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JP4494228B2 - 模様付け材、模様付け具及び模様付け方法 - Google Patents

模様付け材、模様付け具及び模様付け方法 Download PDF

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JP4494228B2
JP4494228B2 JP2005011161A JP2005011161A JP4494228B2 JP 4494228 B2 JP4494228 B2 JP 4494228B2 JP 2005011161 A JP2005011161 A JP 2005011161A JP 2005011161 A JP2005011161 A JP 2005011161A JP 4494228 B2 JP4494228 B2 JP 4494228B2
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Description

本発明は模様付け材、模様付け具、模様付け方法及び柾目模様材に関し、更に詳しくは、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を簡単に形成できる模様付け材と、この模様付け材を用いて構成される模様付け具と、この模様付け具を利用して被加工材に柾目模様の模様付けを行う模様付け方法と、この方法により得られる柾目模様材に関する。
柾目模様や板目模様等の木目模様の塗装は安らぎのある自然な感じを与えるため、家具や建築物の内外壁面等に好んで表現されている。従来、このような木目模様の塗装は、下記の従来技術1〜従来技術3に例示するような方法で行われていた。
従来技術1:柾目模様の模様付けを行うべき被加工材をサンドペーパー等で表面処理した後、例えば淡色木質色彩のベースカラー塗料を塗布して、柾目模様の地色層を構成する。次いで、木目刷毛を用いて、例えば濃色木質色彩の木目付け塗料を塗布し、柾目模様を形成する。この柾目模様を良く乾燥させた後、透明なラッカースプレー等を塗布して、表面に光沢を持たせることもある。
上記した従来の模様付け具である木目刷毛とは、多数の直線状剛毛を先端を揃えてブラシのように植付けた刷毛状形態の塗装具であって、地色層上に木目付け塗料を縞模様状に塗装するためのものである。そして更に、柾目模様部と地色層との境界部をぼかすための「ぼかし刷毛」と称する道具や、微細な柾目小模様を表現するための「木目櫛」と称する道具等も用いて、柾目模様に自然な木質感を出そうとしていた。
特開昭59−62368号公報 従来技術2:上記の特許文献1には、着色材を吸収可能な基材の表面に、後で塗布する着色剤の吸収を阻止する働きを有する模様層を形成した後、その表面に着色剤又は着色剤添加塗料を塗布してワイビング仕上げを行い、更に上塗り塗料を塗布する化粧材の製造方法が開示されている。この方法を利用すれば、上記の模様層の形成形態によって、基材の表面に木目模様の模様付けを行うことが可能であると考えられる。
特開昭50−85637号公報 従来技術3:上記の特許文献2には、底面が円筒側面の一部を構成し且つこの底面に同心円の多数本の弧からなる模様の突起を具え且つエラストマー材料から出来ている塗装用具を使用し、予め塗装面の所々に供給されている塗料を、上記塗装用具を上記円筒軸と直角な方向に底面を塗装面に沿って移動せしめて擦るようにならすことにより、板目模様に類似する濃淡模様を塗装面に形成する方法が開示されている。
しかし、上記の従来技術1においては、ブラシのように直線状の剛毛を植付けた木目刷毛を用いるので、柔らかな天然調の柾目模様を表現することが困難であった。そして、その欠点を補うために「ぼかし刷毛」や「木目櫛」を使用する場合には、工程数が多くなり煩雑な作業を強いられた。
次に、上記の従来技術2においては、例えば木目の大模様を構成する色彩帯中に微細な木目小模様が更に表現されたような、繊細な天然調の木目模様を表現することが困難であった。
更に、上記の従来技術3においては、底面に同心円の多数本の弧からなる模様の突起を具える塗装用具の使用要領が複雑微妙であり、板目模様を良好に仕上げるためには、かなりの熟練を要した。又、上記の従来技術2と同様に、板目の大模様を構成する色彩帯中に微細な板目小模様を更に表現すると言う繊細な天然調の板目模様は、塗装用具の構成上、困難であった。
そこで本発明は、簡単に、かつ熟練を要することなく、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を表現できる模様付け手段と模様付け方法を提供し、又、その結果物たる柾目模様材を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
(第1発明の構成)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、フィラメントの集束体であるファイバーをベース材の模様付け面に密生させた柾目模様付け用の模様付け材であって、前記模様付け面においては、模様付け面に対するファイバーの密生形態の相違に基づき、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成した、模様付け材である。
ここにおいてファイバーを「密生させた」とは、ベース材の模様付け面上に、非常に多数のファイバーを高密度で突出させている状態を言う。
(第2発明の構成)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る高吸収帯と低吸収帯とにおけるファイバーの密生形態の相違が以下のいずれか1以上に該当する、模様付け材である。
(1)高吸収帯ではベース材の模様付け面の凸起部分にファイバーを密生させており、低吸収帯ではベース材の模様付け面の凹陥部分にファイバーを密生させている。
(2)高吸収帯では密生したファイバーが長毛であり、低吸収帯では密生したファイバーが短毛である。
(3)高吸収帯では密生したファイバーが柔軟な性状であり、低吸収帯では密生したファイバーが硬質な性状である。
(第3発明の構成)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係るファイバーを、添毛又は植毛の手法により密生させている、模様付け材である。
(第4発明の構成)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、前記第1発明〜第3発明のいずれかに係るファイバーがループ状に添毛又は植毛されている、模様付け材である。
(第5発明の構成)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、柾目模様付け用の模様付け材であって、ベース材にフィラメントの集束体である長繊維からなる長繊維層を重ねて所定間隔の接合線P沿いに接合すると共に、接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記長繊維層を切断することにより、あるいは、接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記ベース材及び長繊維層を破線状態で間欠的に切断することにより、ベース材に長繊維層を重ねた側の模様付け面において、比較的長い長繊維が起毛して塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と、比較的短い短繊維が起毛して塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成した、模様付け材である。
(第6発明の構成)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、前記第5発明に係るベース材と長繊維層とが、接合線Pに沿うベース材裏面側への折り込み部の形成によって接合されている、模様付け材である。
(第7発明の構成)
上記課題を解決するための本願第7発明の構成は、前記第5発明又は第6発明に係るベース材が弾性的に伸縮可能な材料あるいは収縮化処理が可能な材料からなり、かつ、前記模様付け材が以下の(1)又は(2)の工程を含んで形成されている、模様付け材である。
(1)ベース材が弾性的に伸縮可能な材料からなる場合において、ベース材を接合線Pに対する交差方向へ伸長させた状態において長繊維層を接合線P沿いに接合させ、その後、ベース材の伸長状態を解消させる。
(2)ベース材が収縮化処理が可能な材料からなる場合において、前記ベース材と長繊維層との接合後に、又は長繊維層の前記切断処理の後に、ベース材を収縮処理させる。
(第8発明の構成)
上記課題を解決するための本願第8発明の構成は、第5発明〜第7発明のいずれかに係る長繊維層が、捲縮長繊維層、トウから開繊された長繊維層、フラットヤーンの長繊維層あるいはスプリットヤーンの長繊維層である、模様付け材である。
(第9発明の構成)
上記課題を解決するための本願第9発明の構成は、柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材を、そのまま、手作業用具として用いるものである、模様付け具である。
(第10発明の構成)
上記課題を解決するための本願第10発明の構成は、柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、把持部を備える模様付け具に第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材を設けたものである、模様付け具である。
(第11発明の構成)
上記課題を解決するための本願第11発明の構成は、柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材をベルト状に構成して回転ローラー間に張架した、模様付け具である。
(第12発明の構成)
上記課題を解決するための本願第12発明の構成は、被加工材に柾目模様を付与するための模様付け方法であって、少なくとも以下の工程を含む、模様付け方法である。
(1)被加工材に対して、ベースカラー塗料を塗布したもとで、又はベースカラー塗料を塗布することなく、木目付け塗料を一様にあるいは一定の部位に塗布する塗布工程。
(2)被加工材の上記塗料塗布面に対して第9発明〜第12発明のいずれかに係る模様付け具を軽く押しつけてほぼ直線的に摺動させることにより、柾目模様を形成する模様付け工程。
以上の第12発明において、「木目付け塗料を一様に塗布する」とは、被加工材の表面の全面に木目付け塗料を塗布することを言い、必ずしも被加工材の表面の全面にムラなく均一に塗布することを意味しない。又、「木目付け塗料を一定の部位に塗布する」とは、被加工材の表面に、ランダムなパターンで、又は完成予定の柾目模様にほぼ合致するパターンで、木目付け塗料を塗布することを言う。いずれの場合にも模様付け具の塗料吸収保持能(換言すれば吸収塗料徐放能)により、結果的に良好な柾目模様が形成される。
(第13発明の構成)
上記課題を解決するための本願第13発明の構成は、前記第12発明に係る模様付け工程の後に、柾目模様の乾燥を待って、透明塗料を塗布する後工程を行う、模様付け方法である。
(第14発明の構成)
上記課題を解決するための本願第14発明の構成は、第12発明又は第13発明に係る模様付け方法によって得られる柾目模様材であって、柾目の大模様の境界部がぼかし状態にあり、かつ、柾目の大模様を構成する色彩帯中に、微細な柾目小模様が更に表現された天然調の柾目模様を有する、柾目模様材である。
(第1発明の効果)
第1発明に係る模様付け材は、模様付け面に対するファイバーの密生形態の相違に基づき、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とをベース材の模様付け面に交互にストライプ状に形成したものである。従って、一定の要領で使用すれば、高吸収帯と低吸収帯との塗料吸収保持能の差異により、容易に柾目模様を表現できる。
又、これらの高吸収帯と低吸収帯とは、フィラメントの集束体であるファイバーをベース材の模様付け面に密生させたものである。従って、第1に、表現される柾目模様は、作業者の熟練を要することなく、自ずから柔らかな天然調のものとなる。第2に、高吸収帯においても低吸収帯においても、作業者の熟練を要することなく、自ずから微細な柾目小模様が表現された繊細な天然調の柾目模様となる。第3に柾目模様の境界部も、作業者の熟練を要することなく、自ずから「ぼかし」状態となる。
(第2発明の効果)
高吸収帯と低吸収帯とにおける塗料吸収保持能の差異は、第2発明の(1)〜(3)のいずれか1以上の構成により実現することができる。(1)の構成による場合は、高吸収帯におけるファイバーが低吸収帯よりも高く突出した凸起部分より密生しているので、塗料との接触度合いが高く、よって塗料吸収保持能が大きい。(2)の構成による場合は、密生したファイバーが、高吸収帯では低吸収帯よりも長毛であるため、塗料との接触度合いが高く、かつ塗料の吸収容量が大きく、よって塗料吸収保持能が大きい。(3)の構成による場合は、密生したファイバーが、高吸収帯では低吸収帯よりも柔軟な性状であるため、塗料膨潤性に富み、よって塗料吸収保持能が大きい。
(第3発明の効果)
模様付け材のベース材に対してファイバーを密生させる方法は任意であるが、添毛又は植毛の手法により密生させるのが、より好ましい。
(第4発明の効果)
模様付け材に密生させるファイバーは、フィラメントの集束体である限りにおいて任意に構成することができるが、ループ状のファイバーであることが、ファイバーの塗料吸収保持能を増大させるために特に好ましい。
(第5発明の効果)
第5発明に係る模様付け材は、接合線P間の片側に偏った切断線Py沿いに所定の要領で切断された長繊維層により、比較的長い繊維が起毛した高吸収帯と、比較的短い繊維が起毛した低吸収帯とを、ベース材の模様付け面に交互にストライプ状に形成したものである。従って第1発明の模様付け材と同様に、高吸収帯と低吸収帯との塗料吸収保持能の差異により、容易に柾目模様を表現できる。
又、これらの高吸収帯と低吸収帯とは、フィラメントの集束体である長繊維をベース材の模様付け面に密に接合させたものであるため、第1発明の模様付け材と同様に、表現される柾目模様は、作業者の熟練を要することなく、自ずから柔らかな天然調のものとなる。又、高吸収帯においても低吸収帯においても、作業者の熟練を要することなく、自ずから微細な柾目小模様が表現された繊細な天然調の柾目模様となる。更に、柾目模様の境界部も、作業者の熟練を要することなく、自ずから「ぼかし」状態となる。
なお、上記した長繊維層を切断する「所定の要領」とは、第1に、単に長繊維層のみを切断することであり、第2に、ベース材及び長繊維層を破線状態で間欠的に切断することである。第2の切断形態として、ベース材及び長繊維層を破線状態で間欠的に切断した場合には、次のような効果を期待できる。
まず、長繊維層を破線状態で間欠的に切断することにより、交互にストライプ状に形成された高吸収帯及び低吸収帯自体が、それぞれ比較的長い繊維又は比較的短い繊維の起毛に基づく微小な刷毛単位の間欠的な破線状の連続によって構成されることになる。その結果、模様付け材をベース材の長手方向(高吸収帯及び低吸収帯が交互に配列する方向)に対してクロスする方向へ摺動させる際に、微小な刷毛単位の毛先がこの方向においても動き易くなり、塗料の吸収保持と自然な感じの柾目模様の形成とに一層有利である。
次に、併せてベース材も破線状態で間欠的に切断することにより、個々の微小な刷毛単位をそれぞれサポートするベース材部分が一定限度の変形性(変位性)を持つ。そのため、塗料を含浸した際、微小な刷毛単位が塗料液の接着力(表面張力)によって相互に集束し易くなる。しかも、その集束の程度にランダムな大小差(粗密の差)が出る。その結果、例えば春材や秋材による木目に似た濃淡模様を形成し易くなる。
(第6発明の効果)
ベース材に対し接合線Pに沿って長繊維層を接合するに当たり、その接合方法は限定されないが、第6発明のように、ベース材裏面側への折り込み部の形成によって接合することが特に好ましい。長繊維層を接合部は柾目模様の形成に対して不適当な固形部を形成し易いが、第6発明の接合方法によって、この接合部が模様付け面に対する裏側面に位置することになるので、柾目模様の形成を阻害しない。更にこのような接合方法であると、長繊維層の切断により繊維が自然に起毛し易く、高吸収帯と低吸収帯との機能を高めると共に、模様付け材を繰り返し使用しても繊維の起毛状態が維持され易く、模様付け材の耐久性が優れる。
(第7発明の効果)
第7発明においては、(1)又は(2)のいずれの場合にも、結果的にベース材における接合線Pの間隔が縮むので、高吸収帯と低吸収帯との起毛した繊維が倒伏して起毛前の状態に戻ろうとしても、これが阻止される。従って、繊維の起毛状態が特に維持され易く、前記第6発明の効果が一層顕著に発揮される。
(第8発明の効果)
長繊維層の種類は限定されないが、例えば第8発明に規定するように、捲縮長繊維層、トウから開繊された長繊維層、フラットヤーンの長繊維層、スプリットヤーンの長繊維層等が好ましく例示される。
(第9発明の効果)
柾目模様の模様付けを行う模様付け具の最もシンプルな形態として、第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材をそのまま手作業用具として用いる場合を挙げることができる。
従来、シート状の布に芯材をくるみ込んだ、「タンポ」と称する手作業用模様付け具が使用されているが、タンポは第9発明の模様付け具のようなファイバーを密生させていないし、高吸収帯と低吸収帯とを交互にストライプ状に形成した構成も備えていない。
(第10発明の効果)
柾目模様の模様付けを行うための模様付け具の実用的な一形態として、把持部を備える模様付け具に第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材を設けたものを例示することができる。即ち、例えば前記従来の「木目刷毛」の如き道具において、その刷毛先の部分に上記の模様付け材を設けた構成である。
(第11発明の効果)
柾目模様の模様付けを行うための模様付け具の高効率な一形態として、第1発明〜第8発明のいずれかに係る模様付け材をベルト状に構成して、回転ローラー間に張架したものを例示することができる。この場合、模様付け材におけるストライプ状の高吸収帯と低吸収帯とは、ベルトの長手方向に沿って形成される。
(第12発明の効果)
第12発明の模様付け方法において、少なくとも木目付け塗料を一様にあるいは一定の部位に塗布した塗料塗布面に対して、模様付け具を軽く押しつけて、ほぼ直線的に摺動させると、模様付け具の高吸収帯では木目付け塗料が大きく吸収され、一方低吸収帯では木目付け塗料が余り吸収されないので、容易に柾目模様が形成される。
そして、高吸収帯及び低吸収帯ではファイバーをベース材の模様付け面に密生させているので、形成される柾目模様は前記のように柔らかく繊細な天然調の柾目模様となり、柾目模様の境界部も「ぼかし」状態となる。
又、第12発明の模様付け方法は、基本的には前記の塗布工程と模様付け工程のみからなり、使用する道具類は模様付け具のみであるため、工程数が非常に少なくて済み、作業内容も簡単である。又、熟練を要する作業は含まれない。しかも第9発明〜第11発明に係る模様付け具を使用するので、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を簡単に形成することができる。
(第13発明の効果)
上記した第12発明の模様付け方法においては、模様付け工程の後に、柾目模様の乾燥を待って透明塗料を塗布する後工程を更に行うことが一層好ましい。
(第14発明の効果)
上記した第12発明又は第13発明の模様付け方法によって得られる柾目模様材は、柾目の大模様の境界部がぼかし状態にあり、かつ、柾目の大模様を構成する色彩帯中に微細な柾目小模様が更に表現された、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を有するので、従来には見られない高付加価値の柾目模様材を安価に提供することができる。
次に、本願の第1発明〜第14発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。以下において、単に「本発明」と言う時は、本願の各発明を一括して指している。
〔第1の模様付け材〕
本発明に係る第1の模様付け材は、柾目模様付け用であって、フィラメントの集束体であるファイバーをベース材の模様付け面に密生させ、かつ、この模様付け面においては、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成したものである。このような構成を備える限りにおいて、模様付け材の形状、構成、サイズ等は全く限定されない。
このような第1の模様付け材において、模様付け面、即ちフィラメントの集束体であるファイバーを密生させた面は、ベース材の片面に設けても良いし、ベース材の表裏両面に設けても良い。
上記のファイバーとしては、例えば、多数のフィラメントを集束させ又は撚合わせた糸状又は紐状のファイバーが挙げられる。糸状又は紐状のファイバーの形態としては、例えば先端がバラけた房状を呈するファイバーも使用できるが、先端がU字状に折り返されたループ状のファイバーが、塗料を吸収保持する能力が大きいために、特に好ましい。
ベース材の構成及びベース材におけるファイバーの構成形態は限定されない。例えば、ベース材は木製、プラスチック製、ゴム製等であっても良いが、柔軟なシート材、とりわけ織物地が好ましい。
ベース材におけるファイバーの構成形態は、例えば、上記の各種のベース材に、多数のファイバーを任意の手法によって密生させた形態とすることができる。ベース材に多数のファイバーを密生させる手法として、特に添毛又は植毛の手法が好ましい。とりわけ、添毛の手法が、織物機械を応用して容易に作製できる点、ファイバーが脱落しない点等から、特に好ましい。
ここにおいて「添毛の手法」とは、タオル地、絨毯地等に見られる、いわゆる添毛織物(パイルファブリック)の手法を言い、織物の実質を構成する緯糸と経糸の他に房状のファイバーからなる毛羽やループ状のファイバーからなる輪奈を形成すべき緯糸又は経糸を用いることにより、毛織物の表面に毛羽や輪奈を密生させる手法を言う。又、「植毛の手法」とは、木製、プラスチック製、ゴム製のベース材あるいは柔軟なシート状のベース材に対して、植え込み又は接着等の手段で多数のファイバーを密生させる手法を言う。
以上の添毛の手法又は植毛の手法において、密生させるファイバーとしては、ループ状のものが特に好ましい。
〔高吸収帯と低吸収帯〕
本発明に係る模様付け材の特徴点の一つは、その模様付け面において、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と、塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とをストライプ状に、即ち交互にかつ略平行な帯状に形成した点である。
上記した高吸収帯と低吸収帯との塗料吸収保持能の大小の差異は、例えば以下の(1)〜(3)のいずれかの構成、より好ましくはこれらの内の2以上の構成の組み合わせ、とりわけ好ましくは(1)〜(3)の全ての構成の組み合わせに基づいて実現できる。個々の構成の内、特に有効な構成は(1)であり、次に有効な構成は(2)である。(3)の構成のみでは、必ずしも十分な塗料吸収保持能の差異が得られないこともある。
(1)高吸収帯ではベース材の模様付け面の凸起部分にファイバーを密生させており、低吸収帯ではベース材の模様付け面の凹陥部分にファイバーを密生させている。この場合、ベース材には、高吸収帯に該当する凸起部分と、低吸収帯に該当する凹陥部分とが、交互にかつ略平行な帯状に形成されていることになる。ベース材がシート状の材料である場合は、凸起部分と凹陥部分とは、シート状材料の厚みの差によって構成することができる。
(2)高吸収帯では密生させたファイバーが長毛であり、低吸収帯では密生させたファイバーが短毛である。この場合において、長毛のファイバーは同時に、相対的により多数のフィラメントを集束した太いファイバーとし、短毛のファイバーは同時に、相対的により少数のフィラメントを集束した細いファイバーとすることも好ましい。
(3)高吸収帯では密生させたファイバーが柔軟な性状であり、低吸収帯では密生させたファイバーが硬質な性状である。この構成のためには、例えば、高吸収帯に密生させるファイバーには柔軟なフィラメントからなるものを用い、低吸収帯に密生させるファイバーには比較的硬質のフィラメントからなるものを用いることができる。又、高吸収帯及び低吸収帯に密生させるファイバーとして同質で同形態のファイバーを用い、低吸収帯のファイバーに対しては硬化性樹脂(例えば、熱硬化性樹脂)の塗布及び硬化処理を行うと言う方法も、採用することができる。
〔第2の模様付け材〕
本発明に係る第2の模様付け材は、柾目模様付け用であって、ベース材にフィラメントの集束体である長繊維からなる長繊維層を重ねて所定間隔の接合線P沿いに接合すると共に、
(a)接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記長繊維層を切断することにより、あるいは、
(b)接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記ベース材及び長繊維層を破線状態で間欠的に切断することにより、
ベース材に長繊維層を重ねた側の模様付け面において、比較的長い長繊維が起毛して塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と、比較的短い短繊維が起毛して塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成したものである。このような構成を備える限りにおいて、模様付け材の形状、構成、サイズ等は全く限定されない。
このような第2の模様付け材において、模様付け面、即ちベース材に対して上記のように長繊維層を重ねて所定の加工を行った面は、ベース材の片面に設けても良いし、ベース材の表裏両面に設けても良い。
上記において、接合線Pに沿ったベース材と長繊維層の接合方法は限定されず、例えば接着、熱融着等の方法を任意に採用することができるが、特に好ましい方法が、前記「第6発明の効果」欄で述べた理由から、ベース材と長繊維層とを、接合線Pに沿うベース材裏面側への折り込み部の形成によって接合する、と言う方法である。
上記のフィラメントの集束体である長繊維の種類は限定されないが、例えば、捲縮長繊維、トウから開繊された長繊維、フラットヤーンの長繊維あるいはスプリットヤーンの長繊維を好ましく使用できる。
「捲縮長繊維」とは、フィラメントが捲いたり縮んだりしている長繊維であって、予め捲縮している羊毛や、繊維形成後に捲縮化処理を施した繊維等が含まれる。トウから開繊された長繊維も、これと類似した形態を持つ。これらの長繊維は、繊維層が嵩高くなり、塗料を多量に含むことができる。
「フラットヤーン」とは、フィルムを細いテープ状にスリットし、延伸させたものを言う。又、「スプリットヤーン」とは、熱可塑性フィルムを樹脂の配向方向と直交する方向にかき分けて、繊維状となったフィルムが編み目状に接合されているものを言う。
ベース材の構成は限定されないが、不織布(例えばスパンボンド法で形成された不織布)、樹巣フィルム、合成繊維や天然繊維からなる織物地等の柔軟なシート材が好ましい。一方、前記した第7発明のような場合には、ベース材が弾性的に伸縮可能な材料あるいは収縮化処理が可能な材料からなる必要がある。ここにおいて収縮化処理の内容は限定されないが、例えば樹脂製ベース材の熱収縮等が好ましく例示される。
第2の模様付け材における高吸収帯と低吸収帯との全体的な構成は、上記したベース材に対する長繊維の接合方法や長繊維層の切断による高吸収帯と低吸収帯との起毛等の点を除き基本的に第1の模様付け材の場合と同様であり、高吸収帯及び低吸収帯の作用・効果も基本的に同様である。
〔模様付け具〕
本発明に係る模様付け具は、柾目模様の模様付けを行うためのものであって、上記の模様付け材を何らかの形態で利用する限りにおいて、模様付け具の形状、構成及びサイズ等は限定されない。
最も簡易な構成の模様付け具は、上記した模様付け材を、そのまま、手作業用具として用いるものである。又、模様付け具の代表的な一形態として、把持部を備える模様付け具に上記した模様付け材を設けたものを例示することができる。更に、模様付け具の他の代表的な一形態として、上記した模様付け材をベルト状に構成して、回転ローラー間に張架したものを例示することができる。
上記以外の模様付け具の形態として、塗装ライン方向を真横に横切る方向に、かつ、被加工材の塗装面から数ミリメートル〜数センチメートル浮かした位置に、支持板を垂直に又は斜めにして横架させ、この支持板における被加工材に面した端部に模様付け材を取り付ける、と言う形態を例示することができる。この場合、模様付け材の取り付けの形態は、模様付け材が支持板における被加工材に面した端部を(断面形状観察において)U字形あるいはJ字形に覆うようにして、支持板に密着しあるいは弛みを持たせて取り付けることができる。
〔模様付け方法〕
本発明に係る模様付け方法は、被加工材に柾目模様を付与する方法であって、少なくとも以下の塗布工程と模様付け工程とを含む。模様付け工程の後に、以下の後工程を行っても良い。
塗布工程においては、被加工材に対して、ベースカラー塗料を塗布したもとで、又はベースカラー塗料を塗布することなく、木目付け塗料を一様に、あるいは一定の部位に塗布する。ここにおいて被加工材の種類は限定されないが、窯業系サイディング、押出成形板、珪カル板、石綿スレート板、金属サイディングを含む金属板、プラスチック板、ガラス板、木板等を例示することができる。
上記の「ベースカラー塗料」とは柾目模様における柾目の間隙部分の色彩を表現する所望の色彩の塗料を言い、「木目付け塗料」とは、柾目模様における柾目の色彩を表現する所望の色彩の塗料を言う。従って、ベースカラー塗料と木目付け塗料とは、異種の色彩であるか、あるいは同種の色彩であっても、少なくとも濃淡の差のある色彩である必要がある。
ベースカラー塗料と木目付け塗料の色彩としては、いわゆる木質感のある茶色〜褐色系統の色彩も好ましいが、かならずしもこのような色彩に限定されず、グレーないし黒色系統、赤色系統、青色系統、緑色系統等の任意の系統の色彩を採用することができる。木質感のある系統の色彩でなくても、ある意味で、天然調の優れた柾目模様を表現することは、可能である。
ベースカラー塗料と木目付け塗料とは、組成物としてのコンポジションを特段に限定されない。
例えばベースカラー塗料の組成として、公知の各種の平滑塗料(ペイント)の組成を採用できるし、その場合、溶剤系塗料、水系塗料のいずれでも可能である。但し、下地にベースカラーとなる色を付けるためには、塗料の隠蔽率は80%以上であることが良く、より好ましくは隠蔽率が90%以上であることが良く、ベースカラー塗料層を薄膜で形成する場合には隠蔽率が95%以上であることが良い。ここで言う「隠蔽率」は、JIS K5600−4−1又はJIS K5600−4−2の測定方法(厚み100μmにて測定)での隠蔽率である。
木目付け塗料に関しては、平滑塗料にあっては塗布厚みによって濃淡が現れる塗料であることが必要である。木目付け塗料は、例えば、厚い部分で200μm(最大で500μm程度)、薄い部分で10μm程度に塗られる。塗料の性状としては、木目付け塗料を塗布した際の厚い塗布部分の隠蔽率が50〜90%程度になるのが良い。
この隠蔽率が中程度となる塗料を組成するためには、塗料中の顔料成分の重量を示すPWCが0.1〜1.0%程度であることが好ましい。例えば、固形分が50%のクリヤー塗料(樹脂だけ)100重量部に対して顔料成分を20%含むエナメル塗料を2〜4重量部混合することができる。この場合、PWCの計算値は0.39〜0.77%である。
なお、塗布工程においては、前処理として被加工材の表面にサンドペーパー処理等を行っても良い。又、ベースカラー塗料を塗布する場合は、塗布したベースカラー塗料を乾燥させてから、木目付け塗料を塗布することが好ましい。
模様付け工程においては、被加工材の塗料塗布面に対して前記の模様付け具を軽く押しつけて、ほぼ直線的に摺動させることにより、被加工材の表面に柾目模様を形成する。この工程は、塗布工程で塗布した木目付け塗料が乾燥・固化する前に行う必要がある。その際、模様付け具は、そのストライプ状の高吸収植毛部と低吸収植毛部とが摺動方向と平行になるように保持する必要がある。
上記の「摺動させる」とは、被加工材に対して模様付け具を相対的に摺動させることを言う。従って、模様付け具が、模様付け材をそのまま手作業用具として用いるものである場合や、把持部を備える模様付け具である場合等には、定置され又はコンベア上を連続的に搬送される被加工材に対して、手作業により模様付け具を摺動させることができる。
模様付け具が回転ローラー間に張架したベルトである場合には、例えば、コンベア上を連続的に搬送される被加工材に対して、回転ローラーによって被加工材の搬送方向とは逆方向へ循環駆動されるベルト状の模様付け具を、軽く押しつける位置で摺動させることができる。被加工材の搬送速度とベルト状の模様付け具の循環駆動速度が同一でない場合には、被加工材の搬送方向と同方向にベルト状の模様付け具を循環駆動させても良い。
上記の「ほぼ直線的に摺動」とは、模様付け具と被加工材とが摺動方向に対する交差方向へのある程度のランダムな位置ズレを連続的に伴いながら摺動しても良いことを意味する。天然調の柾目模様が直線的なストライプ模様ではない点を考慮すれば、このような「ほぼ直線的」な摺動により、緩やかな曲がりの繰返しを伴う縞模様状の柾目模様を形成することが、むしろ好ましい。
後工程においては、模様付け工程の後、柾目模様が乾燥してから、透明塗料を塗布する。透明塗料としては、光沢のあるもの、あるいは光沢のないものを使用できるが、後者の方が好ましい。透明な塗料の光沢を無くするために、例えば実施例で示すように、つや消し剤を添加することもあり得る。つや消し剤として、ステアリン酸アルミニウム、微粉シリカ等を例示することができる。
透明塗料は、固形分として樹脂分だけを含むクリヤー塗料や、少量の顔料を含む(5重量%以内が好ましい)ものを利用できる。その塗布量は40〜70g/m程度が適当である。
〔柾目模様材〕
本発明に係る柾目模様材は、被加工材に対する上記模様付け方法の実施によって得られるものである点、柾目の大模様の境界部がぼかし状態にある点、柾目の大模様を構成する色彩帯中に、微細な柾目小模様が更に表現された天然調の柾目模様を有する点、等を特徴とする。
このような柾目模様材としては、被加工材の材質又は構成の面からは、窯業系サイディング、押出成形板、珪カル板、石綿スレート板、金属サイディングを含む金属板、プラスチック板、ガラス板、木板等を例示することができる。柾目模様材の用途の面からは、建築用において外壁材、内壁材、天井材、床材、外構の部材等を例示することができ、土木構築物の仕上げ材にも利用可能である。その他の分野では、什器の部材、車両の内装材にも利用可能である。
(実施例1:第1の模様付け材)
図1に斜視図を示し、図2にそのX−X断面の部分拡大図を示す模様付け材1は、図示省略の織組織を持つ柔軟なシート材2をベース材としている。このシート材2の平面形状はほぼ長方形であり、そのサイズは縦方向が約20cm、横方向が約10cmである。
シート材2には、やや厚さが大きく凸起した部分2aと、やや厚さが小さく凹陥した部分2bとが交互にストライプ状に形成されており、かつ、これらの部分2a、2bの表面には、多数のフィラメントを撚り糸状に集束したループ形状のファイバー3が、シート材2の織組織に織込まれた添毛組織(パイル織り組織)の状態で、それぞれ密生している。
凸起した部分2aに密生させたファイバー3はポリエステルフィラメントからなり、比較的長く(ループが大きく)、かつ柔軟であるが、凹陥した部分2bに密生させたファイバー3はナイロンフィラメントからなり、比較的短く(ループが小さく)、かつ樹脂バインダーを用いてやや硬質に固められている。その結果、凸起した部分2aでは柔軟で大きなループ状のファイバー3が高く盛り上がり、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯4を構成している。一方、凹陥した部分2bではやや硬質の小さなループ状のファイバー3が低く座屈し、塗料吸収保持能の小さい低吸収帯5を構成している。
なお、図示はしないが、実施例1の変更例として、シート材が全体に平坦な厚さに形成され(上記のような凸起した部分2aと凹陥した部分2bとの区別がなく)、そのようなシート材上に、上記と同様の比較的長く(ループが大きく)かつ柔軟なファイバー3を密生させた部分と、比較的短く(ループが小さく)かつ樹脂バインダーを用いてやや硬質に固められたファイバー3を密生させた部分とが交互にストライプ状に形成された構成が考えられる。
(実施例2)
上記の模様付け材1を用いて、以下の模様付け方法を実施した。即ち、柾目模様を付与するための被加工材として押出成形板を選び、まずその表面をワイヤーブラシにより清掃処理した後、下塗りとして反応硬化型の溶剤系プライマーを40〜60g/mとなるように被加工材表面の全面に塗装した。
次に、その上に、下記組成の淡色木質色彩のベースカラー塗料を、50〜60g/mとなるように塗布した。「添加剤」は、湿潤剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤及び防腐・防カビ剤である。
〔ベースカラー塗料の組成〕
アクリルウレタン樹脂系の合成樹脂エマルション 70重量%
(固形分 50%)
顔料 20重量%
添加剤 10重量%
次に、塗布したベースカラー塗料を十分に乾燥させた後、濃色木質色彩で下記の組成を持つ木目付け塗料を被加工材表面の全面に、30〜50g/mとなるように、ほぼ一様に塗布(配り塗り)した。「添加剤」は、湿潤剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤及び防腐・防カビ剤である。
〔木目付け塗料の組成〕
アクリルウレタン樹脂系の合成樹脂エマルション 96重量%
(固形分 50%)
顔料 1重量%
添加剤 3重量%
そして、上記の木目付け塗料の塗布後、木目付け塗料が十分な流動状態を保っているうちに、作業者が実施例1に係る模様付け材1を、植毛面を下側にした状態で手に持って被加工材表面に軽く押しつけ、前記した要領でほぼ直線的に摺動させた。
その結果、被加工材表面のうち、模様付け材1の高吸収植毛部4が摺動したライン上の部分では、木目付け塗料の大部分が高吸収植毛部4に吸収され、ベースカラー塗料がほぼ露出した。一方、模様付け材1の低吸収植毛部5が摺動したライン上の部分では、木目付け塗料が余り吸収されずに被加工材表面に残り、濃色木質色彩の柾目を構成した。そのため、ベースカラー塗料の露出部と柾目部とが縞模様状に形成され、全体として柾目模様の模様付けが行われた。上記のように30〜50g/m塗布した木目付け塗料の内、模様付け後に被加工材表面に残留した木目付け塗料は10〜20g/mであった。
なお、上記した所定の要領での「ほぼ直線的な摺動」のために、緩やかな曲がりの繰返しを伴う柾目模様が形成された。又、高吸収植毛部4と低吸収植毛部5とが上記のようなファイバー3の植毛であることから、柾目模様におけるベースカラー塗料の露出部と柾目部との境界部は自ずからボカシ状態となっており、更に、柾目の大模様を構成する帯状のベースカラー塗料の露出部と柾目部との各々の内部においては微細な柾目小模様が更に表現されていた。
最後に、下記の組成のクリヤー塗料を被加工材表面に45〜55g/mとなるように塗布した。
〔クリヤー塗料の組成〕
アクリルウレタン樹脂系の合成樹脂エマルション 93重量%
(固形分 50%)
顔料 5重量%
つや消し剤 2重量%
このようにして、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を模様付けした柾目模様材6の写真を、図3に示す。
(実施例3:第2の模様付け材の第1の形態)
図4に示す第2の模様付け材7について、最初に、その製造工程の概要を図5に基づいて説明する。
まず、図5(a)に示すように、熱可塑性の樹脂フィルムからなるベース材8に対して、捲縮長繊維からなる長繊維層9を重ねる。そして、この積層体に対して、多数の折り込み接合用の治具10を、所定の相互間隔を以て接合線P沿いに、ベース材8における長繊維層9を重ねた側から食い込ませる。図5(a)において治具10は針状に図示されているが、これは、奥行き方向に長いストレートな平板状の治具10の側面図を示すものである。
治具10の作用により、図5(b)に示すように、ベース材8と長繊維層9との積層体に接合線Pに沿う折り込み部11が形成されるので、この折り込み部に例えば加熱下の挟着圧縮等の適当な手段を施し、折り込み部11においてベース材8と長繊維層9を接合させる。こうすると、図示のように、長繊維層9は上向きに反り返った状態となる。
次いで、図5(c)に示すように、接合線P間における一方の接合線Pに偏った切断線Py沿いに長繊維層9を切断する。これにより、比較的長い長繊維が起毛した高吸収帯12と比較的短い短繊維が起毛した低吸収帯13とが、ベース材8上に交互にストライプ状に形成され、図4に示すような第2の模様付け材7を得る。
図4に示す模様付け材7においては、高吸収帯12と低吸収帯13とが、やや傾斜した配向を以てストライプ状に形成されているが、これらを正確に図の垂直方向又は水平方向に配向するストライプ状に形成しても良い。又、柾目模様に変化性を持たせるために、、例えば図4における上半分の部分では右側へやや傾斜した配向を以てストライプ状に形成し、図4における上下中央部で折り返されて、図4における下半分の部分では逆の側へやや傾斜した配向を以てストライプ状に形成しても良い。
(実施例4:第2の模様付け材の第2の形態)
図6に、第2の模様付け材14の要部(長繊維層の形態)を示す。この模様付け材14において、詳しく図示はしないが、前記の実施例3と同様に、ベース材(図示省略)に対して捲縮長繊維からなる長繊維層15を重ね、所定間隔の接合線P沿いに接合している。この例では、図4の場合と異なり、各接合線Pは平仮名の「く」の字状に屈曲して形成されている。
そして、接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに、長繊維層15とベース材とを破線状態で間欠的に切断することにより、ベース材の模様付け面において、比較的長い長繊維が起毛して塗料吸収保持能の大きい高吸収帯16と、比較的短い短繊維が起毛して塗料吸収保持能の小さい低吸収帯17とを、交互に「く」の字のストライプ状に形成している。
上記のように、長繊維層15は切断線Py沿いに破線状態で間欠的に切断されているので、高吸収帯16と低吸収帯17とはそれぞれ、比較的長い繊維又は比較的短い繊維の起毛に基づく微小な高吸収帯刷毛単位16a又は低吸収帯刷毛単位17aの間欠的な破線状の連続によって構成され、これらの高吸収帯刷毛単位16a相互間や、低吸収帯刷毛単位17a相互間には、繊維が起毛していない非起毛部18が介在する。このような長繊維層15の構成形態とすることの効果は、「第5発明の効果」の欄で前記した通りである。
本発明によって、家具や建築物の内外壁面材等に、柔らかく繊細な天然調の柾目模様を、熟練を要することなく、安価にかつ簡単に形成することができる。
実施例1に係る模様付け材の斜視図である。
図1のX−X断面の部分拡大図である。
実施例に係る柾目模様材の写真である。
実施例に係る模様付け材の平面図である。
実施例に係る模様付け材の製造工程を示す図である。
実施例に係る模様付け材の斜視図である。
符号の説明
1 模様付け材
2 シート材
2a 凸起した部分
2b 凹陥した部分
3 ファイバー
4 高吸収帯
5 低吸収帯
6 柾目模様材
7 模様付け材
8 ベース材
9 長繊維層
11 折り込み部
12 高吸収帯
13 低吸収帯
14 模様付け材
15 長繊維層
16 高吸収帯
16a 高吸収帯刷毛単位
17 低吸収帯
17a 低吸収帯刷毛単位
18 非起毛部

Claims (13)

  1. フィラメントの集束体であるファイバーをベース材の模様付け面に密生させた柾目模様付け用の模様付け材であって、
    前記模様付け面においては、模様付け面に対する以下の(1)〜(3)の内の少なくとも(1)及び/又は(2)を含む1以上に該当するファイバーの密生形態の相違に基づき、塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成したことを特徴とする模様付け材。
    (1)高吸収帯ではベース材の模様付け面の凸起部分にファイバーを密生させており、低吸収帯ではベース材の模様付け面の凹陥部分にファイバーを密生させている。
    (2)高吸収帯では密生したファイバーが長毛であり、低吸収帯では密生したファイバーが短毛である。
    (3)高吸収帯では密生したファイバーが柔軟な性状であり、低吸収帯では密生したファイバーが硬質な性状である。
  2. 前記(2)のファイバーの密生形態において、高吸収帯に密生させた長毛のファイバーは相対的により多数のフィラメントを集束した太いファイバーとし、低吸収帯に密生させた短毛のファイバーは相対的により少数のフィラメントを集束した細いファイバーとしたことを特徴とする請求項1に記載の模様付け材。
  3. 前記ファイバーを、添毛又は植毛の手法により密生させていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の模様付け材。
  4. 前記ファイバーがループ状に添毛又は植毛されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の模様付け材。
  5. 柾目模様付け用の模様付け材であって、ベース材にフィラメントの集束体である長繊維からなる長繊維層を重ねて所定間隔の接合線P沿いに接合すると共に、
    接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記長繊維層を切断することにより、あるいは、接合線P間における一方の接合線Pに偏した切断線Py沿いに前記ベース材及び長繊維層を破線状態で間欠的に切断することにより、
    ベース材に長繊維層を重ねた側の模様付け面において、比較的長い長繊維が起毛して塗料吸収保持能の大きい高吸収帯と、比較的短い短繊維が起毛して塗料吸収保持能の小さい低吸収帯とを交互にストライプ状に形成したことを特徴とする模様付け材。
  6. 前記ベース材と長繊維層とが、接合線Pに沿うベース材裏面側への折り込み部の形成によって接合されていることを特徴とする請求項5に記載の模様付け材。
  7. 前記ベース材が弾性的に伸縮可能な材料あるいは収縮化処理が可能な材料からなり、かつ、前記模様付け材が以下の(1)又は(2)の工程を含んで形成されていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の模様付け材。
    (1)ベース材が弾性的に伸縮可能な材料からなる場合において、ベース材を接合線Pに対する交差方向へ伸長させた状態において長繊維層を接合線P沿いに接合させ、その後、ベース材の伸長状態を解消させる。
    (2)ベース材が収縮化処理が可能な材料からなる場合において、前記ベース材と長繊維層との接合後に、又は長繊維層の前記切断処理の後に、ベース材を収縮処理させる。
  8. 前記長繊維層が、捲縮長繊維層、トウから開繊された長繊維層、フラットヤーンの長繊維層あるいはスプリットヤーンの長繊維層であることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれかに記載の模様付け材。
  9. 柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の模様付け材を、そのまま、手作業用具として用いるものであることを特徴とする模様付け具。
  10. 柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、把持部を備える模様付け具に請求項1〜請求項8のいずれかに記載の模様付け材を設けたものであることを特徴とする模様付け具。
  11. 柾目模様の模様付けを行うための模様付け具であって、請求項1〜請求項8のいずれかに記載の模様付け材をベルト状に構成して回転ローラー間に張架したことを特徴とする模様付け具。
  12. 被加工材に柾目模様を付与するための模様付け方法であって、少なくとも以下の工程を含むことを特徴とする模様付け方法。
    (1)被加工材に対して、ベースカラー塗料を塗布したもとで、又はベースカラー塗料を塗布することなく、木目付け塗料を一様にあるいは一定の部位に塗布する塗布工程。
    (2)被加工材の上記塗料塗布面に対して請求項9〜請求項11のいずれかに記載の模様付け具を軽く押しつけてほぼ直線的に摺動させることにより、柾目模様を形成する模様付け工程。
  13. 前記模様付け工程の後に、柾目模様の乾燥を待って、透明塗料を塗布する後工程を行うことを特徴とする請求項12に記載の模様付け方法。
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