JP4583005B2 - 燃料電池用容器および燃料電池 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電解質部材を収容可能なセラミックスから成る小型で高信頼性の燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、これまでよりも低温で動作する小型燃料電池の開発が活発になされている。燃料電池には、これに用いる電解質の種類により、固体高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:以下、PEFCと記す)やリン酸型燃料電池、あるいは固体電解質型燃料電池といったものが知られている。
【0003】
中でもPEFCは、作動温度が80〜100℃程度という低温であり、
(1)出力密度が高く、小型化、軽量化が可能である、
(2)電解質が腐食性でなく、しかも作動温度が低いため、耐食性の面から電池構成材料の制約が少ないので、コスト低減が容易である、
(3)常温で起動できるため、起動時間が短い、
といった優れた特長を有している。このためPEFCは、以上のような特長を活かして、車両用の駆動電源や家庭用のコジェネレーションシステム等への適用ばかりでなく、携帯電話,PDA(Personal Digital Assistants),ノートパソコン,デジタルカメラやビデオ等の出力が数W〜数十Wの携帯電子機器用の電源としての用途が考えられてきている。
【0004】
PEFCは、大別して、例えば、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極から成る燃料極(アノード)と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極から成る空気極(カソード)と、燃料極と空気極との間に介装されたフィルム状の電解質部材とを有して構成されている。ここで、燃料極には、改質部を介して抽出された水素ガス(H2)が供給され、一方、空気極には、大気中の酸素ガス(O2)が供給されることにより、電気化学反応により所定の電気エネルギーが生成(発電)され、負荷に対する駆動電源(電圧/電流)となる電気エネルギーが生成される。
【0005】
具体的には、燃料極に水素ガス(H2)が供給されると、次の化学反応式(1)に示すように、上記触媒により電子(e−)が分離した水素イオン(プロトン;H+)が発生し、電解質部材を介して空気極側に通過するとともに、燃料極を構成する炭素電極により電子(e−)が取り出されて負荷に供給される。
【0006】
3H2 → 6H++6e− ・・・(1)
一方、空気極に空気が供給されると、次の化学反応式(2)に示すように、上記触媒により負荷を経由した電子(e−)と電解質部材を通過した水素イオン(H+)と空気中の酸素ガス(O2)とが反応して水(H2O)が生成される。
【0007】
6H++3/2O2+6e− → 3H2O ・・・(2)
このような一連の電気化学反応(式(1)および式(2))は、概ね80〜100℃の比較的低温の温度条件で進行し、電力以外の副生成物は基本的に水(H2O)のみとなる。
【0008】
電解質部材を構成するイオン導電膜(交換膜)は、スルホン酸基を持つポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化したもの等が知られており、最近ではパーフルオロカーボンスルホン酸膜(例えばナフィオン:商品名、デュポン社製)等が用いられている。
【0009】
図4に、従来の燃料電池(PEFC)の構成を断面図で示す。同図において、21はPEFC、23は電解質部材、24および25は電解質部材を挟持するように電解質部材23上に配置され、ガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、すなわち燃料極および空気極であり、26はガスセパレータ、28は燃料流路、29は空気流路、30は集電板、31は締め付け板、32はネジである。
【0010】
ガスセパレータ26は、ガスセパレータ26の外形を形成する積層部およびガス流入出枠と、燃料流路28と空気流路29とを分離するセパレータ部と、このセパレータ部を貫通するように設けられた、電解質部材23の燃料極24および空気極25に対応するように配置された電極とから構成されている。電解質部材23の燃料極24、空気極25が電気的に直列および/または並列に接続されるようにガスセパレータ26を介して多数積層して、集電板30にて電気取り出し、締め付け板31にて各ガスセパレータを必要な面圧にてネジ32にて締めつけ固定を行い、電池の最小単位である燃料電池スタックとし、この燃料電池スタックを、箱体に収納したものが一般的なPEFC本体である。
【0011】
ガスセパレータ26に形成された燃料流路28を通して燃料極24には改質器から水蒸気を含む燃料ガス(水素に富むガス)が供給され、また、空気極25には空気流路29を通して大気中から酸化剤ガスとして空気が供給され、電解質部材23での化学反応により発電される。
【0012】
【特許文献1】
特開2001−266910号公報
【0013】
【特許文献2】
特表2001−507501号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような高電圧、高容量の電池として従来より提案され開発されている燃料電池21は、スタック構造を有し構成要素が大面積化された大重量で大型の電池であり、小型電池としての燃料電池の利用は、従来はほとんど考えられていなかった。
【0015】
すなわち、このような燃料電池21における従来のガスセパレータ26には、これを用いて電解質部材23を積層した積層体において、電解質部材23の側面が外部に露出していることによって、携帯時の落下等により損傷を受けやすく、燃料電池21全体の機械的信頼性を確保し難いという問題点があった。
【0016】
また、携帯電子機器に燃料電池21を搭載するためには、従来の大型燃料とは異なった、コンパクト性、簡便性、安全性に優れる燃料電池用容器が必要になる。すなわち、汎用の化学電池のようなポータブル電源として適用するためには、作動温度までの温度上昇を短時間化するために、また熱容量を小さくするために、燃料電池用容器を小型化、低背化する必要があるが、従来の燃料電池21では熱容量の割合の大部分を占めるガスセパレータ26は、特にカーボン板の表面に切削加工で流路形成されるガスセパレータ26の場合など、薄肉化すると脆くなるため、数mmの厚みが必要である。このため、小型化、低背化が困難であるという問題点もあった。
【0017】
さらに、燃料電池21の出力電圧は、ガスセパレータ26の厚みが厚い場合、抵抗が大きくなり、その結果、出力電流に対する電圧損失が増え、出力電圧が下がるという問題点もあった。また、複数の電解質部材23とその対向する燃料極24,空気極25とガスセパレータ26との組み合わせが、任意に効率よく直列接続または並列接続されて、全体の出力電圧および出力電流が調整されるようにする必要があるが、従来の燃料電池21では電解質部材23を挟む燃料極および空気極から電気を取り出すためには、集電板30にて外部に引き出し外部電気回路と接続し、締め付け板31を用いて複数のガスセパレータ26を導電性材料として重ね合わせ直列接続する方法となり、集電板30と締め付け板31及びネジ32を絶縁する必要があり、小型燃料電池においては部材点数が増え、薄型化が困難であり、さらにはセル間の電気接続の自由度が小さいという問題点もあった。
【0018】
本発明は以上のような従来の技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、電解質部材を収納可能な、小型で、堅牢な燃料電池用容器であり、また、高効率な電気接続を図ることができる信頼性のある燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の燃料電池容器は、下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に有するセラミックスから成る基体と、前記電解質部材の前記下側主面に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記電解質部材の前記第1電極に対向する前記凹部の底面に一端が配設され、他端が前記基体の外面にかけて形成された第1配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記電解質部材の前記上側主面に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記電解質部材の前記第2電極に対向する前記蓋体の下面に一端が配設され、他端が前記蓋体の外面に導出された第2配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数、下側の前記単位体の前記蓋体の上に上側の前記単位体の前記基体を重ね合わされて成り、上側に位置する前記単位体の前記第1配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第2配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の第2の燃料電池容器は、下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記基体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第1電極に前記凹部の底面で接続されるとともに、他端が前記基体の外面に導出された少なくとも1つの第3配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記第2電極に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記蓋体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第2電極に前記蓋体の下面で接続されるとともに、他端が前記蓋体の外面に導出された少なくとも1つの第4配線導体と、前記基体に形成され、一端が前記凹部の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続されるとともに、他端が前記凹部の他の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続される第5配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数、下側の前記単位体の前記蓋体の上に上側の前記単位体の前記基体を重ね合わされて成り、上側に位置する前記単位体の前記第3配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第4配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の第3の燃料電池容器は、下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記基体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第1電極に前記凹部の底面で接続されるとともに、他端が前記基体の外面にかけて形成された少なくとも1つの第6配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記第2電極に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記蓋体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第2電極に前記蓋体の下面で接続されるとともに、他端が前記蓋体の外面に導出された少なくとも1つの第7配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数重ね合わされて成るとともに、下側に位置する前記単位体の前記基体に形成され、一端が下側に位置する前記単位体の前記凹部の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続されるとともに、他端が上側に位置する前記単位体の前記基体の前記蓋体が取着される上面に導出された第8配線導体と、上側に位置する前記単位体の前記蓋体に形成され、一端が上側に位置する前記単位体の前記蓋体の下面で前記凹部の他の1つの前記電解質部材の前記第2電極に接続されるとともに、他端が前記第8配線導体の他端と接続されるように上側に位置する前記単位体の前記蓋体の下面に導出された第9配線導体とを具備しており、上側に位置する前記単位体の前記第6配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第7配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の第1の燃料電池は、上記構成の燃料電池用容器の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第1および第2配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って前記蓋体を取着して成ることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明の第2の燃料電池は、上記構成の燃料電池用容器の複数個の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第3および第4配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第5配線導体を前記第1電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って前記蓋体を取着して成ることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明の第3の燃料電池は、上記構成の燃料電池用容器の複数個の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第6および第7配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第8および第9配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆うとともに前記第8および第9配線導体の前記他端同士を接続して前記蓋体を取着して成ることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明の第1〜第3の燃料電池容器は、好ましくは、前記凸部同士を接着する接着剤は熱硬化性樹脂から成るとともに硬化温度が200℃以下であることを特徴とするものである。
【0026】
本発明の第1〜第3燃料電池用容器は、下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に有するセラミックスから成る基体と、この基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って取着される、凹部を気密に封止する蓋体とを具備していることから、燃料電池用容器内を気密に封止することで、気体等の流体の漏れがなく、この容器の他にパッケージ等の容器を設ける必要がないので、効率良く動作させることができる燃料電池が得られるとともに、小型化にも有効なものとなる。また、凹部を上面に有するセラミックスから成る基体と凹部を封止する蓋体とで形成される箱体内に複数の電解質部材を収納して燃料電池とすることができるので、電解質部材が容器の外部に露出して損傷を受けたりすることがなく、燃料電池全体としての機械的信頼性が向上する。また、凹部および蓋体で構成される容器内部に一端が配設された第1および第2配線導体または、第3、第4および第5配線導体、または第6、第7、第8および第9配線導体の他には電解質部材自体に無用な電気的接触をしないで済むので、信頼性および安全性の高い燃料電池が得られる。さらに、燃料電池用容器の構成材料としてセラミックスを用いたことにより、各種のガスを始めとする流体に対する耐食性に優れる燃料電池が得られる。
【0027】
また、電解質部材の下側主面に対向する凹部の底面から基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、電解質部材の上側主面に対向する蓋体の下面から蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路とを具備していることから、それぞれの流体流路は、電解質部材を挟んでそれぞれ対向する内壁面に設けられているため、電解質部材へ供給される流体の均一供給性を向上させることができる。
【0028】
また、セラミックスから成る基体および蓋体は、従来の材料であるカーボンモールド材と比較して強度が大きいため薄くすることができ、基体および蓋体の抵抗を下げることが可能であり、その結果、電圧損失を低減して高出力の燃料電池を提供することができる。
【0029】
また、集電板や締め付け板を用いずに凸部を接着剤を用いて接着することで単位体を固定することから、部品点数が減り、薄型化できる。
【0030】
さらにまた、各流体流路は基体と蓋体とに形成されるため、各流体流路の密閉性に優れ、本来は流路的に隔絶されるべき2種類の原料流体(例えば酸素ガスと水素ガスもしくはメタノール等)が混合することによって燃料電池としての機能が発現されなくなるようなことがなく、また可燃性の流体が高温で混合されて引火、爆発を起こす危険性もないので、安全な燃料電池を提供することができる。
【0031】
また、本発明の第1〜第3の燃料電池は、本発明の燃料電池用容器の凹部に電解質部材を収容して、電解質部材の下側および上側主面を第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、第1および第2電極を第1および第2配線導体にそれぞれ電気的に接続し、基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って蓋体を取着して成ることから、配線導体にて自由に電気配線が可能なため、所望の電圧、電流を得ることができる。
【0032】
以上のような本発明の燃料電池用容器による特長を備えた、小型、堅牢で、ガスの均等供給、高効率な電気接続を達成することができる信頼性のある燃料電池を得ることができる。
【0033】
さらに、本発明の第2の燃料電池用容器は、基体に形成され、一端が凹部の1つの底面で電解質部材の第1電極に接続されるとともに、他端が凹部の他の1つの底面で電解質部材の第1電極に接続される第5配線導体とを具備していることから、複数個の電解質部材を電気的に接続することでそれらを並列接続することが可能となる。その結果、燃料電池全体の出力電流の調整ができるため、電解質部材で電気化学的に発生した電気を良好な状態で外部に取り出すことができる。
【0034】
さらにまた、本発明の第3の燃料電池用容器は、下側に位置する単位体の基体に形成され、一端が下側に位置する単位体の凹部の1つの底面で電解質部材の第1電極に接続されるとともに、他端が上側に位置する単位体の基体の蓋体が取着される上面に導出された第8配線導体と、上側に位置する単位体の蓋体に形成され、一端が上側に位置する単位体の蓋体の下面で凹部の他の1つの電解質部材の第2電極に接続されるとともに、他端が第8配線導体の他端と接続されるように上側に位置する単位体の蓋体の下面に導出された第9配線導体とを具備していることから、複数個の電解質部材を電気的に接続することでそれらを直列接続することが可能となる。その結果、一つ一つの電解質部材の発電では微小電圧であっても、直列接続により合計の電圧の調整ができるため、電解質部材で電気化学的に発生した電気を良好な状態で外部に取り出すことが可能となる。
【0035】
また、本発明の第1〜第3の燃料電池は、本発明の第1〜第3の燃料電池用容器の凹部に電解質部材を収容して、この電解質部材の下側および上側主面を第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、第1および第2電極を第1〜第2配線導体、ならびに第3〜第5配線導体、ならびに第6〜第9配線導体にそれぞれ電気的に接続し、基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って蓋体を取着して成ることから、以上のような本発明の第1〜第3の燃料電池用容器による特長を備えた、小型、堅牢で、高効率な電気接続を図ることができる信頼性のある燃料電池を得ることができるとともに、複数個の電解質部材を並列接続することにより燃料電池全体の出力電流の調整ができるため、あるいは複数個の電解質部材を直列接続することにより合計の電圧の調整ができるため、電解質部材にて電気化学的に生成された電気を良好な状態で外部に取り出すことができる。
【0036】
従って、本発明の燃料電池用容器および燃料電池は、コンパクト性、簡便性、安全性に優れ、流体の均等供給、高効率な電気接続により、長期にわたり安定して作動させることができるものとなる。
【0037】
【発明の実施の形態】
本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池について実施の形態の一例を示す断面図である。これらの図において、1は燃料電池、2は燃料電池用容器、3は電解質部材、4は第1電極、5は第2電極、6は基体、7は蓋体、8は第1流体流路、9は第2流体流路、10は第1配線導体、11は第2配線導体、12は凸部、13は燃料電池用容器の単位体、14は接着剤、である。
【0038】
電解質部材3は、例えばイオン導電膜(交換膜)の両主面上に、下側主面に形成された第1電極4および上側主面に形成された第2電極5にそれぞれ対向するように、アノード側電極となる燃料極(図示せず)と、カソード側電極となる空気極(図示せず)とが一体的に形成されている。そして、電解質部材3で発電された電流を第1電極,第2電極へ流し、外部へ取り出すことができるものとなっている。
【0039】
このような電解質部材3のイオン導電膜(交換膜)は、パーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、例えば「ナフィオン」(商品名、デュポン社製)等のプロトン伝導性のイオン交換樹脂により構成されている。また、燃料極および空気極は、多孔質状態のガス拡散電極であり、多孔質触媒層とガス拡散層の両方の機能を兼ね備えるものである。これらの燃料極および空気極は、白金,パラジウムあるいはこれらの合金等の触媒を担持した導電性微粒子、例えばカーボン微粒子をポリテトラフルオロエチレンのような疎水性樹脂結合剤により保持した多孔質体によって構成されている。
【0040】
電解質部材3の下側主面の第1電極4および上側主面の第2電極5は、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子の付いた炭素電極を電解質部材3上にホットプレスする方法、または、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子の付いた炭素電極材料と電解質材料を分散した溶液との混合物を電解質上に塗布または転写する方法等により形成される。
【0041】
燃料電池用容器2は、凹部を有する基体6と蓋体7とから成り、電解質部材3を凹部の内部に搭載して気密に封止する役割を持ち、酸化アルミニウム(Al2O3)質焼結体,ムライト(3Al2O3・2SiO2)質焼結体,炭化珪素(SiC)質焼結体,窒化アルミニウム(AlN)質焼結体,窒化珪素(Si3N4)質焼結体,ガラスセラミックス焼結体等のセラミックス材料で形成されている。
【0042】
なお、ガラスセラミックス焼結体はガラス成分とフィラー成分とから成るが、ガラス成分としては、例えばSiO2−B2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3系,SiO2−B2O3−Al2O3−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M1O−M2O系(但し、M1およびM2は上記と同じである),SiO2−B2O3−M3 2O系(但し、M3はLi,NaまたはKを示す),SiO2−B2O3−Al2O3−M3 2O系(但し、M3は上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
【0043】
また、フィラー成分としては、例えばAl2O3,SiO2,ZrO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiO2とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、Al2O3およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
【0044】
燃料電池用容器2は、凹部を有する基体6と蓋体7とから成り、基体6の凹部の周囲に凹部を覆って蓋体7を取着することによって凹部を気密に封止するため、半田や銀ろう等の金属接合材料での接合、エポキシ等の樹脂材料での接合、凹部の周囲の上面に鉄合金等で作られたシールリング等を接合してシームウェルドやエレクトロンビームやレーザ等で溶接する方法等によって、蓋体7が基体6に取着される。なお、蓋体7にも基体6と同様の凹部を形成しておいてもよい。
【0045】
基体6および蓋体7は、それぞれ厚みを薄くし、燃料電池1の低背化を可能とするためには、機械的強度である曲げ強度が200MPa以上であることが好ましい。
【0046】
基体6および蓋体7は、例えば相対密度が95%以上の緻密質からなる酸化アルミニウム質焼結体で形成されていることが好ましい。その場合であれば、例えば、まず酸化アルミニウム粉末に希土類酸化物粉末や焼結助剤を添加、混合して、酸化アルミニウム質焼結体の原料粉末を調整する。次いで、この酸化アルミニウム質焼結体の原料粉末に有機バインダおよび分散媒を添加、混合してペースト化し、このペーストからドクターブレード法によって、あるいは原料粉末に有機バインダを加え、プレス成形、圧延成形等によって、所定の厚みのグリーンシートを作製する。そして、このグリーンシートに対して、金型による打ち抜き、マイクロドリル、レーザ等により、第1流体流路8および第2流体流路9としての貫通穴、ならびに第1配線導体10および第2配線導体11を配設するための貫通孔を形成する。
【0047】
第1配線導体10および第2配線導体11は、酸化を防ぐために、タングステンおよび/またはモリブデンで形成されているのが好ましい。その場合であれば、例えば、無機成分としてタングステンおよび/またはモリブデン粉末100質量部に対して、Al2O3を3〜20質量部、Nb2O5を0.5〜5質量部の割合で添加してなる導体ペーストを調製する。この導体ペーストをグリーンシートの貫通孔内に充填して、貫通導体としてのビア導体を形成する。
【0048】
これらの導体ペースト中には、基体6や蓋体7のセラミックスとの密着性を高めるために、酸化アルミニウム粉末や、基体6や蓋体7を形成するセラミックス成分と同一の組成物粉末を、例えば0.05〜2体積%の割合で添加することも可能である。
【0049】
なお、基体6や蓋体7の表層および内層への第1配線導体10および第2配線導体11の形成は、貫通孔へ導体ペーストを充填してビア導体を形成する前後あるいはそれと同時に、同様の導体ペーストをグリーンシートに対しスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法で所定パターンに印刷塗布して形成する。
【0050】
その後、導体ペーストを印刷し充填した所定枚数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着した後、この積層体を、例えば非酸化性雰囲気中にて、焼成最高温度が1200〜1500℃の温度で焼成して、目的とするセラミックスの基体6や蓋体7および第1配線導体10,第2配線導体11を得る。
【0051】
また、セラミックスから成る基体6や蓋体7は、その厚みを0.2mm以上とすることが好ましい。厚みが0.2mm未満では、強度が低下しがちなため、基体6に蓋体7を取着したときに発生する応力により、基体6および蓋体7に割れ等が発生しやすくなる傾向がある。他方、厚みが5mmを超えると、薄型化、低背化が困難となるため、小型携帯機器に搭載する燃料電池としては不適切となり、また、熱容量が大きくなるため、電解質部材3の電気化学反応条件に相当する適切な温度にすばやく設定することが困難となる傾向がある。
【0052】
第1配線導体10および第2配線導体11は、それぞれ電解質部材3の第1電極4および第2電極5に電気的に接続されて、電解質部材3で発電された電流を燃料電池用容器2の外部へ取り出すための導電路として機能し、従来の集電板の機能を兼ねる。
【0053】
第1配線導体10は、基体6の凹部の底面の電解質部材3の第1電極4に対向する部位に一端が配設され、他端が基体6の外面に導出されて形成されている。このような第1配線導体10は、前述のように基体6と一体的に形成され、第1配線導体10を第1電極4に接触させやすいように基体6の凹部の底面より、10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、印刷条件を厚くするように設定すればよい。また、第1配線導体10は第1電極4に対向させて複数配置し、第1配線導体10による電気損失を減少させることが望ましく、第1配線導体10の基体6の貫通部についてはφ50μm以上の径とすることが好ましい。
【0054】
また、第2配線導体11は、蓋体7の下面の電解質部材3の第2電極5に対向する部位に一端が配設され、他端が蓋体7の外面に導出されて形成されている。このような第2配線導体11も、第1配線導体10と同様に、蓋体7と一体的に形成され、第2配線導体11を第2電極5に接触させやすいように蓋体7の下面より、10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、印刷条件を厚くするように設定すればよい。また、第2配線導体11は第2電極5に対向させて複数配置し、第2配線導体11による電気損失を減少させることが望ましく、第2配線導体11の蓋体7の貫通部についてはφ50μm以上の径とすることが好ましい。
【0055】
これら第1配線導体10および第2配線導体11には、その露出する表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性およびロウ材との濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくと、第1配線導体10および第2配線導体11と、第1配線導体10および第2配線導体11ならびに外部電気回路との電気的接続を良好とすることができる。従って、第1配線導体10および第2配線導体11は、その露出する表面にニッケルから成る良導電性で、かつ耐蝕性およびロウ材との濡れ性が良好な金属をメッキ法により被着させておくことが好ましい。
【0056】
そして、これら第1および第2配線導体10,11と第1および第2電極4,5との電気的な接続は、基体6と蓋体7とで電解質部材3を挟み込むことによって、第1および第2配線導体10,11と第1および第2電極4,5とを圧着接触させて電気的接続させる等の構成によって行なえばよい。
【0057】
また、第1電極4および第2電極5に対向する基体6の凹部の底面および蓋体7の下面には、それぞれ第1流体流路8および第2流体流路9が配置されており、第1流体流路8は基体6の外面にかけて、また第2流体流路9は蓋体7の外面にかけて形成されている。これら第1および第2流体流路8,9は、それぞれ基体6や蓋体7に形成した貫通穴あるいは溝によって、燃料ガス例えば水素に富む改質ガス、あるいは酸化剤ガス例えば空気等の、電解質部材3へ供給される流体の通路として、あるいは反応で生成される水等の、反応後に電解質部材3から排出される流体の通路として設けられている。
【0058】
第1流体流路8および第2流体流路9として基体6および蓋体7に形成される貫通穴あるいは溝は、電解質部材3に均等に燃料ガスや酸化剤ガス等の流体が供給されるように、燃料電池1の仕様に応じて、貫通穴の径や数、あるいは溝の幅、深さ、配置を決めればよく、好適には例えば、開口の幅を1mm、深さを0.2mmとすればよく、さらに開口の幅を100μmと小さくし、開口の本数を増やすことで、流体の均一供給性を上げることも可能である。
【0059】
本発明の燃料電池1の燃料供給法は基体6もしくは蓋体7に貫通穴もしくは、溝を作製しこれをもちいて燃料、空気の供給を行う。
【0060】
本発明の燃料電池用容器2および燃料電池1においては、第1流体流路8および第2流体流路9は、好適には、電解質部材3に均一な圧力で流体を流すため、開口の幅を1mm、深さを0.2mmとすればよく、さらに開口の幅を100μmと小さくするとよい。
【0061】
このように電解質部材3の第1電極4が形成された下側主面に対向させて第1流体流路8を、第2電極5が形成された上側主面に対向させて第2流体流路9を形成したことによって、電解質部材3の下側および上側主面と第1および第2流体流路8,9との間で流体がやりとり可能となり、その流体がそれぞれの流路を通して供給あるいは排出されることとなる。そして、例えば流体としてガスを供給する場合であれば、電解質部材3の第1電極4および第2電極5にそれぞれ供給されるガス分圧が下がることをなくすことができ、所定の安定した出力電圧を得ることができる。さらに、供給されるガス分圧が安定するため、燃料電池1の内部圧力が均一化され、その結果、電解質部材3に生じる熱応力を抑制することができるので、燃料電池1の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、凸部12は基体6および蓋体7と同一形状であり、所望の電圧が得られるように、各単位体を積層し、第1配線導体10と第2配線導体11とを導電性の部材18を用いて電気的に接続し、凸部12を接着剤13を用いて固定することにより、上下の単位体の接続を行い、その結果、集電板や締め付け板等の部材を減らすことができるため、低背化された燃料電池1となる。
【0063】
凸部12の固定に用いられる接着剤13はエポキシ系、シリコーン系、変形ウレタン系などの樹脂材料系のものを用いる。電解質部材3は耐熱性がないためその硬化温度は200度以下であることが望ましく、硬化時間は接着剤13の仕様に応じて決めればよい。また、凸部12の周囲の上面に鉄合金等で作られたシールリング等を接合して、半田や銀ろう等の金属接合材料での接合、シームウェルドやエレクトロンビームやレーザ等で溶接する方法等によって、電解質部材3に温度負荷をかけずに瞬間的に接合してもよい。
【0064】
また、基体6と蓋体7において第1配線導体10と第2配線導体11ならびに、第3配線導体10aと第4配線導体11aならびに、第6配線導体10bと第7配線導体11bならびに、第8配線導体16と第9配線導体17は導電性の部材を用いて接着される。
【0065】
この導電性の部材は、銅箔粘着テープ、アルミ箔粘着テープなどのテープもしくは導電フィラーを配合したエポキシ系、変形ウレタン系、シリコーン系、ポリイミド系、アクリル系などの樹脂材料系の接着剤を用いる。さらには、金属の板、メッシュ状の金属等を挟み、接触接続してもよい。導電性の部材18の電気抵抗は、10mΩ/cm2以下とすることが好ましく、さらに1mΩ/cm2であると、電圧損失を小さくすることができる。
【0066】
以上の構成により、図1に示すような、電解質部材3を収納可能な、小型で堅牢な燃料電池用容器2が得られ、高効率制御が可能な本発明の燃料電池が得られる。
【0067】
次に、図2は本発明の第2の燃料電池容器およびそれを用いた第2の燃料電池について実施の形態の一例を示す断面図である。この図において、1は燃料電池、2は燃料電池用容器、3は電解質部材、4は第1電極、5は第2電極、6は基体、7は蓋体、8は第1流体流路、9は第2流体流路、10aは第3配線導体、11aは第4配線導体、12は凸部、13は単位体、14は接着剤、15は第5配線導体、である。
【0068】
図2の符号3〜9、12〜14については図1と同様である。第3配線導体10aは基体6の複数個の凹部の1つの底面で電解質部材3の第1電極4に対向する部位に一端が配設され、他端が基体6の上面の蓋体7が取着される部位に導出されている。
【0069】
この第3配線導体10aは、第1配線導体10と同様に、基体6と一体的に形成され、その一端を第1電極4に接触させやすいように基体6の凹部の底面より10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、塗布厚みを厚くするように印刷条件を設定すればよい。また、第3配線導体10aは第1電極4に対向させて複数配置し、第3配線導体10aによる電気損失を減少させることが望ましく、第3配線導体10aの基体6の貫通部についてはφ50μm以上の径とすることが好ましい。
【0070】
第5配線導体15は複数の凹部の底面にある第3配線導体同士を接続するように構成され、また、第5配線導体15も、第3配線導体10aと同様に、基体6と一体的に形成され、その一端を第1電極4に接触させやすいように基体6の下面より10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、塗布厚みを厚くするように印刷条件を設定すればよい。
【0071】
次に図3は本発明の第3の燃料電池容器およびそれを用いた第3の燃料電池について実施の形態の一例を示す断面図である。この図において、1は燃料電池、2は燃料電池用容器、3は電解質部材、4は第1電極、5は第2電極、6は基体、7は蓋体、8は第1流体流路、9は第2流体流路、10bは第6配線導体、11bは第7配線導体、12は凸部、13は単位体、14は接着剤、16は第8配線導体、17は第9配線導体、である。
【0072】
図3の符号3〜9、12〜14については図1と同様である。第6配線導体10bは、基体6の複数個の凹部の1つの底面で電解質部材3の第1電極4に対向する部位に一端が配設され、他端が基体6の上面の蓋体7が取着される部位に導出されている。
【0073】
また、第7配線導体11bは、蓋体7の下面の、凹部の他の1つの電解質部材3の第2電極5に対向する部位に一端が配設され、他端が蓋体7の下面の基体6の上面に取着される部位に第6配線導体10bの他端と対向するように形成されている。
【0074】
第6配線導体10bは、第2配線導体11と同様に、基体6と一体的に形成され、その一端を第1電極4に接触させやすいように基体6の凹部の底面より10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、塗布厚みを厚くするように印刷条件を設定すればよい。
【0075】
また、第8配線導体16は第1電極4に対向させて複数配置し、第8配線導体16による電気損失を減少させることが望ましく、第8配線導体16の基体6の貫通部についてはφ(直径)50μm以上の径とすることが好ましい。
【0076】
また、第9配線導体17も、第2配線導体11と同様に、蓋体7と一体的に形成され、その一端を第2電極5に接触させやすいように蓋体7の下面より10μm以上高くするように形成するのが望ましい。この高さを得るためには、前述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、塗布厚みを厚くするように印刷条件を設定すればよい。また、第9配線導体17も第2電極5に対向させて複数配置し、第9配線導体17による電気損失を減少させることが望ましく、第9配線導体17の蓋体7の貫通部についてはφ50μm以上の径とすることが好ましい。
【0077】
図1、図2および図3に示すように、本発明の第1、第2および第3の燃料電池用容器2ならびに第1、第2および第3の燃料電池1によれば、複数個の凹部を有する基体6の凹部のそれぞれに電解質部材3を収容するとともに、隣接する凹部の端部間にわたって第5配線導体15、または第8配線導体16および第9配線導体17を配設し、複数の電解質部材3の第1電極4の間、または第1電極4と第2電極5との間を電気的に接続し、両端となる位置に配置された電解質部材3に全体としての出力を取り出すように第1配線導体10、第3配線導体10aまたは第6配線導体10bおよび第2配線導体11、第4配線導体11aまたは第7配線導体11bをそれぞれに電気的に接続することで、第1および第2配線導体10,11により、ならびに第3,第4,および第5配線導体10a,11a,15により、ならびに第6、第7、第8および第9配線導体10b,11b,16,17を3次元的に自由に配線ができるため、複数個の電解質部材3を任意に直列接続または並列接続することが可能となる。その結果、全体の出力電圧および出力電流を効率よく調整することが可能となるため、複数個の電解質部材3にて電気化学的に生成された電気を良好に外部に取り出すことができる燃料電池となる。
【0078】
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更を行なっても何ら差し支えない。例えば、第1流体流路や第2流体流路の流入口および排出口においては、燃料電池全体を薄型化するため、基体または蓋体の側面に金属パイプ等を設けるようにしてもよい。これによれば、特に携帯電子機器用として小型化を図る上で有効となる。さらに、第1および第2配線導体もしくは、第6および第7配線導体については、基体および蓋体の外面に導出される他端を、それぞれ同じ側の側面に引き出すように配設してもよい。これによれば、燃料電池の一方側面に配線や流路等をまとめることができ、小型化と外部への接合部の保護とが容易となり、信頼性の高い設計が可能となるとともに、長期間安定した作動が可能な燃料電池となる。
【0079】
本発明の燃料電池は、具体的には携帯電話,PDA(Personal Digital Assistants),デジタルカメラ,ビデオカメラ,ゲーム機などの玩具等の携帯型電子機器、また、ノート型PC(パーソナルコンピュータ)をはじめとするポータブルなプリンター,ファックス,テレビ,通信機器,オーディオビデオ機器,扇風機等の各種家電製品,電動工具等の電子機器に電源として組み込まれるものであり、本発明の燃料電池1を用いた電子機器は、セラミックスから成る基体および蓋体は、従来の材料であるカーボンモールド材と比較して強度が大きいため、薄型化でき、基体および蓋体の抵抗を下げることが可能であり、その結果、電圧損失を低減して、高い発電効率を有した、長期にわたり安定して作動させることができる電子機器を提供することができるという利点がある。
【0080】
また、集電板や締め付け板を用いずに、凸部を接着剤にて接着することで単位体を固定することから、部品点数が減り、薄型化でき、コンパクト性、簡便性に優れ、電子機器本体の小型、薄型および軽量化が可能となるとともに、落下等により携帯電話本体に衝撃が加わった際の耐衝撃性や防水性などを従来よりも強固にし得る構造となる利点がある。
【0081】
また、本発明の燃料電池および燃料電池容器において、外部接続端子等を一体化し、着脱自在となる構造とした場合には、予備の本発明の燃料電池および燃料電池容器を準備しておけば、電池切れ等が発生した場合に、充電に要する時間が不要となり、停電等の緊急時や屋外においても使用が可能となるという利点がある。
【0082】
【発明の効果】
本発明の燃料電池用容器によれば、下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に有するセラミックスから成る基体と、この基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って取着される、凹部を気密に封止する蓋体とを具備していることから、燃料電池用容器内を気密に封止することで、気体等の流体の漏れがなく、この容器の他にパッケージ等の容器を設ける必要がないので、効率良く動作させることができる燃料電池を得ることができるとともに、小型化にも有効なものとなる。また、凹部を上面に有するセラミックスから成る基体とこの凹部を封止する蓋体とで形成される箱体内に複数の電解質部材を収納して燃料電池とすることができるので、電解質部材が容器の外部に露出して損傷を受けたりすることがなく、燃料電池全体としての機械的信頼性が向上する。また、凹部および蓋体で構成される容器内部に一端が配設された第1および第2配線導体の他には電解質部材自体に無用な電気的接触をしないで済むので、信頼性および安全性の高い燃料電池を得ることができる。さらに、燃料電池用容器の構成材料としてセラミックスを用いたことにより、各種のガスを始めとする流体に対する耐食性に優れる燃料電池を得ることができる。
【0083】
また、電解質部材の下側主面に対向する凹部の底面から基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、電解質部材の上側主面に対向する蓋体の下面から蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路とを具備していることから、複数のそれぞれの流体流路は、電解質部材を挟んで、それぞれ対向する内壁面に設けられているため、電解質部材へ供給される流体の均一供給性を向上させることができる。
【0084】
さらにまた、それぞれの流体流路は基体と蓋体とに形成されるため、各流路の密閉性に優れ、本来は流路的に隔絶されるべき2種類の原料流体(例えば酸素ガスと水素ガスもしくはメタノール等)が混合してしまうことによって燃料電池としての機能が発現されなくなるようなことがなく、また、可燃性の流体が高温で混合された後に引火、爆発を起こす危険性もないので、安全な燃料電池を提供することができる。
【0085】
また、本発明の第1〜第3の燃料電池によれば、本発明の燃料電池用容器の凹部に電解質部材を収容して、この電解質部材の下側および上側主面を第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体がやりとり可能なように配置するとともに、第1および第2電極を第1および第2配線導体にそれぞれ電気的に接続し、基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って蓋体を取着して成ることから、電解質部材が露出して損傷を受けることがなく、また、凹部および蓋体で構成される容器内部に一端が配設された第1および第2配線導体の他には電解質部材に無用な電気的接触をしないで済むので、信頼性および安全性の高い燃料電池を得ることができる。また、第1および第2流体流路は、電解質部材を挟んで、それぞれ対向する内壁面である基体の凹部の底面および蓋体の下面に設けられているため、電解質部材へ供給されるガスの均一供給性を向上させることができ、電解質部材の第1および第2電極に供給されるガス分圧が下がることをなくすことができるので、所定の安定した出力電圧を得ることができる。そして、電解質部材に生じる応力も抑制することができ、信頼性を向上させることができる。
【0086】
さらに、本発明の第1〜第3の燃料電池によれば、第1〜第9配線導体により3次元的に自由に配線ができるため、複数の電解質部材を任意に直列接続または並列接続することが可能となる。その結果、全体の出力電圧および出力電流を効率よく調整することが可能となるため、電解質部材にて電気化学的に生成された電気を良好に外部に取り出すことができる。
【0087】
また、燃料電池は、隣接する凸部同士を接着剤を用いて固定するため、取り付け部材を用いる必要が無く、燃料電池をより一層低背化することができる。
【0088】
従って、本発明の燃料電池用容器および燃料電池によれば、コンパクト性、簡便性、安全性に優れ、ガスの均等供給、高効率な電気接続により、長期にわたり安定して作動させることができる燃料電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の燃料電池用容器およびそれを用いた本発明の燃料電池の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の燃料電池用容器およびそれを用いた本発明の燃料電池の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の燃料電池用容器およびそれを用いた本発明の燃料電池の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図4】従来の燃料電池容器およびそれを用いた従来の燃料電池の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1:燃料電池
2:燃料電池用容器
3:電解質部材
4:第1電極
5:第2電極
6:基体
7:蓋体
8:第1流体流路
9:第2流体流路
10:第1配線導体
10a:第3配線導体
10b:第6配線導体
11:第2配線導体
11a:第4配線導体
11b:第7配線導体
12:凸部
13:単位体
14:接着剤
15:第5配線導体
16:第8配線導体
17:第9配線導体
Claims (7)
- 下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に有するセラミックスから成る基体と、前記電解質部材の前記下側主面に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記電解質部材の前記第1電極に対向する前記凹部の底面に一端が配設され、他端が前記基体の外面にかけて形成された第1配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記電解質部材の前記上側主面に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記電解質部材の前記第2電極に対向する前記蓋体の下面に一端が配設され、他端が前記蓋体の外面に導出された第2配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数、下側の前記単位体の前記蓋体の上に上側の前記単位体の前記基体を重ね合わされて成り、上側に位置する前記単位体の前記第1配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第2配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする燃料電池容器。
- 下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記基体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第1電極に前記凹部の底面で接続されるとともに、他端が前記基体の外面に導出された少なくとも1つの第3配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記第2電極に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記蓋体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第2電極に前記蓋体の下面で接続されるとともに、他端が前記蓋体の外面に導出された少なくとも1つの第4配線導体と、前記基体に形成され、一端が前記凹部の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続されるとともに、他端が前記凹部の他の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続される第5配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数、下側の前記単位体の前記蓋体の上に上側の前記単位体の前記基体を重ね合わされて成り、上側に位置する前記単位体の前記第3配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第4配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする燃料電池容器。
- 下側および上側主面にそれぞれ第1および第2電極を有する電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記基体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第1電極に前記凹部の底面で接続されるとともに、他端が前記基体の外面にかけて形成された少なくとも1つの第6配線導体と、前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着される蓋体と、前記第2電極に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、前記蓋体に形成され、一端が対応する前記電解質部材の第2電極に前記蓋体の下面で接続されるとともに、他端が前記蓋体の外面に導出された少なくとも1つの第7配線導体とを具備する燃料電池容器の単位体が複数重ね合わされて成るとともに、下側に位置する前記単位体の前記基体に形成され、一端が下側に位置する前記単位体の前記凹部の1つの底面で前記電解質部材の前記第1電極に接続されるとともに、他端が上側に位置する前記単位体の前記基体の前記蓋体が取着される上面に導出された第8配線導体と、上側に位置する前記単位体の前記蓋体に形成され、一端が上側に位置する前記単位体の前記蓋体の下面で前記凹部の他の1つの前記電解質部材の前記第2電極に接続されるとともに、他端が前記第8配線導体の他端と接続されるように上側に位置する前記単位体の前記蓋体の下面に導出された第9配線導体とを具備しており、上側に位置する前記単位体の前記第6配線導体が下側に位置する前記単位体の前記第7配線導体に電気的に接続されているとともに、下側の前記単位体の前記蓋体の側面の上端および上側の前記単位体の前記基体の側面の下端にそれぞれ凸部が形成されており、これら隣接する凸部同士が接着されていることを特徴とする燃料電池容器。
- 前記凸部同士を接着する接着剤は熱硬化性樹脂から成るとともに硬化温度が200℃以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の燃料電池容器。
- 請求項1記載の燃料電池用容器の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第1および第2配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って前記蓋体を取着して成ることを特徴とする燃料電池。
- 請求項2記載の燃料電池用容器の複数個の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第3および第4配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第5配線導体を前記第1電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って前記蓋体を取着して成ることを特徴とする燃料電池。
- 請求項3記載の燃料電池用容器の複数個の前記凹部に電解質部材を収容して、該電解質部材の前記下側および上側主面を前記第1および第2流体流路との間でそれぞれの流体が供給あるいは排出されるように配置するとともに、前記第6および第7配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第8および第9配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆うとともに前記第8および第9配線導体の前記他端同士を接続して前記蓋体を取着して成ることを特徴とする燃料電池。
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