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JP4566019B2 - ラジカル重合開始剤およびそれを用いる重合体の製造方法 - Google Patents

ラジカル重合開始剤およびそれを用いる重合体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属錯体、特に2核金属ルテニウム錯体と有機ハロゲン化合物からなる重合開始剤、ならびに、それを用いる重合体の製造方法に関する。より詳しくは、本発明はラジカル重合性単量体の種類、組み合わせに対して幅広い範囲で適用可能な有機金属ラジカル重合開始剤を使用し、分子量を制御しつつ、生成した重合体の化学変換を可能にする末端官能基をもつ重合体を製造する方法に関する。
従来のラジカル重合と異なり、ポリマー成長末端が化学変換可能な活性を有するリビングラジカル重合、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP)(非特許文献1参照。)、ニトロキシド介するラジカル重合(NMP)(非特許文献2参照。)、硫黄類化合物経由可逆付加チェイントランスファーラジカル重合(RAFT)(非特許文献3参照。)などは、ポリマーの分子量、モノマー残基序列、次元構造などを任意に制御できることから、この10年以来多くの注目を集めて来た。その中で、特に、金属錯体とハロゲン化合物との組み合わせによる原子移動ラジカル重合系はその広範に渡るモノマー種類の適応性が示され、それを用いるポリマーの精密制御方法は、ポリマーの合成だけではなく、基材表面・界面の化学修飾、デバイス構築にも広がるようになった。
ATRP法で用いられる金属錯体は、通常は銅、またはルテニウム錯体であり、かつそれらは一つの金属を有する単核金属化合物に限られている。ルテニウム単核金属錯体を用いる重合触媒系では、重合触媒活性を引き起こすために、ルテニウム錯体以外に、アルミニウム類金属化合物、またはアミン類配位子などを余分に使うことが要求される(例えば特許文献1および2参照。)。従って、重合反応において、モノマー種類などが変わると反応制御が困難となること、モノマー以外の化合物の混入によるポリマー精製が煩雑になることなど、多くの問題が問われている。また、ルテニウム錯体はイオン性ではなく、それに由来の重合溶剤への適応性にも限界が生じることもある。
一方、複核錯体として二つのルテニウム金属を一つの錯体分子中に有する2核ルテニウム錯体は、有機合成での環化付加反応に優れた触媒活性を示すことが知られている(非特許文献4参照。)。このことは、2核のルテニウム錯体が二重結合を有する化合物について、普遍的な付加反応触媒活性をもたらすことが示唆されたと考えられる。
このような技術背景から、本発明では、2核ルテニウム錯体をラジカル重合触媒に展開することを検討し、本発明を完成するに至った。
J. Wangら、Macromolecules, 1995年、28巻、7901頁 C. J. Hawkerら、Macromolecules, 1996年、29巻、5245頁 A. Ajayghoshら、Macromolecules, 1998年、31巻、1463頁 H. Kondoら、J. Am. Chem. Soc. 2002年、123巻、500頁 特開平8−41117号公報 特開2002−80523号公報
本発明が解決しようとする課題は、複核錯体として、カチオン性にを荷電した2核ルテニウム錯体とハロゲン化合物の組み合わせによるラジカル重合開始剤を提供することにあり、さらにその開始剤を用いる重合反応から末端に化学変換可能な官能基を有するポリマーの製造法を提供する。
本発明では、触媒活性を示す金属錯体として、金属錯体以外の添加剤を必要としない、いいかえれば、その活性が他の配位子などを必要としない金属錯体に注目し、そのためには、2核ルテニウム錯体が最も適切であることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、シクロペンタジエニル基を有するカチオン性二核ルテニウムアミジナート錯体(A)と、有機ハロゲン化合物(B)とからなることを特徴とするラジカル重合開始剤を提供する。
又、本発明は、上記重合開始剤の存在下で、少なくとも1種類、好ましくは2種類以上のラジカル重合性単量体を重合させることを特徴とする重合体の製造方法を提供する。
本発明は、上記2核金属錯体と上記有機ハロゲン化合物をラジカル重合開始剤触媒として用いることで、他の金属触媒または他の金属への配位子など要らず、重合反応系が極めて単純化となり、かつその金属錯体の優れた触媒活性により、そのラジカル重合反応が室温以下でも進行することができる。また、カチオン性の金属錯体として、2核ルテニウム錯体の対アニオンを無機アニオンから有機アニオンまで幅広く変えることができ、それにより、重合反応の制御に多くのメリットをもたらすことができる。
本発明では、金属錯体として、一般式1で示されたように、ルテニウム−ルテニウム結合周辺に、それぞれのルテニウムにペンタシクロペンタジエニル類残基が配位され、かつルテニウム−ルテニウム結合間をアミジナート配位子により結び繋げた5員環構造を有する2核金属錯体(A)が有機ハロゲン化合物(B)と組み合わせることで、ラジカル重合性モノマーの重合開始剤として優れた活性を有し、かつその錯体を用いることで、末端には化学変換が可能なポリマーが得られることを明らかとした。
また、本発明での2核ルテニウム金属錯体(A)は、カチオン荷電しているため、それの対アニオンを変えることで、その金属錯体を用いるラジカル重合反応への適応性を広げることができる。
本発明のリビング重合開始剤は金属錯体として2核金属ルテニウム錯体と有機ハロゲン化合物の二種類の化合物から構成される。
本発明での金属錯体は、好ましくは下記一般式1で示される。
Figure 0004566019
上式中、Cp1, Cp2は置換基を有してよいシクロペンタジエニル類の残基を表し、その二つは同一構造のものでもよく、それぞれ異なる構造でもよいが、五つの炭素に水素原子、メチル基、エチル基に代表されるアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、または、フッ素、臭素、塩素が結合されたことを特徴とする。また、式中、R1はイソプロピル、プロピル、イソブチル、ブチル、エチル基を表し、R2はメチル、エチル基を表すアルキル基であることを特徴とする。また、式中、Xは無機または有機系アニオンを表すことを特徴とする。
上記2核金属錯体においては、金属としてルテニウム金属であるが、他の遷移金属類も活性があれば同様に使用することができる。
また、2核金属を取り囲む周辺置換基は触媒活性に寄与するが、二つの5員環のシクロペンタジエニル類残基には五つの置換基が結合してもよく、その置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基に代表されるアルキル基、好ましくは炭素数6以下のアルキル基、フェニル基に代表されるアリール基、フッ素、臭素、塩素などを取りあげることができる。また、錯体中の二つのシクロペンタジエニル類残基がペアとして、それは共に同一の構造の残基ペアでもよく、それぞれ異なる構造の残基からのペアでもよい。即ち、両方とも無置換基の残基のペアまたは同一置換基を有する残基ペア、または、無置換の残基と置換基を有する残基からのペアであってもよい。
上記2核金属錯体は一価のカチオンを荷電するため、一価の対アニオンを有することができる。一価の対アニオンとして、PF6、SbF6, BF4, BrO3, NO3, Cl, Br, Fなどを取りあげることができる。また、有機系対アニオンとして、CF3COO, CH3COO, PhCOO、長鎖アルキルスルホニル基、長鎖アルキルカルボキシ基などの脂肪族または芳香族の対アニオンを取りあげることができる。
本発明での重合開始剤系は金属錯体と有機ハロゲン化合物からの組み合わせから構成されるが、その有機ハロゲン化合物として、αーハロゲノカルボニル類化合物、αーハロゲノカルボン酸エステル類化合物またはポリハロゲン化アルカン類化合物であればよい。より詳しくは、1,1−ジクロロアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトンなどのカルボニル類化合物、または、2−ブロモ−2−メチルプロパン酸エチル、(2−ブロモ−2−メチルプロパン酸ンアントラセニルメチル、2−クロロ−2,4,4−トリメチルグルタル酸ジメチル、1,2−ビス(α−ブロモプロピオニルオキシ)エタンの如くエステル類、または四塩化炭素、四臭化炭素の如くポリハロゲン類の化合物を取りあげることができる。
本発明での金属錯体と有機ハロゲン化合物の組み合わせでは、金属錯体対有機ハロゲン化合物のモル比が1〜0.5範囲での割合で使用することができるが、触媒活性の高さから考えた場合、有機ハロゲン化合物が金属錯体より過剰であることが好ましい。
本発明での重合開始剤系はラジカル重合性モノマー全般に適応できる。重合性モノマーとして、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリアミド類、スチレン類、ビニルピリジン類などを取りあげることができる。より詳しくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ジメチルアミノエチルメタクリレートなどのメタクリレート類モノマー、または、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ジメチルアミノエチルアクリレートなどのアクリレート類モノマー、または、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミドなどアクリルアミド類モノマー、または、スチレン、2−クロロメチルスチレン、3−クロロメチルスチレン、4−クロロメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−ビニル安息香酸、p−ビニルフェニルスルホン酸などスチレン類モノマー、またはp−ビニルピリジン、o−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類モノマーを用いることができる。
本発明でのこれらのモノマーは単独または二種類以上モノマーを同時に反応に用いることもできる。また、二種類以上のモノマーを重合反応の一定時間毎に加えて使用することもできる。第一モノマーが消費されたから次のモノマーを加えることで、得られるポリマーがジブロック、またはトリブロックまたはそれ以上のブロック共重合体の構造を取ることができる。
モノマーと本発明の重合開始剤を混合し、重合を行う際、モノマー対ハロゲン化合物モル比は10〜5000であればよく、それが50〜1000であれば更に好ましい。
本発明での重合開始剤系を用いて重合反応を行う際、反応温度を室温以下または室温以上にも設定できるが、好ましくは、20℃前後の室温状態で反応を行うことを取りあげることができる。
反応時間は、1〜24時間範囲で十分であるが、開始剤の種類、オレフィンモノマーの種類及び反応温度によりその反応時間を設定することが望ましい。更に、反応時間の設定は、得られる共重合体の分子量制御に合わせて、設定することが望ましい。
本発明の共重合反応においては、溶媒なしでのバルク重合、又は溶媒存在下での溶液重合、又はアルコール類溶剤の存在下でのエマルジョン重合などの異なる重合方法が適用できる。
本発明の重合反応に用いることができる溶剤としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、アニソール、シアノベンゼン、ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等が挙げられる。
以下に実施例および比較例を持って本発明をより詳しく説明する。
(GPC測定法)
高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式会社製HLC−8020)、UV及びRI検出器、TSKgel 2000xl+3000Hxl+5000Hxl+guardcolumnHxl-H、溶媒THF、流速:1.0 mL/min、温調:40℃にて測定した。
(NMR測定)
1H-, 13C-NMRの測定は、日本電子(株)製のLambda600にて行った。
合成例1
<2核ルテニウム金属錯体の合成>
この合成は三つのステップを経て合成されたが、反応1としてLi(iPrN=C(Me)NiPr) (Aと略す)の合成、反応2として(η5-C5Me5)Ru(μ2-iPrN=C(Me)NiPr)Ru(Br) (η5-C5Me5) (Bと略す) の合成、反応3として、[(η5-C5Me5)Ru(μ2-iPrN=C(Me)NiPr)Ru(η5-C5Me5)]+PF6 - (Cと略す) の合成である。
<Aの合成>
アルゴン雰囲気下で100 mLシュレンク管に脱水ジエチルエーテル25 mLとiPr-N=C=N-iPr( FW = 126.20 / 1.0 mL / 6.37mmol )を入れた後、氷浴で反応容器を冷却しながらMethyl Lithium( 7.0 mL / 0.91 mmol/mL )を滴下した。反応容器を室温まで戻し、1時間室温で攪拌した後、濃縮し、白色固体(A)( FW = 126.20 )を得た。
C8H17N2Li :
1HNMR (in THF-d8) δ: 0.99 (d, 6H, J = 6.2 Hz, CH(CH3)2),1.78 (s,3H,CCH3), 3.46 (sept, 2H, J = 6.2 Hz, CH(CH3)2).
13CNMR (in THF-d8) δ: 10.8 (s, CCH3), 27.3 (s, CH(CH3)2), 47.9 (s, CH(CH3)2), 169.2 (s, NCN).
<Bの合成>
アルゴン雰囲気下で100 mL シュレンク管に[RuCl25-C5Me5)]2( FW = 261.47 / 2.02g / 3.29mmol )とNaBr( FW = 102.89 / 6.14g / 59.77mmol )をいれ脱水メタノール40 mL、脱水ジクロロメタン40 mLを加えて1時間攪拌した。減圧乾固した後、脱水ジクロロメタン90 mLをいれメンブランフィルターでろ過し、乾燥させ紫色固体[RuBr25-C5Me5)]2( FW = 792.22 / 2.4781g / 3.13mmol )を得た。アルゴン雰囲気下で100 mL シュレンク管に[RuBr25-C5Me5)]2( FW = 792.22 / 2.4781g / 3.13mmol )を入れ、脱水テトラヒドロフラン50 mLを入れたのち(C2H5)3BHLi( FW = 105.94 / 6.0 mL / 1.05mmol/mL )1時間室温で攪拌させた。濃縮させたのち、脱水テトラヒドロフラン5 mLで2回洗浄し、減圧乾固させオレンジ色固体 [(η5-C5Me5)RuBr]4 ( FW = 1264.82 / 1.5839g / 1.25mmol / 80%yield)を得た。グローボックス内で50 mLシュレンク管に[(η5-C5Me5)RuBr]4(FW = 1264.82 / 505mg / 0.399mmol )と(A)Li(iPrN=C(Me)NiPr) (FW = 148.18 / 118mg / 0.796mmol )を入れ、テトラヒドロフラン30 mLに溶解させ室温で6時間攪拌した。減圧乾固後、脱水ヘキサン80 mLを用いてセライトろ過を行い分離した。乾燥後、茶色固体の(B)( FW = 678.708 / 280mg / 52%yield )を得た。
C28H47N2BrRu2
1H NMR (in THF-d8): δ 1.28 (d, J = 6.3 Hz, 6H, CH(CH3)2), 1.31 (d, J = 6.3 Hz, 6H, CH(CH3)2), 1.69 (s, 15H, C5(CH3)5), 1.84 (s, 15H, C5(CH3)5), 1.88 (s, 3H, CCH3), 2.99 (sep, J = 6.3 Hz, 2H, CH(CH3)2). 13CNMR (in THF-d8): δ 11.4 (C5(CH3)5), 14.4 (C5(CH3)5), 15.6 (CCH3), 23.7 (CH(CH3)2), 26.7 (CH(CH3)2), 56.0 (CH(CH3)2) 83.4 (C5(CH3)5), 84.4 (C5(CH3)5), 124.9 (NCN).
mp: 258℃
<Cの合成>
B化合物である(η5-C5Me5)Ru(μ2-iPrN=C(Me)NiPr)Ru(Br)(η5-C5Me5)(FW = 693.32 / 50mg /0.072mmol)に AgPF6(FW = / 18mg /0.072mmol)と4mLのCH2Cl2を20 mLシュレンク管にいれて、室温で攪拌した。色は、暗赤色から紫色に変化した。1時間後,ガラスフィルターでろ過し、減圧乾固し紫色固体を得た。n-pentaneとCH2Cl2で再結晶を行い(η5-C5Me5)Ru(μ2-iPrN=C(Me)NiPr)Ru(η5-C5Me5)+PF6 -( FW = 758.326/ 44mg /0.mmol)の黒色固体を得た。
C28H47N2Ru2PF6
1HNMR (in CD2Cl2) : δ 1.54 (s, 3H, CCH3), 1.58(s, 30H, C5(CH3)5), 1.65(d, J = 6.3Hz, 12H, CH(CH3)2), 3.29(sep, J = 6.3Hz, 2H, CH(CH3)2).
13CNMR (in CD2Cl2) : 11.8 (C5(CH3)5), 15.3 (CCH3), 24.2 (CH(CH3)2), 54.7 (CH(CH3)2) 82.1 (C5(CH3)5), 123.5 (NCN)
合成例2
<2−ブロモ−2−メチルプロパン酸アントラセニルメチル>(以下Dと略す)の合成
50 mLシュレンク管にアルゴン雰囲気下で9-ヒドロキシメチルアントラセン( FW = 208.26 / 2.46 g / 12 mmol )とテトラヒドロフラン4 mLを入れて攪拌しながらトリエチルアミン( FW = 101.19 / 2.8 mL / 28.8 mmol)を滴下した。次に氷浴(0 ℃)で、2-ブロモイソ酪酸ブロミド( FW = 229.91 / 1.8 mL / 13.2 mmol)を滴下し、2.5時間室温で攪拌した。白色から肌色へと変化した。その後テトラヒドロフランでろ過を行い、減圧乾固をした後シリカゲルクロマトグラフィーにより単離生成を行った。初めヘキサンで展開し徐々に極性を上げてヘキサン/ジクロロメタンが1:1での溶媒で展開することにより黄色の(D)( FW = 357.24 / 3.808 g / 11.03 mmol/ 92%)が得られた。
C19H17BrO2 :
1HNMR (in CDCl3): δ 1.88(s, 6H, 2OC(CH3)2Br), 6.23(s, 2H, CH2), 7.5(dd, J = 8.46Hz, 0.97Hz, 2H, C14H9), 7.56(ddd, J = 8.94Hz, 1.2Hz, 2H, C14H9), 8.05(dd, J = 8.21Hz, 2H, C14H9), 8.35(d, 2H, C14H9), 8.53(s, 1H, C14H9).
13CNMR (in CDCl3): δ 30.7(s), 131.3(s), 131.1(s), 129.4(d, J=13.1), 129.1(d, J=10.7), 126.7(s), 125.5(s), 125.1(s), 60.7(d, J=10.7), 55.9(s), 30.7(q, J=11.5)
IR(KBr, cm-1): 1725(s).
mp: >300℃
合成例3
<末端にブロモ−2−ブチリロキシ基を持つポリ(テトラメチレンオキシド)の合成>
この合成はニつのステップを経て合成されたが、反応1として末端にジメチルフェニルシリロキシ基を持つポリ(テトラメチレンオキシド)(Fと略す)の合成、反応2として末端にブロモ−2−ブチリロキシ基を持つポリ(テトラメチレンオキシド)(Gと略す)の合成である。(合成法引用:Iura, T.; Matsubara, K.; Nagashima, H. 九州大学機能物質科学研究所報告, 2000, 14(2), 119-125)
Figure 0004566019
<Fの合成>
触媒として(μ-η235-C8H12)Ru3(CO)7 12.2 mg(0.019 mmol)、THF 15 mL(190 mmol)を50 mLシュレンク中に入れて均一溶液を作った。次に、この溶液6 mLと、ジメチルフェニルシラン1.16 mL(7.6 mmol)をアンプル中に取り、減圧下で3回凍結脱気を行った後、アンプルを封管した。これを40 ℃の振とう器付き恒温槽に入れ、20 時間反応を行った。反応液をエーテルに溶解し、減圧下で溶媒を除去した。常温でオイル状の、末端にジメチルフェノキシ基を持つPTHFが得られた(3.78 g, 71 %)。このPTHFをエーテル 1 mLに溶解させ、200 mLのヘキサンに撹拌しながら滴下した。−30 ℃の冷凍庫で再沈殿精製を行った後、メンブランフィルタで濾過を行った。ポリマーが融解する前にナスフラスコに取り一日減圧乾燥させて、常温でオイル状のFが得られた[Mn = 2500(GPC), Mw/Mn = 1.4] (1.32 g, 35 %)。
<Gの合成>
上記の方法で合成したFを300 mg(0.12 mmol)、2-ブロモイソブチリルブロミド 36 μL (99 mg, 0.45 mmol)、ベンゼン 2 mLを20 mLシュレンク管に入れ、室温で20 時間撹拌した。反応液を25 mLのメタノールに滴下して反応を停止した。エバポレータで溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をクロロホルムに溶解し、50 mLのメタノールに滴下した。−30 ℃の冷凍庫で再沈殿精製を行った後、メンブランフィルタで濾過を行った。ポリマーが融解する前にナスフラスコに取り一日減圧乾燥させて、常温でオイル状のGを得た[Mn = 2600(GPC), Mw/Mn = 1.4](208 mg, 70 %)。
実施例1
<メチルメタクリレートMMAの重合>
アルゴン雰囲気下のアンプル管に(C)錯体( FW = 678.08 / 10 mg / 0.019 mmol )を入れCaH2 で脱水し減圧蒸留したMMA(FW = 100.12 / 2.0 mL / 18.70 mmol)を加えた。有機ハライド開始剤エチル-2-ブロモイソブチレート(Eと略す)( FW = 195.06 / 5.5 μL / 0.037 mmol )と溶媒としてトルエン2 mLを加えた。MMA/C/E=1000 / 1 / 2で行った。その後凍結脱気を2回行い、封管した。40 ℃のオイルバスで攪拌させながら10 時間反応させ反応終了後すぐに開封し、テトラヒドロフランで溶解させ減圧乾固した。その後GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)で分子量、分散度を測定した。再びテトラヒドロフランで溶解させ、メタノール(50 mL)で再沈殿を行い、GPCで分子量、分散度を測定した。
粗収率は33%、メタノール再沈殿後の収率は28%であった。再沈殿前後の数平均分子量は49000と47000となり、分子量分布は1.33と1.30となった。
Figure 0004566019
比較例1
<メチルメタクリレートの重合>
実施例1と全く同様な条件下、金属錯体として臭化銅/ビピリジンを用い、同様な仕込み比でMMAの重合反応を行った。
粗収率は13%、メタノール再沈殿後の収率は10%であった。再沈殿前後の数平均分子量は23000と28000となり、分子量分布は1.30と1.18となった。
以上の比較検討から、本発明での2核ルテニウム金属錯体の重合活性は、既知の銅錯体より高い活性を有することが示唆された。
実施例2
<ハロゲン化合物Dを用いたMMAの重合反応時間と分子量との相関性>
ハロゲン化合物として、実施例1のEをアントラセン残基を有するDに変えた以外、実施例1と全く同様な条件下、重合反応を行ない、重合反応1.0時間、3.5時間、9.0時間の時点での重合物の分子量を測定した。その結果を図1に示した。
Figure 0004566019
表1の結果は、生成ポリマーの分子量は重合反応の時間増大につれ増大することを示した。このことは、ルテニウム2核錯体の存在下、MMAの重合がリビング的に成長して行くことを強く示唆した。
実施例3
<tert-ブチルアクリレートの重合>
実施例1において、モノマーをtert-ブチルアクリレート(FW = 128.17 / 3.0 mL / 18.70 mmol)とし、無溶媒条件以外は、実施例1と同様にして重合を行った。(収率 95% [転化率 > 95%], Mn = 40700 Mw/Mn = 1.75)
実施例4
<有機ハライド開始剤にマクロイニシエーターを用いたMMAの重合>
有機ハライド開始剤として合成例3で得られたマクロイニシエーター(50mg[0.019mmol]、Mn=2600、Mw/Mn=1.4)を用い、無溶媒で20時間反応とした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。反応終了後、反応混合物をTHFに溶解させ、アルミナで濾過してナスフラスコに移し、揮発成分を減圧下で除いた。残ったポリマーを少量のTHFに溶解して50mLのMeOHに滴下し、再沈殿生成をおこなった。溶液部分を濾過で除き、ポリマーをメタノールで洗浄した後、真空乾燥をおこない、1.7gのポリマーを得た(収率90%[MMA転化率>95%],Mn=71000、Mw/Mn=1.6)。
Figure 0004566019
この重合では、結果的には、ポリ(テトラメチレンオキシド)ブッロクとポリメタクリレートブッロクからなるジブッロク共重合体が得られ、それらのモノマー残基組成比5/95であった。
実施例5
<ポリメチルメタクリレートマクロイニシエーターを用いたMMAの重合>
実施例1において、モノマーであるMMAの量を ( 0.4 mL / 3.74 mmol )、重合溶媒であるトルエンの量を0.4 mLとした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。再沈殿して得られた重合体粉末の収率は 25 %であり、 Mn = 7000、 Mw/Mn = 1.2であった(この重合体をHと略す)。
このH重合体131 mg(0.019 mmol)を開始剤として用い、実施例1と同様な条件でMMAの重合を行った。収率 26%、Mn = 47300、 Mw/Mn = 1.33であった。
Figure 0004566019
実施例6
<10℃におけるMMAの重合反応>
実施例1において、冷却槽(冷媒:イソプロピルアルコール)を用いて温度を10℃にし、モノマーであるMMAの量を ( 0.4 mL / 3.74 mmol )、重合溶媒に酢酸エチル(0.4 mL)を用い反応時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にしておこなった。精製後の重合体収率は 42%,重合体の数平均分子量は Mn = 7200 (Mw/Mn = 1.63)であった。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)で表される錯体(A)と、有機ハロゲン化合物(B)とからなるラジカル重合開始剤。
    Figure 0004566019
    (但し、Cp 、Cp は置換基を有してよいシクロペンタジエニル類の残基であって、同一構造のものでもそれぞれ異なる構造のものでもよいが、五つの炭素に水素原子、メチル基、エチル基、フェニル基、フッ素原子、臭素原子または塩素原子が結合されたことを特徴とするシクロペンタジエニル類の残基、
    はエチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基またはイソブチル基、
    はメチルまたはエチル基、
    は無機または有機系アニオンを表す。)
  2. 前記有機ハロゲン化合物が、α−ハロゲノカルボニル化合物、α−ハロゲノカルボン酸エステルまたはポリハロゲン化アルカンである請求項に記載の重合開始剤。
  3. 請求項1または2に記載の重合開始剤の存在下で、少なくとも1種類のラジカル重合性単量体を重合させることを特徴とする重合体の製造方法。
  4. ラジカル重合性単量体が、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、アクリル酸エステル系、および、(メタ)アクリルアミド系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種のラジカル重合性単量体である請求項に記載の重合体の製造方法。
  5. ラジカル重合性単量体が、スチレン系単量体、メタクリル酸エステル系単量体、および、アクリル酸エステル系単量体からなる群から選ばれる少なくとも2種類のラジカル重合性単量体を用いて重合させる請求項に記載の重合体の製造方法。
  6. 前記重合体が、その片末端に有機ハロゲン化合物(B)に由来するハロゲン原子を有する請求項3〜5のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  7. 前記重合体が、1,000から1,000,000の任意の数平均分子量を有し、且つ分子量分布が2.0以下である請求項3〜6のいずれかに記載の重合体の製造方法。
  8. 重合温度を室温以下で行うことからなる請求項3〜7のいずれかに記載の重合体の製造方法。
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