JP4498574B2 - 車両用前照灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用前照灯に関するものであり、詳細には、近年の車両デザインに沿うように、上下方向に幅が狭く左右方向に幅が広い横長形状とされ、なお且つ1つの光源においてすれ違いビーム配光と走行ビーム配光の切り替えを可能とした車両用前照灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にこの種光源を1つしか持たない車両用前照灯90は、例えば図8に示すように構成されており、この車両用前照灯90は、焦点位置に1つの光源91を配置した回転放物面反射鏡92と、レンズカット93aが施されたレンズ93とから構成され、前記回転放物面反射鏡92で略平行光線の反射光を得て、その反射光をレンズ93のレンズカット93aで適宜に拡散して所望の配光特性を得るものである。
【0003】
さらに、この種車両用前照灯90の走行ビーム配光とすれ違いビーム配光の配光パターンの切り替えをしようとした場合、車両用前照灯90は光源91を1つしか持たないため、その手段としては、光源91を動かすか、回転放物面反射鏡92を動かすか、といった方法が考えられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした従来の車両用前照灯90においては、光源91に対する効率を向上させようとすると反射鏡92の奥行きが深くなり、車両へ搭載するときに支障を来すものとなるので、現在以上の効率の向上は見込めず、従ってより以上の照度の向上が求められるときには、光源の消費電力を大きくすることで対応せざるを得ないものとなっている。
【0005】
特に、近年においては、車両に取り付けられた状態において例えば上下方向には幅が狭く左右方向には幅が広い横長形状の前照灯が車両のデザイン上好まれる傾向にあり、反射鏡92には反射光を生じるには何ら寄与することのない上下の平面部92aの面積が増え、反射鏡92としての有効面積が減じて一層に光源91に対する効率が減じる傾向にあるので、反射鏡92に対する効率向上の手段が求められるものとなっている。
【0006】
また、車両用前照灯90の配光パターンを切り替えるための手段として、前記のように光源91を動かすか、反射鏡92を動かすかといった方法では、いずれの方法も光源91、反射鏡92に高い位置精度が要求され、構造も複雑化するため、生産性が低下してしまう問題があり、こうした問題の解決が課題とされるものとなっている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した従来の課題を解決するための具体的手段として、一つの光源と、該光源を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の反射面を少なくとも含む反射面とを備え、すれ違いビーム配光と走行ビーム配光とを切り替え可能とした車両用前照灯において、前記反射面は、前記光源を焦点としすれ違いビーム配光が設定された放物面系の第一反射面と、前記光源の前方を覆い且つ左右両側に開口を有すると共に前記光源を第一焦点とし左右いずれかの開口付近を第二焦点とする回転楕円面等の楕円面系の第二反射面と、前記第一反射面の裏側に設けられ且つ前記第二反射面の第二焦点を焦点として走行ビーム配光が設定された放物面系の第四反射面とを備え、前記第一反射面には光源からの光を前記第四反射面へと導く切り欠きが設けられていると共に、該切り欠きを通して光源から第四反射面へと向かう直射光および第二反射面から第四反射面へと向かう反射光を開閉自在に遮断する遮光板が設けられ、該遮光板の開閉によって前記第一反射面によるすれ違いビーム配光と該すれ違いビーム配光に前記第四反射面による反射光を加えた走行ビーム配光とを切り替え可能とした車両用前照灯を提供することで課題を解決するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
図1乃至図2は、本発明に係る車両用前照灯1の第一実施形態を示す斜視図であり、この車両用前照灯1はメタルハライドランプなどの1つの光源2と、該光源2を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の第一反射面3と、図示しない前面レンズとを備え、光源2からの光を略平行光線として反射し前面レンズに向かわせ、前面レンズに適宜施されたレンズカットによって配光特性が形成される。なお、自由曲面の場合は前面レンズは素通しのレンズとなる。ここまでは従来例のものと同様である。
【0010】
ここで本発明においては、さらに光源2の前方を覆い且つ左右両側に開口を有する形状の第二反射面4が光源2から放射される光の第一反射面3に達することのない光の放射位置に設けられており、この第二反射面4は光源2を第一焦点F1とし、一方の開口部付近(本実施形態の場合向かって右側)を第二焦点F2とする回転楕円など楕円面系の反射面として形成されている。
【0011】
また、正面から見て第二反射面4によって覆われた第一反射面3の一部分には、図2に示すように光源2取付用の開口部2aと共に、その開口部2a周囲の一部(本実施形態の場合向かって右側の領域)に第二反射面4と同じく光源2を第一焦点F1とし第二反射面4の右側の開口部付近を第二焦点F2とする回転楕円など楕円面系の第三反射面5が形成されている。また、第一反射面3の第三反射面5と隣接する右側部分には垂直方向帯状に切り欠き3aが設けられている。
【0012】
さらに、第一反射面3の裏側に第一反射面3の切り欠き3aと隣接するように第四反射面6が設けられ、さらに、この第四反射面6と隣接するように第五反射面7が設けられている。ここで、第四反射面6は第二反射面4の第二焦点F2を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の反射面として形成され、第五反射面7は光源2を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の反射面として形成されている。
【0013】
また、第二反射面4の第二焦点F2近傍には、第一反射面3の切り欠き3aを光軸に沿って前後に横切るように移動する平板状の遮光板8が設けられており、この遮光板8を移動することによって図3乃至図6に示すように、すれ違いビーム配光(図3)と、走行ビーム配光(図4〜図6)とに車両用前照灯1の配光パターンが切り替えられるものであり、以下に詳細に説明する。
【0014】
即ち、図3は車両用前照灯1がすれ違いビーム配光パターンを形成している状態を示しており、平板状の遮光板8は、第一反射面3の切り欠き3aを横切って第二反射面4の第二焦点F2近傍に配置されている。これにより、光源2から照射される光のうち切り欠き3aを通って第四反射面6及び第五反射面7に達する光は全て遮光板8によって遮られるため、光源2から照射される光は全て第一反射面3によってのみ反射される。このとき第一反射面3は光源2を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の反射面として形成され、すれ違いビーム配光が設定されている。こうして図3の遮光板8の位置では、前面レンズから照射される光は第一反射面3による反射光のみとなり、すれ違いビーム配光パターンが形成される。なお、図3では第二反射面4の前方部分に照射される光が図示されていないが、この部分については光源取付用開口部2a及び第三反射面5の上方及び下方に位置する部分の第一反射面3の反射光によってカバーされている。
【0015】
図4乃至図6は車両用前照灯1が走行ビーム配光パターンを形成している状態を示しており、遮光板8は図3のすれ違いビーム配光位置から図の矢印A方向に切り欠き3aを横切って第一反射面3の裏側へと退去している。これにより、光源2から照射される直射光及び第二反射面4による反射光及び第三反射面5による反射光は全て直接もしくは切り欠き3aを通過して第四反射面6及び第五反射面7によって反射されて前面レンズへと導かれ、走行ビーム配光パターンが形成される。
【0016】
即ち、まず図4に示したのは、光源2の照射光のうち第一反射面3の切り欠き3aを通過して直接第四反射面6及び第五反射面7によって反射され前方に照射される光である。このとき、第四反射面6は第二反射面4の右側開口部の第二焦点F2を焦点とする回転放物面等の放物面系の反射面として形成され、第五反射面7は光源2を焦点とする回転放物面等の放物面系の反射面として形成され夫々走行ビーム配光が設定されている。これにより、図4の遮光板8が第一反射面3の裏側(A方向)に退去した位置では、光源2から照射され切り欠き3aを通過した光が第四反射面6及び第五反射面7によって反射されて、走行ビーム配光パターンの一部が形成される。
【0017】
次に図5に示すように、光源2の照射光のうち第三反射面5によって反射された光は直接前面レンズへと導かれる。このとき、第三反射面5は光源2を第一焦点F1とし、第二反射面4の右側開口部の第二焦点F2を同じ第二焦点F2とする回転楕円など楕円面系の反射面として形成されているので、光源2から照射された光のうち第三反射面5によって反射された光は第二焦点F2に集光された後、第二反射面4の開口部を通過して前方に照射される。こうして、正面から見て第二反射面4に覆われた位置に楕円面系の第三反射面5が形成されているため、本来、第二反射面4によって遮光されてしまい無駄となっていた反射面を有効に利用することができる。
【0018】
次に図6に示すように、光源2の照射光のうち第二反射面4によって反射された光は第二反射面4右側の開口部を通過して第四反射面6へと導かれ、再び第四反射面6で反射して前面レンズへと導かれる。このとき、第二反射面4は光源2を第一焦点F1とし右側開口部に第二焦点F2を有する回転楕円など楕円面系の反射面として形成され、また、第四反射面6は第二反射面4の第二焦点F2を焦点とする回転放物面等の放物面系の反射面として形成されているので、光源2から照射された光のうち第二反射面4によって反射された光は全て第二焦点F2に集光された後、第二反射面3の開口部そして第一反射面3の切り欠き3aを通過して第四反射面6へと導かれ、第四反射面6によって略平行光として前方に照射される。つまり、第四反射面6は第二反射面4の第二焦点F2に疑似光源を有しているかのようになっていて、走行ビーム配光が設定されている。
【0019】
図7は本実施形態の垂直断面図を示すものであり、光源2を覆うように設けられた第二反射面4によって第一反射面3の反射無効部である上下の平面部3bに向けて放射された光を全て捉えて第二焦点F2へと集光している。このため、従来は利用されることのなかった第一反射面3の平面部3bに達する光が全て第二反射面4によって回収され、第四反射面6によってこの回収した光が前方に照射されるようにしたことで、光の利用効率は一段と向上し、同一規格の光源であっても一層明るい前照灯1の実現を可能とするものである。
【0020】
以上のようにして形成された走行ビーム配光パターンは、第一反射面3からのすれ違いビーム配光パターンにそのまま前述の図4乃至図6の配光が加えられて形成されるものであり、すれ違いビーム配光パターンの光量は減少させずに走行用の配光を加えたものである。
【0021】
以上により、遮光板8を前後方向に移動させることで、車両用前照灯1のすれ違いビーム配光と走行ビーム配光との切り替えが行われれる。なお、遮光板8を移動させる手段については特に図示していないが、ソレノイド、モータ等の動力源による周知の駆動手段を用いれば良い。
【0022】
また、上記実施形態では、反射面として第一反射面〜第五反射面までを備えた構成として説明してきたが、この中で第三反射面及び第五反射面ついては配光特性上設けることがより好ましいが、設けなくても良く、第一反射面によるすれ違いビーム配光パターンと、第二反射面と第四反射面とによる走行ビーム配光パターンとを遮光板によって切り替える構成であれば前記したような効果は充分に得られるものである。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、1つの光源と、該光源を焦点としすれ違いビーム配光が設定された放物面系の第一反射面と、前記光源の前方を覆い且つ左右両側に開口を有すると共に前記光源を第一焦点とし左右いずれかの開口付近を第二焦点とする回転楕円面等の楕円面系の第二反射面と、前記第一反射面の裏側に設けられ且つ前記第二反射面の第二焦点を焦点として走行ビーム配光が設定された放物面系の第四反射面とを備え、前記第一反射面には光源からの光を前記第四反射面へと導く切り欠きが設けられていると共に、該切り欠きを通して光源から第四反射面へと向かう直射光および第二反射面から第四反射面へと向かう反射光を開閉自在に遮断する遮光板が設けられ、該遮光板の開閉によって前記第一反射面によるすれ違いビーム配光と該すれ違いビーム配光に前記第四反射面による反射光を加えた走行ビーム配光とを切り替え可能とした車両用前照灯としたことで、反射鏡の奥行きが深くならずに光源からの光の利用効率を向上させて上下方向に幅が狭く左右方向に幅が広い横長形状の車両用前照灯を実現でき、また、すれ違いビーム配光と走行ビーム配光との配光パターンの切り替えは、第一反射面の切り欠きを遮光板が開閉移動するだけなので、高精度な組み立てや高い位置精度も必要なく、生産性の向上にも極めて優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車両用前照灯の第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の第二反射面および遮光板が無い状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る車両用前照灯によってすれ違いビーム配光が形成されている状態を示す水平断面図である。
【図4】本発明に係る車両用前照灯によって走行ビーム配光が形成されている状態を示す水平断面図であり、走行ビーム配光パターンを形成している第一の照射光を示す説明図である。
【図5】本発明に係る車両用前照灯によって走行ビーム配光が形成されている状態を示す水平断面図であり、走行ビーム配光パターンを形成している第二の照射光を示す説明図である。
【図6】本発明に係る車両用前照灯によって走行ビーム配光が形成されている状態を示す水平断面図であり、走行ビーム配光パターンを形成している第三の照射光を示す説明図である。
【図7】本発明に係る車両用前照灯の垂直断面図である。
【図8】従来例を示す垂直断面図である。
【符号の説明】
1……車両用前照灯
2……光源
2a……光源取付用開口部
3……第一反射面
3a……切り欠き
3b……平面部
4……第二反射面
5……第三反射面
6……第四反射面
7……第五反射面
8……遮光板
Claims (3)
- 一つの光源と、該光源を焦点とする回転放物面、自由曲面などの放物面系の反射面を少なくとも含む反射面とを備え、すれ違いビーム配光と走行ビーム配光とを切り替え可能とした車両用前照灯において、前記反射面は、前記光源を焦点としすれ違いビーム配光が設定された放物面系の第一反射面と、前記光源の前方を覆い且つ左右両側に開口を有すると共に前記光源を第一焦点とし左右いずれかの開口付近を第二焦点とする回転楕円面等の楕円面系の第二反射面と、前記第一反射面の裏側に設けられ且つ前記第二反射面の第二焦点を焦点として走行ビーム配光が設定された放物面系の第四反射面とを備え、前記第一反射面には光源からの光を前記第四反射面へと導く切り欠きが設けられていると共に、該切り欠きを通して光源から第四反射面へと向かう直射光および第二反射面から第四反射面へと向かう反射光を開閉自在に遮断する第一反射面の切り欠きを光軸に沿って前後に横切るように移動する平板状の遮光板が設けられ、該遮光板の直線状の開閉動作によって前記第一反射面によるすれ違いビーム配光と該すれ違いビーム配光に前記第四反射面による反射光を加えた走行ビーム配光とを切り替え可能とした車両用前照灯。
- 正面から見て前記第二反射面によって覆われた前記第一反射面の一部に、前記第二反射面と同様に光源を第一焦点とし第二反射面の左右いずれかの開口付近を第二焦点とする楕円面系の第三反射面が設けられ、該第三反射面から前方に照射される反射光を前記遮光板の開閉によって、すれ違いビーム配光時は遮光し、走行ビーム配光時は透過して走行ビーム配光パターンとして加えることを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯。
- 前記第一反射面の裏側には光源を焦点とし走行ビーム配光が設定された放物面系の第五反射面が前記第四反射面と隣接して設けられ、前記第一反射面の切り欠きを通して光源から第五反射面に向かう光を前記遮光板の開閉によって、すれ違いビーム配光時は遮光し、走行ビーム配光時は透過して走行ビーム配光パターンとして加えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用前照灯。
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