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JP4430263B2 - クロマトグラフィ測定装置 - Google Patents

クロマトグラフィ測定装置 Download PDF

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JP4430263B2
JP4430263B2 JP2001128247A JP2001128247A JP4430263B2 JP 4430263 B2 JP4430263 B2 JP 4430263B2 JP 2001128247 A JP2001128247 A JP 2001128247A JP 2001128247 A JP2001128247 A JP 2001128247A JP 4430263 B2 JP4430263 B2 JP 4430263B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、水質検査や尿検査などの液体試料の化学試験もしくは臨床試験を実施する方法として、抗原抗体反応などを利用したクロマトグラフィ測定が汎用されている。このクロマトグラフィ測定とは、混合物をその構成成分に応じて分離する方法をいい、クロマトグラフィ測定に用いられるクロマトグラフィ測定装置は、一般に液体試料を添加する試料添加部と、液体試料の浸透により移動可能な標識試薬が保持された標識試薬保持部と、標識試薬とともに流れてきた液体試料中の分析対象物と特異的に結合するタンパク質が固定化された特異的タンパク質固定化部と、特異的な結合反応が行われる反応層と、流れてきた試料を吸水する吸水部とからなり、これらの構成部材を順にプラスチック等で構成された支持体上に積層あるいは連結させて並べた状態で構成される。
【0003】
次に、この一般的なクロマトグラフィ測定装置を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
液体試料を試料添加部に添加すると、次に標識試薬保持部の領域に達する。次に、該標識試薬保持部の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに反応層の領域に浸透する。反応層の領域上には、特異的タンパク質固定化部があり、前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して呈色または発色を伴う結合反応を起こし、目視的な検出方式によって判定を行なうことができる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色または発色も見られない。最終的に、前記液体試料は、クロマトグラフィ測定装置の下端領域に設けられた吸水部により吸収され、反応は終了する。
【0004】
このように、従来のクロマトグラフィ測定装置を用いたクロマトグラフィ測定は、検査結果の判定が非常に容易であることから、用途範囲が広く、さまざまな分析対象物の検査に利用することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来のクロマトグラフィ測定装置を用いたクロマトグラフィ測定では、クロマト展開時に添加した液体試料中の水分が、クロマトグラフィ測定装置の上表面及び側面から自然蒸発するため、測定領域に流出する分析対象物の量が不均一になるとともに、一定時間中にクロマトグラフィ測定装置上を流れる液体試料の量と標識試薬の量が一定とならず、正確なクロマトグラフィ測定を行うことができなかった。
【0006】
また、従来のクロマトグラフィ測定装置は、支持体上に試料添加部、標識試薬保持部、特異的タンパク質固定化部、反応層、吸水部の構成部材を積層または連結させたシートを試験片大に切断して作製するため、試験片大に切断する際に支持体上に積層または連結された部材が剥離する問題点を有していた。
【0007】
さらに、従来のクロマトグラフィ測定装置を用いて正確なクロマトグラフィ測定を行なうためには、前述した試料添加部、標識試薬保持部、特異的タンパク質固定化部、反応層、吸水部の構成部材が必要不可欠であり、削除することは不可能とされていた。そのため、クロマトグラフィ測定装置の作製には一定のコストがかかり、コスト高を招いていた。
【0008】
本発明は、かかる問題点を解消するためになされたものであり、クロマトグラフィ測定装置において、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
これらの問題を解決するために、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、クロマトグラフィ測定を行うための試験片であるクロマトグラフィ試験片を有し、該クロマトグラフィ試験片に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面、及び側面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面、側面、及び下表面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、少なくとも、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側に位置する標識試薬が保持された標識試薬保持部から、クロマト下流側に位置する特異的タンパク質が固定化された特異的タンパク質固定化部までの測定領域が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、複数の多孔質性材料を積層または連結してなることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、単層の多孔質性材料よりなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記単層の多孔質性材料がニトロセルロースであることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域を、通気性材料によって覆ったことを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記通気性材料が不織布などの任意の多孔質性薄膜材料であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記通気性材料が網状組織であることを特徴とするものである。
【0020】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域上に、任意の空間を形成する空間形成部を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記空間形成部におけるクロマト下流領域の端部あるいは平行側面あるいは空間形成部上表面の任意の部位に、空気の流入が可能なように間隙部を備えることを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記空間形成部が液体不透過性の材料で形成されていることを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、抗原抗体反応を利用した免疫クロマトグラフィ試験片であることを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片が、乾式分析要素であることを特徴とするものである。
【0025】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片が、ワンステップの試験片であることを特徴とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずしもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0027】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置について、図1及び図2を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置を示す図であり、図2は、該クロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材を除いたクロマトグラフィ試験片である。
【0028】
図1は、クロマトグラフィ試験片1に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置であり、前記クロマトグラフィ試験片1の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆われている。
【0029】
図2に示したクロマトグラフィ試験片1は、吸水性の大きい不織布などの多孔質性材料で構成され、液体試料を添加或いは塗布するための試料添加部2と、液体試料の浸透により移動可能な標識試薬が保持された標識試薬保持部3と、ニトロセルロースなどの多孔質性材料からなり、流れてきた液体試料中の分析対象物と特異的な結合反応が行われる反応層4と、反応層4の領域上に流れてきた液体試料中の分析対象物と特異的に結合するタンパク質が固定化された部位である特異的タンパク質固定化部5とからなる。
【0030】
また、このクロマトグラフィ試験片1は、多孔質性材料からなる試料添加部2、反応層4の両部位がプラスチックなどで構成された支持体7上に積層または連結して構成され、当該多孔質性材料により構成された部材上に標識試薬保持部3、及び特異的タンパク質固定化部5が設けられた構造となっている。なお、本発明において、積層とは、異なる複数の材料が隣り合った部材とわずかでも重なり合った状態であることを示し、連結とは、異なる複数の材料が隣り合った部材と重なってはいないが密接した状態にあることを示す。
【0031】
また、本発明にかかるクロマトグラフィ測定装置は、図1に示すクロマトグラフィ試験片1の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6により密着された状態で被覆されている。
【0032】
なお、本発明において、任意の表面とは、好ましくは該クロマトグラフィ試験片1の上流側と下流側の二つの領域が同等かあるいは、下流側領域の方が広い状態を示すが、これ以外の状態でも何ら問題はない。
【0033】
次に、本発明の実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置(図1参照。)を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
図1に示したクロマトグラフィ測定装置において、液体試料を試料添加部2に添加すると、次に標識試薬保持部3の領域に達する。次に、該標識試薬保持部3の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに反応層4の領域に浸透する。反応層4の領域上には、特異的タンパク質固定化部5があり、前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部5に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、特異的タンパク質固定化部5の領域に呈色反応が見られる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。最終的に、前記液体試料はクロマトグラフィ試験片1の下端領域に浸透し、反応は終了する。
【0034】
このとき、少なくとも、クロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、さらに、一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0035】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を液体不透過性シート材6で覆わないことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端の開放された領域である下端開放部に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端開放部における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
【0036】
以上のように、本実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、クロマトグラフィ試験片1の、その上流側と下流側の両端部以外の部分の表面の、少なくとも、標識試薬保持部3から特異的タンパク質固定化部5までの領域を、液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、展開された液体試料を、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域において吸水性に富んだ部材を用いて吸水することなく、クロマト展開を行うことが可能となる。また、前記クロマトグラフィ試験片1は、試料添加部2と、標識試薬保持部3と、特異的タンパク質固定化部5と、反応層4とからなり、さらに、これらの構成部材を支持する支持体7を有するクロマトグラフィ測定装置としたことで、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0037】
なお、本発明のクロマトグラフィ測定装置において、反応層4上にある特異的タンパク質固定化部5の領域が一つの場合について説明したが、必ずしも一つである必要はなく、任意の数の特異的タンパク質固定化領域が反応層4の領域上に存在してもよい。また、クロマトグラフィ測定で用いられる反応成分として、特異的結合タンパク質を用いて説明したが、これに限定されず、例えば、酵素のように反応の前後において何らかの変化を生じる物質をクロマトグラフィ測定に用いる反応成分として用いてもよい。
【0038】
また、支持体7の構成例として、プラスチックなどを例としてあげたが、ビニールテープやPET(Polyethylene Terephthalate)などの任意の液体不透過性材料が好ましい。また、試料添加部2、標識試薬保持部3、反応層4の構成例としてあげた不織布やニトロセルロースは一例であり、任意の多孔質性担体により構成されていても何ら問題はない。
【0039】
また、本発明において、クロマトグラフィ測定装置を構成するクロマトグラフィ試験片1は、ニトロセルロースやガラス繊維濾紙のような、任意の複数の多孔質性材料を積層または連結して構成される。このような材料からなるクロマトグラフィ試験片1は、例えば、抗原抗体反応のような任意の測定原理を用いて、ある特定物質を分析検出し、定量することができる。また、水や水溶液、尿、血液、体液、固体及び粉体や気体を溶かした溶液などの液体試料を測定することができ、その用途としては、尿検査や妊娠検査、水質検査、便検査、土壌分析、食品分析などがある。
【0040】
(実施の形態2)
以下に、本発明の実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置ついて、図3及び図4を用いて説明する。
図3は、本実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置を示す図であり、図4は、該クロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材を除いたクロマトグラフィ試験片である。
【0041】
図3は、クロマトグラフィ試験片1に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置であり、前記クロマトグラフィ試験片1の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆われている。
【0042】
図4は、液体試料添加部2を設けず、反応層4上に直接液体試料を添加或いは塗布することにより、クロマトグラフィ試験片の基本的な構成部材を反応層4のみの単層により構成する点においてのみ、図2を用いて説明した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ試験片1と異なる。そのため、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0043】
次に、本発明の実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置(図3参照。)を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
図3に示したクロマトグラフィ測定装置において、液体試料を反応層4に添加すると、次に標識試薬保持部3の領域に達する。次に、該標識試薬保持部3の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに特異的タンパク質固定化部5の領域へ浸透する。前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部5に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、特異的タンパク質固定化部5の領域に呈色反応が見られる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。最終的に、前記液体試料は、クロマトグラフィ試験片1の下端領域に浸透し、反応は終了する。
【0044】
このとき、少なくとも、クロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、さらに、一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0045】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を液体不透過性シート材6で覆わないことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端の開放された領域である下端開放部に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端開放部における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。
【0046】
さらに、反応層4上に直接液体試料を添加或いは塗布することにより、試料添加部2を設けることなく、クロマトグラフィ試験片1は、基本的な部材を反応層4のみの単層の多孔質性材料で構成することができるので、クロマトグラフィ測定装置を構成する構成部材数を削減することができる。また、単層の多孔質性材料がニトロセルロースで構成される場合には、液体試料の添加量は極微量で十分であり、検体微量化クロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0047】
以上のように、本実施の形態2によれば、試料添加部2を設けずに、単層の多孔質性材料よりなるクロマトグラフィ試験片1の、その上流側と下流側の両端部以外の部分の任意の表面を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がないので、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0048】
なお、試料添加部2を設けずに、反応層4上に直接液体試料を添加或いは塗布するクロマトグラフィ測定装置について説明したが、反応層4は、多孔質性材料によって構成されているため液体試料の添加量は、極微量で十分に測定を行うことができる。
【0049】
(実施の形態3)
以下に、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置において、クロマトグラフィ試験片1の液体不透過性シート材6による被覆状態について図5及び図6を用いて説明する。
【0050】
図5及び図6は、図1におけるクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材6による被覆状態を説明するための図である。図5は、図1に示したクロマトグラフィ測定装置を液体試料の浸透方向(以下、クロマト方向と称する。)に対して平行に切断した切断図、図6は、図1に示したクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
なお、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0051】
このとき、少なくとも、クロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域の、上表面、及び側面を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、さらに、一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0052】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を液体不透過性シート材6で覆わないことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端の開放された領域である下端開放部に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端開放部における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
【0053】
以上のように、本実施の形態3にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、少なくとも、クロマトグラフィ測定装置の表面の、その上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域の上表面及び側面をプラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域における水分の蒸発を防ぐことができるので、クロマト展開が均一に行われ、クロマトグラフィ測定が正確に行われるとともに、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域に液体試料を吸収する吸水部を設ける必要性がないので、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0054】
なお、本実施の形態3では、前記実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材6による被覆状態について説明したが、前記実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置の上表面及び側面を液体不透過性シート材6により被覆したものについても本実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(実施の形態4)
以下に、前述した実施の形態1及び2にかかるクロマトグラフィ測定装置におけるクロマトグラフィ試験片1の液体不透過性シート材6による被覆状態について図7及び図8を用いて説明する。
【0056】
図7及び図8は、図1に示したクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材6による被覆状態を説明するための図である。図7は、図1に示したクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図、図8は、図1に示したクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。なお、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0057】
このとき、少なくとも、クロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域の、上表面を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、さらに、一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0058】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を液体不透過性シート材6で覆わないことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端の開放された領域である下端開放部に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端開放部における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
【0059】
さらに、図8に示したように、液体不透過性シート材6は、クロマトグラフィ測定装置の上表面のみを密着された状態で被覆するため、クロマトグラフィ測定装置の作製時に液体不透過性シート材6をクロマトグラフィ試験片1の裏面まで巻き込む必要がなく、また、作製したクロマトグラフィシートをクロマトグラフィ試験片大に切断するときには、クロマトグラフィシート表面が液体不透過性シート材6により密着された状態で覆われているため切断時の部材の剥離を心配する必要もない。
【0060】
以上のように、本実施の形態4にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、少なくとも、クロマトグラフィ測定装置の表面の、その上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域の上表面を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域における水分の蒸発を防ぐことができるので、クロマト展開が均一に行われ、クロマトグラフィ測定が正確に行われるとともに、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域に液体試料を吸収する吸水部を設ける必要性がないので、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0061】
なお、本実施の形態4では、前記実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート6による被覆状態について説明したが、前記実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置の表面を液体不透過性シート材6によって被覆したものについても本実施の形態4と同様の効果を得ることができる。
【0062】
(実施の形態5)
以下に、本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置について、図9、図10及び図11を用いて説明する。
図9は、本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置を示す図である。また、図10及び図11は、図9に示したクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材6による被覆状態を説明するための図であり、図10は、図9に示したクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図、図11は、図9に示したクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【0063】
なお、図9に示すように本実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置は、液体不透過性シート材6によってクロマトグラフィ試験片1の上表面、側面、及び下表面を密着された状態で覆うため、支持体7を設ける必要性がない。つまり、本実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成部材は、図1を用いて説明した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成部材と比較すると、支持体7を設けない点においてのみ異なる。従って、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0064】
次に、本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置(図9参照。)を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
図9に示したクロマトグラフィ測定装置において、液体試料を試料添加部2に添加すると、次に標識物保持部3の領域に達する。次に、該標識物保持部3の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに反応層4に浸透する。反応層4の領域上には、特異的タンパク質固定化部5があり、前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部5に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、特異的タンパク質固定化部5の領域に呈色反応が見られる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。最終的に、前記液体試料はクロマトグラフィ試験片の下端領域に浸透し、反応は終了する。
【0065】
このとき、少なくとも、クロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域の、上表面、側面、及び下表面を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、さらに、一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0066】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を液体不透過性シート材6で覆わないことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端の開放された領域である下端開放部に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端開放部における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
さらに、液体不透過性シート材6は支持体7の役割を兼ね備えているため、クロマトグラフィ測定装置を構成する構成部材数を削減できる。
【0067】
以上のように、本実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、クロマトグラフィ試験片1の、上流側と下流側の両端部以外の部分の任意の表面をプラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域における水分の蒸発を防ぐことができるのでクロマト展開が均一に行われ、クロマトグラフィ測定が正確に行われるとともに、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域に液体試料を吸収する吸水部を設ける必要性がない。さらに、液体不透過性シート材6によってクロマトグラフフィ試験片1の、上表面、側面及び下表面を密着された状態で覆うことにより、支持体7を設ける必要性がないので、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0068】
なお、本実施の形態5では、前記実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置のクロマトグラフィ試験片1の構成を用いて説明したが、前記実施の形態2において説明した基本的な部材を反応層4のみの単層により構成したクロマトグラフィ試験片1についても本実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0069】
(実施の形態6)
以下に、本発明の実施の形態6にかかるクロマトグラフィ測定装置について、図12を用いて説明する。
図12は、本発明の実施の形態6にかかるクロマトグラフィ測定装置を示す図である。
【0070】
図12は、グロマトグラフィ試験片1に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置であり、前記クロマトグラフィ試験片1の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆われている。
【0071】
図12に示すように、本発明の実施の形態6によるクロマトグラフィ測定装置は、液体不透過性シート6で覆われていないクロマト下流領域を通気性材料8により覆った点においてのみ、図1を用いて説明した実施の形態1によるクロマトグラフィ測定装置と異なる。そのため、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
通気性材料8は、微細孔を持つメッシュ状の材料であればなんでもよく、好ましくは、吸水性の悪い材質のものが良い。
【0072】
次に、本発明の実施の形態6にかかるクロマトグラフィ測定装置を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
図12に示したクロマトグラフィ測定装置において、液体試料を試料添加部2に添加すると、次に標識試薬保持部3の領域に達する。次に、該標識試薬保持部3の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに反応層4の領域に浸透する。反応層4の領域上には、特異的タンパク質固定化部5があり、前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部5に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、特異的タンパク質固定化部5の領域に呈色反応が見られる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。最終的に、前記液体試料はクロマトグラフィ試験片の下端領域に浸透し、反応は終了する。
【0073】
このとき、少なくともクロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域をプラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、更に一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0074】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流領域を液体不透過性シート材6で覆わず、通気性材料8で覆ったことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端領域に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。前記下端領域における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。前記通気性材料は、不織布などの任意の多孔質性薄膜材料であってもよく、この多孔質性薄膜材料は、多孔質のため通気性に優れており、厚さが1mm以下で、それ自体がもつ吸水性は低いものが好ましい。また、前記通気性材料が、網状組織であってもよく、ここで示す網状組織とは、繊維あるいは樹脂成型加工によって網目状に形成されたものを示し、それ自体の毛管活性または吸収性の有無は問題としない。この時の網目形状は、多辺形であればどの様な形状をとっていてもよく、その大きさは問わないが、網目が規則正しく配列されていることが好ましい。また、この網状組織は、好ましくは単層であることがよい。
【0075】
また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
【0076】
更に、図12に示したように、通気性材料8はクロマト下流領域を覆っているため、試料添加部2が人目で見分けられるばかりでなく、下流領域の反応層4を直接手で触れることができない。その為、手に付着した物質により反応層4を汚染する恐れがなく、汚染によって生じる反応層4の吸水性悪化も懸念しなくて良いばかりか、液体試料が手に付着する恐れもないので、安全かつ衛生的に測定することができる。
【0077】
以上のように、本実施の形態6にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、少なくとも、クロマトグラフィ測定装置の表面のその上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域における水分の蒸発を防ぐことができるので、クロマト展開が均一に行われ、クロマトグラフィ測定が正確に行われる。さらに、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を通気性材料8で覆うことにより、水分蒸発を促すばかりでなく、試料添加部2を容易に見分けられ、汚染物質による反応層の吸水性悪化を防ぐことが可能となる。これにより、液体試料が手に付着することがなく、より安全かつ衛生的に使用可能な、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0078】
なお、本発明のクロマトグラフィ測定装置において、通気性材料8が下流領域を覆った場合について説明したが、前記実施の形態3から5で説明した下流領域の上表面及び側面を通気性材料8により覆ったものや、表面のみを通気性材料8により覆ったもの、或は、上表面、側面及び下表面を通気性材料8により覆ったもの等、通気性材料8が下流領域に存在すればいずれの形態を用いても良い。
【0079】
また、本実施の形態6では、前記実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置のクロマトグラフィ試験片1の構成を用いて説明したが、前記実施の形態2において説明した基本的な部材を反応層4のみの単層により構成したクロマトグラフィ試験片1についても本実施の形態6と同様の効果を得ることができる。
【0080】
(実施の形態7)
以下に、本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置について、図13、図14、図15、図16、図17、図18を用いて説明する。
図13、図16、図17は、本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置を示す図であり、図14と図15は図13に示すクロマトグラフィー測定装置をクロマト方向に対して垂直方向に切断した断面をクロマト下流方向から見た図である。また、図18は図16に示すクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行方向に切断した断面図である。
【0081】
図13、図16、図17は、クロマトグラフィ試験片1に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置であり、前記クロマトグラフィ試験片1の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆われている。
【0082】
図13、図16、図17に示すように、本発明の実施の形態7によるクロマトグラフィ測定装置は、液体不透過性シート材6で覆われていないクロマト下流領域を空間形成材9により覆った点においてのみ、図1を用いて説明した実施の形態1によるクロマトグラフィ測定装置と異なる。そのため、前述した実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置と同じ構成要素については、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0083】
空間形成材9は、任意の液体不透過性の材料であり、透明あるいは半透明・不透明いずれの状態でもよいが、反応層4上に空間を形成し、維持できるだけの強度を備えた材料であることが好ましい。このとき、空間形成材9は、図18に示すように、液体不透過性シート材6の端部と積層するように形成したり、或は、図示していないが、液体不透過性シート材6と連結するように形成してもよい。
【0084】
空間形成部11は、空間形成材9によって形成された空間であり、反応層4と任意の間隔をもち、空気の流入が可能な状態であることが好ましい。
間隙部10は、図13に示すようにクロマト下流末端に備えたり、図16に示すようにクロマト平行側面に備える、あるいは図17に示すように空間形成部11表面上に備えるなど、空間形成材9の任意の部位に任意の数を備えても何ら支障はない。なお、ここで示す間隙部は、一つまたはそれ以上の任意の数で何ら問題はない。
【0085】
次に、本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置を用いたクロマトグラフィ測定について説明する。
図13及び図16、図17に示したクロマトグラフィ測定装置において、液体試料を試料添加部2に添加すると、次に標識試薬保持部3の領域に達する。次に、該標識試薬保持部3の領域に保持された標識試薬が、前記液体試料の浸透により溶解され、前記液体試料とともに反応層4の領域に浸透する。反応層4の領域上には、特異的タンパク質固定化部5があり、前記液体試料中に分析対象物を含む場合は、特異的タンパク質固定化部5に固定化された特異的タンパク質が、分析対象物と標識試薬との複合体に対して結合反応を起こし、特異的タンパク質固定化部5の領域に呈色反応が見られる。一方、前記液体試料中に分析対象物を含まない場合には、結合反応は起こらず、呈色反応も見られない。最終的に、前記液体試料はクロマトグラフィ試験片の下端領域に浸透し、反応は終了する。
【0086】
このとき、少なくともクロマトグラフィ試験片1の表面の、上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域をプラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域での水分の蒸発を防ぐことができ、また、測定領域に浸透する液体試料の量を均一にし、更に一定時間に測定領域を流れる液体試料と標識試薬の濃度を一定にすることが可能となり、クロマトグラフィ測定を正確に行うことができる。
【0087】
また、クロマトグラフィ試験片1の下流領域を液体不透過性シート材6で覆わず、空間形成材9で覆ったことにより、該クロマトグラフィ試験片1の下端領域に液体試料が浸透すると、徐々に水分が蒸発していく。空間形成材9には間隙部10を有することで、前記下端領域における液体試料の蒸発速度は、添加された液体試料の該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域への浸透速度に比べて速いため、液体試料は逆流することなく乾燥する。また、試料添加部2には液体試料が添加されており、該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域との水分割合を均等に保とうとして、前記液体試料は該クロマトグラフィ試験片1の下流側領域へと展開され、反応層4では正確に反応が行われる。
【0088】
更に、図13及び図16、図17に示したように、空間形成材9はクロマト下流領域を覆っているため、試料添加部2が目視で見分けられるばかりでなく、下流領域の反応層4を直接手で触れることができない。その為、手に付着した物質により反応層4を汚染する恐れがなく、汚染によって生じる反応層4の吸水性悪化も懸念しなくて良いばかりでなく、液体試料が手に付着する恐れもないので、安全かつ衛生的に測定することができる。
【0089】
以上のように、本実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置によれば、少なくとも、クロマトグラフィ測定装置の表面のその上流側に位置する標識試薬保持部3から、下流側に位置する特異的タンパク質固定化部5までの測定領域を、プラスチックテープなどからなる液体不透過性シート材6によって密着された状態で覆うことにより、該測定領域における水分の蒸発を防ぐことができるので、クロマト展開が均一に行われ、クロマトグラフィ測定が正確に行われる。さらに、クロマトグラフィ試験片1の下流側領域を空間形成材9で覆うことにより、水分蒸発を促すばかりでなく、試料添加部2を容易に見分けられ、汚染物質による反応層の吸水性悪化を防ぐことが可能となる。これにより、液体試料が手に付着することがなく、より安全かつ衛生的に使用可能な、低コストで高感度・高性能なクロマトグラフィ測定装置を実現することができる。
【0090】
なお、本発明のクロマトグラフィ測定装置において、空間形成材9が下流領域を覆った場合について説明したが、具体的には、図14に示すように、反応層4の表面に空間形成材9を形成するようにしてもよい。また、図15に示すように、クロマトグラフィ測定装置の上表面及び側面に空間形成材9を形成する、あるいは、図示していないが、上表面、側面及び下表面に空間形成材9を形成する等、空間形成材9が下流領域に存在すればいずれの形態を用いても良い。
【0091】
また、本実施の形態7では、前記実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置のクロマトグラフィ試験片1の構成を用いて説明したが、前記実施の形態2において説明した基本的な部材を反応層4のみの単層により構成したクロマトグラフィ試験片1についても本実施の形態7と同様の効果を得ることができる。
【0092】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、その試験片が乾式分析要素であってもよい、ここで示す乾式分析要素とは、試験片を構成する試料添加部、反応層、吸水部などの部材がすべて乾燥状態にあり、これらの部材上に担持あるいは固定化されている試料試薬や特異的タンパク質などの試薬類も乾燥状態で構成されている試験片を示す。このように試験片を乾燥状態にすることにより、タンパク質などの変性を最低限抑えることができ、長期間の保存が可能である。
【0093】
また、本発明のクロマトグラフィ測定装置は、ワンステップの試験片を有するものであってもよい。ここで示すワンステップとは、その測定操作において、試料溶液の前処理を必要とせず、試験片に試料溶液を点着するのみで、点着後に展開溶液を用いて試料溶液を展開したり、洗浄操作を行うなどを必要としない操作であるので、簡便に測定を行うことができる。
【0094】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を実施する方法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例になんら制約されるものではない。
(尿中hCGの定性)
ニトロセルロース膜中に抗hCG−β抗体固定化ライン、及び抗hCG−α抗体と金コロイドとの複合体の広いバンドを含む免疫クロマトグラフィ測定装置を製造した。このクロマトグラフィ測定装置を図1に示す。図中、クロマトグラフィ測定装置は、抗体が固定化された特異的タンパク質固定化部5と、それよりも前にある抗hCG−α抗体と金コロイドとの複合体が含有された領域である標識試薬保持部3と、試料添加部2とを含む。
これらのクロマトグラフィ測定装置は、次のようにして製造した。
【0095】
a)クロマトグラフィ測定装置の調製
リン酸緩衝溶液にて希釈して濃度調整をした抗hCG−β抗体溶液を準備した。この抗体溶液を溶液吐出装置を用いて、ニトロセルロース膜上に塗布することにより、膜上に検出用の抗体固定化ラインが得られた。この膜を乾燥後、1%スキムミルクを含有するTris−HCl緩衝溶液中に浸漬して30分間緩やかに振った。30分後、Tris−HCl緩衝溶液槽に膜を移動し、10分間緩やかに振った後に、別のTris−HCl緩衝溶液槽にて更に10分間緩やかに振り、膜の洗浄を行なった。2度洗浄を行った後に、膜を液槽から取り出して、室温で乾燥させた。
【0096】
金コロイドは、0.01%塩化金酸の還流中の100℃溶液に1%クエン酸溶液を加えることによって調製した。還流を30分間続けた後に、室温放置にて冷却した。0.2Mの炭酸カリウム溶液によって、pH9に調製した前記金コロイド溶液に、抗hCG−α抗体を加えて数分間攪拌した後に、pH9の10%BSA(牛血清アルブミン)溶液を最終1%になる量だけ加えて攪拌することにより、抗体−金コロイド複合体(標識抗体)を調製した。前記標識抗体溶液を4℃、20000Gで50分間遠心分離することによって、標識抗体を単離して、それを洗浄緩衝液(1%BSA・リン酸緩衝液)中に懸濁した後に、再度遠心分離を行って、標識抗体を洗浄単離した。この標識抗体を洗浄緩衝液で懸濁して、0.8μmのフィルタを用いて濾過した後に、当初の金コロイド溶液量の10分の1に調製して、4℃で貯蔵した。
【0097】
前記標識抗体溶液を溶液吐出装置にセットして、抗hCG−β抗体固定化乾燥膜上の抗体固定化位置から離れた位置に塗布した後に、膜を乾燥させた。これによって、抗体固定化膜上に標識抗体保持部3を持つクロマトグラフィ試験片1が得られた。
そして、このクロマトグラフィ試験片1を支持体7に貼り付けた後、クロマトグラフィ試験片1の、上流端部から1.5cm離れた位置から、下流端部から1.0cm離れた位置まで、透明テープ(P.Pテープ:日東電工製)にて反応層表面を密着された状態で覆うことによりクロマトグラフィ測定装置を得る。
【0098】
b)試料の調製
hCGを含まない人男性尿を用意した。この尿中に一定濃度のhCG溶液を加えることにより、さまざまな既知濃度のhCG溶液を調製した。
【0099】
c)クロマトグラフィ測定装置上の呈色度合の測定
クロマトグラフィ測定装置上の試料添加部にhCGを含む尿を40μl程度添加して、クロマトグラフィ試験片1の下流側へと展開処理して、抗原抗体反応をさせて抗体固定化部における呈色反応を行った。この測定装置への試料添加から5分後の呈色状況を目視にて判定した。
【0100】
その結果、試料のクロマト展開は逆流することなく、順調に展開され、hCGの存在に伴う呈色反応が確認できた。
なお、本実施例においては、金コロイドを標識試薬として用いているが、呈色可能な標識試薬であれば、いかなる標識物を用いても良い。
また、本実施例におけるクロマトグラフィ測定装置は、上述のように、ニトロセルロースのような、任意の多孔質性材料を積層または連結して構成される試験片を用いたものである。このような材料からなる試験片は、例えば、抗原抗体反応のような任意の測定原理を用いて、ある特定物質を分析検出し、定性または定量することができる。
【0101】
【発明の効果】
以上のように、本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、クロマトグラフィ測定を行うための試験片であるクロマトグラフィ試験片を有し、該クロマトグラフィ試験片に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の部分が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。これにより、液体試料の浸透方向と浸透状況を均一にし、また一定時間に流れる液体試料と標識試薬が均一な濃度で流出することが可能となるばかりでなく、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0102】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。また、クロマトグラフィ測定装置の表面のみを液体不透過性シート材により被覆するため、クロマトグラフィ測定装置作製時に液体不透過性シート材をクロマトグラフィ試験片の裏面まで巻き込む必要がなく、また、作製したクロマトグラフィシートをクロマトグラフィ試験片大に切断するときには、クロマトグラフィシート表面が液体不透過性シート材により密着された状態で覆われているため切断時の部材の剥離を心配する必要もない。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0103】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面、及び側面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0104】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面、側面、及び下表面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。また、液体不透過性シート材が反応層支持体の役割を兼ね備えることもでき、クロマトグラフィ測定装置を構成する構成要素数の削減が計れる。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0105】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、少なくとも、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側に位置する標識試薬が保持された標識試薬保持部から、クロマト下流側に位置する特異的タンパク質が固定化された特異的タンパク質固定化部までの測定領域が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とした。従って、試薬保持領域から特異的タンパク質保持領域の間では、添加された液体試料は反応を行いながら、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0106】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、複数の多孔質性材料を積層または連結してなることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0107】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、単層の多孔質性材料よりなることを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなる。また、クロマトグラフィ試験片を構成する基本的な部材は単層であるため、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0108】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記単層の多孔質性材料がニトロセルロースであることを特徴とした。従って、添加する液体量は極微量で十分であるばかりでなく、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では、水分蒸発が行われることがなく、液体試料が開放部に達すると試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開されるという効果が、より効率よく行われる。これにより、必要とされてきた試料を吸収する吸水部を下流領域に設ける必要性がなくなる。また、クトマトグラフィ試験片を構成する基本的な部材は、単層であるため、構成部材の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、従来と同等以上の高感度・高性能な低コスト、検体微量化クロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0109】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域を、通気性材料によって覆ったことを特徴とした。従って、添加された液体試料は、毛細管現象によりクロマト下流方向へ浸透してゆき、液体不透過性シート材で密着された状態で覆われた領域では水分蒸発が行われることがなく、液体試料が通気性材料で覆われた下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥する。一方、試料添加部では、液体試料が保持されているため、液体試料は逆流することなくクロマト下流方向へと展開される。また、下流領域を通気性材料で覆ったことにより、露出された反応層を直接手で触れることが出来ないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0110】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記通気性材料が不織布などの任意の多孔質性薄膜材料であることを特徴とした。従って、通気性に優れた薄膜材料であるためそれ自体の吸水力が乏しく、液体試料が下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥することが可能であるばかりか、下流領域を通気性材料で覆ったことにより、露出された反応層を直接手で触れることが出来ないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0111】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記通気性材料が網状組織であることを特徴とした。従って、網状組織であるため通気性に優れている一方でそれ自体の吸水力が乏しく、液体試料が下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥することが可能であるばかりか、下流領域を通気性材料で覆ったことにより、露出された反応層を直接手で触れることが出来ないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0112】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域上に、任意の空間を形成する空間形成部を備えたことを特徴とした。従って、下流領域に空間形成部を備えたことにより、露出された反応層を直接手で触れることが出来ないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。また、下流領域には空間が形成されているので液体試料が下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥することが可能である。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0113】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記空間形成部におけるクロマト下流領域の端部あるいは平行側面あるいは空間形成部上表面の任意の部位に、空気の流入が可能なように間隙部を備えることを特徴とした。従って、下流領域に空間形成部を備えたことにより、露出された反応層を直接手で触れることが出来ないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。また、下流領域には空間が形成され、かつ任意の位置に間隙部が備えられているので通気性がよく、液体試料が下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥することが可能である。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0114】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記空間形成部が液体不透過性の材料で形成されていることを特徴とした。従って、下流領域に液体不透過性材料を用いて空間形成部を備えたことにより、露出された反応層を直接手で触れることがないため、手に付着した物質により反応層が汚染されることがなく、吸水性が維持される。また、試験片の下流領域を手で触った場合でも、液体試料が手に付着する事がない。また、下流領域には空間が形成されているので液体試料が下流領域に達すると、試料の水分蒸発が進み乾燥することが可能である。これにより、下流領域に試料を吸収する吸水部を設ける必要性がなくなり、構成材料の削減を図り、かつ試験片作製工程を簡易化した、より安全かつ衛生的に使用可能な、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
【0115】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片は、抗原抗体反応を利用した免疫クロマトグラフィ試験片であることを特徴とした。従って、測定対象に対する抗体あるいは抗原を入手することで多くの測定対象を測定することが可能な、より安全かつ衛生的に使用できる、従来と同等以上の高感度・高性能な低コストのクロマトグラフィ測定装置を実現することが可能となる。
なお、ここで示す免疫クロマトグラフィ試験片とは、クロマト展開する担体上で、抗原抗体反応を利用して試料溶液中の被検物質の検出を行う試験片を示す。
【0116】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片が、乾式分析要素であることを特徴とした。従って、タンパク質などの変性を最低限抑えることが可能であり、測定装置を長期間保存することが可能である。
【0117】
本発明のクロマトグラフィ測定装置によれば、前記クロマトグラフィ測定装置において、前記クロマトグラフィ試験片が、ワンステップの試験片であることを特徴とした。従って、試料溶液の前処理を必要とせず、試験片に試料溶液を点着するのみでよいので、操作が簡便である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかるクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材を除いたクロマトグラフィ試験片の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかるクロマトグラフィ測定装置の液体不透過性シート材を除いたクロマトグラフィ試験片の構成を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態3にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【図7】本発明の実施の形態4にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図である。
【図8】本発明の実施の形態4にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【図9】本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図である。
【図11】本発明の実施の形態5にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【図12】本発明の実施の形態6にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【図15】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して垂直に切断した切断図である。
【図16】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図17】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置の構成を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態7にかかるクロマトグラフィ測定装置をクロマト方向に対して平行に切断した切断図である。
【符号の説明】
1 クロマトグラフィ試験片
2 試料添加部
3 標識試薬保持部
4 反応層
5 タンパク質固定化部
6 液体不透過性シート材
7 支持体
8 通気性材料
9 空間形成材
10 間隙部
11 空間形成部

Claims (14)

  1. クロマトグラフィ測定を行うための試験片であるクロマトグラフィ試験片を有し、該クロマトグラフィ試験片に添加される被検査物質を定性または定量測定するためのクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側とクロマト下流側の両端領域以外の、上表面、側面、及び下表面が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われており、その下流側端部は、開放された上表面を有するものであることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  2. 請求項1に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    少なくとも、前記クロマトグラフィ試験片の、クロマト上流側に位置する標識試薬が保持された標識試薬保持部から、クロマト下流側に位置する特異的タンパク質が固定化された特異的タンパク質固定化部までの測定領域が、液体不透過性シート材により密着された状態で覆われていることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  3. 請求項1または請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片は、複数の多孔質性材料を積層または連結してなることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  4. 請求項1または請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片は、単層の多孔質性材料よりなることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  5. 請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記単層の多孔質性材料がニトロセルロースであることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  6. 請求項1乃至請求項の何れかに記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域を、通気性材料によって覆ったことを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  7. 請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記通気性材料が不織布などの任意の多孔質性薄膜材料であることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  8. 請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記通気性材料が網状組織であることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  9. 請求項1乃至請求項の何れかに記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    液体不透過性シート材によって覆われていないクロマト下流領域上に、任意の空間を形成する空間形成部を備えたことを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  10. 請求項に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記空間形成部におけるクロマト下流領域の端部あるいは平行側面あるいは空間形成部上表面の任意の部位に、空気の流入が可能なように間隙部を備えることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  11. 請求項または請求項10に記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記空間形成部が液体不透過性の材料で形成されていることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  12. 請求項1乃至請求項11の何れかに記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片は、抗原抗体反応を利用した免疫クロマトグラフィ試験片であることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  13. 請求項1乃至請求項12の何れかに記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片が、乾式分析要素であることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
  14. 請求項1乃至請求項13の何れかに記載のクロマトグラフィ測定装置において、
    前記クロマトグラフィ試験片が、ワンステップの試験片であることを特徴とするクロマトグラフィ測定装置。
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