲設定され、各範囲毎にいせ込み量範囲ボタンB39が設けられる。このいせ込み量範囲ボタンB39の入力が検知されると、MPU81は、範囲の上限値と下限値とを数値入力する数値入力用の小画面を表示し、入力された範囲の上限値と下限値とRAM83に記憶する。
また、差動量設定ボタンB40は各いせ込み量範囲ボタンB39に個別に対応して五つ設けられ、その入力が検知されると、MPU81は、対応する範囲のいせ込み量に対し差動量をどの程度にするかを入力待ちの状態となり、数値入力ボタンB41による数値入力或いは増減が入力され、決定ボタンB42の入力を検知すると、そのときの数値を当該いせ込み量の範囲に対する差動量としてEEPROM84に記録する。これにより、いせ込み量が決まると差動量が決まり、第二の上送り部32の送り量も決定される。
【0096】
副送り絶対値入力ボタンB34,副送り相対値入力ボタンB35及び副送り比率入力ボタンB36は、新規データ作成画面G2において第二の上送り部32の送り量の設定値を入力する際に、絶対値入力,相対値入力又は比率入力のいずれにより行うかを選択するボタンである。
なお、上記絶対値入力とは、第二の上送り部32の送り量の数値をそのまま入力することをいう。即ち、絶対値入力により入力を行う場合には、数値入力用の小画面が表示され、これにより、第二の上送り部32の送り量をそのまま入力する。
また、相対値入力とは、第一の上送り部31による送り量に対する差の送り量を入力することをいう。即ち、相対値入力により入力を行う場合には、数値入力用の小画面が表示され、これにより、第一の上送り部31の送り量に対する第二の上送り部32の送り量の差の値を入力する。
また、比率入力とは、第一の上送り部31の送り量に対する比率を百分率で入力することをいう。即ち、比率入力により入力を行う場合には、数値入力用の小画面が表示され、これにより、第一の上送り部31の送り量に対する第二の上送り部32の送り量の差の値を、第一の上送り部31の送り量を100とした場合に該当する値に換算した値を入力する。
【0097】
(動作制御手段:縫製作業中における処理)
差動送りミシン10の縫製作業中において、MPU81は、操作パネル17により縫製画面G9(図25)を表示する処理を行う。
縫製作業は、新規データ作成画面G2により作成されたファイルに記憶された設定に従って行われるが、縫製中にあっても、いせ込み量及び差動量を変更調整することが可能である。
【0098】
即ち、縫製画面G9には、画面左方下部にいせ込み量増減ボタンB43が表示され、画面右方下部に差動量増減ボタンB44が表示される。縫製作業中において、いせ込み量増減ボタンB43による増加又は減少の入力を検知すると、MPU81は、第一の上送り部31の送り量を一定量だけ増加又は減少させる動作制御を行う。また、縫製作業中において、差動量増減ボタンB44による増加又は減少の入力を検知すると、MPU81は、第二の上送り部31の送り量について絶対値入力,相対値入力,比率入力のいずれかの設定されている方法により第二の上送り部32の送り量の設定値を変更する動作制御を行う。なお、各種設定に基づいて縫製を行い、その途中で上記のようにいせ込み量又は第二の上送り部32の送り量の設定値について修正が行われた場合において、記録されているもとの設定を修正後の設定に更新する処理をMPU81が行っても良い。
【0099】
(差動送りミシンの動作説明)
上記構成からなる差動送りミシン10の縫製動作を図26,27に基づいて説明する。図26,27は縫製作業における各種の処理を示すフローチャートである。
まず、差動送りミシン10では、副送りデータ入力方法選択画面G7の手動/自動選択ボタンB32により自動モード又は手動モードの設定を受け付ける(ステップS61)。そして、設定入力後、調節機構3,4により第二の上送り部32のX軸方向位置及びY軸方向位置の調節が行われる(ステップS62)。
【0100】
次に、動作制御手段80のMPU81は、自動モードと手動モードのいずれに設定されたかを記録データから判断し(ステップS63)、自動モードと判断した場合には、予め設定された第一の縫製区間のいせ込み量に基づいて第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS64)、その後、ステップS68に移行する。
【0101】
一方、ステップS63において、手動モードと判断されると、第二の上送り部32の送り量の設定が区間毎変化か全体変化かが判断される(ステップS65)。そして、全体変化と判断されると、全体変化を決定する条件に従って第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS66)、その後、ステップS68に移行する。
また、区間毎変化と判断されると第一の縫製区間に設定された第二の上送り部32の送り量の設定値を読み出し(ステップS67)、その後、ステップS68に移行する。
【0102】
ステップS68では、第二の上送り部32の送り量の設定値が絶対値入力により設定されているかを判断し、絶対値入力である場合は、設定値をそのまま第二の上送り部32の送り量として認識し(ステップS69)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS70)。
また、ステップS68で、第二の上送り部32の送り量の設定値が絶対値入力ではないと判断された場合は、第二の上送り部32の送り量の設定値が相対値入力であるかが判断される(ステップS71)。そして、相対値入力であると判断された場合には、第一の上送り部31の送り量と第二の上送り部32の送り量の設定値とから第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS72)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS70)。
また、ステップS71で、第二の上送り部32の送り量の設定値が相対値入力ではないと判断された場合は、第二の上送り部32の送り量の設定値が比率入力であると判断し、第一の上送り部31の送り量と第二の上送り部32の送り量の設定値とから第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS73)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS70)。
【0103】
次に、ミシン起動ペダル91が踏まれた状態かを判断し(ステップS74)、踏まれていれば、ミシンモータ18を駆動する(ステップS75)。さらに、第一及び第二の上送りモータ61a,61b,下送りモータ75のそれぞれについて、その出力パルスから駆動の有無を検出し(ステップS76)、駆動していない場合には各送りモータについてその出力開始角度が判断され(ステップS77)、開始角度であれば、当該送りモータについて駆動を開始する(ステップS78)共にパルス出力フラグをセットし(ステップS79)、ステップS84に移行する。また、ステップS77において、まだ出力開始角度に到達していない場合にもステップS84に移行する。
一方、ステップS76において、各送りモータ61a,61b,75のそれぞれについて、駆動していると判断された場合にはその出力終了角度が判断され(ステップS80)、終了角度であれば、当該送りモータについて駆動を停止する(ステップS81)共にパルス出力フラグをクリアし(ステップS82)、ステップS84に移行する。また、ステップS80において、まだ出力終了角度に到達していない場合にもステップS84に移行する。
【0104】
ステップS84では、縫製区間(ステップ)の切替の入力の有無が判断され、切替がない場合はステップS87に移行する。また、縫製区間の切替が入力された場合には、次の縫製区間のいせ込み量を参照し、当該いせ込み量に更新される(ステップS85)。さらに、前述した副送り値決定処理(ステップS63〜70までの処理)と同じ処理により新たな縫製区間の第二の上送り部32の送り量を算出し、第二の上送りモータ61bに出力する。
【0105】
次に、ステップS87において、第二の上送り部32の送り量の設定値が縫製画面G9における入力により変更されたか判断し、変更の入力があった場合には、それが絶対値入力により変更されているかを判断し(ステップS88)、絶対値入力である場合は、変更された設定値をそのまま第二の上送り部32の送り量として認識し(ステップS89)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS90)。
また、ステップS88で、第二の上送り部32の送り量の設定値が絶対値入力ではないと判断された場合は、第二の上送り部32の送り量の設定値が相対値入力であるかが判断される(ステップS91)。そして、相対値入力であると判断された場合には、第一の上送り部31の送り量と第二の上送り部32の送り量の設定値とから第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS92)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS90)。
また、ステップS91で、第二の上送り部32の送り量の設定値が相対値入力ではないと判断された場合は、第二の上送り部32の送り量の設定値が比率入力であると判断し、第一の上送り部31の送り量と第二の上送り部32の送り量の設定値とから第二の上送り部32の送り量を算出し(ステップS93)、当該送り量を第二の上送りモータ61bに出力する(ステップS90)。
【0106】
ステップS90において第二の上送り部32の送り量が第二の上送りモータ61bに出力された場合又はステップS87において第二の上送り部32の送り量の設定値に変更の入力がなかった場合には、縫製が終了して糸切りの指示が入力されたが判断され(ステップS94)、入力がなければステップS74に戻り、それ以降の処理が繰り返される。また、糸切りが入力された場合には、糸切りソレノイド19を駆動し、糸切りが実行されて差動送りミシン10は動作を終了する。
なお、糸切りの入力はミシン起動ペダルを駆動開始とは逆方向に踏み込むことにより行われる。このため、糸切りの入力が行われた段階で、ミシンモータ18はその駆動を終了する。
【0107】
(実施形態の効果)
以上のように、差動送りミシン10では、第一の上送り部31と第二の上送り部32とで個別に上送りモータ61a,61bを設けると共に各々を個別に制御することとしたので、縫い代の湾曲に対しても、容易に対応し、ハンドリングを容易として操作性の向上を図ることが可能となった。また、各上送りモータ61a、61bの送り量を個別に設定することができるので、縫い代の種々の湾曲にも対応することが可能である。
【0108】
また、その設定に応じて第一の上送り部31の送り動作と第二の上送り部32の送り動作とを連動させて縫製を行うので、よりスムーズな縫製を行うことが可能となり、縫い代の安定化を図ると共に、縫製不良率の低減を図ることが可能となる。
【0109】
また、縫製区間毎に第二の上送り部32の送り量の設定値の設定を行うこともでき、縫製区間にかかわらず全体的に第二の上送り部32の送り量の設定値の設定を行うこともでき、さらにいせ込み量に応じて自動的に第二の上送り部32の送り量の設定を行うこともできるので、それぞれに応じた縫製の仕上がりを得ることができると共にその設定作業の負担軽減を図ることが可能となる。
特に、縫製区間毎に第二の上送り部32の送り量の設定値の設定を行うことができるので、縫製区間の変化に適宜対応を図ることができ、縫製の仕上がりを向上することが可能となる。
【0110】
第二の上送り部32の送り量を第一の上送り部31の送り量と等しくする設定を行うことにより、従来と同様の縫製を行うことも可能である。
【0111】
調節機構3により、第二の上送り部32の縫製方向(X軸方向)における位置調節を行うことができ、縫製時におけるコーナーリングの操作性の微調整を行うことが可能となる。
また同様に、調節機構4により、第二の上送り部32の高さ方向(Y軸方向)における位置調節を行うことができ、縫製時におけるコーナーリングの操作性の微調整を行うことが可能となる。
【0112】
各送りモータ61a,61b,75について、出力角度範囲を設定可能なので、縫い針11や布押さえ12の上下動の影響を回避して布送り、いせ込み、左右の送りの差の設定を行うことができるため、これらを精度良く行うことが可能となり、縫い品筆の向上を図ることが可能である。
【0113】
各送りモータの設定値を独立して設定、保存することで、より細かい設定が可能となり、品質の向上を図ることが可能となる。
【0114】
なお、前述したように、下送りについても各ベルト毎に個別に制御可能な送りモータを設けても良い。この場合、第二の上送り部32の送りモータ61bのように、第一の上送り部31の送りモータ61aと送り量の差を設ける設定を行うことで、より操作性の向上を図ることが可能となる。
【0115】
【発明の効果】
請求項1記載の発明は、縫製区間を切り替えることで各送り量が切り替えられた縫製を行うことができるので、例え縫い代の形状が複雑であっても、縫製区間の切替より、いせ込み量,左右の送り量を個別に変化させることが可能であるため、精度良く追従を図り、その縫製品質の向上を図ることが可能となる。また、これにより、縫製時のハンドリングが容易となり、操縦性の向上を図ることが可能となる。
さらに、縫製区間毎に第一の上送り部の各送り量(送り速度)を個別に設定し、縫製区間を切り替えることで各送り量が切り替えるとともに、第一の上送り部の送り量の変化に追従して第二の上送り部の送り量も変化するので、各送り量の変化に応じた縫製を行うことができる。
このため、例え縫い代の形状が複雑であっても、縫製区間の切替より、いせ込み量,左右の送り量を個別に変化させることが可能であるため、精度良く追従を図り、その縫製品質の向上を図ることが可能となる。また、これにより、縫製時のハンドリングが容易となり、操縦性の向上を図ることが可能となる。
さらに、第二の上送り部の送り量の設定については各縫製区間毎の設定を不要とし、設定の入力負担を軽減することができる。
【0116】
請求項2記載の発明は、下送り部の送り量と当該送り量に対する相対的な値との入力に基づいて第一の上送り部の動作制御を行うので、その送り量の設定に際して、下送り部の送り量を基準として第一の上送り部の送り量を認識することができ、各送り部の送り量の設定の加減を容易に把握し、適宜な調整を図ることが可能となる。
【0120】
請求項4記載の発明は、縫い針の上下周期と同周期で第一の上送り部,第二の上送り部及び下送り部の送り動作を行い、その一周期毎にいずれのタイミングで駆動するかを入力設定することができるので、縫い針が布地に突き通された状態や各上送り部が布地から離間した状態のように布送り不可能なタイミングで布送りを行うことを回避することができ、各送り部について精度良く布送りを行うことが可能となるため、縫製品質の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施形態たる差動送りミシンを示す斜視図である。
【図2】針板の上方に位置する差動送りミシンの構成を示す斜視図である。
【図3】縫い針の周囲の構成を示す拡大斜視図である。
【図4】布押さえをZ軸方向から見た側面図である。
【図5】第一の上送り部をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。
【図6】第二の上送り部をその一部を切り欠いてZ軸方向から見た側面図である。
【図7】上下動手段及び上送り駆動手段の斜視図である。
【図8】上送り駆動手段をZ軸方向から見た図である。
【図9】布載置部,下側回転送り部及び下送り駆動手段の一部分解した斜視図である。
【図10】差動送りミシンの制御系を示すブロック図である。
【図11】操作パネルに表示される編集画面の表示例である。
【図12】操作パネルに表示される新規データ作成画面の表示例である。
【図13】操作パネルに表示される新規データ作成画面の設定入力中の表示例である。
【図14】操作パネルに表示される送りモータデータ設定画面の表示例である。
【図15】送りモータデータ設定画面の表示状態における処理を示すフローチャートである。
【図16】操作パネルに表示されるモータ構成選択画面の表示例である。
【図17】モータ構成選択処理を示すフローチャートである。
【図18】操作パネルに表示される出力角度範囲入力方法選択画面の表示例である。
【図19】出力角度入力方法選択処理を示すフローチャートである。
【図20】操作パネルに表示される出力角度範囲設定画面の表示例である。
【図21】出力角度範囲設定画面における表形式の枠の設定入力ボタンの他の例を示し、図21(A)は相対値入力を行う例を示し、図21(B)は比率入力を行う例を示す。
【図22】出力角度範囲設定処理を示すフローチャートである。
【図23】操作パネルに表示される副送りデータ入力方法選択画面の表示例である。
【図24】操作パネルに表示される副送り自動設定画面の表示例である。
【図25】操作パネルに表示される縫製画面の表示例である。
【図26】差動送りミシンの縫製時の処理を示すフローチャートである。
【図27】差動送りミシンの縫製時における図26の処理に続く処理のフローチャートである。
【符号の説明】
10 差動送りミシン
11 縫い針
31 第一の上送り部
32 第二の上送り部
61a 第一の上送りモータ(駆動手段)
61b 第二の上送りモータ(駆動手段)
70 下側回転送り部(下送り部)
75 下送りモータ(駆動手段)
80 動作制御手段
Claims (6)
- 上送り装置と下送り装置により上布と下布のそれぞれの送り量に差を設けて縫製を行う差動送りミシンであって、
前記上送り装置は、縫い針の近傍で前記上布の送りを行う第一の上送り部と、前記第一の上送り部に対して送り方向に交差する方向に沿って隣接して配置される共に前記上布の送りを行う第二の上送り部と、前記第一の上送り部に設けられて送り量の制御が可能な第一の上送りモータと、前記第二の上送り部に設けられて送り量の制御が可能な第二の上送りモータとを備え、
前記下送り装置は、前記下布の送りを行う下送り部とその駆動源となる下送りモータを備え、
縫製時に縫製画面を表示する操作パネルと、
前記縫製画面に表示され、縫製時に操作可能で第一の上送り部の送り量を増減する、いせ込み量増減ボタンと、
前記縫製画面に表示され、縫製時に操作可能で、前記第一の上送り部の送り量に対する差により第二の上送り部の送り量を増減する、差動量増減ボタンを備え、
縫製範囲を連続する複数の縫製区間に分割し、縫製区間ごとの、前記第一の上送り部の送り量を決定する設定入力と前記いせ込み量増減ボタンの操作量に基づいて前記第一の上送りモータの動作制御を行うと共に、
前記差動量増減ボタンの操作による前記第一の上送り部の送り量に対する差の設定入力に基づいて前記第二の上送り部の送り量を算出し、当該送り量に基づいて前記第二の上送りモータの動作制御を行う動作制御手段を備えることを特徴とする差動送りミシン。 - 前記動作制御手段は、縫製区間ごとの、前記下送り部の送り量と当該送り量に対する差の値との入力に基づいて前記第一の上送りモータの動作制御を行うことを特徴とする請求項1記載の差動送りミシン。
- 前記操作パネルにより前記縫製領域を円形で表示すると共に、該円形が前記縫製区間ごとに分割され、前記いせ込み量を前記縫製区間ごとに表示することを特徴とする請求項2に記載の差動送りミシン。
- 前記動作制御手段は、
前記縫い針の上下動と同じ周期で前記第一の上送り部,第二の上送り部及び下送り部の各駆動手段の駆動を行うと共に、
前記各駆動手段ごとに前記縫い針の一周期内のいずれのタイミングで開始から停止までの駆動を行うかを決定する設定入力に基づいて前記第一の上送りモータ、第二の上送りモータ及び下送りモータの動作制御を行うことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の差動送りミシン。 - 前記第一の上送り部に対する前記第二の上送り部の送り方向に沿った相対位置を調節する調節機構と、前記第一の上送り部に対する前記第二の上送り部の上下方向に沿った相対位置を調節する調節機構とをそれぞれ備えたことを特徴とする請求項1記載の差動送りミシン。
- 前記第一、第二の上送り部からなる上側回転送り部と、布押さえ(12)を交互に上下動させる上下動手段(40)と、
前記上側回転送り部と前記布押さえの上昇割合を調整する上昇割合調節手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の差動送りミシン。
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