JP4586295B2 - ポリオルガノシロキサンの製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、末端に2個の水酸基を有する末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
反応性有機官能基を有するポリオルガノシロキサンは、合成樹脂にポリオルガノシロキサンの特性である耐候性、表面撥水性、潤滑性、耐熱性、ガス透過性等を化学結合により恒久的に付与する合成樹脂の改質剤として知られている。特に片末端の2個の水酸基を有するポリオルガノシロキサンはウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の各種合成樹脂の改質剤として有用である(例えば、ポリウレタン樹脂の改質への応用(特開平10−324730号公報)や、コーティング剤への応用(特開平10−324731号公報))。
【0003】
しかしながら、かかる合成樹脂の十分な改質効果を得るには分子量の大きいポリオルガノシロキサンを用いる必要があるが、特に分子量の大きいポリオルガノシロキサンを用いた場合に得られたシリコーン変性合成樹脂反応液の透明性が低下(すなわち、白濁、又は濁度が増大)することがあるという問題があった。この場合、得られる改質合成樹脂をコーティング用途等の十分な透明性が要求される用途には使用できず多様な用途展開への障害となっていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる従来技術に伴う問題点の原因を解明し、ひいては透明性を実質的に損なわない合成樹脂用改質剤としての片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンとその製造方法を提供し、さらにはかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを用いて実質的に透明性を損なわないシリコーン変性合成樹脂反応液の製造方法とそれにより得られる透明性に優れたシリコーン変性合成樹脂反応液を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは分子量の大きい片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを用いた場合に得られるシリコーン変性合成樹脂反応液の透明性が低下(すなわち、白濁、又は濁度が増大)する原因を鋭意究明した結果、改質剤として使用される片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンに含まれる不純物及びその存在量が大きく影響することを見出した。
【0006】
さらに、本発明者らは、かかる不純物が、通常の方法により片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを製造する際に、末端に2個の水酸基を導入するための原料として2個の水酸基を有する片末端不飽和化合物(即ち分子構造の片方の末端のみに不飽和結合を有し、更に水酸基2個を官能基として有する化合物)を使用するが、この2個の水酸基を有する片末端不飽和化合物(以下「片末端不飽和化合物」と略記することがある)に含まれる化合物であって、分子内に2個の不飽和結合を有する化合物を特定量以上存在する条件で片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの合成に使用して得られた片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを用いて合成樹脂を改質した場合その反応溶液の濁度が有意に増加(白濁)することを見出した。
【0007】
本発明者らは以上の知見に基づき、分子量の大きい片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを用いた場合であっても、その片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンが不純物として水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物を特定量以下のみ含むものである場合には、それにより改質された合成樹脂の溶液の透明性は実質的に損なわれない(すなわち、白濁せず、または濁度が改質剤により実質的に変化しない)ことを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、透明性を実質的に損なわない合成樹脂用改質剤である片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンにかかるものであり、不純物として水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物を一定の量以下にしたことを特徴とする。さらに本発明には、かかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを使用して合成樹脂の透明性を損なうことなく改質することを特徴とするシリコーン変性合成樹脂反応液の製造方法と、それにより得られる透明性に優れたシリコーン変性合成樹脂反応液を含むものである。
【0009】
また、さらに本発明は、不純物として水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物を一定の量以下にしたことを特徴とする本発明にかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの新規な製造方法にかかるものである。
【0010】
本発明にかかる製造方法は、より詳しくは末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンと2個の水酸基を有する片末端不飽和化合物とから、片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを製造する方法において、前記片末端不飽和化合物が少なくとも95重量%以上の純度を有するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる製造方法は、前記末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンが、式(1)
【化3】
(式中、R1〜R9はそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であるが、R1、R5およびR7はそれぞれ独立して水素であってもよく、nおよびmはそれぞれ独立して0または3以上であるが、n+mは15以上である)で表わされるポリオルガノシロキサンであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる製造方法は、前記片末端不飽和化合物が、式(2)
【化4】
(式中、R10は水素、メチルまたはエチルであり、kは0または1である)で表わされる化合物であることを特徴とする。
【0013】
さらには、本発明にかかる製造方法は、前記片末端不飽和化合物が98重量%以上の純度を有することを特徴とする。
また、本発明にかかる製造方法は、前記末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算数平均分子量が2000以上であり、前記片末端不飽和化合物が99.5重量%以上の純度を有することを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施の形態に即して詳細に説明する。
片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサン
本発明にかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンはその分子の片末端に2個の水酸基を有するジヒドロキシポリオルガノシロキサンの構造を有するものであり、さらには不純物として水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物を一定の量以下のみにしたことを特徴とする。ここで、前記不純物とは、改質条件下で改質されるべき合成樹脂の構成成分としてではなく単にポリオルガノシロキサンとして存在し、樹脂成分との十分な相溶性がない場合には白濁させるものを意味する。従って、かかる不純物の種類(構造)は片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの合成方法に依存する。また、かかる不純物は低分子の場合には比較的樹脂成分との相溶性があるためにそれほど透明性を損なうことはないが、改質に好ましい大きい分子量を有する場合には一定の量以下にする必要がある。
【0015】
また、本発明にかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを用いて合成樹脂を改質した場合には、上で説明した不純物が影響を与えることなく合成樹脂の透明性を損なうことなく改質することができる。また、それにより透明性に優れたシリコーン変性合成樹脂反応液を得ることができる。例えば改質剤を入れない樹脂半応液の濁度と改質剤を入れた樹脂反応液の濁度を比較することが可能であるが、本発明の片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンによる改質では実質的に変化が見られない。
【0016】
また、さらに本発明は、不純物として水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物を一定の量以下にしたことを特徴とする本発明にかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの新規な製造方法にかかるものである。
【0017】
片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの製造方法
本発明にかかる片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの製造方法は具体的には末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンと片末端不飽和化合物とからのヒドロシリル化反応によるものが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法で用いることのできる末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンとしては、式(1)で示されるものが好ましい。
【化5】
【0019】
そして、この式中のR1〜R9はそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、炭素数5〜8の脂環式基、または炭素数6〜10の芳香族基であり、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などを挙げることができ、脂環式基としてはシクロペンチル基やシクロヘキシル基など、また芳香族基としてはフェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ベンジル基およびフェネチル基などを挙げることができる。
【0020】
これらの基のうち、R1はメチル基またはブチル基、R2〜R9はそれぞれ独立してメチル基またはフェニル基であることが好ましく、またR1、R5およびR7はそれぞれ個別に水素であってもよい。そして、nおよびmはそれぞれ独立して0または3以上であるが、n+mは15以上、好ましくは24以上である。なお、本発明の原料として用いる末端にSi−H基を有するポリオルガノシロキサンについて、その分子量範囲を限定する理由は特にないが、合成樹脂に対する改質効果を考慮すると、目的とする末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの分子量は、ポリスチレン換算数平均分子量で1,200以上であることが好ましい。そして、本発明の製造方法は、この分子量が2,000以上のものを製造する場合に特に効果的である。
【0021】
本発明で用いる2個の水酸基を有する片末端不飽和化合物としては、例えば、式(2)で示されるものが挙げられる。
【化6】
式中、R10は水素、メチルまたはエチルであり、kは0または1である。
そして、式(2)の化合物に該当する化合物として、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、グリセロールα−モノアリルエーテルなどが挙げられ、これらは一般に入手できる。
【0022】
具体的には、末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンは、式(1)のポリオルガノシロキサンと式(2)の片末端不飽和化合物とから、ヒドロシリル化反応によって、下記反応式のように製造される。
【化7】
式中のR1〜R10、n、mおよびkは、前記と同じ意味である。
【0023】
ヒドロシリル化反応に用いる触媒としては、一般に使用される遷移金属触媒を挙げることができる。具体的には、白金、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、モリブデン、マンガンなどの金属化合物を例示することができるが、これらの触媒は、溶媒に溶解するいわゆる均一系触媒や、カーボン、シリカなどに担持させた担持触媒、ホスフィンやアミン、酢酸カリウムなどを助触媒とした触媒のいずれの形態でも使用することができる。
【0024】
上記のヒドロシリル化反応においては、必ずしも溶媒を必要としないが、反応を阻害するものでなければ、必要に応じて適当な溶媒を使用してもよい。具体的にはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエ−テル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒などを例示することができる。これらの溶媒は単独またはいくつかを組み合わせて使用することもできる。また、反応温度は特に限定されないが、通常は反応溶媒の沸点以下で行われる。反応溶媒を使用しない場合は0〜250℃で反応することができるが、経済性などを考慮すると20〜120℃で行なうことが好ましい。
【0025】
本発明において用いる式(2)の片末端不飽和化合物は、前述のように、3個の水酸基を有する化合物の1個の水酸基を、1個の不飽和結合を有するアルコールまたはハロゲン化物でエーテル化することによって得られる。従って、式(2)の化合物には、式(3)で示される、水酸基を1個しか持たずかつ2個の不飽和結合を有する化合物が不純物として相当量含まれる。本発明においてはこの式(3)で示される不純物たる化合物を所定の量以下に減らす必要がある。
【化8】
式中のR10およびkは、前記と同じ意味である。
【0026】
すなわちこの式(3)で示される化合物は、末端SiH基含有ポリオルガノシロキサンとヒドロシリル化反応しても、1個の水酸基しか持たないポリオルガノシロキサンになるため、合成樹脂の改質剤として有効に反応せず、その樹脂に対する相溶性の乏しい不純物として含まれることになると考えられる。
【0027】
末端SiH基含有ポリオルガノシロキサンとのヒドロシリル化反応によって、式(3)で示される化合物から得られる1個の水酸基しか持たないポリオルガノシロキサンは、原料である末端SiH基含有ポリオルガノシロキサンに比べてほぼ2倍の分子量を有することになるが、ポリオルガノシロキサンの他の合成樹脂との相溶性は、分子量の増大と共に悪くなる。従って、式(2)の片末端不飽和化合物として、この式(3)で示される不純物の含有量が少ないものを用いることが、高品質の末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを得るために肝要である。そして、このポリオルガノシロキサンを合成樹脂の改質剤として用いれば、上記の1個の水酸基しか持たないポリオルガノシロキサンの生成が少ないため、得られる合成樹脂溶液の白濁を防止できることになる。そして、式(3)で示される不純物の含有量は、末端SiH基含有ポリオルガノシロキサンの分子量によって許容量が変わり、この分子量がポリスチレン換算の数平均分子量で2000以上である場合には0.5重量%以下であることが好ましく、0.2%以下であることが更に好ましい。しかしながら、前記分子量が2000未満である場合には、その分子量次第では、この不純物含量が1重量%を越え5重量%未満の範囲の前記片末端不飽和化合物であれば、白濁の問題を起こすことなく使用できることがある。
【0028】
前記不純物を減少させる方法、すなわち式(3)の不純物を含む式(2)の片末端不飽和化合物の精製は、蒸留、カラム分離、または液液抽出などの方法で行うことができる。これらの方法のうち、液液抽出で行うのが最も好ましい。そして、この液液抽出に用いる溶剤としては、任意のものが使用できる。具体的にはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエ−テル類、塩化メチレン、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類、および水などを例示することができる。これらの中から、式(2)の片末端不飽和化合物および式(3)で示される不純物とそれぞれ極性が近いものを選んで用いることが好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類とエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類を組み合わせて用いることが好ましい。
【0029】
式(3)の不純物を含む式(2)の片末端不飽和化合物に、上記の芳香族炭化水素系溶剤とグリコール系溶剤とを加えよく振盪してから静置すると、芳香族炭化水素溶媒層とグリコール溶媒層とに2層分離する。式(3)の不純物は芳香族炭化水素溶剤に溶解するため、このグリコール溶媒層を分取することにより、式(2)の化合物から式(3)の不純物を除くことができる。グリコール溶媒層を分取した後、芳香族炭化水素溶剤を再び加え、同様の操作を繰り返すことにより、式(3)の不純物の含有量をさらに減少させることができる。その後、分取したグリコール溶媒層から、蒸留などにより溶媒を除くことにより、精製された式(2)の化合物を得ることができる。
【0030】
グリコール系溶剤は一般に沸点が高く、水酸基を2個もつなど分子構造も類似しているため、蒸留によって溶媒のみを留去することは通常困難であることが多い。しかしながら、分取したグリコール溶媒層から、今度は水を用いてさらに液−液抽出することにより、式(2)の化合物とグリコール溶媒とを分離することができる。即ち、分取したグリコール溶媒層に水を加えて振盪してから静置すると、有機層と水層に2層分離する。グリコール溶媒は水層に移り、式(2)の化合物および残存する芳香族炭化水素溶媒は有機層に残るため、精製した一般式(2)で示される化合物からグリコール溶媒を除くことができる。その後は残存する芳香族炭化水素溶媒を留去すればよい。
【0031】
また、式(2)の化合物は、カラムによる分離操作によって精製することもできる。カラムの充填剤としては、一般にカラム分離に使用される充填剤を任意に用いることができるが、シリカゲルが好ましい。分離に使用する溶剤も任意のものを使用することができる。具体的には、液−液抽出法の説明中で挙げた溶剤からグリコール系溶剤を除いた例を挙げることができ、これらの2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
なお、式(2)の化合物の精製を蒸留によって行うことも可能である。式(2)の化合物および不純物である式(3)の化合物ともに沸点が高く、また重合性のアリル基をもっているため、蒸留による精製は、減圧下で任意の重合禁止剤の存在下に行うことが好ましい。
【0033】
以上のようにして、式(2)の片末端不飽和化合物中の式(3)の化合物の含有量を減少させることにより、この精製された式(2)の片末端不飽和化合物を用いて得られる高純度の末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンは、従来のものと比較して、溶液にしたとき透明な改質ウレタン樹脂を製造することができる。改質ウレタン樹脂は、上記のポリオルガノシロキサン、水酸基を含有する化合物およびイソシアナート基を含有する化合物を用い、公知の方法で製造することができる。製造に際して、公知の触媒を任意に用いてもよい。この高純度の末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンは、ポリエステルなどの他の合成樹脂の改質にも用いることができる。この場合にも、他の合成樹脂との相溶性の乏しい、式(3)の化合物に由来する前記のポリオルガノシロキサンの含有量が少ないので、ウレタン樹脂の改質の場合と同様に、その溶液の透明性に問題がない改質樹脂を得ることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中で行った分析の条件は次の通りである。
1.ガスクロマトグラフィー(GC)
カラム充填剤:XE−60(ジーエル・サイエンス(株)製) 10%
カラム長さ:3m
カラム温度:60〜250℃、昇温速度10℃/min
注入口温度:200℃
検出器温度:250℃
検出器:TCD
キャリアガス:ヘリウム
2.ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
カラム:Shodex KF−804L(昭和電工(株)製)×2
カラム温度:40℃
検出器:RI
移動相:トルエン
3.H当量
ポリオルガノシロキサン中のSi−H基含有量を、アルカリ分解によって発生する水素ガスの量を測定することによって求めた。Si−H基1モルあたりのg数をH当量とする。
4.水酸基当量
一定量の無水酢酸を用いてアセチル化反応を行い、過剰の無水酢酸を定量する方法で測定した。単位は、水酸基1モルあたりのg数である。
5.濁度
日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定し、結果をカオリン濁度に換算した。
【0035】
〔実施例1〕
GC分析による面積比で0.6%のトリメチロールプロパンジアリルエーテルを不純物として含む、トリメチロールプロパンモノアリルエーテルの未精製品20gを分液フラスコにいれ、これにトルエン20gとエチレングリコール20gを加えてよく振盪した。10分間静置後、分離したエチレングリコール層53gを分取した。これにさらにトルエン10gを加えてよく振盪し、10分間静置後エチレングリコール層49gを分取した。この操作をさらに3回繰り返した。分取したエチレングリコール層40gのGC分析を行い、トリメチロールプロパンジアリルエーテルのピークがほとんど消失したのを確認した。分取したエチレングリコール層40gに水20g、トルエン10gを加えて振盪し、一夜静置後トルエン層を分取した。これにさらに水10gを加えて振盪し、10分間静置後トルエン層28gを分取した。分取したトルエン層28gのGC分析を行い、エチレングリコールが含まれていないことを確認した。分取したトルエン層28gからエバポレーターでトルエンを留去し、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル精製品を得た。GC分析の結果、不純物のトリメチロールプロパンジアリルエーテルは面積比で0.1%であった。
【0036】
〔実施例2〕
冷却管、温度計保護管、サンプリング管を取り付け、中に磁気攪拌子を入れた4口フラスコ内に、実施例1で得られたトリメチロールプロパンモノアリルエーテル精製品3.6g、ポリスチレン換算数平均分子量6450、H当量4820の片末端SiHポリジメチルシロキサン50gを入れた。内容物を攪拌しながら液温を70℃に昇温し、白金触媒4μlを入れた。発熱を確認後、そのまま70℃で2時間加熱攪拌を行った。反応液をサンプリングしてIR分析を行い、2130cm-1のSiHの吸収の消失を確認後、反応を停止した。エバポレーターで過剰のトリメチロールプロパンモノアリルエーテルを留去し、残さを減圧濾過することにより50.5gの無色透明の液体を得た。この生成物の水酸基当量は2470であり、またGPCによる分析の結果、この生成物のポリスチレン換算の数平均分子量は5920であった。この結果から、得られた生成物は、末端のSiH基が2個の水酸基を有する官能基に変換された、片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンであることが確認された。
【0037】
〔比較例1〕
実施例1で使用したトリメチロールプロパンモノアリルエーテルの未精製品をそのまま用いた他は、実施例2と同様に反応を行い、50.5gの無色透明の液体を得た。この生成物の水酸基当量は2470であり、またGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は5950、分散度(Mw/Mn)は1.07であった。これらのデータから、実施例2と同様に、末端のSiH基が2個の水酸基に変換された、片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンが得られたことが確認された。
【0038】
〔実施例3〕
冷却管、温度計保護管、サンプリング管、攪拌装置を取り付けた4口フラスコ内に、実施例2で得られた片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、分子量1000のポリテトラメチレングリコール、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、およびジオキサンを入れた。窒素置換後、内温を80℃に昇温し、2時間加熱攪拌を行った。1,4−ブタンジオール、DBUをフラスコ内に入れ、そのまま80℃に昇温し、2時間加熱攪拌を行った。冷却後、得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0039】
〔比較例2〕
片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとして、比較例1で得られたポリジメチルシロキサンを用いた他は、実施例3と同様に反応を行った。得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0040】
〔実施例4〕
実施例2で得られた片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンの仕込み量を変えた他は、実施例3と同様に反応を行った。得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0041】
〔比較例3〕
片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとして、比較例1で得られたポリジメチルシロキサンを用いた他は、実施例4と同様に反応を行った。得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0042】
〔実施例5〕
冷却管、温度計保護管、サンプリング管を取り付け、中に磁気攪拌子を入れた4口フラスコ内に、実施例1で得られたトリメチロールプロパンモノアリルエーテル精製品2.4g、ポリスチレン換算数平均分子量16400、H当量14800の片末端SiHのポリジメチルシロキサン100g、およびトルエン50gを入れた。内容物を攪拌しながら液温を70℃に昇温し、白金触媒12μlを入れた。発熱を確認後、そのまま70℃で2時間加熱攪拌を行った。反応液をサンプリングしてIR分析を行い、2130cm-1のSiHの吸収の消失を確認後、反応を停止した。反応液を冷却後、メタノール75gを入れて未反応のトリメチロールプロパンモノアリルエーテルを抽出した。エバポレーターでトルエン層から溶媒と揮発分を減圧留去し、残さを減圧濾過することにより98.5gの無色透明の液体を得た。この生成物の水酸基当量は7400であり、またGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)は16000、分散度(Mw/Mn)は1.04であった。これらのデータから、得られた生成物は末端のSiH基が2個の水酸基に変換された、片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンであることが確認された。
【0043】
〔実施例6〕
片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンとして、実施例5で得られたポリジメチルシロキサンを用い、仕込み量を変えた他は、実施例3と同様に反応を行った。得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0044】
〔参考例〕
片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンを用いない他は、実施例3と同様に反応を行った。得られたウレタン樹脂反応液の濁度を濁度計にて測定した。各物質の仕込み量およびウレタン樹脂反応液の濁度を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示す通り、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル精製品を用いて合成した片末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンは、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル未精製品を用いて合成したものと比較して、ウレタン樹脂合成時のウレタン樹脂反応液の濁度が小さく、1以下と透明であり、参考例のポリジメチルシロキサンを用いない場合のウレタン樹脂反応液の濁度と差が無い。即ち、ウレタン樹脂の改質に用いた片末端ジヒドロキシポリジメチルシロキサンの原料である、2個の水酸基を有する片末端不飽和化合物を精製した効果が明らかである。
【0047】
【発明の効果】
原料である2個の水酸基と1個の不飽和結合を末端にもつ化合物を精製することにより、これから得られた末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンを、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の各種合成樹脂の改質剤として使用した時、改質樹脂溶液が白濁することがなくなった。本発明により、ポリオルガノシロキサンによる改質合成樹脂の、多様な用途展開が可能となる。
Claims (3)
- 式(1)
ポリスチレン換算数平均分子量が2000以上である前記末端にSiH基を有するポリオルガノシロキサンおよび式(3)
- 不純物の含有量を液液抽出により0.5重量%以下に減少させた片末端不飽和化合物を用いることを特徴とする、請求項1に記載の末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの製造方法。
- 液液抽出が、ベンゼン、トルエンまたはキシレンから選択される芳香族炭化水素と、エチレングリコールまたはプロピレングリコールから選択されるグリコールを組み合わせて行われることを特徴とする、請求項2に記載の末端ジヒドロキシポリオルガノシロキサンの製造方法。
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