JP4556482B2 - 結着樹脂、電子写真用トナー及びその製造方法、電子写真用現像剤並びに画像形成方法 - Google Patents
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Description
一方、複写機、プリンターの消失エネルギー使用量を少なくするため、より低エネルギーでトナーを定着する技術が望まれており、そのためのより低温で定着し得る電子写真用トナーの要求が強い。
いずれの実施例もトナーの表面上に、希土類元素化合物を外添する手法を用いており、これらの目的は、クリーニング不良の改善に用いられている。
トナー製造法に関しては、従来の熱溶融混練、粉砕、分級法によるプロセスから、懸濁重合法、溶融懸濁法が展開されており、製造エネルギーの観点からは、低減化の方向に進んできている。
しかし、トナー用樹脂製造に掛かるエネルギーは、未だ十分に低減化されていない。
例えば、トナー樹脂の製造においては、従来、ジブチルスズオキサイドをはじめとするスズ系触媒、チタンオキサイドをはじめとするチタン系触媒が一般的に用いられている。これらを用いて、トナーに粘弾性、耐久性を持たせるのに必要な高分子量の高分子化合物を製造するためには、高温度(150℃以上)での低真空下反応条件が必要になる。
<1> 少なくとも、希土類元素を1〜10000ppm含有する結晶性ポリエステル樹脂と、着色剤とを含有する電子写真用トナーである。
<結着樹脂>
本発明の結着樹脂は、希土類元素を1〜10000ppm含有するものである。本発明の結着樹脂は、電子写真用トナーに含有される結着樹脂として好適に用いられる。なお、本発明においてppmとは質量百万分率をいう。
また、希土類元素の含有量が10000ppm以上であると、トナーのチャージが上がってしまうため、カブリや背景の汚れなどが生じることがある。
なお、本発明の結着樹脂中に含まれる希土類元素の種類は、1種単独であっても2種以上であってもよい。本発明の結着樹脂中に2種以上の希土類元素が含有される場合、2種以上の希土類元素の合計量をもって、希土類元素の含有量とする。
本発明の結着樹脂を合成する際に希土類元素化合物を添加する場合、希土類元素化合物として希土類元素を含有する触媒を用い、結着樹脂中に触媒を残存させる方法が好ましい。
また、結着樹脂を加熱して溶融させ、これに希土類元素を含む化合物を添加して、攪拌することにより結着樹脂中に希土類元素を含有させることもできる。
式(1)又は式(2)で表される触媒は、ポリエステル樹脂合成に好適に用いられる。
以下、式(1)又は式(2)で表される触媒を用いたポリエステル樹脂の合成について述べる。
前記触媒の使用量は、生成する樹脂に対して、0.01質量%〜10質量%の投入量が好ましい。これより少ないと、重縮合のエステル反応の進行が遅くなり、また、多いと帯電量などに悪影響を及ぼす。
前記触媒は、従来用いられてきたスズ系触媒、チタン系触媒よりも低温で重縮合ができる。具体的には、従来の触媒が、同一時間で重量平均分子量Mw=20000のポリエステル樹脂を得るのに、180℃以上の反応温度を必要としていたのに対して、本発明の樹脂は、150℃以下で得ることができる。
式(1)又は式(2)で表される触媒を用いることにより、ポリエステル樹脂の製造に要するエネルギーを低減させることができる。
尚、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することをいう。また、吸熱ピークは、トナーとしたときに、40〜50℃の幅を有するピークを示す場合がある。前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下であれば、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
前記酸由来構成成分となるための酸としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、結晶性ポリエステル樹脂における酸由来構成成分としては、芳香族ジカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸が好ましく、中でも脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分や芳香族ジカルボン酸由来構成成分のほか、2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、微粒子を作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある。
一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
尚、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分またはアルコール由来構成成分)を1単位(モル)としたときの百分率を指す。
アルコール由来構成成分となるためのアルコールとしては、脂肪族ジオールが好ましく、鎖炭素数が7〜20である直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。前記脂肪族ジオールが、分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。
また、前記鎖炭素数が、7未満であると、芳香族ジカルボン酸と縮重合させる場合、融点が高くなり、低温定着が困難となることがある一方、20を超えると、実用上の材料の入手が困難となり易い。前記鎖炭素数としては、14以下であることがより好ましい。
また、芳香族ジカルボン酸と縮重合させてポリエステルを得る場合、前記鎖炭素数としては、奇数であるのが好ましい。前記鎖炭素数が、奇数である場合には、偶数である場合よりポリエステル樹脂の融点が低くなり、該融点が、後述の数値範囲内の値となり易い。
前記脂肪族ジオール由来構成成分の含有量が、80構成モル%未満では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性および、低温定着性が悪化してしまう場合がある。必要に応じて含まれるその他の成分としては、2重結合を持つジオール由来構成成分、スルホン酸基を持つジオール由来構成成分等の構成成分である。
前記脂肪族ジオール由来構成成分以外のアルコール由来構成成分の含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が良くなかったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となることがある一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、画像の保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じないことがある。
本発明の電子写真用トナーは、少なくとも、本発明の結着樹脂と、着色剤とを含有するものであり、必要に応じて離型剤、帯電制御剤等のその他の成分を含有させてもよい。
−着色剤−
本発明に用いられる着色剤としては、特に制限はなく、公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。着色剤として、顔料を1種単独で用いてもよいし、同系統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。また異系統の顔料を2種以上混合して用いてもよい。
着色剤の含有量を多くすると、同じ濃度の画像を得る際、画像の厚みを薄くすることができ、オフセットの防止に有効な点で有利である。尚、前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等の各色トナーが得られる。
離型剤としては低分子ポリエチレン、低分子ポリプロピレン、フィッシャートロピィシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等を代表的なものとして例示することができる。
本発明のトナーには必要に応じて帯電制御剤が添加されてもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、例えばセチルピリジルクロライド、P−51、P−53(オリエント化学工業製)等の第4級アンモニウム塩、S−44、S−34(オリエント化学工業製)等アゾ系金属錯化合物、E−84(オリエント化学工業製)等サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプ、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料、また、酸化金属微粒子、又は、各種カップリング剤により、表面処理された酸化金属微粒子などの帯電制御剤を用いることができる。
湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減の点で水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。本発明におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナーおよび磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
但し、平均粒径としては0.1〜10μmの範囲で、上記化学構造のものを粉砕して、粒径をそろえてもよい。トナーへの添加量は好ましくは0.05〜2.0質量%、より好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲である。
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化クロム、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化テルル、酸化マンガン、酸化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の各種無機酸化物、窒化物、ホウ化物等が好適に使用される。
また、シリコーンオイル、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸金属塩によって疎水化処理することも好ましく使用される。
また、滑性粒子の添加量との和が0.6質量%以上であることが好ましい。
本発明の電子写真用トナーは、その表面が表面層によって覆われていてもよい。該表面層は、トナー全体の力学特性、溶融粘弾性特性に大きな影響を与えないことが望ましい。例えば、非溶融、或いは高融点の表面層がトナーを厚く覆っていると、結晶性ポリエステル樹脂を用いたことによる低温定着性を十分に発揮し得なくなる。従って、表面層の膜厚は薄いことが望ましく、具体的には、0.001〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。
表面層を構成する成分としては、シランカップリング剤、イソシアネート類、あるいは、ビニル系モノマー等が挙げられ、また、当該成分には、極性基が導入されていることが好ましく、化学的に結合することにより、トナーと紙等の被転写体との接着力が増加する。
化学的に処理する方法としては、例えば、過酸化物等の強酸化物質、オゾン酸化、プラズマ酸化等により酸化する方法、極性基を含む重合性モノマーをグラフト重合により結合させる方法等が挙げられる。化学的処理により、結晶性樹脂の分子鎖に共有結合で極性基が強固に結合することになる。
前記体積平均粒子径および数平均粒子径は、例えば、コールターカウンター[TA−II]型(コールター社製)を用いて、50μmのアパーチャー径で測定することにより求めることができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
更に、結晶性ポリエステル樹脂が、不飽和結合による架橋構造を有している場合には、特に、耐オフセット性の良好な広い定着ラチチュードを有し、かつ紙等の被記録媒体中へのトナーの過度の染み込みの防止を満足し得る電子写真用トナーを得ることができる。さらに、トナーの粒子形状を球状とすることで、転写効率の向上を図ることが可能となる。
本発明の電子写真用トナーは、そのまま一成分現像剤として、あるいはキャリアとトナーとからなる本発明の電子写真用現像剤(二成分現像剤)においてトナーとして、使用することができる。以下、本発明の二成分現像剤について説明する。
上記二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜500μmであり、好ましくは30〜100μmである。
具体的な樹脂被覆方法としては、キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
次に、本発明の電子写真用トナーまたは本発明の電子写真用現像剤を用いた本発明の画像形成方法について説明する。
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤担持体に担持された現像剤を用い、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー画像を紙等の被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を熱定着する定着工程と、を有するものであって、前記現像剤として、本発明の電子写真用トナーまたは本発明の電子写真用現像剤を用いるものである。
次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。
形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。
さらに、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。尚、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
前記離型剤は、定着後の被転写体および画像へのオイルの付着をなくす観点からは使用しない方が好ましいが、前記離型剤の供給量を0mg/cm2にすると、定着時に前記定着部材と紙等の被転写体とが接触した際に、前記定着部材の磨耗量が増大し、前記定着部材の耐久性が低下してしまう場合があるので、実用上は、前記離型剤の使用量が8.0×10-3mg/cm2以下の範囲で、前記定着部材に微量に供給されていることが好ましい。
また、均質な離型剤層を形成しうる観点より、フッ素オイル、フロロシリコーンオイルが好ましい。
前記加熱圧着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、前記離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。
これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
前記離型剤の供給量は、以下のようにして測定できる。即ち、その表面に離型剤を供給した定着部材に、一般の複写機で使用される普通紙(代表的には、富士ゼロックス(株)製の複写用紙、商品名J紙)を通過させると、該普通紙上に離型剤が付着する。この付着した離型剤をソックスレー抽出器を用いて抽出する。ここで、溶媒にはヘキサンを用いる。このヘキサン中に含まれる離型剤の量を、原子吸光分析装置にて定量することで、普通紙に付着した離型剤の量を定量できる。この量を離型剤の定着部材への供給量と定義する。
本発明の電子写真用トナーを用いた画像形成方法によると、トナーの凝集がないため、優れた画質の画像を形成することができ、低温定着が可能であり、また、形成される画像の保存性に優れる。更に、結着樹脂が、架橋構造を有する場合には、被転写体への前記離型剤の付着もほとんど無いため、シールやテープ等、裏側に粘着性の付与されている被転写体を用いて画像を形成することにより、高画質で高濃度の画像が形成されたシールやステッカー等を製造することもできる。
電子写真用トナーの製造方法は、混練粉砕法、湿式造粒法が挙げられるが、湿式造粒法が望ましい。また、前記湿式造粒法としては、公知の溶融懸濁法、乳化凝集法、溶解懸濁法等の方法が好適に挙げられるが、トナーの粒径制御、形状制御が容易であることから、本発明の電子写真用トナーの製造方法としては乳化凝集法が好ましい。
以下、乳化凝集法について説明する。乳化凝集法は、本発明の結着樹脂を乳化して結着樹脂乳化粒子を調製するする乳化工程と、少なくとも前記結着樹脂乳化粒子を含む凝集体を形成する凝集工程と、前記凝集体を融合させる融合工程と、を有する。本発明の電子写真用トナーの製造方法に用いられる本発明の結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましい。
前記乳化工程において、ポリエステル樹脂の乳化粒子(液滴)は、水系媒体と、スルホン化等したポリエステル樹脂および必要に応じて着色剤を含む混合液(ポリマー液)と、を混合した溶液に、剪断力を与えることにより形成される。
その際、加熱するか、或いは、有機溶剤にポリエステル樹脂を溶解させることにより、ポリマー液の粘性を下げて乳化粒子を形成することができる。また、乳化粒子の安定化や水系媒体の増粘のため、分散剤を使用することもできる。以下、かかる乳化粒子の分散液のことを、「樹脂粒子分散液」という場合がある。
尚、前記乳化工程において、前記ポリエステル樹脂に、スルホン酸基を有するジカルボン酸を共重合させておく(即ち、酸由来構成成分中に、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分が好適量含まれる)と、界面活性剤等の分散安定剤を減らすことができる、或いは使用しなくても乳化粒子を形成できる。
前記有機溶剤の使用量としては、前記ポリエステル樹脂および必要に応じて用いられる他のモノマー(以下、併せて単に「ポリマー」という場合がある。)の総量100質量部に対して、50〜5000質量部が好ましく、120〜1000質量部がより好ましい。尚、この乳化粒子を形成する前に、着色剤を混入させておくこともできる。用いられる着色剤としては、前記本発明の電子写真用トナーの「着色剤」の項で既に述べた通りである。
前記着色剤の分散方法としては、任意の方法、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミルなどの一般的な分散方法を使用することができ、なんら制限されるものではない。必要に応じて、界面活性剤を使用してこれら着色剤の水分散液を調製したり、分散剤を使用してこれら着色剤の有機溶剤分散液を調製したりすることもできる。以下、かかる着色剤の分散液のことを、「着色粒子分散液」という場合がある。分散に用いる界面活性剤や分散剤としては、前記ポリエステル樹脂を分散させる際に用い得る分散剤と同様のものを用いることができる。
前記凝集工程においては、得られた乳化粒子を、前記ポリエステル樹脂の融点付近の温度で、かつ融点以下の温度にて加熱して凝集し凝集体を形成する。乳化粒子の凝集体の形成は、攪拌下、乳化液のpHを酸性にすることによってなされる。当該pHとしては、2〜6が好ましく、2.5〜5がより好ましく、2.5〜4がさらに好ましい。この際、凝集剤を使用するのも有効である。
用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
前記融合工程においては、凝集工程と同様の攪拌下で、凝集体の懸濁液のpHを3〜7の範囲にすることにより、凝集の進行を止め、前記ポリエステル樹脂の融点以上の温度で加熱を行うことにより凝集体を融合させる。前記加熱の温度としては、前記ポリエステル樹脂の融点以上であれば問題無い。前記加熱の時間としては、融合が十分に為される程度行えばよく、0.5〜10時間程度行えばよい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナーの粒子とすることができる。この場合、トナーとして十分な帯電特性、信頼性を確保するために、洗浄工程において、十分に洗浄することが好ましい。乾燥工程では、通常の振動型流動乾燥法、スプレードライ法、凍結乾燥法、フラッシュジェット法など、任意の方法を採用することができる。トナーの粒子は、乾燥後の含水分率を1.0%以下、好ましくは0.5%以下に調整することが望ましい。
以上説明した本発明の電子写真用トナーの製造方法によれば、帯電安定性に優れた電子写真用トナーを提供することができる。
トナー粒子の平均粒径は、コールターカウンター(コールター社製、TA2型)を用いて測定した。
樹脂粒子、着色剤、及び離型剤の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場制作所製、LA−700)を用いて測定した。
樹脂粒子及びトナー粒子における樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製、HLC−8120GPC)を用いて測定した。
希土類元素(スカンジウム、イットリウム)の測定するため、蛍光x線を用いて得られたトナーの蛍光強度を測定する。別途作成した検量線からトナー中に含まれる希土類元素量を換算した。
帯電量は、30℃ RH80%(A−zone)及び10℃ RH15%(C−zone)の2条件で測定した。
画質評価および背景部汚れは以下の評価基準により評価した。
−評価基準−
・○:画像に問題なし
・△:多少の汚れが観察されたが実用上の問題なし
・×:大きな汚れが観察され、実用上使用不可である
○:問題なし
△:多少の汚れが観察されたが実用上の問題なし
×:大きな汚れが観察され、実用上使用不可である
これらの評価は、表1にまとめて示した。
−結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成−
1,9ノナンジオール200部、ジドデカンジオニック酸260部、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル7.4部、5−t−ブチルイソフタル酸21部、触媒として、スカンジウムトリフラート12.6部を混合し、窒素置換を行った後、温度を100℃にあげて溶解する。100℃に温度を保ったまま、前記フラスコ内を攪拌しながら一時間かけて、20mmHgまで減圧をおこなう。さらに、減圧度を10mmHg以下に下げて、7時間そのまま反応を継続させて樹脂を得た。分子量は重量平均分子量(Mw)=20000であった。
得られた結晶性ポリエステル樹脂(1)10質量部と、蒸留水90質量部と、を乳化機(Ultra Turrax)により95℃、10000rpmにて3分間攪拌して乳化し、乳化液を得た。この乳化液100質量部に銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)分散液(固形分として0.4質量部)4質量部を加え、攪拌下硫酸アルミニウム1質量%水溶液10gをゆっくり加え凝集させた。これを60℃にて2時間攪拌した後、pHを4.5に調整し、更に徐々に加温し、95℃にて20分間加熱攪拌した。その後、空冷し、イオン交換水で洗浄、凍結乾燥して、電子写真用トナー(1)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は、5.8μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(2)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をスカンジウムトリフラート0.126部、に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=21000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(2)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(2)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は、5.7μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(3)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をスカンジウムトリフラート5.6部、に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=19000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(3)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(3)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒子径は、6.5μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(4)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、樹脂の構成をテレフタル酸ジメチル301質量部と、1,9−ノナンジオール248質量部と、触媒をスカンジウムトリフラート12.6部、に変えたほかは、実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=19000であった。
結晶性ポリエステル樹脂(4)28質量部と、銅フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部と、トルエン60質量部と、をサンドミルにより分散させて分散液を調製した。カルボキシメチルセルロース3.0質量%水溶液36質量部に炭酸カルシウム40質量%懸濁液45部と、水45質量部と、を添加した。これに、前記分散液全量を50℃で加え、乳化機(商品名:Ultra Turrax、JUNKE&KUNKEL社製)により50℃、10000rpmにて3分間攪拌して懸濁し、懸濁溶液を得た。
次いで窒素気流下、トルエンと水とをできるだけ蒸発させ、架橋粒子分散液を得た。得られた架橋粒子分散液に、その約5倍量の水を加え、炭酸カルシウムを塩酸で溶かし、水洗を繰り返した後、最後に、減圧、凍結乾燥により、電子写真用トナー(4)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒子径は、6.3μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形であった。
−結晶性ポリエステル樹脂(5)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をスカンジウムトリフルイミド12.6部、に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=18000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(5)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(5)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒子径は、6.5μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(6)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をイットリウムトリフラート12.6部、に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=19000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(6)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(6)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒子径は、6.5μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(7)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、樹脂の構成を、1,6−ヘキサンジオール200部、1,9−ノナンジカルボン酸260部、5−スルホイソフタル酸ジメチルエステル7.4部としたほかは、実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=19000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(7)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(7)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒子径は、6.5μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(8)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をスカンジウムトリフラート0.03部、に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=15000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(8)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(8)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は、5.7μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(9)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をスカンジウムトリフラート50部にして、樹脂の構成は実施例1と同様にした。分子量は重量平均分子量(Mw)=20000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、結晶性ポリエステル樹脂(9)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(9)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は、5.8μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
−結晶性ポリエステル樹脂(10)の合成−
実施例1の結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成において、触媒をテトラーn−ブチルチタネート0.2部に変えたほかは、樹脂の構成は実施例1と同様にした。窒素置換後混合攪拌しながら、反応温度180℃で3時間攪拌を行い、減圧下で5時間重合した。その後四時間で、最終的に220℃まで上げて、最終的に全体で12時間反応させて樹脂を合成した。分子量は重量平均分子量(Mw)=25000であった。
実施例1の「電子写真用トナー(1)の製造」において、ポリエステル樹脂を結晶性ポリエステル樹脂(10)に変えたほかは同様にして、電子写真用トナー(10)を製造した。
得られた電子写真用トナーについて、コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)を用いて平均粒子径を測定したところ、得られたトナー粒子の平均粒径は、6.5μmであった。光学顕微鏡を用いて観察すると球形の粒子が確認された。
Claims (7)
- 少なくとも、希土類元素を1〜10000ppm含有する結晶性ポリエステル樹脂と、着色剤とを含有する電子写真用トナー。
- 前記希土類元素は、Sc、Y、Yb又はSmである請求項1に記載の電子写真用トナー。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂が、下記式(1)で表される触媒を用いて合成された請求項1に記載の電子写真用トナー。
X(OSO2CF3)3 式(1)
(式(1)中、XはSc、Y、Yb又はSmを表す。) - 前記結晶性ポリエステル樹脂が、下記式(2)で表される触媒を用いて合成された請求項1に記載の電子写真用トナー。
X(N(OSO2CF3)2)3 式(2)
(式(2)中、XはSc、Y、Yb又はSmを表す。) - 希土類元素を1〜10000ppm含有する結晶性ポリエステル樹脂を乳化して結晶性ポリエステル樹脂乳化粒子を調製する乳化工程と、
少なくとも前記結晶性ポリエステル樹脂乳化粒子を含む凝集体を形成する凝集工程と、
前記凝集体を融合させる融合工程と、
を有する電子写真用トナーの製造方法。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真用トナーと、キャリアとを含有する電子写真用現像剤。
- 潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程と、現像剤担持体に担持された現像剤を用い、前記潜像保持体表面に形成された静電潜像を現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を熱定着する定着工程と、を含む画像形成方法であって、
前記現像剤は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電子写真用トナー又は請求項6に記載の電子写真用現像剤である画像形成方法。
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