JP4411729B2 - 鉛蓄電池の充電方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、充放電を繰り返して使用される鉛蓄電池、いわゆるサイクル使用される鉛蓄電池を充電する方法の技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉛蓄電池の充電をする場合、鉛蓄電池のサイクル寿命、放電容量を充分に発揮させるには、過不足なく適性な電気量が充電されることが必要てあり、従来の鉛蓄電池の充電方法においては、適正な電気量が充電されるようにするために、放電電気量を算出して充電電気量を推定したり、充電過程で一定の電圧値になるまでの充電電気量を算出して放電電気量を推定したりすることにより充電電気量を求めて充電していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の鉛蓄電池の充電方法にあっては、以下に説明するような問題点を有していた。
【0004】
充分な放電容量が得られるようにするには、充電電気量が多めになるように設定した条件で鉛蓄電池を充電すれば良いが、充電電気量が多めに設定された鉛蓄電池は充放電サイクルを繰り返し継続して使用すると、電解液が枯渇したり、活物質が劣化したり、活物質を保持する格子体が劣化したりして放電容量の低下が著しくなり、また、寿命特性が悪くなるという問題点があった。そこで、充電電気量を少なめに設定した条件で充電すると、鉛蓄電池の寿命特性は良くなるが、放電容量が抑制されるという問題点が新たに発生する。
【0005】
本発明は、鉛蓄電池の寿命特性および放電容量の両者を向上させることができる充電方法を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、本発明の鉛蓄電池の充電方法においては、充放電サイクルの初期段階とそれ以降の段階とでは異なる電気量により充電し、初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は高くし、初期段階以降の段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は低くすることとしている。
【0007】
そして、このようにすることにより、高い放電容量を引き出すことができ、優れた寿命特性を長く維持することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の鉛蓄電池の充電方法にあっては、各請求項に記載したような形態で実施することができ、以下にその構成に作用効果を併記して説明する。
【0009】
請求項1に記載のように、充放電サイクルの初期段階とそれ以降の段階とでは異なる電気量により充電し、放電電気量に対する充電電気量の割合を、初期段階ではそれ以降の段階よりも大きくするものである。
【0010】
充放電サイクルの初期段階での鉛蓄電池の放電容量が、その電池の最大放電容量よりも少ないめであると、初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合が高くなって好ましい。充放電サイクルの初期段階での放電容量は、最大放電容量に対する割合、いわゆる放電深度が0.80〜0.98(80〜89%)になるようにすると、放電電気量に対する充電電気量が高くなって効果的である。
【0011】
そして、充放電サイクルの初期段階では、最大放電容量よりも少ないめの放電容量にし、放電電気量に対する充電電気量の割合を高くして充電量を多いめにすることにより、高い放電容量を維持することができ、また、初期段階以降の段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を低くして充電量を少なめにすることにより、寿命特性を向上させることができる。
【0012】
また、請求項2に記載のように、充放電サイクルの初期段階としては、1サイクルから5〜200サイクルの範囲の所定サイクル値まで、すなわち、最小が1〜5サイクルで最大が1〜200サイクルの範囲までが好ましく、効果的である。
【0013】
また、充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は、請求項3に記載のように、1サイクルから最終サイクルまで所定の一定値にしたり、請求項4に記載のように段階的に減少させたり、請求項5に記載のように、連続的に減少させたりすることができるが、初期段階でも段階的もしくは連続的に減少させて低下させるようにすると、長寿命化を図る点からは効果的である。
【0014】
さらに、請求項6に記載のように、充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は、高い放電容量を引き出すことを考慮すると、1.15〜1.30の範囲の所定値とするのが好ましく、また、初期段階以降の段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は、寿命特性を向上させることを考慮すると、1.00〜1.15の範囲の所定値とするのが好ましい。そして、前者の割合が後者の割合よりも大きくなるようにすると、放電容量を向上させ、寿命特性の低下を阻止することができる。
【0015】
【実施例】
その実施例について、図1ないし図4を参照して詳述する。なお、図1は放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係を説明する図、図2は実施例におけるサイクル寿命特性を説明する図、図3は放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係の他の例を説明する図、図4は放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係の別の例を説明する図を示している。
【0016】
充放電サイクル試験では、図1に示すように、充放電サイクルの初期段階、すなわち1サイクルより5〜200サイクルの範囲で設定した所定サイクル値までの段階では、放電電気量に対する充電電気量の割合が、1.15〜1.30の範囲で設定した所定値になるように制御し、前記所定サイクル値以降の段階では、放電電気量に対する充電電気量の割合が、前記の初期段階よりは低い1.00〜1.15の範囲で設定した所定値になるように制御している。
【0017】
実施例による充放電サイクル試験は、電圧12V、定格電気容量60Ahの密閉型鉛蓄電池を用い、試験は温度25℃で行い、以下に説明するa、b、cの条件で充電し、20A定電流で放電深度80%の条件で放電した。そして、aの場合は、放電電気量に対する充電電気量の割合を、50サイクルまでは1.25(125%)、50サイクル以降は1.10(110%)と多めに減少させたもの(実施例)、bの場合は、放電電気量に対する充電電気量の割合を、50サイクルまでは1.15(115%)、50サイクル以降は1.10(110%)と少なめに減少させたもの(実施例)、cの場合は、放電電気量に対する充電電気量の割合を、50サイクルまでは1.25(125%)、50サイクル以降も1.25(125%)と変化させないもの(比較例)である。また、サイクル寿命特性は、50サイクル毎に20A定電流で9.9Vまで放電して容量を測定し、そのサイクルにおける初期の放電容量に対する容量の変化率(%)として求めた。この結果は、図2に示す通りである。
【0018】
図2より、aの場合は、充放電サイクルの初期段階で引きだした高い放電容量を50サイクル以降も維持し、サイクル寿命も長く維持しており、また、bの場合は、50サイクルまでの放電電気量に対する充電電気量の割合がaの場合に比べて低いので、放電容量も低めに維持されているが、充分な寿命特性を有しており、cの場合は、50サイクルまでの放電電気量に対する充電電気量の割合を高くして充電量を多くしているので、高い放電容量を引き出しているが、50サイクル以降もその多い充電量で推移させているので、電解液が枯渇し、活物質および格子体が劣化して放電容量の低下が著しくなり、寿命特性も極端に短くなっていることが分かる。
【0019】
なお、aの場合、電解液の比重を高めにし、充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を高くして充電量を多くし、初期段階以降の段階での充電量を低めに設定すると、鉛蓄電池が劣化することなく、高い放電容量を寿命末期まで維持できることを確認している。また、bの場合は、充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合が低く、充電量が多くないので、電解液の比重は低めにするのが好ましい。
【0020】
さらに、以上では、充放電サイクルの初期段階、すなわち1サイクルより5〜200サイクルの範囲で設定した所定サイクル値までの段階では、放電電気量に対する充電電気量の割合を、1.15〜1.30の範囲で設定した所定値を一定に維持させる場合について説明したが、放電電気量に対する充電電気量の割合は1.15〜1.30の範囲内で、図3に示すように段階的で不連続に減少させたり、図4に示すように傾斜状に連続させて減少させたりすることができ、このように充放電サイクルの初期段階からそれ以降の段階へ移行する際の充電量の変化を少なくすると、寿命特性がさらに向上して効果的となる。
【0021】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0022】
充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を、初期段階以降の段階での放電電気量に対する充電電気量の割合よりも高くすることにより、放電容量を向上させ、優れた寿命特性を維持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係を説明する図
【図2】同実施例におけるサイクル寿命特性を説明する図
【図3】放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係の他の例を説明する図
【図4】放電電気量に対する充電電気量の割合とサイクル数との関係の別の例を説明する図
【符号の説明】
a 実施例による放電容量の変化を示す線図
b 他の実施例による放電容量の変化を示す線図
c 比較例による放電容量の変化を示す線図
Claims (5)
- 充放電サイクルの初期段階とそれ以降の段階とでは異なる電気量により充電し、初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を1.15〜1.30の範囲とし、初期段階以降の段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を1.00〜1.15の範囲とする鉛蓄電池の充電方法。
- 充放電サイクルの初期段階は5〜200サイクルまでの範囲にする請求項1記載の鉛蓄電池の充電方法。
- 充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合は一定にする請求項1記載の鉛蓄電池の充電方法。
- 充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を段階的に減少させる請求項1記載の鉛蓄電池の充電方法。
- 充放電サイクルの初期段階での放電電気量に対する充電電気量の割合を連続的に減少させる請求項1記載の鉛蓄電池の充電方法。
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