〔実施の形態1〕
本発明の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。
本実施の形態では、先ず、本願発明の銀合金材料について説明し、続いて、この銀合金材料を用いたTFTアレイ基板および液晶表示装置について説明する。
本願発明の銀合金材料は、ガラス基板等の絶縁性基板上に形成される配線及び/または電極を構成する材料であって、銀を主体とし、少なくとも、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムから選ばれる1種類以上の元素を含むことを特徴としている。
上記の構成の銀合金材料を用いれば、低電気抵抗であり、耐熱性や、ガラス基板への付着力、耐プラズマ性等のプロセス耐性が高い配線及び/または電極を形成できる。
以下に、本願発明の銀合金材料の上述の利点について、実施例1〜9および比較例1、2を参照しながら実証する。
本発明の銀合金材料は、次のとおりの手順で作成し、絶縁性基板上に成膜してプロセス耐性を評価した。
本願発明の銀合金材料の作成と、この銀合金材料の絶縁性基板への成膜は、電子ビーム蒸着機(日本真空技術株式会社、高真空蒸着装置EBX−10D)により蒸着法で行った。
まず、蒸発源として、純度99.9%以上の銀、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムの塊状あるいは粒状の原料を所定の重量比にて混合した。
次いで、混合した原料をモリブデン製のるつぼに入れ、1×10−5Torrより良い真空中にて溶解し、合金化した。
最後に、完全に溶解したことを確認した後、無アルカリガラス基板上に成膜した。なお、成膜時のガラス基板温度は100℃に設定した。また、ガラス基板上に成膜された合金膜の膜厚は、全て0.2μm程度の厚さになるようにした。
本実施の形態では、合金の作成と成膜に、このような方法を用いたが、必ずしもこれに限らない。固溶体または焼結体、その他のターゲットを用いたスパッタ法でもよいし、適切な濃度で金属元素を含む流動性の液体材料の塗布方法、その他の方法でもよい。
このように作成した銀合金膜は、オージェ電子分光装置(パーキングエルマ、SAM670)により、組成を確認した。膜厚方向での組成分布はなく均一であったが、作成した銀合金膜の全体の組成比は原料の混合比から幾らかずれていた。しかしながら、そのずれは本発明の目的、手段、効果等には全く影響を与えない程度である。作成した銀合金膜は、あくまで本発明の代表的な実施例である。
銀とインジウムからなる合金膜については、より正確な組成を知るため、ICP発光分析法により定量分析を行った。その方法は次のとおりである。
まず、試料として、無アルカリガラス基板上に成膜した銀合金膜を、金属製のさじで剥離したものを用いた。剥離前において、ガラス基板上の銀合金膜の厚さは0.2μm程度、得た試料の量は各実施例について10mg前後であった。続いて、この試料を3N−硝酸50mLに溶解したものをICP発光分析の測定液とした。測定装置としては、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPS−1700HVRを使用し、プラズマガスはアルゴンを用いた。
本実施の形態では、銀合金膜のプロセス耐性として、付着力、耐熱性、電気抵抗率、耐プラズマ性を評価した。これらの項目は回路基板上の配線等とするために、最も基本的な項目である。各項目を以下に詳細に説明する。
付着力は、無アルカリガラス基板上に直接成膜して調べた。
本発明のように回路基板に用いることを念頭においているときには、ガラス基板への付着力は有用な指標である。
ここで、付着力の試験は、窒素雰囲気中で200℃、1時間の焼成処理後に行った。焼成後、カットを入れた膜面に粘着テープを貼り、膜面を引き剥がすよう粘着テープを剥離するという方法を用いた。判定は、一部でも膜面に剥れがみられれば不良、全く剥れがみられないときにのみ良とした。
耐熱性の評価は、窒素雰囲気中で300℃、1時間の焼成後の膜表面を電子顕微鏡(日立製作所、S−4100)による観察によって行なった。判定は、膜面に凹凸がまったく発生していない場合には良、膜面の部分的に、膜厚以下の高さの突起が発生している場合をやや良とし、それ以外を不良とした。
電気抵抗率の評価は、窒素雰囲気中で200℃、1時間の焼成処理後の基板について行った。測定機(三菱化学株式会社、ロレスタ−GP)により四探針法で求めた面抵抗値と、別途測定した膜厚から電気抵抗率を求めた。
耐プラズマ性の評価は、ドライエッチング装置(RIE、リアクティブイオンエッチング方式)を用いて行った。具体的には、プロセスチャンバー内に基板を搬送した後、各種のエッチング用ガスを導入しつつ、放電を行った。
評価用条件は、塩素(Cl2)ガス、四フッ化炭素(CF4)ガスと酸素(O2)ガスの混合ガス、酸素(O2)ガスを導入する3条件とした。
以下、この3条件をそれぞれCl2条件、CF4+O2条件、O2条件と称する。放電時間は、それぞれ180秒、60秒、60秒であった。なお、この放電時間は後に述べる5枚マスクプロセスを意識しつつ、意図して厳しい条件に設定している。
耐プラズマ性の判定のため、膜の面抵抗値を調べた。面抵抗値は電気抵抗率の場合と同様に測定した。判定基準としては、面抵抗値が処理前に対して2.5倍以内、2.5倍を超え7倍以内である場合をそれぞれ、良、やや良とし、それ以外を不良とした。
これらの評価項目は、あくまで本発明の銀合金材料の性質を示すために設定した例である。個々の条件は違いを明確にするために、想定される使用条件よりも意図して厳しい条件に設定している。本発明を実施するにあたって、これらの項目の評価が必ず必要というわけでもなく、観察手段、判定基準、条件等の詳細についてもあくまで例である。本発明の適用範囲がこれらの評価項目、個々の条件によって限定されることはない。
本発明の銀合金材料について、評価結果の例を表1、表2において示す。
各表において、比較例1は、銀単体からなる金属膜の例であり、比較例2は、蒸発源に2重量%のアルミニウムを混合した銀合金膜の例である。実施例1ないし9は、蒸発源に、銀に対して、それぞれ10重量%の錫、10重量%の亜鉛、1重量%のインジウム、3重量%のインジウム、5重量%のインジウム、10重量%のインジウム、0.1重量%のインジウム、0.3重量%のインジウム、20重量%のインジウムを混合した銀合金膜の例であり、本発明の実施例である。なお、各原料にはごく微量ながら不純物が含まれるはずであるが、その量は結果に影響を与えるものではないので、不純物についてはその記載を省略する。
まず、ICP発光分析値、付着力と耐熱性の評価結果を以下の表1に示す。
先に説明したICP発光分析法による定量分析の結果では、実施例3ないし実施例8のそれぞれについて、銀に対するインジウムの含有量は、0.5重量%、1.6重量%、3.4重量%、9.3重量%、0.05重量%、0.2重量%であった。
表1のように、比較例1である銀単体からなる膜では、付着力、耐熱性ともに不良である。銀はこれよりも緩やかな250℃1時間の焼成試験においても、はっきりとした表面白濁が生じるなど、著しく耐熱性を欠く。従来、銀を配線として使うことを困難にしてきた理由の一部はここにある。
一方、本発明の実施例1ないし9に示すような、銀に、錫、亜鉛、インジウムを添加した銀合金膜では、全体的にガラス基板への付着力の向上がみられる。インジウムの添加に関しては、実施例3等のように、銀に対するインジウムの含有量がおよそ0.5重量%以上の場合において、はっきりとした付着力の向上がみられる。
耐熱性についても、本発明の実施例1ないし9では全体的に耐熱性の向上がみられる。特に実施例7、実施例8では、それぞれ銀に対するインジウムの含有量は分析値で0.05重量%、0.2重量%と非常に少量であるにも関わらず、耐熱性の向上がみられる。このことから、インジウムの添加は、耐熱性の向上に非常に効果的であることがいえる。
付着力が向上した理由は、本発明の銀合金を構成する錫、亜鉛、インジウム等の元素がごく微量ながらガラス基板に拡散し、界面が消失することで付着エネルギーがバルクの凝集エネルギーに近い大きな値になったためと考えられる。この考えは、本発明の銀合金膜において、基板温度100℃で成膜した状態よりも、200℃1時間で焼成処理した状態のほうが、付着力が大きかったという事実に裏付けられる。つまり、本発明は、銀合金膜中の錫、亜鉛、インジウム等の拡散により付着力を得るという原理に基づく。
なお、本発明の範囲は、本実施例のように、成膜後に焼成するという方法で付着力を得ることに限定されず、成膜時の基板温度を充分に上げておいて付着力を得る場合を含む。
一方、耐熱性が向上した理由は、膜中に錫、亜鉛、インジウムを含んだためで、結晶の格子定数や結晶粒の大きさに変化が生じ、膜中の銀原子の移動が抑制され、粒成長を起こしにくくなったものと考えられる。
ここで、本実施例の銀合金材料において、得られた膜の組成が、混合した元素が銀結晶に溶け込んだ一次固溶体(固溶体)をつくる領域に入るように設定していることも重要である。このような一次固溶体を作る領域に設定しておけば、膜を焼成しても、銀結晶とは別の結晶構造をもつ中間固溶体、金属間化合物が析出しにくく、膜表面での新たな結晶粒の成長が起きにくい。そのため、焼成しても表面性が変わらず、結果として耐熱性が高くなる。
このような一次固溶体をつくる組成範囲は、環境温度にも依存するが、錫、亜鉛、インジウムの場合、それぞれの含有量が、銀に対して11〜14重量%未満、25〜39重量%未満、27〜28重量%未満程度の範囲である。
このように、表1の評価結果から、本発明の銀合金材料は銀と比べて耐熱性が向上し、特にインジウムとの合金の場合には、インジウムを0.5重量%以上含有する場合において付着力の向上がみられた。
また、本発明の銀合金材料は、元素周期表でインジウムと同族であるガリウム、錫と同族の鉛、鉛と性質の良く似たビスマスとの合金であっても良く、同様に優れた付着力と耐熱性を示す。
次に、電気抵抗率と耐プラズマ性を調べた評価結果を以下の表2示す。
表2の評価結果から、電気抵抗率は、実施例6及び9を除いて、概ね7μΩcm以下の低電気抵抗であり、従来のアルミニウム合金と同等か、それ以下であることが分かった。これにより、本発明の銀合金材料が低電気抵抗な配線等の材料として適することがわかる。なお、電気抵抗率は、概ね10μΩcm以下であれば、大型の表示装置用回路基板の材料として実用に耐え得るものである。
特に実施例7、8、3においては、銀に対するインジウムの含有割合が0.5重量%以下であるが、それぞれの電気抵抗が2.2μΩcm、2.3μΩcm、2.7μΩcmと非常に低い値である。アルミニウムでは、バルクの状態においても電気抵抗率が2.7μΩcmであることから、薄膜で2.7μΩcm以下になることはなく、これらはアルミニウムではなし得ない低電気抵抗である。
従って、本発明の銀合金材料のうち、特に銀に対するインジウムの含有割合が0.5重量%以下である場合においては、従来のアルミニウム配線ではなし得ない低電気抵抗配線の形成が可能である。配線の低電気抵抗化が特に要望される場合、例えば液晶TV用などに用いられる液晶表示装置において、本発明の銀合金材料を用いて回路基板を作成するのが良い。
ただし、インジウムの含有量が低いため、耐プラズマ性は充分でなく、一般的には他の金属膜を積層するなどが必要である。基板への付着力に関しても、インジウムの含有量が低いため充分ではないので、下地処理等が必要となる場合がある。
耐プラズマ性については、本発明の実施例1から6、及び9において向上している。特にインジウムについては、およそ0.5重量%以上を含む場合において耐プラズマ性の向上が見られた。ただし、厳密には、プラズマ条件によっては、不良となる合金材料もある。
比較例1の銀単体の場合、比較例2の銀とアルミニウムからなる場合には全て不良であるが、実施例1ではO2条件でやや良、実施例2ではCl2条件で良、O2条件でやや良となった。特に、銀合金として有用なのはインジウムを含むことを特徴とする実施例3から6、及び9の場合である。Cl2条件では、全てで良となるなど、耐プラズマ性を向上させる効果が大きい。インジウム含有量が比較的高い実施例5は、全ての耐プラズマ条件で良であるにもかかわらず、電気抵抗率が6.1μΩcmと低く、プロセス耐性と低電気抵抗性を兼ね備えて非常に有用であることが分かった。一方、実施例6及び9では、電気抵抗率は表中で比較的高いが、耐プラズマ性は実施例5よりもさらに向上した。
このように、耐プラズマ性が向上したのは、銀合金中の錫、亜鉛、インジウム等と、チャンバー内に導入されたガスから供給される塩素、フッ素、酸素等との化合物の蒸気圧が銀の場合よりも低く、それらの化合物が膜面への侵食を遅らせる保護層の役割を果たしたためと思われる。
一方、実施例7及び8のように、銀に対してインジウムを0.5重量%以下の割合で含む場合においては、耐プラズマ性はすべて不良となった。
このように、本発明の銀合金材料は、特にインジウムを0.5重量%以上の割合で含む場合、低電気抵抗性と、耐プラズマ性を兼ね備える材料であるので、特に、TFTアレイ基板上の配線は、耐プラズマ性を必要とされることが多く、本発明は特に有用な材料となる。ただし、本発明の銀合金材料の、錫、亜鉛、インジウム等の構成元素と比率は、必ずしも表中の全ての特性を満たさなければならないわけではなく、場合に応じて必要とされる耐性を満たすように選んでよい。
また、本発明の銀合金材料は、特にインジウムを0.5重量%以下の割合で含む場合、電気抵抗率が2.7μΩcm以下であり、電気抵抗が非常に低い。したがって、特に液晶TV用などに用いられる液晶表示装置用の回路基板の用途に向く。
また、本発明の銀合金材料は、元素周期表でインジウムと同族であるガリウム、錫と同族の鉛、鉛と性質の良く似たビスマスとの合金であっても良く、同様に優れた性質を示す。
以上をまとめ、本発明の銀合金材料は、プロセス耐性として、付着力、耐熱性、低電気抵抗性、耐プラズマ性を兼ね備えた、非常に有用な材料であることがわかった。
なお、これらの評価結果は、あくまで本発明の銀合金材料の性質を示すために設定した条件における結果である。個々の条件は材料間の違いを明確にするために、想定される使用条件よりも意図して厳しい条件に設定している。本発明の適用範囲は表1、表2に示した結果により限定されるものではない。
本発明の銀合金材料は、さらに、アルミニウム、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ネオジムの中から選ばれる元素を含むことを特徴してもよい。これらの元素を添加することにより、耐熱性、耐プラズマ性、付着力をさらに向上させ、最適な合金材料を得ることができる。
本発明の銀合金材料をTFTアレイ基板の配線等の構成材料として用いる場合、望ましい材料は、銀を主体とし、亜鉛を含む銀合金材料である。このように、銀に亜鉛を添加した場合においては、耐熱性、付着力、耐プラズマ性の向上という効果が得られ、TFTアレイ基板の製造プロセスに適する材料となる。
なお、本発明の銀合金材料は、銀と亜鉛の他に、意図して添加したその他の元素を含んでいても良い。本発明は銀に亜鉛を添加することが耐熱性、付着力、耐プラズマ性向上に効果的であるということに基づく。従って、これら以外の他の元素を含む場合においても、亜鉛添加による効果を得られる構成の銀合金材料は、本発明の範囲に含まれる。
また、本発明の銀合金材料をTFTアレイ基板の配線等の構成材料として用いる場合、最も望ましい材料は、銀を主体とし、インジウムを含む銀合金材料である。このように、銀にインジウムを添加した場合においては、銀に対するインジウムの割合を0.5重量%以上の場合、特徴的に耐プラズマ性の大幅な向上という効果が得られ、TFTアレイ基板の製造プロセスに適する材料となる。
本発明の銀合金材料をTFTアレイ基板の配線等の構成材料として用いる場合、低電気抵抗として最も望ましい材料は、特に銀に対して、インジウムを0.5重量%以下の割合で含む材料である。このとき、電気抵抗率が2.7μΩcm以下であり、従来のアルミニウム配線ではなし得ない低電気抵抗配線の形成が可能である。配線の低電気抵抗化が特に要望される場合、例えば液晶TV用などに用いられる液晶表示装置において、本発明の銀合金材料を用いて回路基板を作成するのが良い。
本発明の銀合金材料のさらに優れた特性として、インジウムを適度に含有する場合において、高い可視光反射率を有し、200℃あるいは300℃の焼成後においてもこれを保持する。以下、これについて説明する。
測定用サンプルとしては、表1、2に示した比較例、実施例と同等の銀あるいは銀合金膜、および参考のため比較例3として、同様の手順で作成したアルミニウム膜を用いた。これらは全て無アルカリガラス基板上に成膜され、成膜時のガラス基板温度は100℃設定、膜厚は0.2μm程度の厚さになるようにした。可視光反射率の測定には、分光光度計(日立計測器サービス、U−4100)を用い、380nmから780nmの可視光領域全体にわたって測定を行った。
本発明の銀合金膜の可視光反射率を図20から図25において説明する。これらの図において、横軸は金属膜サンプルに照射した光の波長、縦軸はその光の反射率として可視光反射率を表している。それぞれの図中には成膜完、200℃焼成後、300℃焼成後の反射率が記され、焼成による反射率の変化もわかるようになっている。なお、これらの焼成の処理条件は、クリーンオーブンを用いて、窒素雰囲気中で1時間焼成する条件とした。
結果を詳しく説明すると、まず図20に示すような比較例1(銀)の場合には、先に述べたように耐熱性が著しく不良である。100℃での成膜完では高い反射率であるにもかかわらず、200℃および300℃の焼成後には著しく反射率が下がっている。このため、200℃程度の焼成工程を伴うような製造プロセスにも耐えられず、例えば反射型液晶表示装置の光反射膜用途として用いることは困難であった。
次に、図21に示すような比較例3(アルミニウム)では、光反射率が成膜完、200℃焼成後、300℃焼成後ではほとんど変わらない。アルミニウムは、反射型液晶表示装置の光反射膜用途としても従来よく用いられる材料である。
図22は、本発明の銀合金膜の例で、銀に対してインジウムを0.05重量%含有させた銀合金膜の例である。この場合、図20の銀での結果とは大きく異なり、200℃及び300℃の熱焼成によっても反射率の低下は大幅に小さい。さらに図21のアルミニウム膜の場合と比べると、200℃焼成後においては殆ど全部の波長領域で反射率が高く、300℃焼成後においても、短波長側のごく狭い領域を除き、全体的に反射率が高い。これにより、本実施例の銀合金膜が、可視光反射率が高く、光反射膜として優れることがわかる。
図23も本発明の銀合金膜の例で、銀に対してインジウムを0.2重量%含有させた銀合金膜の例である。この場合、図22の実施例7の場合とほぼ同様の結果である。200℃及び300℃焼成によっても反射率の低下は小さく、アルミニウム膜よりも全体的にみて可視光反射率が高いため、光反射膜として優れる。
図24は、銀に対してインジウムを0.5重量%の割合で含む場合である。200℃焼成によっては、短波長側のごく一部を除き、全体的にみてアルミニウム膜よりも反射率が優れる。ただし、300℃焼成後には特に短波長側で反射率が下がり、アルミニウム膜に対して優位とはいえない。この例のように、銀に対しては、インジウムを適量添加することが良く、インジウムを増やしすぎると、反射率は低下する。
図25は、銀に対してインジウムを1.6重量%の割合で含む場合である。この場合、インジウムの含有量が増加したため、全体的に反射率が下がっている。従って、アルミニウムに対して優位とはいえない。
以上をまとめると、本発明のうち、インジウムを0.5重量%以下の割合で含有する場合、200℃焼成によっても反射率が成膜完の状態から僅かしか変化せず、アルミニウムと比べてもほぼ可視光領域全体にわたって反射率が高い。このため、光反射膜用途に適する。
また、本発明のうち、インジウムを0.2重量%以下の割合で含有する場合、300℃焼成によっても反射率の低下が抑えられ、アルミニウムと比べてもほぼ可視光領域全体にわたって反射率が高い。このため、特に耐熱性が必要な場合の光反射膜用途に適する。
なお、本発明の銀合金材料は、銀とインジウムの他に、意図して添加したその他の元素を含んでいても良い。本発明は銀にインジウムを添加することが耐プラズマ性向上に最も効果的であるということに基づく。従って、これら以外の他の元素を含む場合においても、インジウム添加による効果を得られる構成の銀合金材料は、本発明の範囲に含まれる。
本発明の範囲は、その実施形態として、銀と亜鉛とインジウムを含む材料である場合、銀と錫とインジウムを含む材料である場合、銀と亜鉛と錫を含む材料である場合に及ぶ。
本発明の銀合金材料は、TFTアレイ基板上の配線等を構成する材料として好適に用いられる。そして、このTFTアレイ基板は、電子装置の一つである液晶表示装置に好適に用いられる。
本実施の形態にかかるTFTアレイ基板および液晶表示装置について、図1ないし図4を参照しながら以下に説明する。
本実施の形態にかかる液晶表示装置は、図1に示す画素を有している。なお、同図は、液晶表示装置のTFTアレイ基板11における1画素の概略構成を示す平面図である。また、同図におけるA−A線矢視断面図を図2に示す。
これら図1、2に示すように、TFTアレイ基板11では、ガラス基板(絶縁性基板)12上において、ゲート配線13とソース配線14とがマトリクス状に設けられ、それらの交差部近くにスイッチング素子であるTFT15が設けられている。また、隣り合うゲート配線13の間には補助容量配線16が設けられている。
図2に示すように、ガラス基板12上には、ゲート配線13から分岐してなるゲート電極17、および補助容量配線16が形成され、それらの上にゲート絶縁層18が形成されている。
ゲート電極17上には、上記ゲート絶縁層18を介して、アモルファスシリコン層19、n+型シリコン層20、ソース電極21、ドレイン電極配線22が形成され、TFT15が形成される。ここで、ソース電極21はソース配線14から分岐して形成される。
ドレイン電極配線22は、TFT15からコンタクトホール23まで延び、TFT15のドレイン電極となる役割と、TFT15と画素電極24を電気的に接続する役割と、コンタクトホール23で補助容量配線16との間に電気容量を形成する役割とを有する。さらに、この上層に、TFT15を覆う保護層25と、平坦化等のための層間絶縁層26と、液晶等に電圧を印加するための画素電極24が形成される。
以下、このような画素が設けられるガラス基板12上の領域を画素形成領域61と称し、後の図4中に示す。
また、本実施の形態にかかる液晶表示装置は、図3(a)に示す端子部28を有している。端子部28は、TFTアレイ基板11に外部回路基板、駆動用ドライバーIC等を電気的に接続するための接続部である。なお、同図は、液晶表示装置のTFTアレイ基板11における1端子部の概略構成を示す平面図である。また、同図におけるB−B線矢視断面図を図3(b)に示す。
図3(b)に示すように、端子部28は、ガラス基板12側から、端子配線30、ゲート絶縁層18、端子電極29を配置したように構成される。端子電極29は、外部回路基板、駆動用ドライバーICとの電気的接続を良好にする等の目的で配置される。端子配線30は、画素形成領域61の中の、ゲート配線13、ソース配線14等と接続されている。
以下、このような端子部28が設けられるガラス基板12上の領域を端子部形成領域62と称し、次の図4中に示す。
図4は、TFTアレイ基板11の平面図であり、画素形成領域61、端子部形成領域62は、ガラス基板12上に図示のように配置される。画素形成領域61と端子部形成領域62は、それぞれ図1から図3に示したような画素と端子部を多数備えている。
本実施の形態において、TFTアレイ基板11の製造には、例えばインクジェット方式のような、形成する層の材料を吐出あるいは滴下するパターン形成装置が使用される。このパターン形成装置は、図5に示すように、基板31(前記ガラス基板12に相当)を載置する載置台32を備え、インクジェットヘッド33と、インクジェットヘッド33をX方向に移動させるX方向駆動部34、およびY方向に移動させるY方向駆動部35とが設けられている。インクジェットヘッド33は、載置台32上の基板31上に対して、例えば配線材料を含む流動性の液滴を吐出する。
また、上記パターン形成装置には、インクジェットヘッド33にインクを供給するインク供給システム36と、インクジェットヘッド33の吐出制御、X方向駆動部34およびY方向駆動部35の駆動制御等の各種制御を行なうコントロールユニット37とが設けられている。コントロールユニット37からは、XおよびY方向駆動部34,35に対して塗布位置情報が出力され、インクジェットヘッド33のヘッドドライバー(図示せず)に対して吐出情報が出力される。これにより、XおよびY方向駆動部34,35に連動してインクジェットヘッド33が動作し、基板31上の目的位置に目的量の液滴が供給される。
上記のインクジェットヘッド33は、ピエゾアクチュエータを使用するピエゾ方式のもの、ヘッド内にヒータを有するバブル方式のもの、あるいはその他の方式のものであってもよい。インクジェットヘッド33からのインク吐出量の制御は、印加電圧の制御により可能である。また、液滴吐出手段は、インクジェットヘッド33に代えて、単に液滴を滴下させる方式のもの等、液滴を供給可能なものであれば方式は問わない。あるいは基板上にあらかじめ形成しておいた配線形成材料に対する親液領域と非親液領域を利用して、所定のパターンを得る塗布あるいは浸漬のような方式であってもよい。
次に、本実施の形態の液晶表示装置におけるTFTアレイ基板11の製造方法について説明する。
本実施の形態において、TFTアレイ基板11は、図6に示すように、ゲート配線前処理工程101、ゲート配線形成工程102、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104、ソース・ドレイン配線前処理工程105、ソース・ドレイン配線形成工程106、チャネル部加工工程107、保護膜・層間絶縁層成膜工程108、保護膜加工工程109、および画素電極形成工程110からなる。
(ゲート配線前処理工程101)
このゲート配線前処理工程101では、上述したパターン形成装置を使用して、ゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16等を形成するための前処理を行なう。これを図7(a)及び図8(a)を参照しながら以下に説明する。図7(a)、図8(a)は、TFTアレイ基板11が備えるガラス基板12の平面図である。
本ゲート配線前処理工程101では、これらの図中に示されるゲート配線形成領域41、ゲート電極形成領域42、補助容量配線形成領域43、および端子配線形成領域44に、パターン形成装置からの流動性配線材料の吐出(滴下)により適切に流動性の配線材料が塗布されるための処理を行なう。
この処理には大まかに次のようなものがある。
第1には基板(ガラス基板12)上に、流動性の配線材料に対して基板が濡れ易いか、弾き易いかの性質を付与する。ゲート配線形成領域41、ゲート電極形成領域42、補助容量配線形成領域43、および端子配線形成領域44を形成するための親水領域(親液領域)、それらの非形成領域としての撥水領域(撥液領域)とをパターン化する親撥水処理(親撥液処理)である。
第2には液流を規制するガイド、即ちゲート配線形成領域41等に沿ったガイドを形成する処理である。
前者では、二酸化チタンを用いた光触媒による親撥液処理が代表的である。後者では、レジスト材料を用い、フォトリソグラフィによりガイド形成を行なう。さらに、上記ガイドあるいは基板面に親撥液性を付与するために、それらをCF4、O2ガスを導入したプラズマ雰囲気中に曝す処理を行なうことがある。ここで使用するレジストは、配線形成後、剥離する。
ここでは、次のように、二酸化チタンを使用した光触媒処理を行った。即ち、TFTアレイ基板11のガラス基板12には、フッ素系非イオン界面活性剤であるZONYL FSN(商品名:デュポン社製)をイソプロピルアルコールに混合したものを塗布した。また、ゲート配線パターン等のマスクには光触媒層として二酸化チタン微粒子分散体とエタノールの混合物とをスピンコートで塗布し、150℃で焼成した。そして、上記マスクを使用し、ガラス基板12に対してUV光による露光を行った。露光条件としては、365nmの紫外光を使用し、70mW/cm2の強度で2分間照射した。
ここで、二酸化チタンによる親撥液領域の形成について、図9(a)〜図9(d)を参照しながら以下に説明する。
図9(a)は、ガラス基板1に、スピンコート法等を用いて、フッ素系非イオン界面活性剤であるZONYL FSN(商品名、デュポン社製)をイソプロピルアルコールに混合した第1の膜2を塗布したところを示している。
図9(b)は、透明ガラス基板3上に設けられたゲート配線パターン等のマスク4でUV露光をしているところであるが、マスク4のパターン面には、光触媒層5として、上記二酸化チタン微粒子分散体とエタノールの混合物を塗布し、150℃で熱処理してある。
上記条件による露光後は、図9(c)および図9(d)に示すように、UV露光された部分6だけが濡れ性が向上し、親液領域が形成された。
(ゲート配線形成工程102)
次に、ゲート配線形成工程102について、図7(b)(c)及び図8(b)(c)を参照しながら以下に説明する。
図7(b)(c)、図8(b)(c)は、ゲート配線形成工程102を完了した状態を示す図である。図7(b)、図8(b)は、それぞれ、ガラス基板12上の画素形成領域61、端子部形成領域62における平面図である。図7(c)、図8(c)は、それぞれ図7(b)、図8(b)におけるC−C線矢視断面図、D−D線矢視断面図である。
本ゲート配線形成工程102では、ゲート配線形成領域41等の親液領域に、流動性の配線材料を塗布した。これには、パターン形成装置を使用し、流動性の配線材料には、有機膜をコーティングした、銀インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させたものを用いた。このときの流動性配線材料に含まれる銀とインジウムは、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定した。配線幅は概ね50μmでインクジェットヘッド33からの配線材料の吐出量は40plに設定した。
なお、この流動性配線材料に含まれる銀とインジウムの割合は、後のゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104、チャネル部加工工程107、保護膜加工工程109でドライエッチングが行われることを考慮し、耐プラズマ性を有するように選んでいる。ただし、その割合は製造プロセスや求めるTFTアレイ基板の性能等に応じて適切に選び得るものである。
親液処理された面では、インクジェットヘッド33から吐出された流動性の配線材料が、ゲート配線形成領域41に沿って広がるので、吐出間隔を概ね100〜500μm間隔で適宜調整して塗布を行った。塗布後に300℃で1時間焼成を行い、銀とインジウムから構成されるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16、端子配線30を形成した。
ここで、ゲート配線13等は、銀とインジウムから構成されているので、300℃の条件に対して充分な耐熱性を有し、表面平滑性が失われない。従来の銀では、著しく表面平滑性が失われるため、上層とのリークが発生し、不良となっていた。
また、ゲート配線13等は、ガラス基板12に直接接するが、本実施例においては銀とインジウムから構成されているので、ガラス基板への付着力が充分であり、後の工程で剥離することがない。従来の銀では、付着力が小さかったため、後の工程で剥離が生じ、不良となっていた。
なお、焼成温度を300℃に設定したのは、次段のゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103において約300℃の処理熱が加わるためである。したがって、焼成温度はこの温度に限定されるものではない。
(ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103)
続いて、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103について、図10(a)(b)及び図11(a)(b)を参照しながら以下に説明する。
図10(a)(b)及び図11(a)(b)は、ゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103が完了した状態のガラス基板12を示す図である。図10(a)、図11(a)は、それぞれ、ガラス基板12上の画素形成領域61、端子部形成領域62における平面図である。図10(b)、図11(b)は、それぞれ図10(a)、図11(a)におけるE−E線矢視断面図、F−F線矢視断面図である。
このゲート絶縁膜・半導体膜成膜工程103では、ゲート配線形成工程102を経たガラス基板12上に、後にそれぞれ、ゲート絶縁層18となるゲート絶縁膜45、アモルファスシリコン層19となるアモルファスシリコン膜46、およびn+型シリコン層20となるn+型シリコン膜47を連続成膜する。ここで、ゲート絶縁膜45は窒化シリコンからなる膜である。これらの膜は全てCVD法により成膜して、それぞれの膜厚は順に、0.3μm、0.15μm、0.04μmとした。成膜温度は300℃であった。
ゲート配線13には、先の工程で述べたように、銀以外に添加したインジウムによって耐熱性が向上しており、新たな結晶成長が抑制される。そこで、300℃の高温条件下でも表面が荒れることも無く、銀単体で形成されるよりも、表面性の良いゲート配線13が得られる。このため、ゲート絶縁層18を介してこの上に形成される半導体層27やソース電極21とリークする事が無くなり、歩留まりが向上すると共に、TFTの特性も安定する。
(ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104)
次に、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104について、図12(a)(b)及び図13(a)(b)を参照しながら以下に説明する。
図12(a)(b)及び図13(a)(b)は、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104が完了した状態を示す図である。図12(a)、図13(a)は、それぞれ、ガラス基板12上の画素形成領域61、端子部形成領域62における平面図である。図12(b)、図13(b)は、それぞれ図12(a)、図13(a)におけるG−G線矢視断面図、H−H線矢視断面図である。
このゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104では、フォトリソグラフィを用いて加工した。
まず、第1のフォトリソグラフィにより、アモルファスシリコン膜46、n+型シリコン膜47を加工した。これらは、画素形成領域61においてはゲート電極17上方に島状に残されるように、端子部形成領域62においては残されないように加工される。これにより、アモルファスシリコン層19、後にn+型シリコン層20となるn+型シリコン加工膜48を得た。エッチングはドライエッチング法により、六フッ化硫黄(SF6)ガス、塩化水素(HCl)ガスの混合ガスを導入して行った。ここまでは、ゲート絶縁膜45が基板の全面を覆っているので、端子配線30等がドライエッチング雰囲気中に露出することはない。
続いて、第2のフォトリソグラフィによって、ゲート絶縁膜45を加工した。端子部形成領域62において、部分的にゲート絶縁膜45をエッチングし、ゲート絶縁層18、開口部49を得た。エッチングはドライエッチング法により、CF4ガス、O2ガスの混合ガスを導入して行った。
このゲート絶縁膜45のドライエッチングにおいては、端子部形成領域62に形成する開口部49、図示しないがその他の電気的接続のための部分で、端子配線30がドライエッチング雰囲気中に曝される。これは、ドライエッチング法は制御性の良い方法ではあるが、実際の製造ではオーバーエッチングを防ぎきれないことによる。
ここで、従来の技術である銀によって端子配線30を形成したのでは、耐プラズマ性を有しない。そのため、開口部49で端子配線30が大きくエッチングされ、不良となる。これに対して、本実施の形態においては、端子配線30は銀とインジウムから構成され、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定している。このため、耐プラズマ性を有し、このようなドライエッチング処理に耐えることができる。
(ソース・ドレイン配線前処理工程105)
次に、ソース・ドレイン配線前処理工程105について、図14(a)を参照しながら以下に説明する。図14(a)は、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104を経たガラス基板12にソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成するための配線ガイド52を形成した状態を示す平面図である。
本ソース・ドレイン配線形成工程106では、端子部形成領域62に配線等を形成しないので、ここでは画素形成領域61のみについて説明する。
この工程では、ソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成する領域(ソース・ドレイン形成領域53)を除くように配線ガイド52を形成する。配線ガイド52はフォトレジスト材料を用いて形成した。即ち、フォトレジストをゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104を経たガラス基板12上に塗布し、プリベークを行った後、フォトマスクを用いて露光、現像を行い、次にポストベークを行った。ここで形成した配線ガイド52は、ソース配線14、ソース電極21を形成する領域の線幅が10μm、ドレイン電極配線22を構成する領域の線幅が10μmから40μmとなるように形成した。ソース電極21、ドレイン電極配線22の間隔、すなわちTFTのチャネル部51の長さは4μmとなるようにした。
なお、パターン形成装置により塗布される配線材料が下地面となる面に良く馴染むように、ゲート絶縁層18の上面には、酸素プラズマにて親液処理を施すとともに、配線ガイド52にはCF4プラズマ中に曝すことにより撥液処理を施しても良い。
また、上記の配線ガイド52の形成に代えて、前記ゲート電極形成に用いた光触媒による親撥液処理方法にて、配線あるいは電極のパターンに応じた親撥液処理を施してもよい。
(ソース・ドレイン配線形成工程106)
続いて、ソース・ドレイン配線形成工程106について、図14(b)(c)を参照しながら以下に説明する。図14(b)(c)は、本ソース・ドレイン配線形成工程106が完了した状態を示す図である。図14(b)は、ガラス基板12上の画素形成領域61における平面図である。図14(c)は、図14(b)におけるI−I線矢視断面図である。
本ソース・ドレイン配線形成工程106でも、端子部形成領域62に配線等を形成しないので、画素形成領域61のみについて説明する。
このソース・ドレイン配線形成工程106は、前工程で設けた配線ガイド52を利用して、ソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成する工程である。塗布装置には図5に示すようなパターン形成装置を用いた。
このとき、流動性の配線材料には、有機膜をコーティングした、銀インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させたものを用いた。このときの流動性の配線材料に含まれる銀とインジウムは、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定した。
なお、この流動性の配線材料に含まれる銀とインジウムの割合は、後のチャネル部加工工程107、保護膜加工工程109でドライエッチングが行われることを考慮し、耐プラズマ性を有するように選んでいる。ただし、その割合は製造プロセスや求めるTFTアレイ基板の性能等に応じて適切に選び得るものである。
ここでは、インクジェットヘッド33からの流動性の配線材料の吐出量を2plに設定した。形成膜厚は0.3μmとした。焼成の温度は、アモルファスシリコン膜46等が約300℃で成膜されたことから、これよりも低い温度200℃とした。配線ガイド52は、有機溶媒を用いて除去した。
(チャネル部加工工程107)
次いで、チャネル部加工工程107について、図15を参照しながら以下に説明する。図15は、本チャネル部加工工程107が完了した状態を示す図であり、図14(b)中のI−I線の位置に相当する矢視断面図である。
本チャネル部加工工程107では、TFTのチャネル部51の加工を行なう。この処理は、塩素ガスを用いたドライエッチングによって行われるが、このとき新たなフォトリソグラフィは行なわず、ソース電極21、ドレイン電極配線22のパターンを利用して加工を行なう。
本実施の形態では、前工程にインクジェット装置のようなパターン形成装置を用いている。このようにソース配線14、ソース電極21、およびドレイン電極配線22を形成した場合、これらの上にレジストを残しておくことが工程上不可能である。従って、このチャネル部加工工程107においては、これらのソース配線14等自体をマスクとしてチャネル部51の加工を行なうので、これらのソース配線14等は、エッチング開始から終了までの長時間にわたりドライエッチング雰囲気に曝される。
つまり、特にインクジェット装置のようなパターン形成装置を用いたような場合においては、ソース配線14等には高いドライエッチング雰囲気に対する耐性(耐プラズマ性)が要求される。
従来の銀単体で構成するソース配線14等では、耐プラズマ性を有しないので、配線のほとんどがエッチングされて目的の導電性が得られないため、不良となっていた。これに対して、本実施の形態においては、ソース配線14等は銀とインジウムから構成され、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定している。このため、耐プラズマ性を有し、このようなドライエッチング処理に耐えることができる。
このように、本発明の銀とインジウムから構成される配線材料は、高い耐プラズマ性をもつので、従来では難しかったパターン形成装置を用いたTFTアレイ基板の製造方法を容易にする。
(保護膜・層間絶縁層成膜工程108)
続いて、保護膜・層間絶縁層成膜工程108について、図16(a)(b)及び図17(a)(b)を参照しながら以下に説明する。図16(a)(b)及び図17(a)(b)は、本保護膜・層間絶縁層成膜工程108が完了した状態を、示す図である。図16(a)、図17(a)は、それぞれ、ガラス基板12上の画素形成領域61、端子部形成領域62における平面図である。図16(b)、図17(b)は、それぞれ図16(a)、図17(a)におけるJ−J線矢視断面図、K−K線矢視断面図である。
本保護膜・層間絶縁層成膜工程108では、まず、前工程を経たガラス基板12上に、CVD法により窒化シリコン膜55を成膜した。このときの基板温度は200℃に設定している。
次に、この窒化シリコン膜55の上に、感光性アクリル樹脂材料を塗布した。続いて、マスクを用いた露光と、現像と、焼成とを行なうことで、所定のパターンをもつ層間絶縁層26を得た。このとき、ドレイン電極配線22と補助容量配線16の重なる部分には、開口部56を設けている。一方、端子部形成領域62では、層間絶縁層26は全面で形成されない。
(保護膜加工工程109)
次いで、保護膜加工工程109について、図18(a)(b)を参照しながら以下に説明する。図18(a)(b)は、本保護膜加工工程109が完了した状態を示す図である。図18(a)(b)は、それぞれ図16(a)、図17(a)におけるJ−J線、K−K線に示す位置での矢視断面図である。
本保護膜加工工程109では、保護膜・層間絶縁層成膜工程108で形成された窒化シリコン膜55を、層間絶縁層26のパターンで加工する。画素形成領域61においては、開口部56直下にある窒化シリコン膜55はエッチングされ、保護層25と、コンタクトホール23を得る。一方、端子部形成領域62においては、全面において窒化シリコン膜55はエッチングされ、取り除かれる。エッチングはドライエッチング法により、CF4ガス、O2ガスの混合ガスを導入して行った。
この窒化シリコン膜55のドライエッチングにおいては、コンタクトホール23や、端子部28にある開口部49において、ドレイン電極配線22や、端子配線30の一部がドライエッチング雰囲気に曝される。これは、ドライエッチング法は制御性の良い方法ではあるが、実際の製造ではオーバーエッチングを防ぎきれないことによる。
従来の技術である銀は、耐プラズマ性を有しない。従って、この場合には、ドレイン電極配線22や、端子配線30の一部が大きくエッチングされ、不良となる。これに対して、本実施の形態においては、ドレイン電極配線22や、端子配線30は銀とインジウムから構成され、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定している。このため、耐プラズマ性を有し、このようなドライエッチング処理に耐えることができる。
(画素電極形成工程110)
最後の工程として、後に画素電極24、端子電極29となるITO(インジウム錫酸化物)膜をスパッタ法によって成膜した。このときの基板温度は200℃とした。続いて、フォトリソグラフィを用いてこのITO膜をパターニングし、図1、図2、図3(a)(b)及び図4に示されるTFTアレイ基板11を得た。
このように本発明の材料は、従来の銀単体にはない優れたガラス基板への付着力をもつため、一連の製造プロセスに耐え、ゲート配線等の剥離による不良が生じない。
また、本発明の材料は、従来の銀単体にはない優れた耐熱性をもつため、本実施例のような300℃の高温条件下に基板が曝される場合でも表面が荒れることが無く、表面平滑性の良いゲート配線13、補助容量配線16、ゲート電極17等が得られる。このため、ゲート絶縁層18を介してこの上に形成されるソース配線14、半導体層27、ソース電極21等とリークする事が無くなり、歩留まりが向上すると共に、TFTの特性も安定する。
そして、何よりも本発明の材料が、高い耐プラズマ性を備えることが、このような製造プロセスを可能にしている。
本実施の形態においては、ゲート絶縁膜・半導体膜加工工程104におけるゲート絶縁膜45のエッチング、チャネル部加工工程107におけるn+型シリコン加工膜48のエッチング、保護膜加工工程109における窒化シリコン膜55のエッチングの合計3つの工程でドライエッチングが用いられている。このとき、従来の銀単体により配線、電極等を形成していた場合には、オーバーエッチング時、あるいはその他の膜のエッチングマスクとされる時にエッチングされ、不良となっていた。ところが、本実施の形態のように、銀とインジウムを含む本発明の配線材料は優れた耐プラズマ性をもっているため、不良とならない。
このように、TFTアレイ基板の製造に際しては、ドライエッチングが多用され、それに伴い、配線、電極等を構成する材料として高いドライエッチング耐性(耐プラズマ性)が要求される。本発明の銀を主体とし、インジウムを含む材料は、高い耐プラズマ性を有し、特にTFTアレイ基板上の配線、電極等を構成する材料として非常に優れる。
また、本発明の材料は、本実施の形態のようにソース配線14、ソース電極21等をインクジェット方式のようなパターン形成装置によって描画し、形成する場合には特に有効である。このような場合、ソース配線14等はn+型シリコン層20の形成のためのエッチングマスクとされるために、エッチングの開始から終了の長時間にわたって、ドライエッチング雰囲気に曝される。したがって、従来の銀単体を使っている場合にはこのようなプロセスは難しかった。しかし、本発明の材料はこのようなパターン形成装置によってTFTアレイ基板を製造することを可能にする。
このように、本発明の銀合金材料は、インクジェット装置のような塗布装置を用いた製造プロセスに特に適し、流動性の配線材料に含まれて有益に用いられる材料である。なお、後に述べるように、パターン形成装置を用いないで行なう製造方法においても、同様に有益に用いられる材料である。
本実施の形態では、合計6回にわたってフォトマスクを使用し、露光、現像工程を行なう6枚マスクプロセスである。より低コストでTFTアレイ基板を生産するために、これを1回減らした5枚マスクプロセスも幅広く用いられている。この場合、ハーフトーン露光などを用いない一番容易な方法は、ゲート絶縁膜45と窒化シリコン膜55を連続してエッチング加工することでゲート絶縁層18と保護層25を形成する方法である。しかしながら、この場合には特にドレイン電極配線22にできる露出部は長時間ドライエッチング雰囲気中に曝され、過酷な使用条件に耐える必要がある。
この理由を考えるために、エッチング中の基板の様子を考える。まず、窒化シリコン膜55をエッチングしている間は全面に膜があるため、課題はない。しかし、これに連続するゲート絶縁膜45のエッチング中には、例えばドレイン電極配線のコンタクトホール23にできる露出部が、エッチングの開始から終了までつねにドライエッチング雰囲気中に直接曝される。これは非常に長時間であり、過酷なプロセス条件である。
したがって、このような5枚マスクプロセスの場合には特に、ドレイン電極配線22には高い耐プラズマ性が要求されるが、銀とインジウムを含む銀合金材料に代表される本発明の銀合金材料は、高い耐プラズマ性を備えるので、そのような場合においても使用することができ、使用範囲は広い。
なお、本実施の形態は、6枚マスクプロセスで、端子配線30をゲート配線13等と同一工程で形成する形態であるが、本発明の範囲はこれに限定されない。ゲート絶縁層18、または保護層25となる窒化シリコン膜を基板全面に成膜し、ドライエッチングによって部分的に取り除く現在のほとんどの製造方法においては、電気的接続のためにこれらを取り除く部分が必ずあり、その下に配置される電極、配線等にはオーバーエッチングに対する耐プラズマ性が必ず要求される。本発明は、耐プラズマ性の優れた材料を提供し、これらのTFTアレイ基板の製造プロセスに対して優れた効果を発揮する。
本実施の形態では、流動性の配線材料には、有機膜をコーティングした、銀インジウム合金微粒子を有機溶媒中に分散させたものを用いた。このときの流動性の配線材料に含まれる銀とインジウムは、銀に対するインジウムの割合が約5重量%となるように設定した。ただし、この銀に対するインジウムの割合は、製造プロセスに応じて適切な耐プラズマ性を有するように、あるいは求めるTFTアレイ基板の性能等に応じて、適切に選び得るものである。
また、この流動性の配線材料の形態は、銀とインジウムを、銀インジウム合金の微粒子として含む形態に限られない。銀の微粒子、インジウムの微粒子を別々に作成し、溶媒中に独立に分散させた形態でもよい。また、必ずしも微粒子に限られず、銀、あるいはインジウムが、金属化合物の形で溶媒中に含まれる形態であってもよい。
本実施例では、銀とインジウムを含む銀合金材料によって、ソース配線14、ゲート配線13等の配線、電極等を形成したが、これに限らず、銀と亜鉛を含む銀合金材料であっても良い。銀と、少なくとも、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムから選ばれる1種類以上の元素を含むことを特徴とする銀合金材料によって、ゲート配線13等を形成してもよい。また、これらの元素に加えて、少なくとも、アルミニウム、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ネオジムの中から選ばれる元素を含むことを特徴とする銀合金材料であってもよい。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について、図6及び図19(a)(b)を参照しながら以下に説明する。
前記実施の形態1においては、ゲート配線形成工程102、ソース・ドレイン配線形成工程106において、インクジェット方式のようなパターン形成装置が用いられた。
本実施形態にかかるTFTアレイ基板71は、実施の形態1の場合と同様に、図6に示される製造工程図のように作成されるが、違いはゲート配線形成工程102において、2種類以上の流動性の配線材料を用いて、基板内の各部で組成の異なる配線等を形成すること(塗り分け)を行なう点である。
以下の説明において、実施の形態1と実質的に同様の機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、ここでは説明を省略する。
図19(a)(b)に本実施の形態におけるTFTアレイ基板71を示す。図19(a)は、TFTアレイ基板71の端子部形成領域62での平面図であり、図19(b)は、図19(a)中のL−L線矢視断面図である。図4に示す画素形成領域61に形成される画素部分は、実施の形態1と同様に構成される。図19(a)(b)のように、本実施の形態のTFTアレイ基板71は、端子配線72は端子配線接続部73と接し、これらは電気的導通を有する。
端子配線72は、ゲート絶縁層18に覆われるため、プロセス耐性のうち、耐熱性と、ガラス基板への付着力を有するように選んでおけばよい。耐プラズマ性については、ドライエッチング雰囲気に曝されないので必要ないのである。一方、特に大型の液晶表示装置に使用される回路基板を作成するためには、なるべく端子配線72の電気抵抗を小さくしておきたい。このような理由で、端子配線72は、銀に対するインジウムの含有量が3重量%となるように構成した。この部分の電気抵抗率は約6μΩcmである。また、画素形成領域61にあるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16も、端子配線72と同じ理由で、より低電気抵抗となるように、銀に対するインジウムの含有量が3重量%となるように構成した。
一方、端子配線接続部73は、電気的接続のためのエッチング工程において、オーバーエッチングにより、ドライエッチング雰囲気に曝される。そのため、耐プラズマ性を重視し、銀に対するインジウムの含有量が10重量%となるように構成した。この端子配線接続部73は、TFTアレイ基板上のゲート配線13や、ソース配線14、端子配線72よりもずっと短く、電気抵抗率は他の部分よりも大きくても良い。
もちろん、実施の形態1と同じように、端子配線72と端子配線接続部73は、両方とも同じ構成で、すなわち銀に対するインジウムの含有量が5重量%となるように構成しても良い。ところが、本実施の形態のように個々の部分に必要とされる性能に応じて塗り分けを行なうことにより、全体としてより低電気抵抗な配線、電極等を形成できるため、より大型の回路基板、より大型の表示装置等が実現できるメリットがある。
本実施の形態の製造方法を以下に説明する。
先に述べたとおり、本実施の形態でのTFTアレイ基板71は、前記実施の形態1の場合とほぼ同様に作成されるが、違いはゲート配線形成工程102において、流動性の配線材料の塗り分けを行なう点である。これは、図5に示すようなパターン形成装置に、少なくとも2種類の流動性の配線材料を吐出する機能をもたせておく事により実現する。すなわち、インクジェットヘッド33を少なくとも2つ設けるか、同一のインクジェットヘッド33内に2種類の流動性の配線材料を扱えるようにしておき、インク供給システム36、コントロールユニット37、吐出位置情報等もこれに対応させておくことにより実現できる。
このようなパターン形成装置を用いて、銀に対するインジウムの含有量が異なる2種類の流動性の配線材料を、実施の形態1と同様に吐出した。端子配線72を形成するための領域には、端子配線72となったときに、銀に対するインジウムの含有量が3重量%となるような流動性の配線材料を吐出した。一方、端子配線接続部73を形成するための領域には、端子配線接続部73となったときに、銀に対するインジウムの含有量が10重量%となるような流動性の配線材料を吐出した。一方、画素形成領域61にあるゲート配線13、ゲート電極17、補助容量配線16を形成するための領域には、端子配線72と同じ流動性の配線材料を吐出した。吐出後、実施の形態1と同様に300℃で1時間焼成を行い、所定の端子配線72、端子配線接続部73等を得た。
本実施の形態では、インクジェット方式のようなパターン形成装置が基板面内で塗り分けができること、同一工程時に形成される配線等がそれぞれの部分で異なる耐プラズマ性または導電性を必要としていること、そして本発明の材料のインジウム含有量と導電性とプロセス耐性の関係をうまく組合せている点が重要である。これにより、製造が容易で、良好な電気的特性をもつ大型のTFTアレイ基板の製造が可能となる。
なお、本実施の形態では、端子配線72と端子配線接続部73は、図19(a)(b)に示されるようなインジウム含有量の異なる境界74をもっているが、これに限らない。インジウム含有量が境界付近においてなだらかに変化してもよい。その形成方法としては、流動性の配線材料が互いに自然に混合してもよいし、交互に2種類を吐出するなど意図して混合しても良い。さらに、境界74の位置は、必ずしも図の位置に限るものではない。実質的に上記のような効果が得られるように、多少なりとも違う部分で接続されていても良い。
もちろんTFTアレイ基板71として必要、かつ製造工程中にドライエッチング雰囲気に曝される部分で、インジウム含有量を増やした配線、電極等を設けるということが、本実施の形態の重要な点である。
このように、本発明の銀合金材料は、銀に対するインジウムの含有量が例えば1重量%や、3重量%のように比較的低い場合であっても、塗り分けを行なうことで多くの製造プロセスに対応し、ゲート配線13等の配線、電極を構成する、特に低電気抵抗な材料として適切に用いられ得るものである。
また、本実施の形態での流動性の配線材料の形態は、銀とインジウムを、銀インジウム合金の微粒子として含む形態に限られない。銀の微粒子、インジウムの微粒子を別々に作成し、溶媒中に独立に分散させた形態でもよい。また、必ずしも微粒子に限られず、銀、あるいはインジウムが、金属化合物の形で溶媒中に含まれる形態であってもよい。
なお、本実施の形態では、銀とインジウムを含む銀合金材料によって、ゲート配線13等を形成したが、これに限らず、銀と亜鉛を含む銀合金材料であっても良い。銀と、少なくとも、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムから選ばれる1種類以上の元素を含むことを特徴とする銀合金材料によって、ゲート配線13等を形成してもよい。また、これらの元素に加えて、少なくとも、アルミニウム、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ネオジムの中から選ばれる元素を含むことを特徴とする銀合金材料であってもよい。
また、銀とインジウム、銀と亜鉛等、TFTアレイ基板71上で構成が異なるよう、場所に応じて使い分けてもよい。
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。
前記実施の形態2においては、ゲート配線形成工程102において、インクジェット方式に代表されるパターン形成装置が用いられ、TFTアレイ基板71上で構成の異なる配線材料の塗り分けが行われた。
以下の説明において、前記実施の形態1および2と実質的に同様の機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、ここでは説明を省略する。
本実施の形態においては、ゲート配線形成工程102にかわって、ソース・ドレイン配線形成工程106において、構成の異なる配線材料の塗り分けを行なう。例えばこれは、銀に対するインジウムの含有量がソース電極21およびソース配線14の場合で3重量%、ドレイン電極配線22の場合で10重量%となるように構成するものである。
また、ドレイン電極配線22内において、銀に対するインジウムの含有量が3重量%、10重量%となるよう塗り分け、コンタクトホール23近くで、耐プラズマ性が向上するようにしても良い。その他、本実施の形態のTFTアレイ基板上における任意の場所で、このような塗り分けが行われても良い。
また、本実施の形態での流動性の配線材料の形態は、実施の形態2と同じように、銀とインジウムを、銀インジウム合金の微粒子として含む形態に限られない。銀の微粒子、インジウムの微粒子を別々に作成し、溶媒中に独立に分散させた形態でもよい。また、必ずしも微粒子に限られず、銀、あるいはインジウムが、金属化合物の形で溶媒中に含まれる形態であってもよい。
なお、本実施の形態で用いる配線材料は、実施の形態2と同じように、銀とインジウムから構成される材料に限らず、銀と亜鉛を含む銀合金材料であっても良い。銀と、少なくとも、錫、亜鉛、鉛、ビスマス、インジウム、ガリウムから選ばれる1種類以上の元素を含むことを特徴とする銀合金材料によって、ソース配線14等を形成してもよい。また、これらの元素に加えて、少なくとも、アルミニウム、銅、ニッケル、金、白金、パラジウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ネオジムの中から選ばれる元素を含むことを特徴とする銀合金材料であってもよい。
また、銀とインジウム、銀と亜鉛等、TFTアレイ基板上で構成が異なるよう、場所に応じて使い分けてもよい。
なお、実施の形態2と3は、組合せて実施することが可能である。すなわち、ゲート配線形成工程102、ソース・ドレイン配線形成工程106の両方において、塗り分けを行なうことも可能である。
上記に述べた本発明の実施の形態1ないし3においては、インクジェット方式のような流動性の配線材料の液滴を吐出するパターン形成装置を用いた。しかしながら、本発明の銀合金材料は、このようなパターン形成装置を用いずとも同様に有益に用いることができる。この場合、対応する工程で、従来のスパッタ法あるいは蒸着法とフォトリソグラフィを用いた最も一般的な方法でTFTアレイ基板を作製する。ただし、流動性の配線材料ではなく、スパッタ用ターゲット、蒸着用蒸発源等を用いて、本発明の銀合金組成により形成された配線、電極等を得る。本発明の銀合金材料は、このような場合においても、耐熱性、付着力、耐プラズマ性といった優れたプロセス耐性を有し、かつ低電気抵抗である材料として有益に用いられる。
なお、本発明の銀合金材料は、2層以上の材料を重ね合わせてできた多層配線構造のなかの一層としても、有益に用いることができる。例えば300℃での熱焼成しても、銀単体のように表面平滑性が失われることはない、また、特にインジウムを含み、その含有量が例えば銀に対して5重量%、あるいは10重量%など、比較的多い場合には充分な耐プラズマ性を有し、その下層の配線を保護する保護金属層として効果的に用いることができる。また、実施の形態1における半導体層27と直接接触させ、電気的接続を得るためのソース電極21、ドレイン電極配線22の全部、またはその一部として用いることができ、同様に優れた耐熱性、付着力を発揮し、TFTアレイ基板の作製プロセスに有益に用いられる。
あるいは、本発明の銀合金材料は、反射型TFT液晶表示装置等に用いられるようなTFTアレイ基板上の光反射性電極に用いることもできる。この場合、本発明の銀合金材料の優れた耐熱性により、例えば300℃での熱焼成しても、銀単体のように表面平滑性が失われることはない。そのため、設計外の光散乱が起こらず、光反射性電極として充分な光反射率を維持できるなど、TFTアレイ基板としての特性を充分に発揮させることができる。
また、本発明の銀合金材料のうち、特に銀に対するインジウムの含有割合が0.5重量%以下である場合においては、電気抵抗率が2.7μΩcm以下であり、従来のアルミニウム配線ではなし得ない低電気抵抗配線の形成が可能であり有益である。ただし、インジウムの含有量が低いため、耐プラズマ性は充分でなく、一般的には他の金属膜を積層するなどが必要である。基板への付着力に関しても、インジウムの含有量が低いため充分ではないので、下地処理等が必要となる場合がある。
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。
なお、以下の説明において、前記実施の形態1ないし3と実質的に同様の機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、ここでは説明を省略する。
前記実施の形態2においては、ゲート配線形成工程102において、インクジェット方式に代表されるパターン形成装置が用いられ、TFTアレイ基板71上で構成の異なる配線材料の塗り分けが行われた。一方、前記実施の形態3においては、ソース・ドレイン配線形成工程106において、構成の異なる配線材料の塗り分けが行われた。
本実施の形態では、ゲート配線形成工程102において、スパッタ法が用いられて配線等の形成が行われ、これらの配線等は本発明の銀合金材料と、チタンが積層されている。
図26(a)(b)、図27(a)(b)は、本実施の形態において、ゲート配線形成工程102を完了した状態を示す図である。図26(a)、図27(a)は、それぞれ、ガラス基板12上の画素形成領域61、端子部形成領域62における平面図である。図26(b)、図27(b)は、それぞれ図26(a)、図27(a)におけるM−M線矢視断面図、N−N線矢視断面図である。
これらの図において、ゲート配線80、ゲート電極81、補助容量線82、および端子配線83は同一の積層構造をもち、2層からなる。ガラス基板12に近い側の各層80a、81a、82a、83aは本発明の銀合金からなり、銀に対するインジウムの含有量が0.2重量%である。それらの上層側の各層80b、81b、82b、及び83bはチタンからなる。膜厚は80a、81a、82a、83a、80b、81b、82b、及び83bの全てで0.2μmとした。
本実施の形態においては、ガラス基板12に近い側の各層80a、81a、82a、及び83aは、銀とインジウムからなる合金で形成されるので耐熱性があり、後の工程で300℃程度の焼成が行われても、ゲート配線80等に悪影響がでない。従来の銀単体でこれらを形成した場合においては、耐熱性がないために著しい表面凹凸が発生し、上層とのリーク不良が発生していた。
インジウムの含有量が0.5重量%以下の銀合金であれば、先に述べたように電気抵抗率が2.7μΩcm以下であり、アルミニウムでは実現不可能な低電気抵抗な配線の形成が可能である。本実施の例では、電気抵抗率は2.3μΩcm程度と、非常に低い。従って、配線の低電気抵抗化が特に要望される場合、例えば液晶TV用などの液晶表示装置において、本発明の銀合金材料は有用な材料である。
本実施の形態において、ゲート配線80等の形成方法について説明する。ここでは、ゲート配線形成工程102において、インクジェット方式に代表されるパターン形成装置を用いないので、ゲート配線前処理工程101に相当する工程は行わなかった。
まず、ガラス基板12上に、スパッタ法により、銀に対してインジウムを0.2重量%含む銀合金膜を0.2μmの厚さで成膜した。このとき、スパッタ用ターゲットとしては銀にインジウムを固溶させた合金ターゲットを用いた。
次に、チタンをスパッタ法によって、真空中で連続成膜した。このようにして得た膜をフォトリソグラフィによって加工し、図26(a)(b)、図27(a)(b)で示されるようなゲート配線等を得た。このときのエッチングにはドライエッチング法を用いた。
端子配線83等には、後の工程を考えると耐プラズマ性が必要であるが、本実施の形態においては、上層側のチタンによってそれを得ている。
このように、本発明の銀合金材料は多層配線構造のなかの一層として用いられてもよく、銀に対してインジウムを0.5重量%以下にすることで、従来のアルミニウムでは実現できなかった低電気抵抗な配線を実現している。
なお、上記の形成方法では、ガラス基板12上に直接、本発明の銀合金膜を成膜したが、基板への付着力が充分に取れない場合には、両者の中間に金属等からなる中間層を設けても良いし、ガラス基板をプラズマ、薬品等で表面処理することで付着力を得ても良い。
本発明においては、上層側の各層80b、81b、82b、83bの材料は、チタンに限らず、クロム、モリブデン、タンタル、タングステン、あるいはそれらに窒素、酸素を含有させた材料、あるいはITO(インジウム錫酸化物)等の金属酸化物であっても良い。ゲート配線80等の形成には、実施の形態1などと同じように、流動性の配線材料を塗布して積層しても良いし、銀とインジウムからなる蒸発源を用いて、蒸着法によって成膜、加工して形成しても良い。
本実施の形態では、ゲート配線形成工程102において、本発明の銀合金とチタンからなる膜によって配線が形成されたが、本発明の別の実施の形態として、ソース・ドレイン配線形成工程106において、同様に積層膜からなる配線を形成しても良い。この場合でも、銀とインジウムからなる合金は耐熱性があるので、後の工程で焼成が行われても悪影響がでない。
この場合においても、銀に対してインジウムを0.5重量%以下にすることで、従来のアルミニウムでは実現できなかった低電気抵抗な配線を実現することができる。
あるいは、本発明の銀合金材料は、反射型TFT液晶表示装置等に用いられるようなTFTアレイ基板上の光反射性電極に用いることもできる。この場合、本発明の銀合金材料の優れた耐熱性により、例えば300℃での熱焼成しても、銀単体のように表面平滑性が失われることはない。そのため、設計外の光散乱が起こらず、光反射性電極として充分な光反射率を維持できるなど、TFTアレイ基板としての特性を充分に発揮させることができる。
この場合、望ましくは銀に対してインジウムを0.5重量%以下を含む銀合金材料がよく、さらに望ましくは、銀に対してインジウムを0.2重量%以下を含む銀合金材料がよい。
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について説明すれば、以下のとおりである。
なお、以下の説明において、前記実施の形態1ないし4と実質的に同様の機能を有する構成要素を同じ参照符号で示し、ここでは説明を省略する。
本発明の実施の形態1で示したように、本発明の銀合金材料のうち、銀に対してインジウムを0.5重量%以下含む銀合金材料で作製した膜は、200℃の焼成後においても可視光反射率が高い。さらに望ましくは、銀に対してインジウムを0.2重量%以下含む銀合金材料で作製した膜は、300℃の焼成後においても可視光反射率が高い。このため、光反射膜用途に適する。
本実施の形態では、銀に対してインジウムを0.2重量%含む銀合金材料により、光反射性電極を形成している。この光反射性電極は、TFTアレイ基板上において多数形成されている。これについて以下に説明する。
本実施の形態にかかる反射型TFT液晶表示装置は、図28に示す画素を有している。なお、同図は、反射型TFT液晶表示装置のTFTアレイ基板11における1画素の概略構成を示す平面図である。また、同図におけるO−O線矢視断面図を図29に示す。本実施の形態において、本発明の実施の形態1等の液晶表示装置と異なる点の1つは、光反射性電極84を備える点である。この光反射性電極84は、液晶表示装置が備える液晶層(図示せず)に電圧を印加するための電極であると同時に、液晶表示装置に入射した外光を反射または散乱させることにより画像表示を得るという役割を有する。
また、本実施の形態にかかる液晶表示装置は、図30(a)に示す端子部28を有している。端子部28は、TFTアレイ基板11に外部回路基板、駆動用ドライバーIC等を電気的に接続するための接続部である。なお、同図は、液晶表示装置のTFTアレイ基板11における1端子部の概略構成を示す平面図である。また、同図におけるP−P線矢視断面図を図30(b)に示す。
図30(b)に示すように、端子部28は、ガラス基板12側から、端子配線30、ゲート絶縁層18、端子電極85を配置したように構成される。端子電極85は、本発明の実施の形態1等とは異なり、銀に対してインジウムを0.2重量%含む銀合金材料で作製されている。
なお、反射型TFT液晶表示装置においては、層間絶縁層26に凹凸形状を設け、外光の反射または散乱をコントロールする場合があるが、本発明の内容に影響を及ぼすものではなく、ここでは省略している。
この反射型TFT液晶表示装置の作製のためには、光反射性電極の形成以降、概ね160℃から200℃程度で基板を焼成することが必要である。例えば、液晶配向膜(図示せず)の成膜等のためである。このため、光反射性電極84には耐熱性が必要である。
従来の銀では、耐熱性が著しく劣っていたため、白濁し、全く使えない材料であった。本発明の銀合金材料では、例えば銀に対してインジウムを0.2重量%含む場合、これらの焼成に耐え、さらに従来良く用いられるアルミニウムよりも全体的に高い可視光反射率を得ることができる。このため、本発明の銀合金材料を反射型TFT液晶表示装置に用いることで、従来のアルミニウムの場合よりも明るい表示が可能であり、表示性能が向上するメリットが得られる。
本実施の形態にかかる光反射性電極84、及び端子電極85の作製方法を以下に説明する。
本実施の形態では、図18(a)(b)に示されるような、保護膜加工工程109完の基板に対して、成膜を行った。成膜方法はスパッタ法で、成膜温度は100℃とし、スパッタ用ターゲットとしては、銀にインジウムを固溶させた合金ターゲットを用いた。このようにして、銀に対してインジウムを0.2重量%含む銀合金膜を0.2μmの厚さで成膜した。
このようにして得た銀合金膜をフォトリソグラフィによって所定のパターンに加工し、図28ないし図30で示されるような光反射性電極84、及び端子電極85を得た。このときのエッチングには酢酸、燐酸、硝酸を含むエッチング液を用いて、ウェットエッチング法によって行った。
このように、本発明の銀合金材料のうち、銀に対してインジウムを0.5重量%以下含む銀合金材料で作製した膜は、200℃の焼成後においても可視光反射率が高く、その光反射率は全体的にアルミニウムよりも優れるため、産業上非常に有用である。さらに望ましくは、銀に対してインジウムを0.2重量%以下含む銀合金材料で作製した膜は、300℃の焼成後においても可視光反射率が高く、より厳しい製造条件に耐え得るメリットがある。
なお、光反射性電極84、及び端子電極85の作製方法はこれらの方法に限定されるものではなく、実施の形態1などと同じように、流動性の配線材料を塗布してから形成してもよいし、インジウムを含んだ銀からなる蒸発源を用いて、蒸着法によって成膜、加工して形成しても良い。
また、上記の形成方法では、層間絶縁層26上に直接、本発明の銀合金膜を成膜したが、付着力が充分に取れない場合には、両者の中間に金属等からなる中間層を設けても良いし、層間絶縁層の表面を、プラズマ、薬品等で表面処理することで付着力を得ても良い。
さらに、本発明の銀合金材料は、PDP(プラズマディスプレイパネル)を構成するガラス基板上のバス電極、データ電極としても用いられる。これらの電極はPDPを駆動するために前面ガラス基板、または背面ガラス基板に配置されるものであり、従来は銀、クロム/銅/クロム、アルミニウム/クロムの構成であった。銅やアルミニウムはガラス基板への付着力が弱いため、このようにガラス基板との間にクロム層をはさむ構造としなければ使えなかった。一方、従来の銀は耐熱性に課題があり、高温焼成により結晶粒の成長がおき、使用しにくい材料であった。
これに対して、本発明の銀合金材料は、優れた耐熱性と、ガラス基板への付着力を有するので、従来の銀等のこれらの材料に代わって、バス電極、データ電極として有益に用いられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。