以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
図1は、マイクロリアクタモジュール600の側面図である。このマイクロリアクタモジュール600は、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA、電子手帳、デジタルカメラ、携帯電話機、腕時計、レジスタ、プロジェクタといった電子機器に内蔵され、燃料電池に使用する水素ガスを生成するものである。
図1に示すように、このマイクロリアクタモジュール600は、反応物の供給や生成物の排出が行われるパイプ群602と、動作に要する適正な温度が高温な改質反応が起こる高温反応部604と、動作適正温度が高温反応部604の動作適正温度よりも低温な選択酸化反応が起きる低温反応部606と、高温反応部604と低温反応部606との間で反応物や生成物の流入又は流出を行うための連結部608とを具備する。
図2は、マイクロリアクタモジュール600を機能ごとに分けた場合の概略側面図である。図2に示すように、パイプ群602には主に気化器610及び第一燃焼器612が設けられている。第一燃焼器612には、少なくとも一部が気化されている燃料(例えば、水素ガス、メタノールガス等)と、この燃料を燃焼するための酸素を含む空気等の酸素源となる気体と、がそれぞれ別々に或いは混合された流体として供給され、これらの流体が第一燃焼器612内の触媒によって燃焼して熱を発する。気化器610には水と液体燃料(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、ガソリン等の化石燃料)がそれぞれ別々に或いは混合された状態で燃料容器から供給され、第一燃焼器612における燃焼熱が気化器610内に伝搬することによって水と液体燃料が気化器610内において気化する。
高温反応部604には主に第二燃焼器614と、第二燃焼器614の上に設けられた改質器400とが設けられている。第二燃焼器614には、少なくとも一部が気化されている燃料(例えば、水素ガス、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類、ガソリン等の化石燃料等)と、この燃料を燃焼するための酸素を含む空気等の酸素源となる気体と、がそれぞれ別々に或いは混合された流体として供給され、流体の触媒燃焼によって熱が発する。
なお、燃料電池がマイクロリアクタモジュール600から供給された水素ガスによって電気化学反応を発生した後に燃料電池から排出されたオフガス中に未反応の水素ガスが含まれている場合があり、第一燃焼器612及び第二燃焼器614の少なくともいずれか一方は、この未反応の水素ガスを、酸素を含んだ空気等の気体で燃焼して熱を発するようにしても良い。勿論、第一燃焼器612及び第二燃焼器614の少なくともいずれか一方は、燃料容器に貯留されている液体燃料(例えば、メタノール、エタノール、ブタン、ジメチルエーテル、ガソリン等)を、別の気化器によって気化し、その気化した燃料を、酸素を含んだ空気等の気体で燃焼するようにしても良い。
第二燃焼器614が、燃料電池から排出されたオフガスを燃焼する場合、まず起動時に、改質器400が後述する電熱線722によって加熱されて水素を生成し、この水素が供給される燃料電池から水素を含むオフガスが定常的に排出されてきたら、第二燃焼器614はオフガス中の水素を燃焼して改質器400を加熱する。電熱線722は、第二燃焼器614が主熱源になると、補助的な熱源に切り替わるよう印加電圧を低くする。
この改質器400には気化器610から水と燃料の混合気が供給され、改質器400が第二燃焼器614によって所定温度に加熱される。加熱された改質器400では水と燃料から水素ガス等が触媒反応により生成され、更に微量ながら一酸化炭素ガスが生成される。燃料がメタノールの場合には、次式(1)、(2)のような化学反応が起こる。なお、水素が生成される反応は吸熱反応であり、第二燃焼器614の燃焼熱が用いられる。
CH3OH+H2O→3H2+CO2 …(1)
2CH3OH+H2O→5H2+CO+CO2 …(2)
低温反応部606には主に一酸化炭素除去器500が設けられている。一酸化炭素除去器500は、第一燃焼器612によって加熱された状態で、改質器400から水素ガス、一酸化炭素ガス等を含む混合気が供給され、更に空気等の酸素源が供給される。一酸化炭素除去器500では混合気のうち一酸化炭素が選択的に酸化され、これにより次式(3)のような化学反応が起こり、一酸化炭素が除去される。
CO+1/2O2→CO2 …(3)
一酸化炭素が除去された状態の水素を主体とする混合気が燃料電池の燃料極に供給される。
マイクロリアクタモジュール600の具体的な構成について図1、図3〜図9を用いて説明する。図3は、マイクロリアクタモジュール600の分解斜視図であり、図4は、改質器400の分解斜視図であり、図5は、一酸化炭素除去器500の分解斜視図であり、図6は、図1の切断線VI−VIに沿った面の矢視断面図であり、図7は、図1の切断線VII−VIIに沿った面の矢視断面図であり、図8は、図1の切断線VIII−VIIIに沿った面の矢視断面図であり、図9は、図1の切断線IX−IXに沿った面の矢視断面図である。
図1、図3、図6に示すように、パイプ群602は、コバール(NiFeCo合金)からなる液体燃料導入管622と、液体燃料導入管622の上端部において液体燃料導入管622を囲むように設けられたコバール(NiFeCo合金)からなる燃焼器プレート624と、液体燃料導入管622の周囲に配列されたコバール(NiFeCo合金)からなる5本の管材626,628,630,632,634とを具備する。燃焼器プレート624は硬蝋付けによって液体燃料導入管622及び低温反応部606と接合されており、蝋剤としては、液体燃料導入管622や燃焼器プレート624を流れる流体の温度のうちの最高温度よりも高い融点であり、好ましくは融点が700度以上の、金に、銀、銅、亜鉛、カドミウムを含有した金蝋や、金、銀、亜鉛、ニッケルを主成分とした蝋、或いは金、パラジウム、銀主成分とした蝋が特に好ましい。燃焼器プレート624は、液体燃料導入管622が低温反応部606に接合されるためのフランジとしても機能する。
液体燃料導入管622内には吸液材623が充填されている。吸液材623は液体を吸収するものであり、吸液材623としては無機繊維又は有機繊維を結合材で固めたものでもよく、無機粉末を焼結したものであったり、無機粉末を結合材で固めたものでもよく、グラファイトとグラッシーカーボンの混合体でもよい。具体的には、フェルト材、セラミック多孔質材、繊維材、カーボン多孔質材といったものが吸液材623として用いられる。
燃焼器プレート624の中央部に貫通孔624Aが形成され、その貫通孔624Aに液体燃料導入管622が嵌め込まれ、液体燃料導入管622と燃焼器プレート624が接合されている。また、燃焼器プレート624の一方の面には隔壁624Bが凸設されている。隔壁624Bは一部が燃焼器プレート624の外縁全周に亘って設けられ、他の一部が径方向に亘って設けられ、燃焼器プレート624が低温反応部606の下面に接合されることによって、接合面に燃焼用流路625が形成され、液体燃料導入管622が燃焼用流路625によって囲繞されている。燃焼用流路625の壁面には、燃焼混合気を燃焼させる燃焼用触媒が担持されている。燃焼用触媒としては、白金が挙げられる。なお、液体燃料導入管622内の吸液材623は燃焼器プレート624の位置まで充填されている。
図1、図3に示すように、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608は、ベースプレート642を共通の基体としている。ベースプレート642の一方の面上に板材690、波形板420,520,540、セパレート板550、カップ体410,510が設けられ、これらにより高温反応部604、低温反応部606及び連結部608といった反応容器が形成されている。この反応容器を形成するベースプレート642の他方の面に、絶縁プレート640が設けられている。
ベースプレート642は、コバール(NiFeCo合金)からなり、低温反応部606の基体となるベース部652と、高温反応部604の基体となるベース部654と、連結部608の基体となる連結ベース部656とを備える。ベースプレート642は、ベース部652とベース部654と連結ベース部656とを一体形成したものであり、連結ベース部656において括れた状態とされている。
絶縁プレート640は、低温反応部606の基体となるベース部662と、高温反応部604の基体となるベース部664と、連結部608の基体となる連結ベース部666とからなる。絶縁プレート640は、ベース部662とベース部664と連結ベース部666とを一体形成したものであり、連結ベース部666において括れた状態とされている。この絶縁プレート640は、セラミック等の電気絶縁体からなる。
ここで、絶縁プレート640を形成する電気絶縁体の線膨張係数は、カップ体410,510、波形板420,520,540、セパレート板550、板材690、ベースプレート642等の反応容器を形成する金属材料の線膨張係数の70〜130%であることが好ましく、90〜110%であることがより好ましく、等しいことが最も好ましい。
このような絶縁プレート640となる電気絶縁体と絶縁プレート640に接するベースプレート642となる反応容器材料としては、例えば、電気絶縁体にムライト(3Al2O3・2SiO2,線膨張係数5.0×10-6/℃)を、反応容器材料としてコバール(FeNiCo合金、線膨張係数5.16×10-6/℃)を用いる組み合わせが挙げられるが、これに限られない。
図3、図7に示すように、ベースプレート642に絶縁プレート640を接合した状態で、貫通孔671〜678がベースプレート642のベース部652及び絶縁プレート640のベース部662を貫通している。図1、図3に示すように、絶縁プレート640のベース部662が低温反応部606の下面部となり、低温反応部606の下面に管材626,628,630,632,634及び液体燃料導入管622がそれらのフランジ部で接合されている。ここで、管材626が貫通孔671に通じ、管材628が貫通孔672に通じ、管材630が貫通孔673に通じ、管材632が貫通孔674に通じ、管材634が貫通孔675に通じ、液体燃料導入管622が貫通孔678に通じている。また、図3、図6、図7に示すように、燃焼器プレート624が低温反応部606の下面に接合されており、燃焼器プレート624の燃焼用流路625の一端部が貫通孔676に通じ、燃焼用流路625の他端部が貫通孔676に通じている。
図7に示すように、ベースプレート642には、一方の面に改質燃料供給流路702と、連通流路704と、空気供給流路706と、混合室708と、燃焼燃料供給流路710と、第二燃焼器614となる燃焼室712と、排ガス流路714と、燃焼燃料供給流路716と、排気室718となる溝が形成されるように、これらの溝よりも高さが一段高くなっているステージ641及びステージ643がそれぞれベース部652及びベース部654に設けられている。
改質燃料供給流路702は、低温反応部606の貫通孔678から連結部608の連結ベース部656を通って高温反応部604のベース部654の角部にまで至るよう形成されている。混合室708は、低温反応部606のベース部652において四角形状の底面707によって形成されている。連通流路704は、高温反応部604のベース部654の角部から連結ベース部656を通って混合室708まで至るように形成されている。空気供給流路706は、低温反応部606の貫通孔675から混合室708まで至るように形成されている。
燃焼室712は、ベース部654の中央部においてC字状の底面711によって形成されている。板材690の下面及び底板711の上面を含む燃焼室712の壁面には、燃焼混合気を燃焼させる燃焼用触媒が担持されている。
燃焼燃料供給流路710は、貫通孔672から連結ベース部656を通って燃焼室712まで至るように形成されている。排ガス流路714は、貫通孔677から貫通孔673に至るよう形成されているとともに、燃焼室712から連結ベース部656を通って貫通孔673に至るように形成されている。燃焼燃料供給流路716は、ベース部652において貫通孔674から貫通孔676に至るように形成されている。排気室718はベース部652においてステージ641より一段低い矩形状の凹部として形成され、排気室718の角部に貫通孔671が通じている。
ベース部654上に改質器400が設けられている。図4、図8、図9に示すように、この改質器400は、下面で開口したカップ体410と、カップ体410内に収容された波形板420と、カップ体410の下側開口を閉塞した底板430とを備える。
カップ体410は、正方形又は長方形に成した天板412と、天板412の四つの辺のうち相対する二辺において天板412に対して垂直に連なった状態で接続された一対の側板414,414と、天板412の別の相対する二辺において天板412に対して垂直に連なった状態で接続された一対の側板416,416とを有する。側板414は側板416に対して垂直に連なった状態で接続され、これら四枚の側板414,414,416,416によって正方形枠状又は長方形枠状に設けられている。
底板430は、天板412と平行となるよう底板430の縁部が側板414,414,416,416の下辺部に接合されている。このようにカップ体410の下面開口が底板430によって閉塞されることで、中空を有する平行六面体状の箱体が構成される。
波形板420は、波形に蛇行したコバール(NiFeCo合金)からなる板を備え、この板の両端側において対向した一対の補強部422,422と、2つの補強部422,422の間において補強部422に対向した複数の仕切部424,424,…と、仕切部424の四つの辺のうち一辺において隣り合う仕切部424と仕切部424との間に又は隣り合う仕切部424と補強部422との間に連結された複数の折返し部426,426,…とを有する。
この波形板420は波高方向が側板414と平行となるようにカップ体410に収容され、波形板420の補強部422が側板414に面した状態で当接し、好ましくは補強部422が側板414に蝋付けにより接合されている。したがって補強部422は、カップ体410の側板414を補強する補強部材として機能する。このため、側板414に応力が生じた場合であっても容易に変形しにくい構造となる。
また波形板420の折返し部426は側板416に面した状態で当接し、好ましくは折返し部426が側板416に蝋付けにより接合されている。したがって各折返し部426は、カップ体410の側板416を補強する補強部材として機能する。このため、側板416に応力が生じた場合であっても容易に変形しにくい構造となる。
折返し部426の上辺部及び補強部422の上辺部がカップ体410の天板412に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。折返し部426の下辺部及び補強部422の下辺部が底板430に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。
このように波形板420がカップ体410に収容されているので、カップ体410と底板430とによる中空が仕切部424によって複数の空間418,418,…に区画されている。これら複数の空間418,418,…のうち、一方の補強部422と仕切部424との間の空間418に通じる導入口432が底板430に形成され、他方の補強部422と仕切部424との間の空間418に通じる排出口434が底板430に形成されている。
また、各仕切部424の波高方向一端部にはそれぞれ上下一対の貫通孔428,428が形成され、隣り合う空間418,418が貫通孔428,428を介して通じている。そのため、カップ体410と底板430とによる中空が導入口432から排出口434までの流路状に設けられ、その流路が蛇行状とされている。
図1、図3に示すように、改質器400の底板430がベース部654の上面に位置するステージ643に接合されている。底板430によって、改質燃料供給流路702の一部と、排ガス流路714の一部と、燃焼燃料供給流路710の一部と、連通流路704の一部と、燃焼室712とが蓋される。底板430に形成された導入口432は改質燃料供給流路702の端部703の上に位置され、底板430に形成された排出口434は連通流路704の端部705の上に位置されている。
この改質器400においては、カップ体410と底板430の内面や波形板420に改質触媒(例えば、Cu/ZnO系触媒やPd/ZnO系触媒)が担持されている。
ベース部652上に一酸化炭素除去器500が設けられている。この一酸化炭素除去器500は、下面で開口したカップ体510と、カップ体510内に収容されてカップ体510内の空間を上下に仕切ったセパレート板550と、カップ体410の下側開口を閉塞した底板530と、セパレート板550によって仕切られた2つの空間のうち上側の空間に収容された波形板520と、下側の空間に収容された波形板540と、を備える。
カップ体410,510、波形板420,520,540及び底板430,530は、コバール(NiFeCo合金)からなるものが好ましく、後述する絶縁プレート640を形成する電気絶縁体の線膨張係数の70〜130%であることが好ましく、90〜110%であることがより好ましい。
カップ体510は、正方形状又は長方形状の天板512と、天板512の四つの辺のうち相対する二辺において天板512に対して垂直に連なった状態で接続された一対の側板514,514と、天板512の別の相対する二辺において天板512に対して垂直に連なった状態で接続された一対の側板516,516とを有する。側板514は側板516に対して垂直に連なった状態で接続されている。
底板530が天板512と平行となるよう底板530の縁部が側板514,514,516,516の下辺部に接合され、中空を有する平行六面体状の箱体が構成されている。セパレート板550は、底板530及び天板512と平行となるようカップ体510内に収容され、セパレート板550の縁が側板514,514,516,516の上下中腹部に接合されている。
波形板520は、波形に蛇行したコバール(NiFeCo合金)からなる板を備え、この板の両端側において対向した一対の補強部522,522と、2つの補強部522,522の間において補強部522に対向した複数の仕切部524,524,…と、仕切部524の四つの辺のうち一辺において隣り合う仕切部524と仕切部524との間に又は隣り合う仕切部524と補強部522との間に連結された複数の折返し部526,526,…とを有する。
波形板540も、波形板520と同様に、同一材料、略同一形状となっており、一対の補強部542,542と、複数の仕切部544,544,…と、複数の折返し部546,546,…とを有する。
波形板520は波高方向が側板514と平行となるようにセパレート板550と天板512との間の空間に収容され、波形板520の補強部522が側板514に面した状態で当接し、好ましくは補強部522が側板514に蝋付けにより接合されている。したがって補強部522は、カップ体510の側板514を補強する補強部材として機能する。このため、側板514に応力が生じた場合であっても容易に変形しにくい構造となる。
また、波形板520の折返し部526は側板516に面した状態で当接し、好ましくは折返し部526が側板516に蝋付けにより接合されている。したがって各折返し部526は、カップ体510の側板516を補強する補強部材として機能する。このため、側板516に応力が生じた場合であっても容易に変形しにくい構造となる。
折返し部526の上辺部及び補強部522の上辺部がカップ体510の天板512に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。折返し部526の下辺部及び補強部522の下辺部がセパレート板550に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。
カップ体510内の天板512とセパレート板550との間の空間内に波形板520が収容されて、その空間が仕切部524によって複数の空間518,518,…に区画されている。
また、波形板540は波高方向が側板514と平行となるようにセパレート板550と底板530との間の空間に収容され、波形板540の補強部542が側板514に面した状態で当接し、好ましくは補強部542が側板514に蝋付けにより接合されている。また、波形板540の折返し部546は側板516に面した状態で当接し、好ましくは折返し部546が側板516に蝋付けにより接合されている。
折返し部546の上辺部及び補強部542の上辺部がカップ体510のセパレート板550に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。折返し部546の下辺部及び補強部542の下辺部が底板530に当接し、好ましくは蝋付けにより接合されている。
カップ体510内の底板530とセパレート板550との間の空間内に波形板540が収容されて、その空間が仕切部544によって複数の空間519,519,…に区画されている。下の波形板540はセパレート板550を挟んで上の波形板520に重なり、上の空間518はセパレート板550によって下の空間519に仕切られている。
各仕切部524にそれぞれ貫通孔528が形成され、隣り合う空間518,518が貫通孔528を介して通じている。同様に、各仕切部544にそれぞれ貫通孔548が形成され、隣り合う空間519,519が貫通孔548を介して通じている。セパレート板550には複数の貫通孔552,552,…が形成され、上下に隣り合う空間518,519が貫通孔552を介して通じている。貫通孔528、貫通孔548,貫通孔552によって、これら空間518,518,…と空間519,519,…が所定の一連の流路となっている。
これら複数の空間519,519,…のうち何れかに通じる導入口532が底板430に形成され、他の空間519に通じる排出口534が底板530に形成されている。
図1、図3に示すように、一酸化炭素除去器500の底板530がベース部652の上面に接合されている。底板530によって、改質燃料供給流路702の一部と、排ガス流路714の一部と、燃焼燃料供給流路710の一部と、連通流路704の一部と、空気供給流路706と、混合室708と、燃焼燃料供給流路716と、排気室718とが蓋される。底板530に形成された導入口532は混合室708の角部709の上に位置され、底板530に形成された排出口534は排気室718の角部719の上に位置されている。
この一酸化炭素除去器500においては、カップ体510と底板530の内面や波形板520、波形板540及びセパレート板550に一酸化炭素選択酸化触媒(例えば、白金等)が担持されている。
図3に示すように、改質器400の底板430と一酸化炭素除去器500の底板530とは連結蓋680によって連結された状態で一体形成されている。底板430と底板530と連結蓋680とを一体にした板材690は、連結蓋680において括れた状態とされている。この板材690がベースプレート642に接合されているが、板材690の連結蓋680はベースプレート642の連結ベース部656に接合され、これにより連結部608が構成される。この連結部608においては、改質燃料供給流路702の一部と、排ガス流路714の一部と、燃焼燃料供給流路710の一部と、連通流路704の一部とが連結蓋680によって蓋される。
図1等に示すように、連結部608の外形は角柱状とされ、連結部608の幅が高温反応部604の幅及び低温反応部606の幅よりも狭く、連結部608の高さも高温反応部604及び低温反応部606の高さよりも低い。そのため、高温反応部604の適正温度及び低温反応部606の適正温度の差を保持でき、さらに高温反応部604の熱損失を抑えることができるとともに、低温反応部606が設定温度以上に昇温することも抑えることができる。そして、連結部608は高温反応部604と低温反応部606との間に架設されているが、連結部608は高温反応部604の幅方向中央部において高温反応部604に連結しているとともに低温反応部606の幅方向中央部において低温反応部606に連結している。そのため、高温反応部604の適正温度及び低温反応部606の適正温度の差によって生じる熱膨張の差に基づく連結部608への応力を最小限に抑え、連結部608から流体が漏洩することを防止できる。しかし、このように連結部608は小さいために応力に対して十分強い剛性を有していない。
なお、上述したように、連結部608には、改質燃料供給流路702、連通流路704、燃焼燃料供給流路710及び排ガス流路714が設けられている。
パイプ群602、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608の内側に設けられた流路の経路は図10、図11に示すようになる。ここで図10、図11と図2の対応関係について説明すると、液体燃料導入管622が気化器610に相当し、燃焼用流路625が第一燃焼器612に相当し、燃焼室712が第二燃焼器に相当する。
図3に示すように、低温反応部606の下面つまり絶縁プレート640の下面には、電熱線720が蛇行した状態にパターニングされ、低温反応部606から連結部608を通って高温反応部604にかけてこれらの下面には、電熱線722が蛇行した状態にパターニングされている。低温反応部606の下面から燃焼器プレート624の表面を通って液体燃料導入管622の側面にかけて電熱線724がパターニングされている。ここで、液体燃料導入管622の側面及び燃焼器プレート624の表面には、窒化シリコン、酸化シリコン等の絶縁膜が成膜され、その絶縁膜の表面に電熱線724が形成されている。絶縁膜又は絶縁プレート640に電熱線720,722,724をパターニングすることで、印加しようとする電圧が金属材料製のベースプレート642、液体燃料導入管622、燃焼器プレート624等にほとんど掛かることがなく、電熱線720,722,724に供給されるので電熱線720,722,724の発熱効率を向上させることができる。
電熱線720,722,724は、絶縁プレート640側から密着層、拡散防止層、発熱層の順に積層したものである。発熱層は3層の中で最も低い抵抗率の材料(例えば、Au)であり、電熱線720,722,724に電圧が印加されると電流が集中的に流れて発熱する。拡散防止層には、発熱層の材料が拡散防止層や密着層に対して拡散しないように比較的融点が高く且つ反応性が低い物質(例えば、W)を用いることが好ましい。密着層は、拡散防止層が絶縁プレート640に対して密着性が優れていない場合に用いられるものであり、拡散防止層に対しても絶縁プレート640に対しても密着性に優れた材料(例えば、Ta、Mo、Ti、Cr)からなる。電熱線720は、起動時に低温反応部606を加熱し、電熱線722は、起動時に高温反応部604及び連結部608を加熱し、電熱線724は、パイプ群602の気化器502及び第一燃焼器612を加熱する。この後、マイクロリアクタモジュール600から排出された水素ガスによって発電する燃料電池から、電気化学反応に用いられずに残った水素を含むオフガスが排気される。このオフガスを第二燃焼器614に導入して燃焼させたら、電熱線722は第二燃焼器614の補助として高温反応部604及び連結部608を加熱する。同様に、燃料電池からの水素を含むオフガスが第一燃焼器612で燃焼される場合、電熱線720及び電熱線724は第一燃焼器612の補助として低温反応部606及びパイプ群602を加熱する。
また、電熱線720,722,724は温度の変化に応じて電気抵抗が変化するので、所定の印加電圧又は電流に対する抵抗値から温度を読み取ることができる温度センサとしても機能する。具体的には、電熱線720,722,724の温度は電気抵抗に比例する。
電熱線720,722,724の何れの端部も低温反応部606の下面に位置し、これら端部が燃焼器プレート624を囲むように配列されている。電熱線720の両端部にはそれぞれリード線731,732が接続され、電熱線722の両端部にはそれぞれリード線733,734が接続され、電熱線724の両端部にはそれぞれリード線735,736が接続されている。なお、図1においては、図面を見やすくするために、電熱線720,722,724及びリード線731〜736の図示を省略する。
図12に示すように、このマイクロリアクタモジュール600は断熱パッケージ791を具備し、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608が断熱パッケージ791に収容されている。断熱パッケージ791は、下面が開口した長方形状のケース792と、ケース792の下面開口を閉塞したプレート793とから構成され、プレート793がケース792に接合されている。ケース792及びプレート793のどちらも
肉厚が0.1mm〜0.2mm程度のコバール(NiFeCo合金)からなる。断熱パッケージ791は、パイプ群602、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608からの熱輻射を反射して断熱パッケージ791の外に伝搬することを抑制する。断熱パッケージ791は内圧が1Pa以下になるように、マイクロリアクタモジュール600との間の内部空間が減圧排気されている。パイプ群602の水素ガス用排出路となる管材634は、断熱パッケージ791から露出されており、後述する発電セル808の燃料極に連結され、液体燃料導入管622は流量制御ユニット806を介して燃料容器804に連結されている。
リード線732,731,733,734,736,735,737,738を有する配線群739は、一部が断熱パッケージ791から露出されている。液体燃料導入管622並びにリード線732,731,733,734,736,735,737,738においてそれぞれ断熱パッケージ791から露出している部分から断熱パッケージ791内に外気が侵入して内圧が上がるような隙間が生じないように、液体燃料導入管622並びにリード線732,731,733,734,736,735,737,738は断熱パッケージ791のベースプレート793に金属蝋、ガラス材又は絶縁封止材で接合されている。断熱パッケージ791は金属性なので導電性を示すが、リード線732,731,733,734,736,735,737,738が高融点絶縁体で被覆されているので、リード線732,731,733,734,736,735,737,738が断熱パッケージ791とそれぞれ導通することはない。断熱パッケージ791の内部空間の内圧を低く維持できるので、マイクロリアクタモジュール600が発する熱を伝搬する媒体が希薄になり、内部空間でのまた熱対流が抑えられるのでマイクロリアクタモジュール600の保温効果が増える。
そして、断熱パッケージ791で封止された空間において、マイクロリアクタモジュール600の高温反応部604及び低温反応部606の間には所定の距離の連結部608が介在しているが、連結部608の容積は高温反応部604及び低温反応部606の容積に対して極めて小さいので、連結部608による高温反応部604から低温反応部606への熱の伝搬は抑えられ、高温反応部604と低温反応部606との間では、反応に必要な熱勾配を維持できるとともに高温反応部604内の温度を均等にしやすく、低温反応部606内の温度を均等にしやすくすることができる。
低温反応部606の表面には、経時的にマイクロリアクタモジュール600から漏洩し得る流体、経時的にマイクロリアクタモジュール600から発生する流体、またケース792とベースプレート793との接合時に十分な減圧排気ができずに残存する外気の一部、経時的に断熱パッケージ791内に侵入する外気といった断熱パッケージ791の内部空間の圧力を上げる要因を吸着することで断熱パッケージ791の内部空間から除去するゲッター材728が設けられ、ゲッター材728には電熱材等のヒータが設けられ、このヒータには配線730が接続されている。配線730の両端部は燃焼器プレート624の周囲においてベースプレート28の下面に位置し、配線730の両端部にはそれぞれリード線737,738が接続されている。ゲッター材728は加熱されることで活性化して吸着作用をもつものであり、ゲッター材728の材料としてはジルコニウム、バリウム、チタニウム又はバナジウムを主成分とした合金が挙げられる。リード線737,738は、一部が断熱パッケージ791から露出されており、露出している部分から断熱パッケージ791内に外気が侵入して内圧が上がるような隙間が生じないように、リード線737,738は断熱パッケージ791のベースプレート793に金属、ガラス材又は絶縁封止材で接合されている。配線群739は、各リード線同士の間隔が均等となるよう離間していることが望ましく、液体燃料導入管622の周囲に配置されることが望ましい。
このようにプレート793を複数の通し孔795が貫通し、管材626,628,630,632,634、液体燃料導入管622及びリード線731〜738がそれぞれの通し孔795に挿通された状態でこれら貫通孔795が金属又はガラス材で封止されている。断熱パッケージ791の内部空間は密閉されているが、その内部空間が減圧とされているので、断熱効果が高いものとされている。そのため、熱損失を抑えることができる。
管材626,628,630,632,634及び液体燃料導入管622は断熱パッケージ791の内側にも外側にも突出した状態とされている。そのため、断熱パッケージ791の内側においては管材626,628,630,632,634及び液体燃料導入管622が支柱としてプレート793に対して立った状態とされ、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608が管材626,628,630,632,634及び液体燃料導入管622に支持されて、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608が断熱パッケージ791の内面から離れている。
また、液体燃料導入管622は、平面視して高温反応部604、低温反応部606及び連結部608全体の重心において低温反応部606の下面に連結していることが望ましい。
仮に液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739が高温反応部604に設けられている場合、高温反応部604は動作時に高温に保持する必要があるため、液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739まで高温になってしまい、液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739から断熱パッケージ200に伝熱して逃げる熱量が大きくなってしまうが、液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739は低温反応部606に設けられているので、液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739から断熱パッケージ791に伝熱して逃げる熱量が小さく、液体燃料導入管622、パイプ群602、配線群739において断熱パッケージ791の外部に露出している部分から放熱される熱量も少なくて済み、速やかに高温反応部604、低温反応部606を加熱でき、且つ加熱温度を安定して保持することが容易となる。
なお、ゲッター材728は低温反応部606の表面に設けられているが、ゲッター材728の設ける位置は断熱パッケージ791の内側であれば特に限定されない。
ここで、管材626,628,630,632,634の上端部は、フランジ状に形成されており、フランジ部分が低温反応部606の下面に当たるベース部662に固定されている。ベース部662は低温反応部6と同様に120℃〜200℃、さらに好ましくは140℃〜180℃に加熱され、断熱パッケージ200は80℃程度に加熱され、ベースプレート642と断熱パッケージ791とは数十℃の温度差が生じる。そのため、液体燃料導入管622を中心として周囲に正五角形状に設けられた管材626,628,630,632,634は、ベースプレート642との接続部分と、ベースプレート204との接触部分との間の部分、すなわち、断熱パッケージ791内に収容される部分に熱膨張による応力(例えば100MPa程度)がかかる。そして、この応力によって管材626,628,630,632,634には変形が生じるが、上述したように管材626,628,630,632,634は超弾性効果を有する材料により形成されているから、変形したとしても元の形状に戻り、折れ曲がることもない。液体燃料導入管622は、その管径が管材626,628,630,632,634の管径よりも長いために、応力に対する耐性が管材626,628,630,632,634よりもあるが、応力の歪みにより流体を漏洩しないように、管材626,628,630,632,634同様に超弾性材料により形成されていてもよい。同様にリード線731〜736も配線軸を超弾性材料によって形成されていてもよい。
次に、マイクロリアクタモジュール600の動作について説明する。
まず、リード線737,738の間に電圧が印加されると、ゲッター材728がヒーターによって加熱され、ゲッター材728が活性化される。これにより、断熱パッケージ791内のガス等の圧力を上げる要因がゲッター材728に吸着され、断熱パッケージ791内の減圧度が高まり、断熱効率が高まる。
また、リード線731,732の間に電圧が印加されると、電熱線720が発熱し、低温反応部606が加熱される。リード線733,734の間に電圧が印加されると、電熱線722が発熱し、高温反応部604が加熱される。リード線735,736の間に電圧が印加されると、電熱線724が発熱し、液体燃料導入管622の上部が加熱される。液体燃料導入管622、高温反応部604、低温反応部606及び連結部608が金属材料からなるため、これらの間で熱伝導しやすい。なお、電熱線720,722,724の電流・電圧が制御装置によって測定されることで、液体燃料導入管622、高温反応部604及び低温反応部606の温度が測定され、測定温度が制御装置にフィードバックされ、制御装置によって電熱線720,722,724の電圧が制御され、これにより液体燃料導入管622、高温反応部604及び低温反応部606の温度制御がなされる。
電熱線720,722,724によって液体燃料導入管622、高温反応部604及び低温反応部606が加熱された状態において、液体燃料導入管622に液体燃料と水の混合液がポンプ等によって連続的又は断続的に供給されると、混合液が吸液材623に吸収され、毛細管現象により混合液が液体燃料導入管622内の上に向かって浸透する。そして、吸液材623内の混合液が気化し、燃料と水の混合気が吸液材から蒸散する。吸液材623内にて混合液が気化するから、突沸を抑えることができ、安定して気化することができる。
そして、吸液材623から蒸散した混合気は貫通孔678、改質燃料供給流路702、導入口432を通って改質器400内に流れ込む。その後、混合気は改質器400内を流れている際には、混合気が加熱されて触媒反応することによって、水素ガス等が生成される(燃料がメタノールの場合には、上記化学反応式(1)、(2)を参照。)。
改質器400で生成された混合気(水素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス等を含む。)が排出口434及び連通流路704を通って混合室708へと流れ込む。一方、空気がポンプ等によって管材634に供給され、貫通孔675及び空気供給流路706を通って混合室708へ流れ込み、水素ガス等の混合気と空気が混合される。
そして、空気、水素ガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等を含む混合気が混合室708から導入口532を通って一酸化炭素除去器500内へ流れ込む。混合気が一酸化炭素除去器500内を流れている時に、混合気中の一酸化炭素ガスが選択的に酸化され、一酸化炭素ガスが除去される。
ここで、一酸化炭素ガスは一酸化炭素除去器500内で均一的に反応するのではなく、一酸化炭素除去器500内の流路のうち下流において一酸化炭素ガスの反応速度が高くなる。この下流の部分の下に液体燃料導入管622が位置するので、一酸化炭素ガスの酸化反応による熱が水と燃料の気化熱に効率よく用いられる。
そして、一酸化炭素が除去された状態の混合気が排出口534から排気室718、貫通孔671、管材626を経由して、燃料電池の燃料極等に供給される。燃料電池では水素ガスの電気化学反応により電気が生成され、未反応の水素ガス等を含むオフガスが燃料電池から排出される。
以上の動作は初期段階の動作であるが、その後も続けて混合液が液体燃料導入管622に供給される。そして、燃料電池から排出されたオフガスに空気が混合され、その混合気(以下、燃焼混合気という。)が管材632及び管材628に供給される。管材632に供給された燃焼混合気は貫通孔674、燃焼燃料供給流路716、貫通孔676を通って燃焼用流路625に流れ込み、燃焼混合気が燃焼用流路625において触媒燃焼する。これにより燃焼熱が発するが、燃焼用流路625が低温反応部606の下側において液体燃料導入管622を周回しているため、燃焼熱によって液体燃料導入管622が加熱されるとともに低温反応部606が加熱される。そのため、電熱線720,724の消費電力を小さくすることができ、エネルギーの利用効率が高まる。
一方、管材628に供給された燃焼混合気は貫通孔672、燃焼燃料供給流路710を通って燃焼室712へ流れ込み、燃焼混合気が燃焼室712において触媒燃焼する。これにより燃焼熱が発するが、燃焼熱によって改質器400が加熱される。そのため、電熱線722の消費電力を小さくすることができ、エネルギーの利用効率が高まる。
ここで、高温反応部604は低温反応部606よりも高温に保持しなければならないので、第二燃焼器614での単位時間あたりのオフガスの水素供給量を第一燃焼器612での単位時間あたりのオフガスの水素供給量より多くするか、第一燃焼器612での冷媒となる酸素(空気)の単位時間あたりの供給量を第二燃焼器614での酸素(空気)の単位時間あたりの供給量より多くするようにしてもよい。
なお、燃料容器に貯留されている液体燃料が気化されて、その気化した燃料と空気の燃焼混合気が管材628,632に供給されるようにしても良い。
混合液が液体燃料導入管622に供給された状態であって、燃焼混合気が管材628,632に供給された状態において、制御装置が電熱線720,722,724によって温度を測定しながら、電熱線720,722,724の印加電圧を制御するとともに、ポンプ等を制御する。制御装置によってポンプが制御されると、管材628,632に供給される燃焼混合気の流量が制御され、これにより燃焼器612,614の燃焼熱量が制御される。このように制御装置が電熱線720,722,724及びポンプを制御することによって、液体燃料導入管622、高温反応部604及び低温反応部606の温度制御がなされる。ここで、高温反応部604が375℃、低温反応部606が150℃となるよう、温度制御を行う。
このとき、絶縁プレート640の線膨張係数と、カップ体410,510、波形板420,520,540、セパレート板550、板材690、ベースプレート642等の反応容器の線膨張係数の差が大きいと、高温反応部604及び低温反応部606の温度上昇に伴い、両者の貼り合わせ部分に熱応力が作用し、線膨張係数が低い方へ反るなどの変形が生じるおそれがある。特に、絶縁プレート640には、熱源として電熱線720,722,724や燃焼器プレート624が直接設けられているので、高温になりやすく、熱応力が発生しやすい。
本実施の形態では、反応容器と、絶縁プレート640との線膨張係数が近似するように材料を選択している。
図13、図14はマイクロリアクタモジュール600を加熱したときの反応容器及び絶縁プレート640の形状変化を計算したモデル図である。なお、図13では本発明における反応容器にコバール(線膨張係数5.16×10-6/℃)、電気絶縁体にムライト(線膨張係数5.0×10-6/℃)を用いた場合、図14では比較例として反応容器にコバール(線膨張係数5.16×10-6)、電気絶縁体にアルミナ(Al2O3,線膨張係数6.9×10-6/℃)を用いた場合を示している。
コバールとアルミナの組み合わせでは、絶縁プレート640の線膨張係数が、絶縁プレート640が接している部位の反応容器、つまりベースプレート642の線膨張係数の約134%であり、反応容器よりも絶縁プレート640のほうが膨張するため、絶縁プレート640には、特に高温反応部604や連結部608において、約500MPaの応力が作用することとなり、マイクロリアクタモジュール600は図14に示すように、アルミナが膨張しすぎて反応容器側に反ってしまい、ベースプレート642から絶縁プレート640が剥離する恐れを生じてしまう。特に、マイクロリアクタモジュール600では、高温反応部604及び低温反応部606の2つの反応部を、所定の温度勾配を持たせるように相対的に小さい連結部608で連結しており、連結部608の幅が高温反応部604の幅及び低温反応部606の幅よりも狭く、連結部608の高さも高温反応部604及び低温反応部606の高さよりも低いために、連結部608は、十分な曲げ応力に対する剛性がなく、反りやすくなってしまう。
一方、本発明におけるコバールとムライトの組み合わせでは、絶縁プレート640の線膨張係数が、絶縁プレート640が接している部位の反応容器、つまりベースプレート642の線膨張係数の約97%であり、ほぼ等しいため、絶縁プレート640での熱膨張とベースプレート642での熱膨張が均等になり、これらの間で応力の差が発生しない。このため、図13に示すように、マイクロリアクタモジュール600には、変形がほとんど見られない。ベースプレート642等の反応容器を形成する金属材料の線膨張係数の70〜130%であれば、ある程度の反りを抑えることができ、好ましくは90〜110%とすることによってほぼ完全に反りを抑えることができる。
このように本実施の形態によれば、反応容器と、絶縁プレート640との線膨張係数が近似するように材料を選択することで、熱応力の発生を防ぎ、マイクロリアクタモジュール600の変形を防止することができる。
図15に示すように、以上のようなマイクロリアクタモジュール600は、発電ユニット801に組み付けて用いることができる。この発電ユニット801は、フレーム802と、フレーム802に対して着脱可能な燃料容器804と、流路、ポンプ、流量センサ及びバルブ等を有する流量制御ユニット806と、断熱パッケージ791に収容された状態のマイクロリアクタモジュール600と、燃料電池、加湿器及び回収器等を有する発電セル808と、エアポンプ810と、二次電池、DC−DCコンバータ及び外部インターフェース等を有する電源ユニット812とを具備する。流量制御ユニット806によって燃料容器804内の水と液体燃料の混合気がマイクロリアクタモジュール600に供給されることで、上述のように水素ガスが生成され、水素ガスが発電セル808の燃料電池に供給され、生成された電気が電源ユニット812の二次電池に蓄電される。
図16は、発電ユニット801を電源として用いた電子機器851の斜視図である。図16に示すように、この電子機器851は、携帯型の電子機器であって、特にノート型パーソナルコンピュータである。電子機器851は、CPU、RAM、ROM、その他の電子部品から構成された演算処理回路を内蔵するとともにキーボード852を備え付けた下筐体854と、液晶ディスプレイ856を備え付けた上筐体858と、を備える。下筐体854と上筐体858はヒンジ結合されており、上筐体858を下筐体854に重ねてキーボード852に液晶ディスプレイ856を相対させた状態で折り畳むことができるように構成されている。下筐体854の右側面から底面にかけて、発電ユニット801を装着するための装着部860が凹設され、装着部860に発電ユニット801を装着すると、発電ユニット801の電気によって電子機器851が動作する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の改良及び設計の変更をおこなっても良い。
例えば、上記実施形態においては、波形板420,520,540、セパレート板550、板材690、ベースプレート642等の反応容器を形成する金属材料としてコバールを用いたが、他の線膨張係数が近似する金属材料を用いてもよいし、複数種類の金属を用いてもよく、金属以外の材料であってもよい。