JP4567916B2 - インクジェット記録用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用シートに関し、さらに詳しくは、画像の滲みを抑制する性能に優れるインクジェット記録用シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピューター利用技術の普及により、コンピューターにより作成した資料をプリンターなどを用いてプリントアウトすることが頻繁に行われるようになってきた。その際使用されるプリンターとしては、ドットインパクトプリンター、レーザープリンター、サーマルプリンターおよびインクジェットプリンター等が挙げられるが、高画質のフルカラー画像が容易に得られること、プリントアウト時の機械的騒音がほとんどないこと、プリントアウトに伴うランニングコストが低いことなどの利点によりインクジェットプリンターが広く利用されている。また、インクジェットプリンターやインクジェットプロッター用のインクを顔料インクにすることにより、プリントアウトしたものを屋内や屋外で長期間展示することが行われるようになってきた。
【0003】
インクジェットプリンターに用いられる用紙としては、通常普通紙やコート紙が多く用いられるが、プラスチックフィルムからなる基材表面にインク受理層を設けた記録用シートも用いられている。このインクジェット記録用シートに要求される性能には種々のものがあるが、その中で、画像の滲みの抑制は、重要なものの一つである。特に、フルカラー画像を印画する場合には、複数の色のインクを重ね打ちすることによって、インクの供給量がインクジェット記録用シートの吸収能力に対して過剰となることを原因とする滲みがしばしば発生し、この滲みを防止することが重要な課題となっていた。
【0004】
インク吸収能力を向上させる方法として、インク受理層中に、インクの吸収量が大きい填料や結着剤を含有させる方法がある。しかし、填料や結着剤を、インクの吸収量のみを重視して選択すると、画像品質や表面の強度など、他の品質が劣化する。そこで、インク受理層を2層構造にし、中間層や下引き層などと称される層、すなわち基材に近い層をインクの吸収量が大きい層とし、基材から遠い層において画像品質を調整する構成が、提案されている。
【0005】
しかしながら、画像の滲みは、インクの吸収能力の不足のみではなく、インク中の染料や顔料を定着させる性能の不足など、様々な要因によって発生する。それらの要因をすべて制御して画像の滲みを抑制することは、未だ困難である。更に画像濃度や表層の強度など、他の要求品質も充分満たすものは、存在していないのが現状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような従来のインクジェット記録用シートが有する問題を解決し、特に他の要求品質も充分に満たした上で、複数の色のインクを重ね打ちすることによって生ずる滲みを抑制する性能に優れるインクジェット記録用シートを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究の末、以下の構成によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、基材上に2以上のインク受理層を設けてなるインクジェット記録用シートにおいて、塩基性乳酸アルミニウムを含有する少なくとも1のインク受理層(A)と、インク受理層(A)と基材の間に炭酸カルシウムを含有する少なくとも1の他のインク受理層(B)を有し、かつ、全インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対する全インク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量の比率が0.3〜7の範囲であることを特徴とするインクジェット記録用シートである。
これは、基材に近い層でインク吸収性を増大させ、より遠い層で画像品質を調整しようとする場合、両方の層の成分や構成としては、従来公知のものが多数存在するが、その中で、前記の組み合わせが、滲みの抑制に格別の効果をもたらす上、画像濃度などの品質にも優れた効果をもたらすことを見出したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のインクジェット記録用シートは、基材の少なくとも一方の面に、2以上のインク受理層を有するものである。
本発明の基材は、特に限定されるものではなく、プラスチックフィルム、紙、不織布など、種々のものが使用可能である。特に、耐水性の点からプラスチックフィルムが好適である。素材の面からは、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネートなどの一般的な熱可塑性樹脂フィルム、あるいは、それら熱可塑性樹脂フィルムに炭酸カルシウムなどの無機粉末を内添させたもの、有機ピグメントを内添させたものなどから選択することが可能である。また、構造の面からは、製造の過程でボイドを発生させたもの、多層のものなどから選択することが可能である。尚、ここでいうプラスチックフィルムには、合成紙と称されるものも含まれる。
【0009】
また、密着性や漏れ性を向上させるなどの目的で、所望により、基材の片面または両面に、酸化法や凹凸法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などが挙げられ、また凹凸法としては、例えば溶剤処理法など公知の方法が挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果および操作性などの面から好ましく用いられる。また易接着処理を施すこともできる。
なお、基材の厚みは特に限定されず、用途に応じて選択することが可能であるが、通常10〜400μmであり、例えば一般的なポスターの作成に使用する場合などでは50〜200μmが好ましい。
【0010】
本発明において、インク受理層とは、インクが直接に噴射される層だけではなく、基材上に設けられインクを吸収する能力を有するすべての層をいう。本発明においては、少なくとも2以上のインク受理層を有するが、そのうち少なくとも1の層は、塩基性乳酸アルミニウムを含有することが必要である。塩基性乳酸アルミニウムとしては、例えば、多木化学社より、タキセラムM−160L、タキセラムM−17Lなどの商品名で市販されている。本発明において、塩基性乳酸アルミニウムは、画像のにじみを抑制する効果を発揮するとともに、画像濃度を高める効果をも発揮する。
【0011】
上記塩基性乳酸アルミニウムを含有するインク受理層(以下「インク受理層(A)」という)はフィラーおよびバインダーを含有することが可能である。フィラーとしては、有機、無機の制限はなく、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、珪藻土、水酸化アルミニウム、ポリスチレン、ポリメタクリレート、酸化チタン、焼成カオリンなどが挙げられる。
【0012】
また、インク受理層(A)の強度を増大させる目的で添加されるバインダーとしては、例えば、酸化でんぷん、エステル化でんぷんなどのでんぷん類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等のビニル系樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
上記インク受理層(A)には、インクの定着性を向上させる目的で、カチオン性物質を含有させることが可能である。カチオン性物質としては、ポリエーテル第4級アンモニウム塩、第4級ポリアンモニウム塩、ポリアミドエピクロロヒドリン−メタクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド系物質、カチオン性コロイダルシリカ等が挙げられる。このカチオン性物質の含有量は、固形分重量で、インク受理層(A)に対し、1〜30重量%の範囲であることが好ましい。1重量%未満では、定着性を向上させる効果に乏しく、一方、30重量%を越えると、定着性を向上させる効果は飽和し、層の耐水性が劣化するからである。
より好ましくは5〜20重量%である。
【0014】
また、インク受理層(A)にアルミナゾルを含有させることも可能である。アルミナゾルを含有させると、層の強度が向上する。本発明に用いられるアルミナゾルとしては、5〜200μmのコロイドの大きさを持つアルミナ水和物(ベーマイト系)が好ましい。これらは、例えば、日産化学工業社よりアルミナゾル100, アルミナゾル200, アルミナゾル520などの商品名で市販されている。
【0015】
インク受理層(A)としての塩基性乳酸アルミニウムの含有量は、固形分重量で、0.2〜4g/m2 、特に0.5〜2g/m2 の範囲であることが好ましい。0.2g/m2 未満では、画像の滲みが発生しやすく、また4g/m2 を越えると、インク受理層(A)の強度が低下しやすいからである。
さらに、インク受理層(A)としての全固形分重量は、5〜30g/m2 、特に7〜20g/m2 の範囲であることが好ましい。5g/m2 未満では、画像の滲みが発生しやすく、30g/m2 を越えると、層の強度が劣化するからである。
なお、これらインク受理層(A)の塩基性乳酸アルミニウムの含有量及びインク受理層(A)の全固形分重量は、インク受理層(A)が2以上ある場合は、インク受理層(A)の全体のものを意味する。
【0016】
本発明では、インク受理層(A)と基材の間に炭酸カルシウムを含有する少なくとも1の他のインク受理層(以下「インク受理層(B)」という)を有することが必要である。
本発明においては、例えばアンカーコート層や、紫外線吸収層の役割を有する層であっても、インク受理層(A)と基材の間にあり、且つ炭酸カルシウムを含有する層である限り、インク受理層(B)に該当するものとする。
但し、これら以外のインク受理層またはその他の機能を有する層の構成については何ら限定されない。
また、インク受理層(A)が炭酸カルシウムを含有している場合も、その層はインク受理層(B)には該当せず、基材との間には、1以上の炭酸カルシウムを含有する層[インク受理層(B)]が存在することが必要である。
この炭酸カルシウムには、アルゴナイト型、カルサイト型などがあるが、本発明においては、特にアルゴナイト型が好ましい。
【0017】
上記インク受理層(B)は、インクの吸収容量を増大させる役割を担っている。通常のインクジェット記録用シートにおいて、インクの吸収容量を増大させる役割を担う層には、シリカ、珪藻土などの無機填料、あるいは尿素アルデヒド樹脂などの有機填料など、種々のものが用いられるが、本発明においてはこれらの填料では効果がなく、炭酸カルシウムが格別の効果を発揮する必須の成分である。但し、炭酸カルシウム以外の無機填料や、有機填料は炭酸カルシウムの効果を損ねない程度に加えることは可能である。具体的には、水不溶性のもので、シリカ、合成および天然ゼオライト、炭酸マグネシウム、珪藻土、タルク、酸化チタン、ホワイトカーボン、クレー、有機顔料などが挙げられ、これらは単独で、または混合して使用できる。
【0018】
上記インク受理層(B)には、層の強度を向上させる目的で、バインダー樹脂を含有させることが好ましい。バインダー樹脂としては、各種の公知のものを使用でき、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ゼラチン、ポリビニルアセタール、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、スチレン−アクリル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエンゴム、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂の含有量は、インク受理層(B)の全固形分重量に対して、30〜90重量%の範囲が好ましい。この含有量が30重量%未満ではインク受理層(B)の強度が不十分となるおそれがあり、90重量%を超えると画像の滲みが発生する場合がある。インク受理層(B)の強度および画像の滲みなどを考慮すると、このバインダー樹脂のより好ましい含有量は、50〜80重量%の範囲である。なお、これらのバインダー樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明においては、特に、スチレン−アクリル共重合体を用いると、基材および他の層との接着性に優れ、好適である。
【0019】
インク受理層(B)の炭酸カルシウムの含有量は、固形分重量で、0.2〜5g/m2 、特に0.5〜5g/m2 の範囲であることが好ましい。0.2g/m2 未満では、画像の滲みが発生しやすく、また5g/m2 を越えても、滲みの防止効果は飽和して、それ以上の効果は期待できない上、経済的に不利となるからである。
次に、インク受理層(B)の全固形分重量は、1〜20g/m2 、特に3〜15g/m2 の範囲であることが好ましい。1g/m2 未満では、画像の滲みが発生しやすく、20g/m2 を越えると、成膜が困難となる。より好ましくは3〜15g/m2 である。
なお、これらインク受理層(B)の炭酸カルシウムの含有量及びインク受理層(B)の全固形分重量は、インク受理層(B)が2以上ある場合は、インク受理層(B)の全体のものを意味する。
【0020】
上記インク受理層の厚さは、複数のインク受理層の全体をあわせて1〜80μmの範囲が好ましく、特に5〜60μmの範囲が好ましい。インク受理層の厚さが1μm未満ではインクの吸収性が悪く、画像が滲んでぼける原因となる。一方、インク受理層が80μmを超えると発色性に劣る場合があり、また乾燥しにくくなるため、表面にひび割れが生じやすく、好ましくない。
【0021】
次に、本発明において、インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対するインク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量の比率が0.3〜7、好ましくは1〜5の範囲であることが必要である。この比率が0.3から7の範囲でない場合、画像の滲みが発生しやすく、好ましくない。
ここで述べる比率は、あくまでも、インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対する、インク受理層(B)が含有する炭酸カルシウムの固形分重量の比率である。すなわち、例えばインク受理層(A)が塩基性乳酸アルミニウムと共に炭酸カルシウムを含有する場合、該インク受理層(A)の炭酸カルシウムは除き、また、インク受理層(B)が、炭酸カルシウムと共に塩基性乳酸アルミニウムを含有する場合、その塩基性乳酸アルミニウムは除いて算出する。また、インク受理層(A)及びインク受理層(B)の一方又は両方が2以上ある場合は、その全体についての比率を意味する。
【0022】
上記インク受理層の各層の形成には、塗工、散布、浸漬等、従来公知の種々の方法を用いることが可能である。特に、リバースロールコート、エアナイフコート、グラビアコート、ブレードコートなどによる塗工が望ましい。なお、塗工液などには、従来使用されている各種添加剤、例えば界面活性剤、潤滑剤、安定剤、着色剤などを添加することができる。
また、塗工などの後に乾燥処理することによって、所望のインク受理層を形成するが、乾燥処理は、熱風乾燥などの通常の方法によって、100〜120℃程度の温度で行なうのが望ましい。なお、基材とインク受理層の密着性を向上させる目的で、所望により、基材とインク受理層との間にアンカー層を設けることができる。
【0023】
本発明においては、インク受理層が基材の片面に設けられる場合、基材の他の面に、所望によりマット層またはインク受理層を設けることができる。マット層はバインダーおよびマット化剤により形成され、該バインダーとしては、例えば熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂などがあり、具体的にはアクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、塩化ビニル系の各樹脂が挙げられる。また、マット化剤としては、例えばシリカ、ジルコニア、クレー、カオリン、アルミナ、酸化チタン、ゼオライトなどの無機粉体、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。このマット化剤の平均粒子径は、0.1〜20μm、好ましくは2〜10μmの範囲が望ましい。
【0024】
また、基材の両面にインク受理層を形成する場合は、同一のインク受理層を設けてもよいし、一方を、例えばマット化剤を含有しない、もしくは極少量含有させたもので透明性のあるインク受理層としてもよい。このマット層の厚さは、カール防止性や良好な筆記性などが得られる点から、1〜10μm、好ましくは3〜7μmの範囲が有利である。さらに該マット層には、従来添加剤として慣用されているもの、例えば界面活性剤、潤滑剤、安定化剤、着色剤などを含有させることができる。
なお、本発明のインクジェット記録用シートは、各種のインクで記録を行なうことが可能であるが、特に色材として染料ではなく顔料を用いたタイプのインクで記録した場合に、より優れた効果を発揮する。
【0025】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
評価は、実施例1、比較例1、2及び参考例1に従って、作製したインクジェット記録用シートに市販の顔料インクを用いたカラーインクジェットプリンターで印画し、画像濃度、画像滲みおよび塗工層密着強度の評価を、以下に示す方法で行った。
【0026】
(1)画像濃度
マクベス濃度計〔RD−918〕を用いて、マゼンタ色のベタ部反射濃度を測定した。
(2)画像滲み
ブルー色とイエロー色を連続でベタ印画を行ない、境界部のインクの滲み出し度合いを下記の基準で評価した。
○:インクの滲みが全くない
△:インクの滲みが若干みられる
×:インクの滲みが大きい
【0027】
(3)塗工層密着強度
塗工層上にセロテープ〔ニチバン社製「CT405A−18」、長さ10cm〕を2kgの圧着ロール3往復で貼り付け、図1に示すように、45°の角度で逆行する向きに剥離した時の剥れ具合を下記の基準で評価した。
○:セロテープに付着した塗工層の面積が30%以下
△:セロテープに付着した塗工層の面積が30%超60%以下
×:セロテープに付着した塗工層の面積が60%超
【0028】
参考例1
スチレン−アクリル共重合樹脂〔BASFディスパージョン社製「アクロナールYJ−6221D」、固形分濃度49重量%〕73.4重量部、炭酸カルシウム〔白石中央研究所社製「カルライトSA」、固形分濃度100重量%〕11.0重量部、分散剤〔三洋化成工業社製「キャリボンL−400」、固形分濃度60重量%〕0.6重量部、非イオン界面活性剤〔サンノプコ社製「SNデフォーマー480」、固形分濃度100重量%〕0.02重量部および水14.7重量部を均質に混合して塗工液Aを調製した。
バインダーとしてのポリビニルアルコール〔クラレ社製「クラレRポリマーR−1130」、固形分濃度100重量%〕10.5重量部、フィラーとしてのシリカ〔水澤化学工業社製「ミズカシルP−78F」、固形分濃度100重量%〕23重量部、添加剤としてのエピクロロヒドリン系樹脂〔昭和高分子社製「ポリフィックス700」、固形分濃度60重量%〕6.9重量部、塩基性乳酸アルミニウム〔多木化学社製「タキセラムM−160L」、固形分濃度20重量%〕11重量部、消泡剤としての非イオン界面活性剤〔サンノプコ社製「SNデフォーマー480」、固形分濃度100重量%〕0.3重量部および水186.6重量部を均質に混合して塗工液Bを調製した。
厚さ80μmのプラスチックフィルム〔ユポ・コーポレーション社製「ユポFPG80」〕の片面に塗工液Aを固形分重量にして7g/m2 を塗工・乾燥してインク受理層(B)を形成し、次いで塗工液Bを固形分重量にして14g/m2を塗工・乾燥してインク受理層(A)を形成して、インクジェット記録用シートを作製した。
インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対するインク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量の比率は2.1である。
【0029】
実施例1
参考例1の塗工液Bを構成する要素にさらに、添加剤としてのアルミナ水和物〔日産化学社製「アルミナゾル200」、固形分濃度10重量%〕14重量部を加え、均質に混合して塗工液Cを調製した。
参考例1において、塗工液Bの代わりに、塗工液Cを用いた以外は参考例1と同様にして、インクジェット記録用シートを作製した。
インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対するインク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量の比率は2.2である。
【0030】
比較例1
参考例1の塗工液Bを構成する要素から、塩基性乳酸アルミニウムを除いた以外は参考例1と同様にして、インクジェット記録用シートを作製した。
【0031】
比較例2
参考例1の塗工液Aを構成する要素から、炭酸カルシウムを除き、シリカ〔水澤化学工業社製「ミズカシルP−78A」、固形分濃度100重量%〕11.0重量部を加えたこと以外は参考例1と同様にして、インクジェット記録用シートを作製した。
実施例1、比較例1、2及び参考例1で作製したインクジェット記録用シートの性能評価結果を第1表に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【発明の効果】
本発明のインクジェット記録用シートは、画像濃度が高く、画像の滲みを抑制する性能に優れるとともに、塗工層密着強度などの要求品質も十分に満足するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 塗工層密着試験におけるセロハンテープの剥離方向を示す模式図
【符号の説明】
1:塗工層
2:セロハンテープ
3:剥離方向
Claims (4)
- 基材上に2以上のインク受理層を設けてなるインクジェット記録用シートにおいて、塩基性乳酸アルミニウムとアルミナゾルとを含有する少なくとも1のインク受理層(A)と、インク受理層(A)と基材の間に炭酸カルシウムを含有する少なくとも1の他のインク受理層(B)を有し、かつ、全インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量に対する全インク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量の比率が0.3〜7の範囲であり、該インク受理層(A)中の塩基性乳酸アルミニウムの固形分重量が0.2〜4g/m 2 であり、インク受理層(B)中の炭酸カルシウムの固形分重量が0.2〜5g/m 2 であることを特徴とするインクジェット記録用シート。
- インク受理層(A)中の全固形分重量が5〜30g/m2であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用シート。
- インク受理層(B)中の全固形分重量が1〜20g/m2であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用シート。
- インク受理層(B)が、炭酸カルシウム及びバインダー樹脂を含み、該バインダー樹脂がスチレン−アクリル共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用シート。
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