JP4507346B2 - 光書込みヘッドおよびその組立方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高解像度電子写真プリンタ等に装備される発光素子アレイを使用した光書込みヘッドの構造及び光軸位置調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、光プリンタ等に使用される光書込みヘッドは、発光ダイオードなどの発光素子アレイを搭載している。光書込みヘッドを備える光プリンタの原理図を図5に示す。円筒形の感光ドラム2の表面がアモルファスSiや有機材料などの光伝導性をもつ材料(感光体)で被覆されている。この感光ドラムは印刷速度に対応して回転している。初めに、回転しているドラムの感光体表面を、帯電器4で一様に帯電させる。
【0003】
次いで、光書込みヘッド6により、印字するドットイメージの光を感光体上に照射し、光が照射された部分の帯電を中和し、潜像を形成する。続いて、現像器8で感光体上の帯電状態にしたがって、トナーを感光体上に付着させる。そして、転写器10でカセット12から送られてきた用紙14上に、トナーを転写する。用紙上のトナーは定着器16によって熱等を加えて定着され、用紙はスタッカ18に送られる。一方、転写の終了したドラムは、消去ランプ20で帯電が全面にわたって中和され、清掃器22で残ったトナーが除去される。
【0004】
上述の光書込みヘッドとしては、複数の発光素子アレイチップを基板上に1列または千鳥状に印刷幅の仕様にしたがって配列し、これに対向して屈折率分布型ロッドレンズを1列または2列積層したロッドレンズアレイ(例えば、日本板硝子製、商品名:セルフォックレンズアレイ)を配置した構造のものが用いられている。2列積層したロッドレンズアレイ11の斜視図を図6に示す。複数の屈折率分布型ロッドレンズ24を側板26の間に挟み、樹脂28により固定してある。
【0005】
近年は、印刷速度の向上及び解像度の向上要求により、光学系の調芯に対する要求精度が格段に上がり、従来の機構部品の精度保持による幾何学的な配置では、性能を満たさなくなっている。
【0006】
高解像度の画像を得るためには、例えば、光軸中心位置と発光素子の発光点の位置ズレ量、発光点からロッドレンズアレイ端面までの距離、感光面からロッドレンズアレイ端面までの距離をそれぞれ規定値の±30μm以下の範囲内に設定する必要がある。
【0007】
しかしながら、(1)ロッドレンズのレンズ長は±0.4mm程度の製造バラツキがあり、(2)ロッドレンズアレイは像面方向及び物体面方向に反りが発生している場合があり、(3)ロッドレンズアレイの側板である繊維強化プラスチック(FRP)には±0.4mm程度の板厚バラツキがあることより、機構部品に光学部品を沿わして位置決めを行っても、位置決め精度が光学精度の要求範囲を超過してしまい、光学性能が満たされなくなってしまう。
【0008】
そこでロッドレンズアレイの位置を発光素子アレイに対して3次元調芯する必要が出てきた。すなわち、(1)発光点と感光体表面の間の距離をロッドレンズアレイの共役長に一致させ、(2)この距離の中央位置にロッドレンズアレイのレンズ長の中央位置に固定する必要があり、(3)ロッドレンズアレイの光軸中心と発光点及び感光体面の位置ズレをロッドレンズアレイ長手方向にわたり調整する必要がある。
【0009】
このため、ヘッド筐体とロッドレンズアレイの間には予め空隙を開けておき、ロッドレンズアレイを3次元調芯した上で、この空隙部分にシリコン系等の接着剤を充填させてロッドレンズアレイをヘッド筐体に固定している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ロッドレンズアレイの長手方向全長での光軸調整を行うためには、高度な位置精度をもつアクチュエーターを用いて、調整を行う必要があり、また、多大な調整時間を要する。
また、機構部品はこれらの光軸調芯を実施するための空隙を設けるなど複雑な形状にする必要があり、光書込みヘッドの製造コストを低減出来ない主因となっている。
【0011】
さらに、従来の光書込みヘッドは、ヘッド筐体がエンジニアリングプラスチック等の成型体である場合が多く、光軸調整されたロッドレンズアレイをヘッド筐体に固定する場合は、シリコーン系の接着剤が用いられるのが一般的である。このため、接着剤充填硬化後の熱収縮(8%前後の容積収縮が発生する)やヘッド筐体自体の経時収縮等の材料歪みにより、経年に亘る光軸位置精度の保証が困難である問題を抱えている。
【0012】
本発明はこれらの問題点を解決するために行われたものであり、高精度な装置による調芯作業を不要とし、かつ複雑な機構部品を不要として、低コストで製造でき、経年変化も少ない光書込みヘッドを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の課題を解決するため、屈折率分布型ロッドレンズアレイに対向して、発光素子アレイを搭載した発光素子アレイチップを複数、基板上に直線状または千鳥状に配列した光書込みヘッドにおいて、ロッドレンズアレイと基板を支持する基板支持体と駆動回路基板とを、支持体に固定保持する。
【0014】
支持体及び基板支持体はともに金属材料で構成されていることが望ましく、またロッドレンズアレイの側板の少なくとも支持体へ接着する側がガラス板であることも望ましい。
【0015】
さらに支持体のロッドレンズアレイ当接面の一部に、該ロッドレンズアレイ長手方向に沿って支持体裏面から貫通する複数の接着剤注入孔を設ける。あるいは断面がV字状の接着剤充填用スリットを少なくとも1本配し、該スリット内に支持体裏面から貫通する複数の接着剤注入孔を設ける。
【0016】
また、支持体の所定の位置に少なくとも2本の位置決めピンを前記基板もしくは基板支持体に接するように設けるか、あるいは前記支持体を貫通する偏芯ピンを前記基板支持体に接するように設ける。
この偏芯ピンを回転することにより前記発光素子アレイの発光部とロッドレンズアレイの光入射端面間の距離を調整することができる。また、前記基板支持体上の所定の位置に接着した基板に、位置基準を前記基板支持体の基準面として発光素子アレイチップをダイボンディングする。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の光書込みヘッドの構造を示す断面図、図2はその前面から見た概略斜視図、図3は裏面から見た一部の概略斜視図である。これらの図に基づき光軸精度を保持した、光書込みヘッドの構成例について説明する。
【0018】
発光素子アレイチップ32は基板30上に実装されている。発光素子アレイは駆動回路基板34からの電気信号によって発光し、その光はロッドレンズアレイ11により、感光ドラム2上に結像する。基板30は基板支持体36に接着されている。図1に示すように、ロッドレンズアレイ11と基板支持体36と駆動回路基板34は支持体40の基準面Aに接着されている。
【0019】
まず、光軸中心の位置決め方法について以下に説明する。
支持体10の基準面Aは精密加工平面である。この基準面Aにロッドレンズアレイ11の側板26を当接させてロッドレンズアレイの厚さ方向の位置決めをする。しかし通常のロッドレンズアレイ11の側板26には上述のようにFRPが採用されており、その板厚精度は±0.4mm程度である。したがってこれが側板外表面からレンズ中心までの距離バラツキを発生させる起因要素となっている。これに加え、FRP内のガラス繊維の配向がFRP表面に凹凸を形成しており、ロッドレンズアレイ製造時において、ロッドレンズをFRP板上に配列する際、配列乱れを発生してしまう問題もある。
【0020】
これらの問題を解決するために板厚精度が優れ、かつ低コストなガラス板を側板26に用いることとした。これによりロッドレンズの光軸中心42と側板外表面の距離精度は±15μm以内にまで高めることができ、ロッドレンズの配列乱れも解消することができる。ガラス板は所定の寸法に切断した通常のソーダライムガラスを使用することができるため、安価である。
【0021】
しかし、ロッドレンズアレイ11を支持体40に接着する場合は、接着剤の厚み精度が保証できない問題がある。この問題点に対しては以下の方法によって、接着剤厚み精度に左右されず接着固定する方法を考案した。
すなわち、図3に示すように、支持体40のロッドレンズアレイ11の側板26と接する面の一部に、ロッドレンズアレイ11長手方向に沿って少なくとも1本の断面がV字状のスリット44を設ける。さらにこのスリット44内に支持体裏面に貫通する複数の接着剤注入孔46を適当な間隔で設ける。
【0022】
ロッドレンズアレイ自体に反りが発生している場合は、予め治具により、ロッドレンズアレイのタテ方向及びヨコ方向の反りを矯正した状態で支持体40とロッドレンズアレイ11の位置決めを行い、ロッドレンズアレイ11を支持体40へ適当な荷重によって押さえ込んだ状態とする。次に支持体40のロッドレンズアレイ11の側板26と接する面に接着剤充填孔46から、例えば低粘度の瞬間接着剤を注入し、スリット44から毛細管現象によりロッドレンズアレイ全長にわたる接着面に接着剤を浸透させることができる。
【0023】
あるいは低粘度エポキシ系の接着剤を接着剤充填孔46に注入し、複数個の接着剤充填孔位置の点状の接着剤のみでロッドレンズ11を接着しても良い。この場合は、上記のスリットは不要で、支持体40のロッドレンズアレイ11の側板26と接する面内に、ロッドレンズアレイ11長手方向に沿って支持体裏面に貫通する複数の接着剤注入孔46が適当な間隔で設けられていればよい。
これらの方法によれば、接着剤はロッドレンズアレイ11と支持体40が接する面の間に浸入することがないので、接着剤の厚みによる精度バラツキの発生を防ぐことができる。
【0024】
支持体40は、表面の精密加工性、温度、衝撃の影響、材料残留応力に起因する材料の経時変化等を勘案すると、金属材料から選定することが望ましい。この点でもロッドレンズアレイ11の側板26を熱膨張係数がFRPよりも金属に近いガラス材料とすることは、温度変化によるロッドレンズアレイ11と支持体40の剥離を防止するために効果がある。
【0025】
つぎに発光素子アレイチップ32の位置決め方法について説明する。チップ32を基板30へダイボンディングする際の基準は、基板30上の印刷された一定の形状のパターンを画像認識して行うのが通例である。この場合、この基板30を光書込みヘッドに実装する際は、基準面を基板の端部面から取らざる得ない。
【0026】
しかし、基板端部面と配列した発光点列間の距離精度及び平行度については製造工程上保証されないため、機構配置において、チップ位置をロッドレンズアレイ11の光軸中心42に合わせ込むことは不可能となる。
【0027】
この問題を解決するために、基板30はチップを実装する前に基板支持体36に接着または他の方法により固定した状態とする。次いでチップ32を基板支持体36の精密平面加工された基準面Bを基準として基板30上にダイボンディングする。この後、支持体40の基準面Aと基板支持体36の基準面Bと突き当てて固定することにより、支持体40の基準面Aと発光点間の距離Yの精度はボンディング機械の精度要因のみ依存することとなり基準面Aと発光点間の距離Yは±10μmが保証される。基板支持体の固定は、基板支持体36に貫通孔38を設け、支持体40の該当する位置にネジ穴48を切り、ボルト50によって締め付けることによって行う。なお、この貫通孔38の直径はボルト50の径に比べて大きくし、後述の位置調整ができるようにする。以上により、機構部品の組み付け精度だけによりロッドレンズアレイ11と発光素子アレイ32の光軸ズレ量は±25μm以内とすることができる。
【0028】
次に光軸作動距離LO方向の位置決め方法について説明する。まずロッドレンズアレイ11のタテ反り及びヨコ反りに関しては、上述の通り、ロッドレンズアレイ11を支持体40に接着固定する際に治具により矯正すること、また、ロッドレンズアレイ11の側板26にガラス材料を用いたことにより解消された。しかし作動距離TC及びレンズ長Zは製造バラツキをもっており、LOは±0.15mmのバラツキを持ち、作動距離TCは±0.3mmのバラツキを持つため、ロッドレンズアレイ11と発光点間の距離は、その都度ロッドレンズアレイ11の作動距離に設定する必要がある。
【0029】
まず、それぞれのレンズ作動距離は予め定められているので、ロッドレンズアレイ11と発光素子の距離を設定するための調整手段が必要となる。この調整手段として、支持体40を貫通する偏芯ピン58を長手方向に沿って2本取り付ける(図2参照)。偏芯ピン58は偏芯ピン筐体59に対して偏芯して回転する。偏芯ピン筐体59を支持体40の所定の位置に固定し、偏芯ピン58の先端は基板支持体36に接するように位置決めする。それぞれ規定の作動距離となるように、2本の偏芯ピン58を回転させ基板支持体36の位置をずらすことによって位置調整する。これらの調整時には、ボルト50を緩め、基板支持体が支持体40上を滑って移動できるようにし、位置決定後締め付けて固定する。
【0030】
また、光軸作動距離LO方向の位置決め方法については、図4に示す方法をとってもよい。支持体40全体をヘッド筐体60の定位置に保持する。一方、支持体40のロッドレンズアレイ11と基板支持体36の間の位置に長手方向に沿って2ケ所、貫通孔52を設け、予め規定値の位置にセットされた2本の位置決めピン56を貫通孔52を通して支持体40の表面上に露出させる。貫通孔52の直径は位置決めピン56の直径より大きくし、位置決めピンが貫通孔の内面に接しないようにする。この位置決めピンを基準とし基板支持体36を位置決めピンに接するように固定することより、各々の作動距離バラツキに対応でき、適切なLO距離を得ることができる。
【0031】
さらに駆動回路基板34も支持体40上に固定する。これによりチップを実装した基板30と駆動回路の間の配線を短くでき、ノイズの影響を減らし、光書込みヘッドを小型化できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明の光書込みヘッドは、支持体表面を基準面としてロッドレンズアレイの光軸中心と発光素子の発光点位置を高い精度で容易に位置決めでき、また
ロッドレンズアレイの光軸作動距離の調整も容易に行うことができる。またこれらの位置精度は経時的にも安定に維持できる。したがって低コストで高精細画像の書込みが可能な光書込みヘッドを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の光書込みヘッドの断面図である。
【図2】本発明の実施例の光書込みヘッドの前面斜視図である。
【図3】本発明の実施例の光書込みヘッドの一部の裏面斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例の光書込みヘッドの断面図である。
【図5】光書込みヘッドを備えた光プリンタの原理を示す図である。
【図6】屈折率分布型ロッドレンズアレイの構造を示す図である。
【符号の説明】
2 感光ドラム
6 光書込みヘッド
11 ロッドレンズアレイ
26 側板
32 発光素子アレイチップ
34 駆動回路基板
36 基板支持体
40 支持体
42 光軸
44 スリット
50 ボルト
56 位置決めピン
58 偏芯ピン
60 ヘッド筐体
Claims (9)
- 屈折率分布型ロッドレンズアレイに対向して、発光素子アレイを搭載した発光素子アレイチップを複数、基板上に直線状または千鳥状に配列した光書込みヘッドにおいて、
前記ロッドレンズアレイと前記基板を支持する基板支持体と駆動回路基板とを保持する支持体を有し、
前記ロッドレンズアレイは、前記支持体の1平面である支持体の基準面上に保持されるとともに、
前記基板支持体は、前記支持体の基準面に接する該基板支持体の1平面を基準面として、前記発光素子アレイチップの前記発光素子アレイが配列されるとともに、該支持体の基準面上に摺動可能に保持される
ことを特徴とする光書込みヘッド。 - 前記支持体及び前記基板支持体がともに金属材料で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の光書込みヘッド。
- 前記ロッドレンズアレイの側板の少なくとも支持体へ接着する側がガラス板であることを特徴とする請求項1または2に記載の光書込みヘッド。
- 前記支持体のロッドレンズアレイ当接面に、該ロッドレンズアレイ長手方向に沿って支持体裏面から貫通する複数の接着剤注入孔を設けたことを特徴とする請求項1ないし3に記載の光書込みヘッド。
- 前記支持体のロッドレンズアレイ当接面の一部に、該ロッドレンズアレイ長手方向に沿って断面がV字状の接着剤充填用スリットを少なくとも1本配し、該スリット内に支持体裏面から貫通する複数の接着剤注入孔を設けたことを特徴とする請求項1ないし3に記載の光書込みヘッド。
- 前記支持体を貫通して、前記光書込みヘッドの筐体と前記基板支持体との位置を決める、少なくとも2本の位置決めピンを設けたことを特徴とする請求項1に記載の光書込みヘッド。
- 前記支持体を貫通して回転可能な少なくとも2本の偏芯ピンを前記基板支持体に接するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の光書込みヘッド。
- 前記少なくとも2本の偏芯ピンをそれぞれ回転させることにより、該偏芯ピンに接する基板支持体を移動させ、前記発光素子アレイの発光部とロッドレンズアレイの光入射端面間の距離を調整することを特徴とする請求項7に記載の光書込みヘッドの組立方法。
- 前記基板支持体上の所定の位置に接着した基板に、該基板支持体の前記支持体と接する1平面を基準面として発光素子アレイチップをダイボンディングすることを特徴とする請求項1に記載の光書込みヘッドの組立方法。
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