(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は本第1実施形態の車両用空調装置を示す。車両用空調装置は、図1に示す前席運転席側空調ゾーン1a、前席助手席側空調ゾーン1b、後席運転席側空調ゾーン1c、後席助手席側空調ゾーン1dをそれぞれ独立に空調制御する。
ここで、前席運転席側空調ゾーン1aは、前席空調ゾーンのうち運転席2を含む領域であり、前席助手席側空調ゾーン1bは、前席空調ゾーンのうち助手席3を含む領域である。後席運転席側空調ゾーン1cは、後席空調ゾーンのうち運転席2の後側の座席を含む領域であり、後席助手席側空調ゾーン1dは後席空調ゾーンのうち助手席3の後側の座席を含む領域である。なお、図中の矢印は車両の前後左右の方向を示すものである。
次に、車両用空調装置の具体的構成について図2を参照して説明する。
車両用空調装置は、図2に示すように、前席運転席側空調ゾーン1aと前席助手席側空調ゾーン1bとをそれぞれ独立に空調するための前席空調システム5と、後席運転席側空調ゾーン1cと後席助手席側空調ゾーン1dとをそれぞれ独立に空調するための後席空調システム6、前席空調システム5および後席空調システム6を制御する制御装置8とから構成されている。
前席空調システム5は、車室内に向かって空気が流れる空気通路を構成するケース50、このケース50内において車室内に向かう空気流を発生させる送風機52、ケース50内を流れる空気を冷却する蒸発器53、車室内に吹き出す空気の温度を調節するエアミックス方式の吹出温度調節装置54を備える。
ケース50は、車室内の前方側の計器盤7(図1参照)の内側部に配設され、ケース50の上流側には、内気導入口50aおよび外気導入口50bの2つの導入口が設けられている。内気導入口50aおよび外気導入口50bの内側には内外気切替ドア51が回動自在に配置されている。内外気切替ドア51は、サーボモータ51aによって駆動されるもので、内気導入口50aより車室内空気(内気)を導入する内気循環モードと外気導入口50bより車室外空気(外気)を導入する外気導入モードとを切り替える。
ケース50の下流側には、運転者の上半身に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20a、助手席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すためのフェイス吹出口20bが設けられている。これら吹出口20a、20bの上流部には、吹出口切替ドア56b、56cが回動自在に配置されている。吹出口切替ドア56b、56cは、図示しないリンク機構を介してサーボモータ56a、56dによって駆動される。
また、ケース50の下流側には、図示しないが、車両の主にフロントガラスに向けて空調風を吹き出すためのデフロスト吹出口、運転者の下半身に向けて空調風を吹き出すための運転者側フット吹出口、助手席乗員の下半身に向けて空調風を吹き出すための助手席側フット吹出口が設けられている。これらの吹出口は、上記吹出口切替ドア56b、56cによって連動して開閉される。
送風機52は、制御装置8によりブロワ電圧が印加される送風機モータ52aによって回転速度が制御され、内気導入口50aまたは外気導入口50bから空気を吸入してケース50を介して車室内へ送風する。また、蒸発器53は、送風機52の下流側のケース50内に配設され、送風機52により送られてくる空気を冷却する冷房用熱交換器であって、冷凍サイクルを構成する要素のひとつである。
なお、冷凍サイクルは、圧縮機から、凝縮器、レシーバおよび膨張弁などを介して蒸発器53に冷媒が循環するように形成された周知のものである。
吹出温度調節装置54は、ヒータコア540、エアミックスドア55b、55c、および仕切り板57を備えている。仕切り板57は、エバポレータ53の下流部分を運転席側通路50cと助手席側通路50dとに仕切るためのものである。運転席側通路50cは、運転席側フェイス吹出口20aに空気を導くためのもので、助手席側通路50dは、助手席側フェイス吹出口20bに空気を導くためのものである。
ヒータコア540は、車両エンジンの冷却水(以下温水という)を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器であって、運転席側通路50cを流れる冷風を加熱するとともに、助手席側通路50dを流れる冷風を加熱する。
エアミックスドア55b、55cは、ヒータコア540の空気流れ上流側に回動自在に配置されており、エアミックスドア55bは、サーボモータ55aにより設定される開度に基づき、運転席側通路50cにおいて、ヒータコア540を通る空気量(温風量)とヒータコア540を迂回してバイパス通路50eを通る空気量(冷風量)とを調節する。そして、エアミックスドア55cは、サーボモータ55dにより設定される開度に基づき、助手席側通路50dにおいて、ヒータコア540を通る空気量(温風量)とヒータコア540を迂回してバイパス通路50fを通る空気量(冷風量)とを調節する。
また、後席空調システム6は、車室内に向かって空気が流れる空気通路を構成するケース60、このケース60内において車室内に向かう空気流を発生させる送風機62、送風機62からの空気流を左右に配風する配風ドア90、ケース60内を流れる空気を冷却する蒸発器63、車室内に吹き出す空気の温度を調節するためのエアミックス方式の吹出温度調節装置64を備える。そして、ケース60は、車室内の後席4(図1参照)の後側に配設され、ケース60の上流側には、車室内から空気を導入する内気導入口60aが設けられている。後席空調システム6は制御装置8とともに、空調制御手段に相当する。
ケース60の下流側には、右側後席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための第1の吹出口としてのDr側フェイス吹出口20cと、左側後席乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための第2の吹出口としてのPa側フェイス吹出口20dが設けられている。
すなわち、図3に示すように、ケース60の下流側には、右側通路60cおよび左側通路60dより、それぞれ第1のダクト21cおよび第2のダクト21dが車室の天井22付近まで形成され、それらの先端部に開口している第1および第2の吹出口としてのDr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dより、それぞれ空調風を吹き出すようになっている。
なお、右側(運転席側)および左側(助手席側)のDr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dは、図3に示すように、後席4の上方で車室の天井22の左右端部に互いに対向するように配置されている。
したがって、Dr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dよりそれぞれ吹き出される空調風は、天井22の表面に沿うように流れ、後席4の乗員に直接当たることなく、後席乗員の上方の空間で互いに衝突する。このときの衝突位置は、Dr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dからのそれぞれの風量の割合に応じた、車両の左右方向の適宜の位置となる。この2つの吹出口20c、20dから吹き出された空調風の衝突により、それぞれの空気流れの速度が減少し、また、それぞれの空気流の運動方向が、上方を天井22で遮られていることにより、その衝突位置の下方へと変化する。
これにより、衝突後の空調風が衝突位置の下方の乗員へマイルド(緩やか)に当たるので、後席乗員に風速感の少ない空調を与えることができる。
これらDr側およびPa側フェイス吹出口20c、20d、および、第1および第2のダクト21c、21dの上流部には、吹出口切替ドア66a、66bが回動自在に配置されている。吹出口切替ドア66a、66bは、図示しないリンク機構を介してサーボモータ66c、66dによって駆動される。
また、ケース60の下流側には、図示しないが、後席右側乗員の下半身に向けて空調風を吹き出すための運転者側フット吹出口、後席左側乗員の下半身に向けて空調風を吹き出すための助手席側フット吹出口が設けられている。これらの吹出口は、上記吹出口切替ドア66a、66bによって連動して開閉される。
送風機62は、制御装置8によりブロワ電圧が印加される送風機モータ62aによって回転速度が制御され、内気導入口60aから空気を吸入してケース60を介して車室内へ送風する。
配風ドア90は、送風機62の下流側であって、蒸発器63の上流側に回動自在に配置されている。この配風ドア90は、サーボモータ90aにより設定される開度に基づき、左右の通風量、すなわち、蒸発器63を通過して右側通路60cを通る風量と、左側通路60dを通る風量の割合を調節する。これら配風ドア90およびサーボモータ90aが配風ユニットに相当する。
蒸発器63は、送風機62の下流側のケース60内に配設されて、送風機62により送られてくる空気を冷媒によって冷却する冷房用熱交換器であって、上述した冷凍サイクルを構成する要素のひとつである。
なお、蒸発器63は、この冷凍サイクル内で、蒸発器53に並列的に配設されて、圧縮機から、凝縮器、レシーバおよび膨張弁などを介して冷媒が循環されてくるようになっている。
吹出温度調節装置64は、ヒータコア640、エアミックスドア65a、65b、および仕切り板67を備えている。仕切り板67は、蒸発器63の下流部分を右側通路60cと左側通路60dとに仕切るためのものである。右側通路60cは、Dr側フェイス吹出口20cに空気を導くためのもので、左側通路60dは、Pa側フェイス吹出口20dに空気を導くためのものである。
ヒータコア640は、車両エンジンの温水を熱源として空気を加熱する暖房用熱交換器であって、右側通路60cおよび左側通路60dを流れる冷風を加熱する。そして、エアミックスドア65a、65bは、ヒータコア640の空気流れ上流側に回動自在に配置されており、エアミックスドア65aは、サーボモータ65cにより設定される開度に基づき、右側通路60cにおいて、ヒータコア640を通る空気量とヒータコア640を迂回してバイパス通路60eを通る空気量とを調節する。
エアミックスドア65bは、サーボモータ65dにより設定される開度に基づき、左側通路60dにおいて、ヒータコア640を通る空気量とヒータコア640を迂回してバイパス通路60fを通る空気量とを調節する。
制御装置(エアコンECU)8は、CPU、ROMおよびRAM等を含んで構成されるもので、各空調ゾーン1a〜1dを空調制御する処理を行う。制御装置8には、サーボモータ51a、55a、55d、56c、56d、66c、66d、65c、65d、90aおよび送風機モータ52a、62aが接続される。
制御装置8には、温度設定スイッチ9、10、11、12、およびディスプレイ9a、10a、11a、12aが接続されており、温度設定スイッチ9は、乗員により操作されて、空調ゾーン1aの設定温度FrTSETDrを設定するためのものである。温度設定スイッチ10、11、12は、乗員により操作されて、空調ゾーン1b、1c、1dの設定温度FrTSETPa、RrTSETDr、RrTSETPaをそれぞれ設定するためのものである。ディスプレイ9a、10a、11a、12aは、制御装置8により制御されて、設定温度FrTSETDr、FrTSETPa、RrTSETDr、RrTSETPaをそれぞれ表示する。
制御装置8には、非接触温度センサ70、外気温センサ81、水温センサ82、日射センサ83a、83b、蒸発器温度センサ86、87および内気温センサ84、85が接続されている。なお、非接触温度センサ70は、本実施形態では用いていないため、他の実施形態の説明において詳述する。
外気温センサ81は、車室外温度を検出しその検出温度に応じた外気温信号Tamを制御装置8に出力する。水温センサ82は、エンジンの冷却水(すなわち温水)の温度を検出してその検出温度に応じた水温信号Twを制御装置8に出力する。
日射センサ83aは、車室内の運転席側空調ゾーン1aに入射される日射量を検出しその検出した日射量に応じた日射量信号TsDrを制御装置8に出力し、日射センサ83bは、車室内の助手席側空調ゾーン1bに入射される日射量を検出しその検出した日射量に応じた日射量信号TsPaを制御装置8に出力する。それぞれ検出される日射量信号TsDr、TsPaの比により日射方向がわかり、両者の加算値または平均値により日射の強さがわかる。なお、これら日射センサ83a、83bは、通常、2素子(2D)タイプの日射センサとして、例えば、計器盤7の上面に配置される(図1参照)。
蒸発器温度センサ86は、蒸発器53の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器温度信号FrTeを制御装置8に出力するもので、蒸発器温度センサ87は、蒸発器63の吹出空気温度を検出しその検出温度に応じた蒸発器温度信号RrTeを制御装置8に出力する。内気温センサ84は、前席空調ゾーン1a、1bの内気温FrTrを検出し、内気温センサ85は、後席空調ゾーン1c、1dの内気温RrTrを検出するものである。
次に、上記構成において第1実施形態の作動を説明する。
制御装置8は、車載バッテリ(図示せず)から給電されて、一定期間毎に制御プログラムを実行して空調制御処理を行う。ここで、前席空調処理および後席空調処理は、それぞれ図4および図8のメインルーチンにしたがって交互に実行される。以下に、前席空調処理および後席空調処理を分けて説明する。
<前席空調処理>
図4において、まず、ステップS100で、温度設定スイッチ9、10から設定温度信号FrTSETDr、FrTSETPaを読み込む。さらに、ステップS110で、外気温センサ81から外気温信号Tamを読み込み、内気温センサ84から内気温信号FrTrを読み込み、日射センサ83a、83bから日射量信号TsDr、TsPaを読み込む。
次にステップS120で、設定温度信号FrTSETDr、外気温信号Tam、内気温信号FrTr、日射量信号TsDrを数式1に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度FrTAODrを算出する。この目標吹出温度FrTAODrは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、前席右側(運転席側)空調ゾーン1aの温度を設定温度FrTSETDrに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1aの空調負荷に相当する量である。
FrTAODr=FrKset×FrTSETDr−FrKr×FrTr
−FrKam×Tam−FrKs×TsDr+FrC
・・・(数式1)
なお、FrKsetは前席用温度設定ゲイン、FrKrは前席用内気温ゲイン、FrKamは前席用外気温ゲイン、FrKsは日射ゲイン、FrCは前席用補正定数である。
次に、設定温度信号FrTSETPa、外気温信号Tam、内気温信号FrTr、日射量信号TsPaを数式2に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度FrTAOPaを算出する。この目標吹出温度FrTAOPaは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、前席左側(助手席側)空調ゾーン1bの温度を設定温度FrTSETPaに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1bの空調負荷に相当する量である。
FrTAOPa=FrKset×FrTSETPa−FrKr×FrTr
−FrKam×Tam−FrKs×TsPa+FrC
・・・(数式2)
なお、FrKsetは前席用温度設定ゲイン、FrKrは前席用内気温ゲイン、FrKamは前席用外気温ゲイン、FrKsは日射ゲイン、FrCは前席用補正定数である。
次に、ステップS130で、FrTAODr、FrTAOPaの平均値(以下、前席用目標平均値という)に基づいて、予めROMに記憶されている図5の制御特性により、内気循環モードおよび外気導入モードのいずれか一方を内外気切替モードとして決定する。内気循環モードでは、内気導入口50aより車室内空気(内気)を導入し、外気導入モードでは、外気導入口50bより車室外空気(外気)を導入する。
具体的には、図5に示すように、FrTAODr、FrTAOPaの平均値である前席用目標平均値(図5中のTAOに相当する)が所定温度以下となる領域(最大冷房域)では、内外気切替ドア51により内気導入口50aを全開し、外気導入口50bを全閉する内気循環モードを選択し、FrTAODr、FrTAOPaの平均値が所定温度より高くなると、内外気切替ドア50により外気導入口50bを全開し、内気導入口50aを全閉する外気導入モードを選択する。
次に、ステップS140で、図6により吹出口モードを前席側の左右の空調ゾーン1a、1bに対して個別に決定する。図6は、予めROMに記憶されている吹出口モード決定の制御特性であって、本例では、FrTAODr(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1aの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替える。また、FrTAOPa(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1bの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替えるようになっている。
ここで、フェイスモードでは、吹出口切替ドア56b(56c)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、フェイス吹出口20a(20b)のみから空調風が車室内の乗員上半身側へ吹き出す。バイレベルモードは、吹出口切替ドア56b(56c)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、吹出口切替ドア56b(56c)にてフット吹出口を開口し、空調風が、フェイス吹出口20a(20b)およびフット吹出口から車室内の乗員上半身側および乗員下半身側へ同時に吹き出す。フットモードは、吹出口切替ドア56b(56c)にてフット吹出口を全開し、フット吹出口から主に空調風が車室内の乗員下半身側へ吹き出す。
次に、ステップS150で、上述の目標吹出温度FrTAODr、FrTAOPaの平均値(前席用目標平均値)に基づいて、送風機モータ52aに印加するブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧としては、送風機52の風量を制御するためのもので、前席用目標平均値に基づいて、予めROM内に記憶されている図7の制御特性にしたがって決定されるものである。
図7の制御特性において、図7中のTAOがFrTAODr、FrTAOPaの平均値に相当し、この平均値(=TAO)が中間領域内にあるときには、ブロワ電圧(すなわち送風機52の風量)が一定値となり、TAOが中間領域より大きい場合にはこのTAOが大きくなるほどブロワ電圧(すなわち送風機52の風量)が大きくなる。また、TAOが中間領域より小さい場合にはTAOが小さくなるほどブロワ電圧(すなわち送風機52の風量)が小さくなる。このようにして、ブロワ電圧が決定される。
次に、ステップS160にて、エアミックスドア55b、55cの目標開度θ1、θ2を次の数式3、4によって算出する。なお、FrTeは蒸発器温度センサ86の蒸発器温度信号、Twは水温センサ82の水温信号である。
θ1={(FrTAODr−FrTe)/(Tw−FrTe)}×100(%)
・・・(数式3)
θ2={(FrTAOPa−FrTe)/(Tw−FrTe)}×100(%)
・・・(数式4)
そして、ステップS170で、以上のように決定したブロワ電圧、目標開度θ1、θ2、内外気切替モード、吹出口モードのそれぞれを示す各制御信号をサーボモータ51a、55a、55d、56a、56dおよび送風機モータ52a等に出力して内外気切替ドア51、エアミックスドア55b、55c、吹出口切替ドア56b、56c、送風機52等の作動を制御する。
その後、ステップS180にて一定期間経過すると、ステップS100の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS100〜S180)が繰り返される。このような演算、処理の繰り返しによって前席の空調ゾーン1a、1bのそれぞれの空調が自動的に制御されることになる。
<後席空調処理>
次に、後席空調処理について説明する。後席の空調処理においても、上記前席空調処理とほぼ同様の制御が行われる。ただし、本第1実施形態では、後席側に特有の、上部フェイス吹出口21c、21dからの吹出風の衝突による空調を行う点で前席側とは若干異なる。以下、図8に示す後席側の空調制御ルーチンにしたがって説明する。なお、図8において、前席側の制御ルーチン(図4)と同様の処理を行うステップには同一の符号を付している。
図8において、まず、ステップS100で、温度設定スイッチ11、12から設定温度信号RrTSETDr、RrTSETPaを読み込む。さらに、ステップS110で、外気温センサ81から外気温信号Tamを読み込み、内気温センサ84から内気温RrTrを読み込み、日射センサ83a、83bから日射量信号TsDr、TsPaを読み込む。
次にステップS120で、設定温度信号RrTSETDr、外気温信号Tam、内気温信号RrTr、日射量信号の平均値Tsを数式5に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度RrTAODrを算出する。この目標吹出温度RrTAODrは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、後席右側(運転席側)空調ゾーン1cの温度を設定温度RrTSETDrに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1cの空調負荷に相当する量である。
RrTAODr=RrKset×RrTSETDr−RrKr×RrTr
−RrKam×Tam−RrKs×Ts+RrC
・・・(数式5)
なお、RrKsetは後席用温度設定ゲイン、RrKrは後席用内気温ゲイン、RrKamは後席用外気温ゲイン、RrKsは日射ゲイン、RrCは後席用補正定数である。
次に、設定温度信号RrTSETPa、外気温信号Tam、内気温信号RrTr、日射量信号の平均値Tsを数式6に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度RrTAOPaを算出する。この目標吹出温度RrTAOPaは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、後席左側(助手席側)空調ゾーン1dの温度を設定温度RrTSETPaに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1dの空調負荷に相当する量である。
RrTAOPa=RrKset×RrTSETPa−RrKr×RrTr
−RrKam×Tam−RrKs×Ts+RrC
・・・(数式6)
なお、RrKsetは後席用温度設定ゲイン、RrKrは後席用内気温ゲイン、RrKamは後席用外気温ゲイン、RrKsは日射ゲイン、RrCは後席用補正定数である。
次に、後席空調システム6では外気モードが設定されていないため、内外気モードの決定処理(図4におけるステップS130)を実行せずに、次のステップS140で、図6により吹出口モードを後席側の左右の空調ゾーン1c、1dに対して個別に決定する。
図6は、予めROMに記憶されている吹出口モード決定の制御特性であって、本例では、RrTAODr(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1cの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替える。また、RrTAOPa(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1dの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替えるようになっている。
ここで、フェイスモードでは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、フェイス吹出口20a(20b)のみから空調風が車室内の乗員上半身側へ吹き出す。バイレベルモードは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、吹出口切替ドア66a(66b)にてフット吹出口を開口し、空調風が、フェイス吹出口20a(20b)およびフット吹出口から車室内の乗員上半身側および乗員下半身側へ同時に吹き出す。フットモードは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフット吹出口を全開し、フット吹出口から主に空調風が車室内の乗員下半身側へ吹き出す。
次に、ステップS150で、上述の目標吹出温度RrTAODr、RrTAOPaの平均値(以下、後席用目標平均値という)に基づいて、送風機モータ62aに印加するブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧としては、送風機62の風量を制御するためのもので、RrTAODr、RrTAOPaの平均値に基づいて、予めROM内に記憶されている図9の制御特性にしたがって決定されるものである。なお、この図9の制御特性は、上記図7に示した制御特性と同様のもので、図9においては数値例を示している。
図9の制御特性において、図9中のTAOがRrTAODr、RrTAOPaの平均値に相当し、この平均値(=TAO)が中間領域(10〜38)内にあるときには、ブロワ電圧に相当するブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が一定値となり、TAOが中間領域より大きい場合にはこのTAOが大きくなるほどブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が大きくなる。また、TAOが中間領域より小さい場合にはTAOが小さくなるほどブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が小さくなる。このようにして、ブロワレベル、すなわちブロワ電圧が決定される。
次に、ステップS160にて、エアミックスドア65a、65bの目標開度θ3、θ4を次の数式7、8によって算出する。なお、RrTeは蒸発器温度センサ87の蒸発器温度信号、Twは水温センサ82の水温信号である。
θ3={(RrTAODr−RrTe)/(Tw−RrTe)}×100(%)
・・・(数式7)
θ4={(RrTAOPa−RrTe)/(Tw−RrTe)}×100(%)
・・・(数式8)
次のステップS165では、空調負荷の高い部位を優先的に空調するために、予めROMに記憶されている図10の配風特性により、後席右側の設定温度RrTSETDrと後席左側の設定温度RrTSETPaとの差に応じて、配風ドア90の開度を決定する。なお、図10において、縦軸の配風ドア位置は、配風ドア90の開度を示している。すなわち、配風ドア位置=0(%)とは、ケース60内の右側通路60cを通る風量が100%、左側通路60dを通る風量が0%となるような配風ドア90の回動位置を示している。また、配風ドア位置=100(%)とは、右側通路60cを通る風量が0%、左側通路60dを通る風量が100%となるような配風ドア90の回動位置を示している。
具体的には、左右の設定温度が等しい(RrTSETDr=RrTSETPa)ときは、配風ドア90の位置は50%、すなわち、左右の通路60c、60dにおいて等しい風量が通るように制御される。
右側の設定温度RrTSETDrが左側の設定温度RrTSETPaより低い(RrTSETDr<RrTSETPa)場合は、両者の差の大きさが大きくなるほど配風ドア90の位置は50%から上限値の95%まで増加し、それにより右側通路60cよりも左側通路60dの方の風量が多くなるよう制御される。
また、右側の設定温度RrTSETDrが左側の設定温度RrTSETPaより高い(RrTSETDr>RrTSETPa)場合は、両者の差の大きさが大きくなるほど配風ドア90の位置は50%から下限値の5%まで減少し、それにより右側通路60cよりも左側通路60dの方の風量が少なくなるよう制御される。
そして、ステップS170で、以上のように決定したブロワ電圧、目標開度θ3、θ4、内外気切替モード、吹出口モードのそれぞれを示す各制御信号をサーボモータ65c、65d、66c、66d、90aおよび送風機モータ62a等に出力してエアミックスドア65a、65b、吹出口切替ドア66a、66b、配風ドア90および送風機62等の作動を制御する。
その後、ステップS180にて一定期間経過すると、ステップS100の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS100〜S180)が繰り返される。このような演算、処理の繰り返しによって後席の空調ゾーン1c、1dのそれぞれの空調が自動的に制御されることになる。
以上のように制御される後席側の空調ゾーン1c、1dの空調状態について、具体例に基づき説明する。例えば、RrTSETDr=22、RrTSETPa=25と設定されている場合、両者の差(RrTSETDr−RrTSETPa)は−3であり、図10より配風ドア90の位置は95%となる。
夏期における冷房状態では、ステップS140でフェイスモードが選択されるので、図9に基づきブロワレベルが決定される送風機62による送風量の95%はPa側フェイス吹出口20dより送風され、送風機62による送風量の5%はDr側フェイス吹出口20cより送風される。
これにより、Dr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dのそれぞれから吹き出された空調風である冷風は、図11に示すように、Dr側、すなわち後席右側乗員の窓側の肩の上で衝突する。この衝突した冷風は衝突位置の下方へ緩やかに降下し、その結果、後席右側乗員の窓側の上半身に優先的に当たることになる。すなわち、衝突後の冷風は、風速感が減少し、乗員にはマイルドに当たるので、乗員は煩わしさを感じたり、目が乾いたりするような不快感を覚えることは抑制される。
このように、冷房時、フェイスモードが選択されるとき、Dr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dから吹き出される冷風は、左右の乗員がそれぞれ要求する右側および左側設定温度の差に応じて、乗員の頭上の左右方向における空調負荷の大きい部位の近傍で衝突させることができる。
なお、暖房時、フットモードが選択される場合についても、簡単に説明する。この場合、例えば、冬期において、RrTSETDr=22、RrTSETPa=25と設定されているとき、上記と同様、図9に基づきブロワレベルが決定される送風機62による送風量の95%は、ケース60の左側通路60dを通り、空調された暖気として左側乗員のフット吹出口より吹き出される。すなわち、設定温度が高い側、すなわち空調負荷の高い側のフット吹出口より大風量の暖気を吹き出させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。上記第1実施形態では、Dr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dからそれぞれ吹き出される空調風の衝突位置を、右側(Dr側)および左側(Pa側)の各設定温度に連動して、両者の差に応じた位置を自動的に演算して決定していた。それに対して、本第2実施形態では、異なる吹出口からの空調風の衝突位置をマニュアル設定によって適宜変更可能とする点が、上記第1実施形態と異なる。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
すなわち、第1実施形態における、図1および図2に示す車両空調装置、図3に示すDr側およびPa側フェイス吹出口の配置形態は、いずれも本第2実施形態においても、同一の構成を備えている。また、図4の前席空調制御の制御ルーチンおよび図5の内外気モード、図6の吹出口モード、図7のブロワ電圧等を決めるための制御特性も、第1実施形態と同じ構成を備えている。したがって、これら第1実施形態と同一構成部分についての説明は省略するものとし、以下では、異なる構成部分を中心に説明する。
図12は、第2実施形態の空調操作パネル5aの外観を示す図である。この空調操作パネル5aは、車室前方の計器盤7に配置され、乗員によって、全体的な空調モードと、前席側の左右の空調ゾーン1a、1bの個別的な空調特性が設定されるものである。例えば、右側空調ゾーン1aの温度設定は温度設定スイッチ9により操作され、ディスプレイ9aにより設定値等が表示される。
本第2実施形態では、この空調操作パネル5aに、異なる吹出口20c、20dからの各空調風の衝突位置をマニュアル設定するための衝突位置設定スイッチ13とそのスイッチ操作により設定される衝突位置の大まかな位置Pを表示するディスプレイ13aが設けられている。すなわち、乗員が衝突位置設定スイッチ13の右側または左側を押すことに応じて、ディスプレイ13a上の衝突位置Pの表示位置が右または左へ移動するので、乗員は設定された衝突位置を表示により確認することができる。衝突位置設定スイッチ13の操作信号は、マニュアル設定ポジション信号として制御装置8へ出力される。
次に、第2実施形態の作動について説明する。前席空調処理は、上述のように、第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
<後席空調処理>
第2実施形態において、制御装置8により実行される後席空調処理は、上記第1実施形態における図8に示す制御ルーチンにしたがって、ステップS100ないしステップS160、およびステップS170ないしステップS180では、上記第1実施形態と同じ後席空調処理が行われる。ただし、図8におけるステップS165での配風ドア制御の処理のみ第1実施形態と異なる。
すなわち、ステップS165において、衝突位置設定スイッチ13により設定された衝突位置に応じて、予めROMに記憶されている図13に示す配風特性により配風ドア90の位置を決定する。
図13において、縦軸の配風ドア位置は、第1実施形態における図10の縦軸と同じである。したがって、マニュアル設定ポジションが「中央」より「Pa」側に移動するに応じて、配風ドア位置は50〜5%へと変化、すなわち、送風機62が発生する送風量のうち、ケース60の左側通路60dを通る風量が50〜5%へ減少し、同時に、右側通路60cを通る風量が50〜95%へ増加するよう設定される。
また、マニュアル設定ポジションが「中央」より「Dr」側に移動するに応じて、配風ドア位置は50〜95%へと変化、すなわち、送風機62が発生する送風量のうち、ケース60の左側通路60dを通る風量が50〜95%へ増加し、同時に、右側通路60cを通る風量が50〜5%へ減少するよう設定される。
これにより、例えば、マニュアル設定ポジションがPa側の所定位置に設定されると、冷房時のフェイスモードにおいて、Dr側フェイス吹出口20cからの50〜95%の大風量の冷風とPa側フェイス吹出口20dからの50〜5%の小風量の冷風とが、後席左側(Pa側)乗員近傍の上部空間で衝突することにより、衝突した冷風はその衝突位置の下方へゆっくりと降下し、後部左側乗員にマイルドに風速感が少なく当たる。
マニュアル設定ポジションがDr側の所定位置に設定された場合は、同様に、2つのフェイス吹出口20c、20dからの夫々の冷風が、後席右側(Dr側)乗員近傍の上部空間で衝突することにより、衝突した冷風はその衝突位置の下方へゆっくりと降下し、後部右側乗員にマイルドに風速感が少なく当たる。
また、例えば、後席には右側(Dr側)乗員のみ着座し、後席左側(Pa側)の座席に乗員が不在である場合には、衝突位置設定スイッチ13の操作により、マニュアル設定ポジションをDr側の例えば、配風ドア位置=75%へ設定する。これにより、後席に着座しているDr側乗員の上方でのみ空調風を衝突させて、後席Dr側乗員にのみ空調風をマイルドに風速感少なく当てることができる。
このように、衝突位置設定スイッチ13をマニュアル操作することにより、後席側の左右方向の所望の位置で、左右のフェイス吹出口20c、20dからの空調風を衝突させることができ、後席側で空調負荷が大きいと思われる位置を優先的に空調することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本第3実施形態は、後席側の左右のフェイス吹出口20c、20dからの空調風の衝突位置を時間と共に変化、すなわちスイングさせる点が、上記第1および第2実施形態と異なる。
本第3実施形態の車両用空調装置の概略、概略構成および後席側左右のフェイス吹出口の配置形態は、第1実施形態と同様、それぞれ、図1、図2および図3に示される。したがって、これらの図に係わる構成は同一であり、その説明は省略する。
第3実施形態では、図2に示される制御装置(エアコンECU)8に、後席側空調ゾーン1c、1dの表面温度を検出するための非接触温度センサ(マトリクスIRセンサ)70が接続されている。
非接触温度センサ70は、図14に示すように、車室内の天井22の中央部にて車両後方に向けて配置されている。このことにより、非接触温度センサ70は、後部運転席側座席(後席右側)ないし後部助手席側座席(後席左側)およびリアートレーRtなどを含む被検温範囲の表面温度を検出することになる。
非接触温度センサ70としては、入力される赤外線量の変化に対応した起電力変化を温度変化として検出するサーモパイル型検出素子が用いられている。以下、非接触温度センサ70の具体的な構成について図15を用いて説明する。図15は、非接触温度センサ70の概略構造を示す図である。
非接触温度センサ70は、図15に示すように、検知部71を有している。検知部71は、基板71a、この基板71a上に設置されるセンサチップ72、および、このセンサチップ72を覆うように配設される赤外線吸収膜73を備えている。また、検知部71は、カップ状の金属製ケース71cによって覆われており、ケース71cの底部には、四角形の窓71dがあけられ、この窓71dにはシリコン製のレンズ71eが填め込まれている。赤外線吸収膜73は、空調ゾーン1c、1dの各検温対象物からレンズ71eを通して入射される赤外線を吸収して熱に変換する役割を果たす。
センサチップ72は、台座72a上に24個の熱電対部Dr1〜Dr12、Pa1〜Pa12が配列されている。これらの熱電対部Dr1〜Dr12、Pa1〜Pa12は、それぞれ、赤外線吸収膜73で発生される熱を電圧(電気エネルギー)に変換する温度検出素子である。
具体的には、熱電対部Dr1〜Dr8は、2×4のマトリックス状に配置されて、後席右側(Dr側)に対向するものあって、後席右側からから入射される赤外線に基づいて、対象となる被検温対象の表面温度を電圧として検出することになる。同様に、熱電対部Pa1〜Pa8は、2×4のマトリックス状に配置されて、後席左側(Pa側)に対向するものあって、後席左側からから入射される赤外線に基づいて、対象となる被検温対象の表面温度を電圧として検出することになる。
また、熱電対部Dr9〜Dr12、Pa9〜Pa12は、それぞれ縦4列に配置されて、後側中間部(これは、右側後席および左側後席の間の席のことである)に対向するものあって、後側中間部から入射される赤外線に基づいて、対象となる被検温対象の表面温度を電圧として検出することになる。
図16は、非接触温度センサ70の被検温範囲のうち、後席左側部分のみの被検温範囲を示す図である。図中、対応する熱電対部Pa1〜Pa12を併せて記載している。なお、図16に示されていない後席右側部分の被検温範囲は、後席左側の被検温範囲とは左右対称位置に配置されている。
本第3実施形態では、これらの被検温範囲において、後席右側乗員の肩温度TirDrを熱電対部Dr3、後席左側乗員の肩温度TirPaを熱電対部Pa3により、それぞれ検出する。これら左右の乗員の肩温度TirDr、TirPaに応じて、後述するように、日射の方向や乗員の肩部暑さ状態を検出することができる。
次に、本第3実施形態の作動を説明する。本第3実施形態においても、上記第1および第2実施形態と同様、制御装置8が車載バッテリ(図示せず)から給電されて、一定期間毎に制御プログラムを実行して空調制御処理を行う。前席空調処理および後席空調処理は、それぞれ、上記図4および図8に示すメインルーチンにしたがって交互に実行される。
本第3実施形態における前席空調処理での実行内容は、第1実施形態(および第2実施形態)におけるものと同一であるので、説明を省略する。
<後席空調処理>
次に、第3実施形態における後席空調処理について説明する。本第3実施形態の後席空調処理は、上記第1および第2実施形態における図8に示すフローチャートに沿って行われるが、それぞれの処理内容は、上記第1および第2実施形態と異なる点がある。以下、図8のフローチャートに沿って説明する。
まず、ステップS100で、温度設定スイッチ11、12から設定温度信号RrTSETDr、RrTSETPaを読み込む。さらに、ステップS110で、外気温センサ81から外気温信号Tamを読み込み、内気温センサ84から内気温RrTrを読み込み、日射センサ83a、83bから日射量信号TsDr、TsPaを読み込む。また、非接触温度センサ70より、乗員肩部温度信号TirDr、TirPaを読み込む。
次にステップS120で、設定温度信号RrTSETDr、外気温信号Tam、内気温信号RrTr、日射量信号TsDr、TsPaの平均値Tsを数式9に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度RrTAODrを算出する。この目標吹出温度RrTAODrは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、後席右側(運転席側、Dr側)空調ゾーン1cの温度を設定温度RrTSETDrに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1cの空調負荷に相当する量である。
RrTAODr=RrKset×RrTSETDr−RrKr×RrTr
−RrKam×Tam−RrKs×Ts+RrC
+RrSIDEDr
・・・(数式9)
なお、RrKsetは後席用温度設定ゲイン、RrKrは後席用内気温ゲイン、RrKamは後席用外気温ゲイン、RrKsは日射ゲイン、RrCは後席用補正定数である。
また、数式9中のRrSIDEDrは偏日射補正量であり、偏日射の影響が大きいほど目標吹出温度RrTSETDrを低下させるよう補正するものである。その算出方法は後述する。
次に、設定温度信号RrTSETPa、外気温信号Tam、内気温信号RrTr、日射量信号TsDr、TsPaの平均値Tsを数式10に代入して、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度RrTAOPaを算出する。この目標吹出温度RrTAOPaは、車両環境条件(空調熱負荷条件)の変動にかかわらず、後席左側(助手席側、Pa側)空調ゾーン1dの温度を設定温度RrTSETPaに維持するために必要な目標温度であり、空調ゾーン1dの空調負荷に相当する量である。
RrTAOPa=RrKset×RrTSETPa−RrKr×RrTr
−RrKam×Tam−RrKs×Ts+RrC
+RrSIDEPa
・・・(数式10)
なお、RrKsetは後席用温度設定ゲイン、RrKrは後席用内気温ゲイン、RrKamは後席用外気温ゲイン、RrKsは日射ゲイン、RrCは後席用補正定数である。
また、数式10中のRrSIDEPaは偏日射補正量であり、偏日射の影響が大きいほど目標吹出温度RrTSETPaを低下させるよう補正するものである。
ここで、偏日射補正量RrSIDEDr、RrSIDEPaの算出方法について説明する。偏日射補正量RrSIDEDr、RrSIDEPaは、それぞれ数式11、数式12または、数式13、数式14に基づき算出される。
後述するDr側およびPa側フェイス吹出口20c、20dから吹き出される空調風の衝突位置を時間と共に変化させる、スイング有りの場合は、次の数式11、12による。
RrSIDEDr=MIN(RrSIDEDrd、RrSIDEPad)
・・・(数式11)
RrSIDEPa=MIN(RrSIDEDrd、RrSIDEPad)
・・・(数式12)
また、配風ドア90の位置が50%に固定されるスイング無しの場合は、次の数式13、14による。
RrSIDEDr=RrSIDEDrd ・・・(数式13)
RrSIDEPa=RrSIDEPad ・・・(数式14)
なお、補正量RrSIDEDrd、RrSIDEPadは、数式15、数式16によりそれぞれ演算される。
RrSIDEDrd=−f6×f9×f15 ・・・(数式15)
RrSIDEPad=−f6×f10×f15 ・・・(数式16)
ここで、ファクタf6は、予めROMに記憶されている図17(a)に示す特性として算出され、外気温Tamが0℃から10℃まで上昇するに応じて、0から1.0へと大きくなる値である。なお、外気温Tamが低い冬の偏日射では、フットモードにおけるフット吹出口からの温度を低下させないようにするため、f6=0として、目標吹出温度の補正を行わないようにしている。
ファクタf9およびf10は、それぞれ予めROMに記憶されている図17(b)、(c)に示す特性として算出される。すなわち、f9は、右側乗員温度と右側空調ゾーン1cでの設定温度との差ΔDr(=TirDr−RrTSETDr)が1.5から5.0へと増加するに応じて、0から20へと増加する値である。同様に、f10は、左側乗員温度と左側空調ゾーン1cでの設定温度との差ΔPa(=TirPa−RrTSETPa)が1.5から5.0へと増加するに応じて、0から20へと増加する値である。これらのファクタf9、f10が、基本的に偏日射の大きさに応じた補正量を決めるファクタである。
また、ファクタf15は、予めROMに記憶されている図17(d)に示す特性として算出される。すなわち、ファクタf15は、日射センサ83a、83bにより検出される日射量Tsが増加するに応じて、0から1.0へと増加する値である。このファクタf15は、日射がないときに誤って偏日射補正を行わないようにするためのファクタである。
上述のように、数式15、16より、補正量RrSIDEDrd、RrSIDEPadは、ともに0以下の負値であるので、数式11ないし数式14で算出される偏日射補正量RrSIDEDr、RrSIDEPdは0以下の負値である。また、スイング有りのときの偏日射補正量RrSIDEDr、RrSIDEPaは、数式11、12より、補正量RrSIDEDrd、RrSIDEPadのうち絶対値の大きい方の負値が選択される。
なお、スイングの有無は、後述するように送風機62のブロワレベルの大小に応じて決定され、スイング有りとスイング無しとの切り替わり時には、上記数式11ないし数式14による算出値のうち、値が変化する側の偏日射補正値は、例えば1℃/秒にて徐々に変化するよう設定される。
以上のように、図8におけるステップS120にて、偏日射補正された目標吹出温度RrTAODr、RrTAOPaが算出される。
次に、後席空調システム6では外気モードが設定されていないため、内外気モードの決定処理(図4におけるステップS130)を実行せずに、次のステップS140で、図6により吹出口モードを後席側の左右の空調ゾーン1c、1dに対して個別に決定する。
図6は、予めROMに記憶されている吹出口モード決定の制御特性であって、本例では、RrTAODr(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1cの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替える。また、RrTAOPa(図6中のTAOに相当する)が上昇するにつれて、空調ゾーン1dの吹出口モードをフェイス(FACE)モード→バイレベル(B/L)モード→フット(FOOT)モードと順次自動的に切り替えるようになっている。以下では、この図6で示される吹出口モードを標準オートモードという。
ここで、フェイスモードでは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、フェイス吹出口20a(20b)のみから空調風が車室内の乗員上半身側へ吹き出す。バイレベルモードは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフェイス吹出口20a(20b)を開口し、吹出口切替ドア66a(66b)にてフット吹出口を開口し、空調風が、フェイス吹出口20a(20b)およびフット吹出口から車室内の乗員上半身側および乗員下半身側へ同時に吹き出す。フットモードは、吹出口切替ドア66a(66b)にてフット吹出口を全開し、フット吹出口から主に空調風が車室内の乗員下半身側へ吹き出す。
なお、吹出口切替ドア66a(66b)がフェイスモードとバイレベルモードとの間の中間的な位置に停止される場合をFACE2モードとし、また、吹出口切替ドア66a(66b)がバイレベルモードとフットモードとの間の中間的な位置に停止されるときB/L2モードとする。
次に、ステップS150で、上述の目標吹出温度RrTAODr、RrTAOPaの平均値(以下、後席用目標平均値という)に基づいて、送風機モータ62aに印加するブロワ電圧を決定する。このブロワ電圧としては、送風機62の風量を制御するためのもので、RrTAODr、RrTAOPaの平均値に基づいて、予めROM内に記憶されている図9の制御特性にしたがって決定されるものである。なお、この図9の制御特性は、上記図7に示した制御特性と同様のもので、図9においては数値例を示している。
図9の制御特性において、図9中のTAOがRrTAODr、RrTAOPaの平均値に相当し、この平均値(=TAO)が中間領域(10〜38)内にあるときには、ブロワ電圧に相当するブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が一定値となり、TAOが中間領域より大きい場合にはこのTAOが大きくなるほどブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が大きくなる。また、TAOが中間領域より小さい場合にはTAOが小さくなるほどブロワレベル(すなわち送風機62の風量)が小さくなる。このようにして、ブロワレベル、すなわちブロワ電圧が決定される。
次に、ステップS160にて、エアミックスドア65a、65bの目標開度θ3、θ4を、第1および第2実施形態と同様、上記数式7、8によって算出する。
次のステップS165では、空調負荷の高い部位を優先的に空調するために、配風ドア90の開度位置を決定する。本第3実施形態での、このS165における配風ドア制御は、上記第1および第2実施形態とは異なり、2つのフェイス吹出口20c、20dからの空調風の衝突位置を時間と共に変化させる、すなわちスイングさせる点に特徴がある。
ここで、図18に、本第3実施形態におけるスイング範囲1〜4と右側(Dr側)乗員近傍の停止位置P1および左側(Pa側)乗員近傍の停止位置P2との関係を示す。また、図19は、各スイング範囲1〜4が設定されるときの乗員の肩部暑さ判定条件を示している。
なお、肩部暑さ判定は、日射方向に相当する乗員の肩温度TirDr、TirPaに応じて、図20(a)、(b)に示す判定条件に基づき行われる。すなわち、Dr側乗員の肩温度TirDrとDr側空調ゾーン1cの設定温度RrTSETDrとの差ΔDr(=TirDr−RrTSETDr)に日射量に応じたファクタf15(図17(d))を掛けた値が、所定値(5)以上のときDr側乗員の肩部暑さON、所定値(3)以下のとき肩部暑さOFFと判定する。
同様に、Pa側乗員の肩温度TirPaとPa側空調ゾーン1dの設定温度RrTSETPaとの差ΔPa(=TirPa−RrTSETPa)に日射量に応じたファクタf15を掛けた値が、所定値(5)以上のときPa側乗員の肩部暑さON、所定値(3)以下のときPa側乗員の肩部暑さOFFと判定する。
このように、乗員の肩温度TirDr、TirPaを検出する非接触温度センサ70は、日射検出手段に相当する。なお、日射方向は、日射センサ83a、83bによる日射量信号TsDr、TsPaの大小比較により検出することも可能である。
このように判定される日射方向に応じた左右の乗員の肩部暑さ判定の結果に基づき、Dr側およびPa側肩部暑さ判定がともにOFFのときには、スイング範囲の最も広いスイング範囲1(P1=95%、P2=5%)が選択される。逆に、Dr側およびPa側肩部暑さ判定がともにONのときには、スイング範囲の狭いスイング範囲4(P1=75%、P2=25%)が選択される。
また、一方の乗員のみ肩部暑さ判定ONと判定される場合、すなわち日射方向が車両の右側でこれによりDr側乗員の肩温度TirDrが高くなってDr側肩部暑さ判定ONのときは、Dr側で優先的に空調風を衝突させるスイング範囲2(P1=85%、P2=35%)が選択される。
あるいは、日射方向が車両の左側でこれによりPa側乗員の肩温度TirPaが高くなってPa側肩部暑さ判定ONのときは、Pa側で優先的に空調風を衝突させるスイング範囲3(P1=65%、P2=15%)が選択される。
このように、左右の乗員の少なくとも一方が肩部暑さ判定ONのときは、ともにOFFのときのスイング範囲1に比べ、スイング範囲を約半分にして風速感の急変を緩和している。
次に、スイング停止位置P1、P2における停止時間について説明する。各スイング範囲1〜4において、Dr側の停止位置P1における停止時間STDrは、予めROMに記憶されている図21(a)に示す制御特性により、左右の乗員肩温度差(TirDr−TirPa)が大きくなるほど、また日射量に関するファクタf15が大きくなるほど長くなるよう決定される。なお、1(秒)≦STDr≦30(秒)の範囲に制限される。
またPa側の停止位置P2における停止時間STPaは、予めROMに記憶されている図21(b)に示す制御特性により、左右の乗員肩温度差(TirPa−TirDr)が大きくなるほど、また日射量に関するファクタf15が大きくなるほど長くなるよう決定される。なお、1(秒)≦STPa≦30(秒)の範囲に制限される。
なお、図21(a)、(b)中の定数α、βは、図22に示すように、16回を1サイクルとして、スイング回数ごとに停止時間を変化させるものであり、これにより乗員への送風パターンに揺らぎを与えて、慣れを防止している。
また、STDrの上限値(10+α+γDr)および下限値(1+β+γDr)を決めるスイング停止時間補正値γDr、およびSTPaの上限値(10+α+γPa)および下限値(1+β+γPa)を決めるスイング停止時間補正値γPaは、図23(a)、(b)に示す特性により決定される。
すなわち、γDr(γPa)は、Dr側設定温度とPa側設定温度との差(RrTSETDr−RrTSETPa)が小さくなる(大きくなる)ほど大きくなる値γDr’(γPa’)と、左右の乗員肩温度の差の絶対値が小さいほど、また日射量に応じたファクタf15が大きくなるほど大きくなるよう設定された偏日射度合f3との積として算出される。つまり、γDr=f3×γDr’、および、γPa=f3×γPa’である。
このように、Dr側乗員の近傍でのスイング停止位置P1における停止時間STDrは、Dr側乗員の肩温度がPa側乗員の肩温度よりも高いほど長く、Dr側の設定温度がPa側の設定温度よりも低いほど長く、日射量が多いほど長く、偏日射度合いが小さいほど長くなるよう設定される。
同様に、Pa側乗員の近傍でのスイング停止位置P2における停止時間STPaは、Pa側乗員の肩温度がDr側乗員の肩温度よりも高いほど長く、Pa側の設定温度がDr側の設定温度よりも低いほど長く、日射量が多いほど長く、偏日射度合いが小さいほど長くなるよう設定される。
以上のように、乗員の肩温度の高い側に相当する日射の当たる側における空調風の衝突時間は、その反対側である日射の当たらない側における空調風の衝突時間よりも長くなるよう設定される。
以下、ステップS165における配風ドア制御の処理ルーチンを図24のフローチャートにしたがって説明する。
まずステップS200で、現在設定されている送風機62のブロワレベル(ブロワ電圧に相当)が中間的な値である15より大きいか否かが判定される。判定結果がNO、すなわちブロワレベルが低い場合は、特に空調負荷が大きい部位はないものとして、ステップS210へ移行し、スイング作動を停止しスイング無しとする。すなわち、ここでは配風ドア90の位置を50%とし、ケース60の右側通路60cと左側通路60dとの通風量を等しくすることにより、2つのフェイス吹出口20c、20dの各空調風の衝突位置を、左右の乗員の間の中間部に設けるようにする。
ステップS200での判定結果がYES、すなわちブロワレベルが高い場合は、スイングを行うためにステップS220へ移行する。
ステップS220では、スイングパターンが与えられる。このスイングパターンは図25に一例を示すように、経過時間に応じて、スイング回数、Dr側スイング停止位置P1、Pa側スイング停止位置P2により決まるスイング範囲、スイング停止位置P1、P2でのスイング停止時間STDr、STPa、およびスイング速度により規定される。
このように、図25のスイングパターン特性より、S220の実行時のスイング開始からの経過時間に応じて、配風ドア90の位置が決定される。
次のステップS230〜S260において、経過時間に応じたスイングの左右における停止位置と停止時間とが順次決められる。すなわち、ステップS230にて、Dr側停止時間STDrが、図21(a)、図22および図23(a)、(b)に示される特性に基づき算出される。ステップS240にて、Dr側停止位置P1が、図18、図19および図20(a)、(b)に示される特性に基づき算出される。
また、ステップS250にて、Pa側停止時間STPaが、図21(b)、図22および図23(a)、(b)に示される特性に基づき算出される。ステップS260にて、Pa側停止位置P2が、図18、図19および図20(a)、(b)に示される特性に基づき算出される。
次のステップS270では、送風機62のブロワ電圧の補正量f13が、図26に示す予めROMに記憶されている制御特性にしたがって決定される。すなわち、ブロワ補正量f13は日射センサ83a、83bにより検出された日射量TSDiが増加するほど大きくなるよう設定される。また、ブロワ補正量f13は、後席左右の空調ゾーン1c、1dにおいて、乗員の肩温度と設定温度との差ΔDr、ΔPaの大きい方の値MAX(ΔDr、ΔPa)が大きいほど大きくなるよう設定される。なお図26中、MAX(ΔDr、ΔPa)の大きさが2.0ないし6.0の範囲では、MAX(ΔDr、ΔPa)の大きさに応じてブロワ補正値f13を線形補間する。
このように算出されるブロワ補正値f13は、上記ステップS150(図8)で算出されたブロワ電圧に加算される。これにより、日射量および後席乗員の肩温度の増加に応じてブロワレベルの底上げを行う。
次のステップS280では、図27に示す予めROMに記憶されている制御特性により、吹出口モードを上述した標準オートモードにおけるFOOTモードとB/Lモードにおいて、偏日射の影響に応じた吹出口制御を行う。
すなわち、目標吹出温度RrTAODr(RrTAOPa)の値に応じて設定されるFOOTモードでは、下記数式17で示される左右における乗員の肩温度と設定温度との差ΔDr、ΔPaの大きいほうの大きさに日射量に応じたファクタf15(図17(d))で補正された値が大きくなるに応じて、FOOTモード→B/Lモード→FACE2モードと順次自動的に切り替える。なお、この場合、FOOTモードとB/Lモードとの双方向での切り替わり時、途中、B/L2モードで10秒間一時停止させる。
(MAX(ΔDr、ΔPa))×f15 ・・・(数式17)
これにより、標準オートモードにおいて、FOOTモードが選択されている状態であっても、偏日射の影響が大きくなって後席乗員の肩温度が設定温度より大きくなったら、後席上方のフェイス吹出口20c(20d)からの吹出しを積極的に行うようにして、乗員の上半身への偏日射の影響を緩和するようにしている。
また、同じ図27において、目標吹出温度RrTAODr(RrTAOPa)の値に応じて設定される標準オートモードにおけるB/Lモードでは、数式17で示される左右における乗員の肩温度と設定温度との差の大きいほうの大きさに日射量に応じたファクタf15で補正された値が大きくなるに応じて、B/Lモード→FACE2モードと自動的に切り替える。
これにより、標準オートモードにおいて、B/Lモードが選択されている状態であっても、偏日射の影響が大きくなって後席乗員の肩温度が設定温度より大きくなったら、後席上方のフェイス吹出口20c(20d)からの吹出しをより多くするようにして、乗員の上半身への偏日射の影響を緩和するようにしている。
なお、このような吹出口制御は、FOOTモードおよびB/Lモード以外では行われず、通常の標準オートモードでの制御が維持される。
さらに、次のステップS290では、上記S220において指示されるスイング作動中に、左右のフェイス吹出口20c、20dからの実際の吹出温度を等しくするよう、エアミックスドア65a、65bの目標開度を補正する。すなわち、ステップS160で数式7、8により算出されるエアミックスドア65a、65bの目標開度θ3、θ4の平均値(θ3+θ4)/2を、左右のエアミックスドア65a、65bの共通の目標開度とする。
これにより、左右のフェイス吹出口20c、20dからの各空調風の衝突をスイングさせて、衝突している時間を左右の乗員の上方において各設定温度に応じて補正して変化させるとき、左右のフェイス吹出口20c、20dからの吹出温度を等しくすることにより、左右の乗員で設定温度差に応じた温感差を作り出すことができる。
以上のような、配風ドア制御のルーチンが終了すると図8のメインルーチンに戻り、ステップS170で、以上のように決定したブロワ電圧、目標開度、内外気切替モード、吹出口モードのそれぞれを示す各制御信号をサーボモータ65c、65d、66c、66d、90aおよび送風機モータ62a等に出力してエアミックスドア65a、65b、吹出口切替ドア66a、66b、配風ドア90および送風機62等の作動を制御する。
その後、ステップS180にて一定期間経過すると、ステップS100の処理に戻り、上述の空調制御処理(ステップS100〜S180)が繰り返される。このような演算、処理の繰り返しによって後席の空調ゾーン1c、1dのそれぞれの空調が自動的に制御されることになる。
以上のように、本第3実施形態では、後席側の左右のフェイス吹出口20c、20dからの空調風を、後席乗員の上方空間で衝突させる位置を時間と共に変化させるスイング作動を行っている。
このスイング作動において、偏日射の影響を左右の乗員の肩温度差の大きさに応じて判定し、日射の当たる側の乗員の上方での空調風衝突時間を、その反対側の日射の当たらない側におけるよりも長くすることにより、日射の当たっている部位を優先的に冷やすことができる。
また、日射の当たらない側も、車両自体に日射が当たれば車体からの輻射により暑くなるので、スイング作動により、この日射の当たらない側の乗員をも空調することができる。
さらに、本第3実施形態では、左右の空調ゾーン1c、1dとで独立に目標吹出温度を算出し、これにより独立に空調制御を行う場合、左右のエアミックスドア開度を両者の平均値となるよう補正して左右の吹出温度を等しくし、かつ、乗員の上方で空調風が衝突している時間を右側および左側空調ゾーン1c、1dにおける設定温度差に応じて異ならせることにより、左右の乗員における温感差を作り出し、左右の設定温度に応じた空調制御を実現している。
(他の実施形態)
(1)上記第1ないし第3実施形態では、第1および第2の吹出口であるDr側フェイス吹出口20c、およびPa側フェイス吹出口20dからの各空調風を衝突させる位置を、前席および後席のうち、後席側の乗員上方で衝突させる例を示したが、これに限らず、前席側の乗員上方で衝突させるようにしてもよい。さらには、前後方向に3列またはそれ以上の座席を備えた車両においては、それぞれの列の左右方向において乗員の上方で空調風を衝突させるようにしてもよい。
(2)上記第1ないし第3実施形態では、第1および第2の吹出口であるDr側フェイス吹出口20c、およびPa側フェイス吹出口20dを、車室天井22の左右端部に互いに対向するように配置した例を示したが、これに限らない。すなわち、2つの吹出口20c、20dを上下方向においては、天井よりも下方に位置するように配置し、各吹出方向を乗員上方に向けて形成してもよい。あるいは、2つの吹出口20c、20dを乗員の左右方向よりも前方または後方へずらして配置し、各吹出方向を乗員上方に向けて形成してもよい。
(3)上記第1ないし第3実施形態では、衝突位置調節手段として、1つの送風機62と配風ドア90とにより、左右のダクト21c、21dへの送風量割合を変更する例を示したが、これに限らず、蒸発器63の上流側に配風ドア90の代わりに、右側通路60cへの送風量を調節する第1の送風機と、左側通路60dへの送風量を調節する第2の送風機とを用いるようにしてもよい。これにより、第1および第2の吹出口20c、20dから吹き出される送風量を、第1および第2の送風機の送風量をそれぞれ独立に調節することにより、上記各実施形態と同様、両者の送風割合を調節して、乗員上方での空調風の衝突位置を調節することができる。