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JP4584343B1 - ストレッチ性に優れた起毛編地 - Google Patents

ストレッチ性に優れた起毛編地 Download PDF

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JP4584343B1 JP2009135723A JP2009135723A JP4584343B1 JP 4584343 B1 JP4584343 B1 JP 4584343B1 JP 2009135723 A JP2009135723 A JP 2009135723A JP 2009135723 A JP2009135723 A JP 2009135723A JP 4584343 B1 JP4584343 B1 JP 4584343B1
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Abstract

【課題】
弾性糸を用いた編地であっても、その弾性糸を切ることなく強く起毛することで高い保温性とストレッチ性を両立するとともに、複数素材を用いても均一な染色品位を維持できる衣料用編地を提供する。
【解決手段】
両面編組織の衣料用編地であって、一方の面に非弾性糸が起毛され、他方の面に弾性糸が配置されていることを特徴とする。本発明の衣料用編地では、一方の面に非弾性糸が針布起毛され、他方の面に染色加工された弾性糸が完全リバーシブルでプレーティングされている。また、弾性糸としてポリウレタン繊維を使用し、非弾性糸としてアクリル繊維及び/又はセルロース系繊維を使用する。
【選択図】図1

Description

本発明は、保温性、ストレッチ性に優れた衣料用起毛編地に関するものである。
これまで秋冬に着用する衣料用編地においては保温性を高める検討が数多くされている。例えば、編地の厚みや編組織(裏毛、パイル)を検討したもの、中空繊維を用いたもの、染色加工後の糸収縮を応用したもの等があるが、いずれも編地に空気層を持たせて保温性を得るものである。その中でも、編地表面を起毛し毛羽立たせることで高い保温性を得ることは良く知られている。
肌面を起毛して保温性を高める方法としては、例えば、表糸、裏糸および上記の表糸に添え糸されて表糸と裏糸とを接結する接結糸からなる裏毛編地を製造する方法において、上記の接結糸および表糸として少なくとも一方が精紡交撚糸で、撚係数が2.0〜3.0、かつ撚方向が同じ紡績単糸を用い、上記の接結糸および表糸の撚方向と同じ方向に回転する給糸本数60以上の丸編機で編成し、次いで常法により染色、起毛、仕上げ加工を施すことを特徴とする方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法を採用すると、裏毛組織により保温性は高くなるが、弾性繊維が含まれていないため、ストレッチ性が不十分なものになる。
ストレッチ性を高めるために弾性繊維を含ませた例としては、地糸に非熱可塑性弾性糸を配置し、地糸及び/又は立毛糸に低融点熱可塑性繊維と高融点熱可塑性繊維を配置した伸縮性起毛布帛がある(特許文献2参照)。この方法を採用すると、ストレッチ性は向上するが、弾性糸を切らずに強く起毛することは難しい。
また、非弾性糸で弾性糸の周囲をカバーした被覆弾性糸を用いて起毛時に弾性糸を保護する方法が提案されている(特許文献3参照)。この方法では、ポリエステルフィラメントAがポリウレタン弾性糸の周囲を被覆してなる被覆弾性糸とポリエステルフィラメントBとが編み地の結節点を共有して編成され、フィラメントB及びフィラメントAの両方のフィラメントが起毛されており、かつフィラメントBの単繊維繊度b(デニール)とフィラメントAの単繊維繊度a(デニール)との比(a/b)が2以上であることを特徴とする。この方法を採用すると、弾性糸が非弾性糸で覆われているとはいえ起毛面に弾性糸があることから、弾性糸を全く切らずに針布起毛のように強い起毛をすることは難しい。また、被覆弾性糸を使用すると、均一に染色加工するために多種類の染料が必要になり、色合わせの困難性や染色工程の複雑さを生じ、染料汚染等による染色堅牢度の低下も懸念される。さらに、被覆弾性糸はそれ自体高価であり、被覆していても中の弾性糸が目立って外観品位を損なうことがある。
特開平10−46452号公報 特開2003−129356号公報 特開平10−259552号公報
本発明は、上記ストレッチ性を有する起毛編地に関する問題に鑑み創案されたものであり、その目的は、弾性糸を用いた編地であっても、その弾性糸を切ることなく強く起毛することで高い保温性とストレッチ性を両立するとともに、複数素材を用いても均一な染色品位を維持できる衣料用編地を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、起毛しない面だけに弾性糸をそのままドラフトしながらプレーティングすることによって表から弾性糸が見えないように編成することができ、しかも強く起毛しても弾性糸を切らずに編成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明は、両面編組織の衣料用編地であって、一方の面に非弾性糸が起毛され、他方の面では、非弾性糸でポリウレタン系弾性糸を覆うように完全リバーシブルでプレーティングされていることを特徴とする衣料用編地である。
本発明の衣料用編地の好ましい態様は以下の通りである。
(i)一方の面に非弾性糸が針布起毛され、他方の面に染色加工されたポリウレタン系弾性糸が完全リバーシブルでプレーティングされている。
(ii)起毛されていない面を構成する組織の24%以上にポリウレタン系弾性糸がプレーティングされている。
(iii)非弾性糸としてアクリル繊維及びセルロース系繊維を使用しており、起毛していない面にポリウレタン系弾性糸が生糸の状態で完全リバーシブルでプレーティングされている。
(iv)(iii)の場合、0.3〜0.7dtexのアクリル短繊維が30〜70重量%含まれている。
(v)(iii)または(iv)の場合、水分率12〜30%の吸湿性繊維が10〜30重量%含まれている。
(vi)編地の保温率が19%以上であり、ウェル方向の伸長応力が100cN以上であり、ウェル方向の伸長回復率が85%以上である。
本発明の編地は、一方の面の非弾性糸を起毛し、他方の起毛しない面のみに弾性糸を配置しているので、針布起毛のように強く起毛しても弾性糸を切ることがない。従って、弾性糸のストレッチ性を低下させないとともに、切った糸端が表面に露出したり穴あきを生じたりして外観品位を低下することがない。また、本発明の編地は、起毛しない面に弾性糸を完全リバーシブルでプレーティングしているので、弾性糸が表に見えることはなく、染色加工された弾性糸を使用しても均一できれいな外観を保持することができる。さらに、本発明の編地は、被覆弾性糸を使用しないため、コストが低いとともに染色加工に伴う煩わしさが少ない。
本発明の編地構造のモデルを示す。 本発明の編組織の一例を示す。 本発明の編組織の一例を示す。 完全リバーシブルの説明図である。 完全リバーシブルの説明図である。 完全リバーシブルの説明図である。 実施例で用いた編組織を示す。 実施例で用いた編組織を示す。
本発明の衣料用編地は、両面編組織であり、一方の面に非弾性糸が起毛され、他方の面にポリウレタン系弾性糸が配置されていることを特徴とする。
本発明の編地に使用される弾性糸は、ポリウレタン系弾性糸である。ポリウレタン系弾性糸としては、ポリマー骨格にウレタン結合を含み、ストレッチ性に富む合成糸が挙げられ、ポリマー骨格はポリエーテル系、ポリエステル系のいずれであっても良い。また、ポリウレタン系弾性糸は、例えば乾式紡糸又は溶融紡糸により製造されるが、ポリマーの種類や紡糸方法は特に限定されない。
本発明の編地に使用される非弾性糸としては、弾性糸以外であれば特に限定されるものではなく、綿やシルク、ウールなどの天然繊維や、アクリル、レーヨン、ポリエステル、ナイロンなどの化学繊維等を適宜用いることができる。本発明の編地において保温性と吸湿性を高めるためには、保温性の高い繊維と、吸湿性の高い繊維が共に混用されていることが好適である。
保温性の高い繊維とは熱伝導率の低い繊維である。例えばアクリル繊維、アクリレート繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、羊毛等が挙げられるが、衣料用として染色性に優れる点からアクリル繊維が好適である。なお、アクリル繊維は単一繊度のものを用いるだけでなく、極細繊維と通常繊度の異繊度アクリル繊維同士が混用されることで高い保温性を得ることができる。
吸湿性の高い繊維とは標準状態で水分率が7%以上の繊維であり、例えば、綿やレーヨンのようなセルロース系繊維である。なかでもレーヨンは繊維長、繊維太さが揃っており、アクリル繊維と混紡したときに微細な繊維間空隙を保持しやすいので好適である。更に吸湿快適性を得るためには標準状態で水分率12〜30%の高吸湿性繊維を用いることが好ましい。このような高吸湿性繊維としては、羊毛や、ニトリル基の一部をカルボキシル基に置換して吸湿性を高めたアクリレート繊維(例えば日本エクスラン工業(株)製エクス(登録商標))や、レーヨンにアクリル酸やメタクリル酸のモノマーをグラフト重合した改質レーヨン(日本蚕毛(株)ファインW加工(登録商標)わた)等を挙げることができる。構成された編地としての吸湿率は3%以上であることが好ましい。3%未満であると高湿環境では衣服内が蒸れてしまい不快になってしまう。より好ましくは7%以上であり、これにより一般的な綿100%製品並みの吸湿性を得ることができる。
本発明の編地は、保温性の高い素材と、吸湿性の高い素材の複数素材を混用することができるが、複数種類の素材を混用するとそれだけ複数の染料種を使用することが必要である。しかし、現在の染色技術では、均一で綺麗な染め品位を再現よく得るために使える染料は2種類程度が限界であり、3種類以上の染料種を用いると、染料種同士の色合わせが非常に難しくなり、綺麗な染め品位を得ることや再現良く染めることが困難である。本発明の編地では、弾性糸を他の繊維で保護せず(被覆弾性糸を使用せず)、ベア(生糸)の状態で編地に完全プレーティングしているため、弾性糸や保護する繊維を染める必要がなく、例えば保温性の高い繊維と吸湿性の高い繊維の2素材のみを染めればよい。従って、本発明の編地は、複数素材を混用した場合であっても上述の染料技術の現状に従って2染料種のみで均一に染色することができる。このような2素材を2染料種で染める組合せ例として代表例を挙げると、アクリル/ウールの組合せの場合なら、アクリルをカチオン染料で染め、ウールを酸性染料で染めて2染料種で染色する。また、アクリル/レーヨンの組み合わせなら、アクリルはカチオン染料で染め、レーヨンを反応染料で染めるような組合せ等である。なお、素材の組合せや染料の組合せはこの例示に限定されない。本発明では、保温性及び/又は吸湿性を高度に満足させるためにアクリル繊維及び/又はセルロース系繊維で構成された糸を使用することが好ましい。
保温性の高い繊維としてアクリル繊維を用いる場合の単糸繊度は0.3〜2.0dtexが好適である。アクリル繊維は、0.3〜0.7dtexの極細繊維と0.8〜2.0dtexの通常繊度繊維の2種類からなることが好ましい。極細繊維と通常繊度繊維の単糸繊度はそれぞれ0.4〜0.6dtex,0.8〜1.3dtexであることが好ましい。また、両繊維の繊度差は0.4dtex以上であることが好ましい。極細繊維は上記単糸繊度未満であると、染色したときの色濃度が極端に低下して、混紡糸の均一な染色性が得られにくくなり、上記単糸繊度を越えると、繊度差が低くなり、繊維間空隙が低下して保温性が上がらない。通常繊度繊維は上記単糸繊度未満であると、極細繊維との繊度差が低くなり、繊維間の微細空隙が得られにくくなり、上記単糸繊度を越えると、編地が硬くなったりチクチクした風合になりやすい。吸湿性の高い繊維としてセルロース系繊維を用いる場合の単糸繊度は0.8〜2.0dtexが好適であり、0.8〜1.3dtexがより好適である。セルロース系繊維は上記単糸繊度未満であると、アクリル極細繊維との繊度差が少なくなり保温性が低下し、上記単糸繊度を越えると、細番手糸を紡出するのが難しくなるとともに風合いが硬くなる傾向がある。
本発明の編地に用いる弾性糸の繊度は10〜85dtexであることが好ましい。この範囲にあると、衣料用に適した伸縮力が得られる。より好ましくは、繊度は20〜45dtexである。繊度が上記範囲より低いと、編地に十分な伸縮力を与えることが難しくなり、上記範囲を越えると、プレーティングした編目が反転しやすく、染色後にイラツキが出て外観品位を損ないやすい。
本発明の編地は、弾性糸を起毛で切らないために両面編組織にすることが必要である。両面編組織とは、編地の表裏それぞれにループが形成される組織であり、シングル編組織ではループは一面にしか形成できず、例えば本発明のようにプレーティングをしたとしても起毛面に弾性糸が現れて切れてしまう。ダブルニット機で製編される両面編組織であれば、弾性糸を起毛面と逆の面に配置することができるため好適である。
次に本発明の完全リバーシブルでプレーティングした両面編組織の編地構造の概念を説明する。
本発明の編地構造のモデルを図1に示す。図1の組織では、起毛する面には弾性糸が配置されておらず、他方の面に弾性糸が生地表面には現れないように配置されている。このような組織の例を図2、図3に示す。図2では、フライスのように一本の糸が表裏面両方を形成する編み方で、片面のみに弾性糸が完全リバーシブルとなっている。図3では、まずF1がフライス目を製編して、次にF2が弾性糸をプレーティングしながら片面だけ天竺目を製編している。なお、上記に示した方法や組織図は例示にすぎず、これに限定されるものではない。
また、弾性糸は編地中では完全リバーシブルで配置され、生地表面に現れないようにすることが必要である。完全リバーシブルにならないと、弾性糸が生地表面にチラチラ見えたり、弾性糸と非弾性糸との色差が目立って外観品位が悪くなる。完全リバーシブルとは2種類の糸を同時に編みこみ、一方の糸で他方の糸を覆う編み方をいうが、これを図4,5,6を用いて詳しく説明する。図4はプレーティングして完全リバーシブルになった編みループの状態を表しているが、糸Aが編地の表面に、糸Bが糸Aで覆われるように編まれている。図5は編機で糸Aと糸Bがプレーティングしながら編んでいる状態である。図6は編針が糸を把持して編込まれる瞬間の、編針中の糸A、糸Bの相対的な配置を示している。完全リバーシブルにするために編み条件として重要なことは、図6のように編針中で糸A,Bの配置になって編込まれるように制御することである。このための編み条件としては、図6の糸A・Bの配置になるように、糸Aと糸Bを別々に糸の挿入位置(角度)を調整することである。また、給糸Aのテンションを弱く、給糸Bのテンションを強く掛かるように設定する。このように糸の挿入位置や給糸テンションをうまくコントロールすることで完全リバーシブルを実現することができる。
本発明の編地では、十分なストレッチ性を得るために、起毛されていない面を構成する組織の24〜100%に弾性糸がプレーティングされていることが好ましい。ここで起毛されていない面を構成する組織の24%とは、起毛されていない面を形成する組織の全ループ数に対して、弾性糸が非弾性糸と一緒に編込まれている(プレーティングしている)ループ数が24%あることをいう。例えば、図3の編地では、弾性糸がプレーティングされていないF1が編まれた後に、弾性糸がプレーティングされているF2が編まれて、F1,F2が1:1で交互に繰り返しされた構成になるため50%となる。この比率が24%未満になると、十分なストレッチ応力や回復性が得られず、できあがった編地の寸法安定性も低下しやすい。
本発明の編地の染色加工は、通常の弾性糸を混用したストレッチ編地の加工方法を採用することができる。ストレッチ編物の一般的な工程としては、例えば、精練前処理−精練−染色−仕上・セットの順番で加工が行われる。ここで精練前処理は途中工程で編地に加工シワを発生させないために重要である。例えば生機を乾熱で熱セットを行ったり、拡布で液熱処理することで防止できる。弾性糸に熱セット性が高いポリエステル系ポリウレタン繊維を用いた場合、温度160〜180℃で生機セットすることでカールを防止できるのでより好ましい。また、本発明では、仕上がり編地で伸長率100%以上、伸長回復率85%以上になるように加工中の機械張力や設定条件を調整するべきであり、強い張力がかからないよう注意する。次いで、編地を構成する繊維素材に応じて適切な染料種で染色する。また、精練や染色等の後に液温を下げる時に急速に行うとアクリルがへたるため降温はゆっくり行うようにする。本発明の編地に柔軟剤や帯電防止剤のような一般的な仕上げ加工を付与してもよいし、その他の各種機能加工を単独または併用して施してもよい。機能加工の例としては、親水加工などの防汚加工、UVカット加工、制電加工、スキンケア加工などがあるが、これに限定されるものではない。
本発明の編地での起毛は、針や紙ヤスリのような突起等によって、単繊維を引き出したりあるいはカットすることで、毛羽立たせる加工を示すものであって、例えば針布起毛、ペーパー起毛、エメリー起毛等を用いることができる。また、乾燥状態で起毛したり、水を付与して起毛してもよい。また、起毛された状態とは、起毛機の突起物によって編地表面の単繊維が切られたり、針等で引き出されたり、カットされて毛羽立つことで毛羽間に空気層を含み保温性が向上した状態をいう。本発明の編地では、仕上がった生地の保温率が20%以上になるレベルまで起毛されることが好ましい。
本発明の編地は、上述のような構成を採ることにより、編地の保温率が19%以上であるだけでなく、ウェル方向の伸長応力が100cN以上であり、ウェル方向の伸長回復率が85%以上であることができる。本発明の編地は、衣料用としての全ての用途に使用することができ、特に寒い屋外だけでなく、室内の暖かい場所でも快適性を求められる、均一な外観品位を有する秋冬用衣料素材に好適である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定するものではない。
<編地の厚み>
JIS−L−1018 8.5.1 編地厚さに準じて測定した。測定圧は0.7kpaとし、測定値はn=5の平均値とした。
<編地の目付>
JIS−L−1018 8.4.2 標準状態における単位面積当たりの質量に準じて測定した。測定値はn=3の平均値とした。
<伸長応力>
JIS−L−1018 8.14.1 定伸長時伸長力カットストリップ法により、掴み間10cm、幅2.5cmの試料片を、一分間当り30cmの引張速度で測定したときの、80%伸張したときの引張応力を測定した。測定はウェル方向のみ実施し、測定値はn=5の平均値とした。
<伸長回復率>
JIS−L−1018 8.15.2 伸長弾性率(B法)により測定した。測定はウェル方向のみ実施し、測定値はn=5の平均値とした。
<保温率>
カトーテック社製のサーモラボIIを用い、20℃、65%RHの環境下で、BT−BOXのBT板(熱板)を人の皮膚温度を想定して35℃に設定し、その上に試料を置き、熱移動量が平衡になったときの消費電力量Wを測定する。また、試料を置かない条件での消費電力量W0を計測する。以下の式で保温率を計算する。
保温率(%)={(W0−W)/W0}×100
BT板は、サイズ10cm×10cmであるが、試料は20cm×20cmとする。通常は試料を熱板に接触させて測定するが、本発明の保温率は熱板の上に断熱性のある発砲スチロール等のスペーサーを設置して試料との空隙を5mm設けて計測を行なう。
<吸湿率>
JIS−L−1018 8.6 水分率に準じて測定した。わた又は編地を105±2℃の熱風乾燥機中に放置して恒量とした状態を絶乾状態とし、重量Wを測定する。その後、わた又は編地を20℃、湿度65%の雰囲気下に24時間放置し、放置後の重量Wを測定する。得られた値を下記の式に代入し、水分率を求めた。
水分率(%)={(W−W)/W}×100
<外観評価>
目視による官能評価。仕上がり生地をランダムな箇所から1mを5枚採取し、弾性糸の状態と染色品位を3段階評価した。
×:弾性糸が切れている。
△:弾性糸は切れていないが、染色ムラがある。
○:弾性糸は切れておらず、染色ムラがない。
「弾性糸が切れている」とは、5枚中1箇所でも弾性糸が切れていることを言う。
「染色ムラがある」とは、5枚中1箇所でも染まっていない弾性糸が生地の表側から見えているか、または非弾性糸同士の色差が目立っている状態を言う。
(実施例1)
制電・抗ピルタイプのカチオン可染性アクリル繊維A(日本エクスラン工業製、822タイプ、1.0dtex 繊維長38mm)50重量%と、吸湿性繊維Bとしてレーヨン(ダイワボウレイヨン製、BH0.9dtex 繊維長38mm)35重量%と、高吸湿性繊維Cとして改質レーヨン15重量%とをOHARA製混綿機を用いて混綿した。ここで改質レーヨンとは、吸湿性繊維Bのレーヨンわたを日本蚕毛(株)ファインW加工(メタクリル酸グラフト重合加工)を施して20℃×65%RH環境で水分率15%になるように改質した繊維である。その後、混綿した繊維を石川製作所製カード機を用いてカードスライバーとし、原織機製練条機に2回通して300ゲレン/6ydのスライバーとした。更に豊田自動織機製粗紡機に通して80ゲレン/15ydの粗糸を作成した。豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト40倍、トラベラ回転数10000rpmで紡出して英式番手60′sの紡績糸(非弾性糸)を得た。そのときの撚係数(K)は3.8(撚数29T/inch)であった。弾性糸としてポリウレタン繊維(日清紡製モビロンR タイプMTR33−R,33dtex)を用いた。編機は33′′−22Gのダブルニット機(福原精機製)を用い、弾性糸をドラフト2.35倍とし完全リバーシブルになるように製編した。編成時の条件は編成糸長でリブ目を480mm/100ウェル、天竺目を275mm/100ウェルとして図3に示す編組織にて編成した。
得られた生機を開反し、180℃×60秒でプレセットを施した。その後、精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、レーヨンの染色には反応染料を用いて染色温度60℃、染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。次いで、針布起毛により立毛させ、シャーリング工程により毛羽高さを揃え、通常仕上工程を通して最終目付163.8g/m、厚み0.78mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(実施例2)
針布起毛の代わりにエメリー起毛により立毛させた以外は実施例1と同様にして編地を得た。最終的な編地の目付は168.5g/mであり、厚みは0.79mmであった。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例1と同じカチオン可染性アクリル繊維A100重量%の230ゲレン/6ydスライバーと、吸湿性繊維Bとして綿(東洋紡績(株)製、スーピマ)100重量%の245ゲレン/6ydスライバーとを原織機製練条機で混紡し、可染性アクリル繊維70重量%、綿30重量%の300ゲレン/6ydスライバーとした。更に、豊田自動織機製粗紡機に通して90ゲレン/15ydの粗糸を作成した。豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト45倍、トラベラ回転数10000rpmで紡出して英式番手60′sの紡績糸(非弾性糸)を得た。弾性糸としてポリウレタン繊維(日清紡製モビロンR タイプMTR22−R,22dtex)を用いた。編機は33′′−28Gのダブルニット機(福原精機製)を用い、弾性糸をドラフト3.24倍とし完全リバーシブルになるように製編した。編成時の条件は編成糸長でリブ目を260mm/100ウェル、図7に示す編組織にて編成した。
得られた生機を開反し、180℃×60秒でプレセットを施した。その後、精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、綿の染色には反応染料を用いて染色温度60℃、染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの生地の外観は色ムラもなく良好であった。染色加工以降は実施例1と同様に行い、最終目付161.7g/m、厚み0.86mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(実施例4)
カチオン可染性アクリル短繊維D(日本エクスラン工業製UFタイプ0.5dtex,繊維長32mm)35重量%と、制電・抗ピルタイプのカチオン可染性アクリル繊維A(日本エクスラン工業製、822タイプ、1.0dtex 繊維長38mm)15重量%と、吸湿性繊維B(ダイワボウレイヨン製、BH0.9dtex 繊維長38mm)35重量%と、更に実施例1と同じ高吸湿性繊維C15重量%とを実施例1と同じ紡績工程を通して英式番手60′sの紡績糸(非弾性糸)を得た。弾性糸は実施例1と同じものを用い、以降の工程も実施例1と同じ条件で行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。最終的な編地の目付は162.8g/mであり、厚みは0.8mmであった。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(実施例5)
制電・抗ピルタイプのカチオン可染性アクリル繊維A(日本エクスラン工業製、822タイプ、1.0dtex 繊維長38mm)70重量%と、高吸湿性繊維C(日本エクスラン工業製エクス0.9dtex 繊維長38mm)30重量%を実施例1と同じ紡績工程を通して英式番手60′sの紡績糸(非弾性糸)を得た。弾性糸は実施例1と同じものを用いた。製編条件は実施例1と同じで、得られた生機を開反し、180℃×60秒でプレセットを施した。その後、精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。最終的な編地の目付は161.3g/mであり、厚みは0.77mmであった。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(実施例6)
非弾性糸として実施例3の紡績糸を用い、弾性糸としてポリウレタン(日清紡製モビロンR タイプMTR22−R,22dtex)を用いた。編機は33′′−28Gのダブルニット機(福原精機製)を用い、弾性糸をドラフト3.24倍とし完全リバーシブルになるように製編した。編成時の条件は編成糸長でリブ目を260mm/100ウェルとし、図8に示す編組織にて編成した。染色加工以降は実施例1と同様に行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。最終的な編地の目付は155.5g/mであり、厚み0.77mmであった。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例1)
非弾性糸として実施例1の紡績糸を用い、弾性糸としてポリウレタン繊維(東洋紡製エスパ(登録商標)T71,17dtex)をドラフト倍率1.8倍として28dtexフィラメント数34のナイロンフィラメント(東洋紡製シルファイン(登録商標))と複合した被覆弾性糸SCY(Single Covered Yarn)を用いた。編機は33′′−22Gのダブルニット機(福原精機製)を用い、編成時の条件は編成糸長でリブ目を440mm/100ウェル、天竺目を235mm/100ウェルとして片袋組織を編成した。得られた生機を精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、レーヨンの染色には反応染料を用いて染色温度60℃、染色時間30分で、その後、ナイロンの染色には酸性染料を用いて染色温度98℃、染色時間45分で液流染色行った。染め上がりの編地の外観は明らかな色ムラがあった。次いで、針布起毛により立毛させ、シャーリング工程により毛羽高さを揃え、通常仕上工程を通して最終目付157.3g/m、厚み0.75mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例2)
28Gの3枚オサのトリコット編機を使用し、フロントオサにナイロン44dtex−40fセミダル加工糸(東洋紡製アイシス(登録商標))、ミドルオサに実施例3の紡績糸、バックオサにポリウレタン(東洋紡製エスパ(登録商標)T71,44dtex)使い、組織はフロントオサ10/23、ミドルオサ00/33、バックオサ12/10で機上コース60コース/インチにて編成した。次いで、プリウェッター―プレセッター(180℃×40sec)を施し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、綿の染色には反応染料を用いて染色温度60℃、染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。次いで、針布起毛により立毛させ、シャーリング工程により毛羽高さを揃え、通常仕上工程を通して最終目付245.7g/m、厚み1.42mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例3)
非弾性糸として実施例3の紡績糸を用い、弾性糸としてポリウレタン(日清紡製モビロンR タイプMTR33−R,33dtex)を用いた。編機は38′′−28Gのシングルニット機(福原精機製)を用い、弾性糸をドラフト2.4倍とし完全リバーシブルになるように製編した。編成時の条件は編成糸長で、天竺目を280mm/100ウェルとしてベア天竺を編成した。得られた生機を開反し、180℃×60秒でプレセットを施した。その後、精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、綿の染色には反応染料を用いて染色温度95℃、染色時間45分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は明らかな色ムラがあった。次いで、針布起毛により立毛させ、シャーリング工程により毛羽高さを揃え、通常仕上工程を通して最終目付179.3g/m、厚み0.55mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同条件で染色加工まで行い、起毛なしで通常仕上工程を通して最終目付153.5g/m、厚み0.73mmの編地を得た。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例3の紡績糸を使用して、編機は33′′−28Gのダブルニット機(福原精機製)を用い、編成時の条件は編成糸長で、リブ目を320mm/100ウェルとしてスムースを編成した。得られた生機を精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、綿の染色には反応染料を用いて染色温度60℃、染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。次いで、針布起毛により立毛させ、シャーリング工程により毛羽高さを揃え、通常仕上工程を通して最終目付136.4g/m、厚み0.68mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
(比較例6)
実施例3のスライバーを用い、豊田自動織機製粗紡機に通して120ゲレン/15ydの粗糸を作成した。豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト40倍、トラベラ回転数10000rpmで紡出して英式番手40′sの紡績糸を得た。そのときの撚係数(K)は3.8(撚数24T/inch)であった。この紡績糸を編機30′′−20Gのダブルニット機(福原精機製)を用いて編成した。編成時の条件は編成糸長で、リブ目を360mm/100ウェルとしてスムースを編成した。得られた生機を精練し、アクリルの染色にはカチオン染料を用いて染色温度98℃、染色時間30分で、綿の染色には反応染料を用いて染色温度60℃染色時間30分で液流染色を行った。染め上がりの編地の外観は色ムラもなく良好であった。通常仕上工程を通して最終目付187.6g/m、厚み1.14mmの編地を得た。編地の構成と評価結果を表1に示す。
Figure 0004584343
本発明の編地によれば、高い保温性とストレッチ性を有しながら屋内と屋外の移動による快適性を損なわない衣料素材を提供することができる。また、上述の特性を保持しながら、均一で良好な外観を有する衣料素材も提供することができる。従って、本発明の編地は特に秋冬用衣料素材として有用である。

Claims (7)

  1. 両面編組織の衣料用編地であって、一方の面に非弾性糸が起毛され、他方の面では、非弾性糸でポリウレタン系弾性糸を覆うように完全リバーシブルでプレーティングされていることを特徴とする衣料用編地。
  2. 一方の面に非弾性糸が針布起毛され、他方の面に染色加工されたポリウレタン系弾性糸が完全リバーシブルでプレーティングされていることを特徴とする請求項1に記載の衣料用編地。
  3. 起毛されていない面を構成する組織の24%以上にポリウレタン系弾性糸がプレーティングされていることを特徴とする請求項1または2に記載の衣料用編地。
  4. 非弾性糸としてアクリル繊維及びセルロース系繊維を使用しており、起毛していない面にポリウレタン系弾性糸が生糸の状態で完全リバーシブルでプレーティングされていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の衣料用編地。
  5. 0.3〜0.7dtexのアクリル短繊維が30〜70重量%含まれていることを特徴とする請求項4に記載の衣料用編地。
  6. 水分率12〜30%の吸湿性繊維が10〜30重量%含まれていることを特徴とする請求項4または5に記載の衣料用編地。
  7. 編地の保温率が19%以上であり、ウェル方向の伸長応力が100cN以上であり、ウェル方向の伸長回復率が85%以上であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の衣料用編地。
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