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JP4573068B2 - 水溶性共重合体及び該共重合体を後架橋してなる塩水吸収性共重合体 - Google Patents

水溶性共重合体及び該共重合体を後架橋してなる塩水吸収性共重合体 Download PDF

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JP4573068B2
JP4573068B2 JP17853499A JP17853499A JP4573068B2 JP 4573068 B2 JP4573068 B2 JP 4573068B2 JP 17853499 A JP17853499 A JP 17853499A JP 17853499 A JP17853499 A JP 17853499A JP 4573068 B2 JP4573068 B2 JP 4573068B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は水溶性共重合体に後架橋処理を行うことでなる塩水吸収性共重合体及び該塩水吸収性共重合体で被覆された塩水吸収性構造物に関する。この塩水吸収性共重合体及び塩水吸収性構造物は純水だけでなく、尿、汗、地下水、海水等の電解質を含有する水溶液を吸収するのに特に有用である。
【0002】
【従来の技術】
自重の数百倍もの水分を吸収する吸水性樹脂は紙おむつや生理用品等の吸収剤、農園芸用の保水材、土壌改良剤、止水剤等に使用されている。この様な吸水性樹脂としては、例えば、デンプン-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、デンプン-アクリル酸グラフト共重合体、カルボキシメチルセルロース架橋物、酢酸ビニル-アクリル酸メチル共重合体加水分解物、ポリアクリル酸塩架橋物等が一般的に使用されている。
【0003】
また、吸水性樹脂は主に粉体で供給されるが一部で繊維状のものが上市されており、その加工性の良さを生かして不織布、成形体、エレメント等に加工して種々の用途に展開されている。この様な吸水性繊維としては、特開昭54-138693号公報にアクリロニトリル系繊維を内層、ポリアクリル酸塩架橋体を外層とした芯-鞘2層構造の繊維が良好な繊維物性を維持しながら高吸水性を発現するものとして開示されている。また、特開平6-65810号公報にカルボキシル基を有するビニルモノマーとヒドロキシル基及び/またはアミノ基を有するビニルモノマーとの共重合体からなる高吸水性繊維が開示されている。
【0004】
この様な吸水性樹脂や吸水性繊維は純水やイオン交換水あるいは低濃度の電解質水溶液に対しては非常に優れた吸収性を示すが、海水や塩水、血液、汗、尿等の電解質を含んだ水溶液に対してはその吸収能力が低下するという欠点を有している。特に海水等の高濃度の電解質水溶液あるいは多価金属塩水溶液に対しては極端に吸収性能が低下するため、その用途が制限される。
【0005】
電解質水溶液に対する吸収能力を高めるためには、例えば、特開昭61-36309号公報にはスルホアルキル(メタ)アクリレートを含む架橋重合体が、また、特開昭62-266140号公報にはポリエーテルを側鎖に有する(メタ)アクリレートとスルホン酸基を有する単量体との架橋重合体等が耐塩性吸水樹脂として提案されている。しかし、これらの吸水樹脂でも高濃度の電解質水溶液、あるいは多価金属塩水溶液に対しては吸収能力が低下してしまう。
【0006】
また、両性高分子電解質を利用することにより電解質水溶液に対する吸収性が向上することが知られている。両性高分子電解質としては酸性基を有する単量体と塩基性を有する単量体との共重合体、及び同一側鎖上に酸性基と塩基性基の両者を有するベタイン型官能基を有した共重合体が挙げられ、これらの架橋重合体は電解質水溶液に対する吸収性が一般に高い。特開昭58-154710号公報には3級アミノ基を有するビニル単量体とカルボキシル基を有するビニル単量体との共重合体からなる両性高吸収性樹脂の製法が開示されており、特開平5-237377号公報にはベタイン構造を有する両性高分子電解質を用いたイオン封鎖性の吸水性樹脂が開示されている。また特開平10-147616号公報にはカルボキシル基の一部を、水酸基を1つだけ含有するアミノ化合物で中和した、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体からなる重合体中の、未中和のカルボキシル基とアミノ化合物の水酸基とをエステル化反応させて両性高分子化することにより製造される両性高吸収性樹脂の製法が開示されている。しかしながら、これらの重合体溶液を繊維、ヤーン、糸、不織布、織物、編み地、紙、シート、フィルム、またはこれらの複合構造体から選ばれる基材に被覆処理し、吸収性材料に加工する場合、重合体溶液の粘度が非常に高いために工業的に製造するのは現実的ではない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は上記の様な問題点を克服するために、塩水吸収性共重合体のプレカーサである水溶性共重合体の水溶液は、工業的な被覆処理加工に適した粘度を有するが、後架橋処理により吸収性共重合体にすると、電解質水溶液に対して高度な吸収性を有する塩水吸収性共重合体を形成する水溶性共重合体について鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。かかる物性を有する水溶性共重合体並びに塩水吸収性共重合体を開発することは、従来の塩水吸収性樹脂では工業的に困難であった基材等への被覆処理を可能にし、塩水吸収性共重合体の塩水吸収シート、あるいは塩水止水シートといった用途への応用が可能となる。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、三級アミノ基を有するビニル単量体(A)とカルボキシル基含有ビニル単量体(B)と、(A) (B)両単量体の全モル数に対し1〜5モル%のスルホン酸塩基を有するビニル単量体(C)を共重合してな、共重合体濃度20wt%の水溶液の30℃における粘度が50〜800cPである水溶性共重合体を、該水溶性共重合体重量に対し0.1〜1.0wt%の架橋剤により後架橋してなる、人工海水の吸収倍率が10〜30倍である塩水吸収性共重合体、並びにかかる水溶性共重合体を好ましくは官能基として水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基から選ばれるいずれか1種の官能基2個以上を有する多官能性化合物の架橋剤により後架橋してなる塩水吸収性共重合体により達成される。
【0009】
該塩水吸収性共重合体で被覆された構造物は、三級アミノ基を有するビニル単量体(A)とカルボキシル基含有ビニル単量体(B)と、(A)(B)両単量体の全モル数に対し1〜5モル%のスルホン酸塩基を有するビニル単量体(C)を水系で共重合して、共重合体濃度20wt%の水溶液の30℃における粘度が50〜800cPの水溶性共重合体とし、架橋剤を共存させた該共重合体水溶液を基材に含浸あるいは被覆し、次いで後架橋せしめることを特徴とする塩水吸収性構造物の製造方法によって具現化される。かかる製造方法において、(A)と(B)両単量体のモル比が20:80〜80:20の範囲内、架橋剤が官能基として水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基から選ばれるいずれか1種の官能基2個以上を有する多官能性化合物であり、該水溶性共重合体重量に対し0.1〜1.0wt%使用すること,共重合体水溶液が水溶性共重合体を15〜30wt%含有すること、基材に含浸あるいは被覆される水溶性共重合体が基材に対し100〜230wt%であることにより、より好適に実施される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳述する。まず、三級アミノ基を有するビニル単量体(A)とは、三級アミノ基とビニル基を併せ有するものであって、かかる特徴を有する単量体が単独で又は複数種混合して採用される。かかる単量体(A)としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド等が本発明において好適に採用される。
【0011】
本発明におけるカルボキシル基含有ビニル単量体(B)としては、カルボキシル基とビニル基を併せ有するものであって、かかる特徴を有する単量体が単独で、又は複数種混合して採用される。かかる単量体(B)としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が好適に採用される。尚、かかる単量体(A)と単量体(B)の使用比率としては、(A)と(B)のモル比で20:80〜80:20の範囲内が好ましく、より好ましくは30:70〜70:30、最も好ましくは40:60〜60:40の範囲内である。単量体(A)が多過ぎる場合でも、反対に少な過ぎる場合でも塩水吸収性共重合体にした際の塩水吸収性が若干低下する傾向がある。
【0012】
本発明におけるスルホン酸塩基を有する単量体(C)としては、スルホン酸塩基とビニル基を併せ有するものであって、かかる特徴を有する単量体が単独で又は複数種混合して採用される。かかる単量体(C)としては、例えばビニルスルホン酸塩、アリルスルホン酸塩、ビニルトルエンスルホン酸塩、スチレンスルホン酸塩等が本発明において好適に採用される。塩の種類としてはアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム、リチウムなどの塩)、アンモニウム塩及びアミン塩(メチルアミン、トリメチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルキルアミンの塩)が挙げられる。
【0013】
かかる単量体(C)の量としては、上述してきた(A)(B)両単量体の全モル数に対し1〜5モル%が必要である。単量体(C)を共重合することは、生成した水溶性共重合体の水溶液の粘度を大きく左右し、単量体(C)が1モル%未満では共重合体の重合度を可能な限り下げても粘度が高すぎる。また、5モル%を超えると粘度降下能が効きすぎてしまい、共重合体水溶液の粘度が低過ぎるものとなる。さらに好ましい単量体(C)の量は、2〜4モル%である。
【0014】
以上述べた単量体(A),(B)及び(C)からの水溶性共重合体の製造方法は、従来より行われているラジカル重合法のいずれの方法を用いて調整してもよい。すなわち、塊状重合、水系沈殿重合、懸濁重合、逆相懸濁重合、乳化重合、溶液重合のいずれの方法を用いてもよく、目的に応じて、得られる重合体の形態を考慮して適宜選択すればよい。しかし、一般には水を媒体とした重合系がコスト、環境面から望ましい。ラジカルの発生方法はラジカル重合触媒を用いる方法、放射線、電子線、紫外線を照射する方法等が挙げられる。ラジカル重合触媒としては例えば、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2´-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、4,4´-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2-アゾビス(2-アミノジプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩等のラジカル発生剤、及びこれらのラジカル発生剤と亜硫酸水素ナトリウム、L-アスコルビン酸等の還元剤との組み合わせからなるレドックス系開始剤が挙げられる。重合溶媒としては例えば、水、電解質水溶液、メタノール、アセトン、ジメチルホルムアミド等が挙げられるが、重合方法に応じて適宜選択すればよい。
【0015】
かかる製造方法において、特に注意すべきは水溶性共重合体水溶液の粘度である。共重合体濃度20wt%の水溶液の粘度は50〜800cPである必要があるが、この範囲内とするために開始剤濃度を増加させて水溶性共重合体の水溶液の粘度を低下させる、単量体(A)の濃度を高くして水溶性共重合体の水溶液の粘度を増加させるといった粘度を制御する手段をかかる塩水吸収性重合体の吸収性能が極度に低下しない範囲内で適宜適用してもよい。
【0016】
かかる水溶性共重合体が水性媒体を吸収し、媒体に溶解すること無く膨潤状態を維持するためには、共有結合、あるいは静電結合、水素結合、分子鎖間の絡み合い等の物理結合によって重合体に架橋構造を導入することが必要である。本発明において、該共重合体に架橋構造を導入する方法としては、該共重合体水溶液を基材等へ含浸、乾燥し共重合体で基材を被覆することを前提としているので、上述の共重合後に後架橋処理を行う手段を採用している。本発明において後架橋処理可能な、すなわち、後処理により架橋構造を導入することが可能な官能基を提供するのは、水溶性共重合体中のカルボキシル基含有ビニル単量体(B)由来のカルボキシル基であり、該基と化学的に結合し架橋構造を形成するような化合物を架橋剤と称する。
【0017】
かかる架橋剤としては例えば、水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基等のカルボキシル基と反応して化学結合を形成しうる官能基のいずれか1種の官能基を2個以上有する多官能性化合物、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、トリメチロールメラミン、トリメチロールプロパン、ポリエチレンイミン、尿素、ポリリジン等が挙げられる。これら架橋剤の使用量としては、水溶性共重合体に対し0.1〜1.0wt%、より好ましくは0.2〜0.6wt%使用するのが適当である。架橋剤が少な過ぎると、当然ながら耐水性に問題が、多すぎると吸収性能が低下する問題が生じ易い。
【0018】
これらのカルボキシル基と反応して化学結合を形成しうる架橋剤により、水溶性共重合体を塩水吸収性共重合体にする方法としては、架橋剤を水溶性共重合体の形成の際に共存させておく方法、重合後の共重合体水溶液に添加する方法のいずれの方法であっても、重合後の後架橋処理によって容易に塩水吸収性共重合体が得られる。後架橋反応の方法としては乾熱処理、減圧下での熱処理等の方法が挙げられる。反応条件としては、採用する方法に応じて適宜条件を選択し十分に架橋構造が形成され塩水吸収性が発現すれば特に制限はない。例えば、乾熱処理の場合は120℃以上で架橋反応が十分進行するまで熱処理を行えばよい。熱処理時間は処理温度が高いほど短縮することができるが、共重合体の耐熱性及び基材に被覆して用いる場合は基材の耐熱性が問題となるため、適当な温度条件及び処理時間を採用する必要がある。
【0019】
かくして得られる塩水吸収性共重合体は、それ自体では純水の吸収能40〜70倍を有しながら、人工海水の吸収倍率も10〜30倍と高い。かかる塩水吸収性重合体を具体的に利用するに当たっては、前述した水溶性共重合体の製法によって得られた水溶性共重合体を必要に応じて水に溶解させて共重合体水溶液とした上でフィルム状あるいは繊維状に成形した後、乾燥後架橋処理を行ってフィルム状、繊維状として使用することができる。さらに、共重合体水溶液の状態で適当な基材に被覆し、乾燥後架橋処理を行い、必要に応じて加工を施して塩水吸収性構造物として用いることもできる。本発明の水溶性共重合体は、特にこの利用方法に適する。この際、共重合体水溶液は水溶性共重合体の粘度にもよるが、概ね水溶性共重合体濃度15〜30wt%で作成するのが操作性、製品の物性等から好適である。また、基材に対する水溶性共重合体の量としては100〜230wt%が推奨される。被覆方法としては各種コーティング法、含浸法等が挙げられるが、基材に対する水溶性共重合体の割合を多くするには含浸法が適している。基材としては、繊維、ヤーン、糸、不織布、織布、編み地、紙、シート、フィルム等が挙げられ、これらを必要に応じて単独、あるいは複合構造体として適宜選択して使用することができる。近年は粉体状の吸水性樹脂に対し、その取り扱い上の困難さ、粉塵等の作業環境への影響等の問題があるが、水溶性共重合体水溶液を基材へ被覆する本発明の方法は、これらの難点を排した安全且つ簡便でしかも低コストで製造することができる優れた方法である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例に従って本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲は、これら実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
実施例1
1lの球型セパラブルフラスコに水を800ml、三級アミノ基を有するビニル単量体(A)としてジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド(以下DMAPMAと略す)を717mmol、カルボキシル基含有ビニル単量体(B)としてアクリル酸(AA)を1075mmol、スルホン酸塩基を有するビニル単量体(C)としてスチレンパラスルホン酸ソーダ(SPSS)を27mmol、開始剤として過硫酸カリウム(KPS)を総単量体重量に対し0.3wt%添加し、撹拌下で60℃にて5時間重合を行った。なお、総単量体濃度は20wt%で行った。重合後の共重合体水溶液を共重合体濃度20wt%に調整した後に30℃に調温後、B型粘度計で粘度を測定した。
【0022】
実施例2〜7
DMAPMAとAAの仕込み組成比とSPSSの添加量を表1に記載した濃度に変更した以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、粘度測定を行った。
【0023】
比較例1
単量体仕込み組成のうちSPSSを9mmolに変更した以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、粘度測定を行った。
【0024】
比較例2
単量体の仕込み組成のうちDMAPMAを単量体(A)に当たらないアクリルアミド(AAm) 1117mmolに、AAを1676mmolに、SPSSを56mmolに変更した以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、粘度測定を行った。
【0025】
比較例3
単量体の仕込み組成のうちDMAPMAを580mmolに、AAを単量体(B)に当たらないヒドロキシエチルアクリレート(HEA) 870mmolに、SPSSを29mmolに変更した以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、粘度測定を行った。
【0026】
比較例4
単量体仕込み組成のうちSPSSを108mmolに変更した以外は、実施例1と全く同様に反応を行い、粘度測定を行った。
【0027】
実施例1〜7、比較例1〜4で得られた水溶性共重合体の20wt%水溶液の粘度測定値を表1に示した。実施例1〜7で得られた水溶性共重合体は重合体水溶液にしたときの溶液粘度が比較的低く、共重合体を形態及び形状加工していく上で取り扱い性が優れている。尚、表中判定欄の○は、取り扱い性に優れること、×は劣ることを示す。また、実施例1〜7で得られた水溶性共重合体の水溶液は、比較例1〜3で得られた水溶性共重合体の水溶液の粘度よりも低く、本発明の優位性が認められる。比較例4で得られた水溶性共重合体は水溶液にしたときの溶液粘度が極めて低いため、共重合体を形態及び形状加工していく上で取り扱い性が悪い。
【0028】
【表1】
Figure 0004573068
【0029】
実施例8
実施例1で得られた水溶性共重合体の20wt%水溶液に架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDGE)を共重合体重量に対して0.3wt%添加した後、テフロン板上に流延して100℃にて乾燥してフィルムを作成した。次に150℃で十分に架橋反応が進行するまで乾熱処理を行い塩水吸水性重合体のフィルムを得た。かかる塩水吸収性共重合体の吸収性能は、以下の方法によって人工海水(アクアマリンS、八州薬品(株)製)に対する吸収倍率を測定し評価した。乾燥した塩水吸収性共重合体1gを人工海水500ml中に25℃に維持して2時間浸漬した後、200メッシュ金網で濾過し、卓上遠心脱水器にて160G×5分で水切りした後、人工海水を吸収した塩水吸収性共重合体のグラム数から塩水吸収性共重合体の重量(1g)を引いた数値を吸収倍率とした。
【0030】
実施例9〜14
実施例1で得られた水溶性共重合体の代わりに、それぞれ実施例9は実施例2で得られた水溶性共重合体を、実施例10は実施例3で得られた水溶性共重合体を、実施例11は実施例4で得られた水溶性共重合体を、実施例12は実施例5で得られた水溶性共重合体を、実施例13は実施例6で得られた水溶性共重合体を、実施例14は実施例7で得られた水溶性共重合体を使用した以外は、実施例8と全く同様にフィルム状に加工し後架橋処理を行い、人工海水に対する吸収倍率を測定した。
【0031】
実施例15〜17
架橋剤としてEGDGEの代わりに実施例15はエチレンジアミン(EDA)を、実施例16はエチレングリコール(EG)を、実施例17はトリメチロールプロパン(TMP)をそれぞれ共重合体重量に対して0.3wt%添加する以外は、実施例9と全く同様にフィルム状に加工し後架橋処理を行い、人工海水に対する吸収倍率を測定した。
【0032】
実施例18、19
架橋剤EGDGEの添加濃度を実施例18は共重合体重量に対して0.1wt%に、実施例19は共重合体重量に対して1.0wt%に変更した以外は、実施例9と全く同様にフィルム状に加工し後架橋処理を行い、人工海水に対する吸収倍率を測定した。
【0033】
比較例5〜8
実施例1で得られた水溶性重合体の代わりに、比較例5は比較例1で得られた水溶性共重合体を、比較例6は比較例2で得られた水溶性共重合体を、比較例7は比較例3で得られた水溶性共重合体を、比較例8は比較例4で得られた水溶性共重合体を使用した以外は、実施例8と全く同様にフィルム状に加工し後架橋処理を行い、人工海水に対する吸収倍率を測定した。
【0034】
実施例8〜19及び比較例5〜8の架橋剤を共存させた水溶性共重合体の20wt%水溶液の30℃における粘度と、後架橋処理を行ったフィルム状塩水吸収性共重合体の人工海水吸収倍率と、フィルム加工を行う際の加工性評価結果を表2に示した。ここで、加工性欄の○は加工性が優れること、×は加工性に乏しいことを示す。
実施例8〜19でのフィルム形状への加工性は、比較例5〜8よりも良好で、本発明の優位性が認められる。さらに実施例8〜19で得られた塩水吸収性共重合体の人工海水吸収倍率は、比較例6〜8よりも高く、本発明の優位性が認められる。又、比較例5は出来上がってしまえば十分な塩水吸収性能を示すものの、それに至る迄の加工性が乏し過ぎて発明が達成されない。水溶性共重合体の水溶液粘度の低すぎる比較例8は、加工性、塩水吸収性能共に劣る。
【0035】
【表2】
Figure 0004573068
【0036】
実施例20
実施例2で得られた水溶性共重合体を10wt%共重合体水溶液とし、架橋剤としてEGDGEを水溶性共重合体重量に対して0.3wt%添加した。該水溶液をバットに入れて、基材となる不織布に含漬させた後、マングルで絞ってからテフロン板上で120℃にて乾燥した。基材重量に対する水溶性共重合体の重量が150wt%になるまでこの操作を繰り返した。次に、乾燥した不織布を150℃で架橋反応が十分進行するまで乾熱処理し、本発明の塩水吸収性重合体で被覆した塩水吸収性構造物を得た。基材不織布はポリエステル100%(目付130g/m2)を用いた。該塩水吸収性構造物の人工海水吸収倍率は、乾燥した塩水吸収性構造物1gを人工海水500ml中に25℃に維持して2時間浸漬した後、200メッシュ金網で濾過し、卓上遠心脱水器にて160G×5分で水切りした後、人工海水を吸収した塩水吸収性構造物のグラム数から塩水吸収性構造物の重量(1g)を引いた数値を吸収倍率とした。
【0037】
実施例21〜28
共重合体水溶液の水溶性共重合体濃度と、水溶性共重合体の対基材量を表3中に示した数値に変更した以外は、実施例20と全く同様の方法で塩水吸収性構造物を作成し、人工海水吸収倍率を測定した。
【0038】
実施例20〜28で得られた塩水吸収性構造物の人工海水吸収倍率と加工性、構造物物性を表3に示した。実施例21、22、25、26より加工性、物性共に良好で、高い人工海水吸収性能を有する塩水吸収性構造物が得られることが認められる。実施例20より重合体濃度の低い共重合体水溶液を使用すると含浸、乾燥工程が数回必要となる、実施例23より重合体濃度が高い共重合体水溶液を使用すると付着むらが発生する、実施例24より基材に対する水溶性共重合体の重量が低い場合には塩水吸収性構造物の塩水吸収性能が低くなる、実施例28より基材に対する水溶性共重合体の重量が高い場合には、塩水吸収性構造物の柔軟性が乏しくなる等の傾向が認められる。
【0039】
【表3】
Figure 0004573068
【0040】
【発明の効果】
本発明の水溶性共重合体は、後架橋処理を行うことで高い塩水吸収性を示し、且つ共重合体水溶液とした場合には、取り扱い性に優れた適度な粘性を有することから、容易に共重合体水溶液をそのままフィルム、繊維等の形態に加工することができるだけでなく、これまで困難であった繊維、ヤーン、糸、不織布、織布、編み地、紙、シート、フィルム等の基材への被覆処理が容易に行える。容易に加工し、得られた塩水吸収性構造物は高い塩水吸収性能を示すことから、これまで使用することのできなかったような分野、用途へ極めて有効に使用することができる。特に、海水、汗、尿、血液、セメント水、塩類土壌地下水、産廃処分場排水等の電解質を含有する水性媒体を吸収させる様な用途に絶大な効果を発揮するため、衛生材料等の生活用品だけでなく、一般土木・建築用止水材、各種資材用途にも有効である。

Claims (8)

  1. 三級アミノ基を有するビニル単量体(A)とカルボキシル基含有ビニル単量体(B)と、(A)(B)両単量体の全モル数に対し1〜5モル%のスルホン酸塩基を有するビニル単量体(C)を共重合してな、共重合体濃度20wt%の水溶液の30℃における粘度が50〜800cPである水溶性共重合体を、該水溶性共重合体重量に対し0.1〜1.0wt%の架橋剤により後架橋してなる、人工海水の吸収倍率が10〜30倍である塩水吸収性共重合体。
  2. (A)と(B)両単量体のモル比が20:80〜80:20の範囲である請求項1記載の塩水吸収性共重合体。
  3. 架橋剤が官能基として水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基から選ばれるいずれか1種の官能基2個以上を有する多官能性化合物である請求項1又は2に記載の塩水吸収性共重合体。
  4. 三級アミノ基を有するビニル単量体(A)とカルボキシル基含有ビニル単量体(B)と、(A)(B)両単量体の全モル数に対し1〜5モル%のスルホン酸塩基を有するビニル単量体(C)を水系で共重合して、共重合体濃度20wt%の水溶液の30℃における粘度が50〜800cPの水溶性共重合体とし、架橋剤を共存させた該共重合体水溶液を基材に含浸あるいは被覆し、次いで後架橋せしめることを特徴とする塩水吸収性構造物の製造方法。
  5. (A)と(B)両単量体のモル比が20:80〜80:20の範囲である請求項4記載の塩水吸収性構造物の製造方法。
  6. 架橋剤が官能基として水酸基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基から選ばれるいずれか1種の官能基2個以上を有する多官能性化合物であり、該水溶性共重合体重量に対し0.1〜1.0wt%使用することを特徴とする請求項4または5記載の塩水吸収性構造物の製造方法。
  7. 共重合体水溶液が水溶性共重合体を15〜30wt%含有することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の塩水吸収性構造物の製造方法。
  8. 基材に含浸あるいは被覆される水溶性共重合体が基材に対し100〜230wt%である請求項4〜7のいずれかに記載の塩水吸収性構造物の製造方法。
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