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JP4713120B2 - 燃料電池用容器および燃料電池ならびに電子機器 - Google Patents

燃料電池用容器および燃料電池ならびに電子機器 Download PDF

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JP4713120B2 JP2004282788A JP2004282788A JP4713120B2 JP 4713120 B2 JP4713120 B2 JP 4713120B2 JP 2004282788 A JP2004282788 A JP 2004282788A JP 2004282788 A JP2004282788 A JP 2004282788A JP 4713120 B2 JP4713120 B2 JP 4713120B2
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Description

本発明は、電解質部材を収容するセラミックスから成る小型で高信頼性の燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池ならびに電子機器に関する。
近年、従来よりも低温で動作する小型燃料電池の開発が活発になされている。燃料電池には、これに用いる電解質の種類により、固体高分子電解質型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:以下、PEFCと記す)やリン酸型燃料電池、あるいは固体電解質型燃料電池といったものが知られている。
中でもPEFCは、作動温度が80〜100℃程度という低温であり、
(1)出力密度が高く、小型化、軽量化が可能である、
(2)電解質が腐食性でなく、しかも作動温度が低いため、耐食性の面から電池構成材料の制約が少ないので、コスト低減が容易である、
(3)常温で起動できるため、起動時間が短い、
といった優れた特長を有している。このためPEFCは、以上のような特長を活かして、車両用の駆動電源や家庭用のコジェネレーションシステム等への適用ばかりでなく、携帯電話、PDA(Personal Digital Assistants)、ノートパソコン、デジタルカメラやビデオカメラ等の出力が数W〜数十Wの携帯電子機器用の電源としての用途が考えられてきている。
PEFCは、大別して、例えば、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子が付着した炭素電極から成る燃料極(カソード)と、白金等の触媒微粒子が付着した炭素電極から成る空気極(アノード)と、燃料極と空気極との間に介装されたフィルム状の電解質部材とを有して構成されている。ここで、燃料極には、改質部を介して抽出された水素ガス(H)が供給され、一方、空気極には、大気中の酸素ガス(O)が供給されることにより、電気化学反応により所定の電気エネルギーが生成(発電)され、負荷に対する駆動電源(電圧/電流)となる電気エネルギーが生成される。
具体的には、燃料極に水素ガス(H)が供給されると、次の化学反応式(1)に示すように、上記触媒により電子(e)が分離した水素イオン(プロトン;H)が発生し、電解質部材を介して空気極側に通過するとともに、燃料極を構成する炭素電極により電子(e)が取り出されて負荷に供給される。
3H→ 6H+6e・・・(1)
一方、空気極に空気が供給されると、次の化学反応式(2)に示すように、上記触媒により負荷を経由した電子(e)と電解質部材を通過した水素イオン(H)と空気中の酸素ガス(O)とが反応して水(HO)が生成される。
6H+3/2O+6e → 3HO ・・・(2)
このような一連の電気化学反応(式(1)および式(2))は、概ね80〜100℃の比較的低温の温度条件で進行し、電力以外の副生成物は基本的に水(HO)のみとなる。
電解質部材を構成するイオン導電膜(交換膜)は、スルホン酸基を持つポリスチレン系の陽イオン交換膜、フルオロカーボンスルホン酸とポリビニリデンフルオライドとの混合膜、フルオロカーボンマトリックスにトリフルオロエチレンをグラフト化したもの等が知られており、最近ではパーフルオロカーボンスルフォン酸膜(例えば、商品名「ナフィオン」デュポン社製)等が用いられている。
図3に、従来の燃料電池(PEFC)の構成を断面図で示す。同図において、21はPEFC、23は電解質部材、24および25は電解質部材を挟持するように電解質部材23上に配置され、ガス拡散層および触媒層としての機能を有する一対の多孔質電極、即ち燃料極および空気極であり、26はガスセパレータ、28は燃料流路、29は空気流路である。
ガスセパレータ26は、ガスセパレータ26の外形を形成する積層部およびガス流入出枠と、燃料流路28と空気流路29とを分離するセパレータ部と、このセパレータ部を貫通するように設けられた、電解質部材23の燃料極24および空気極25に対応するように配置された電極とから構成されている。電解質部材23の燃料極24、空気極25が電気的に直列および/または並列に接続されるようにガスセパレータ26を介して多数積層して電池の最小単位である燃料電池スタックとし、この燃料電池スタックを箱体に収納したものが一般的なPEFC本体である。
ガスセパレータ26に形成された燃料流路28を通して燃料極24には改質器から水蒸気を含む燃料ガス(水素に富むガス)が供給され、また、空気極25には空気流路29を通して大気中から酸化ガスとして空気が供給され、電解質部材23での化学反応により発電される。
特開2001−266910号公報 特表2001−507501号公報
しかしながら、このような高電圧、高容量の電池として従来より提案され開発されている燃料電池21は、スタック構造を有し構成要素が大面積化された大重量で大型の電池であり、小型電池としての燃料電池の利用は、従来はほとんど考えられていなかった。即ち、このような燃料電池21における従来のガスセパレータ26には、これを用いて電解質部材23を積層した積層体において、電解質部材23の側面が外部に露出していることによって、携帯時の落下等により損傷を受けやすく、燃料電池21全体の機械的信頼性を確保し難いという問題点があった。
また、携帯電子機器に燃料電池21を搭載するためには、従来の大型燃料電池とは異なった、コンパクト性、簡便性、安全性に優れる燃料電池用容器が必要になる。即ち、汎用の化学電池のようなポータブル電源として適用するためには、燃料電池用容器を小型化、低背化する必要があるが、従来の燃料電池21では熱容量の割合の大部分を占めるガスセパレータ26は、特にカーボン板の表面に切削加工で流路が形成されているガスセパレータ26の場合など、薄肉化すると脆くなるため、数mmの厚みが必要である。このため、小型化、低背化が困難であるという問題点もあった。
また、従来の大型燃料電池は、セルの積層方向の一端、他端には、それぞれ所定の厚さを有するエンドプレートが備えられている。このエンドプレートには、一対のネジ穴が形成されていて、ネジが挿通するようになっている。そして、これに伴い、各セルのセパレータにも上記エンドプレートに形成されたネジ穴に対応した穴が形成されている。そして、これら積層されたセルをボルトにて結合し、一体化する。このため、小型化、低背化が困難であるという問題点もあった。
さらに、燃料電池21の出力電圧は、電解質部材23の表裏面の各電極24,25に供給されるガスの分圧によって決まるが、電解質部材23に供給された燃料ガスが燃料流路28を進んで発電反応において消費されると、燃料極24の面上の燃料ガスの分圧が下がって出力電圧が下がる。また同様に、空気も空気流路29を進んで消費されると、空気極25の面上の酸素の分圧が下がって出力電圧が下がる。従って、一定の分圧を維持しながら燃料ガスを均等に供給する必要があるが、従来の燃料電池21のガスセパレータ26は、特にカーボン板の表面に切削加工により流路を形成していることから、薄型化したときに流路の溝の深さが小さくなるため、流路抵抗が大きくなり、均一なガス供給が困難であるという問題点もあった。
また、複数の電解質部材23,燃料極24,空気極25およびガスセパレータ26の組み合わせが、任意に効率よく直列接続または並列接続されて、全体の出力電圧および出力電流が調整されるようにする必要があるが、従来の燃料電池21では電解質部材23を挟む燃料極24および空気極25から電気を取り出すためには、外部に配線導体を引き出し接続する方法か、もしくはガスセパレータ26を導電性シートと重ね合わせて直列接続する方法しかなく、小型燃料電池においてはそれが困難であるという問題点もあった。
本発明は、以上のような従来の技術の問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、電解質部材を収納可能な、小型で堅牢な燃料電池用容器であり、また燃料電池の組み立ての容易化を図ると共に発電性能の向上を図ることができる信頼性の高い燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池を提供することにある。
本発明の燃料電池用容器は、下側主面に第1電極、上側主面に第2電極がそれぞれ形成された電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記電解質部材の前記下側主面に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面に一端が配設され、他端が前記基体の外面に導出された第1配線導体と、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着されセラミックスから成る蓋体と、前記電解質部材の前記上側主面に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、一端が前記第2電極に対向する前記蓋体の下面に配設され、他端が前記蓋体の外面に導出された第2配線導体と、一端が1つの前記凹部の底面で前記第1電極に対向し、他端が前記基体の前記蓋体が取着される上面に導出された第3配線導体と、一端が前記蓋体の下面で他の1つの前記凹部側の前記第2電極に対向し、他端が前記基体の上面に取される前記蓋体の下面に前記第3配線導体の他端と対向するように導出された第4配線導体が形成されている燃料電池用容器であって、前記基体内部の前記第3配線導体の他端の周囲および前記蓋体内部の前記第4配線導体の他端の周囲の少なくとも一方にヒーターが形成されていることを特徴とする。
本発明の燃料電池容器の接合方法は、燃料電池用容器の前記第3配線導体の他端と前記第4配線導体の他端との間に設けられた導電性接合材を前記ヒーターによって局所的に加熱することによって、前記第3および第4配線導体を電気的に接続するとともに前記基体および前記蓋体を取着することを特徴とする。
本発明の燃料電池容器の製造装置は、燃料電池用容器の前記基体および前記蓋体に加重を加えてそれらを圧接させた状態で前記ヒーターに電力を入力することにより、前記第3および第4配線導体を電気的に接続することを特徴とする。
本発明の燃料電池は、燃料電池用容器の複数個の前記凹部に前記電解質部材を収容して、前記電解質部材の前記第1電極が形成された前記下側主面に対向させて前記第1流体流
路を形成し、前記電解質部材の前記第2電極が形成された前記上側主面に対向させて前記第2流体流路を形成して、前記第1流体流路と前記電解質部材の前記下側主面との間および前記第2流体流路と前記電解質部材の前記上側主面との間でそれぞれの流体がやりとり可能にするとともに、前記第1および第2配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第3および第4配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に、前記凹部を覆うとともに、前記第3配線導体の他端と前記第4配線導体の他端との間に設けられた導電性接合材を前記ヒーターによって局所的に加熱することによって、前記第3および第4配線導体の他端同士を接続して前記蓋体を取着して成ることを特徴とする。
本発明の電子機器は、電源として上記本発明の燃料電池を有していることを特徴とする。
本発明の燃料電池用容器は、下側主面に第1電極、上側主面に第2電極がそれぞれ形成された電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、基体の凹部の周囲の上面に凹部を覆って取着されセラミックスから成る蓋体とを具備していることから、燃料電池用容器内を気密に封止することで、気体等の流体の漏れがなく、この容器の他にパッケージ等の容器を設ける必要がないので、効率良く動作させることができる燃料電池を得ることができるとともに、小型化にも有効なものとなる。また、凹部を上面に有するセラミックスから成る基体とこの凹部を封止する蓋体とで形成される箱体内に複数の電解質部材を収納して燃料電池とすることができるので、電解質部材が容器の外部に露出して損傷を受けたりすることがなく、燃料電池全体としての機械的信頼性が向上する。また、凹部および蓋体で構成される容器内部に一端が配設された第1および第2配線導体の他には電解質部材自体に無用な電気的接触をしないで済むので、信頼性および安全性の高い燃料電池を得ることができる。さらに、燃料電池用容器の構成材料としてセラミックスを用いたことにより、各種のガスを始めとする流体に対する耐食性に優れる燃料電池を得ることができる。
また、電解質部材の下側主面に対向する凹部の底面から基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、電解質部材の上側主面に対向する蓋体の下面から蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路とを具備していることから、複数のそれぞれの流体流路は、電解質部材を挟んで、それぞれ対向する内壁面に設けられているため、電解質部材へ供給される流体の均一供給性を向上させることができる。このような流体経路によれば、流体が電解質部材に対して垂直に流れるため、例えば、流体が水素ガスと空気(酸素)ガスとの場合に、電解質部材が下側および上側主面にそれぞれ有する第1および第2電極に供給される各ガス分圧が下がるのを抑制し、所定の安定した出力電圧を得ることができる。さらに、供給される流体の圧力、例えばガス分圧が安定するため、燃料電池用容器の内部温度の分布が均一化され、その結果、電解質部材に生じる熱応力を抑制することができ、燃料電池の信頼性を向上させることができる。
さらに、それぞれの流体流路は基体と蓋体とに形成されるため、各流路の密閉性に優れ、本来は流路的に隔絶されるべき2種類の原料流体(例えば酸素ガスと水素ガスもしくはメタノール等)が混合することによって燃料電池としての機能が発現されなくなることがなく、また、可燃性の流体が高温で混合された後に引火、爆発を起こす危険性もないので、安全な燃料電池を提供することができる。
また、本発明の燃料電池用容器によれば、電解質部材を収容する複数個の凹部を有する基体およびこれに取着される蓋体に形成された、一端が1つの凹部の底面で第1電極に対向し、他端が基体の蓋体が取着される上面に導出された第3配線導体と、一端が蓋体の下面で他の1つの凹部側の第2電極に対向し、他端が基体の上面に取される蓋体の下面に第3配線導体の他端と対向するように導出された第4配線導体とを具備していることから、複数個の電解質部材を電気的に接続することでそれらを直列接続することが可能となる。その結果、一つ一つの電解質部材の発電では微小電圧であっても、直列接続により合計の電圧の調整ができるため、電解質部材で電気化学的に生成された電気を良好な状態で外部に取り出すことが可能となる。
また、基体内部の第3配線導体の他端の周囲および蓋体内部の第4配線導体の他端の周囲の少なくとも一方にヒーターが形成されているため、ヒーターに電流を印加し、電流を制御することにより、第3配線導体と第4配線導体の隙間を電気的に接続するための導電性接合材を溶融し、硬化させるに十分な熱量を局所的に供給することが可能となる。ヒーターから発生する熱が3配線導体と第4配線導体の接合領域のみに制限されるため、低耐熱の電解質部材が破れる、ピンホールを発生させるなどの損傷を防ぐことができる。
また、本発明の燃料電池容器の接合方法によれば、燃料電池用容器の第3配線導体の他端と第4配線導体の他端との間に設けられた導電性接合材をヒーターによって局所的に加熱することによって、第3および第4配線導体を電気的に接続するとともに基体および蓋体を取着するため、第3および第4配線導体の接合部の電気抵抗および接触抵抗が小さくなるため、発電時の電圧ロスが抑制され、結果として発電性能が向上する。また、接合部における接続信頼性を高くすることができる。
また、本発明の燃料電池容器の製造装置によれば、燃料電池用容器の基体および蓋体に加重を加えてそれらを圧接させた状態でヒーターに電力を入力することにより、第3および第4配線導体を電気的に接続するため、リフロー処理を行う場合においては、電解質部材に許容以上の温度負荷が加わるため、電解質部材が損傷しやすく、また、炉内で必要十分な加重を加えることが困難であるのに対し、上記の本発明の燃料電池用容器の製造装置を用いることにより、燃料電池のサイズや厚みに制約を受けることなく、電解質部材を損傷することなく、燃料電池製造の際の製造工程の簡略化、コストの抑制を図ることができる。
本発明の燃料電池は、燃料電池用容器の複数個の凹部に電解質部材を収容して、電解質部材の下側主面および上側主面を第1流体流路および第2流体流路の間でそれぞれの流体が流通可能なように配置するとともに、第1および第2配線導体を第1および第2電極に、ならびに第3および第4配線導体を第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、基体の凹部の周囲の上面に、凹部を覆うとともに第3および第4配線導体の他端同士を接続して蓋体を取着して成ることから、以上のような本発明の燃料電池用容器による特長を備えた、小型、堅牢で、燃料電池の組み立ての容易化を図ると共に、発電性能の向上を図ることができる信頼性の高い燃料電池を得ることができる。
本発明の電子機器は、電源として本発明の燃料電池を有していることから、以上のような本発明の燃料電池用容器による特長を備えた、小型,低背で、かつ長期にわたり安定して作動させることのできる安全性や利便性に優れた電子機器を得ることができる。
また、電源として有している燃料電池に、基体および蓋体の少なくとも一方に、外部接続用端子(正極端子および負極端子)を具備させると、電子機器の回路基板に容易に電気的接続が可能となり、着脱が自在となる。そのため、特殊な安全設備を備えた施設等によることなく、容易に燃料電池を新しいものと取り替えることができ、電子機器の利便性を高いものとすることができる。
さらに、燃料電池用容器の基体の内部にメタライズ法等により金属層を種々の形状,電気特性で形成することができるので、基体の内部に、抵抗やキャパシタンスやインダクタンス等として機能する電子回路素子を形成することができる。従って、例えば、燃料電池に平行して、大容量のキャパシタを形成することで、燃料電池から出力される電流が不足する状態となった場合、不足する電流分が補填されて目標出力電流に応じた電流供給を確保することが可能である。また、昇圧回路を形成することができるため、電子機器に必要な電圧を確保することが可能である。
本発明の燃料電池用容器および燃料電池を添付図面に基づき以下に詳細に説明する。
図1は本発明の燃料電池用容器およびそれを用いた燃料電池について実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、1は燃料電池、2は燃料電池用容器、3は電解質部材、4は第1電極、5は第2電極、6は基体、7は蓋体、8は第1流体流路、9は第2流体流路、10は第1配線導体、11は第2配線導体、12は第3配線導体、13は第4配線導体、14はヒーター、15は導電性接合材、16は接合電極、17は接合材である。
本発明における電解質部材3は、例えばイオン導電膜(交換膜)の両主面上に、下側主面に形成された第1電極4および上側主面に形成された第2電極5にそれぞれ対向するように、アノード側電極となる燃料極(図示せず)と、カソード側電極となる空気極(図示せず)とが一体的に形成されている。そして、電解質部材3で発電された電流を第1電極4、第2電極5へ流し、外部へ取り出すことができる。
このような電解質部材3のイオン導電膜(交換膜)は、パーフルオロカーボンスルフォン酸樹脂、例えば商品名「ナフィオン」(デュポン社製)等のプロトン伝導性のイオン交換樹脂により構成されている。また、燃料極および空気極は、多孔質状態のガス拡散電極であり、多孔質触媒層とガス拡散層の両方の機能を兼ね備えるものである。これらの燃料極および空気極は、白金、パラジウムあるいはこれらの合金等の触媒を担持した導電性微粒子、例えばカーボン微粒子をポリテトラフルオロエチレンのような疎水性樹脂結合剤により保持した多孔質体によって構成されている。
電解質部材3の下側主面の第1電極4および上側主面の第2電極5は、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子の付いた炭素電極を電解質部材3上にホットプレスする方法、または、白金や白金−ルテニウム等の触媒微粒子の付いた炭素電極材料と電解質材料を分散した溶液との混合物を電解質上に塗布または転写する方法等により形成される。
燃料電池用容器2は、凹部を有する基体6と蓋体7とから成り、電解質部材3を凹部の内部に搭載して気密に封止する役割を持ち、酸化アルミニウム(Al)質焼結体、ムライト(3Al・2SiO)質焼結体、炭化珪素(SiC)質焼結体、窒化アルミニウム(AlN)質焼結体、窒化珪素(Si)質焼結体、ガラスセラミックス焼結体等のセラミックス材料で形成されている。
なお、ガラスセラミックス焼結体はガラス成分とフィラー成分とから成るが、ガラス成分としては、例えばSiO−B系,SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−M O系(但し、MはLi,NaまたはKを示す),SiO−B−Al−M O系(但し、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,Bi系ガラス等が挙げられる。
また、フィラー成分としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物、AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等が挙げられる。
燃料電池用容器2は、凹部を有する基体6と蓋体7とから成り、基体6の凹部に、電解質部材3の形状に合わせたシール部材(図示せず)と電解質部材3を挿入し、蓋体7が基体6に取着されることで、封止されている。なお、蓋体7にも基体6と同様の凹部を形成してもよい。
基体6および蓋体7は、それぞれ厚みを薄くし、燃料電池1の低背化を可能とするためには、機械的強度である曲げ強度が200MPa以上であることが好ましい。
基体6および蓋体7は、例えば相対密度が95%以上の緻密質からなる酸化アルミニウム質焼結体で形成されていることが好ましい。その場合、例えば、まず酸化アルミニウム粉末に希土類酸化物粉末や焼結助剤を添加、混合して、酸化アルミニウム質焼結体の原料粉末を調製する。次に、この酸化アルミニウム質焼結体の原料粉末に有機バインダおよび分散剤を添加、混合してペースト化し、このペーストからドクターブレード法によって、あるいは原料粉末に有機バインダを加え、プレス成形、圧延成形等によって、所定の厚みのグリーンシートを作製する。そして、このグリーンシートに対して、金型による打ち抜き法、マイクロドリルによる穴あけ法、レーザ光照射よる穴あけ法等により、第1流体流路8および第2流体流路9としての貫通穴、ならびに第1配線導体10、第2配線導体11、第3配線導体12および第4配線導体13を配設するための貫通孔を形成する。なお、第1流体流路8および第2流体流路9は、金型による打ち抜きやプレス成形等により表面や内部に形成された溝であってもよい。
基体6および蓋体7を構成するセラミックス材料に酸化アルミニウム質焼結体を用いる場合、第1配線導体10、第2配線導体11、第3配線導体12および第4配線導体13は、酸化を防ぐために、タングステンおよびモリブデンで形成されているのが好ましい。その場合、例えば無機成分として、タングステンおよびモリブデンの粉末100質量部に対して、Alを3〜20質量部,Nbを0.5〜5質量部の割合で添加してなる導体ペーストを調製する。この導体ペーストをグリーンシートの貫通孔内に充填して、貫通導体としてのビア導体を形成する。
これらの導体ペースト中には、基体6や蓋体7のセラミックスとの密着性を高めるために、酸化アルミニウム粉末や、基体6や蓋体7を形成するセラミックス成分と同一の組成物粉末を、例えば0.05〜2体積%の割合で添加することも可能である。
なお、基体6や蓋体7の表層および内層への第1配線導体10、第2配線導体11、第3配線導体12および第4配線導体13の形成は、貫通孔へ導体ペーストを充填してビア導体を形成する前後あるいはそれと同時に、同様の導体ペーストをグリーンシートに対しスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法で所定パターンに印刷塗布して形成する。
その後、導体ペーストを印刷し充填した所定枚数のシート状成形体を位置合わせして積層圧着した後、この積層体を、例えば非酸化性雰囲気中にて、焼成最高温度が1200〜1500℃の温度で焼成して、目的とするセラミックスの基体6や蓋体7、第1配線導体10、第2配線導体11、第3配線導体12および第4配線導体13を得る。
また、第1配線導体10〜第4配線導体13は、電解質部材3にて電気化学的に生成された電気を効率よく外部に取り出すという観点からは、比電気抵抗が0.1ミリΩcm以下であることが好ましい。このような材料としては、銀,銀合金,銅,銅合金等が挙げられる。例えば、基体6や蓋体7をガラスセラミックス焼結体で形成し、第1配線導体10〜第4配線導体13を銅や銅合金とすることにより、基体6や蓋体7を第1配線導体10〜第4配線導体13と同時焼成して低抵抗の配線導体を容易に形成することができる。
また、燃料電池用容器2に形成された第1配線導体10〜および第4配線導体13を含むすべての導体の体積は、燃料電池用容器2の体積の0.5%以上であるのがよい。これにより、燃料電池用容器2に形成された導体の抵抗が小さくなり、電解質部材3にて電気化学的に生成された電気を効率よく外部に取り出すことができる。
また、基体6や蓋体7の少なくとも一方に、半田やロウ付け等により外部接続用端子(図示せず)が接合されてもよい。外部接続用端子は、電子機器の主となる電子回路を形成するためのマザーボード等と良好な電気接続が行なえる形状であることが望ましい。このような形状としては、例えば、電子機器の主となる電子回路に端子同士を接触や挿入することにより簡単に電気的、機械的に接続することができるような棒状、鉤状、円錐状等のものが用いられる。なお、電子機器の主となる電子回路のうち、このような外部接続用端子が接続される部位には、この外部接続用端子に対応した嵌合部(挿入穴やコネクタ等の接続孔)を設けておくことが好ましい。さらに、外部接続用端子を基体6や蓋体7の側面に配置することで、電子機器の低背化を行なうことができる。
また、基体6や蓋体7は、その厚みを0.2mm以上とすることが好ましい。厚みが0.2mm未満では、強度が低下しがちなため、基体6に蓋体7を取着したときに発生する応力により、基体6および蓋体7に割れ等が発生しやすくなる。他方、厚みが5mmを超えると、薄型化、低背化が困難となるため、小型携帯機器に搭載する燃料電池1としては不適切となり、また、熱容量が大きくなるため、電解質部材3の電気化学反応条件に相当する適切な温度にすばやく設定することが困難となる。
第1配線導体10、第2配線導体11、第3配線導体12および第4配線導体13は、それぞれ電解質部材3の第1電極4および第2電極5に電気的に接続されて、電解質部材3で発電された電流を燃料電池用容器2の外部へ取り出すための導電路として機能する。
第1配線導体10は、基体6の凹部の底面の電解質部材3の第1電極4に対向する第1流体流路8の開口部の周辺に、好ましくは電解質部材3の第1電極4が接触する部位の面の全域に一端が当接するように形成されている。これにより、電解質部材3の第1電極4と第1配線導体10との接触面積を大きくすることができることから、電気抵抗の増大化および接触不良を有効に抑えることができ、高い発電効率を有した燃料電池1を得ることができる。
また、第1配線導体10は、第1電極4に接触させやすいように基体6の凹部の底面より10μm以上高くするように形成するのが良い。この高さを得るためには、上述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、印刷条件を厚くするように設定すればよい。また、第1配線導体10は第1電極4に対向させて複数配置し、第1配線導体10による電気損失を減少させることが良く、第1配線導体10の基体6の貫通部についてはφ(直径)50μm以上の径とすることが好ましい。
また、第2配線導体11は、蓋体7の下面の電解質部材3の第2電極5に対向する第2流体流路9の開口の周辺に、電解質部材3の第2電極5が接触する部位の面の全域に一端が配設され、他端が蓋体7の外面に導出されて形成されているのがよい。これにより、電解質部材3の第2電極5と第2配線導体11との接触面積を大きくすることができることから電気抵抗の増大化および接触不良を有効に抑えることができ、高い発電効率を有した燃料電池1を得ることができる。
このような第2配線導体11も、第1配線導体10と同様に、蓋体7と一体的に形成され、第2配線導体11を第2電極5に接触させやすいように第2電極5に対向する蓋体7の下面より10μm以上高くするように形成するのが良い。この高さを得るためには、上述したように導体ペーストを印刷塗布して形成する際に、印刷条件を厚くするように設定すればよい。また、第2配線導体11は第2電極5に対向させて複数配置し、第2配線導体11による電気損失を減少させることが良く、第2配線導体11の蓋体7の貫通部についてはφ50μm以上の径とすることが好ましい。
これら第1配線導体10〜第4配線導体13および外部接続用端子には、その露出する表面に良導電性で、かつ耐蝕性およびロウ材との濡れ性が良好なニッケル、銅、金、白金およびパラジウム等の金属をメッキ法により被着させておくと良く、これらの導体と電子機器の主となる電子回路を形成するためのマザーボード等との電気的接続を良好とすることができる。
そして、これら第1および第2配線導体10,11と第1および第2電極4,5との電気的な接続は、基体6と蓋体7とで電解質部材3を挟み込むことによって、第1および第2配線導体10,11と第1および第2電極4,5とを圧着接触させて電気的接続させる等の構成によって行なえばよい。
また、第1電極4および第2電極5に対向する基体6の凹部の底面および蓋体7の下面には、それぞれ第1流体流路8および第2流体流路9が配置されており、第1流体流路8は基体6の外面にかけて、また第2流体流路9は蓋体7の外面にかけて形成されている。これら第1および第2流体流路8,9は、それぞれ基体6や蓋体7に形成した貫通穴あるいは溝によって、燃料ガス例えば水素に富む改質ガス、あるいは酸化ガス例えば空気等の、電解質部材3へ供給される流体の通路として、あるいは反応で生成される水等の、反応後に電解質部材3から排出される流体の通路として設けられている。
第1流体流路8および第2流体流路9として基体6および蓋体7に形成される貫通穴あるいは溝は、電解質部材3に均等に燃料ガスや酸化ガス等の流体が供給されるように、燃料電池1の仕様に応じて、貫通穴の径や数、あるいは溝の幅、深さ、配置を決めればよい。
本発明の燃料電池用容器2および燃料電池1においては、第1流体流路8および第2流体流路9は、好適には、電解質部材3に均一な圧力で流体を流すため、φ0.1mm以上の穴径とし、間隔を一定にして配置するようにするとよい。
このように電解質部材3の第1電極4が形成された下側主面に対向させて第1流体流路8を、第2電極5が形成された上側主面に対向させて第2流体流路9を形成したことによって、電解質部材3の下側および上側主面と第1および第2流体流路8,9との間で流体がやりとり可能となり、その流体がそれぞれの流路を通して供給あるいは排出される。そして、例えば流体としてガスを供給する場合、電解質部材3の第1電極4および第2電極5にそれぞれ供給されるガス分圧が下がることをなくすことができ、所定の安定した出力電圧を得ることができる。さらに、供給されるガス分圧が安定するため、燃料電池1の内部圧力が均一化され、その結果、電解質部材3に生じる熱応力を抑制することができるので、燃料電池1の信頼性を向上させることができる。
そして、本発明においては、電解質部材3を収容する凹部複数個有するセラミックスから成る基体6およびこれに取着されセラミックスから成る蓋体7に形成された、一端が1つの凹部の底面で第1電極4に対向し、他端が基体6の蓋体7が取着される上面に導出された第3配線導体12と、一端が蓋体7の下面で他の1つの凹部側の第2電極5に対向し、他端が基体6の上面に取される蓋体7の下面に第3配線導体12の他端と対向するように導出された第4配線導体15とを具備していることから、複数個の電解質部材3を電気的に接続することでそれらを直列接続することが可能となる。その結果、一つ一つの電解質部材3の発電では微小電圧であっても、直列接続により合計の電圧の調整ができるため、電解質部材3にて電気化学的に生成された電気を良好な状態で外部に取り出すことが可能となる。
本発明において、基体6内部の第3配線導体12の他端の周囲および蓋体7内部の第4配線導体13の他端の周囲の少なくとも一方にヒーター14が形成され、電流を制御することにより、第3配線導体12と第4配線導体13の隙間を電気的に接続するための導電性接合材15を溶融し、硬化させるに十分な熱量を局所的に供給することが可能となる。ヒーター14のパターンとしては、メアンダ形状のもの、直線状の帯状のもの、あるいは円弧状の帯状のもの、同心円状のものや渦巻き状のものなど、導電性接合材15や接合材17を均一に加熱できるパターン形状であればよく、種々のパターンとすることができる。また、発熱の局所性を上げるために、ヒーター14を複数のパターンに分割することも可能である。
ヒーター14には、金や銀,パラジウム,白金族の金属またはこれらの合金や、タングステン,チタン,窒化チタン,ニッケル等の高融点金属を使用することができる。ヒーター14には、金や銀,パラジウム,白金等の材質から成る給電部(図示せず)が形成され、この給電部に導通端子を押圧して接触させること等により、導通が確保されている。これにより、ヒーター14に電流を印加することにより、局所的に温度を上げることが可能となる。その結果、ヒーター14の発生する熱により、低耐熱の電解質部材3が破れる、ピンホールを発生させるなどの損傷を防ぐことができる。
導電性接合材15としては、錫−銀合金半田、錫−銀−銅合金半田等の半田、金−錫合金ろう材等の低融点ろう材、銀−ゲルマニウム合金ろう材等の高融点ろう材、銀,銅等の導電性粉末を樹脂で結合して成る導電性樹脂接着剤、金、銀、アルミ、銅などの金属箔、メッシュ状の金属板、金属箔粘着テープなどを使用することができる。接触抵抗や導通抵抗を低減するために、導電性接合材15の電気抵抗は、10mΩ/cm以下とすることが好ましく、さらに1mΩ/cmであることが好ましい。
接合材17としては、錫−銀合金半田、錫−銀−銅合金半田等の半田、金−錫合金ろう材等の低融点ろう材、銀−ゲルマニウム合金ろう材等の高融点ろう材、シリコーン系、ポリイミド系、アクリル系などの樹脂材料系の接着剤、ポリエステル系樹脂等である熱可塑性の接着シート等が挙げられるが、接合電極16同士を強固に固着することができる材質であればよく、さらに硬化した後に常圧程度であれば、気密性を保持できる材質であることが望ましい。
また、燃料電池用容器2の第3配線導体12の他端と第4配線導体13の他端との間に設けられた導電性接合材15をヒーター14によって局所的に加熱することによって、第3および第4配線導体を電気的に接続するとともに基体6および蓋体7を取着することから、第3および第4配線導体12,13の接合部の電気抵抗および接触抵抗が小さくなるため、発電時の電圧ロスが抑制され、結果として発電性能が向上する。また、接合部における接続信頼性を高くすることができる。
さらに、燃料電池用容器2の基体6側の接合電極16と蓋体6側の接合電極16との間に設けられた接合材17をヒーター14によって局所的に加熱することによって、基体6側および蓋体7側の接合電極16を接合するとともに基体6および蓋体7を取着するため、燃料電池用容器2の固定に必要なエンドプレートやネジなどの部材が不要となり、部品点数の削減による、小型、低背化が可能となる。そのため、機器の小型化への制約や設計上の制約を解消し得る燃料電池1を得ることができる。また、接合後においても、ヒーター14に電流を印加することで容易にリペアも可能である。
ここで、第3配線導体12の他端と第4配線導体13の他端との電気的な接続、および基体6側および蓋体7側の接合電極16の接合を同時に行い、ヒーター14への電力印加を簡易にするため、各部のヒーター14は連続された配線であるのが好ましい。さらには、各部のヒーター14の抵抗を変更することにより、導電性接合材15および接合材17の硬化に必要な温度を調整することも可能である。また、導電性接合材15および接合材17は同じ材料であってもよい。
燃料電池用容器2の製造装置(図示せず)として、燃料電池用容器2の基体6および蓋体7に加重を加えてそれらを圧接させた状態でヒーター14に電力を入力することにより、第3および第4配線導体12,13を電気的に接続する、または、燃料電池用容器2の基体6および蓋体7に加重を加えてそれらを圧接させた状態でヒーター14に電力を入力することにより、第3および第4配線導体12,13を電気的に接続するとともに基体6側および蓋体7側の接合電極16を接合するために、ヒーター14に電力を印加可能な接続端子を表面に備えた支持部により、燃料電池用容器2の基体6および蓋体7の両面を圧縮する機能を具備すればよい。
このとき、電解質部材3の下側主面の第1電極4および上側主面の第2電極5と第1配線導体10〜第4配線導体13との十分な接触を保持するために、適切で均一な加重が必要である。また、ヒーター14への電力印加は、導電性接合材15および接合材17の溶融に十分な熱が短時間に供給されるような電流値および時間が必要である。また、導電性接合材15および接合材17にヒーター14によって局所的に加熱されるように、支持部の構造は、燃料電池用容器2に接触する場所に応じて、断熱あるいは放熱の構造をとることが好ましい。
従って、リフロー処理を行う場合、電解質部材3に許容以上の温度負荷が加わるため、電解質部材3が損傷しやすく、また、炉内で必要十分な加重を加えることが困難であるのに対し、上記本発明の燃料電池用容器2の製造装置を用いることにより、燃料電池1のサイズや厚みに制約を受けることなく、電解質部材3を損傷することなく、燃料電池1製造の際の製造工程の簡略化、コストの抑制を図ることができる。
本発明の燃料電池1は、燃料電池用容器2の複数個の凹部に電解質部材3を収容して、電解質部材3の下側主面および上側主面を第1流体流路8および第2流体流路9の間でそれぞれの流体が流通可能なように配置するとともに、第1および第2配線導体10,11を第1および第2電極4,5に、ならびに第3および第4配線導体12,13を第1および第2電極4,5にそれぞれ電気的に接続し、基体6の凹部の周囲の上面に、凹部を覆うとともに第3および第4配線導体12,13の他端同士を接続して蓋体7を取着して成ることから、以上のような本発明の燃料電池用容器2による特長を備えた、小型、堅牢で、燃料電池1の組み立ての容易化を図ると共に、発電性能の向上を図ることができる信頼性の高い燃料電池1を得ることができる。
以上の構成により、図1に示すような、電解質部材3を収納可能な、小型で堅牢な燃料電池用容器2が得られ、高効率制御が可能な本発明の燃料電池1が得られる。
次に、上記の燃料電池1を電源として有する本発明の電子機器について説明する。
本発明の電子機器は電源として上記のような燃料電池1を有していることから、以上のような本発明の燃料電池用容器2による特長を備えた、小型,低背で、かつ長期にわたり安定して作動させることのできる安全性や利便性に優れた電子機器を得ることができる。
また、電源として有している燃料電池1に、基体6および蓋体7の少なくとも一方に、外部接続用端子(正極端子および負極端子)を具備させると、電子機器の回路基板に容易に電気的接続が可能となり、着脱が自在となる。そのため、特殊な安全設備を備えた施設等によることなく、容易に燃料電池1を新しいものと取り替えることができ、電子機器の利便性を高いものとすることができる。
さらに、燃料電池用容器2の基体6の内部にメタライズ法等により金属層を種々の形状,電気特性で形成することができるので、基体6の内部に、抵抗やキャパシタンスやインダクタンス等として機能する電子回路素子を形成することができる。従って、例えば、燃料電池1に平行して、大容量のキャパシタを形成することで、燃料電池1から出力される電流が不足する状態となった場合、不足する電流分が補填されて目標出力電流に応じた電流供給を確保することが可能である。また、昇圧回路を形成することができるため、電子機器に必要な電圧を確保することが可能である。
なお、このように基体6の内部に、抵抗やキャパシタンスやインダクタンスを形成する場合には、基体6はガラスセラミックスから成ることが好ましい。
そして、本発明の電子機器としては、具体的には携帯電話,PDA(Personal Digital Assistants),デジタルカメラやビデオカメラ,ゲーム機などの玩具等の携帯型電子機器、また、ノート型PC(パーソナルコンピュータ)をはじめとするポータブルなプリンター,ファクス,テレビ,通信機器,オーディオビデオ機器,扇風機等の各種家電製品,電動工具等の電子機器がある。
これらの電子機器は、近年、液晶表示装置等を用いた動画表示の機能を付加したものが使用されるようになってきている。このような動画表示は電源の消費が非常に大きいことから、従来の蓄電池を用いた電子機器では短時間で動作不能となるのに対し、本発明の電子機器は非常に長時間の電源を供給できる燃料電池1を搭載しており、動画表示を行なっても長時間の動作が可能となる。
例えば携帯電話の場合、中央処理装置(CPU)と、制御部と、ランダムアクセスメモリ(RAM)と、リードオンメモリ(ROM)と、使用者により操作されたデータをCPUに入力する入力部と、アンテナと、アンテナで受信された信号を復調して制御部に供給すると共に、制御部から供給された信号を変調してアンテナより送信させる無線部と、制御部からの鳴動信号に基づき鳴音するスピーカと、制御部からの制御により点灯、消灯あるいは点滅する発光ダイオード(LED)と、制御部から信号により情報の表示を行なう表示部と、制御部からの駆動信号により振動するバイブレータと、使用者の音声を音声信号に変換して制御部へ伝達し、制御部からの音声信号は音声に変換して出力する送受話部と、各部に電源を供給する電源部とから構成されており、その電源部に本発明の燃料電池1および燃料電池用容器2が組み込まれることによって、燃料電池1および燃料電池用容器2が、コンパクト性、簡便性および安全性に優れ、燃料の均等供給および高効率な電気接続による長時間の電源供給が可能となることから、携帯電話の小型、低背化および軽量化が可能となる。
また、近時の携帯電話が小型化、低背化の面では十分であることを考慮すると、このように燃料電池1を小型、低背化することよって生じたスペースに、例えば、カメラやビデオ等の電話機能以外の機能を有する電子部品を新たに組み込むことが可能となり、更なる多機能化を行なうことができる。
また、新たに電子部品を組み込む替わりに、衝撃吸収材や衝撃防止部材等を主要な電子回路を保護するようにして設けることもできる。この場合、落下等により携帯電話本体に衝撃が加わった際の耐衝撃性や、雨中での使用等の際の防水性などを従来よりも強固にし得る構造とすることもできる。
また、携帯電話本体内部の電気回路部を小さくすることが可能となることによって、携帯電話本体の外形への制約が少なくなり、例えば、携帯電話を老人や子供にとって握りやすい形状とすること等の意匠性に優れた外形状とすることが可能となる。
また、電源部の構造を上述のように燃料電池1および燃料電池用容器2が着脱自在となる構造とした場合には、予備の燃料電池1および燃料電池用容器2を準備しておけば、電池切れ等が発生した場合に容易に予備の燃料電池1および燃料電池用容器2に交換、あるいは、燃料電池1を取り出して、燃料の補給や交換をすることができるので、継続して通話等を行うことができ、従来の蓄電池を電源として使用するもの等に比べて利便性に優れるものとなる。
また、交換された(使用済みの)燃料電池1は、燃料を補給することによりすぐに再利用できるので、充電に比べて使い勝手がよく、また資源を有効利用することも可能なものとなる。また、自然災害等による長期にわたる停電等の緊急時や屋外においても使用が可能となるという利点がある。
また、ノート型PC(パーソナルコンピュータ)の場合、パーソナルコンピュータ本体と、パーソナルコンピュータ本体に所定のデータを入力するためのキーボードとを納めた第1の筐体と、キーボードにより入力されたデータあるいはパーソナルコンピュータ本体により処理されたデータを表示するためのディスプレイを納めた第2の筐体とを備え、第2の筐体が第1の筐体に開閉可能に取り付けられており、さらに各部に電源を供給する電源部を第1の筐体に設けるという基本構成から成り、その電源部に燃料電池1および燃料電池用容器2が組み込まれる。この場合、前述の携帯電話と同様に、本発明の電子機器に組み込まれる燃料電池1および燃料電池用容器2が、コンパクト性、簡便性および安全性に優れ、燃料の均等供給および高効率な電気接続による長時間の電源供給が可能となることから、ノート型PC(パーソナルコンピュータ)本体の小型、低背化、軽量化および多機能化が可能となるとともに、ディスプレイの大型化や高解像度化に対応して、大きな電流を安定して、長期にわたって供給することも可能で、ディスプレイが見やすく、かつ携帯の際の重量や容積上の負担も少ない等の利便性の高いノート型PC(パーソナルコンピュータ)とすることができる。
また、電源部の構造を燃料電池1および燃料電池用容器2が着脱自在となる構造とした場合には、予備の本発明の燃料電池1および燃料電池用容器2を準備しておけば、屋外や旅客機等の移動体内等の2次電池のみで使用するような状況において、従来に比べ飛躍的に長時間の電源供給が可能となるという利点がある。また、このように公共の場で使用する場合にも、安全性に優れることから、制約を受けることなく使用することが可能な、極めて利便性に優れたものとなる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更を行なっても何ら差し支えない。例えば、第1流体流路8や第2流体流路9については、燃料電池1全体を薄型化するため、基体6または蓋体7の側面からの流入口を設けるようにしてもよい。これによれば、特に携帯電子機器用として小型化を成す上で有効となる。さらに、第1および第2配線導体10,11については、基体6および蓋体7の外面に導出される他端を、それぞれ同じ側の側面に引き出すように配設してもよい。これによれば、燃料電池1の一方側面に配線や流路等をまとめることができ、小型化と外部への接合部の保護とが容易となり、信頼性の高い設計が可能となるとともに、長期間安定した作動が可能な燃料電池1となる。
また、基体6の凹部の内部には、複数の電解質部材3を収容してこれらを第1および第2配線導体10,11により電気的に接続して全体として高電圧あるいは大電流の出力を得るようにしてもよい。
また、図2に本発明の燃料電池用容器および燃料電池の実施の形態の他の例を断面図で示すように、第1流体流路8’および第2流体流路9’の少なくとも一方を、基体6’の凹部の底面または蓋体7’の下面に電解質部材3の下側主面または上側主面に対向するように溝状の開口が葛折状に形成された開口部18と、開口部18から基体6’または蓋体7’の外面にかけて形成された流体の導入部18と、他の開口部18または連結部19から基体6’または蓋体7’の外面にかけて形成された流体の排出部21とから構成してもよい。
これにより、平面に並んだ複数の電解質部材3への燃料ガスや酸化剤ガスの供給や排出が、基体6’または蓋体7’の内部に形成された3次元的な流体流路である連結部19、導入部20、排出部21を用いて、外部に漏れることなく気密に行なうことができるため、安全でかつ電気化学的に良好に、効率的に取り出すことができる燃料電池1’を提供することができる。
これにより、複数の電解質部材3の間の流体流路を、連結部19、導入部20、および排出部21で3次元的に自由に形成し、組み合わせることができ、電解質部材3の配置に応じて、燃料供給の一様性を保ちつつ、高密度に流体流路を形成することが可能となり、燃料電池1’の低背化,小型化が可能となる。
さらに、第3、第4配線導体12’,13’により3次元的に自由に配線ができるため、複数の電解質部材3を任意に直列接続または並列接続することが可能となる。その結果、全体の出力電圧および出力電流を効率よく調整することが可能となるため、電解質部材3にて電気化学的に生成された電気を良好に外部に取り出すことができる燃料電池用容器2’および燃料電池1’となる。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることは何ら差し支えない。
本発明の燃料電池用容器を用いた燃料電池の実施の形態の一例を示す断面図である。 本発明の燃料電池用容器を用いた燃料電池の実施の形態の他の例を示す断面図である。 従来の燃料電池の断面図である。
符号の説明
1,1’:燃料電池
2,2’:燃料電池用容器
3:電解質部材
4:第1電極
5:第2電極
6,6’:基体
7,7’:蓋体
8,8’:第1流体流路
9,9’:第2流体流路
10,10’:第1配線導体
11,11’:第2配線導体
12,12’:第3配線導体
13,13’:第4配線導体
14,14’:ヒーター
15,15’:導電性接合材
16,16’:接合電極
17,17’:接合材

Claims (5)

  1. 下側主面に第1電極、上側主面に第2電極がそれぞれ形成された電解質部材を収容する凹部を上面に複数個有するセラミックスから成る基体と、前記電解質部材の前記下側主面に対向する前記凹部の底面から前記基体の外面にかけて形成された第1流体流路と、前記第1電極に対向する前記凹部の底面に一端が配設され、他端が前記基体の外面に導出された第1配線導体と、前記基体の前記凹部の周囲の上面に前記凹部を覆って取着されセラミックスから成る蓋体と、前記電解質部材の前記上側主面に対向する前記蓋体の下面から前記蓋体の外面にかけて形成された第2流体流路と、一端が前記第2電極に対向する前記蓋体の下面に配設され、他端が前記蓋体の外面に導出された第2配線導体と、一端が1つの前記凹部の底面で前記第1電極に対向し、他端が前記基体の前記蓋体が取着される上面に導出された第3配線導体と、一端が前記蓋体の下面で他の1つの前記凹部側の前記第2電極に対向し、他端が前記基体の上面に取される前記蓋体の下面に前記第3配線導体の他端と対向するように導出された第4配線導体が形成されている燃料電池用容器であって、前記基体内部の前記第3配線導体の他端の周囲および前記蓋体内部の前記第4配線導体の他端の周囲の少なくとも一方にヒーターが形成されていることを特徴とする燃料電池用容器。
  2. 請求項1記載の燃料電池用容器の前記第3配線導体の他端と前記第4配線導体の他端との間に設けられた導電性接合材を前記ヒーターによって局所的に加熱することによって、前記第3および第4配線導体を電気的に接続するとともに前記基体および前記蓋体を取着することを特徴とする燃料電池用容器の接合方法。
  3. 請求項1記載の燃料電池用容器の前記基体および前記蓋体に加重を加えてそれらを圧接させた状態で前記ヒーターに電力を入力することにより、前記第3および第4配線導体を電気的に接続することを特徴とする燃料電池用容器の製造装置。
  4. 請求項1記載の燃料電池用容器の複数個の前記凹部に前記電解質部材を収容して、前記電解質部材の前記第1電極が形成された前記下側主面に対向させて前記第1流体流路を形成し、前記電解質部材の前記第2電極が形成された前記上側主面に対向させて前記第2流体流路を形成して、前記第1流体流路と前記電解質部材の前記下側主面との間および前記第2流体流路と前記電解質部材の前記上側主面との間でそれぞれの流体が流通可能なようにするとともに、前記第1および第2配線導体を前記第1および第2電極に、ならびに前記第3および第4配線導体を前記第1および第2電極にそれぞれ電気的に接続し、前記基体の前記凹部の周囲の上面に、前記凹部を覆うとともに、請求項2記載の燃料電池用容器
    の接合方法を用いて前記第3および第4配線導体の他端同士を接続して前記蓋体を取着して成ることを特徴とする燃料電池。
  5. 電源として請求項記載の燃料電池を有していることを特徴とする電子機器。
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