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JP4501550B2 - 触媒の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、物理蒸着法による触媒の製造方法に関する。
高分子固体電解質型燃料電池(PEFC;Polymer Electrolyte Fuel Cells)、例えばメタノールを直接酸化反応させることによってHもしくはHを生成させるダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC;Direct Methanol Fuel Cells)は、電気化学反応に関わるイオン導電性が100℃前後の比較的低い温度領域で得られ、反応系を特に高温にする必要もないことから、移動用動力源や小型動力源として注目されている。
図5は、このダイレクトメタノール型燃料電池の構成を示す概略図である。
この図に示されるように、ダイレクトメタノール型燃料電池は、一般に、例えばnafion膜(デュポン社製)による電解質膜22を挟んで、燃料極23と空気極24とが対向配置された構成を有する。
燃料極23は、電解質膜22側から順に、例えばカーボン担体にPt(白金)やPt−Ru(白金―ルテニウム)が担持されて成る触媒とnafion膜とによるアノード電極23a及び触媒層23bと、例えばフッ素樹脂による拡散層23cと、例えばカーボンペーパーによるメタノール流路23dとを有する。
一方、空気極24は、電解質膜23側から順に、例えばカーボン担体にPt(白金)やPt−Ru(白金―ルテニウム)が担持されて成る触媒とnafion膜とによるカソード電極24a及び触媒層24bと、例えばフッ素樹脂による拡散層24cと、例えばカーボンペーパーによる空気(酸素)流路24dとを有する。
燃料極23では、流路23dに供給されるメタノール水溶液が、拡散層23cを経て触媒層23b及びアノード電極23aで酸化され、イオン(HもしくはH)と電子(e)及び二酸化炭素(CO)が生成される。そして、電子がエネルギーとして取り出されることによって、動力源すなわち電池として機能する。
一方、空気極24では、流路24dに供給される酸素が、拡散層24cを経て触媒層24b及びカソード電極24aに至り、アノード電極23aから電解質膜22を通過してきたイオンによる還元反応によって水(HO)が生成される。
従来、上述の燃料電池を構成する触媒層及び電極に用いられる触媒の製造には、分散用の溶媒すなわち分散媒に、例えばカーボン担体を分散させるとともに、例えば塩化白金酸などの金属粒子源を溶解させてイオン化させることにより、カーボン担体に金属粒子例えば白金を担持させる湿式法が用いられてきた(例えば特許文献1参照)。
しかし、湿式法は分散用の溶媒によって、金属粒子の溶解状態が例えば塩や錯体などに変化してしまう可能性を常に考慮する必要がある。そのため、この問題を容易に回避することのできる乾式法が、触媒の製造手法として重視される傾向にある。
図6は、この乾式法による触媒製造装置の構成を示す概略図である。
乾式法は、真空中で物理蒸着法例えばスパッタによって、カーボン担体に直接Pt(白金)やPt−Ru(白金―ルテニウム)等の白金合金を担持させる手法であり、一般的な触媒用金属(Ptなど)の他に、シリコン(Si)やシリコン酸化物(SiOなど)を白金との合金に近い状態で析出担持させることもできる(例えば特許文献2)。このため、公知組成の触媒の製造のみならず、触媒用の新規合金種の探索及び検討にも有効な担持手法として広く用いられている。
特開平4−118860号公報 特開2003−33668号公報
上述したような乾式法による触媒の製造においては、担体上への金属粒子の析出担持を、スパッタ装置などの物理蒸着装置内を真空に近い低圧条件にして行う必要がある。したがって、析出担持の終了直後は装置の内外での圧力差が大きいことから、作製された触媒を物理蒸着装置から取り出す際には、これに先立って装置内の真空度を下げ、装置内の圧力を大気圧とほぼ等しい圧力にするパージ処理が行われる。
このパージ処理は、作製した触媒の白金や白金合金が還元状態にあることから、この触媒に対して不活性なガス例えば窒素ガスを装置内に供給することによってなされるが、この際、触媒がカーボン担体などの吸着性の高い材料からなるために窒素の吸着が進行する。
しかし、窒素自体の触媒に対する吸着特性は弱いことから、例えば燃料電池の電極作製の為に触媒を装置から取り出すと、空気に暴露された瞬間に窒素が酸素に置換され、酸素が触媒に吸着されてしまう。この吸着された酸素と、吸着の際に発生する吸着熱とによって触媒の急激な酸化が進行するが、これは製造上好ましいことではなく、更にこのような酸化によって、燃料電池を構成する触媒の活性が低下してしまうことも問題となっていた。
本発明は、上述の触媒の製造における諸問題の解決を図るものである。
本発明による触媒の製造方法は、物理蒸着装置を用いて導電性粉体の表面に金属粒子を担持析出させる担持析出工程と、該担持析出工程で作製した上記触媒を、上記物理蒸着装置外部に搬出する触媒搬出工程とを有し、上記触媒搬出工程において、酸素含有雰囲気中への搬出に先立って、上記触媒に対し、上記導電性粉体に対する吸着性が酸素に比して高い気相吸着媒体を吸着させることを特徴とする。
また、本発明は、上記触媒の製造方法において、上記気相吸着媒体として、上記触媒に対し不活性な媒体を選定することを特徴とする。
また、本発明は、上記触媒の製造方法において、上記気相吸着媒体が二酸化炭素(COガス)であることを特徴とする。
また、本発明は、上記触媒の製造方法において、上記気相吸着媒体が水蒸気(HOガス)であることを特徴とする。
また、本発明は、上記触媒の製造方法において、上記導電性粉体が、カーボン(C)よりなることを特徴とする。
本発明による触媒の製造方法においては、物理蒸着法によって導電性粉体よりなる担体例えばカーボン担体上に金属粒子を担持析出させた後、装置内外の圧力差を解消するためのパージ処理を、二酸化炭素や水蒸気等の、担体による吸着力が高く、触媒に対して不活性な気相吸着媒体によって行う。
したがって、触媒の担体表面で還元状態にある白金や白金合金などの金属粒子が、触媒の取り出し時の酸素の吸着に伴って急激に酸化されることが低減ないし回避されることから、酸素による吸着及び酸化による製造上の不具合を回避もしくは低減することができ、触媒の取り扱いが容易とされる。
更に、製造した触媒を用いて例えば燃料電池の電極を構成する場合にも、高い触媒活性を維持したままの触媒を用いることができることから、燃料電池の特性向上も図られるなど、本発明構成によれば、重要かつ多くの効果をもたらすことができるものである。
以下、図面を参照して本発明による触媒の製造方法の実施の形態を説明するが、本発明は、この実施の形態に限られるものでない。
まず、本発明による触媒の製造方法の第1及び第2の実施の形態例を説明する。
第1の実施の形態例
図1は、本発明による触媒の製造方法を実施するのに好適な触媒製造装置の一例の構成を示す概略構成図である。
この実施の形態例では、触媒製造装置1は、物理蒸着装置例えばスパッタ装置2と、真空ポンプ3と、酸素ボンベ4と、窒素ボンベ5と、二酸化炭素ボンベ6とを有する。
まず、物理蒸着装置2内に触媒の担体例えばカーボン担体を載置した後、真空ポンプ3によって物理蒸着装置2内をほぼ真空の低圧状態として、カーボンに自然吸着された気体を十分に除去する。
その後、物理蒸着例えばスパッタを行い、担体上に例えば白金(Pt)や白金―ルテニウム(Pt−Ru)合金などの金属粒子を析出担持させる。この際、金属粒子とともにシリコン(Si)や酸化シリコン(SiO)などを白金との合金に近い形で析出担持させることもでき、酸化物を析出担持させる場合には酸素ボンベ4からヘリウム(He)含有の酸素ガスを導入して物理蒸着を行う。
物理蒸着終了後、再び真空ポンプ3によって物理蒸着装置2内を高真空状態とし、二酸化炭素ボンベ6から二酸化炭素(CO)を気相吸着媒体として導入し、物理蒸着装置2内の圧力を上昇させるパージ処理を行うとともに、物理蒸着装置2内に載置されて金属粒子を析出担持させたカーボン担体すなわち触媒に二酸化炭素を吸着させる。
この際、触媒に吸着させる二酸化炭素の必要量が予め把握できている場合には、二酸化炭素導入時、或いは二酸化炭素の必要量導入後に、窒素ボンベ5から窒素を導入してパージ処理を行うこともできる。
このようにして触媒の製造を行うことによって、パージ処理後に触媒を物理蒸着装置内から取り出す際にも、触媒の担体表面で還元状態にある白金や白金合金などの金属粒子が、カーボン担体への酸素の吸着に伴って急激に酸化されることが低減ないし回避される。
第2の実施の形態例
図2は、本発明による触媒の製造方法を実施するのに好適な触媒製造装置の他の例の構成を示す概略構成図である。
この実施の形態例では、触媒製造装置1は、物理蒸着装置例えばスパッタ装置2と、真空ポンプ3と、酸素ボンベ4と、窒素ボンベ5と、貯水器7と、気化器8とを有する。
まず、物理蒸着装置2内に触媒の担体例えばカーボン担体を載置した後、真空ポンプ3によって物理蒸着装置2内をほぼ真空の低圧状態として、カーボンに自然吸着された気体を十分に除去する。
その後、物理蒸着例えばスパッタを行い、担体上に例えば白金(Pt)や白金―ルテニウム(Pt−Ru)合金などの金属粒子を析出担持させる。この際、金属粒子とともにシリコン(Si)や酸化シリコン(SiO)などを白金との合金に近い形で析出担持させることもでき、酸化物を析出担持させる場合には酸素ボンベ4からヘリウム(He)含有の酸素ガスを導入して物理蒸着を行う。
物理蒸着終了後、再び真空ポンプ3によって物理蒸着装置2内を高真空状態とし、貯水器7から気化器8を通じて水蒸気(H0ガス)を気相吸着媒体として導入し、物理蒸着装置2内の圧力を上昇させるパージ処理を行うとともに、物理蒸着装置2内に載置されて金属粒子を析出担持させたカーボン担体すなわち触媒に水を吸着させる。
この際、触媒に吸着させる水の必要量が予め把握できている場合には、水蒸気導入時、或いは水蒸気の必要量導入後に、窒素ボンベ5から窒素を導入してパージ処理を行うこともできる。
このようにして触媒の製造を行うことによって、パージ処理後に触媒を物理蒸着装置内から取り出す際にも、触媒の担体表面で還元状態にある白金や白金合金などの金属粒子が、カーボン担体への酸素の吸着に伴って急激に酸化されることが低減ないし回避される。
次に、本発明による触媒の製造方法によって製造した触媒の酸化反応特性試験の結果について説明する。
酸化反応特性試験
図3及び図4は、本発明による触媒の製造方法によって、気相吸着媒体に二酸化炭素を用いて製造した触媒と、及び従来の触媒の製造方法によって製造した触媒とにおける、酸素反応特性試験の結果を示す。
図3及び図4において、曲線a及び曲線cは、装置内における二酸化炭素の濃度の経時変化を示す。また、曲線b及びdは、装置内温度の経時変化を示す。
酸素反応特性試験は、各製造方法によって製造した触媒を試験装置内に載置し、装置内温度を80℃として、ヘリウム雰囲気下、酸素を一定量導入したときの二酸化炭素の発生量を質量分析計によって測定することにより行った。
酸素の導入量は、装置内で酸素分圧が10%(図3及び図4の範囲x)、5%(図3及び図4の範囲y)、1%(図3及び図4の範囲z)となる量とした。
本発明による製造方法で製造した触媒においては、酸素分圧10%、5%、1%のいずれの場合にも、酸素導入時の二酸化炭素発生量が従来に比して低減されていることが確認できた。この結果から、本発明による製造方法で製造した触媒は、酸素による吸着及び酸化の特性すなわち酸素反応特性が抑制されていることが明らかとなった。
以上の実施の形態例で説明したように、本発明による触媒の製造方法においては、物理蒸着法によって導電性粉体よりなる担体例えばカーボン担体上に金属粒子を担持析出させた後、装置内外の圧力差を解消するためのパージ処理を、二酸化炭素や水蒸気等の、担体による吸着力が高く、触媒に対して不活性な気相吸着媒体によって行う。
これにより、触媒の担体表面で還元状態にある白金や白金合金などの金属粒子が、触媒の取り出し時の酸素の吸着に伴って急激に酸化されることが低減ないし回避される。
したがって、酸素による吸着及び酸化による製造上の不具合を回避もしくは低減することができ、触媒の取り扱いが容易とされ、更に触媒活性の低下を抑制することもできるものである。
なお、本発明による触媒の製造方法は、上述の実施の形態例に限られるものではない。
例えば、上述したように、本発明による触媒の製造方法においては、二酸化炭素や水蒸気等の、触媒に対して不活性な気相吸着媒体によって物理蒸着装置のパージ処理を行うことから、場合によっては窒素ガス供給用の窒素ボンベを外して、より簡略な装置構成によって、本発明による触媒の製造方法を実施することができる。
また、触媒を構成する担体はカーボン担体に限られず種々の担体を用いることができるし、触媒を構成する金属粒子も、白金に限られず種々の金属を用いることができるなど、本発明による触媒の製造方法は、種々の変更及び変形をなされ得る。
本発明による触媒の製造方法を実施する触媒製造装置の一例の構成を示す概略図である。 本発明による触媒の製造方法を実施する触媒製造装置の他の例の構成を示す概略図である。 本発明による触媒の製造方法によって製造した触媒の酸素反応特性試験の結果を示す図である。 従来の触媒の製造方法によって製造した触媒の酸素反応特性試験の結果を示す図である。 本発明による触媒によって構成することのできる、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の構成を示す概略図である。 従来の触媒の製造方法に用いる製造装置の構成を示す概略図である。
符号の説明
1・・・触媒製造装置、2・・・物理蒸着装置、3・・・真空ポンプ、4・・・酸素ボンベ、5・・・窒素ボンベ、6・・・二酸化炭素ボンベ、7・・・貯水器、8・・・気化器、11・・・従来の触媒製造装置、12・・・スパッタ装置、13・・・真空ポンプ、14・・・酸素ボンベ、15・・・窒素ボンベ、21・・・ダイレクトメタノール型燃料電池、22・・・電解質膜、23・・・燃料極、23a・・・メタノール流路、23b・・・拡散層、23c・・・触媒層、23d・・・アノード電極、24a・・・空気(酸素)流路、24b・・・拡散層、24c・・・触媒層、24d・・・カソード電極

Claims (5)

  1. 物理蒸着装置を用いて導電性粉体の表面に金属粒子を担持析出させる担持析出工程と、
    該担持析出工程で作製した上記触媒を、上記物理蒸着装置外部に搬出する触媒搬出工程とを有し、
    上記触媒搬出工程において、酸素含有雰囲気中への搬出に先立って、上記触媒に対し、上記導電性粉体に対する吸着性が酸素に比して高い気相吸着媒体を吸着させることを特徴とする触媒の製造方法。
  2. 上記気相吸着媒体として、上記触媒に対し不活性な媒体を選定することを特徴とする請求項1に記載の触媒の製造方法。
  3. 上記気相吸着媒体が二酸化炭素(COガス)であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
  4. 上記気相吸着媒体が水蒸気(HOガス)であることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の製造方法。
  5. 上記導電性粉体が、カーボン(C)よりなることを特徴とする請求項1または2に記載の触媒の製造方法。

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