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JP4546912B2 - ゴルフクラブ - Google Patents

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JP4546912B2
JP4546912B2 JP2005295313A JP2005295313A JP4546912B2 JP 4546912 B2 JP4546912 B2 JP 4546912B2 JP 2005295313 A JP2005295313 A JP 2005295313A JP 2005295313 A JP2005295313 A JP 2005295313A JP 4546912 B2 JP4546912 B2 JP 4546912B2
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本発明は、長尺でありながらスイングし易く、ひいては飛距離の増大に役立つゴルフクラブに関する。
ドライバーやフェアウエイウッドといったウッド型のゴルフクラブには、ボールをより遠くまで飛ばすことができる飛距離性能が求められる。飛距離性能を向上させるためには、一般に、打ち出されるボールの初速を高めることが有効である。そして、その手段としては、例えば、ヘッドの反発性能の向上、ヘッド重量を増すことによるヘッド運動エネルギーの向上又はクラブの長尺化によるヘッドスピードの向上等が知られている(例えば下記特許文献1ないし2参照)。
特開平11−99231号公報 特開2004−201911号公報
しかしながら、ヘッドの反発係数は、USGA及びR&Aに見られるように規制される傾向がある。従って、反発性能を過度に向上させたヘッドは、今後、正式競技に使用できないおそれがある。
また、他の二つの方法は、いずれもクラブのスイングし易さを損ねるという欠点がある。例えば、クラブの長尺化は、ヘッドスピードの向上という利点が得られやすいが、スイングしづらい。また、長尺化されたクラブをアベレージゴルファーが使用すると、ボールの打出角が小さく、ひいてはボールの弾道が低くなる傾向がある。このため、ボールの初速を向上させても、十分な飛距離の向上につながり難い。
そこで、発明者らは、クラブの長尺化によるヘッドスピードの向上という利点を損なわないよう、スイングし易さを向上させ、かつ、ボールの打出角を大きくすることを試みた。
一般に、バックスイング(テイクバック)からダウンスイングを経て打撃(インパクト)までの一連のスイングモーションの中で、スイングし易さに特に影響を与える瞬間は2つある。一つは、静止しているクラブを動かすときのバックスイングの開始時、もう一つは、ボールを打撃する直前の瞬間である。いずれの瞬間においても、グリップを握るゴルファ(右打ちゴルファであり、以下同じ。)の右手先端付近がクラブを支える支点、言い換えるとクラブの回転運動の中心になる。従って、この2つの瞬間において、クラブの操作性を高めることにより、クラブのスイングし易さは向上できると考えられる。
そこで、発明者らは、前記2つの瞬間においてクラブの操作性を定量化するパラメータとして、前記右手による支点に比較的近い位置を支点としたスイング時の重さを表す14インチバランス法に基づくスイングバランスを採用し、かつ、これを限定することを試みた。
また、前記スイングモーションにおいて、バックスイング後半からダウンスイング開始時までの期間は、クラブは、ゴルファの左手位置を支点として運動する。従って、クラブのスイングし易さを向上させるためには、上記の改善に加え、ゴルファのグリップを握る左手位置を支点とするクラブの操作性をも向上させる必要がある。本発明では、これらの運動中のクラブの操作性を定量化するパラメータとして、前記左手に比較的近い位置、具体的にはグリップの後端でのクラブの慣性モーメントを採用し、かつ、これを限定することを試みた。
さらに、シャフトに関して鋭意研究を重ねたところ、シャフトの先端(ティップ(TIP)と呼ばれることがある。)から特定の距離を隔てる位置の曲げ剛性値が、ボールの打出角やスイングし易さに影響を及ぼすことを知見した。
本発明は、前記3つのパラメータ、即ち14インチバランス計測法によるスイングバランス、グリップの後端でのクラブの慣性モーメント及びシャフトの曲げ剛性値の好ましい範囲を同時に満足させることを基本として、長尺でありながらスイングし易く、かつ、ボールの打出角を大きくし、ボールをより遠くまで飛ばすことが可能なゴルフクラブを提供することを目的としている。
本発明のうち請求項1記載の発明は、シャフトと、その先端側に固着されたゴルフクラブヘッドと、前記シャフトの後端側に設けられたグリップとを有するゴルフクラブであって、クラブ全長が46〜48インチ、かつ14インチバランス計測法によるスイングバランスがC5〜D0、しかもグリップの後端でのクラブの慣性モーメントが2930〜3000kg・cm2 であるとともに、前記シャフトは、その先端から500mmの位置における曲げ剛性値EI(500 )が1.8〜2.1(kgf ・m 2 )であり、前記曲げ剛性値EI(500 )と、前記先端から1000mmの位置における曲げ剛性値EI(1000)との比EI(1000)/EI(500 )が2.1〜2.4であることを特徴とする。
ここで、前記「クラブ全長」は、JGA((財)日本ゴルフ協会)のゴルフ規則の中の付属規則II「1.クラブ」項の「c.長さ」に基づき測定される。具体的には、ウッド型及びアイアン型のクラブの長さの測定は、図2に示されるようにクラブ1を水平面HPの上に置き、それに対し60度で傾く斜面IPをヘッド3のソール部に当てて行われる。そして、クラブ全長は、二つの面HP及びIPの交差点Yからグリップ4の後端4eまでの距離Lとして測定される。
またグリップの後端4eは、グリップ4の最も後側の端を意味するが、図1のように、グリップの端に後方へ凸となる膨らみが設けられている場合、最も拡径しているグリップの後端側のエッジをグリップの後端とする。
また、前記「スイングバランス」(「スイングウエイト」とも呼ばれることがある。)とは、クラブをスイングしたときの体感的な重さを表すもので、図3に示されるように、グリップ4の後端4eからシャフト軸に沿って14インチの位置を支点とし、該支点からクラブの重心点Gまでのシャフト軸方向の距離X(単位:インチ)に、クラブ全重量(単位:オンス)を掛け合わせた数値(単位:インチ・オンス)に基づき求められる。
スイングバランスを示す前記数値は、換算表により、AないしFの六段階に区分され、" A" から" F" に向かって重くなることを示す。また、各区分AないしFは、さらに各々0〜9まで10分割され、" 0" から" 9" に向かって重くなることを意味する。そして、最終的なスイングバランスは、A0やC6のように前記区分を示すアルファベットAないしFに数字0〜9のいずれかを併記した記号にて表示される。
本明細書において、スイングバランスの計測は、グリップエンドから14インチの位置を支点としてヘッド側の重さを測る14インチバランス計測器(図示省略)を用い、その指針が指す目盛を読みとることで行われる。スイングバランス計測器の測定目盛は、図4に略示されるように、最小読み取り目盛(例えばC7、C8、C9など)の間に幅があるため、指針jが例えば目盛C7とC8との中間を示す場合がある。本明細書では、このような場合、目盛の小さい方(この例ではC7)のスイングバランスを採用する。また指針jが、目盛間かつ前記中間位置以外を指すとき、該指針jと近い方の目盛をそのスイングバランスとして読み取る。
表1には、参考までにスイングバランスの記号C、Dの表記と、前記数値(インチ・オンス)との対応関係を示す。本発明のクラブ1は、前記数値(インチ・オンス)が、概ね204.75〜213.5の範囲に含まれる。
Figure 0004546912
また、グリップの後端でのクラブの慣性モーメントは、図5に示されるように、シャフト2の軸中心線CLが水平となるように、慣性モーメント測定器20(例えばINERTIA DYNAMICS Inc社製の MODEL NUMBER RK/005-002などの計測装置)の測定治具21上にクラブ1をバランスさせて支持する。このとき、測定治具21には、クラブ1の重心点Gが位置する。次に、このクラブ1の重心点G回り(回転軸はZである。)の慣性モーメントIa を測定する。そして、グリップの後端でのクラブの慣性モーメントIG は、平行軸定理を用いて、下記式により計算で求める。
G (kg・cm2 )=Ia +m・R2
ここで、mはクラブの質量(kg)、Rは、グリップ4の後端4eからクラブ1の重心点Gまでの軸方向距離(cm)、Ia は、クラブ1の重心点G回りの慣性モーメント(kg・cm2 )である。
さらに、シャフトの前記先端からxmmの位置における曲げ剛性値EI(x)は、図11に示されるように、万能材料試験機を用いた3点曲げにより測定される。具体的には、先ず支点間距離が200mmに設定された治具J1、J2で、軸中心線CLが水平となるようにシャフト2を支える。この際、前記治具J1、J2は、その中間点Cがシャフト2の前記先端からxmmの位置2Gとなるように位置決めされる。次に、前記位置2Gに上方から圧子Pを降下させる。この際、圧子の降下速度は5mm/秒とし、負荷最大荷重が20kgf に達した時点で圧子を停止させるとともに、前記位置2Gでのシャフト2のたわみ量を測定する。そして、下記式から曲げ剛性値EI(x)を得るものとする。
曲げ剛性値EI(x)=(負荷最大荷重×支点間距離3 )/(48×たわみ量)
なお曲げ剛性値EI は、シャフト2からグリップ4を除去した状態で測定される。また治具J1、J2の先端の曲率は2R、圧子の先端は75R、距離及びたわみ量の単位はミリメートル、力の単位はkgfとする。
また請求項2記載の発明は、前記グリップの後端でのクラブの慣性モーメントは、2930〜2950kg・cm2 である請求項1に記載のゴルフクラブである。
また請求項3記載の発明は、前記スイングバランスは、C6〜C9である請求項1又は2に記載のゴルフクラブである。
また請求項4記載の発明は、前記シャフトの曲げ剛性値EI(500 )は、1.9〜2.1(kgf ・m2 )である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブである。
また請求項5記載の発明は、前記シャフトの曲げ剛性値EI(1000)は、3.78〜5.04(kgf ・m2 )である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブである。
本発明のゴルフクラブは、46〜48インチと長尺でありながら、スイングし易く、かつ、ボールの打出角を大としうる。従って、ヘッドスピードの向上によって十分な飛距離の増大効果が得られる。
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1には本実施形態のゴルフクラブ(以下、単に「クラブ」ということがある。)1の全体正面図を示す。本発明のクラブ1は、クラブ全長が46〜48インチ、かつ14インチバランス計測法によるスイングバランスがC5〜D0、しかもグリップ4の後端4eでのクラブの慣性モーメントが2930〜3000kg・cm2 であるとともに、前記シャフト2の先端2Aから500mmの位置における曲げ剛性値EI(500 )が1.8〜2.1(kgf ・m 2 )であり、前記曲げ剛性値EI(500 )と、前記シャフトの先端2Aeから1000mmの位置における曲げ剛性値EI(1000)との比EI(1000)/EI(500 )が2.1〜2.4であることを特徴とする。
前記クラブ1は、シャフト2と、該シャフト2の先端側2Aに固着されたゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)3と、前記シャフト2の後端側2Bに設けられかつプレーヤに握られるグリップ4とを含む。本実施形態のクラブ1は、ドライバー(#1)の他、プラッシー(#2)、スプーン(#3)、バフィ(#4)又はクリーク(#5)等を少なくとも含むウッド型である。本発明は、このような飛距離が求められるウッド型のゴルフクラブに特に適する。
前記クラブ1は、46〜48インチのクラブ全長を持つ。ボール打撃時のヘッドスピードは、遠心力の作用により、クラブ全長にほぼ比例して大きくなる。このため、クラブ全長が46インチ未満では、飛距離の顕著な増加を実現するためのヘッドスピードの向上が十分に期待できない。逆に、クラブ全長が48インチを超えると、クラブ1の操作性が低下する他、ゴルフ規則に違反するため好ましくない。特に限定はされないが、クラブ全長Lは、好ましくは46.5インチ以上、さらに好ましくは47インチ以上が望ましい。
本実施形態のヘッド3は、図1又は図6に示されるように、全部ないし主要部が金属材料で構成され、その内部には中空部iが設けられる。これは、軽量化を可能とする点で好ましい。前記金属材料としては、特に限定はされないが、例えばアルミニウム合金、チタン、チタン合金、ステンレス又はマグネシウム合金などの1以上が好ましい。本実施形態のヘッド3は、全てがTi−6Al−4Vからなるチタン合金で構成される。なおヘッド3の少なくとも一部は、繊維強化樹脂などの非金属材料で構成されても良い。このような態様は、ヘッド3をより一層軽量化しうる点で好ましい。
前記ヘッド3は、ボールを打球する打撃面をなすフェース面Fを有するフェース部3aと、このフェース部3aに連なりかつヘッド上面をなすクラウン部3bと、前記フェース部3aに連なりかつヘッド底面をなすソール部3cと、前記クラウン部3bとソール部3cとの間を継ぎかつ前記フェース面Fのトウ側縁からバックフェースを通り前記フェース面Fのヒール側縁にのびるサイド部3dと、前記クラウン部3bのヒール側に設けられかつシャフト2の先端側が挿入される円筒状のシャフト差込部3eとが設けられる。
前記フェース部3aは、例えば、相対的なものとして、厚さt1が大きい中央部3a1と、この中央部3a1を囲むように環状にのびかつ厚さt2が前記厚さt1より小さい周辺部3a2とを含む。このようなフェース部3aは、ボールの打球時、厚さが小さい周辺部3a2が大きく撓むことにより、ヘッド3の反発係数を例えばゴルフ規則の範囲内で最大限に高めることができるとともに、フェース部3aの重量を削減し、ヘッド3を軽量化するのに役立つ。また厚さが大きい中央部3a1は、フェース部3aの耐久性を向上させるのに役立つ。
以上のような観点より、前記中央部3a1の厚さt1は、好ましくは2.7mm以上、より好ましくは2.8mm以上が望ましく、上限については、好ましくは3.1mm以下、より好ましくは3.0mm以下が望ましい。同様に、周辺部3a2の厚さt2は、例えば1.9mm以上、より好ましくは2.0mm以上が望ましく、上限については、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.4mm以下が望ましい。またフェース部3aは、前記中央部3a1と前記周辺部3a2との間に、厚さが滑らかに変化して両部を繋ぐ厚さ移行部3a3が設けられるのが望ましい。これによって、フェース部3aの中央部3a1と周辺部3a2との境界部などでの応力集中を防止し、耐久性を向上するのに役立つ。
また前記クラウン部3b及びサイド部3dの各厚さt3及びt5は、特に限定されるものではないが、大きすぎるとヘッド重量が増し、スイングバランスの調整が困難になる傾向があり、逆に小さすぎるとヘッド3の耐久性が低下する傾向がある。このような観点より、前記各厚さt3及びt5は、好ましくは0.7mm以上、より好ましくは0.8mm以上が望ましく、上限については、好ましくは1.1mm以下、より好ましくは1.0mm以下が望ましい。
また前記ソール部3cは、スイング時に地面と接触する機会がある。このため、耐久性を確保するために、好ましくはクラウン部3bよりも大きい厚さt4で形成されるのが望ましい。他方、前記厚さt4が大きすぎても、ヘッド重量が増加しやすくなり好ましくない。このような観点より、ソール部3cの厚さt4は、好ましくは0.9mm以上、より好ましくは1.1mm以上が望ましく、上限については、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下が望ましい。
ヘッド3の重量も、特に限定はされないが、小さすぎるとスイング時のヘッド3の運動エネルギーが相対的に低下し、クラブを長尺化したことによる飛距離の増大効果が十分に発揮できない傾向がある。逆にヘッド3の重量が大きすぎると、後述のスイングし易いクラブスペックを実現するのが困難な傾向がある。このような観点より、ヘッド3の重量は、好ましくは180g以上、より好ましくは185g以上が望ましく、上限については195g以下、より好ましくは193g以下、さらに好ましくは191g以下が望ましい。
またヘッド3の体積は、特に限定されないが、小さすぎるとヘッドの慣性モーメントを大きくするのが困難な傾向にあり、逆に大きすぎても空気抵抗が増加して振り難くなる傾向がある。このような観点より、ヘッド3の体積は、好ましくは350cc以上、より好ましくは380cc以上、さらに好ましくは400cc以上が望ましく、上限については、好ましくは500cc以下、より好ましくは470cc以下が望ましい。
以上のようなヘッド3は、種々の方法で製造できる。例えば複数個(例えば2〜4個)のヘッド構成部品を準備し、これらを適宜接合することによって製造できる。ヘッド構成部品は、例えば鋳造、鍛造、プレスフォーミングまたはそれらの組み合わせ等によって成形できる。またヘッド構成部品の接合方法としては、例えば溶接、接着、ロウ付け、拡散接合又はカシメ等を用い得る。本実施形態のヘッド3は、図6に示されるように、ソール部を開口した一体鋳造品からなるヘッド本体部3Aと、その開口に嵌められて溶接されたソール板部3Bとで作られている。
前記シャフト2は、例えば、繊維強化樹脂で構成される。繊維強化樹脂からなるシャフト2は、例えばシート状のプリプレグ(平行に引き揃えられた補強繊維を未硬化ないし半硬化状態の熱硬化樹脂に含浸させたもの)をパイプ状に積層しかつこれを熱硬化させることにより形成できる。このようなシャフト2は、軽量のため振り抜き易く、かつ、シャフトの重量バランスや任意の位置の曲げ剛性値を容易に設定しうる等、設計自由度が高い点で特に好ましい。
上述のシャフト2の具体的な製法としては、複数枚のプリプレグをマンドレルに巻き付けてパイプ状のプリプレグ積層物を成形する工程、このプリプレグ積層物をマンドレルから脱芯する工程、プリプレグ積層物の内部に膨張可能なブラダー等を挿入する工程及びブラダーに熱と圧力とを作用させることにより鋳型ないし金型の内面にプリプレグ積層物を押し当てて加硫成形する工程を含む内圧成形法が挙げられる。これにより、シャフト2は、後端側2Bから先端側2Aに向かって外径が滑らかに減じられたテーパを有するパイプ状に構成される。またシャフト2の製法は、これ以外にも例えばテープワインディング法やフィラメントワインディング法などが採用され得る。
プリプレグの強化繊維は、特に限定はされないが、例えば、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維又はポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維等が挙げられる。また、金属繊維を用いても良い。軽量で高強度であることから炭素繊維が望ましい。これらの強化繊維は、長繊維、短繊維又は両者の混合物であっても良い。強化繊維の配列態様については特に限定されるものではなく、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状等のいずれの形状・配列でも使用できる。
またプリプレグのマトリクス樹脂としては、例えば熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらは単独又は組み合わせて用いられ得る。とりわけ、強度及び剛性の観点より、熱硬化性樹脂が望ましく、特にエポキシ系樹脂が望ましい。また他の熱硬化性樹脂としては、例えば不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂又はケイ素樹脂等が挙げられる。また、熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂又はフッ素樹脂等が挙げられる。
図7には、本実施形態でのシャフト2を構成するプリプレグを展開した構成図の一例が示される。図において、数値のみの表示は、プリプレグの長さ又は幅を示し、単位はミリメートルである。この例のシャフトの全長は1220mmである。また角度(゜)の表示は、シャフトの軸方向に対する強化繊維の配向角を示す。本実施形態のシャフト2を構成するプリプレグは、該シャフト2のほぼ全長さに亘って配される主プリプレグ6と、前記先端側2Aにのみ配される小長さの先端側補助プリプレグ7と、前記後端側2Bにのみ配される小長さの後端側補助プリプレグ8とを含むものが例示される。各プリプレグには、いずれも炭素繊維を一方向に引き揃えた一方向プリプレグが用いられている。
前記主プリプレグ6は、繊維がシャフトの軸方向と平行に配された少なくとも1枚、本実施形態では2枚のストレートプリプレグ6aと、繊維がシャフトの長手方向に対して傾けて配された少なくとも1枚、本実施形態では3枚のバイアスプリプレグ6bを含むものが例示される。この例のバイアスプリプレグ6bは、繊維の配向角度が±45゜及び90゜のものを含む。
前記ストレートプリプレグ6aには、例えば引張弾性率が10000〜30000kgf /mm2 の繊維が好適に用いられる。またバイアスプリプレグ6bには、ストレートプリプレグよりも引張弾性率が大きい繊維、とりわけ24000kgf /mm2 以上、より好ましくは30000kgf/mm2 以上、かつ80000kgf /mm2 以下、より好ましくは60000kgf /mm2 以下の繊維が好適である。
一般に、引張弾性率が大きい繊維ほど、その引張強度は低下する傾向がある。このため、シャフトの曲げ強度に大きく影響するストレートプリプレグ6aには引張弾性率が30000kgf /mm2 以下の繊維を用いることにより、シャフトの強度を確保するのが望ましい。他方、バイアスプリプレグ6bは、シャフト2の曲げ強度への影響が小さいため、上述の如く引張弾性率の大きい繊維を用いることによって少量の繊維で軽量かつ捻れ(トルク)の小さい方向性に優れたシャフトを得ることができる。なお繊維の引張弾性率は、JIS R7601の「炭素繊維試験方法」に準じて測定された値とする。
また前記先端側補助プリプレグ7は、本実施形態では4枚からなり、例えば200〜350mmのシャフト軸方向の長さで形成される。このプリプレグ7には、例えば引張弾性率が10000〜30000kgf /mm2 程度の繊維が好適に用いられる。また繊維の配向角は、シャフトの軸方向に対して0゜及び±45゜が好適である。
また前記後端側補助プリプレグ8は、本実施形態では1枚からなる。該プリプレグ8は、シャフトの後端から、例えば35〜450mmのシャフト軸方向の長さで形成される。このプリプレグ8には、例えば引張弾性率が26000〜80000kgf /mm2 程度の高弾性繊維が好適に用いられる。また繊維は、シャフトの軸方向に配向されているが、これに限定されるわけではない。
前記グリップ4は、例えば天然ゴムに、オイル、カーボンブラック、硫黄及び酸化亜鉛を配合して混練した材料を所定形状に成形しかつ加硫することにより作られている。この実施形態では、グリップの長さが272mm(約10.7インチ)、グリップ重量が40〜50gで仕上げられている。
また、本実施形態のクラブ1は、図8又は図9に示されるように、シャフト2の後端側2A又はグリップ4の後端4e側に、錘部材9が配されている。
図8の実施形態において、錘部材9は、シャフト2の後端側2Bに固着されている。本実施形態の錘部材9は、シャフト2の後端からその中空部に挿入可能な基部9Aと、該基部9Aに設けられたフランジ部9Bとが設けられている。錘部材9は、例えば基部9Aに設けられたネジ溝及び/又は接着剤等によりシャフト2に対して移動不能に一体に固着させ得る。またフランジ部9Bは、錘部材9のシャフト2の中での移動を阻止するのに役立つ。
また図9の実施形態において、錘部材9は、グリップ4の後端4e側に固着されている。この例の錘部材9は、リング状をなし、その中心をシャフト2の中心に実質的に揃えられている。このような錘部材9は、グリップの加硫成形時に予めゴムの中に仕込まれ一体加硫によってグリップ4に移動不能に固着できる。
またグリップ4の後端面には、通常、グリップの内側面に貫通する空気抜き孔4Hが設けられる。この空気抜き孔4Hは、グリップ4をシャフト2の後端に装着する際に、グリップとシャフト2との間を空気を外部へと排気し、装着性を向上させるために設けられる。本実施形態のリング状の錘部材9は、いずれもグリップ4の後端面に設けられた空気抜き孔を閉塞しないため、グリップ4の装着性を損ねることがない。
いずれの態様においても、錘部材9は、小型としつつ大きな重量を確保するために、比重の大きい高比重材料が用いられる。前記高比重材料は、シャフト2よりも比重が大きい材料であれば特に限定はされないが、好ましくはタングステン、タングステン合金、銅合金、ニッケル合金などの金属材料を用いることができ、特に好ましくは、比重が5.0以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは7.0以上の金属材料が好適である。なお、比重が大きすぎても、材料の加工性や生産性が低下し易くなるため、高比重材料の比重は、好ましくは13.0以下、より好ましくは12.0以下、さらに好ましくは11.0以下が望ましい。
また錘部材9の重量は、好適には、前記ヘッド重量の2%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上であるのが望ましい。錘部材9の重量が2%以下の場合、クラブ1のスイングバランスを小さくする効果が十分に得られない傾向がある。逆に錘部材9の重量が大きすぎると、クラブの総重量が大きくなり、スイングバランスを小さくしたにも拘わらず振りにくくなる。このような観点より、錘部材9の重量は、ヘッド重量の9%以下、より好ましくは8%以下が好適である。
図10は、従来のゴルフクラブについて、前記慣性モーメントIG 及びスイングバランスを測定した結果を示す。図10から明らかなように、従来の45インチのクラブは、D0ないしそれよりも小さいスイングバランスを持つものが存在するが、46インチ以上のゴルフクラブでは、D0を超えるスイングバランスを有することが分かる。また、前記慣性モーメントIG についても、スイングバランスとほぼ比例して大きくなることが読み取れる。
これに対して、本実施形態のクラブ1は、上述のように、ヘッド3の軽量化、シャフト2の軽量化、シャフト2の後端側の相対的な重量の増加及び/又は錘部材9の配置などの少なくとも一つの手段により、14インチバランス計測法によるスイングバランスがC5〜D0、かつ、グリップ4の後端4eでのクラブの慣性モーメントIG 2930〜3000kg・cm2 で作られる。つまり、クラブ全長を46〜48インチと長尺としつつ、前記慣性モーメントIG ついてはほぼ従来と同程度とし、スイングバランスをより小さくすることができる。
このようなクラブ1は、長尺化によるヘッドスピードの向上が期待できる。また、本実施形態のクラブ1は、スイングバランスが45インチ程度の短尺のクラブと大差がないため、バックスイングの開始時及びボールを打撃する直前のように、グリップ4を握るゴルファの右手先端付近がクラブを支える支点となるタイミングにおいて、クラブの操作性を十分に高めることができる。従って、スイングがし易くなり、正確なバックスイング及びクラブコントロールが可能である。従って、フェース面Fの開きを抑制でき、その結果、スライスを防いで大きなヘッドスピードで正確にボールを遠くまで飛ばすことができる。
特に好ましくは、クラブ1のスイングバランスは、C6〜C9が望ましい。また、前記慣性モーメントIG、上限については2980kg・cm 2 以下、さらに好ましくは2950kg・cm 2 が望ましい。
さらに、本発明のクラブ1は、シャフト2の先端2Aeから500mmの位置における曲げ剛性値EI(500 )と、シャフト2の先端2Aeから1000mmの位置における曲げ剛性値EI(1000)との比{EI(1000)/EI(500 )}が2.1〜2.4に規定される。
発明者らの種々の実験の結果、ボール打球時の打出角に最も影響を及ぼすのは、シャフト2の先端2Aeからほぼ500mm位置の曲げ剛性値であること、また、この位置における曲げ剛性値に対して、シャフト2の前記先端2Aeからほぼ1000mmの位置の曲げ剛性値を規制することによって、ダウンスイング時のフィーリングを向上させ、ヘッドスピードを高め得ることを知見した。
一般に、長尺化されたクラブは、ダウンスイング時においてシャフト2が撓み難い傾向がある。このため、いわゆるダウンブローと称されるインパクトを迎えやすい。ここでダウンブローとは、図12(A)に示されるように、スイング時のヘッド3の最下点位置P1よりも手前の下降軌道でボールBをインパクトすることを意味する。このような、ダウンブローは、ヘッド3の動的なロフト角を小さくし、その結果、ボールの打出角を小さくする。そして、ウッド型のゴルフクラブにあっては、このような打出角の低下は、飛距離の低下に結びつきやすい。
しかし、シャフト2の先端2Aeからほぼ500mmの位置の曲げ剛性値EI(500 )を種々調節すること、具体的には曲げ剛性値EI(500 )を従来に比して小さくすることにより、ダウンスイング時に長尺のシャフト2を十分に撓ませることができ、その結果、その撓みの戻りによってアッパーブローのインパクトを迎え得ることを発明者らは知見した。ここで、アッパーブローとは、図12(B)に示されるように、スイング時のヘッド3の最下点位置P1を通過した後に上昇軌道でボールBをインパクトすることである。このようなアッパーブローは、ヘッド3の動的なロフト角を大きくし、その結果、ボールの打出角を大とする。そして、ウッド型のゴルフクラブにあっては、このような打出角の増加は、飛距離の向上に結びつきやすい。
ここで、前記曲げ剛性値EI(500 )の具体的な値としては、2.1kgf ・m 2 以下とする。これによって、ダウンスイング時の初期にシャフト2に十分な撓みを生じせしめ、その戻りを利用してアッパーブローないしそれに近いインパクトを迎えることを可能とする。他方、この曲げ剛性値EI(500 )が小さすぎる場合、ダウンスイング時にシャフト2が過度に撓んでしまい、フェース面Fの向きがばらついて意図した方向に合わず、ひいては打球の方向性が悪化する傾向がある。このような観点より、前記曲げ剛性値EI(500 )は、好ましくは1.8kgf ・m2 以上、さらには1.9kgf ・m 2 以上であるのが望ましい。
また、発明者らは、前記シャフト2の曲げ剛性値EI(500 )を基準として、シャフト2の先端2Aeから1000mmの位置における曲げ剛性値EI(1000)を種々異ならせて実験を行った。ここで、シャフト2の先端2Aeから1000mmの位置は、概ねグリップ4の位置であり、スイング時のゴルファの手元付近の曲げ剛性値に相当している。そして、実験の結果、意外にも前記各曲げ剛性値の比{EI(1000)/EI(500 )}が重要であることを知見した。
即ち、前記比が2.1未満の場合、ダウンスイング時にシャフト2全体が撓み過ぎる傾向があり、ヘッド3のフェース面Fの向きがアドレスの状態まで戻りきらず、ひいては打球の飛距離及び方向性の双方が悪化することが判明した。他方、前記比が2.4を超える場合、シャフト2の手元側の剛性が過度に上昇して撓みにくくなり、その結果、シャフトの全体的なバランスが悪化してダウンスイング時のヘッドスピードの向上が十分に期待できない。
ここで、前記曲げ剛性値EI(1000)は、特に限定されるものではないが、好ましくは3.78kgf ・m2 以上、より好ましくは4.0kgf・m2 以上が望ましく、また上限に関しては、好ましくは5.04kgf ・m2 以下、より好ましくは4.8kgf・m2 以下が望ましい。
さらに、本実施形態のクラブ1では、スイングバランスを小さくすることによって、スイング時に感じる重さを軽減し、長尺としつつもスイングし易さを向上できるが、特に好ましくはクラブ1の全重量をさらに限定することが望ましい。即ち、クラブ全重量が大きすぎると、スイングバランスを小さくしても持ち重り感が生じ、逆に小さすぎると、スイング時のタイミングがとりづらく、打球の方向性を損ねる傾向がある。このような観点より、ヘッド全重量は、好ましくは250g以上、より好ましくは280g以上であり、上限については、好ましくは350g以下、より好ましくは310g以下が望ましい。
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更して実施することができる。
表2の仕様に基づいて、ウッド型のゴルフクラブ(ドライバー)を試作した。クラブの基本構造は、上で述べたとおりである。各諸元は、ヘッド体積、ヘッド重量、シャフト重量、シャフトの曲げ剛性値及び/又は錘部材の重量などを変更して調節されている。そして、各クラブについて、スイングし易さ、打球の飛距離及び方向性についてテストを行った。テスト方法は次の通りである。
<スイングし易さ>
ハンディキャップ5〜30の広い技量レベルのゴルファ30名にて、実際にゴルフボールを10球づつ打球し、スイングし易さについて各々のゴルファの官能評価を行った。採点の基準は、以下の通りとし、30名の平均値で表示した。数値が大きいほど良好である。
5:かなり振りやすい
4:やや振りやすい
3:普通
2:やや振りにくい
1:かなり振りにくい
<打球の飛距離>
各供試クラブをスイングロボット(ゴルフラボラトリーズ社製)に取り付け、比較例7のゴルフクラブにおいてヘッドスピードが40m/sとなるようにロボットのスイングスピードを調整した。そして、各クラブで10球づつゴルフボールを打撃し、キャリーの平均値を表示した。数値が大きいほど良好である。
<打球の方向性>
ハンディキャップ10〜20の中級ないし上級ゴルファ10名を対象とし、ゴルフボールを10球づつ打球することにより行った。評価は、目標飛球線に対するボールの停止位置のズレ(目標飛球線と直角方向に測定される最短距離)を測定し、その平均値で表示した。なおズレは、右方向及び左方向のいずれに逸れた場合でも+値とした。数値が小さいほど方向性が優れていることを示す。
テストの結果などを表2に示す。
Figure 0004546912
Figure 0004546912
Figure 0004546912
テストの結果、実施例のヘッドは、比較例に比べ、スイングし易さが向上し、その結果、長尺でありながら、打球の飛距離と方向性に優れていることが確認できた。
本発明の実施形態を示すゴルフクラブの正面図である。 クラブ全長を説明する線図である。 スイングバランスを説明する線図である。 スイングバランス測定器の目盛を説明する線図である。 グリップの後端での慣性モーメントの測定方法を説明する線図である。 ゴルフクラブヘッドの拡大断面図である。 シャフトを構成するプリプレグの展開図である。 錘部材を示すクラブの後端側の断面図である。 他の錘部材を示すクラブの後端側の断面図である。 従来のクラブについてグリップの後端での慣性モーメントとスイングバランスとの関係を示すグラフである。 シャフトの曲げ剛性値EIの測定方法を示す線図である。 (A)はダウンブローを、(B)はアッパーブローを説明するスイング時のヘッドの動きを示す線図である。
符号の説明
1 ゴルフクラブ
2 シャフト
2Ae シャフトの先端
3 ゴルフクラブヘッド
4 グリップ
4e グリップの後端

Claims (5)

  1. シャフトと、その先端側に固着されたゴルフクラブヘッドと、前記シャフトの後端側に設けられたグリップとを有するゴルフクラブであって、
    クラブ全長が46〜48インチ、
    かつ14インチバランス計測法によるスイングバランスがC5〜D0、
    しかもグリップの後端でのクラブの慣性モーメントが2930〜3000kg・cm2 であるとともに、
    前記シャフトは、その先端から500mmの位置における曲げ剛性値EI(500 )が1.8〜2.1(kgf ・m 2 )であり、
    前記曲げ剛性値EI(500 )と、前記先端から1000mmの位置における曲げ剛性値EI(1000)との比EI(1000)/EI(500 )が2.1〜2.4であることを特徴とするゴルフクラブ。
  2. 前記グリップの後端でのクラブの慣性モーメントは、2930〜2950kg・cm2 である請求項1に記載のゴルフクラブ。
  3. 前記スイングバランスは、C6〜C9である請求項1又は2に記載のゴルフクラブ。
  4. 前記シャフトの曲げ剛性値EI(500 )は、1.9〜2.1(kgf ・m2 )である請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブ。
  5. 前記シャフトの曲げ剛性値EI(1000)は、3.78〜5.04(kgf ・m2 )である請求項1乃至4のいずれかに記載のゴルフクラブ。
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