以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
この実施の形態は、静電潜像担持体としての感光体ドラムの帯電及び露光、当該感光体ドラム上に形成された静電潜像のトナーによる現像、得られたトナー画像の記録媒体上への転写、当該記録媒体上のトナー画像の定着といったプロセスを経ることにより、画像形成を行う電子写真記録方式の画像形成装置である。なお、以下では、説明の便宜上、感光体ドラムに光を照射して露光する光源として、複数の発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、LEDという。)からなる列を備えた画像形成装置を取り上げ、これらLED素子を被駆動素子として本発明を適用した場合について説明するものとする。
まず、本発明の第1の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
画像形成装置は、例えば図1に示すような制御回路を備える。すなわち、画像形成装置は、当該画像形成装置を統括的に制御する印刷制御部1を備える。印刷制御部1は、例えば、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、及びタイマ等から構成され、当該画像形成装置における印字部の内部に配設される。印刷制御部1は、図示しない上位コントローラから送信された制御信号SG1やドットマップデータを一次元的に配列したビデオ信号SG2等に基づいて、当該画像形成装置全体をシーケンス制御し、印刷動作を行う。
より具体的には、印刷制御部1は、制御信号SG1に含まれる印刷指示を受信すると、まず、ヒータ22aを内蔵した定着器22の温度を検出する定着器温度センサ23によって検出された温度を読み込み、当該定着器22が使用可能な温度範囲にあるか否かを判定する。そして、印刷制御部1は、定着器22が使用可能な温度範囲にないものと判定した場合には、ヒータ22aに対する通電を行い、使用可能な温度まで定着器22を加熱する。一方、印刷制御部1は、定着器22が使用可能な温度範囲にあるものと判定した場合には、ドライバ2を介して現像・転写プロセス用モータ3を回転させるとともに、チャージ信号SGCを帯電用高圧電源25に供給することによって当該帯電用高圧電源25をオン状態とし、現像器27の帯電を行う。
そして、印刷制御部1は、図示しない給紙トレイにおける記録媒体としての用紙の有無を用紙残量センサ8を介して検出するとともに、当該給紙トレイにセットされている用紙の種類を用紙サイズセンサ9を介して検出し、当該用紙に応じた用紙の給送を開始する。ここで、用紙送りモータ5は、ドライバ4を介して双方向に回転させることが可能とされ、印刷制御部1は、最初に当該用紙送りモータ5を逆回転させ、用紙吸入口センサ6によって検出されるまで、給紙トレイにセットされた用紙を予め設定された量だけ給送する。そして、印刷制御部1は、ドライバ4を介して用紙送りモータ5を正回転させ、用紙を当該画像形成装置内部の印刷機構へと搬送する。
続いて、印刷制御部1は、用紙が印刷可能な位置まで到達すると、図2に示すように、主走査同期信号や副操作同期信号を含むタイミング信号SG3を上位コントローラに対して送信し、これに応じて、上位コントローラからページ毎に編集されたビデオ信号SG2を受信する。そして、印刷制御部1は、所定のクロック信号HD−CLKに基づいて、受信したビデオ信号SG2を、印字データ信号HD−DATAとしてLEDヘッド19に対して転送する。なお。LEDヘッド19は、後に詳述するが、1ドット(ピクセル)の印字のために設けられたLED素子を複数個線状に配列したものである。
このようなビデオ信号SG2の送受信は、印刷ライン毎に行われる。印刷制御部1は、1ライン分のビデオ信号SG2を受信すると、LEDヘッド19に対してラッチ信号HD−LOADを送信し、印字データ信号HD−DATAを当該LEDヘッド19内に保持させる。なお、印刷制御部1は、上位コントローラから次のラインのビデオ信号SG2を受信している最中においても、LEDヘッド19に保持させた印字データ信号HD−DATAについての印刷を行わせることができる。
LEDヘッド19によって印刷される情報は、所定の負電位に帯電させられた図示しない感光体ドラム上に、電位が上昇したドットとして潜像化される。そして、印刷制御部1は、現像器27を制御し、所定の負電位に帯電させられた画像形成用のトナーを、感光体ドラム上に担持されている各ドットに電気的な吸引力によって吸引させ、トナー像を形成させる。この形成されたトナー像は、転写器28に供給される。印刷制御部1は、転写信号SG4を転写用高圧電源26に供給することによって当該転写用高圧電源26をオン状態とし、所定の正電位を転写器28に対して印加させる。このとき、印刷制御部1は、用紙サイズセンサ9及び用紙吸入口センサ6による検出に基づいて、用紙が転写器28を通過している間だけ、転写用高圧電源26からの電圧を当該転写器28に対して印加させる。これに応じて、転写器28は、感光体ドラムと当該転写器28との間を通過する用紙上にトナー像を転写する。
このようにしてトナー像が転写された用紙は、定着器22に搬送される。定着器22は、ヒータ22aによる熱によってトナー像を用紙上に定着する。画像が定着された用紙は、さらに搬送され、印刷機構から外部へと排出される。このとき、印刷制御部1は、排出口近傍に設けられた用紙排出口センサ7を介して、用紙が排出された旨を検出する。そして、印刷制御部1は、印刷が終了して、用紙排出口センサ7が設けられた位置を用紙が通過すると、帯電用高圧電源25による現像器27に対する電圧の印加を終了させるとともに、ドライバ2を介して現像・転写プロセス用モータ3の回転を停止させる。
画像形成装置は、印刷制御部1の制御のもとに、このような一連の動作を繰り返し行うことにより、複数枚の用紙に対する画像形成を行うことができる。
さて、このような画像形成装置は、上述したように、LEDヘッド19を備える。LEDヘッド19は、例えば図3に示すような回路構成からなる。すなわち、LEDヘッド19は、複数のフリップフロップ回路FF1,FF2,・・・と、これら複数のフリップフロップ回路FF1,FF2,・・・のそれぞれに対応して設けられた複数のラッチ回路LT1,LT2,・・・とを有する。印刷制御部1から転送された印字データ信号HD−DATAは、クロック信号HD−CLKとともにLEDヘッド19に入力され、これら複数のフリップフロップ回路FF1,FF2,・・・からなるシフトレジスタに順次転送される。例えば、A4サイズの用紙に印刷可能であり且つ1インチあたり600ドットの解像度を有する画像形成装置においては、4992ドット分のビットデータが4992個のフリップフロップ回路FF1,FF2,・・・,FF4992からなるシフトレジスタに順次転送される。このようなフリップフロップ回路FF1,FF2,・・・,FF4992からなるシフトレジスタに順次転送されたビットデータは、印刷制御部1から送信されたラッチ信号HD−LOADがLEDヘッド19に入力されるのに応じて、ラッチ回路LT1,LT2,・・・,LT4992にそれぞれ保持される。そして、LEDヘッド19においては、ラッチ回路LT1,LT2,・・・,LT4992にそれぞれ保持されたビットデータと、印刷制御部1から送信されてインバータ回路G0を通過した印刷駆動信号HD−STB−Nとを、複数のプリバッファ回路G1,G2,・・・,G4992に供給され、これらビットデータと印刷駆動信号HD−STB−Nとに基づいて、所定の電源VDDから給電された電力によって駆動するスイッチ素子Tr1,Tr2,・・・,Tr4992を開閉させ、複数のLED素子LD1,LD2,・・・,LD4992のうち、ハイレベルであるドットデータに対応するLED素子を点灯させる。
このようなLEDヘッド19の内部構成は、例えば図4に示すようなものである。なお、ここでは、1インチあたり600ドットの解像度でA4サイズの用紙に印刷可能なLEDヘッド19について例示する。
このLEDヘッド19は、192個のLED素子が配列された26個のLEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26と、これらLEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26のそれぞれを駆動する26個の駆動IC(Integrated Circuit)DRV1,DRV2,・・・,DRV26とが配列されて構成される。各駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26は、同一回路によって構成され、隣接する駆動ICとカスケード接続されている。
駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26は、それぞれ、192個のフリップフロップ回路からなりクロック信号HD−CLKに同期させて印字データ信号HD−DATAをシフト入力させるように構成されたシフトレジスタ回路100(上述したフリップフロップ回路FFに相当。)と、このシフトレジスタ回路100の出力信号をラッチ信号HD−LOADに基づいて保持するラッチ回路101(上述したラッチ回路LTに相当。)と、負論理信号であるストローブ信号(以下、印刷駆動信号HD−STB−Nという。)が入力されるインバータ回路102(上述したインバータ回路G0に相当。)と、ラッチ回路101の出力信号とインバータ回路102の出力信号との論理積をとる論理積回路103と、この論理積回路103の出力信号に基づいて、所定の電源VDDから給電された電力に基づく駆動電流をLED素子に供給するLED駆動回路104と、このLED駆動回路104に対して駆動電流が一定になるように指令電圧を与える制御電圧発生回路105とを有する。
また、LEDヘッド19は、基準電圧発生回路106を有する。LEDヘッド19においては、この基準電圧発生回路106によって発生された基準電圧Vrefを制御電圧発生回路105に供給することにより、LED素子を駆動するための基準電流を発生させている。
ここで、LED素子を駆動するための駆動電流値は、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26によって発生させた基準電圧値に基づいて決定される。以下、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のさらなる内部構成の説明に立ち入って、その動作の概要を説明する。
図5に、先に図3に示したプリバッファ回路Gとその周辺回路との接続関係を示す。図5において、破線にて囲まれた部分がプリバッファ回路Gに相当するものであり、ここでは、代表してドット1についての構成、すなわち、ラッチ回路LT1、プリバッファ回路G1、スイッチ素子Tr1、及びLED素子LD1等によって構成される回路部について示している。
プリバッファ回路G1には、ラッチ回路101の出力信号とインバータ回路102の出力信号との論理積をとる論理積回路AD1(上述した論理積回路103に相当。)と、上述したLED駆動回路104を構成するPチャネルMOS(Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタTP1及びNチャネルMOSトランジスタTN1とが設けられる。
また、図5における一点鎖線にて囲まれた部分は、先に図4に示した制御電圧発生回路105であり、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれに1回路ずつ設けられる。制御電圧発生回路105には、演算増幅器110が設けられ、この演算増幅器110の反転入力端子には、基準電圧発生回路106の入力端子VREFから供給される基準電圧Vrefが印加される。また、この演算増幅器110の非反転入力端子には、例えばポリシリコンや不純物拡散抵抗等の半導体プロセス技術を用いて作成されて駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の内部にモノシリックに集積された基準抵抗Rrefが接続されている。さらに、基準抵抗Rrefには、先に図3に示したスイッチ素子Tr等に対応するPチャネルMOSトランジスタ111が接続されている。このPチャネルMOSトランジスタ111のゲート端子には、演算増幅器110から出力される制御電圧Vcontが印加される。これにより、PチャネルMOSトランジスタ111には、Vref/Rrefなる電流が流れることになる。なお、PチャネルMOSトランジスタ111のゲート長は、それぞれ等しいサイズとなるように構成されている。
このようなプリバッファ回路G1及び制御電圧発生回路105において、NチャネルMOSトランジスタTN1のソース端子には、演算増幅器110から出力される制御電圧Vcontが印加される。そして、プリバッファ回路G1からの出力は、上述したLED駆動回路104を構成するPチャネルMOSトランジスタ112のゲート端子に印加される。このPチャネルMOSトランジスタ112のゲート長は、PチャネルMOSトランジスタ111のゲート長と等しいサイズに設定されている。
このような回路構成において、基準抵抗Rrefに流れる基準電流Irefは、PチャネルMOSトランジスタ111に流れる電流と等しい。演算増幅器110は、
なる基準電流Irefが流れるように、制御電圧Vcontを変化させ、PチャネルMOSトランジスタ111を制御する。このように、演算増幅器110、PチャネルMOSトランジスタ111、及び基準抵抗Rrefによってフィードバック制御回路を構成することにより、基準電流Iref、すなわち、PチャネルMOSトランジスタ111に流れる電流は、電源電圧VDDによらず、基準電圧Vref及び基準抵抗Rrefの値のみによって決定される。
このような回路構成においては、LED素子が駆動状態であるとき、プリバッファ回路G1におけるNチャネルMOSトランジスタTN1が導通状態となることから、PチャネルMOSトランジスタ112のゲート電位は、制御電圧Vcontと略等しいものとなる。すなわち、この回路構成においては、LED素子の駆動時には、PチャネルMOSトランジスタ112のゲート電位が制御電圧発生回路105におけるPチャネルMOSトランジスタ111のゲート電位と略等しくなる。したがって、PチャネルMOSトランジスタ112のドレイン電流は、PチャネルMOSトランジスタ111のゲート幅寸法の比率によって決定されることになる。すなわち、この回路構成においては、基準電圧Vrefを変化させて制御電圧Vcontを調整することにより、LED素子の駆動電流値を調整することが可能となる。
ところで、LED素子の発光パワーの温度依存性は、負の温度係数を有し、LED素子は、チップのジャンクション温度の上昇にともなって発光パワーが減少することが知られている。LEDヘッド19においては、LED素子の駆動にともなう温度変動があったとしても、発光パワーを所定値に維持する必要があり、LED素子の発光パワーの温度依存性を補償できるような駆動を行う必要がある。このための駆動手段は、LEDヘッド19内に備えることになるが、LED素子の発光パワーの負の温度係数を補償するために、LED素子の駆動電流値の温度係数を正のものとして構成することになる。駆動IC DRVから出力される駆動電流値は、上述したように、基準抵抗Rrefと基準電圧Vrefとの値によって決定されることから、通常では正値を有する基準抵抗Rrefの温度係数を考慮して、基準電圧Vrefに正の温度特性を与えることになる。
この場合、基準電圧Vrefは、電源電圧VDDの変動の影響を受けないことが必要である。これは、例えばLEDヘッド19によって黒色をベタ塗りするような印刷を行う場合等に生じる大きなピーク電流に起因する電源電圧VDDに電圧降下が生じるが、この電源電圧VDDの電圧降下による基準電圧Vrefに変動が生じると、LED素子の駆動電流が変動してしまい、望ましくないためである。
ここで、従来の基準電圧発生回路の一例について説明する。
従来の基準電圧発生回路は、図6に示すように、電源電圧VDDがソース端子に印加される同一サイズからなる3つのPチャネルMOSトランジスタ1001,1002,1003と、2つのNPNバイポーラトランジスタ1004,1005とを有する。
この基準電圧発生回路において、PチャネルMOSトランジスタ1001,1002,1003は、それぞれのゲート端子が接続され、いわゆるカレントミラー回路を構成し、カレントミラー出力を構成するドレイン出力は、直列接続された2つの負荷抵抗R1,R2を介してNPNバイポーラトランジスタ1004のコレクタ端子に接続される。また、NPNバイポーラトランジスタ1004のエミッタ端子は、グラウンドに接続され、そのベース端子は、負荷抵抗R1,R2の接続中点に接続される。一方、カレントミラー回路を構成するPチャネルMOSトランジスタ1002のドレイン端子は、NPNバイポーラトランジスタ1005のコレクタ端子に接続され、このNPNバイポーラトランジスタ1005のエミッタ端子は、グラウンドに接続され、NPNバイポーラトランジスタ1005のベース端子は、NPNバイポーラトランジスタ1004のコレクタ端子に接続される。また、PチャネルMOSトランジスタ1003のドレイン端子は、負荷抵抗R3を介してグラウンドに接続される。ここで、NPNバイポーラトランジスタ1005のエミッタ面積は、NPNバイポーラトランジスタ1004のエミッタ面積のN倍に設定される。
このような基準電圧発生回路においては、PチャネルMOSトランジスタ1003のドレイン端子と負荷抵抗R3との接続点における電圧が基準電圧Vrefとして、駆動ICに対して出力される。
このような基準電圧発生回路において、NPNバイポーラトランジスタ1004,1005のそれぞれのコレクタ端子に流れるコレクタ電流に対してベース電流が無視できるものと仮定すると、基準電圧発生回路から出力される基準電圧Vrefは、
で与えられる。上式(2)において、kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子の電荷を示しており、ln()は自然対数関数である。
ここで、基準電圧Vrefの温度係数を
として定義すると、基準電圧Vrefの温度係数は、1/Tで与えられ、室温(約300K)における値は、約+0.33%/℃となる。
LEDヘッドに用いられるGaAlAs基材からなるLED素子においては、その発光パワーの温度依存性が概ね−0.25%/℃であり、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)プロセスで構成される駆動IC内の基準抵抗Rrefの温度係数は、約+0.1%/℃である。
LED素子の温度は、隣接して配設された駆動ICの温度と略等しいことから、LED素子の温度の上昇にともなう発光パワーの減少を補償するためには、基準電圧Vrefとして、−(−0.25−0.1)=+0.35%/℃程度の温度係数を与えればよいことになる。この値は、上述した従来の基準電圧発生回路の温度係数に概ね等しい値である。
ここで、図6に示した基準電圧発生回路において電源電圧VDDを変化させたときの基準電圧Vrefを求めると、図7に示すようになる。すなわち、基準電圧発生回路においては、電源電圧VDDを0Vから増加させていく場合には、約2Vとなる領域で基準電圧Vrefが立ち上がる特性がみられるが、その後は電源電圧VDDを増加させるのにともない、基準電圧Vrefも増加する正の依存性がみられる。同図においては、電源電圧VDDが約2V以上となる領域で、電源電圧VDDを増加させると基準電圧Vrefが微増する特性を示しているが、それでも基準電圧Vrefの電源電圧VDDに対する依存性係数は、約2%/Vもの大きな値となる。
すなわち、従来の基準電圧発生回路を用いたLEDヘッドにおいては、上述したように、黒色をベタ塗りするような印刷を行う場合等には、多数のLED素子が一斉に駆動されることになり、電源電流に大きなピーク電流を生じ、これにより、電源電圧に電圧降下が避けられないことになる。そして、LEDヘッドにおいては、電源電圧の電圧降下に起因して基準電圧値が低下し、LED素子の駆動電流も変動してしまうことになる。
そこで、画像形成装置においては、LEDヘッド19に設ける基準電圧発生回路106として、図8に示すような回路構成のものを用いる。すなわち、基準電圧発生回路106は、出力電圧VOが一定になるように制御するレギュレータ回路201と、ダイオード202,203が直列接続されたダイオード204と、2つの負荷抵抗R1,R2とから構成される。
レギュレータ回路201としては、電源端子に印加される電源電圧VDDによらず、所定の出力電圧VOが得られるものであれば、いかなるものであっても用いることができる。具体的には、レギュレータ回路201としては、出力電圧VOの温度係数が略ゼロであるものが望ましく、例えばセイコーインスツルメンツ社製CMOSボルテージレギュレータS−817シリーズを用いることができる。このCMOSボルテージレギュレータは、出力電圧の温度係数が100ppm/℃程度と非常に小さく、出力電圧の温度依存性が少ないものである。勿論、レギュレータ回路201としては、この具体例に限られるものではなく、その出力電圧VOは、使用条件に応じて最適な値に任意に選択可能である。かかるレギュレータ回路201のグラウンド端子は、駆動IC DRVのグラウンド端子と共通に接続される。
また、レギュレータ回路201の出力端子は、後段のダイオード204を構成する1段目のダイオード202のアノード端子に接続され、このダイオード102のカソード端子は、ダイオード203のアノード端子に接続される。さらに、ダイオード203のカソード端子は、例えば炭素皮膜固定抵抗器等の負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の一端に接続され、これら負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の他端は、グラウンドに接続される。なお、同図においては、2つのダイオード202,203を直列接続したダイオード204を示しているが、かかるダイオード204は、1個のダイオードから構成されてもよく、また、3個以上のダイオードを直列接続したものであってもよい。
このような基準電圧発生回路106においては、負荷抵抗R1,R2の接続中点における電圧が基準電圧Vrefとして、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれに対して出力される。
ここで、負荷抵抗R1,R2の抵抗値は、以下のようにして算出することができる。まず、ダイオード202,203のそれぞれの順方向電圧及び順方向電流をVf,Ifとし、レギュレータ回路201の出力電圧VO、ダイオード202,203のそれぞれの順方向電圧Vf及び順方向電流If、並びに基準電圧Vrefが既知であるものとする。この場合、ダイオード203のカソード端子の電位V1は、
となる。また、ダイオード202,203のそれぞれの順方向電流Ifとダイオード203のカソード端子の電位V1とから、負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の抵抗値は、
とすればよいことがわかる。また、オームの法則により、基準電圧Vrefは、
であることから、負荷抵抗R2の抵抗値は、
となり、負荷抵抗R1の抵抗値は、
となる。
基準電圧発生回路106においては、負荷抵抗R1,R2として、このような抵抗値のものを用いることにより、所望の基準電圧Vrefを得ることができる。なお、上式(4)乃至上式(8)の計算過程から明らかなように、負荷抵抗R1,R2の温度係数が等しい場合や、温度係数が無視できるほど小さい場合には、基準電圧Vrefの温度係数に対する負荷抵抗R1,R2の温度依存性の影響はなく、負荷抵抗R1,R2による分圧比にも依存しない。
画像形成装置においては、このような基準電圧発生回路106をLEDヘッド19内に備えることにより、LED素子の温度補償を行う。ここで、LEDヘッド19においては、例えば図9に示すように各部品が搭載される。なお、同図には、温度検出の主体素子である上述した基準電圧発生回路106におけるダイオード204と被検出素子である駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・とが、プリント配線基板206上に搭載されている様子を示している。
駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・は、例えばシリコンからなり、底面が矩形の薄板状を呈するものである。また、ダイオード204は、例えばシリコン製のスイッチングダイオードからなり、具体的にはローム社製スイッチングダイオードDA221等を用いることができる。さらに、プリント配線基板206は、いわゆるプリント配線用銅張積層板として一般に用いられるものであれば、その種類を問わずいずれを用いても構成することができる。具体的には、プリント配線基板206は、米国電気製造業者協会(National Electrical Manufacturers Association;NEMA)による記号XXP,XPC等として規定されている紙フェノール基板、同記号FR−2として規定されている紙ポリエステル基板、同記号FR−3として規定されている紙エポキシ基板、同記号CEM−1として規定されているガラス紙コンポジットエポキシ基板、同記号CHE−3として規定されているガラス不織紙コンポジットエポキシ基板、同記号G−10として規定されているガラス布エポキシ基板、同記号FR−4として規定されているガラス布エポキシ基板といった両面に銅箔を有するいわゆるリジッド基板を用いて構成される。なお、これらのうち、吸湿性や寸法変化が少なく、自己消炎性を有するガラス布エポキシ基板(FR−4)が最も好適である。
LEDヘッド19においては、プリント配線基板206上に、一列に配列された26個の駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれと対応するように、ここでは図示しない上述した26個のLEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26が一列に配列され、さらに、1つのダイオード204が所定の場所に配列される。このとき、各駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26とダイオード204は、図9に示すように、それぞれの底面がプリント配線基板206上に密着するように固着される。なお、同図においては、各駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の底面積をS1とし、ダイオード204の底面積をS2としている。このような各駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26及びダイオード204からは、プリント配線基板206に接続されたそれらの底面を介して、同図中矢印で示すように、熱流が当該プリント配線基板206に流れることになる。
画像形成装置においては、このようなLEDヘッド19を用いて最良の特性を得るために、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26及びダイオード204のそれぞれの消費電力量と、これら駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26及びダイオード204のそれぞれの底面積との比が、それぞれ等しく設定される。
さて、以下では、このようなLEDヘッド19において、基準電圧発生回路106によってLED素子の温度補償を最適に行うことができる理由について考察する。
先に図8に示した基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力電圧をVOとし、ダイオード202,203のそれぞれの順方向電圧及び順方向電流をVf,Ifとし、ダイオード203のカソード端子の電位をV1とし、負荷抵抗R1,R2の抵抗値をR1,R2とすると、上述したように、
が成立する。
上式(9)及び上式(10)において、ダイオードの202,203のそれぞれの順方向電圧Vfは、温度上昇に対して約−2mV/℃の割合で減少することから、基準電圧Vrefは、温度上昇に対して略直線的に増加する特性となることがわかる。また、基準電圧Vrefの温度微分dVref/dTについては、
が成立する。
ここで、炭素皮膜固定抵抗器等の負荷抵抗R1,R2の温度係数は小さいことから、上式(11)における右辺の第3項と第4項は無視することができる。上式(11)において、右辺第1項は、レギュレータ回路201自身の温度係数であり、上述したように、通常では最大でも100ppm/℃程度と小さく、無視することができることから、上式(11)を整理して基準電圧Vrefの温度係数を求めると、
となる。
上式(12)に対して、典型的な数値として、ダイオード202,203のそれぞれの順方向電圧Vf=0.6Vとするとともに、その温度係数を−2mV/℃とし、さらに、レギュレータ回路201の出力電圧VOとして2.5Vを選択すると、
が得られる。
ここで、LED素子の温度に対する発光パワーの温度依存性は、主にLED素子に使用されるウェハ素材によって決定される。例えば、LED素子の母材がGaAsPからなる場合には、その発光パワーの温度依存性係数は、−0.6%/℃である。また、LED素子の母材がAlGaAsからなる場合であって赤色光を発光する場合には、その発光パワーの温度依存性係数は、−0.2%/℃〜−0.3%/℃であり、同母材からなる場合であって緑色光を発光する場合には、−1%/℃である。この事実を鑑みると、上式(13)に示した値は、LED素子の温度補償を行うための所望の値と極めて近いことから、LEDヘッド19においては、LED素子の温度補償を十分な精度で行うことができることがわかる。
つぎに、LEDヘッド19において、温度検出の主体であるダイオード204及び被検出物である駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・の温度上昇について考察する。
次表1は、駆動IC DRV
1,DRV
2,DRV
3,・・・と、ダイオード202,203からなるダイオード204とのそれぞれの底面積S1,S2について、駆動IC DRV
1,DRV
2,DRV
3,・・・の電源電圧VDD、その静的消費電流IDDs、ダイオード204の順方向電圧2V
f、その順方向電流I
f等に基づいて、各素子における発生熱量を算出したものである。なお、ここでは、駆動IC DRV
1,DRV
2,DRV
3,・・・のそれぞれのチップの底面積S1は、約8mm×0.6mm=4.8mm
2であり、ダイオード202,203からなるダイオード204の等価的な底面積S2は、2mm×1.2mm=2.4mm
2であるものとしている。
ここで、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・とダイオード204とのそれぞれの発熱量Pdは、印加されている電圧値に対して流れる電流値を乗じることによって得られ、熱抵抗Rθは、等価的に、底面積S1,S2の逆数に比例するものとして考えることができる。これより、温度平衡状態における各素子の温度上昇値ΔTは、
となり、近似的に、
として比較することができる。
このようなLEDヘッド19においては、電源投入直後における自己発熱に起因する温度ドリフトの影響を軽減するために、上述したように、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれの消費電力量と、これら駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれの底面積との比を、それぞれ略等しく設定している。具体的には、上表1に示すように、ダイオード204の順方向電流Ifを約10mAとした場合には、上式(15)に示す発熱量Pdと底面積S1,S2との比が、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれについては"5.2"となり、ダイオード204については"5"となる。このように、LEDヘッド19においては、発熱量Pdと底面積S1,S2との比を極めて近い値とすることができる。換言すれば、LEDヘッド19においては、この条件において、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれとダイオード204の自己発熱による温度上昇値を等しく設定することができる。
また、LEDヘッド19の電源投入直後における熱的な過渡状態においても、同様の考察が成立する。すなわち、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれのチップ厚が同じであるものとするとその質量は底面積に比例することから、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれの比熱を同程度とした場合における熱的な時定数は、各素子の底面積に比例することになる。
図10に、上表1に示す条件において、LEDヘッド19の電源投入直後における温度上昇の様子を示す。また、比較のため、従来のLEDヘッドの電源投入直後における温度上昇の様子を図11に示す。
まず、LEDヘッド19の電源投入直後における駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれの温度上昇値ΔT(DRV)は、図10(a)に示すような傾向を示す。すなわち、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・は、それぞれ、電源が投入されると、時間の経過とともに、主に自己発熱によってそのチップ温度が上昇していく。また、従来のLEDヘッドの駆動ICも、図11(a)に示すように、時間の経過とともに、主に自己発熱によってそのチップ温度が上昇していく。
これに対して、LEDヘッド19の電源投入直後における先に図8に示した回路構成からなる基準電圧発生回路106の温度上昇値ΔT(Di)は、図10(b)に示すような傾向を示す。すなわち、基準電圧発生回路106は、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれと比べ、その回路規模が小さくチップサイズも小さいことから、熱容量が小さいものの、上表1に示したようにチップ面積に反比例するように消費電流を大きく与えていることから、その温度上昇値ΔT(Di)は、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれの温度上昇値ΔT(DRV)と同程度となる。一方、従来のLEDヘッドにおける基準電圧発生回路は、駆動ICのそれぞれと比べ、その回路規模が小さくチップサイズも小さいことから、その消費電流も小さく、発熱量も僅小である。このため、従来の基準電圧発生回路の温度上昇値ΔT(Di)は、図11(a)に示したグラフと比べ、その時定数が小さく、温度飽和状態における温度上昇値も小さいものとなる。
また、基準電圧発生回路106によって発生される基準電圧Vrefは、図10(c)に示すようになる。基準電圧発生回路106の自己発熱による温度上昇は、主としてダイオード204によるものである。そのため、基準電圧Vrefは、図10(b)に示したように温度が上昇するのに追従して増加することになる。一方、従来の基準電圧発生回路によって発生される基準電圧Vrefは、図11(c)に示すようになる。従来のLEDヘッドにおいては、基準電圧発生回路と駆動ICとが同一のプリント配線基板上に搭載されているものの、これら両者が近接配置されているとはいえず、プリント配線基板を介して熱伝導されることになるため、両者の熱的な結合は弱い。そのため、従来のLEDヘッドの電源投入直後における熱的な過渡状態においては、基準電圧発生回路及び駆動ICのそれぞれの温度上昇が主として自己発熱によるものとなり、基準電圧発生回路の消費電力が小さいことから、図11(b)に示したように当該基準電圧発生回路の温度上昇が小さく、温度上昇による基準電圧値の増加も僅小となる。
さらに、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれに流れる駆動電流IOは、図10(d)に示すようになる。なお、ここでは、LED素子の駆動による影響を排除するために、1ドットのみ駆動する場合について例示している。LEDヘッド19においては、図10(c)に示したように、基準電圧Vrefも温度上昇にともない増加することから、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれの温度上昇による効果が減殺され、図10(d)に示すように、LED素子の駆動電流の変動が小さい特性を得ることができる。一方、従来の駆動ICに流れる駆動電流IOは、図11(d)に示すようになる。上述したように、従来のLEDヘッドの電源投入直後における過渡状態においては、主として駆動ICのみに温度上昇が発生し、基準電圧値の増加はみられない。そのため、従来のLEDヘッドにおいては、駆動ICの温度上昇により、その内部に配設された基準抵抗値が増加することから、当該駆動IC内部を流れる基準電流値が減少し、これに比例した値をとるLED素子の駆動電流値も減少してしまうことになる。
このように、LEDヘッド19においては、電源投入直後における駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれと基準電圧発生回路106との温度上昇がバランスをとるように設定されることにより、従来に比べて温度ドリフトによる影響を著しく軽減することができる。
なお、上述した特性は、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれの消費電力量と、これら駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・及びダイオード204のそれぞれの底面積との比を、それぞれ略等しく設定して得られたものであるが、本願出願人は、駆動IC DRV1,DRV2,DRV3,・・・のそれぞれの消費電力量とその底面積との比に対して、ダイオード204の消費電力量とその底面積との比が、1/10倍から10倍の範囲にあれば、実用的に十分な特性が得られることを確認している。
以上説明したように、本発明の第1の実施の形態として示す画像形成装置のLEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106におけるレギュレータ回路201として、入力される電源電圧VDDによらずに所定の出力電圧VOを得ることができるものであってその出力電圧VOの温度係数が略ゼロに構成されているものが用いられ、また、基準電圧発生回路106における所望の温度依存性が、レギュレータ回路201の出力電圧VO及びダイオード204の温度特性のみによって決定される。したがって、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106が電源電圧VDDの変動の影響を受けることなく、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26や駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の温度上昇に起因する発光パワーの増減を効果的に補償することができる。
また、LEDヘッド19においては、電源投入直後における素子の自己発熱によるLED素子の駆動電流値の変動を低減することができ、また、温度平衡状態における温度上昇値を、温度検出素子であるダイオード204と被検出素子である駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26との間で略等しく設定することが可能となる。したがって、LEDヘッド19においては、従来のLEDヘッドにおいて必要とされていた手順、すなわち、電源投入から十分な時間が経過するまで駆動させずに放置して当該LEDヘッド全体が温度平衡状態に達してから印刷動作へと移行する等の手順を行う必要がない。
また、LEDヘッド19の製造工程においては、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26の製造ばらつきに起因する発光パワーのばらつきを補正する工程で、当該LEDヘッド19の光量測定のために電源を投入した後、温度平衡状態に達する前に、光量測定を完了することが可能となり、完成検査時間や光量補正処理に要する時間を削減することができ、製造コストの観点からも有利となる。
つぎに、第2の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
この第2の実施の形態として示す画像形成装置は、第1の実施の形態として示した画像形成装置における基準電圧発生回路106を変形した基準電圧発生回路を設けたものである。したがって、この第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
第2の実施の形態として示す画像形成装置においては、LEDヘッド19に設ける基準電圧発生回路106として、図12に示すような回路構成のものを用いる。すなわち、基準電圧発生回路106は、上述したレギュレータ回路201及び2つの負荷抵抗R1,R2の他、レギュレータ回路201の出力端子に接続された負荷抵抗301と、NPNバイポーラトランジスタ302とから構成される。
この基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力端子は、後段の負荷抵抗301を介して、NPNバイポーラトランジスタ302のベース端子に接続され、このNPNバイポーラトランジスタ302のコレクタ端子には、電源電圧VDDが印加される。また、NPNバイポーラトランジスタ302のエミッタ端子は、負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の一端に接続され、これら負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の他端は、グラウンドに接続される。
このような基準電圧発生回路106においては、負荷抵抗R1,R2の接続中点における電圧が基準電圧Vrefとして、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれに対して出力される。
このような基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力電圧をVOとし、NPNバイポーラトランジスタ302のベース・エミッタ間電圧をVbeとし、NPNバイポーラトランジスタ302のエミッタ電位をV1とし、負荷抵抗R1,R2の抵抗値をR1,R2とすると、
が成立する。
上式(16)及び上式(17)において、NPNバイポーラトランジスタ302のベース・エミッタ間電圧Vbeは、温度上昇に対して約−2mV/℃の割合で減少することから、基準電圧Vrefは、温度上昇に対して略直線的に増加する特性となることがわかる。
また、NPNバイポーラトランジスタ302のベース端子に流れるベース電流Ibは、エミッタ電流と略等しいコレクタ電流Icをトランジスタの電流増幅率で除した値であり、コレクタ電流Icに比べ、無視できるほど小さい。
したがって、NPNバイポーラトランジスタ302自身の消費電力は、主としてコレクタ電流Icとコレクタ・エミッタ間の電圧とによって決定される。
さらに、NPNバイポーラトランジスタ302のベース電流Ibは、上述したように、レギュレータ回路201の出力電流と等しい。基準電圧発生回路106においては、このベース電流Ibが小さな値となるために、レギュレータ回路201自身の消費電力も小さな値となり、自己発熱量も小さく、温度上昇は殆ど発生しないことから、これによる基準電圧Vrefへの影響を著しく軽減することができる。
以上説明したように、本発明の第2の実施の形態として示す画像形成装置のLEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106におけるレギュレータ回路201として、入力される電源電圧VDDによらずに所定の出力電圧VOを得ることができるものであってその出力電圧VOの温度係数が略ゼロに構成されているものが用いられ、また、レギュレータ回路201の消費電力が軽減されていることから、自己発熱も小さく、温度上昇を極めて小さくすることができる。
また、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106における所望の温度依存性が、レギュレータ回路201の出力電圧VO及びNPNバイポーラトランジスタ302の温度特性のみによって決定される。したがって、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106が電源電圧VDDの変動の影響を受けることなく、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26や駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の温度上昇に起因する発光パワーの増減を効果的に補償することができる。
さらに、LEDヘッド19においては、電源投入直後における素子の自己発熱によるLED素子の駆動電流値の変動を低減することができることから、従来のLEDヘッドにおいて必要とされていた手順、すなわち、電源投入から十分な時間が経過するまで駆動させずに放置して当該LEDヘッド全体が温度平衡状態に達してから印刷動作へと移行する等の手順を行う必要がない。
さらにまた、LEDヘッド19の製造工程においては、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26の製造ばらつきに起因する発光パワーのばらつきを補正する工程で、当該LEDヘッド19の光量測定のために電源を投入した後、温度平衡状態に達する前に、光量測定を完了することが可能となり、完成検査時間や光量補正処理に要する時間を削減することができ、製造コストの観点からも有利となる。
つぎに、第3の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
この第3の実施の形態として示す画像形成装置は、第2の実施の形態として示した画像形成装置における基準電圧発生回路106を変形した基準電圧発生回路を設けたものである。したがって、この第3の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
第3の実施の形態として示す画像形成装置においては、LEDヘッド19に設ける基準電圧発生回路106として、図13に示すような回路構成のものを用いる。すなわち、基準電圧発生回路106は、上述したレギュレータ回路201、負荷抵抗301、及び2つの負荷抵抗R1,R2の他、2つのNPNバイポーラトランジスタ401a,401bがダーリントン接続されたNPNバイポーラトランジスタ401から構成される。
この基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力端子は、後段の負荷抵抗301を介して、NPNバイポーラトランジスタ401aのベース端子に接続され、このNPNバイポーラトランジスタ401aのエミッタ端子は、NPNバイポーラトランジスタ401bのベース端子に接続される。また、NPNバイポーラトランジスタ401bのコレクタ端子には、電源電圧VDDが印加され、このNPNバイポーラトランジスタ401bのエミッタ端子は、負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の一端に接続され、これら負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の他端は、グラウンドに接続される。
このような基準電圧発生回路106においては、負荷抵抗R1,R2の接続中点における電圧が基準電圧Vrefとして、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれに対して出力される。
このような基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力電圧をVOとし、NPNバイポーラトランジスタ401a,401bのベース・エミッタ間電圧をVbeとし、NPNバイポーラトランジスタ401bのエミッタ電位をV1とし、負荷抵抗R1,R2の抵抗値をR1,R2とすると、
が成立する。
上式(18)及び上式(19)において、NPNバイポーラトランジスタ401a,401bのベース・エミッタ間電圧Vbeは、温度上昇に対して約−2mV/℃の割合で減少することから、基準電圧Vrefは、温度上昇に対して略直線的に増加する特性となることがわかる。
また、NPNバイポーラトランジスタ401aのベース端子に流れるベース電流Ibは、エミッタ電流と略等しいコレクタ電流Icをトランジスタの電流増幅率で除した値であり、コレクタ電流Icに比べ、無視できるほど小さい。
したがって、NPNバイポーラトランジスタ401a自身の消費電力は、主としてコレクタ電流Icとコレクタ・エミッタ間の電圧とによって決定される。
さらに、NPNバイポーラトランジスタ401aのベース電流Ibは、上述したように、レギュレータ回路201の出力電流と等しい。基準電圧発生回路106においては、このベース電流Ibが小さな値となるために、レギュレータ回路201自身の消費電力も小さな値となり、自己発熱量も小さく、温度上昇は殆ど発生しないことから、これによる基準電圧Vrefへの影響を著しく軽減することができる。
この基準電圧発生回路106から出力される基準電圧Vrefは、レギュレータ回路201によって出力される出力電圧VOを、NPNバイポーラトランジスタ401a,401bのベース・エミッタ間電圧Vbeによって2段にわたりレベルシフトした値となることから、温度による変化量も2倍に拡大される。
ここで、基準電圧Vrefの温度係数は、上述したように、NPNバイポーラトランジスタ401a,401bのベース・エミッタ間電圧Vbeとレギュレータ回路201によって出力される出力電圧VOとによって決定される。したがって、基準電圧発生回路106においては、主としてレギュレータ回路201の出力電圧VOを適宜選択することにより、容易に所望の温度係数を得ることが可能となる。
以上説明したように、本発明の第3の実施の形態として示す画像形成装置のLEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106におけるレギュレータ回路201として、入力される電源電圧VDDによらずに所定の出力電圧VOを得ることができるものであってその出力電圧VOの温度係数が略ゼロに構成されているものが用いられ、また、レギュレータ回路201の消費電力が軽減されていることから、自己発熱も小さく、温度上昇を極めて小さくすることができる。
また、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106における所望の温度依存性が、レギュレータ回路201の出力電圧VO及びNPNバイポーラトランジスタ401の温度特性のみによって決定される。したがって、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106が電源電圧VDDの変動の影響を受けることなく、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26や駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の温度上昇に起因する発光パワーの増減を効果的に補償することができる。
さらに、LEDヘッド19においては、電源投入直後における素子の自己発熱によるLED素子の駆動電流値の変動を低減することができることから、従来のLEDヘッドにおいて必要とされていた手順、すなわち、電源投入から十分な時間が経過するまで駆動させずに放置して当該LEDヘッド全体が温度平衡状態に達してから印刷動作へと移行する等の手順を行う必要がない。
さらにまた、LEDヘッド19の製造工程においては、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26の製造ばらつきに起因する発光パワーのばらつきを補正する工程で、当該LEDヘッド19の光量測定のために電源を投入した後、温度平衡状態に達する前に、光量測定を完了することが可能となり、完成検査時間や光量補正処理に要する時間を削減することができ、製造コストの観点からも有利となる。
最後に、第4の実施の形態として示す画像形成装置について説明する。
この第4の実施の形態として示す画像形成装置は、第2の実施の形態として示した画像形成装置における基準電圧発生回路106を変形した基準電圧発生回路を設けたものである。したがって、この第4の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態乃至第3の実施の形態の説明と同様の構成については同一符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
第4の実施の形態として示す画像形成装置においては、LEDヘッド19に設ける基準電圧発生回路106として、図14に示すような回路構成のものを用いる。すなわち、基準電圧発生回路106は、上述したレギュレータ回路201及び2つの負荷抵抗R1,R2の他、NチャネルMOSトランジスタ501と、このNチャネルMOSトランジスタ501のドレイン端子に接続された負荷抵抗502とから構成される。
この基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力端子は、NチャネルMOSトランジスタ501のゲート端子に接続され、このNチャネルMOSトランジスタ501のドレイン端子には、負荷抵抗502を介して電源電圧VDDが印加される。また、NチャネルMOSトランジスタ501のソース端子は、負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の一端に接続され、これら負荷抵抗R1,R2からなる直列接続回路の他端は、グラウンドに接続される。
このような基準電圧発生回路106においては、負荷抵抗R1,R2の接続中点における電圧が基準電圧Vrefとして、駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26のそれぞれに対して出力される。
このような基準電圧発生回路106において、レギュレータ回路201の出力電圧をVOとし、NチャネルMOSトランジスタ501のゲート・ソース間電圧をVgsとし、NチャネルMOSトランジスタ501のソース電位をV1とし、負荷抵抗R1,R2の抵抗値をR1,R2とすると、
が成立する。
ここで、飽和領域で作動するMOSトランジスタのドレイン電流Idとゲート・ソース間電圧Vgsとの間には、一般に、
の関係がある。
上式(22)におけるβは、
で示されるトランスコンダクタンス・パラメータであり、Vthは、閾値電圧である。また、上式(23)におけるμはキャリアの移動度、Coxはゲート酸化膜容量、Wはゲート幅、Lはゲート長を示している。
ここで、キャリアの移動度μ及び閾値電圧Tthは、それぞれ、
の温度依存性を有することが知られている。上式(25)におけるκの典型的な値は、κ=2.5mV/℃である。これらから、温度上昇による閾値電圧Vthの低下とキャリアの移動度μの低下とが複合した特性となることがわかる。
このような特性をグラフ化するために、温度を変化させたときのゲート・ソース間電圧Vgsとドレイン電流Idとを求めると、図15に示すようになる。
同図から、温度を変化させて求めた曲線群が、ゲート・ソース間電圧Vgsが値Vztcとなる点で交差することがわかる。ゲート・ソース間電圧Vgsは、この電圧値Vztcよりも低い電圧領域において、所定のドレイン電流Id=Aのもとに、温度上昇にともない減少する特性となる。
このように、基準電圧発生回路106においては、NチャネルMOSトランジスタ501の動作点を適切に設定することにより、温度上昇に対してゲート・ソース間電圧Vgsを減少させる特性を与えることが可能となる。
このような基準電圧発生回路106において、NチャネルMOSトランジスタ501のゲート・ソース間電圧Vgsは、上述したように、温度上昇に対して依存性を有することから、基準電圧Vrefは、温度上昇に対して略直線的に増加する特性となることがわかる。また、NチャネルMOSトランジスタ501のゲート端子に流れるゲート電流は、無視できるほど小さい。
したがって、NチャネルMOSトランジスタ501自身の消費電力は、主としてドレイン電流Idとドレイン・ソース間の電圧とによって決定される。
さらに、NチャネルMOSトランジスタ501のゲート電流は、上述したように、レギュレータ回路201の出力電流と等しく、略ゼロであることから、基準電圧発生回路106においては、レギュレータ回路201自身の消費電力が極小値となり、自己発熱量も小さく、温度上昇は殆ど発生しない。したがって、基準電圧発生回路106においては、レギュレータ回路201の自己発熱による基準電圧Vrefへの影響を著しく軽減することができる。
以上説明したように、本発明の第4の実施の形態として示す画像形成装置のLEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106におけるレギュレータ回路201として、入力される電源電圧VDDによらずに所定の出力電圧VOを得ることができるものであってその出力電圧VOの温度係数が略ゼロに構成されているものが用いられ、また、レギュレータ回路201の消費電力が軽減されていることから、自己発熱も小さく、温度上昇を極めて小さくすることができる。
また、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106における所望の温度依存性が、レギュレータ回路201の出力電圧VO及びNチャネルMOSトランジスタ501の温度特性のみによって決定される。したがって、LEDヘッド19においては、基準電圧発生回路106が電源電圧VDDの変動の影響を受けることなく、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26や駆動IC DRV1,DRV2,・・・,DRV26の温度上昇に起因する発光パワーの増減を効果的に補償することができる。
さらに、LEDヘッド19においては、電源投入直後における素子の自己発熱によるLED素子の駆動電流値の変動を低減することができることから、従来のLEDヘッドにおいて必要とされていた手順、すなわち、電源投入から十分な時間が経過するまで駆動させずに放置して当該LEDヘッド全体が温度平衡状態に達してから印刷動作へと移行する等の手順を行う必要がない。
さらにまた、LEDヘッド19の製造工程においては、LEDアレイチップCHP1,CHP2,・・・,CHP26の製造ばらつきに起因する発光パワーのばらつきを補正する工程で、当該LEDヘッド19の光量測定のために電源を投入した後、温度平衡状態に達する前に、光量測定を完了することが可能となり、完成検査時間や光量補正処理に要する時間を削減することができ、製造コストの観点からも有利となる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、感光体ドラムに光を照射して露光する光源としてLED素子を用いた電子写真記録方式の画像形成装置におけるLEDヘッドについて説明したが、本発明は、同様の光源として、有機EL(ElectroLuminescent)素子を用いた有機ELヘッドにも適用することができる。
また、上述した実施の形態では、被駆動素子として光源を用いて説明したが、本発明は、例えば、サーマルプリンタにおける発熱抵抗体の列や、表示装置における表示素子の列といったように、任意の被駆動素子の列を選択的に且つ周期的に駆動するものであれば、いかなるものであっても適用することができる。
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。