JP4501356B2 - 鉄道車両用歯車装置及び鉄道車両用台車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上を図った鉄道車両用歯車装置及びこの歯車装置を搭載した鉄道車両用台車に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両は、図5に示すように、モータ1の回転を撓み軸継手2を介して歯車装置3の小歯車軸3aに伝達し、この小歯車軸3aに形成したはすば小歯車(以下、単に「小歯車」という。)3aaと、この小歯車3aaに噛み合うはすば大歯車(以下、単に「大歯車」という。)3bを経て車軸3cに取付けた車輪4に減速して伝え、走行するようになっている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−336616号公報(第2頁、図8,9)
【0004】
また、前記トルクの伝達を、はすば歯車に代えて平歯車或いはやまば歯車で行うものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献2】
特開昭57−51058号公報(第1頁、第1図)
【0006】
従来は、歯車装置3の前記小歯車軸3aや車軸3cを、歯車箱3dに回転が自在なように支持する軸受は、前記小歯車軸3aや車軸3cの回転によって発生するスラスト力を受けるために、図6に示したように、円錐ころ軸受3eを使用するのが一般的であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、軸受として円錐ころ軸受3eを使用した場合、歯車箱3d、円錐ころ軸受3eの押さえ蓋3f、小歯車軸3aや車軸3cの仕上がり寸法によって、円錐ころ軸受3eの外輪、内輪ところとの軸方向隙間(以下、「軸受隙間」という。)が変化する。
【0008】
駆動装置として要求される性能を維持するためには前記軸受隙間を適正に設定する必要があるが、鉄道車両用の歯車装置は、外気温の影響を受け、冬季などの低温時には潤滑油の粘度が高くなって潤滑不良を起こし易くなるので、軸受の焼付きを防止するために比較的大きい軸受隙間に設定している。摩耗などにより、軸受隙間が大きくなることがあり、歯車の噛み合い反力などで軸が傾くと、ころに影響を及ぼして軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れない。
【0009】
加えて、近年では、車速が大幅に上昇しているため、車軸や小歯車軸(モータ軸)の回転が高速になっているのに加え、モータが直流から交流に変更されて高速回転が可能になり、歯数比を大きくとっているので、同一車速としても小歯車軸(モータ軸)の回転数はかなり多くなっていることから、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が望まれている。
【0010】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上を図ることができる鉄道車両用歯車装置及びこの歯車装置を搭載した鉄道車両用台車を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記した目的を達成するために、本発明に係る鉄道車両用歯車装置は、モータの回転軸と同軸に取り付けられてこの回転軸に固定される小歯車と、この小歯車と噛み合って前記モータの回転を伝えられる大歯車と、この大歯車と同軸に取り付けられてこの大歯車に固定される車軸とを備えた一体型の歯車箱に、この歯車箱と前記小歯車を回転が自在なように支持する軸受の押さえ蓋を更に備えさせ、前記小歯車と前記大歯車を、各々、胴部の軸方向外周部に対を成す逆向きのつる巻き線の歯すじを形成したやまば歯車とすると共に、前記歯車箱の前記軸受押さえ蓋との嵌合部を、前記小歯車を前記大歯車の車軸中心から遠ざける方向に移動させてから取り出しが可能なように、半径Dを下記の式に従う円形としたものである。
D>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕
【0012】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、「固定」とは、2つの物体が相対的に動かないようにしっかりと留めることを意味し、「取り付ける」とは、2つの物体を相対的にある位置関係に接続することを意味する。また、小歯車や大歯車の「胴部」とは、外周に形成する歯の歯底よりも軸中心側の部分をいう。
【0013】
そして、モータの回転の伝達にやまば歯車を採用することで、小歯車の軸や車軸に作用するスラスト力が抑制できて軸受の耐久性や信頼性が更に向上し、鉄道車両の更なる高速化が図れることになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置は、鉄道車両の駆動装置に用いる歯車装置であって、
モータの回転軸と同軸に取り付けられてこの回転軸に固定される小歯車と、
この小歯車と噛み合って前記モータの回転を伝えられる大歯車と、
この大歯車と同軸に取り付けられてこの大歯車に固定される車軸とを備えた一体型の歯車箱に、
この歯車箱と前記小歯車を回転が自在なように支持する軸受の押さえ蓋を更に備えさせ、
前記小歯車と前記大歯車を、各々、胴部の軸方向外周部に対を成す逆向きのつる巻き線の歯すじを形成したやまば歯車とすると共に、前記歯車箱の前記軸受押さえ蓋との嵌合部を、前記小歯車を前記大歯車の車軸中心から遠ざける方向に移動させてから取り出しが可能なように、半径Dを下記の式に従う円形としたものである。
D>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕
【0015】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置によれば、歯車と大歯車をやまば歯車となすことで、小歯車の軸や車軸に作用するスラスト力を抑制できるので、必然的に軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れることになる。また、小歯車の歯車箱への設置や、歯車箱からの取り出しを容易に行なうことができるようになる。
【0016】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置においては、前述のように、構成上、軸方向の動き、つまりがたつきは、やまば歯車を形成する左右で対を成すはすば歯車の軸方向の隙間によって決定するので、軸受にスラスト力をほとんど作用させないようにすることが可能であり、少なくとも小歯車又は大歯車の何れか一方を、円筒ころ軸受によって回転が自在なように支持することができ、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れるようになる。
【0017】
ここで用いることができる円筒ころ軸受は、例えばスラスト(アキシアル)荷重を受けることができないN型、NU型や、鍔付きでスラスト(アキシアル)荷重も受けることができるNJ型、NUP型、NF型などいずれの型式のものでも良い。この円筒ころ軸受の回転軸と、前記大歯車、小歯車の回転軸とが平行状態になるように、これらが配置されると、特に高回転する各歯車の支持用として最適である。一方、各歯車にとっては低回転の車軸の支持用としても、効果を有することは言うまでもない。
【0018】
この前記円筒ころ軸受としては、少なくとも外輪又は内輪の何れか一方を、ころ端面に対向する鍔が片側のみに設けられているものが好ましい。ころ端面に対向する鍔が片側のみとは、例えば、内輪では、ころの軸方向の両側に、ころ端面に対向して普通は鍔が2箇所に設けられているが、その鍔がその両側のうちの何れか一方のみ設けられていることを指す。これは外輪についても同様である。なお、これらは一般にはNJ型、NF型と呼ばれている。
【0019】
加えて、少なくとも小歯車又は大歯車の何れかを、円筒ころ軸受によって回転が自在なように支持した本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記円筒ころ軸受の軸方向の隙間を、やまば歯車の軸方向の遊び量よりも大きくした場合には、常時は円筒ころ軸受の内輪ところが接触しないので、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れる。より好ましくは、前記円筒ころ軸受の片側のみに鍔が設けられた内輪又は外輪の鍔面ところ端面との軸方向の隙間がやまば歯車の軸方向の遊び量よりも大きくする。こうする事で、構成が簡単になり、省スペースとなる。そして、使いやすい安価なものとする事ができる。
【0020】
仮に歯車等に異常が発生し、前記軸方向の遊び量aが前記軸方向の隙間bより大きくなった場合でも、ころ端面(ころの軸方向の端面)と対向する内輪又は外輪の鍔面(内輪又は外輪におけるころ受け面の垂直面)がストッパとなって異常発生時のバックアップになる。
【0021】
また、少なくとも小歯車又は大歯車の何れかを、円筒ころ軸受によって回転が自在なように支持した本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記円筒ころ軸受におけるころ外周面、ころ端面、ころ受け面(水平面)、或いは、内輪又は外輪の鍔面(ころ受面の垂直面)の少なくとも何れか一面にクラウニングを施した場合には、前記異常発生時において、ころの回転軸が傾いてころ−内輪又はころ−外輪の間で接触があっても、エッジロード等が発生せず、内輪や外輪の鍔面などへの面圧も適切に保たれる。
【0022】
また、少なくとも小歯車又は大歯車の何れかを、円筒ころ軸受によって回転が自在なように支持した本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記円筒ころ軸受の内輪に形成したころ受け面における垂直面と水平面の隅部に窪みを設けた場合には、例えば内輪の垂直面を凸湾曲状に研磨する際に、前記窪みが研磨工具の逃げになるので、研磨作業がより高精度にかつ容易に行なえるようになる。
【0023】
また、本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記小歯車と前記大歯車のうちの少なくとも何れか一方の胴部における、軸方向外周部に形成した対を成す歯の間に潤滑油循環手段を設けた場合には、潤滑済みの余剰な油を効率良く歯車箱内の油溜め部に戻すことができる。
【0024】
例えばこの潤滑油循環手段として、溝又は逆に断面凸状の出っ張りを設けても良い。この潤滑油循環手段は、小歯車と大歯車の両方に設けることが望ましいが、何れか一方でも十分に効果を有する。なお、この潤滑油循環手段は、やまば歯車を形成する対を成す歯の間の胴部外周部に設ければよいが、前記対を成す歯の軸方向中心部に設けることが望ましいことは言うまでもない。
【0025】
また、本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記小歯車と前記大歯車のうちの少なくとも何れか一方を、軸方向外周部に形成する対を成す歯を別々に形成し、締結手段によって一体化した場合には、歯車の製作が容易となると共に、メンテナンスも容易に行なえるようになる。この締結手段は、2つの歯を一体化できるものであれば特に限定されるものではないが、通常はボルトが採用される。
【0026】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置は、前述したように、やまば歯車を採用することを特徴としている。このやまば歯車は対を成す左右の歯車のねじれ角が逆であるため、大歯車が歯車箱内に設置されている状態で、小歯車のみを分解する場合は、小歯車を大歯車に固定された車軸の中心から遠ざける方向に移動させてから分解する(組み立てる場合はこの逆)。従って、本発明に係る鉄道車両用歯車装置では、大歯車が設置された歯車箱からの小歯車の取り出しや、この歯車箱への小歯車の装着が可能なように、歯車箱における軸受押さえ蓋との嵌合部(開口部)を、その半径DをD>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕の式に従う円形としている。
【0027】
また、本発明に係る鉄道車両用歯車装置における、前記歯車箱の前記軸受押さえ蓋との嵌合部を前記円形に代えて、前記小歯車を前記大歯車の車軸中心から遠ざける方向に移動させてから取り出しが可能なように、少なくとも一つの方向の径方向長さを他の方向よりも長くした偏円形としても良い。
【0028】
本発明において、偏円形とは、例えば楕円などや、円形の少なくとも一部を、その円形の径方向に延ばしたり又は縮めたりしたものなどを含む全ての形状をいう。また、本発明において、前記偏円形に形成する嵌合部の位置は、モータの設置側、反モータ側の何れでも良い。
【0029】
このような本発明によれば、前記と同様、小歯車の歯車箱への設置や、歯車箱からの取り出しを容易に行なうことができるようになる。
【0030】
前記の本発明に係る鉄道車両用歯車装置において、前記偏円形の長手方向の半径長さLが下記式を満足するものである場合には、小歯車の歯車箱への設置や、歯車箱からの取り出しをより容易に行なうことができる。
L>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕
【0032】
上記の本発明に係る鉄道車両用歯車装置を搭載した鉄道車両用台車にあっては、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れるので、安全に高速走行が行なえるようになる。
【0033】
なお、上述の如く示されている実施の形態は、全て本発明の具体的な構成の例示であり、本発明に基づく鉄道車両用歯車装置や台車はこれになんら限定されるものではなく、特許請求の範囲に示された技術的思想の範疇において変更が可能であることは言うまでもない。
【0034】
【実施例】
以下、本発明に係る鉄道車両用歯車装置を図1〜図4に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明に係る鉄道車両用歯車装置の1実施例を断面して示す図、図2は本発明に係る大歯車の1実施例の説明図、図3は本発明に係る小歯車の1実施例の説明図、図4は本発明に係る円筒ころ軸受の1実施例の説明図である。
【0035】
図1において、11は本発明に係る鉄道車両用歯車装置であって、歯車箱12内に、小歯車13と、この小歯車13と噛み合う大歯車14と、この大歯車14と同軸に取り付けられてこの大歯車14に固定される車軸15とを関連配置している。
【0036】
前記小歯車13は、例えば撓み軸継手を介してモータの回転軸と同軸に取り付けられて固定され、モータの回転を大歯車14に伝える役目を有している。そして、この小歯車13からモータの回転を減速して伝えられた前記大歯車14は、直接この回転を車軸15を介して車輪4に伝える。
【0037】
本発明に係る鉄道車両用歯車装置11では、前記小歯車13と大歯車14を、従来より一般的に使用されているはすば歯車に代えて、胴部13a,14aの軸方向外周部に対を成す逆向きのつる巻き線の歯すじを形成したやまば歯車13b,14bを採用し、小歯車13の軸13dや車軸15に作用するスラスト力を抑制するようにしている。
【0038】
ところで、本発明に係る鉄道車両用歯車装置11において採用するやまば歯車13b,14bは、対を成す左右の歯車のねじれ角が逆である。従って、大歯車14が歯車箱12内に設置されている状態で、小歯車13を例えば分解する場合は、一旦、小歯車13を大歯車14に固定された車軸15の中心から遠ざける方向に移動させる必要がある。なお、小歯車13を組み立てる場合は前記と逆に、車軸15から遠ざかった位置に挿入した後、車軸15の中心方向に移動させる。
【0039】
このように、小歯車13を取り出したり、装着するに際しては、小歯車13を回転が自在なように支持する例えば後述の円筒ころ軸受17を、歯車箱12内の所定位置に固定するように押え付ける押さえ蓋18の取り付け面である、歯車箱12の開口部(嵌合部)12aを、図1(b)に破線で示したような円形ではなく、同図に実線で例示したように、紙面上方側等の少なくとも一箇所の半径方向長さLが他の方向の半径方向長さよりも相対的に長くなるように切欠いた偏円形となすことで、小歯車13の歯車箱12への設置や、歯車箱12からの取り出しを容易に行なうことができるようになる。
【0040】
なお、前記半径方向長さLは、
(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕
よりも大きな値となすことが望ましい。
【0041】
本発明では、前述のように回転時、軸受にスラスト力がほとんど作用しないやまば歯車13b,14bを採用することから、本実施例では、図4に例示されるように、前記の小歯車13の軸13dと車軸15を回転が自在なように支持する軸受の寿命をさらに延ばすべく、従来の円錐ころ軸受に代えて、円筒ころ軸受17を採用したものを例示している。この円筒ころ軸受17は、図4(a)に例示されているように、内輪17aでは紙面右側の片側のみに鍔17dが設けられている。
【0042】
そして、このような円筒ころ軸受17を採用した場合において、円筒ころ軸受17の回転軸と小歯車13及び大歯車14の夫々の回転軸とが全て平行となるようにし、円筒ころ軸受17の内輪17a又は外輪17cの片側に形成した鍔17dところ17bとの軸受隙間b(図4(a)(b)参照)を例えば2mmとして、やまば歯車13b,14bの軸方向の遊び量a(通常は0.1〜0.6mm程度:図4(a)参照)よりも大きくした。
【0043】
すなわち、常時は円筒ころ軸受17の内輪17aの鍔17dところ17bが接触しなくなるので、鉄道車両の歯車装置のように、歯車箱12の底部に潤滑油を溜め、大歯車14の回転によりその歯車部で潤滑油を掻き揚げて小歯車13の歯車部等に潤滑油を供給する飛沫潤滑の場合にも、潤滑油が十分にまわり、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れる。
【0044】
仮に歯車等に異常が発生した場合でも、ころ17bの端面17baと対向する内輪17a又は外輪17cの片側に形成した鍔17dにおけるころ受け面17aaの垂直面17aaaがストッパとなって異常発生時のバックアップになる。
【0045】
また、例えばころ17bの前記端面17baと内輪17aの前記垂直面17aaaの両方を、図4(c)に示したように、凸湾曲状にクラウニングを施せば、前記異常発生時にころ17bの回転軸が傾いて、前記端面17baと垂直面17aaa又は水平面17aabとが接触しても、エッジロードなどが発生することもなく、ころ17bからころ受け面17aaに対する面圧が大きくなることもなく、軸受の耐久性の更なる向上が図れるようになる。
【0046】
なお、このクラウニング形状は、1つの円弧でも、複数の円弧をつないで形成しても良く、他にころ17bの転がり面や外輪17c、内輪17aの夫々のころ受け面17aaについても同様にクラウニングを施しても良い。
【0047】
また、前記ころ受け面17aaにおける垂直面17aaaと水平面17aabとの隅部に、図4に示したように、窪み17abを設ければ、例えば内輪17aの垂直面17aaaを、図4(c)に示したように、凸湾曲状に研磨する際に、前記窪み17abが研磨工具の逃げになるので、研磨作業が精度良くしかも容易に行なえるようになる。
【0048】
本実施例のように、この小歯車13と大歯車14の胴部13a,14aにおける、軸方向外周部に形成した対を成す歯の例えば中心位置(図2、図3にCで示す位置)に、潤滑済みの余剰な油を効率良く歯車箱12の底部の油溜め部に戻すための溝13c,14cを設けても良い。
【0049】
さらに、本実施例のように、歯車の製作やメンテナンスが容易に行えるようにするために、図2,3に例示したように、小歯車13と大歯車14の軸方向外周部に形成する対を成す歯を別々に形成し、ボルト16によって一体的に締結するようにしても良い。
【0050】
以上説明した本発明に係る軸受装置では、軸受装置を構成する軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が図れるようになるので、この軸受装置を搭載した鉄道車両用台車は、更なる高速走行にも耐えることができるようになる。
【0051】
本発明は、上記の実施例に限らず、各請求項に対応する構成に基づく発明であっても良いことは言うまでもない。この場合、各請求項に対応する構成に基づく作用効果を奏することになる。また、各請求項に対応する構成の技術的思想の範囲内であれば、夫々設計変更等は任意である。
【0052】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、軸受の耐久性や信頼性の更なる向上が可能になって、鉄道車両の更なる高速化が図れることになる。そして、小歯車や大歯車の胴部における軸方向外周部に形成した対を成す歯の間に潤滑油循環手段を設けた場合には、潤滑済みの余剰な油を効率良く歯車箱内の油溜め部に戻すことができるようになる。また、小歯車や大歯車の軸方向外周部に形成する対を成す歯を別々に形成し、締結手段によって一体化した場合には、歯車の製作が容易となると共に、メンテナンスも容易に行なえるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明に係る鉄道車両用歯車装置の1実施例を断面して示す図、(b)は(a)の矢視A図である。
【図2】本発明に係る大歯車の1実施例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る小歯車の1実施例を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)は円筒ころ軸受の説明図で、(a)は内輪の片側に鍔を有するもの、(b)は外輪の片側に鍔を有するもの、(c)はクラウニングの一例を示す図である。
【図5】鉄道車両における駆動装置の説明図である。
【図6】従来の鉄道車両用歯車装置を断面して示す図である。
【符号の説明】
11 歯車装置
12 歯車箱
12a 開口部
12b 切欠き部
13 小歯車
13a 胴部
13b やまば歯車
13c 溝
13d 軸
14 大歯車
14a 胴部
14b やまば歯車
14c 溝
15 車軸
17 円筒ころ軸受
17a 内輪
17aa ころ受け面
17aaa 垂直面
17aab 水平面
17b ころ
17ba 端面
17c 外輪
17d 鍔
18 押さえ蓋
Claims (12)
- 鉄道車両の駆動装置に用いる歯車装置であって、
モータの回転軸と同軸に取り付けられてこの回転軸に固定される小歯車と、
この小歯車と噛み合って前記モータの回転を伝えられる大歯車と、
この大歯車と同軸に取り付けられてこの大歯車に固定される車軸とを備えた一体型の歯車箱に、
この歯車箱と前記小歯車を回転が自在なように支持する軸受の押さえ蓋を更に備えさせ、
前記小歯車と前記大歯車を、各々、胴部の軸方向外周部に対を成す逆向きのつる巻き線の歯すじを形成したやまば歯車とすると共に、前記歯車箱の前記軸受押さえ蓋との嵌合部を、前記小歯車を前記大歯車の車軸中心から遠ざける方向に移動させてから取り出しが可能なように、半径Dを下記の式に従う円形としたことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
D>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕 - 請求項1記載の鉄道車両用歯車装置において、少なくとも小歯車又は大歯車の何れか一方は円筒ころ軸受によって回転が自在なように支持されていることを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
- 前記円筒ころ軸受の回転軸と、前記小歯車又は大歯車の回転軸とが平行となるように構成されていることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用歯車装置。
- 請求項2又は3記載の前記円筒ころ軸受の少なくとも外輪又は内輪の何れか一方を、ころ端面に対向する鍔が片側のみに設けられたものとしたことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
- 請求項2〜4の何れか記載の鉄道車両用歯車装置において、前記円筒ころ軸受の軸方向の隙間を、やまば歯車の軸方向の遊び量よりも大きくしたことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。
- 請求項2〜5の何れか記載の鉄道車両用歯車装置において、
前記円筒ころ軸受におけるころ端面、或いは、外輪又は内輪の鍔面の少なくとも何れか一面にクラウニングを施したことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。 - 請求項2〜6の何れか記載の鉄道車両用歯車装置において、
前記円筒ころ軸受の内輪又は外輪の少なくとも何れか一方に形成したころ受け面における垂直面と水平面との隅部に窪みを設けたことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。 - 前記小歯車と前記大歯車のうちの少なくとも何れか一方の胴部における、軸方向外周部に形成した対を成す歯の間に、潤滑済みの余剰な油を歯車箱内の油溜め部に戻す潤滑油循環手段を設けたことを特徴とする請求項1〜7の何れか記載の鉄道車両用歯車装置。
- 前記小歯車と前記大歯車のうちの少なくとも何れか一方は、軸方向外周部に形成する対を成す歯が別々に形成され、締結手段によって一体化されたものであることを特徴とする請求項1〜8の何れか記載の鉄道車両用歯車装置。
- 請求項1〜9の何れか記載の鉄道車両用歯車装置において、
前記歯車箱の前記軸受押さえ蓋との嵌合部を前記円形に代えて、少なくとも一つの方向の径方向長さを他の方向よりも長くした偏円形としたことを特徴とする鉄道車両用歯車装置。 - 前記偏円形の長手方向の半径長さLが下記の式に従うものであることを特徴とする請求項10記載の鉄道車両用歯車装置。
L>(小歯車の歯先外径/2)+〔{(小歯車の歯先外径+大歯車の歯先外径)/2}−大歯車と小歯車との中心間距離〕 - 請求項1〜11の何れか記載の鉄道車両用歯車装置を搭載したことを特徴とする鉄道車両用台車。
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