〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図に基づいて説明する。
(画像形成装置)
図2は、本実施形態にかかる定着装置が備えられる画像形成装置の内部構造を示す断面図である。この画像形成装置は、乾式電子写真方式のカラー画像形成装置であり、例えばネットワークを介して接続される端末装置から送信された画像データ等に基づいて、所定の記録紙(記録媒体)に対して多色または単色の画像を形成するようになっている。
図2に示すように、この画像形成装置は、可視像形成ユニット10、記録紙搬送手段30、定着装置(加熱装置)40、供給トレイ20を備えている。
可視像形成ユニット10には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色に対応して、4つの可視像形成ユニット10Y・10M・10C・10Bが並設されている。つまり、可視像形成ユニット10は4つの可視像形成ユニット10Y・10M・10C・10Bからなり、可視像形成ユニット10Yはイエロー(Y)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット10Mはマゼンダ(M)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット10Cはシアン(C)のトナーを用いて画像形成を行い、可視像形成ユニット10Bはブラック(B)のトナーを用いて画像形成を行う。具体的な配置としては、記録紙を給紙する供給トレイ20と定着装置40とを繋ぐ記録紙の搬送路に沿って、4組の可視像形成ユニット10Y・10M・10C・10Bを配設した、所謂、タンデム式である。
可視像形成ユニット10Y・10M・10C・10Bは、それぞれ実質的に同一の構成を有する。すなわち、それぞれに、感光体ドラム11、帯電器12、レーザ光照射手段13、現像器14、転写ローラ15、クリーナユニット16が設けられており、搬送される記録紙に各色のトナーを多重転写する。
帯電器12は、感光体ドラム11の表面を所定の電位に均一に帯電させるものである。レーザ光照射手段13は、画像形成装置に入力された画像データに応じて、帯電器12によって帯電した感光体ドラム11の表面を露光し、感光体ドラム11の表面に静電潜像を形成するものである。現像器14は、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を、各色のトナーによって顕像化するものである。転写ローラ15は、トナーとは逆極性のバイアス電圧を印加されており、感光体ドラム11に形成されたトナー像を、記録紙搬送手段30により搬送された記録紙に転写させる。クリーナユニット16は、現像器14での現像処理、および、転写ローラ15による転写処理の後に、感光体ドラム11の表面に残留したトナーを、除去・回収する。感光体ドラム11は、帯電器12によって表面を帯電され、帯電された表面にレーザ光照射手段13によって静電潜像を形成され、形成された静電潜像を現像器14によって現像され、現像されたトナー像を転写ローラ15によって記録紙に転写され、転写後に表面に残ったトナー像をクリーナユニット16によって除去回収される。
そして、このような、記録紙に対するトナー像の転写は、各色の可視像形成ユニットにおいて行われる。すなわち、上記4色について記録紙に対するトナー像の転写が行われるので、同様の処理が4回繰り返されることになる。
記録紙搬送手段30は、駆動ローラ31、アイドリングローラ32、搬送ベルト33からなり、記録紙に可視像形成ユニット10にてトナー像が形成されるように、記録紙を搬送するものである。駆動ローラ31およびアイドリングローラ32は、無端状の搬送ベルト33を架張するものであり、駆動ローラ31が所定の周速度に制御されて回転することで、無端状の搬送ベルト33を回転させている。搬送ベルト33は、外側表面に静電気を発生させており、記録紙を静電吸着させながら、記録紙を搬送する。
記録紙は、このようにして、搬送ベルト33に搬送されながらトナー像(未定着トナー像)を転写されたあと、駆動ローラ31の曲率により搬送ベルト33から剥離され、定着装置40に搬送される。定着装置40は、記録紙に適度な熱と圧力とを与えて、記録紙上に転写されたトナーを溶解して記録紙に固定することで、記録紙上に堅牢な画像を形成する。
(定着装置)
次に、定着装置40について、図3を用いて説明する。図3は、定着装置40の概略構成を示す断面図である。
この図に示すように、定着装置40は、定着ローラ(加熱ローラ)41と複数の押圧部材(加圧ローラ42および剥離ローラ43)とベルト44とからなる。
定着ローラ41は、芯金41a上に弾性層41b、離型層41cがこの順で形成されており、また、芯金の内部には、加熱源(加熱手段)Qとしてハロゲンランプが設置されている。
芯金41aは、外径47mmの中空のアルミニウムからなる。ただし、芯金41aの素材は、これに限るものでもなく、例えば鉄製の金属からなるものでもよい。また、芯金41aのサイズについても特に限定されるものではない。
弾性層41bは、厚さ1.5mmの耐熱性を有するシリコーンゴムからなる。離型層41cは、厚さ約30μmのPFA(テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)チューブからなる。離型層41cの材料としては、耐熱性、耐久性に優れ、トナーとの離型性が優れるものであればよく、PFAに限らず、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の他のフッ素系材料を使用してもよい。なお、本実施形態にかかる定着ローラ41は、外径約50mm、表面硬度75°(アスカーC硬度)である。
加圧ローラ(スポンジローラ、支持ローラ)42は、芯金42aに弾性層42bおよび離型層42cを積層したものである。また、加圧ローラ42は、図示していない弾性部材(バネ等)によって、ベルト44に定着ローラ41方向への押圧力を加えることにより、ベルト44を定着ローラ(加熱ローラ)41に圧接させて、定着ローラ41との間にベルト44を介して定着ニップ部(第1ニップ部)を形成している。すなわち、上記第1ニップ部は、加圧ローラ42によって定着ローラ41方向への押圧力を付与されたベルト44の外周面と定着ローラ41との当接部であり、記録紙搬送方向の最上流側に形成される定着ニップ部である。そして、加圧ローラ42は、第1ニップ部に記録紙が通紙された場合に、記録紙を定着ローラ41に押し付け、記録紙上のトナーに良好に熱が伝わるようにするという役割を果たしている。
加圧ローラ42の芯金42aは、ここでは鉄製で外径が13mmのものを用いているが、材料や大きさはこれに限られるものではなく、例えば、ステンレスやアルミニウム等からなるものであってもよい。
加圧ローラ42の弾性層42bは、記録紙を均等に加圧し、定着ローラ41の熱を記録紙に十分に伝達させて記録紙上のトナーを溶融させるためのものであり、ここでは、厚さ8.5mmの耐熱性のシリコーンスポンジゴムを用いている。しかし、このような機能を果たすものであれば、材料や厚さは特に限定されるものではない。
加圧ローラ42の離型層42cは、定着ローラ41の離型層41cと同様、例えばPFAやPTFEなどからなる。
加圧ローラ42の各層は強固に密着されており、加圧ローラ42の外径は30.0mmとなっている。また、加圧ローラ42の押圧力によってベルト44を定着ローラ41に圧接させることにより形成される第1ニップ部のニップ幅(記録紙の搬送方向の長さ)は、弾性部材の荷重を変化させることで調整することができる。
剥離ローラ(支持ローラ)43は、第1ニップ部で加熱昇温された記録紙上のトナー像を、ベルト44を介して再度定着ローラ41に押圧させることで、トナー像をさらに加熱昇温させ、十分な定着強度を確保すると同時に、記録紙を定着ローラ41の表面から剥離させるためのものであり、ステンレス製の芯金43aに、弾性層43b、離型層43cをこの順に被覆したものである。また、剥離ローラ43は加圧ローラ42と同様、図示しない弾性部材(バネ)によってベルト44に定着ローラ41方向への押圧力を加えることで、ベルト44を定着ローラ41に圧接させ、定着ローラ41とベルト44との間に定着ニップ部(第2ニップ部)を形成している。すなわち、第2ニップ部は、剥離ローラ43によって定着ローラ41方向への押圧力を付与されたベルト44の外周面と定着ローラ41との当接部であり、第1ニップ部を形成する押圧部材(加圧ローラ42)に対して記録紙搬送方向に隣り合うように配置される押圧部材(剥離ローラ43)によって形成される定着ニップ部である。
本実施形態では、剥離ローラ43として外径15mmのものを用いている。また、剥離ローラの表面硬度は、定着ローラ41の表面硬度より高い方がよい。なぜなら、定着ローラ41とベルト44とを圧接させて形成した第2ニップ部におけるニップ形状を下向きにさせることができるので、カラー画像を定着する際に、自己剥離(剥離爪などの強制剥離補助手段を必要とせず、紙の腰で剥離)がしやすくなり、剥離爪などに極力頼らず剥離することができるからである。一方、定着ローラ41の表面硬度より、剥離ローラ43の表面硬度が低いと、第2ニップ部のニップ形状が上向きになるため、第2ニップ部から排出された紙は、定着ローラ41表面に沿って排出される。このため、十分な自己剥離性能が得られない。
ベルト44は、ベルト基材と離型層とからなり(ともに図示せず)、加圧ローラ42および剥離ローラ43に懸架されている。ベルト44の離型層は、定着ローラ41の離型層41cと同様、トナーの付着を防止する目的で設けられるものであり、例えばPFAやPTFEなどからなる。また、ベルト基材の材質は特に限定されるものではないが、例えばPI(ポリイミド)などからなる。なお、ベルト44の表面硬度は、剥離ローラ43と同様、定着ローラ41の表面硬度より高い方がよい。
加圧ローラ42および剥離ローラ43は、図示しないばね等の付勢手段により、ベルト44を定着ローラ41の表面に圧接させている。これにより、図1に示すように、定着ローラ41とベルト44とが当接(圧接)する第1ニップ部(定着ニップ部)、定着ローラ41とベルト44とが当接(圧接)する第2ニップ部(定着ニップ部)、第1ニップ部と第2ニップ部との間における特に圧接手段(押圧ローラ)が備えられていない領域である仮想ニップ部(定着ニップ部、ベルト巻付き部)が形成されている。すなわち、仮想ニップ部は、第1ニップ部および第2ニップ部に挟まれた、押圧ローラが配置されていない低圧部である。
なお、第1ニップ部の先端から第2ニップ部の後端までの領域をトータルニップ部とする。また、第1ニップ部は、入紙側から最初に形成される定着ニップ部であり、第2ニップ部は第1ニップ部よりも排紙側に形成されるものとする。
定着装置40では、上記各定着ニップ部、すなわち、図示しない加熱手段によって一定温度に加熱された定着ローラ41と押圧部材(加圧ローラ42および剥離ローラ43)とによって挟まれる領域に、表面に未定着のトナーが付着した記録紙(被加熱材)Pを通紙することで、トナーを溶融させて記録紙に押し付け、記録紙に画像を定着させる。なお、定着後には、記録紙にトナーが溶着された状態となり、光沢が出る。
また、仮想ニップ部では、定着ローラ41とベルト44とが接触している。このため、記録紙の搬送不良を防止することができる。また、仮想ニップ部には押圧部材がないものの、定着ローラ41とベルト44とが接触していることにより、定着ローラ41の熱を記録紙に適度に伝熱することができるので、定着性を向上させることができる。
なお、本実施形態にかかる定着装置40では、定着装置40におけるプロセス速度Vp、すなわち、定着ローラ41の回転による当該定着ローラ41の表面の移動速度は、350mm/秒に設定されている。また、定着ローラ41の定着温度T、すなわち各ニップ部における定着ローラ41の表面の温度は、170℃に設定されている。また、本実施形態において定着装置40によって定着処理を行う未定着トナー像は、トナー流出開始温度Tiが99℃のトナーを用いて形成されたものである。
また、定着装置40では、加圧ローラ42およびベルト44と定着ローラ41とで形成される第1ニップ部のニップ幅a1がプロセス速度Vpに対してa1/Vp≧0.02を満たし、第1ニップ部と第2ニップ部との間に形成される仮想ニップ部のニップ幅bがプロセス速度Vpに対してb/Vp<0.1を満たすように設定されている。なお、剥離ローラ43およびベルト44と定着ローラ41とで形成される第2ニップ部のニップ幅a2は任意に設定されている。例えば、第1ニップ部のニップ幅a1を7.3mm、仮想ニップ部のニップ幅bを9mm、第2ニップ部のニップ幅a2を3mmに設定し、トータルニップ幅(a1+b+a2)を19.3mmとしている。
このように、定着装置40では、プロセス速度Vpが350mm/秒、定着温度Tが170℃、トナー流出開始温度Tiが99℃であり、第1ニップ部のニップ幅a1を、a1/Vp≧0.02を満たすように設定している。これにより、第1ニップ部において、トナーを低温オフセットが発生しない程度に十分に加熱することができる。このため、低温オフセット現象の発生を防止できるので、上記のような画像ずれが起こることを確実に防止できる。
つまり、第1ニップ幅のニップ幅a1の長さが短いと、第1ニップ部においてトナーが十分に溶けていない状態(トナーが記録紙に十分付着していない状態)で記録紙上の未定着トナーが仮想ニップ部に搬送されることになる。この場合、仮想ニップ部では押圧部材による押圧力が付与されていないので、圧変動が生じ、記録紙上の未定着トナーが定着ローラ41に付着してしまう、いわゆる低温オフセット現象が発生する場合がある。そして、定着ローラ41に付着したトナーが記録紙と再接触すると、記録紙上のもとの位置とずれてしまい、画像ずれが生じる場合がある。
これに対して、第1ニップ部のニップ幅a1を上記のように設定することにより、第1ニップ部において、トナーを低温オフセットが発生しない程度に十分に加熱することができる。このため、低温オフセット現象の発生を防止できるので、上記のような画像ずれが起こることを確実に防止できる。
また、定着装置40では、プロセス速度Vpが350mm/秒、定着温度Tが170℃、トナー流出開始温度Tiが99℃であり、仮想ニップ部のニップ幅bを、b/Vp<0.1を満たすように設定している。これにより、仮想ニップ部において、トナーの温度を高温オフセットが生じない温度に保つことができる。
つまり、仮想ニップ部では、定着ローラ41とベルト44とが接触している。このため、仮想ニップ部には押圧部材がないものの、定着ローラ41とベルト44とが接触していることにより、定着ローラ41の熱が記録紙に伝熱される。この伝熱量が適切である場合には、トナーの定着性を向上させることができるが、伝熱量が大きすぎると、トナーが加熱されすぎて必要以上に溶融してしまい、記録紙を離接した際に定着ローラ41の表面にトナーが残ってしまう、いわゆる高温オフセットを生じる場合がある。すなわち、仮想ニップ部のニップ幅が長すぎると、記録紙上のトナー(トナー表面)を過度に加熱してしまい、高温オフセットによる画像欠損を生じてしまう場合がある。
これに対して、仮想ニップ部のニップ幅bを上記のように設定することにより、仮想ニップ部において、トナーの温度を高温オフセットが生じない温度に保つことができる。
なお、上記の説明では、プロセス速度Vpが350mm/秒、定着温度Tが170℃、トナー流出開始温度Tiが99℃の場合について説明したが、これに限るものではない。プロセス速度Vp、定着温度T、トナー流出開始温度Tiが上記の条件と異なる場合には、各条件に応じて、第1ニップ部においてトナーを低温オフセットが発生しない程度に十分に加熱することができるように第1ニップ部のニップ幅a1を設定し、また、仮想ニップ部において高温オフセットが生じないように仮想ニップ部のニップ幅bを設定すればよい。
ここで、プロセス速度Vp、定着温度T、トナー流出開始温度Tiが異なる場合に、第1ニップ部においてトナーを低温オフセットが発生しない程度に十分に加熱するために必要な第1ニップ部のニップ幅a1を調べるために、後述の(実験例)に示す実験および(解析例)に示す解析を行った。
その結果、第1ニップ部出口におけるトナーの温度をトナー流出開始温度以上まで加熱すれば、低温オフセットの発生を防止できることを確認した。
そして、第1ニップ部を記録紙が通過するニップ通過時間をtn、トナー流出開始温度をTi、定着温度をTとした場合に、
tn≧0.0006Ti−0.00024T+0.0015
を満たすように第1ニップ部のニップ通過時間tnを設定すれば、第1ニップ出口においてトナーをトナー流出開始温度Ti以上に加熱することができ、低温オフセットの発生を適切に防止できることがわかった。
なお、第1ニップ部のニップ通過時間tnは、第1ニップ部のニップ幅a1およびプロセス速度Vpを用いて、tn=a1/Vpで表わされる。したがって、
a1≧(0.0006Ti−0.00024T+0.0015)×Vp
を満たすようにニップ幅a1を設定すれば、第1ニップ部出口におけるトナーの温度がトナー流出開始温度以上となり、低温オフセットの発生を防止し、画像ずれを防止することができる。
(実験例)
上記の定着装置40を用いて、トナーの種類、定着温度、ニップ通過時間等の定着条件を変化させ、その他の条件は一定にして、未定着画像(未定着トナー像)を載せた記録紙(未定着画像サンプル)を通紙し、定着後のサンプルの画像ずれを評価する実験を行った。
未定着画像サンプルとして、熱特性の異なる2種類のカラー用オイルレストナー(トナーA:ポリエステル樹脂、トナーB:スチレンアクリル樹脂)を用いて記録紙上に形成した未定着画像を使用した。
トナーの熱特性をフローテスター(流動性評価装置)にて測定した結果、トナーAの流出開始温度Ti=99℃、4mm降下温度T4mm=120℃であった。トナーBの流出開始温度Ti=91℃、4mm降下温度T4mm=115℃であった。
トナーの粒径は、トナーA,Bともに、6.5μmであり、両トナーの記録紙に対する単位面積毎の付着量は0.5mg/cm2である。記録紙としては、65gの普通紙を使用した。また、プロセス速度は350mm/s(秒)とした。
まず、定着ローラ41の加圧ローラ42との対向面における表面温度(定着温度)と第1ニップ部のニップ幅(第1ニップ幅)をパラメータとし、トナーA、トナーBの各々における画像ずれ評価実験を行った。より詳細には、トナーA,Bのそれぞれについて、第1ニップ幅を5.6mm、6.4mm、7.3mmの3段階に変化させ、各第1ニップ幅の場合について定着温度を160℃、170℃、180℃に変化させて評価試験を行った。なお、定着温度は、定着ローラ41の表面に設けた温度センサ(図示せず)によって測定した。また、第2ニップ部のニップ幅(第2ニップ幅)は、トナーA,Bのいずれの場合についても3mmで一定とした。また、プロセス速度は350mm/sで一定とした。
トナーAにおける画像ずれ評価実験の結果を下記表1、トナーBにおける画像ずれ評価実験の結果を下記表2に示す。なお、画像ずれの評価は、未定着画像サンプルを定着装置40に通紙して定着させた後のサンプルの濃度測定、および主観による画質評価によって行った。より詳細には、従来から用いられているローラ対方式の定着装置で定着したサンプルを比較例(標準サンプル)として用意し、この標準サンプルに対する相対評価を行った。なお、表1および表2では、画像濃度、画質ともに問題なければ「○」、画像濃度は問題ないが、画質がやや劣るもの(製品上問題ないが、拡大して観察すると比較例に対して濃淡むらが存在するもの)を「△」、画像濃度が低下し、かつ、画質が劣るレベルのもの(比較例に対して画像ずれが明らかに目立つもの)を[×]とした。
表1に示したように、トナーAでは、第1ニップ幅を5.6mmとした場合、定着温度160℃および170℃では「×」、定着温度180℃では「△」の評価であった。また、第1ニップ幅を6.4mmとした場合、定着温度160℃では「×」、定着温度170℃では「△」、定着温度180℃で「○」の評価であった。また、第1ニップ幅を7.3mmとした場合、定着温度160℃では「△」、定着温度170℃および180℃で「○」の評価であった。
一方、トナーBでは、表2に示したように、第1ニップ幅を5.6mmとした場合、定着温度160℃で「△」、定着温度170℃および180℃で「○」の評価であった。また、第1ニップ幅が6.4mmの場合および7.3mmの場合には、定着温度160℃〜180℃のいずれの場合にも「○」の評価であった。
この結果より、トナーAの方がトナーBに比べて画像ずれが発生しやすいことがわかる。また、定着温度が高く、第1ニップ幅が広いほど画像ずれが改善されることがわかる。
次に、第1ニップ幅を5.6mmに固定し、代わりに第2ニップ幅をパラメータとして、画像ずれが発生しやすいトナーAについて上記と同様の実験を行った。すなわち、下記表3に示すように、第2ニップ幅を3mm、3.8mm、4.6mmの3段階に変化させ、各第2ニップ幅の場合に定着温度を160℃、170℃、180℃の3段階に変化させた。その結果を表3に示す。なお、この表における「○」,「△」,「×」は、表1および表2と同様の評価基準を用いた評価結果を表している。
この表に示すように、第2ニップ幅が3mm、3.8mm、4.6mmのいずれの場合にも、定着温度160℃および170℃では「×」の評価であり、定着温度180℃で「△」の評価であった。
この結果より、第2ニップ幅を広くしても画像ずれはあまり改善されないことがわかる。表1の結果も併せて考えると、画像ずれの主な発生原因は第2ニップ部とはあまり関係なく、第1ニップ部と密接に関係していることが推察される。
そこで、この画像ずれの原因をさらに詳しく検討するため、図3に示した定着装置40から剥離ローラ43およびベルト44を取り外して従来のローラ対方式の定着装置と同様の構成(モデル)とし、第1ニップ部通過後の定着画像について調査した。より詳細には、定着装置40から剥離ローラ43およびベルト44を取り外し、プロセス速度350mm/s(秒)の条件下で、定着温度を160℃、170℃、180℃、第1ニップ幅を5.6mm、6.4mm、7.3mmと各々3段階に変化させて未定着画像サンプルを通紙し、折り曲げ試験による定着性評価を行った。なお、この構成では、自己剥離性が確保できないため、定着ローラ41の表面にオイル塗布し、自己剥離性を確保した。
定着性の評価方法としては、定着したサンプルを印字面が内側になるように軽く折り曲げた後、折り曲げ部に所定の荷重を加え、折り目部分に生じるトナー脱落部分の幅を測定し、その大小に基づいて評価した。
評価結果を表4に示す。なお、この表では、低温オフセットが全体に発生した場合には「×」、部分的に低温オフセットが発生した場合には「△」、低温オフセットが発生しなかった場合には「○」とした。また、定着強度が不十分な場合には「N.G」、定着強度が十分な場合には「O.K」とした。
表4に示したように、低温オフセットについては、第1ニップ幅を5.6mmとした場合、定着温度160℃および170℃では「×」、定着温度180℃では「△」の評価であった。また、第1ニップ幅を6.4mmとした場合、定着温度160℃では「×」、定着温度170℃では「△」、定着温度180℃で「○」の評価であった。また、第1ニップ幅を7.3mmとした場合、定着温度160℃では「△」、定着温度170℃および180℃で「○」の評価であった。また、定着強度については、測定したいずれの場合についても、不十分(N.G)であった。
この結果から、定着温度が低く、第1ニップ幅が狭い条件では低温オフセットが発生するものの、定着温度を高くしたり、第1ニップ幅を広くすることで低温オフセットが改善されることがわかる。また、低温オフセットが発生しない条件下においても、定着強度としては不十分(N.G)であることがわかる。さらに、表1および表4の結果を比較すると、画像ずれが発生する条件と低温オフセットが発生する条件とが完全に一致することがわかる。
以上の結果から、画像ずれの発生原因としては、以下のように説明できる。すなわち、定着部材(ここでは定着ローラ41)に複数の押圧部材(ここでは加圧ローラ42および剥離ローラ43)によって複数の定着ニップ部(ここでは第1ニップ部および第2ニップ部)が形成される定着装置の場合、第1ニップ部と第2ニップ部との間にはほとんど定着圧力がかかっていない状態のニップ部(仮想ニップ部)が形成されることになる。つまり、ベルト44を備えない場合には定着圧力を付与する手段がないので定着ニップが形成されず、また、本実施形態にかかる定着装置40のようにベルト(加圧ベルト)44によって見かけ上定着ニップが形成されていても、ベルト44の張力による圧力が加わるのみであることから、ほとんど定着圧力がかかっていない状態のニップ部(仮想ニップ部)が形成されることになる。
したがって、記録紙上のトナー像は、第1ニップ部では押圧部材により定着部材(定着ローラ41)、トナー、記録紙のそれぞれが密着しているが、第1ニップ部通過後、第2ニップ部に至るまでの仮想ニップ部では、押圧部材が存在しないために、定着ローラ41と記録紙との間で若干の隙間が生じる。この時、第1ニップ部でのトナーの溶融状態が不十分であると、トナー像の一部は低温オフセット現象により、定着ローラ41側に付着することとなる。その後、仮想ニップ部で定着ローラ41と記録紙との間で微少な位置ズレが生じた場合、第2ニップ部で再度定着ローラ41と記録紙とが密着すると、定着ローラ41に付着していたトナー像の記録紙に対する位置がずれ、画像ずれが生じてしまう。
つまり、本実施形態に示されるような複数の定着ニップ部を有する定着装置において画像ずれを防止するには、未定着画像サンプルが、第1ニップ部通過直後に低温オフセットが発生しない程度にトナー像が加熱溶融されるよう、第1ニップ部での定着条件を設定する必要があることがわかる。
なお、第1ニップ部で設定される定着条件としては、必ずしも定着強度まで満たさなくてもよい。つまり、第1ニップ部通過直後の画像ザンプルは、定着強度が不十分であるが、仮想ニップ部および第2ニップ部を通過する間に熱供給され、定着強度を満足すればよい。
(解析例)
次に、第1ニップ部出口でのトナー温度と画像ずれの関係を検討するため、図3に示した定着装置40を、1次元熱伝導として図4のようにモデル化して伝熱状態の解析を行った。すなわち、図4に示すように、定着ローラ41の芯金41aの内部に備えられる加熱源Q、定着ローラ41の芯金(アルミニウム)41a、弾性層(シリコーンゴム)41b、離型層(PFA)41c、離型層41cと記録紙上のトナーとの間に形成される第1の空気層(空気層)air1、トナー、記録紙、記録紙とベルト44の離型層44aとの間に形成される第2の空気層(空気層)air2、離型層44a、PIからなるベルト基材44bがこの順に配置されたモデルを作成し、定着ローラ41の断面深さ方向(加熱源Qから加圧ローラ42の方向)への伝熱について解析を行った。
なお、上記のモデルでは、定着ローラ41とトナー面との境界領域、および、ベルト44の離型層44aと記録紙との境界領域に、空気層air1,air2を設けている。これは、記録紙面にはある程度の表面粗さが存在するので、その表面粗さに起因する隙間を空気層air1,air2としてモデル化した。また、微視的な挙動で考えると、層の中でも温度分布が異なるので、定着ローラ41の弾性層41b、離型層41c、トナー、記録紙については、各層を伝熱方向について細かく分割した。このモデルを用い、第1ニップ出口直前において、記録紙上に印字された未定着画像(未定着トナー画像)のトナーのうち、記録紙と接する層(側)の温度である最下層温度を算出した。
解析条件として、表5に示す各層の厚み、初期温度、比熱、比重、熱伝導率、その他必要な物性値を与えた。なお、定着ローラ41の弾性層41bについては、弾性層41bを15層に分割し、分割した各層の初期温度は、離型層41cと接する層を160℃、芯金41aと接する層を188℃とした。また、分割した間の層の初期温度は、離型層41cに近い層から2℃ずつ上げた値を設定した。
表5に示した解析条件は、定着温度160℃の時の設定(条件)であり、定着温度を170℃で計算する場合は、定着ローラ41で設定する各層(離型層41c、弾性層41b、芯金41a)の初期温度をそれぞれ10℃上げることになる。同様に、定着温度180℃で計算する場合は、定着ローラ41の各層の温度をさらに10℃あげることになる。
解析に用いた計算式について説明する。図5に示すように、a層,b層,c層の順に隣接する層においては、b層のある時刻tからτ秒後の温度T(b,t+τ)は、次式で表される。
T(b,t+τ)=T(b,t)+τ/(ρb×Cb×Hb)×[{T(a,t)−T(b,t)}/(ha/2λa+hb/2λb)+{T(c,t)−T(b,t)}/(hb/2λb+hc/2λc)] ・・・式(1)
ここで、hは層の厚さ、Tは温度、λは熱伝導率、ρは比重、Cは比熱であり、添え字のa,b,cはそれぞれa層,b層,c層の値であることを示している。
この式を用いて各層の微少時間τ経過後の温度を計算し、ニップ通過完了直前の時間(ニップ幅をプロセス速度で除した値)まで計算を繰り返す。
上記解析条件にて、定着温度および第1ニップ幅をパラメータとして第1ニップ出口でのトナー最下層温度を計算した結果を表6に示す。
この表に示すように、トナー最下層温度は、第1ニップ幅を5.6mmとした場合、定着温度160℃では87℃、定着温度170℃では91℃、180℃では95℃であった。また、第1ニップ幅を6.4mmとした場合、定着温度160℃では91℃、定着温度170℃では95℃、180℃では99℃であった。また、第1ニップ幅を7.3mmとした場合、定着温度160℃では95℃、定着温度170℃では99℃、180℃では103℃であった。
表1および表6の結果より、トナーAにおいて、ニップ出口でのトナー最下層温度が99℃以上に達している時、画像ずれのない良好な画像が得られていることがわかる。すなわち、熱解析にて第1ニップ出口でのトナー最下層温度がトナーAの流出開始温度(99℃)以上に達している場合には、画像ずれが発生していないことがわかる。
同様に、表2および表6の結果より、トナーBにおいて、ニップ出口のトナー最下層温度が91℃以上に達している時、画像ずれのない良好な画像が得られる。つまり、トナーの物性値を変化させても、第1ニップ部においてトナーの流出開始温度以上になるような定着条件(定着温度、第1ニップ幅)を設定すれば、画像ずれを改善させることができる。
ところで、第1ニップ部でトナーに与えられる熱量は、定着温度と、第1ニップ幅とプロセス速度との関係によって算出されるニップ通過時間(ニップ通過時間=ニップ幅/プロセス速度)とによって決まる。したがって、ある定着温度において、トナー最下層温度がトナーの流出開始温度以上になるように、ニップ通過時間(ここでは、第1ニップ部でのニップ通過時間)を設定すれば、画像ずれは改善されるとも考えられる。
ここで、トナーAを用いて、一定の定着温度(170℃)のもと、プロセス速度、第1ニップ幅をパラメータとして、画像ずれの評価を行った。さらに、熱解析にてニップ通過完了直前のトナー最下層温度も算出した。その結果を表7に示す。なお、画像ずれの評価「○」,「△」,「×」は、表1および表2と同様の評価基準によるものである。
表7に示すように、画像ずれは、ニップ通過完了直前のトナー最下層温度に相関がある。そして、ニップ通過完了直前のトナー最下層温度は、ニップ通過時間に相関がある。また、トナーの最下層温度が流出開始温度(トナーAでは99℃)以上になるようなニップ通過時間が確保できる条件であれば、画像ずれが起こらないことがわかる。
なお、ニップ通過完了直前のトナー最下層温度をトナーの流出開始温度以上にするために必要なニップ通過時間は、定着温度によって異なる。図6は、定着温度を160℃,170℃,180℃とした場合の、各定着温度におけるニップ通過直前のトナー最下層温度Tbとニップ通過時間Tnとの関係を示すグラフである。なお、このグラフは、表6に示したデータに基づいて、上記の各定着温度ごとに、横軸をニップ通過完了直前に到達したトナーの最下層温度、縦軸をその時のニップ通過時間としてプロットした結果およびその近似線を実線で表したものである。
このように、各定着温度条件について、ニップ通過直前のトナーの最下層温度Tbと、ニップ通過時間tnとの間には比例関係があり、下記の式(2)に示すような1次関数として表わすことができる。
tn=α×Tb+β ・・・式(2)
なお、α,βは定数である。
また、1次関数として考えた場合、各定着温度でのグラフはほぼ平行であることから、切片βが異なるだけで、その傾きは定着温度によらず、ほぼ一定(a=0.0006)である。また、このグラフにおいて、切片β(Tb=0となる場合のtnの値)を、定着温度Tをパラメータとする関数f(T)として考えた場合、ニップ通過時間tnは以下に示す関係式(式(3))で近似することができる。
tn=0.0006×Tb+f(T) ・・・式(3)
図7は、定着温度Tと切片β(関数f(T))との関係を示すグラフである。すなわち、図6に示した各定着温度の近似線を上記式(2)の関数で表した場合に、横軸を定着温度T、縦軸を切片βとしてプロットし、その近似線を表したグラフである。このように近似線は下記の式(4)に示す1次関数として表わすことができる。
β=−0.00024T+0.0015 ・・・式(4)
上記式(3)および式(4)より、ニップ通過時間tn、トナー最下層温度Tb、定着温度Tの関係は、下記の式(5)で表わすことができる。
tn=0.0006Tb−0.00024T+0.0015 ・・・式(5)
ここで、ニップ通過時間tnが長くなればなるほどニップ通過完了直前のトナー最下層温度Tbは高くなるので、下記の式(6)を満たすように、第1ニップ通過時間(すなわち、あるプロセス速度における第1ニップ幅)を設定すれば画像ずれのない画像が得ることができる。すなわち、下記式(6)を満たすようにニップ通過時間tnを設定することにより、トナー最下層温Tbがトナー流出開始温度Tiよりも高くなり、画像ずれを防止できる。
tn≧0.0006Ti−0.00024T+0.0015 ・・・式(6)
上記の式(6)を使えば、ある任意の熱特性のトナーにおいて、画像ずれを防止するために必要な定着温度およびニップ幅(第1ニップ幅)を、実験や解析で求めることなく算出できる。すなわち、上記式(6)を満たす定着温度Tおよびニップ通過時間(ニップ幅)tnを設定することで、実験を行わずとも、画像ずれを防止した定着装置を実現することができる。
このように、トナー最下層温度は、定着装置40をモデルとする理論計算により求めることができる。理論計算の結果に基づいて定着温度およびニップ通過時間を設定することで、例えば、任意の熱特性のトナーにおいて、第1ニップ部出口でのトナー最下層温度がトナー流出開始温度以上となる定着条件(定着温度およびニップ通過時間)を実験や解析で求めることなく算出し、画像ずれを適切に防止することができる。
なお、定着装置40における、第1の押圧部材としての加圧ローラ42は、芯金42a上に弾性層42bが被覆された弾性ローラである。このように、第1ニップ部を形成する加圧ローラ42を弾性ローラとすることで、第1ニップ部のニップ幅を十分広く設定することができる。したがって、第1ニップ部で要求される定着条件を容易に実現することができる。
また、定着装置40では、複数の支持ローラ(加圧ローラ42および剥離ローラ43)に懸架されたベルト44が設けられており、このベルト44と定着ローラ41との間に複数のニップ部が形成されている。すなわち、ベルト44が複数の支持ローラ(押圧部材;加圧ローラ42および剥離ローラ43)によって定着ローラ41に圧接されている。
ベルト44がない場合、第1の押圧部材により形成されるニップ部(第1ニップ部)と、第2の押圧部材により形成されるニップ部(第2ニップ部)との間は、記録紙の搬送方向を規制するものがないため、第2ニップ部に記録紙が突入するまでに記録紙の搬送方向が変わってしまい、記録紙が第2ニップ部に突入することができない等の搬送性の問題が生じる可能性がある。そこで、ベルト44を設けることで、第1ニップ部から排出された記録紙を、ベルト44と定着ローラ41との間に挟みこみながら(搬送方向を規制しながら)搬送し、搬送不良を防止することができる。
また、例えば、加圧ローラ42および剥離ローラ43に加えて、ベルト44のテンションを保持する目的でテンションローラ(支持ローラ、図示せず)を1個または複数設けてもよい。また、定着装置40では、ベルト44の支持ローラとして加圧ローラ42および剥離ローラ43が備えられており、全ての支持ローラ(加圧ローラ42および剥離ローラ43)によってベルト44が定着ローラ41に押圧されているが、これに限らず、複数の支持ローラの全部或いは一部によってベルト44が定着ローラ41側に加圧(押圧)される構成であってもよい。
また、上記の説明では、ベルト44を支持する支持ローラとして、加圧ローラ42と剥離ローラ43とを備えた構成について説明したが、支持ローラの数はこれに限るものではない。例えば、図8に示すように加圧ローラ42および剥離ローラ43に加えてテンションローラ47を設けてもよい。あるいは、さらに多数の支持ローラを備えてもよい。ただし、支持ローラの個数を増やしすぎると、ベルト44のベルト長が長くなること、および、ベルト44と各支持ローラとの接触箇所が増えることにより、ベルト44からの放熱量が増大し、定着ローラ41を加熱するための消費電力が大きくなる場合があるので、支持ローラの個数は2個または3個とすることが好ましい。
また、定着装置40または画像形成装置に、第1ニップ部出口におけるトナー最下層温度をトナー流出開始温度以上とするための定着条件(定着温度およびニップ通過時間)を算出する定着条件算出手段を備え、算出した定着条件に基づいて定着温度および/またはニップ通過時間を制御するようにしてもよい。
例えば、定着ローラ41を加熱する加熱源(加熱手段)Qの温度を可変とし、この加熱源Qの温度を制御する温度制御手段(図示せず)を画像形成装置または定着装置に備え、上記定着条件算出手段の算出結果に基づいて加熱源Qの温度を制御するようにしてもよい。
また、ニップ幅を制御するニップ幅制御手段を備え、上記定着条件算出手段の算出結果に基づいてニップ幅を制御することで、ニップ通過時間を制御するようにしてもよい。例えば、複数の幅の異なる加圧パッドまたは加圧ローラを選択可能に備え、上記定着条件算出手段の算出結果に基づいて第1ニップ部に使用する加圧パッドまたは加圧ローラを選択する構成としてもよい。また、加圧ローラ42に付与する押圧力を制御することによってニップ幅を制御してもいいが、この場合には、押圧力の変動幅を、ローラの撓みが発生し、ニップ幅がローラの回転軸方向に不均一とならない程度とすることが好ましい。
また、プロセス速度を可変とし、上記定着条件算出手段の算出結果に基づいてプロセス速度を制御することで、ニップ通過時間を制御するようにしてもよい。
また、トナー流出開始温度は、例えば、図示しない入力部を介してユーザが入力するようにしてもよく、あるいは、使用されるトナーのトナー流出開始温度を測定する測定手段を別途備えてもよく、あるいは、トナーが収容された容器(カートリッジ、交換容器)にトナーの種類(トナー流出開始温度)を識別可能な印等を設け、それを読み取ることでトナー流出開始温度を特定する構成としてもよい。
また、本実施形態では、第1ニップ部出口でのトナー最下層温度をトナー流出開始温度以上とするための定着条件(定着温度およびニップ通過時間)を、一次元の伝熱解析によって求める場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、二次元あるいは三次元の形状を考慮した解析を行ってもよく、あるいは時間変化を考慮した解析を行ってもよい。
また、本実施形態では、ネットワークを介して接続される端末装置から送信された画像データ等に基づいて、所定の記録紙に対して多色または単色の画像を形成する乾式電子写真方式のカラー画像形成装置に本発明の定着装置を備える場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、画像読取装置を備え、読み取った画像を記録紙に形成する複写機(画像形成装置)、あるいはファクシミリ装置、複写機、プリンター等の機能を複合的に備えた画像形成装置に適用してもよい。
また、本実施形態では、第1ニップ部において、未定着トナー像を、低温オフセットを生じない温度以上に加熱するものとしたが、この際、高温オフセットが生じる温度以下とすることが好ましい。すなわち、トナーが高温になりすぎると、いわゆる高温オフセットによって画像欠損が生じるおそれがあるので、第1ニップ部出口におけるトナーの温度を、各定着ニップ部および各定着ニップ部間(各仮想ニップ部)において低温オフセットが生じず、かつ、高温オフセットも生じない温度とするように、定着温度およびニップ通過時間を設定することが好ましい。
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1における画像形成装置および定着装置に備えられる部材と同じ機能を有する部材については、実施形態1と同じ符号を用い、その説明を省略する。また、同じ符号を付した部材については、特に断らない限り、実施形態1と同様の変更が可能であるものとする。
図9は、本実施形態にかかる定着装置50の概略構成を示す断面図である。
この図に示すように、定着装置50は、定着ローラ41と、複数の支持ローラ(加圧ローラ(押圧部材)42、剥離ローラ(押圧部材)43、テンションローラ47)と、各支持ローラに懸架(張架)されたベルト54とからなる。なお、この定着装置50は、実施形態1で図8に示した定着装置40において、ベルト44をベルト54に変更し、加圧ローラ42および剥離ローラ43の回転軸方向の長さを後述するように規定したものである。そして、定着装置50は、実施形態1の画像形成装置に、定着装置40に代えて備えられるものである。
図10はベルト54の断面図である。この図に示すように、ベルト54は、ベルト基材54aと離型層54bとからなる無端ベルトであり、各支持ローラ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)にベルト基材54a側が内周面となるように懸架されている。ベルト54の離型層54bは、定着ローラ41の離型層41cと同様、トナーの付着を防止する目的で設けられるものであり、例えばPFAやPTFEなどからなる。また、ベルト基材54aの材質は特に限定されるものではないが、例えばPI(ポリイミド)などからなる。なお、ベルト54の表面硬度は、剥離ローラ43と同様、定着ローラ41の表面硬度より高い方がよい。
また、図10に示すように、ベルト54は各支持ローラに懸架されたときに内周面側となる面の両端部(各支持ローラの回転軸方向に配置される両端部)に、ベルト基材面に対して略垂直な方向に突出するリブ(蛇行規制部材)55・55を備えている。このリブ55・55は、無端ベルトであるベルト54の両端部に全周に渡って設けられている。リブ55・55の材質は特に限定されるものではないが、弾性部材であることが好ましく、例えばベルト基材54aと同様の材質で形成される。なお、図10に示すように、両リブ55・55間の間隔(両リブ55・55の内側壁間の距離)を、リブ間隔L0とする。
図11は、加圧ローラ42および剥離ローラ43を定着ローラ41側から見た透視平面図である。なお、この図には、加圧ローラ42および剥離ローラ43に懸架されるベルト54を破線で示している。
この図に示すように、本実施形態では、加圧ローラ長(加圧ローラ42のベルト54との当接部における当該ローラの回転軸方向の長さ)L1と、剥離ローラ長(剥離ローラ43のベルト54との当接部における当該ローラの回転軸方向の長さ)L2と、リブ間隔L0とが、
L0>L1>L2
の関係を満たすように設定されている。
一般に、複数の支持ローラによってベルトを懸架する場合、各支持ローラの回転軸の平行度が微妙に異なるなどの理由により、ベルトが蛇行してしまうという課題がある。そして、この課題を解決するために、ベルト端部に凸部を設け、そのベルトが懸架されるローラに、上記ベルト端部の凸部と係合する凹部を設ける技術が、例えば上記した特許文献2や特許文献3に記載されているが、これらの技術では、ベルト端部に設けた凸部が懸架ローラの凹部を乗り越え、ベルト走行不良を起こすという問題があった。
これに対して、本実施形態にかかる定着装置50では、ベルト54の両端部に設けたリブ55が、定着ローラ41との間で定着ニップ部を形成する支持ローラのうち、記録紙搬送方向の下流側に位置する支持ローラである剥離ローラ43の回転軸方向両端部に当接することによって、ベルト54の蛇行を防止する。すなわち、記録紙搬送方向の上流側において第1ニップ部を形成する加圧ローラ42ではなく、その下流側において第2ニップ部を形成する剥離ローラ43の両端部が、ベルト54の両端部に設けられたリブ55と当接することによって、ベルトの蛇行を防止する蛇行防止手段として機能する。
このように、ベルトの蛇行を規制するローラである蛇行規制ローラ(懸架ローラ)を、記録紙搬送方向の最上流側の定着ニップ部を形成するローラ(加熱ローラニップ入口側)ではなく、記録紙搬送方向の下流側の定着ニップ部を形成するローラ(出口ニップ側のローラ)とすることにより、蛇行規制ローラにベルト54に設けたリブ55が乗り上げることを防止できる。したがって、蛇行規制ローラへのベルトの乗り上げによる加熱ローラの破損を防止できる。
なお、ベルト54の端部に設けたリブ55・55と、剥離ローラ43の両端部との間隔は、例えば、各リブ55と剥離ローラ43の各端部との間隔が等しい場合に、1mm〜2mmとなるように設定すればよい。すなわち、4mm>L0−L2>2mmとなるように設定すればよい。これにより、定着ローラ41からの熱によって、ベルト54あるいは剥離ローラ43が熱変形した場合でも、リブ55・55と剥離ローラ43の両端部との間隔を適切に保つことができる。すなわち、ベルト54が正常に走行している場合には剥離ローラ43とリブ55・55とが接触しないので両者の間に摩擦力が生じることがなく、ベルト54および剥離ローラ43の長寿命化を図ることができる。一方、ベルト54が蛇行しようとすると、リブ55と剥離ローラ43の端部とが当接し、それによってベルト54の蛇行を適切に規制することができる。
また、剥離ローラ43だけでなくテンションローラ47についても、剥離ローラ43と同様、蛇行規制部材として機能させてもよい。
また、本実施形態では、ベルト54が懸架される支持ローラが3つ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)の場合の構成について説明したが、これに限るものではなく、支持ローラの個数は2個であってもよく、あるいは4個以上であってもよい。ただし、支持ローラの個数を増やしすぎると、ベルト54のベルト長が長くなること、および、ベルト54と各支持ローラとの接触箇所が増えることにより、ベルト54からの放熱量が増大し、定着ローラ41を加熱するための消費電力が大きくなる場合があるので、支持ローラの個数は3個とすることが好ましい。
なお、本実施例において、弾性層42bを省略した中実のステンレスで外径15mmのローラの表面に、すべり性を良くするためのPFAやPTFEなどからなる剥離層42cを設けた加圧ローラ42、もしくは、表面にステンレスが露出した加圧ローラ42を用いても同様の効果を有するものである。また、剥離ローラ43として加圧ローラと同じ仕様のステンレスのローラを用いていても良い。
なお、加圧ローラ42、剥離ローラ43にステンレスなどの高湿ローラを用いた場合でも、実施形態1同様の第1ニップ、第2ニップの通過条件が設定されるように定着ローラ、ローラ押し付け力などを設定することにより、実施形態1と同様に画像ズレなどの画質不良、定着不良が防止できる。
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1および2における画像形成装置および定着装置に備えられる部材と同じ機能を有する部材については、実施形態1および2と同じ符号を用い、その説明を省略する。また、同じ符号を付した部材については、特に断らない限り、実施形態1および2と同様の変更が可能であるものとする。
図12は、本実施形態にかかる定着装置60の概略構成を示す断面図である。なお、定着装置60は、上記各実施形態に記載した定着装置に代えて、上記した画像形成装置に備えられるものである。この図に示すように、定着装置60は、定着ローラ41と、複数の支持ローラ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ67)と、各支持ローラに懸架(張架)されたベルト54とからなる。なお、この図に示すように、定着装置60は実施形態2において図9に示した定着装置50と略同様の構成である。ただし、定着装置50におけるテンションローラ47に代えて、ベルト54の内周面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段として機能するテンションローラ67を備えている点が、定着装置50とは異なる。
図13(a)は、テンションローラ67の斜視図であり、図13(b)はテンションローラ67の一部を示す断面図である。
図13(a)および図13(b)に示すように、テンションローラ67は、中空構造の芯金(芯材)67aと、芯金67aの外周面を被覆するように設けられた例えばセラミックなどの多孔質層67bとからなる。そして、芯金67aの外周面には多数の微小な孔(図示せず)が設けられており、これによって、芯金67aの内部に充填・供給される潤滑剤が、芯金67aに設けられた孔を介して多孔質層67bに排出され、多孔質層67bに潤滑剤が含浸されるようになっている。これにより、テンションローラ67の表面に含浸された潤滑剤が、ベルト54の内周面に塗布される。
なお、芯金67aの両端部は、中央部に比べて直径の細い円筒状に形成されており、この両端部がテンションローラ67の回転軸として機能するようになっている。また、芯金67a内には、上記回転軸として機能する両端部を介して、テンションローラ67の外部に備えられる図示しない潤滑剤供給手段から芯金67a内に必要に応じて潤滑剤が補充されるようになっている。
また、ベルト54の内周面における両端部には、上記したように、リブ(ビード)55・55が設けられている。これにより、ベルト54の内周面に塗布された潤滑剤が、ベルト54の外周面に回りこむことを防止している。
以上のように、定着装置60では、定着ローラ(加熱ローラ)41から遠い位置に配置される支持ローラであるテンションローラ67において、ベルト54の内周面に潤滑剤を塗布(供給)する。このように、熱源である定着ローラ(加熱ローラ)41から遠い位置で潤滑剤を塗布することにより、周囲温度が低い位置で潤滑剤を塗布できるので、潤滑剤の塗布量を安定させ、適正量の潤滑剤をベルト54の内周面に供給することができる。
すなわち、一般に、ベルトを複数のローラで懸架した加熱装置(定着装置)は、ベルトが回転中に蛇行するという問題がある。そのため、ベルト内面に潤滑剤を塗布することによって蛇行の原因である寄り力を低減することで、そのような問題を改善する方法が提案されている。しかしながら、ベルト内面に潤滑剤を塗布する場合、塗布量が多すぎる、あるいは、ベルトの外周部に潤滑剤が回り込む等すると、ベルトがスリップする原因となるため、潤滑剤の適正塗布と、ベルト外周面への回り込みの防止が必要である。ところが、加熱源に近い位置でベルトに潤滑剤を供給する構成とすると、高温高圧の条件下であるため、長期にわたって潤滑剤を安定供給することが困難である。したがって、潤滑剤の供給量が不安定となり、潤滑剤の過不足が生じてしまう。そこで、本実施形態のように、熱源である定着ローラ(加熱ローラ)41から遠い位置で潤滑剤を塗布することにより、周囲温度が低い位置で潤滑剤を塗布できるので、潤滑剤の供給量を安定させることができる。
また、定着装置60では、潤滑剤を供給する潤滑剤塗布手段(供給部材)として、表面に多孔質層67bを有するテンションローラ67を用いている。このように、例えばセラミックなどの多孔質層に潤滑剤を含浸させ、潤滑剤を含浸させた多孔質層にベルトを当接させることによってベルトの内周面に潤滑剤を供給する構成とすることで、適当な量の潤滑剤をベルト内面に供給できる。なお、多孔質層の材質は、セラミックに限るものではなく、潤滑剤を適度に含浸でき、ベルト54を懸架する支持ローラとしての適切な強度を有する材質であればよい。
また、定着装置60では、ベルト54における内周囲面の両端部にリブ(ビード)55が設けられている。これにより、ベルト54の内周面に塗布した潤滑剤がベルト54の外周面に回り込むのを防止することができる。したがって、ベルトの外周面に潤滑剤が回りこむことによるベルトのスリップ等の弊害を防止することができる。
また、定着装置60では、テンションローラ67が、ベルト54を支持する複数の支持ローラのうち、最下方に配置されている。つまり、テンションローラ67は、複数の支持ローラに懸架されたベルト54における最も下側(重力作用方向に対して最も下側、地面側)の位置を支持している。これにより、テンションローラ67に含浸された潤滑剤が流出することを防止できる。つまり、図13(b)に示したように、テンションローラ67に含浸された潤滑剤が外部に流出しようとしても、ベルト54の両端部に設けられたリブ55・55によって堰き止められ、外部に流出することがない。なお、ベルト54における、蛇行防止部材としてのリブ55・55のさらに両端側に、例えばリブ55・55と略同様の構成からなる潤滑剤の流出を防止する潤滑剤流出防止部材を別途備えてもよい。あるいは、蛇行防止部材としてのリブ55・55を設けず、潤滑剤流出防止部材のみを備えてもよい。
また、例えば図14(a)および図14(b)に示すように、テンションローラ67(多孔質層67b)の表面の一部に該ローラの回転軸方向に沿って略一様に当接するブレード(平滑手段)61を設けてもよい。これにより、テンションローラ67におけるベルト54との当接面の潤滑剤含浸状態(当接面の条件)を一定に(平滑化)でき、潤滑剤をより均等に塗布することができる。
また、潤滑剤塗布手段としてのテンションローラ67を、実施形態2において図9に示した定着装置50におけるテンションローラ47に代えて備えた定着装置60について説明したが、定着装置60の構成はこれに限るものではない。例えば、実施形態1において図8に示した定着装置40において、テンションローラ47をテンションローラ67に置き換えた構成としてもよい。
また、本実施形態ではベルト54が懸架される支持ローラが3つ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ67)の場合について説明したが、これに限るものではなく、支持ローラの個数はさらに多数であってもよい。ただし、支持ローラの個数を増やしすぎると、ベルト54のベルト長が長くなること、および、ベルト54と各支持ローラとの接触箇所が増えることにより、ベルト54からの放熱量が増大し、定着ローラ41を加熱するための消費電力が大きくなる場合があるので、支持ローラの個数は3個とすることが好ましい。また、支持ローラを4個以上備える場合にも、テンションローラ67を、ベルト54における最も下側(重力作用方向に対して最も下側)の位置を支持するように配置することが好ましい。
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1〜3における画像形成装置および定着装置に備えられる部材と同じ機能を有する部材については、各実施形態と同じ符号を用い、その説明を省略する。また、同じ符号を付した部材については、特に断らない限り、各実施形態と同様の変更が可能であるものとする。
図15(a)および図15(b)は、本実施形態にかかる定着装置70の概略構成を示す断面図である。なお、定着装置70は、上記各実施形態に記載した定着装置に代えて、上記した画像形成装置に備えられるものである。これらの図に示すように、定着装置70は、定着ローラ41と、複数の支持ローラ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)と、各支持ローラに懸架(張架)されたベルト54とからなる。また、定着装置70は、テンションローラ47に対してベルト54に張力を与える方向への付勢力を与えるばね(付勢手段)75と、ばね75の一端を支持するとともに、上記不勢力の付与方向に移動可能に設けられた付勢フレーム76と、付勢フレーム76に対して上記不勢力の付与方向への押圧力を発生する偏心カム77とを備えている。
図15(a)に示すように、定着動作時には、偏心カム77によって付勢フレーム76に対してばね75を収縮させる方向(下向き)に図示しない駆動源からの押圧力が付与され、これによってテンションローラ47が下方向に移動してベルト54に対して圧接し、ベルト54に張力が付与される(テンション状態となる)。
一方、定着動作を行わない停止時には、図15(b)に示すように、偏心カム77が定着動作時に対して約180℃回転することで付勢フレーム76に対する押圧力が解除され、テンションローラ47に対する不勢力が付与されない状態となるので、テンションローラ47は上方向に移動する。したがって、ベルト54の張力は解除され、フリーテンション状態となる。
図16は、定着装置70の構成を示すブロック図である。この図に示すように、定着装置70は、入力部71、制御部72、ローラ回転駆動部73、ローラ移動駆動部(テンションローラ移動駆動部)74を備えている。
入力部71は、定着装置70が備えられる画像形成装置からの定着動作のオン/オフに関する指示を受け付け、制御部72に伝達する。
制御部72は、定着装置70における全ての動作を制御するものであり、加熱制御部72a、回転制御部72b、テンションローラ移動制御部(移動制御部)72cを備えている。なお、制御部72は、画像形成装置の制御部内に設けられていてもよい。
加熱制御部72aは、定着ローラ41に備えられている加熱源Qを制御し、定着ローラ41の表面温度、すなわち定着温度を制御する。なお、定着ローラ41の表面温度を検出する温度センサ(図示せず)を設け、この温度センサの検出結果に応じて加熱制御部72aが加熱源Qを制御するようにしてもよい。
回転制御部72bは、回転駆動部73の動作を制御する。回転駆動部73は、各ローラを回転駆動させるものであり、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の発生する駆動力を各支持ローラの回転軸に伝達する伝達手段からなる。なお、この伝達手段は、必ずしも全ての支持ローラに駆動力を伝達するものでなくてもよく、一部の支持ローラ(例えば加圧ローラ42)に駆動力を伝達して回転させることにより、ベルト54を各支持ローラに沿って回転駆動させ、それによって他の支持ローラ(例えば剥離ローラ43およびテンションローラ47)を回転駆動させるようにしてもよい。
テンションローラ移動制御部72cは、ローラ移動駆動部74の動作を制御する。ローラ移動駆動部74は、偏心カム77を回転駆動させるものであり、偏心カム77を回転させることで、付勢フレーム76およびテンションローラ47を移動させ、ベルト54に作用する張力を、テンション状態(張力付与状態)とフリーテンション状態(張力解除状態)とに切り替える。なお、ローラ移動駆動部74は、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の駆動力を偏心カム77に伝達する伝達手段とによって構成される。
画像形成装置の制御部から入力部71を介して制御部72に入力される信号が、定着動作を行う指示である場合、テンションローラ移動制御部72cは、ローラ移動駆動部74の動作を制御し、偏心カム77を付勢フレーム76に対してばね75を収縮させる方向(下向き)への押圧力を付与させる位置に回転させる。これにより、図15(a)に示したように、テンションローラ47が下方向に移動してベルト54に対して圧接し、ベルト54に張力が付与されてテンション状態となる。
一方、画像形成装置の制御部から入力部71を介して制御部72に入力される信号が、定着動作を停止させる指示である場合、テンションローラ移動制御部72cは、ローラ移動駆動部74の動作を制御し、偏心カム77を付勢フレーム76に対する押圧力を解除させる位置に回転させる。これにより、図15(b)に示すように、テンションローラ47に対する不勢力が付与されない状態となるので、テンションローラ47は上方向に移動する。したがって、ベルト54の張力は解除され、フリーテンション状態となる。
以上のように、本実施形態にかかる定着装置70は、定着動作を行わない時には、ベルト54の張力を解除してフリーテンション状態とする。これにより、ベルトに巻癖がつくことを防止できるので、巻癖によってベルトに生じる寄り力を低減することができる。したがって、蛇行防止機構、すなわち、ベルト54に備えられるリブ55・55および剥離ローラ43の両端部に対する負荷を低減し、ベルト54の長寿命化(ロングライフ化)を実現できる
なお、本実施形態では、テンションローラ47の位置を、ベルト54の張力を増減する方向に移動可能とする構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、テンションローラ47に代えて、実施形態3に記載したテンションローラ67を用い、このテンションローラ67の位置をテンションローラ47の場合と同様に移動可能とする構成としてもよい。あるいは、ベルト54に代えて、実施形態1に記載したベルト44を用いてもよい。
また、本実施形態では、テンションローラ67の位置を移動させることによって、ベルト54の張力を制御する構成としたが、これに限るものではなく、他の支持ローラ(例えば加圧ローラ42および/または剥離ローラ43)を移動させることによってベルト54の張力を制御する構成としてもよい。
また、本実施形態では、ベルト54を支持する支持ローラが3個(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)の場合について説明したが、これに限らず、さらに多数の支持ローラを備えてもよく、あるいは支持ローラが2つの構成としてもよい。この場合、いずれかの支持ローラの回転軸を移動可能とすることにより、ベルト54の張力を切替え可能とすればよい。また、回転軸の位置を移動可能とする支持ローラは、必ずしも1つでなくてもよく、複数の支持ローラの位置を移動させることにより、ベルト54の張力を切り替えてもよい。
また、本実施形態では、テンションローラ47を移動させる手段として、偏心カム77、付勢フレーム76、ばね75を備えた構成としたが、これに限られるものではなく、テンションローラ47の位置を適切に制御できる構成であればよい。
また、本実施形態では、定着動作を行わないときに、ベルト54の張力を解除するとしたが、これに限るものではない。すなわち、必ずしも張力が完全にかからない状態とする必要はなく、ベルト54の張力を定着動作時よりも低減させる構成としてもよい。
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1〜4における画像形成装置および定着装置に備えられる部材と同じ機能を有する部材については、各実施形態と同じ符号を用い、その説明を省略する。また、同じ符号を付した部材については、特に断らない限り、各実施形態と同様の変更が可能であるものとする。
図17は、本実施形態にかかる定着装置80における、定着動作時の状態を示す側面図である。また、図18は、定着装置80を下側(地面側)から見た平面図である。なお、定着装置80は、上記各実施形態に記載した定着装置に代えて、上記した画像形成装置に備えられるものである。
図17および図18に示すように、定着装置80は、定着ローラ41、複数の支持ローラ(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)、ベルト54、駆動ギヤ81a、従動ギヤ81b、可動サイドフレーム82、ガイド部材83、偏心カム84、偏心カム85、ばね(付勢手段)84、ばね(付勢手段)85、ばね(付勢手段)75、付勢フレーム76を備えている。
駆動ギヤ81aは、図示しない駆動源からの回転駆動力を、従動ギヤ81bに伝達する。従動ギヤ81bは、加圧ローラ42の回転軸(加圧ローラシャフト、芯金)42aに嵌合されており、駆動ギヤ81aから伝達される回転駆動力によって加圧ローラ42を回転させる。
可動サイドフレーム82は、加圧ローラ42の回転軸42aおよび剥離ローラ43の回転軸(剥離ローラシャフト、芯金)43aを回転可能に軸支するものであり、両ローラの両端側にそれぞれ備えられる。
また、図17に示すように、可動サイドフレーム82の加圧ローラ42側の端部には突出部82aが設けられ、剥離ローラ43側の端部には突出部82bが設けられている。そして、突出部82aの下部には、突出部82aを定着ローラ41の方向に付勢するばね86が備えられ、突出部82bの下部には、突出部82bを定着ローラ41の方向に付勢するばね87が備えられている。
さらに、突出部82aの上部には偏心カム84が備えられ、突出部82bの上部には偏心カム85が備えられている。なお、偏心カム84および85の回転軸(偏心軸)は、図示しない駆動手段に接続されている。そして、偏心カム84は、加圧ローラ42の回転軸42aの位置を移動させることにより、加圧ローラ42と定着ローラ41との間におけるベルト54の定着ローラ41に対する当接状態を、当接状態と離接状態とに切り替える。また、偏心カム85は、剥離ローラ43の回転軸43aの位置を移動させることにより、剥離ローラ43と定着ローラ41との間におけるベルト54の定着ローラ41に対する当接状態を、当接状態と離接状態とに切り替える。なお、定着動作時には、偏心カム84,85は、図示しない移動手段によって突出部82a、82bから離接される。あるいは、駆動ギヤ81aが回転駆動されることによって、加圧ローラ42の回転軸42aガイド穴83aに沿って定着ローラ41側に移動し、それによって偏心カム84,85が突出部82a、82bから離接するようにしてもよい。
図19は、定着装置80の構成を示すブロック図である。この図に示すように、定着装置80には、入力部71、制御部90、ローラ回転駆動部94、加圧ローラ移動駆動部95、剥離ローラ移動駆動部96、テンションローラ移動駆動部74を備えている。
入力部71は、定着装置80が備えられる画像形成装置からの指示を受け付け、制御部90に伝達する。
制御部90は、定着装置80における全ての動作を制御するものであり、加熱制御部72a、回転制御部72b、移動制御部91を備えている。なお、制御部90は、画像形成装置の制御部内に設けられていてもよい。
加熱制御部72aは、定着ローラ41に備えられている加熱源Qを制御し、定着ローラ41の表面温度、すなわち定着温度を制御する。なお、定着ローラ41の表面温度を検出する温度センサ(図示せず)を設け、この温度センサの検出結果に応じて加熱制御部72aが加熱源Qを制御するようにしてもよい。
回転制御部72bは、回転駆動部73の動作を制御する。回転駆動部73は、各ローラを回転駆動させるものであり、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の発生する駆動力を加圧ローラ42の回転軸42aに嵌合された従動ギヤ81bに伝達する駆動ギヤ81aに伝達する。
移動制御部91は、加圧ローラ移動制御部92、剥離ローラ移動制御部93、テンションローラ移動制御部72cを備えている。
加圧ローラ移動制御部92は、加圧ローラ移動駆動部95の動作を制御する。加圧ローラ移動駆動部95は、偏心カム84を回転駆動させるものであり、偏心カム84を回転させることで、可動サイドフレーム82の突出部82aを移動させ、加圧ローラ42の位置を移動させる。なお、加圧ローラ移動駆動部95は、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の駆動力を偏心カム84に伝達する伝達手段とによって構成される。
剥離ローラ移動制御部93は、剥離ローラ移動駆動部96の動作を制御する。剥離ローラ移動制御部96は、偏心カム85を回転駆動させるものであり、偏心カム85を回転させることで、可動サイドフレーム82の突出部82bを移動させ、剥離ローラ43の位置を移動させる。なお、剥離ローラ移動駆動部96は、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の駆動力を偏心カム85に伝達する伝達手段とによって構成される。
テンションローラ移動制御部72cは、テンションローラ移動駆動部74の動作を制御する。テンションローラ移動駆動部74は、偏心カム77を回転駆動させるものであり、偏心カム77を回転させることで、付勢フレーム76およびテンションローラ47を移動させ、ベルト54に作用する張力を、テンション状態(張力付与状態)とフリーテンション状態(張力解除状態)とに切り替える。なお、テンションローラ移動駆動部74は、例えばモータ等の駆動源と、この駆動源の駆動力を偏心カム77に伝達する伝達手段とによって構成される。
次に、定着装置80の動作について説明する。まず、図17に示した定着動作時の状態から、定着動作を停止し、ベルト54を定着ローラ41から離接させる場合の動作について説明する。図20は、この場合の動作の流れを示すフロー図である。
入力部71が、画像形成装置から定着動作を停止させる指示を受信すると(S1)、制御部90は、加圧ローラ42を定着ローラ41から離接させる(S2)。より詳細には、制御部90内の加圧ローラ移動制御部92が、加圧ローラ移動駆動部95を制御し、図21(a)に示すように、偏心カム84を定着動作時の状態から約180度回転させる。これにより、可動サイドフレーム82の突出部82aが押し下げられ、加圧ローラ42がガイド穴83aに沿って定着ローラ41から遠ざかる方向に移動する。したがって、加圧ローラ42の押圧力によって定着ローラ41に圧接していたベルト54の一部が定着ローラ41から離接する。すなわち、ベルト54を介して定着ローラ41に当接していた加圧ローラ42が、定着ローラ41から離接する。
次に、制御部90は、加圧ローラ42の回転駆動を停止させる(S3)。すなわち、制御部90内の回転制御部72bが、ローラ回転駆動部94の動作を制御して、駆動ギヤ81aの回転駆動を停止させる。これにより、駆動ギヤ81aから従動ギヤ81bを介して加圧ローラ42に伝達されていた回転駆動力が付与されなくなり、加圧ローラ42の回転が停止される。また、駆動ローラである加圧ローラ42の回転が停止されることにより、ベルト54の回転(移動)が停止され、従動ローラである剥離ローラ43およびテンションローラ47の回転も停止される。
次に、制御部90は、剥離ローラ43を定着ローラ41から離接させる(S4)。より詳細には、制御部90内の剥離ローラ移動制御部93が、剥離ローラ移動駆動部96を制御し、図21(b)に示すように、図21(a)の状態から約180度回転させる。これにより、可動サイドフレーム82の突出部82bが押し下げられ、剥離ローラ43が定着ローラ41から遠ざかる方向に移動する。したがって、剥離ローラ43の押圧力によって定着ローラ41に圧接していたベルト54が定着ローラ41から離接する。すなわち、ベルト54を介して定着ローラ41に当接していた加圧ローラ42が、定着ローラ41から離接する。これにより、ベルト54は定着ローラ41から離接する。
次に、制御部90は、テンションローラ47を移動させ、ベルト54の張力を解除してフリーテンション状態にする(S5)。より詳細には、制御部90内のテンションローラ移動制御部72cは、テンションローラ移動駆動部74の動作を制御し、図21(c)に示すように、偏心カム77を付勢フレーム76に対する押圧力を解除させる位置に回転させる。これにより、テンションローラ47に対する不勢力が付与されない状態となるので、テンションローラ47は上方向に移動する。言い換えれば、テンションローラ47は、定着動作時に下方向に強制移動されてベルト54に張力を付与しているが、この状態から強制移動を解除することにより、ベルト54の張力を解除し、フリーテンション状態とする。これにより、ベルト54の離接動作が終了する。
次に、ベルト54を離接状態から当接状態に切り替える場合の動作について説明する。図22はこの場合の動作の流れを示すフロー図である。
入力部71が、画像形成装置から定着動作を開始させる指示を受信すると(S11)、制御部90は、テンションローラ47を移動させてベルト54に張力を付与する(S12)。より詳細には、制御部90内のテンションローラ移動制御部72cは、テンションローラ移動駆動部74の動作を制御し、偏心カム77を付勢フレーム76に対して押圧力を付与する位置に回転させる。すなわち、偏心カム77を、テンションローラ47を下方向に強制移動させる位置に回転させる。これにより、定着装置80は、図21(b)に示す状態となり、ベルト54に張力が付与される。なお、例えば定着装置80の起動時には、この状態でウォームアップ動作(予熱動作)を行うようにしてもよい。また、その場合、加圧ローラ42の回転速度、すなわちベルト54の回転速度を、定着動作時よりも遅い速度で回転させるようにしてもよい。
次に、制御部90は、剥離ローラ43を定着ローラ41に当接させる(S13)。より詳細には、制御部90内の剥離ローラ移動制御部93が、剥離ローラ移動駆動部96を制御し、図21(a)に示すように、図21(b)の状態から約180度回転させる。これにより、可動サイドフレーム82の突出部82bがばね87によって押し上げられ、剥離ローラ43が定着ローラ41の方向に移動する。したがって、剥離ローラ43の押圧力によってベルト54が定着ローラ41に当接(圧接)する。すなわち、加圧ローラ42が、ベルト54を介して定着ローラ41に当接する。
次に、制御部90は、加圧ローラ42の回転駆動を開始させる(S14)。すなわち、制御部90内の回転制御部72bが、ローラ回転駆動部94の動作を制御して、駆動ギヤ81aの回転駆動を開始させる。これにより、駆動ギヤ81aから従動ギヤ81bを介して加圧ローラ42に回転駆動力が伝達され、加圧ローラ42の回転が開始される。また、駆動ローラである加圧ローラ42の回転が開始されることにより、ベルト54の回転(移動)が開始され、従動ローラである剥離ローラ43およびテンションローラ47の回転も開始される。
次に、制御部90は、加圧ローラ42を定着ローラ41に当接させる(S15)。より詳細には、制御部90内の加圧ローラ移動制御部92が、加圧ローラ移動駆動部95を制御し、図17に示すように、偏心カム84を図21(a)の状態から約180度回転させる。これにより、可動サイドフレーム82の突出部82aがばね86によって押し上げられ、加圧ローラ42がガイド穴83aに沿って定着ローラ41の方向に移動するので、加圧ローラ42の押圧力によってベルト54が定着ローラ41に当接(圧接)する。したがって、定着動作が可能な状態となる。
以上のように、本実施形態にかかる定着装置80では、定着動作を行わない時には、ベルト54を定着ローラ41から離接させ、定着動作を行うときに当接させる。このように、定着動作を行わないときにベルト54を定着ローラ41から離接させることにより、ベルト54およびベルト54に備えられるリブ(蛇行防止手段)55に作用する寄り力(蛇行力)を低減できる。
すなわち、ベルトを定着ローラに対して常時巻付けた状態で回転させる場合、ベルトに作用する寄り力は常に最大となる。そのため、ベルトに設けた蛇行防止機構(たとえばリブ(ビード)等)にも常時最大負荷がかかる。このことが、ベルト寿命を短くする要因の一つとなっていた。そこで、本実施形態のように、ベルト54を離接式とすることにより、ベルト54にかかる負荷を低減し、ベルト54の長寿命化を図ることができる。
また、定着ローラ41の加熱動作時(ウォームアップ時)には、ベルト54を定着ローラ41と離れた状態としてもよい。また、その状態で、定着速度より遅い速度でベルト54を回転させながら定着ローラ41およびベルト54を加熱するようにしてもよい。この場合、ベルト54と当接するローラが定着動作時よりも減るため、ベルト54に作用する寄り力が低下し、ベルト54およびベルト54に設けられた蛇行防止部材に作用する力も減少する。また、定着処理速度より遅い速度で回転させることで、寄り力をさらに低減させることができる。
また、定着装置80では、停止時に、ベルト54のテンションが低くなるように、テンションローラ47を移動させて、ベルト54の張力を解除する。これにより、ベルト54に巻癖がつくことを防止でき、巻癖による寄り力を低減することができる。なお、本実施形態では、テンションローラ47の位置を移動させることによってベルト54の張力を解除しているが、これに限るものではなく、ベルト54を懸架する各支持ローラ(ベルト懸架ローラ)の位置(相体位置)関係を適宜調整できる構成であればよい。
また、定着装置80では、定着動作時に、ベルト54が定着ローラ41に当接していない状態から当接状態に移行する際、まず、(1)テンションローラ47を移動させてベルト54に張力を付与し、(2)剥離ローラ43によってベルト54を定着ローラ41に当接させ、(3)この状態でベルト54を回転(搬送)させ、(4)ベルト54を回転させながら、加圧ローラ42によってベルト54を定着ローラ41に当接させる。これによって、定着ローラ41に対するベルト54の巻き付き部におけるベルト54のたるみやしわの発生を防止し、ベルト54の走行性(回転性)を安定させることができる。
つまり、定着ローラ(加熱ローラ)41に対してベルト54を巻き付かせる動作時において、加圧ローラ42および剥離ローラ43(複数あるバックアップローラ)を定着ローラ41に同時に当接させると、加圧ローラ42および剥離ローラ43(各バックアップローラ)の定着ローラ41に対する当接部が、ベルト位置の拘束点となり、その間に懸架されたベルト部分にしわやたるみが発生しやすく、ベルト走行性の悪化やベルト割れの原因となっていた。これに対して、本実施形態のように、上記の順序でベルト54を定着ローラ41に当接させて、ベルト54を定着ローラ41に巻き付かせることにより、ベルト54のたるみやしわの発生を防止し、ベルト54の走行性(回転性)を安定させることができる。
また、定着装置80では、ベルト54が定着ローラ41に当接した状態から、ベルト54を定着ローラ41から離接させる動作を行う際、まず、(a)ベルト54を回転させた状態で、加圧ローラ42を定着ローラ41から離接させ、(b)ベルト54の回転を停止させ、(c)剥離ローラ43を定着ローラ41から離接させ、(d)テンションローラ47を移動させてベルト54の張力を解除する。
これにより、ベルト54が定着ローラ41に当接していない状態から当接状態に移行する場合と同様、定着ローラ41に対するベルト54の巻き付き部におけるベルト54のたるみやしわの発生を防止し、ベルト54の走行性(回転性)を安定させることができる。
なお、本実施形態では、加圧ローラ42および剥離ローラ43の位置を移動させることにより、ベルト54の定着ローラ41に対する当接状態を切り替える構成について説明したが、これに限るものではない。例えば、定着ローラ41の位置を移動可能とすることにより、本実施形態と同様の各ローラの当接状態を実現するようにしてもよい。
また、テンションローラ47に代えて、実施形態3に記載したテンションローラ67を備えてもよい。この場合、ベルト54の内周面に潤滑剤を適切に塗布できるので、ベルト54の駆動をより安定させることができる。
また、本実施形態では、テンションローラの位置を移動可能とすることにより、ベルと54の張力を解除できる構成としたが、これに限るものではない。例えば、ベルト54の張力の解除は行わず、ベルト54の定着ローラ41に対する当接状態のみを上記のように制御するようにしてもよい。また、ベルト54の張力を完全に解除する構成に限らず、ベルト54の張力を定着動作時よりも低減させる構成としてもよい。
また、本実施形態では、ベルト54を支持する支持ローラが3個(加圧ローラ42、剥離ローラ43、テンションローラ47)の場合について説明したが、これに限らず、さらに多数の支持ローラを備えてもよく、あるいは支持ローラが2つの構成としてもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。