JP4507528B2 - 複合化顔料原体および複合化顔料 - Google Patents
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Description
しかし、金属顔料は表面不均一による低光沢性であること、また、水分などとの接触を避け不活性ガス雰囲気下での保存が必要であるなど、使用の面で制約があった。さらに、水との反応性も高く、長期保存では水素発生やゲル化等による品質劣化が発生するなど保存性に問題があった。
また、従来の金属顔料及び金属顔料を含むインク、塗料等を保存する場合、水との反応性の問題、表面酸化の問題があり、長期保存が不可能であった。
加えて、従来の金属顔料は、通常、粒径が20〜30μmと大きく、そのままでは、インクジェット用インクに使用できなかった。
更に、上記粒径の大きさに加え、その比重の大きさから、分散安定性が悪く、直ぐ沈降する。そのため上記特許文献1のマイクロカプセル化技術を用いても分散安定性を十分改善できなかった。
更に、インクジェット用水性インク組成物として、水系での分散安定性を維持することができ、印字品質及び保存安定性に優れるとともに、耐水性、耐光性、及び光沢性にも優れた記録物を得ることのできる複合化顔料を提供することにある。
(1)シート状基材面に、樹脂層と顔料層とが順次積層された構造からなり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド又はセルロース誘導体からなる樹脂の水溶液を前記基材に塗布して乾燥させたものであり、前記顔料層が、酸化ケイ素層、金属又は金属化合物層、酸化ケイ素層が順次積層された構造を有する複合化顔料原体。
(2)前記顔料層の厚みが100〜500nmである前記(1)記載の複合化顔料原体。
(3)前記酸化ケイ素層が、ゾル−ゲル法によってシリコンアルコキシド又はその重合体から形成された前記(1)記載の複合化顔料原体。
(4)前記金属又は金属化合物層が、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法により形成された前記(1)記載の複合化顔料原体。
(5)前記シート状基材が、ポリエチレンテレフタレート又はその共重合体である前記(1)記載の複合化顔料原体。
(6)前記樹脂層と顔料層との順次積層構造を複数有する前記(1)記載の複合化顔料原体。
(7)複数の顔料層の積層構造の全体の厚みが5000nm以下である前記(6)記載の複合化顔料原体。
(9)前記剥離が、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされた前記(8)記載の複合化顔料。
(10)前記粉砕が超音波処理によりなされた前記(8)記載の複合化顔料。
(11)前記(1)記載の複合化顔料原体を液体中に浸漬しながら超音波処理したことにより得られた複合化顔料。
(12)前記液体が水系である前記(9)又は(11)記載の複合化顔料。
(13) 前記(8)〜(12)の何れか一項に記載の複合顔料を用いた塗布液。
つまり、本発明の複合化顔料原体は金属顔料層が酸化ケイ素層に囲まれた積層構造体であるため、酸素及び水に対する影響が低減される。
また本発明の複合化顔料原体は、例えば、液体中に浸漬しながら超音波処理することにより、平均粒径が3μm程度の複合化顔料を得ることができる。
加えて、本発明の複合化顔料原体は、ロール状にて保存することで、空気中の酸素、水分との接触をより抑えることが可能となり、従来の金属顔料では困難であった1年を超える長期保存が可能となっている。
また、前記複合化顔料原体から剥離した本発明の複合化顔料は、インクジェット用水性インク組成物として、金属顔料層が酸化ケイ素層により、保護されているため、水との反応性を防止でき、比重が小さく、水系の溶剤中でも使用可能であり、また、樹脂層が保護コロイドの役割を有し、水系での分散安定性を向上することができ、更に、記録媒体(紙等)との接着性も良くなり、印字品質及び保存安定性に優れるとともに、速乾性を有し、しかも、耐水性、耐光性、及び光沢性にも優れた記録物を得ることのできる複合化顔料を提供するという効果を奏する。
本発明の複合化顔料原体は、シート状基材面の片面又は両面に、樹脂層と顔料層とが順次積層された構造からなり、前記顔料層が、酸化ケイ素層、金属又は金属化合物層、酸化ケイ素層が順次積層された構造であり、本発明の複合化顔料は前記複合化顔料原体の顔料層を、前記樹脂層を境界として前記シート状基材より剥離し、粉砕した顔料である。
即ち、本発明の複合化顔料は金属又は金属化合物顔料であるが、従来の金属顔料の欠点、特に保存性を改良し、また、インクジェット用水性インク組成物としても優れた適性、特に分散安定性を付与するために、金属顔料を酸化ケイ素層/金属又は金属化合物層/酸化ケイ素層が順次積層された積層板状構造としたことを特徴とする。
以下、本発明の複合化顔料原体および複合化顔料を構成する各層の構成成分、層の形成方法及び処理方法等について説明する。
本発明の複合化顔料原体の積層板状構造中の顔料層について説明する。
本発明の顔料層は、酸化ケイ素層、金属又は金属化合物層、酸化ケイ素層が順次積層された構造である。
顔料層の厚さは、100〜500nmの範囲が好ましい。100nm未満では、機械的強度が不足であり、500nmを超えると強度が高くなりすぎるため粉砕・分散が困難になる。
金属又は金属化合物層は、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法による形成が好ましい。これらの金属又は金属化合物層の厚さは、特に限定されないが、30〜150nmの範囲が好ましい。30nm未満では反射性、光輝性に劣り、金属顔料としての性能が低くなり、150nmを超えると見かけ比重が増加し、複合化顔料の分散安定性が低下する。金属又は金属化合物層の不必要な増大は、粒子の重量増加を招くだけであり、これより大きい膜厚であっても、反射性、光輝性はあまり変化しない。
上記シリコンアルコキシド又はその重合体を溶解したアルコール溶液を塗布し、加熱焼成することにより、酸化ケイ素層を形成する。
酸化ケイ素層の塗布は、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート等により形成される。塗布・乾燥後、必要であれば、カレンダー処理により、表面の平滑化を行う。
本発明における樹脂層は、前記顔料層のアンダーコート層であるが、シート状基材面との剥離性を向上させるための剥離性層である。従って、樹脂としては、親水性樹脂であれば特に限定されるものではないが、例えばポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドまたはセルロース誘導体が好ましい。
上記親水性樹脂一種または二種以上の混合物の水溶液を塗布し、乾燥等を施した層が形成される。塗布液には粘度調節剤等の添加剤を含有させることができる。
樹脂層の塗布は、上記酸化ケイ素層の塗布と同様に形成される。
また、シート状基材面の両面に、樹脂層と顔料層とが順次積層された構造も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明の複合化顔料原体に使用されるシート状基材としては、特に限定されないが、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフイルム、66ナイロン、6ナイロン等のポリアミドフイルム、ポリカーボネートフイルム、トリアセテートフイルム、ポリイミドフイルム等の離型性フイルムが挙げられる。
好ましいシート状基材としては、ポリエチレンテレフタレートまたはその共重合体である。
これらのシート状基材の厚さは、特に限定されないが、10〜150μmが好ましい。10μm以上であれば、工程等で取り扱い性に問題がなく、150μm以下であれば、柔軟性に富み、ロール化、剥離等に問題がない。
本発明の複合化顔料は、前記複合化顔料原体の顔料層を、樹脂層を境界として前記シート状基材より剥離し、粉砕し微細化して得ることができる。
複合化顔料の剥離処理法としては、特に限定されないが、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされる方法、また液体中に浸漬すると同時に超音波処理を行い、剥離処理と剥離した複合化顔料の粉砕処理を行う方法が好ましい。さらに前記液体は水系が好ましい。
本発明の複合化顔料は、金属顔料層が酸化ケイ素層により、保護されているため、水系の溶剤中でも使用可能であり、また、樹脂層が保護コロイドの役割を有し、水中での分散処理を行うだけで安定な水系分散液を得ることが可能である。また該樹脂層により、本発明の複合化顔料をインク組成物に用いた際に、該樹脂層は紙等の記録媒体に対する接着性を付与する機能も担う。
<基材シートの調製>
膜厚100μmのPETフィルム上に、下記組成の塗工液をスピンコート法によって塗布・乾燥し、樹脂層を形成した。
PVA(ポリビニルアルコール、平均分子量10,000、けん化度80%)
3.3wt%
グリセリン 1.7wt%
イオン交換水 残量
コート条件:500rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで30秒間回転させる
乾燥条件 :100℃、5分間
この条件にて形成した樹脂層の厚さは10μmであった。
上記方法にて処理したPETフィルム上に、下記組成の塗工液をスピンコート法によって塗布・焼成し、酸化ケイ素層を形成した。
HAS−6(コルコート株式会社製) 10 wt%
エタノール 42.5wt%
2−エトキシエタノール 47.5wt%
コート条件:500rpmで5秒間回転させた後、2000rpmで30秒間回転させる
焼成条件 :140℃、5分間
この条件にて形成した酸化ケイ素層の厚さは70nmであった。
下記の装置を用いて、上記の酸化ケイ素層上に、膜厚70nmのアルミニウム蒸着層を形成した。
装置:(株)真空デバイス、VE−1010形真空蒸着装置
前記方法と同様に、上記のアルミニウム層上に、酸化ケイ素層を形成した。形成した酸化ケイ素層の厚さは70nmであった。
上記方法にて形成した酸化ケイ素−アルミニウム−酸化ケイ素の積層体を有するPETフィルム(顔料原体)の保存性を調査する為に、上記顔料原体を4インチ径の紙管に巻き取り、大気中、常温・常圧の環境にて1年間静置した。その結果、1年間経過後でも、顔料原体には酸化・腐食による表面光沢の低下等は認められないものであった。また、静置後の顔料原体を以下に示す顔料化工程により塗布液とした場合にも、PM/MC写真用紙上に滴下して得られた塗膜の金属光沢は、1年間の保存を行っていない顔料原体と同一の金属光沢を示した。
上記方法にて形成した、樹脂層−酸化ケイ素−アルミニウム−酸化ケイ素の積層体を有するPETフィルムをイオン交換水中、超音波分散機を用いて剥離・微細化・分散処理を同時に行い複合化アルミニウム顔料分散液を作製した。
複合化アルミニウム顔料 20.0wt%
PVA(ポリビニルアルコール、平均分子量10,000、けん化度80%)
5.0wt%
エタノール 10.0wt%
グリセリン 10.0wt%
イオン交換水 残量
Claims (13)
- シート状基材面に、樹脂層と顔料層とが順次積層された構造からなり、前記樹脂層が、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド又はセルロース誘導体からなる樹脂の水溶液を前記基材に塗布して乾燥させたものであり、前記顔料層が、酸化ケイ素層、金属又は金属化合物層、酸化ケイ素層が順次積層された構造を有する複合化顔料原体。
- 前記顔料層の厚みが100〜500nmである請求項1記載の複合化顔料原体。
- 前記酸化ケイ素層が、ゾル−ゲル法によってシリコンアルコキシド又はその重合体から形成された請求項1記載の複合化顔料原体。
- 前記金属又は金属化合物層が、真空蒸着、イオンプレーティング又はスパッタリング法により形成された請求項1記載の複合化顔料原体。
- 前記シート状基材が、ポリエチレンテレフタレート又はその共重合体である請求項1記載の複合化顔料原体。
- 前記樹脂層と顔料層との順次積層構造を複数有する請求項1記載の複合化顔料原体。
- 複数の顔料層の積層構造の全体の厚みが5000nm以下である請求項6記載の複合化顔料原体。
- 請求項1記載の複合化顔料原体の前記顔料層を、前記樹脂層を境界として前記シート状基材より剥離し、粉砕した複合化顔料。
- 前記剥離が、前記複合化顔料原体を液体中に浸漬することによりなされた請求項8記載の複合化顔料。
- 前記粉砕が超音波処理によりなされた請求項8記載の複合化顔料。
- 請求項1記載の複合化顔料原体を液体中に浸漬しながら超音波処理したことにより得られた複合化顔料。
- 前記液体が水系である請求項9又は11記載の複合化顔料。
- 請求項8〜12の何れか一項に記載の複合顔料を用いた塗布液。
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