JP4544563B2 - ヒートシール積層体およびキャリアテープ包装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カバーテープ用のヒートシール積層体およびそれを用いたキャリアテープ包装体に関し、更に詳しくは、静電気により破損しやすい電子製品、特にチップ型電子製品、部品実装済みの電子回路基板等の保管、輸送、装着時に用いられるキャリアテープ包装体の蓋体に好適に用いられるヒートシール積層体、およびそれを用いたキャリアテープ包装体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ICを始めとして、トランジスター、ダイオード、コンデンサー、圧電素子レジスター、などの表面実装用チップ型電子部品は、電子部品の形状に合わせて、収納しうるエンボス成形されたポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープ(以下、キャリアテープとする。)とこのキャリアテープにヒートシールされるキャリアテープ蓋体(以下、単に蓋体とする場合がある。)とからなるキャリアテープ包装体に包装されて供給されている。内容物の電子部品は、上記キャリアテープ包装体の蓋体を剥離した後、キャリアテープから自動的に取り出され、電子回路基板に表面実装されるようになっている。こうして使用されるキャリアテープ蓋体には、内容物が視認できる程度の透明性が必要とされている。
【0003】
キャリアテープ蓋体101としては、図3に示すように、ヒートシール層105と、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる外層102と、ヒートシール層105と外層102との間に配置されたクッション層104と、必要に応じて設けられる接着剤層103とからなるヒートシール積層体101が検討されている。こうしたキャリアテープ蓋体においては、オレフィン系樹脂である直鎖状ポリエチレンと、スチレン系樹脂であるポリスチレンとからなるクッション層104が設けられているが、そうした直鎖状ポリエチレンとポリスチレンとが混ざりにくいことから、クッション層104の透明性が若干低下することがあり、より透明性が要求される用途に対してはさらなる検討が要求されている。
【0004】
こうした要求に対しては、ポリスチレンを抜いてクッション層の透明性を向上させることが検討された。しかし、そうして形成されたクッション層は、そのクッション層に隣接するヒートシール層との間で、十分な接着性を得ることができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、内容物を視認できる程度の透明性を有すると共に、クッション層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができるヒートシール積層体およびそれを用いたキャリアテープ包装体を提供することを主目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本願発明は、外層、接着層、クッション層、プライマー層、ヒートシール層がこの順で積層され、前記外層がポリエチレンテレフタレート、前記クッション層が直鎖状低密度ポリエチレン、前記プライマー層がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体との樹脂組成物、前記ヒートシール層がアクリル樹脂により形成されていることに特徴を有する。
【0007】
この発明によれば、ヒートシール層とクッション層との間に配置されたプライマー層を、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体0〜100重量%と、酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100〜0重量%との樹脂組成物により形成することによって、プライマー層とクッション層との接着性を顕著に向上させることができると共に、プライマー層とヒートシール層との接着性も向上させることができる。その結果、本発明のヒートシール積層体は、こうしたプライマー層を介することによって、クッション層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができる。こうした特徴を有する本発明のヒートシール積層体は、特に、クッション層とヒートシール層との間のデラミネーションを抑制することが要求されるキャリアテープ蓋材や、クッション層とヒートシール層との接着性を向上させることが要求されるキャリアテープ蓋材に好ましく適用することができる。したがって、本発明のヒートシール積層体をキャリアテープ蓋材に適用すれば、クッション層とヒートシール層との間のデラミネーションが抑制されるので、キャリアテープにヒートシールされた蓋体を剥離した際の美感を向上させることができ、また、クッション層とヒートシール層との接着性を向上させることができるので、蓋体の接着力を適度な強度以上に調整することができる。
【0008】
また、前記プライマー層が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と、アクリルゴムとの樹脂組成物から形成され、該アクリルゴムが樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加されていてもよい。
【0009】
この発明によれば、アクリルゴムを樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加することにより、上述したプライマー層の作用をより一層発揮させることができ、接着性をさらに向上させることができる。
【0010】
また、前記クッション層は、結晶化度が低い高分子材料を主成分とする層であってもよい。
【0011】
この発明によれば、クッション層が結晶化度が低い高分子材料を主成分とすることにより、ヒートシール積層体の製造工程においてクッション層の収縮を抑えることができる。これにより、クッション層の収縮に起因するヒートシール積層体のカールを防止することができ、作業性が良好となる。
【0012】
また、前記クッション層は、密度が0.900〜0.910g/cm3 の範囲内であり、かつ重量平均分子量が20,000〜100,000の範囲内であるポリオレフィンで形成された層であってもよい。
【0013】
この発明によれば、クッション層として、このような材料を選択することにより、クッション性が向上する。その結果、クッション層としての厚みを低減することが可能となる。このようにクッション層の厚みを低減させることにより、製造時のクッション層の収縮を減少させることが可能であり、結果として得られるヒートシール積層体のカールを防止することができ、作業性が向上する。
【0014】
また、前記プライマー層の塗工量が0.3〜3.0g/cm 2 であってもよく、前記ヒートシール層は、ヒートシール可能な合成樹脂に50%粒径が1.0μm以下である導電性微粒子が少なくとも分散されてなる透明導電性ヒートシール材によって形成されていてもよい。
【0015】
この発明によれば、ヒートシール層が、ヒートシール可能な合成樹脂に、50%粒径が1.0μm以下の導電性微粒子が分散されてなる透明導電性ヒートシール材によって形成されているので、導電性を有しかつ透明性に優れたヒートシール材とすることができる。
【0016】
また、前記透明導電性ヒートシール材の表面抵抗率が、104 〜1012Ω/□であってもよい。
【0017】
また、前記透明導電性ヒートシール材の光学的特性が、前記各層を積層してなるヒートシール積層体における全光線透過率が70%以上、かつヘイズ25%以下であってもよい。
【0018】
この発明によれば、上記の特性からなる透明導電性ヒートシール材によって形成されたヒートシール層を有するヒートシール積層体を、最も好適な用途であるキャリアテープの蓋体に用いた場合、優れた帯電防止特性および光学特性を発揮させることができる。
【0019】
また、前記導電性微粒子が、球状または針状の金属酸化物に導電性を付与した微粒子であってもよい。
【0020】
この発明によれば、導電性微粒子が針状であるので、ヒートシール可能な合成樹脂内に分散された各微粒子間の接触が保たれている可能性が高く、少量でも全体としての電気抵抗を下げる効果がある。また、導電性微粒子が球状であってもよく、全体としての電気抵抗を下げる効果がある。さらに透明性も良好であることから、透明性を保ちつつ帯電防止効果を向上させるには好ましい材料である。
【0022】
また、前記金属酸化物に導電性を付与した微粒子が、アンチモンドーピング酸化錫の球状または針状粉末であってもよい。
【0023】
この発明によれば、導電性微粒子の粉末として、金属酸化物に導電性を付与した微粒子、中でもアンチモンドーピング酸化錫の球状または針状粉末が、入手の容易性、性能面等を考慮した場合に特に好ましい。
【0024】
また、前記接着層が、イソシアネート系硬化剤を混合したウレタン系接着剤であってもよい。
【0025】
また、上記のヒートシール積層体が、キャリアテープ蓋体として使用されるものであってもよい。
【0026】
この発明によれば、ヒートシール積層体をキャリアテープ蓋体として使用するので、キャリアテープにヒートシールされた際に、良好な帯電防止性能を有しつつ、内容物の視認も行うことができるという効果を奏する。
【0027】
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至請求項12の何れかに記載のヒートシール積層体を、被包装体を収納する収納部を連続的に有するキャリアテープにヒートシールしてなることに特徴を有する。
【0028】
この発明によれば、上述したようなヒートシール積層体を有するので、被包装体に対して静電気放電等による破損を与えることがなく、かつ内容物を視認することができるという効果を奏する。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明のヒートシール積層体は、ヒートシール層と、外層と、そのヒートシール層と外層との間に配置されたクッション層と、そのヒートシール層とクッション層との間に配置されたプライマー層とを少なくとも含むヒートシール積層体であって、その特徴とするところは、プライマー層が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体0〜100重量%と、酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100〜0重量%との樹脂組成物により形成されていることにある。
【0030】
こうした特徴を有する本発明によれば、プライマー層とクッション層との接着性を顕著に向上させることができると共に、プライマー層とヒートシール層との接着性も向上させることができる。その結果、本発明のヒートシール積層体は、こうしたプライマー層を介することによって、クッション層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができるという効果を奏する。
【0031】
以下、本発明のヒートシール積層体およびそれを構成する各層について順次詳しく説明する。
【0032】
図1は本発明のヒートシール積層体1の一例を示す概略断面図である。図1において、ヒートシール積層体1は、外層2と、接着層3を介して外層2に順に積層されたクッション層4と、プライマー層6と、ヒートシール層5とを備えている。上記図1に示す例においては、クッション層4と外層2との間に接着層3が形成されているが、この接着層3は必要に応じて形成される層であり、本発明においては必須の層ではない。
【0033】
(外層)
図1において、外層2は、二軸延伸樹脂フィルムで構成されるものであり、特にポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂等の二軸延伸フィルムで形成することができる。中でも、ポリエステルもしくはポリプロピレンのいずれかの二軸延伸フィルムが好適に用いられる。このように二軸延伸樹脂からなる外層を設けることにより、ヒートシール積層体に耐熱性を付与することができる。外層の厚さは、ヒートシール積層体の使用目的に応じて適宜設定することができ、例えば3.5〜80μm程度、望ましくは6〜50μmとすることができる。上記範囲より薄い場合は、キャリアテープ包装体にヒートシール積層体を適用した場合に、その強度が不足する可能性があり、上記範囲より厚い場合は、ヒートシールが困難となる可能性がある。
【0034】
なお、この外層のクッション層側の面に、必要に応じて予めコロナ処理、プラズマ処理、サンドブラスト処理等の表面処理を施して接着性を高めてもよい。また、必要に応じて静電気発生防止処理を施したものも使用できる。
【0035】
(接着層)
図1において、外層2とクッション層4との間に形成される接着層3は、低密度ポリエチレン、密度0.915〜0.940g/cm3 のエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ウレタン、ポリエステル、あるいは、それらの変性物のいずれかであるポリオレフィン、イソシアネート系、イミン系の接着剤等により形成することができ、厚さは0.2〜60μm程度が好ましい。接着層は、外層上に塗布あるいは押出し成形することができ、この接着層上にクッション層をドライラミネーションあるいは押し出しラミネーションすることができる。
なお、この層は上述した通り必要に応じて形成される層である。
【0036】
(クッション層)
次に、外層2とプライマー層6との間に形成されるクッション層4について説明する。本発明のヒートシール積層体1に用いられるクッション層としては、従来よりヒートシール積層体のクッション層(中間層)に用いられているものであれば特に限定されるものではない。例えば、中密度・低密度ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、ポリプロピレン、アイオノマー、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体のいずれかもしくは混合体からなるクッション層であって、厚みが10〜100μm程度のものを挙げることができる。またこのようなクッション層は、ドライラミネーション法あるいは押し出しラミネーション法により形成することができる。
【0037】
しかしながら、本発明においては、以下に説明するような態様のクッション層、すなわち、非結晶性の樹脂を用いる態様(第1の態様)および低密度ポリオレフィンを用いる態様(第2の態様)のクッション層が中でも好ましい。以下、それぞれの態様に分けて説明する。
【0038】
A.第1の態様
まず、本発明のヒートシール積層体1に好適に用いられるクッション層4の第1の態様について説明する。クッション層としては従来よりポリエチレン樹脂等の結晶性の樹脂が用いられていた。しかしながらこのような結晶性の樹脂をクッション層に用いた場合、例えば、結晶性の樹脂を押出ラミネーションにて外層上に積層する場合、押出時の結晶化により基材がカールするといった問題が発生する。また、クッション層としてこのような結晶性の樹脂フィルムと外層のフィルムとをドライラミネーションにて積層した場合でも、その後のプライマー層や、ヒートシール層を塗工液を用いて積層する場合の乾燥工程における熱により、上記クッション層に用いられている結晶性の樹脂が収縮しカールが発生してしまうという問題が生じる。
【0039】
この第1の態様においては、このようなクッション層のカールを防止することにより、キャリアテープにヒートシール積層体からなる蓋体を接着する工程等における作業性を、より向上させることを目的としてなされたものであり、上記クッション層が、結晶化度が低い高分子材料を主成分とする層とすることを特徴とするものである。
【0040】
結晶化度が低い高分子材料を主成分とすることにより、ヒートシール積層体の製造工程においてクッション層の収縮を抑えることができる。これにより、クッション層の収縮に起因するヒートシール積層体のカールを防止することができ、作業性が良好となるからである。
【0041】
第1の態様において、結晶化度の低い高分子材料とは、具体的には、アイオノマー、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等を挙げることができる。
【0042】
また、第1の態様においては、これらの結晶化度の低い高分子材料をクッション層材の主成分とするものであるが、ここでいう主成分とは、上記結晶化度の低い高分子材料のみを用いてクッション層を形成する場合の他、用いる材料の種類にもよるが、結晶化度の低い高分子材料を全体の50重量%以上、好ましくは60重量%以上を用いている場合をも示すものである。
【0043】
本態様におけるクッション層の肉厚は、上述した従来のクッション層と同様に、10〜100μmの範囲内で形成される。
【0044】
このように結晶化度の低い高分子材料を主成分としてクッション層を形成することにより、ヒートシール積層体形成時において、ヒートシール積層体のカールが生じることがなく、その後の作業性を向上させることができる。
【0045】
なお、このクッション層の第1の態様は、プライマー層を介して、後述する透明導電性ヒートシール材を用いたヒートシール層と組合せて用いる場合の他、従来のヒートシール材からなるヒートシール層と組合わせてヒートシール積層体としたものであってもよい。このような場合でも同様の効果を得ることができるからである。
【0046】
B.第2の態様
次に、本発明のヒートシール積層体に好適に用いられるクッション層の第2の態様について説明する。第2の態様も第1の態様と同様に、ヒートシール積層体のカールを防止することを目的とする態様である。
【0047】
すなわち、従来のクッション層は、ヒートシール積層体のクッション性を確保するために所定の厚みを有するものであり、このようなクッション層おいては、上記第1の態様に示すような種々の条件下において、カールしてしまうといった問題があった。本態様においては、クッション性の良好な材料を用いることにより、従来のクッション層と同等のクッション性を有しつつクッション層の厚みを薄くし、これによりクッション層に起因するヒートシール積層体製造時のカールを軽減・防止するようにしたものである。
【0048】
本態様において、上記クッション層がクッション性の良好な材料で形成されているところに特徴を有するものであり、このようなクッション性の良好な材料としては、密度が0.900〜0.910g/cm3 、好ましくは0.901〜0.909g/cm3 範囲内であり、かつ重量平均分子量が20,000〜100,000の範囲内、好ましくは30,000〜90,000の範囲内であるポリオレフィンを挙げることができる。
【0049】
このような材料としては、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン等を挙げることができる。
【0050】
なお、このクッション層の第2の態様は、上記第1態様と同様にプライマー層を介して、後述する透明導電性ヒートシール材を用いたヒートシール層と組合せて用いる場合の他、従来のヒートシール材からなるヒートシール層と組合わせてヒートシール積層体としたものであってもよい。このような場合でも同様の効果を得ることができるからである。
【0051】
(プライマー層)
本発明においては、上記ヒートシール層5と上記クッション層4との間にプライマー層6を設けたことに特徴を有する。特に、クッション層4とヒートシール層5との間のデラミネーションを抑制することが要求される場合や、クッション層4とヒートシール層5との接着性を向上させることが要求される場合に、好ましく適用することができる。
【0052】
プライマー層6が設けられたヒートシール積層体1は、クッション層4とヒートシール層5との間のデラミネーションが抑制されるので、蓋体として使用した場合、キャリアテープにヒートシールされた蓋体を剥離した際の美感を向上させることができ、また、クッション層4とヒートシール層5との接着性を向上させることができるので、ヒートシール積層体からなる蓋体の接着力を適度な強度以上に調整することができる。さらに、ヒートシール積層体を蓋体としてキャリアテープにヒートシールする際においては、こうしたプライマー層を設けることによって、デラミネーションや接着力に及ぼすヒートシール条件の影響を緩和することができるという効果もある。
【0053】
このようなプライマー層は、オレフィン、変性オレフィン、ウレタン、変性ウレタン、水素化SBSもしくはこれらの混合物から形成することができる。
【0054】
このうち、プライマー層を形成するための好ましい樹脂組成物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)0〜100重量%と、酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体100〜0重量%との樹脂組成物を挙げることができる。スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と、酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体とは、それぞれ単独でも好ましく用いることができるが、それらを上記範囲で混合させて用いることによって、プライマー層とクッション層との接着性を顕著に向上させることができると共に、プライマー層とヒートシール層との接着性も向上させることができる。その結果、本発明のヒートシール積層体は、こうしたプライマー層を介することによって、クッション層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができる。さらに、この樹脂組成物には、アクリルゴムが樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加されていることが好ましい。アクリルゴムを樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加することにより、プライマー層の作用をより一層発揮させることができ、接着性をさらに向上させることができる。
【0055】
なお、上記のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、水素添加されたスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体のことであり、上記の酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体は、酸変性率が1〜100%のスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体のことである。
【0056】
アクリルゴムは、アクリル酸アルキルエステルを主成分としたゴムのことである。ここで、アクリル酸エステルとしては、一般的に、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリロニトリルなどを挙げることができる。また、アクリルゴムを構成する架橋用官能基としては、2−クロロエチルビニルエーテル、その他活性ハロゲン含有モノマー(モノクロロ酢酸ビニル、アリルクロロアセテートなど)、エポキシ基含有モノマー(アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタアクリレートなど)、エチリデンノルボルネンなどを挙げることができる。
【0057】
プライマー層の塗工量は、0.05〜2.5g/m2 の範囲内が好ましく、特に0.1〜2.0g/m2 の範囲内が好ましい。上記範囲より少ない場合は、プライマー層としての効果が十分でなく、また上記範囲より多い場合は、効果が変わらないことからコスト面で問題となるからである。
【0058】
(ヒートシール層)
本発明のヒートシール積層体1におけるヒートシール層5は、後述する透明導電性ヒートシール材を用いて、上記のプライマー層6上に形成される。
【0059】
透明導電性ヒートシール材をヒートシール層として用いる場合の塗工量は、0.1〜8g/m2 の範囲内であることが好ましい。上記範囲より少ない場合は、接着強度の面で問題が生じ、上記範囲より多く塗布した場合でも、効果があまり変わらず、材料費の無駄等のコスト面での問題となるからである。また、塗工方法としては、特に限定されるものではないが、グラビアダイレクト法、もしくはグラビアリバース法等の既知の塗工方法を用いることができる。なお、本発明において、ヒートシール層には、必要に応じて分散安定剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有させることができる。
【0060】
次に、ヒートシール層を構成する透明導電性ヒートシール材について詳しく説明する。
【0061】
ヒートシール層を構成する透明導電性ヒートシール材は、ヒートシール可能な合成樹脂と、50%粒径が1.0μm以下である導電性微粒子とを少なくとも有し、上記導電性微粒子が上記合成樹脂に分散されてなるものである。
【0062】
本発明に用いられるヒートシール可能な合成樹脂とは、一般的にヒートシール材として用いることができる樹脂であって、可視光域において透明なものであれば特に限定されるものではない。具体的には、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のいずれかまたはこれらの組合せからなる樹脂が用いられる。
透明導電性ヒートシール材の主たる用途であるキャリアテープ蓋体において、接着性および強度等の面で最も好適に用いられているからである。
【0063】
また、本発明に用いられる導電性微粒子としては、50%粒径が1.0μm以下のものが好ましい。なお、ここで50%粒径とは、粒径分布において、50%の粒子が含まれる粒径をいう。このような粒径を有する導電性微粒子は、球状(粒状に同じ。)の微粒子であっても、針状の微粒子であってもよい。針状の微粒子は、同じ重量添加した場合の導電性および透明性が良好であるので、特に好ましい。
【0064】
導電性微粒子が針状の微粒子である場合には、50%粒径が0.40μm以下のものが好ましく、特に0.36μm以下のもの、中でも0.32μm以下のものが好ましい。このような粒径は、いずれも可視光の短波長域以下であることから、透明性確保の面から好ましいからである。ここで、針状とは、微粒子の長手方向の長さと微粒子の幅との比率が、5:1以上のものをいうこととする。
【0065】
一方、導電性微粒子が球状の微粒子である場合には、50%粒径が1.0μm以下のものが好ましく、特に0.8μm以下のもの、中でも0.6μm以下のものが好ましい。このような粒径からなる球状微粒子は、透明性を確保することが可能であり、好ましく用いることができる。
【0066】
本発明で用いる球状または針状の導電性微粒子としては、導電性を有する微粒子であれば特に限定されるものではなく、金、銀、ニッケル、アルミ、銅等の金属微粒子、カーボンブラック微粒子、酸化錫、酸化亜鉛および酸化チタン等の金属酸化物に導電性を付与した導電性微粒子、硫酸バリウムに導電性を付与した導電性微粒子、硫化亜鉛、硫化銅、硫化カドミウム、硫化ニッケル、硫化パラジウム等の硫化物に導電性を付与した導電性微粒子等を挙げることができる。
【0067】
本発明においては、中でも酸化錫、酸化亜鉛、または酸化チタンの金属酸化物に導電性を付与したものが好適に用いられ、特にアンチモンドーピング酸化錫の微粉末が特に好ましい。このようなアンチモンドーピング酸化錫としては、体積抵抗率が500Ω・m以下、好ましくは100Ω・m以下のものが、導電性の確保の点で最も好ましい。
【0068】
透明電導性ヒートシール材は、上記ヒートシール可能な合成樹脂に、上記導電性微粒子を混合、分散させることにより製造されるものであり、種々の有機系の分散剤等を用いて、均一に分散される。本発明においては、導電性微粒子として球状または針状のアンチモンドーピング酸化錫を採用し、ヒートシール可能な合成樹脂としてアクリル樹脂を採用してなる透明導電性ヒートシール材が特に好ましい。
【0069】
本発明における上記合成樹脂と導電性微粒子との混合比は、導電性微粒子の種類、粒径等により異なるが、通常上記合成樹脂100重量部に対して、導電性微粒子が10〜1000重量部であり、好ましくは100〜800重量部である。
導電性微粒子の量が上記範囲より少ない場合は、導電性が不足し、帯電防止性能に問題が生じる可能性があるため好ましくない。また、導電性微粒子の量が、上記範囲より多い場合は、ヒートシール性に問題が生じたり、上記合成樹脂への分散が困難になる等の種々の問題が生じる可能性があることから好ましくない。
【0070】
このような、透明導電性ヒートシール材の表面抵抗率は、104 〜1012Ω/□の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは105 〜1012Ω/□の範囲内、最も好ましくは106〜1011Ω/□の範囲内である。上記範囲より低い場合は、帯電防止性能に問題が生じる可能性があり、上記範囲より高い場合は、それ以上の帯電防止性能は要求されておらず、コスト面での問題となる場合があるからである。
【0071】
また、透明導電性ヒートシール材の光学的特性は、この透明導電性ヒートシール材と他の積層材とを積層して得られる積層部材における全光線透過率が70%以上、かつヘイズ25%以下、好ましくは全光線透過率が75%以上、かつヘイズ23%以下、特に好ましくは全光線透過率が80%以上、かつヘイズ20%以下の範囲内となるような光学的特性であることが好ましい。
【0072】
透明導電性ヒートシール材を用いる場合の塗工量は、用途によって変化するが、一般的には0.1〜8g/m2 の範囲内である。上記範囲より少ない場合は、接着強度の面で問題が生じ、上記範囲より多く塗布した場合でも、効果があまり変わらず、材料費の無駄等のコスト面での問題となるからである。
【0073】
このような透明導電性ヒートシール材は、透明性と導電性(帯電防止性)とが必要とされるヒートシール層であれば、いかなる用途にも用いることが可能である。しかしながら、本発明においては、透明性と導電性の両特性が必要とされ、現在問題となっている、キャリアテープ蓋体のヒートシール層に用いることが特に好ましい。
【0074】
(ヒートシール積層体の製造方法)
本発明のヒートシール積層体の製造方法は、通常のフィルムの積層方法を用いることにより製造することが可能であり、その製造方法に関しては特に限定されるものではない。
【0075】
(ヒートシール積層体)
このような本発明のヒートシール積層体は、上述した透明導電性ヒートシール材でヒートシール層が形成されているので、キャリアテープ蓋体とされて、キャリアテープ上にヒートシールされてキャリアテープ包装体とされた場合でも、静電気放電による内容物の損傷がなく、かつ内容物の視認に問題が生じない。
【0076】
なお、本発明のヒートシール積層体自体の光学的特性としては、ヘイズが25%以下、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、特にヘイズが20%以下、全光線透過率が80%以上であることが好ましい。
【0077】
(キャリアテープ包装体)
上記ヒートシール積層体をキャリアテープ蓋体とし、キャリアテープ上にヒートシールれることによりキャリアテープ包装体として用いられる。例えば、図2に示すように、被包装体を収納する収納部12を有するキャリアテープ11上に、ヒートシール積層体からなるキャリアテープ蓋体が、図2に示す例では、収納部12の両端部に所定の幅でライン状とされたヒートシール部Hをヒートシールすることにより接着されてキャリアテープ包装体とされる。上記収納部は、図2にも示すように、通常エンボス成形されたポケット状のものであり、キャリアテープの長手方向に連続して多数形成されている。
【0078】
このようなキャリアテープは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリエステル(A−PET、PEN、PET−G、PCTA)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等の樹脂、または、これらに静電気対策として導電性カーボン微粒子、金属微粒子、酸化錫や酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物に導電製を付与した導電製微粉末、Si系有機化合物、界面活性剤を練り込んだり塗布したもの等を用いて形成される。また、PS系樹脂シートまたはABS系樹脂シートの片面あるいは両面にカーボンブラックを含有したPS系またはABS系樹脂フィルムまたはシートを共押出しにより一体的に積層してなる複合プラスチックシートを形成したものも挙げられる。あるいは、導電性処理として、プラスチックフィルム表面に、導電性高分子を形成させたものも挙げることができる。
【0079】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0080】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
厚さ12μm、帯電防止タイプの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(表1中ではPETで表す。)フィルム(外層)の片面に、イソシアネート系硬化剤を適量混合したウレタン系接着剤(表1中ではウレタンで表す。)を4.0g/m2 となるようにグラビアダイレクト法により塗工し(接着層)、さらにシングルサイト触媒により重合した直鎖状ポリエチレン(表1中ではLLで表す。)フィルム(クッション層)30μmをドライラミネーションにて積層し、外層上に接着層を介してクッション層が形成された基材を得た。
【0082】
上記基材のクッション層側の面に、プライマー層を形成する樹脂組成物であるスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(表1中ではSEBSで表す。)1.0g/m2 量をグラビアダイレクト法にて塗工した。
【0083】
アクリル系ヒートシール剤の固形分100重量部に対し、50%粒径が0.05μmである導電性針状酸化錫微粉末の固形分200重量部混合したものを透明導電性ヒートシール材として、上記基材のクッション層側の面に、グラビアリバース法にて2.1g/m2 となるように塗工し(ヒートシール層)、ヒートシール積層体を得た。
【0084】
上記ヒートシール積層体は、表面抵抗率3×107 Ω/□、全光線透過率90.3%、ヘイズ6.4%であり、良好な帯電防止性能、および透明性を有していた。
【0085】
また、上記ヒートシール積層体を21.5mm幅に細切してキャリアテープ蓋体とし、ポリスチレン(PS)製のキャリアテープに、シール温度150℃にてヒートシールしたところ、ピール強度は39gfとなり、良好なピール強度を有していた。また、内容物を容易に視認することができた。
【0086】
[実施例2〜9]
プライマー層を形成する樹脂組成物とその塗工量を表1に示すものに変更した以外は、実施例1と同様にして蓋体を得た。蓋体の評価結果を表2にまとめる。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
[実施例10]
導電性微粒子を、50%粒径が1.0μmである球状の微粒子に変更し、その他の事項についても表1に示すように変更した。それ以外は、実施例1と同様にしてヒートシール積層体を得た。評価結果を表2にまとめる。
【0089】
(ヘイズおよび全光線透過率の測定条件)
スガ試験機(株)製カラーコンピューターSM−5SCにて測定した。
【0090】
(表面抵抗率の測定条件)
22℃、40%RH下において、三菱油化(株)製ハイレスタIPにて測定した。
【0091】
(ピール強度の測定条件)
得られたヒートシール積層体を21.5mm幅に細切りしてキャリアテープ蓋材とし、24mm幅のポリスチレン(PS)製キャリアテープとヒートシールし、ピール強度を測定した。
【0092】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のヒートシール積層体によれば、プライマー層とクッション層との接着性を顕著に向上させることができると共に、プライマー層とヒートシール層との接着性も向上させることができるので、こうしたプライマー層を介することによって、クッション層とヒートシール層とを十分な強さで接着することができる。こうした特徴を有する本発明のヒートシール積層体は、特に、クッション層とヒートシール層との間のデラミネーションを抑制することが要求されるキャリアテープ蓋材や、クッション層とヒートシール層との接着性を向上させることが要求されるキャリアテープ蓋材に好ましく適用することができる。したがって、本発明のヒートシール積層体をキャリアテープ蓋材に適用すれば、クッション層とヒートシール層との間のデラミネーションが抑制されるので、キャリアテープにヒートシールされた蓋体を剥離した際の美感を向上させることができ、また、クッション層とヒートシール層との接着性を向上させることができるので、蓋体の接着力を適度な強度以上に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒートシール積層体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のヒートシール積層体をキャリアテープ上に熱融着した状態を示す斜視図である。
【図3】従来のヒートシール積層体の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…ヒートシール積層体
2…外層
3…接着剤層
4…クッション層
5…ヒートシール層
6…プライマー層
Claims (13)
- 外層、接着層、クッション層、プライマー層、ヒートシール層がこの順で積層され、
前記外層がポリエチレンテレフタレート、前記クッション層が直鎖状低密度ポリエチレン、前記プライマー層がスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体との樹脂組成物、前記ヒートシール層がアクリル樹脂により形成されていることを特徴とするヒートシール積層体。 - 前記プライマー層が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と酸変性されたスチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体と、アクリルゴムとの樹脂組成物から形成され、該アクリルゴムが樹脂組成物全体の60重量%以下の割合で添加されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシール積層体。
- 前記クッション層は、結晶化度が低い高分子材料を主成分とする層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシール積層体。
- 前記クッション層は、密度が0.900〜0.910g/cm3の範囲内であり、かつ重量平均分子量が20,000〜100,000の範囲内であるポリオレフィンで形成された層であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒートシール積層体。
- 前記プライマー層の塗工量が0.3〜3.0g/cm 2 であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のヒートシール積層体。
- 前記ヒートシール層は、ヒートシール可能な合成樹脂に50%粒径が1.0μm以下である導電性微粒子が少なくとも分散されてなる透明導電性ヒートシール材によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のヒートシール積層体。
- 前記透明導電性ヒートシール材の表面抵抗率が、10 4 〜10 12 Ω/□であることを特徴とする請求項6に記載のヒートシール積層体。
- 前記透明導電性ヒートシール材の光学的特性が、前記各層を積層してなるヒートシール積層体における全光線透過率が70%以上、かつヘイズ25%以下となるような光学的特性であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のヒートシール積層体。
- 前記導電性微粒子が、球状または針状の金属酸化物に導電性を付与した微粒子であることを特徴とする請求項6乃至請求項8の何れかに記載のヒートシール積層体。
- 前記金属酸化物に導電性を付与した微粒子が、アンチモンドーピング酸化錫の球状または針状粉末であることを特徴とする請求項9に記載のヒートシール積層体。
- 前記接着層が、イソシアネート系硬化剤を混合したウレタン系接着剤であることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載のヒートシール積層体。
- キャリアテープ蓋体として使用されることを特徴とする請求項1乃至請求項11の何れかに記載のヒートシール積層体。
- 前記請求項1乃至請求項12の何れかに記載のヒートシール積層体を、被包装体を収納する収納部を連続的に有するキャリアテープにヒートシールしてなることを特徴とするキャリアテープ包装体。
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