JP4560723B2 - 葉面散布剤とその製造方法 - Google Patents
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Description
(1) 金属酵素機能の補強
モリブデン、マンガン、亜鉛など微量必須金属(鉄や銅なども)を特定成分に偏らずバランス良く、葉面散布など適切な方法で供給する事。
(2) カルシウム、マグネシウムの十分な供給
骨格を作るカルシウムとエネルギー分子ATPや葉緑素に関与するマグネシウムは、上記の金属よりも十分に多量に吸収させる事。
(3) 光合成機能の補強
紫外線領域の光を効果的に取り込む酸化チタン投与などのように光合成機能そのものを補助する事。
(4) 光合成産物、炭素源の補強
糖発酵液中の有機酸と糖のように光合成産物を強制的に直接補給する事。
(5) 成長ホルモンの補強
藻類などに含まれているオーキシン、ジベレリン、サイトカニン、ベタインなどの成長ホルモンを活用する事。
(6) 尿素態窒素の葉面散布による補給
土壌に散布された尿素は、バクテリアで硝酸に酸化されてしまう。これに対し、葉面から取り込まれた尿素はオルニチン酸回路を活性化し、生育を促す。
(7) 多様なアミノ酸誘導体とペプチド態窒素の補給
5−アミノレブリン酸とγ−アミノ酪酸などの非α−アミノ酸、メチオニンやトリプトファンなどのα−アミノ酸の供与。また、ペプチド態窒素の供給は、植物の生育を活性化する。
本発明の特徴とする手段は次の(1)〜(4)のとおりである。
(1).発明1
可溶性総ペプチドと可溶性総アミノ酸を含む糖類発酵有機酸水溶液にマグネシウム塩、カルシウム塩や酸化チタン、モリブデン塩、亜鉛塩、マンガン塩など必須微量金属塩を溶解させてなることを特徴とする葉面散布剤。
(2).発明2
水溶性タンパク質を糖類水溶液に溶解させて酵母発酵させ、可溶性総ペプチドと可溶性総アミノ酸を含む糖類発酵有機酸水溶液を母液とし、この母液にマグネシウム塩又はカルシウム塩や酸化チタン、モリブデン塩、亜鉛塩、マンガン塩など必須微量金属塩を溶解させることを特徴とする葉面散布剤の製造方法。
最も好ましい具体的な諸成分の濃度を、以下の2通りで詳述する。
1)炭素濃度が25〜35重量%の糖水溶液と、水溶性タンパク質源濃度が7〜26重量%のタンパク質水溶液を、体積比で4(糖水溶液):6(タンパク質水溶液)から3(糖水溶液):7(タンパク質水溶液)の割合で混合溶解させる。この混合液を酵母種菌により糖の有機酸への発酵と同時にタンパク質をペプチドとアミノ酸へ分解して、トリクロロ酢酸処理後の可溶ペプチドがLOWRY法による定量値で30〜60g/L濃度含まれる糖類発酵有機酸水溶液にし、この糖類発酵有機酸水溶液100重量%に、酢に溶解した濃度2〜4重量%のマグネシウム天然鉱石及び又は貝殻由来のカルシウムを2〜7重量%溶解させることを特徴とする葉面散布剤の製造方法。
2)もしくは、炭素濃度として10〜14重量%の糖と、4〜16重量%の水溶性タンパク質源を含む水溶液を調整する。その混合水溶液を酵母種菌により糖の有機酸への発酵と同時にタンパク質をペプチドとアミノ酸へ分解して、トリクロロ酢酸処理後の可溶ペプチドがLOWRY法による定量値で30〜60g/L濃度含まれる糖類発酵有機酸水溶液にし、この糖類発酵有機酸水溶液100重量%に、酢に溶解した濃度2〜4重量%のマグネシウム天然鉱石及び又は貝殻由来のカルシウムを2〜7重量%溶解させることを特徴とする葉面散布剤の製造方法。
そしてこのようにして製造して得た葉面散布剤において、植物に散布する際の希釈程度は、通常は水で100〜1500倍に希釈し、より好ましくは水で300〜750倍に希釈すれば後述の所期の各種効果が確実に得られるものである。
(3).発明3
水溶性タンパク質源として卵類、乳類、豆乳、血液素材から一つ以上の使用を特徴とする発明2に記載の植物の葉面散布剤の製造方法。
(4).発明4
マグネシウム塩の対陰イオンは、カルボキシレート(-CO2-)である事を特徴とする発明3に記載の植物の葉面散布剤の製造方法。
1.農作植物内の残留硝酸を大幅に確実に低減する。
2.窒素に加え、リン酸の代謝も向上し、増収と栽培期間の短縮設計が可能になる。
3.体内の窒素代謝が活性化されるため、ポリフェノール、ビタミンC、リコピン等の抗酸化物質が増える。これと同時に、脳内精神安定作用をもつGABA(4-アミノ-1-ブタン酸)の含有量が増加する。
4.葉緑素を増やし、光合成能力を高める。
5.土壌に蓄積した肥料を旺盛に吸収し土壌のEC(電気伝導度)値を低下させ、肥料過剰土壌の新しい改善策となる。
6.多肥料施肥の残留硝酸過多によるツルボケ(花芽が流れ果実が付かない症状)状態を速やかに解消する。
7.リン酸代謝促進により、花弁類の花芽分化が促進し、花付きが改良する。特に、果菜類では身付きが生産的になり増収につながる。具体的には、果采類では果実数と一固体当たりの重量の増加、および開花後から収穫までの期間の短縮を、根菜類では根と葉の双方の収穫重量の増加を、葉采類では葉面積と葉重量の増加を意味する。特に、花芽分化に必要なリン成分の吸収が活発になるので、開花量の増加と早期化が可能となる。
8.これらの栽培上の優れた効果に加え、高い抗酸化力と低い残留硝酸の農作物は、安心健康性能が高まっているため、他生産者作物との差別化をつける事が可能になる。
9.有機JAS法にも適合しうる事も、商品価値を向上させる。
10.植物謝回路の活性化に加えて、これらの糖類発酵有機酸水溶液は、糖が発酵し尽くされて生成したものであるため、散布した葉面上でカビ等の発生となりにくい利点を持つ。また、発酵で生成したアルコールとカルボン酸が、芳香性エステルに自発的に化学変化する事により、虫やカビなどの誘因を防いでいる。
11.特許文献1と特許文献2で示した糖水溶液のみで十二分に酵母発酵させるには、室温で10ヶ月以上の熟成期間が必要である。これに対し、水溶性タンパク質を含む糖水溶液の発酵は、同じ条件下、約3ヶ月で完了する。酵母菌の増殖がタンパク質由来の成分で活性化するためである。即ち、葉面散布剤製造の期間短縮による製造コスト削減につながる利点を持つ。
また、糖類としては、廃糖蜜がコスト面から優れているが、精製した砂糖、黒砂糖、蜂蜜、果糖、乳糖など食品用の糖が好ましい。もちろん、化学試薬レベルにまで生成したグルコース、マルトース、スクロースも使用できる。マグネシウム塩は、酢酸マグネシウムやアミノ酸マグネシウム錯体塩が好ましいが、苦汁や硫酸マグネシウムなどその他のマグネシウム塩でも構わない。カルシウム塩は、貝殻由来のカルシウム塩の方が、モリブデンなど生育必須微量金属を含んでいるため、純度の高い石灰石由来よりも望ましい。
尚、本実施例において、成分の割合、混合手順、操作手順は、適時入れ替えと変量できる。また、タンパク質源として卵白と脱脂粉乳を例にとっているが、水溶性のタンパク質であれば、全て同等の効果を得ることができる。
図1に本発明の葉面散布剤の製造手順を流れ図としてまとめている。
まず、タンパク質水溶液に糖類を添加し、酵母発酵させる。糖が発酵により有機酸になり、タンパク質は主にペプチドとアミノ酸に変化する。この有機酸とペプチド、アミノ酸に富む糖類発酵有機酸水溶液を母液として、所定量の酢酸または酢を添加し、最後にマグネシウム塩やカルシウム塩を飽和溶解させる。マグネシウムイオンとカルシウムイオンを単独に溶解させても良いし、混在させる事もできる。
マグネシウム塩の代わりにカルシウム塩や酸化チタン、モリブデン塩、亜鉛塩、マンガン塩など必須微量金属塩の添加も可能である。但し、モリブデン塩やマンガン塩の添加では、タンパク質由来成分と複合化し沈殿物を形成するのでこれら金属塩と仕込み成分の濃度比との調整が必要になる。
これらの操作により、炭素源および代謝活性剤としての有機酸、窒素源としてのアミノ酸とペプチド、そしてマグネシウムやカルシウムを中心とした金属イオンが含まれた水溶液が得られる。
以下に、糖類として廃糖蜜液、タンパク質源として卵白と脱脂粉乳を用いた具体例を示す。
濃度750nm[mg/mL]=[(A750−0.0931)÷0.1663]÷2×(希釈倍率)。
また、570nmにおける濃度は、次式によって、算出した。
濃度570nm[mg/mL]=[(A570−0.0398)÷0.1402]÷2×(希釈倍率)。
表2に表1で得られた糖類発酵有機酸水溶液を母液とした葉面散布剤の仕込み成分をまとめている。所定量の食酢を発酵液に添加し、さらに硫酸マグネシウムもしくは酢酸マグネシウム、貝殻由来の酢酸マグネシウムを飽和溶解させる。表2には、また、これら一連の葉面散布剤の略称も併記している。酢酸マグネシウムは、固体の水酸化マグネシウム天然鉱石を酸度15度の醸造酢でpHが7から8になるまで溶解させ、不溶物を濾別後、濾過液を加熱乾燥させて得た。貝殻由来の酢酸カルシウムは、そのままでは醸造酢には溶解しにくいので、炭酸カルシウム源である産業廃棄物としてのホタテの貝殻や蛎殻を1000℃で2時間焼成後、上記醸造酢で中和し、加熱乾燥させ粉末化させた。この加熱方は広く使用されている方法である。貝殻由来の酢酸カルシウムは、貝に含まれるモリブデンなどの成長必須微量金属も含まれる長所を持つ。また、有機認証からは外れるが、リンモリブデン酸アンモニア、酢酸マンガン、酢酸亜鉛などの塩も1.0g/Lを上限として添加する事も可能である。
測定対象とした農作物を同一の条件(温度、日照、水分)で複数固体生育させた。本例の葉面散布剤を用いる区(散布区)と用いない区(対照区)を同数用意した。これらの試験場での評価に加えて、本発明の機能の普遍性を高めるために、市場へ農作物商品を生産している農場での試験を行った。
リコピン(mg/100mL)=―0.0458Abs(663nm)+0.204Abs(645nm)+0.372Abs(505nm)−0.0806Abs(453nm)(1)
卵白、脱脂粉乳由来の成分を含む、アミノ(卵)Mg酢糖およびアミノ(乳)Mg酢糖をバジルに葉面散布し、葉中の硝酸、リン酸、カルシウム、マグネシウム濃度の経時変化を以下の手順で追跡し、表3と図2にその結果をまとめている。大分県日田地区(大山町)において、2004年夏に育苗したバジルを9月にハウス定植した。11月28日、12月1日、4日、7日、10日、13日に本発明で開発した水溶液を水で500倍(体積比)に希釈し、霧吹きを用い葉面の裏表に散布した。バジルは、株根を残し活かしたまま、一株から数枚の葉をサンプリングした。同じ試験区内で異なる株から集めた20枚の葉全てをホモジナイズし、不溶物をろ過した。バジルの収穫量は、ホモジナイズする前の20葉の表面積をスキャナーでコンピューターに取り込み計測し、その平均値を葉の大きさとした。
根から取り込まれた硝酸は、亜硝酸を経てアンモニアへと還元され、炭素源と同化してアミノ酸へと代謝される。表3のバジルにおいて、散布翌日のアンモニア量を比較すると、散布処理区のアンモニア量が、対照区よりも約30ppmほど高いことが判る。アンモニアは、バジルの根からは取り込まれない要素であるため、体内の硝酸が還元されアンモニアに変化したことが結論される。即ち、硝酸代謝が散布により活性化している。ここでは、硝酸とアンモニアの関係を追跡しているが、その一つ前の過程、硝酸から亜硝酸への変化を追跡するには、葉野菜では生長が速過ぎ採取タイミングが難しい。そこで、葉野菜に比較すると緩慢な生長速度をもつと考えられる果樹の葉に対する散布試験をおこなった。
窒素源として尿素やアミノ酸、ペプチド水溶液を葉面散布する農業技術は一般に知られている。また、マグネシウムイオンの葉面散布や土壌への施肥も、生育活性化に有効であるとして広く圃場で使用されている。本発明は、マグネシウムイオンと窒素源としてのペプチドおよびアミノ酸を、炭素源としての糖蜜発酵液と共存させる事を特徴としている。表5には、炭素源と窒素源およびマグネシウムイオンを共存させる効果をケールへの葉面散布試験から例証している。
表6は、葉菜であるケールの平均収穫量に与える散布剤の効果をまとめている。ケールの栽培条件は、以下の通りである。大分県直川において畝幅60cmの四つの試験区(対照区、Mg酢糖区、Mg酢糖N区、アミノMg酢糖区)を設けた。元肥として、ぼかし肥料830kg/10aとバーク堆肥8ton/10aを5月1日に畝幅1m畝幅12mの畝立てに施した。これは、N(20kg/10a)、P(24kg/10a)、K(14kg/10a)を含んでいる。2004年5月2日に株間60cmでキューサイ(株)より購入の苗を定植した。6月12日、14日、28日、29日、7月15日の合計5回、本発明で開発した硝酸削減剤を水で500倍(体積比)に希釈し、霧吹きを用い葉面の裏表に早朝散布した。収穫量は、最終散布後数時間おきに朝から夕方まで5回の採取を行い調査した。平均収穫量は、畝の中から5株を固定し、各株から一葉、最も下位にある活動葉から順番に採取した。5葉の合計重量を平均化して採取時刻毎の収穫重量とした。これら5回の平均値を試験日一日の葉の収穫量平均値とした。
硝酸値低減と抗酸化活性値増加を、表3にまとめたバジルに限らず、他の葉野菜に対しても可能であることを確認するためケールに対して葉面散布試験を行った。表7にその結果をまとめている。曇天が続き降雨量も多い梅雨時期と真夏の晴天時期に対して散布を行っている。光合成が不活発な梅雨時期は、真夏の時期に比較して硝酸値は高く、ポリフェノール値は低い。これは、曇天で光合成が弱まり根から吸い込まれた硝酸が代謝されていない事と、低い紫外線量がポリフェノール量を増加させていないと考えられる。時期によらず、硝酸値は散布により低下し、ポリフェノール値は増加する。硝酸を代謝するために体内の炭素が主に使用されるため、低硝酸化が生じている株では糖度が低下している。即ち、糖度の低下は代謝活性化を意味している。
ナスの栽培条件は、以下の通りである。大分県直川において畝幅60cmの三つの試験区(対照区、Mg酢糖区、アミノ(卵)Mg酢糖区)を設けた。元肥として、ぼかし肥料800kg/10aとバーク堆肥8ton/10aを5月1日に畝幅2m畝幅12mの畝立てに施した。これは、N(19kg/10a)、P(23kg/10a)、K(13.6kg/10a)を含んでいる。2004年4月10日に株間85cmで新長崎長ナス苗を定植した。4月22日から6月29日まで、合計8回、本発明で開発した硝酸削減剤を水で500倍(体積比)に希釈し、霧吹きを用い葉面の裏表に早朝散布した。6月29日の最終散布から採取日の7月3日まで無散布期間をとった。
果菜類への葉面散布による果実の抗酸化活性の増加は、ナスに限らずハウス栽培のミニトマトにおいても認められる。表9には、梅雨時期と厳寒期における散布試験の結果をまとめている。絶対値は異なるが、アミノ(卵)Mg酢糖散布により、ポリフェノール値とリコピン値、双方共に季節によらず増加している。また、これらの値は、収穫してから室温で放置されると酸化劣化して、抗酸化活性値が低下してくる。表9の下段には、リコピンの劣化に与える散布の効果をまとめている。収穫から室温で5日放置した対照区のリコピンは半減している。これに対してアミノ(卵)Mg酢糖散布処理をしたミニトマトは、わずか5%の劣化にすぎない。即ち、農作物の日持ちが向上している事が判る。
Claims (2)
- ペプチド類の濃度が30〜60g/Lで、アミノ酸類の濃度が3〜14g/Lである糖と水溶性タンパク質の糖類発酵有機酸水溶液100重量%に、マグネシウム塩を2〜4重量%溶解させてなる葉面散布剤。
- 水溶性タンパク質が卵白と粉乳の一つ以上である請求項1に記載の葉面散布剤。
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