JP4493747B2 - 屋外用電気機器タンク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は主に塩害地域に設置される屋外用電気機器に係り、特にそのタンクに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩害地域に設置される屋外用電気機器は、そのタンクが塩害に耐えるように、防錆処理として亜鉛めっき処理が行われており、またある種の電気機器では、部分的、例えば外気と直接当たる箇所に金属溶射被膜処理することが行われており、特に金属溶射被膜処理が有効であることがわかっている。そこで、外部全体に金属溶射被膜処理することが要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
屋外用電気機器として、例えば配電用油入変圧器は、そのタンクを構成するケースに変圧器本体が絶縁油と共に収納され、ケースの上端の開口部はカバーにより閉鎖されている。ここで、上記のようにタンクはケース及びカバーにより構成されているものとする。ところで、変圧器はブッシングが設けられており、ケースの上部に設けられたブッシング取付穴を貫通した状態で取り付けられて構成されるもの、またカバーに設けられたブッシング取付穴を貫通した状態で取り付けられて構成されるものがある。前者ではブッシング取付部が絶縁油に浸されており、後者では絶縁油面上に形成される空間があるため、絶縁油に浸されていない。ところが、従来と同様にブッシング取付穴の周囲にシール材としてリング状のパッキンを介在させてブッシングを取り付けても、金属溶射被膜は多孔質であるために、ブッシング取付部の油密または気密を保持させることができないという問題が生じる。
【0004】
また、配電用油入変圧器を電柱に設置する場合、電柱に設けられている変圧器取付金具と配電用油入変圧器タンクのハンガ座とがボルト及びナットにより強固に締め付けられている。ところで、金属溶射被膜を形成する溶射材としては、通常亜鉛、亜鉛/アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金等が用いられており、変圧器取付金具、ボルト及びナットのような金属部材は亜鉛めっきが施されている。この場合、異種金属同士が接触し、しかも変圧器取付金具に施されている亜鉛めっきのイオン化電位が配電用油入変圧器タンクに施されている亜鉛、亜鉛/アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金等による金属溶射被膜のイオン化電位よりも大であるので、金属溶射被膜処理することにより防錆される原理と同様に変圧器取付金具、ボルト及びナットの方が先に錆びることになり、この錆びが金属溶射被膜に影響を及ぼす。いわゆる貰い錆びにより、タンクを防錆する期間が短くなるという問題が生じる。
【0005】
さらに、金属溶射被膜を形成した配電用油入変圧器タンクでは、タンク表面の熱輻射率が低く、内部の温度上昇値が大きくなるので、機器の寿命が短くなるという問題が生じる。そこで、十分な放熱効果を得ようとすると、タンクの表面積を増やす必要が生じ、タンクの寸法を大きくしなければならないという問題が生じる。
【0006】
本発明は、外部全体に金属溶射被膜を形成しても、シール材が設けられる部分の油密または気密を保持するようにした屋外用電気機器タンクを提供することを課題としている。
【0007】
本発明はまた、外部全体に金属溶射被膜を形成し、かつ金属溶射被膜と異なる金属からなる金属部材と接触しても、その接触面が錆びないようにした屋外用電気機器タンクを提供することを課題としている。
【0008】
本発明はさらに、外部全体に金属溶射被膜を形成しても、機器の寿命を短くすることなく、かつ寸法を大きくしないようにした屋外用電気機器タンクを提供することを課題としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、タンク本体の外部に金属溶射被膜が形成された屋外用電気機器タンクに係わるものである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、タンク本体の内外部の油密または気密を保持するためのシール材が密着される面がタンク本体の外部の表面に設けられ、少なくともシール材が密着される面に常温乾燥型塗料または低温焼き付け塗料による塗装皮膜を形成したものである。
【0011】
上記の請求項1の発明においては、タンク本体に形成された金属溶射被膜の油密または気密用シール材が設けられる部分に塗装被膜を形成したことにより、必要な箇所のみに塗装被膜が形成されているために、外部全体に金属溶射被膜を形成しても、この部分で油密または気密が保持される。
【0012】
請求項2に記載の発明は、タンク本体の外部の金属溶射皮膜が形成される面に、金属溶射皮膜とは異なる材質の金属部材が接触する面を有し、少なくとも異なる金属が接触する面に常温乾燥型塗料または低温焼き付け塗料による塗装皮膜を形成したものである。
【0013】
上記の請求項2の発明においては、金属溶射被膜と異なる金属部材と接触する面に塗装被膜を形成したことにより、必要な箇所のみに塗装被膜が形成されているために、外部全体に金属溶射被膜を形成し、かつ金属溶射被膜が異種金属と接触しても、その接触面で錆びることがない。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【発明の実施の形態】
図1(A),(B)はそれぞれ、本発明に係る屋外用電気機器タンクの正面図及び上面図であり、図2は図1(B)のA−A線部分拡大断面図であり、ケースにブッシングを設けて構成される配電用油入変圧器のタンクを示している。図示するように、タンク付属部材1として、それぞれ鉄製の吊耳座1a、カバーのカバー固定座1b、ハンガ座1c、放熱フィン1d等があり、筒状に成形されて底板を設けた鉄製のタンク部材2の側面の上部に、コ字状に成形された吊耳座1a及びカバー固定座1bがそれぞれ対向するように2個づつ設けられ、またその側面の上下にコ字状に成形されたハンガ座1cが設けられ、さらにその側面の周囲にV字状に成形された放熱フィン1dがタンク部材2を取り囲むように複数個設けられ、これらは溶接により取り付けられる。ここで、このように構成されたものをタンク本体3という。なお図1は、タンクの上端の開口部を閉鎖するカバーを省略して示している。
【0019】
タンク本体3の外部全体には、図1(A)及び図2に示すように、金属溶射被膜Mが形成されており、当然、吊耳座1a、カバー固定座1b、ハンガ座1c、放熱フィン1dのそれぞれの内側の面及びその面に対向するタンク部材2側の面にも金属溶射被膜Mが形成されている。この金属溶射被膜Mを形成する溶射材としては、通常亜鉛、亜鉛/アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金等が用いられ、また溶射方法としては、公知のアーク溶射、プラズマ溶射、ガス溶射等が例示され、溶射材の種類によって適宜に使い分けられる。
【0020】
金属溶射被膜Mの表面には、図1(A)及び図2に示すように、部分的に塗装被膜P1〜P3が形成されており、塗装被膜P1〜P3を形成する塗料としては、高温焼き付け塗料では塗装被膜面に気泡が発生し、金属溶射被膜Mに施す塗料として適さないので、常温乾燥型塗料または低温焼き付け塗料が用いられ、例えばフッ素樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂塗料がある。塗装被膜P1〜P3の厚さは、その膜が薄いと、金属溶射被膜Mの突起先端部が塗装被膜から露出するので、この突起先端部が隠れるように乾燥厚さを平均的に30μm以上とすることが望ましい。
【0021】
塗装被膜P1は、図1(A)及び図2に示すように、例えば3つの図示しないブッシングのブッシング取付穴2aの周囲にそれぞれ、図示しないシール材としてリング状のパッキンよりも広い面積を確保するようにリング状に形成されている。この場合、塗料が金属溶射被膜Mの内部に浸透して封孔するように、塗料をシンナーで希釈してその粘度を低下させている。したがって、ブッシング取付部の油密が保持される。
【0022】
また塗装被膜P2は、図1(A)及び図2に示すように、ハンガ座1cに形成されており、電柱に設けられている図示しない変圧器取付金具と接触する面と、切り欠き部と、その裏面に、図示しないボルトまたはナットが接触する面よりも広い面積を確保するように形成されている。この場合、塗料被膜Pは金属溶射被膜Mの表面に施せばよいので、塗料の粘度を低下させる必要がない。したがって、変圧器取付金具、ボルト、ナットに発生する錆びがハンガ座1cに形成された金属溶射被膜に影響を及ぼさない。
【0023】
さらに塗装被膜P3は、図1(A)に示すように、例えば放熱フィン1dの上端近傍から下端近傍までのほぼタンク本体3の全周面に形成されており、その大きさ及び箇所は、タンク本体3全体に塗装被膜のみを形成した状態での内部の温度上昇値及びタンク本体3全体に金属溶射被膜のみを形成した状態での内部の温度上昇値に基づいて選定される。この場合、ハンガ座1cに塗装被膜P2を形成したのと同様に、塗料の粘度を低下させる必要がない。したがって、タンク表面の熱輻射率が改善されるので、十分に放熱効果が得られる。
【0024】
図3は、本発明に係る屋外用電気機器タンクの製作方法を示す概略工程図である。
【0025】
ステップS1では、吊耳座1a、カバー固定座1b、ハンガ座1c、放熱フィン1dのタンク付属部材1及びタンク部材2をそれぞれ粗面形成処理する。これは従来のように、タンク付属部材1を取り付けて粗面形成処理すると、吊耳座1a、カバー固定座1b、ハンガ座1cのように比較的小さなタンク付属部材に対し、タンク付属部材1の内側の面の殆どが所望の粗面状態にならない。また、放熱フィン1dのようにタンク部材2の面を大きく覆うような比較的大きなタンク付属部材1に対し、放熱フィン1dの内側の面と放熱フィン1dで覆われるタンク部材2側の面とが全く処理されないので、タンク付属部材1をタンク部材2に取り付ける前に、タンク付属部材1及びタンク部材2の外部を粗面形成処理して所望の粗面状態にするためである。
【0026】
ステップS2では、共に粗面形成処理されたタンク付属部材1が、タンク部材2の外部に通常表側に対して片面溶接されて取り付けられる。このようにして作製されたタンク本体3は、タンク付属部材1とタンク付属部材1で覆われるタンク部材2側の面を含む面全体とが所望の粗面状態になる。
【0027】
ステップS3では、タンク本体3の外部を粗面形成処理する。これは、タンク付属部材1とタンク部材2とを溶接により取り付けると、これらの溶接部分の粗面状態が失われるので、この部分の粗面状態を回復させるためである。
【0028】
ステップS4では、粗面形成処理されたタンク本体3の外部を金属溶射被膜処理する。この際、吊耳座1a、カバー固定座1b、ハンガ座1cのタンク付属部材1とタンク部材2との間にそれぞれ形成された空間部に向けて溶射された金属は、タンク付属部材1の内側の面とタンク付属部材1で覆われるタンク部材2側の面とに当たり、その両方の面全体に良好に付着する。また、放熱フィン1dのタンク付属部材1とタンク部材2との間に形成された空間部に向けて溶射された金属は、タンク付属部材1の内側の面とタンク付属部材1で覆われるタンク部材2側の面との間を反射しながら両方の面全体に良好に付着する。金属溶射被膜処理する溶射材としては、亜鉛、亜鉛/アルミニウム、亜鉛−アルミニウム合金等が用いられ、また溶射方法としては、公知のアーク溶射、プラズマ溶射、ガス溶射等が例示され、溶射材の種類によって適宜に使い分けられる。
【0029】
ステップS5では、金属溶射被膜処理されたタンク本体3の外部を部分的に塗装処理する。塗装処理する場合、塗装箇所以外をマスキングして例えばエアースプレー塗装、ハケ塗りし、常温で1日間乾燥させた。
【0030】
本発明は、ケースにブッシングを設けた配電用油入変圧器のタンクの例を示したが、カバーにブッシングを設けた配電用油入変圧器のタンク、放熱フィンがない配電用油入変圧器タンク、または放熱フィンの代わりに、放熱フィンに相当するタンク本体の一部を波状にして筒状に成形した波付成形部を設けた配電用油入変圧器タンクにも適用でき、その他に地上設置型変圧器の外箱、気中開閉器のケース、自動電圧調整装置のタンク等のいずれの屋外用電気機器タンクにも適用できる。
【0031】
本発明は、ブッシングのない構成のもの、金属溶射被膜と異なる金属からなる金属部材と接触しない構成のものでは、少なくとも内部の温度上昇値に基づく塗装被膜を部分的に形成すればよい。
【0032】
本発明はまた、配電用油入変圧器のケースにカバーを取り付ける場合、亜鉛めっきを施したL字状のカバー取付金具を用いることになるで、このカバー取付金具と接触する吊耳座、カバー固定座及びタンク部材の1つであるカバー部材の接触箇所にもそれぞれ塗装被膜を部分的に形成する。
【0033】
本発明はさらに、塗装被膜を部分的に形成する箇所は、図示しないシール材が設けられる面の一部を含む面か、またはシール材が設けられる面を含む面であればよく、また金属溶射被膜と異なる金属からなる金属部材と接触する場合、この接触する面を含む面であればよく、金属溶射被膜のイオン化電位がこの金属部材よりも大であれば、金属溶射被膜の方が先に錆びることになるが、塗装被膜を形成することにより防錆される。さらに、内部の温度上昇値を考慮する場合、カバー部材は金属溶射被膜処理したままでタンク部材の1つであるケース部材のみを対象としてもよい。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に記載した発明によれば、タンク本体に形成された金属溶射被膜の一部に塗装被膜を形成したので、それぞれの箇所で油密または気密を保持することができ、また異種金属との接触面を防錆することができ、さらに機器の寿命を短くすることなく、かつタンクの寸法を大きくならないようにすることができ、これらはタンクの構成により、個々に有し、または複合して有する。また、油密または気密用シール材が設けられる部分に塗装被膜を形成したので、外部全体に金属溶射被膜を形して、この部分で油密または気密を保持することができる。
【0035】
また、請求項2に記載した発明によれば、金属溶射被膜と異なる金属からなる金属部材と接触する面に塗装被膜を形成したので、外部全体に金属溶射被膜を形成し、かつ金属溶射被膜が異種金属と接触しても、その接触面を防錆することができる。
【0036】
【0037】
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明に係る屋外用電気機器タンクの正面図、(B)は上面図である。
【図2】 図1(B)のA−A線部分拡大断面図である。
【図3】 本発明に係る屋外用電気機器タンクの製作方法を示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 タンク付属部材
2 タンク部材
3 タンク本体
M 金属溶射被膜
P 塗装被膜
Claims (2)
- タンク本体の外部に金属溶射被膜が形成された屋外用電気機器タンクにおいて、
前記タンク本体の内外部の油密または気密を保持するためのシール材が密着される面がタンク本体の外部の表面に設けられ、少なくとも前記シール材が密着される面に常温乾燥型塗料または低温焼き付け塗料による塗装皮膜を形成したことを特徴とする屋外用電気機器タンク。 - タンク本体の外部に金属溶射被膜が形成された屋外用電気機器タンクにおいて、
前記タンク本体の外部の金属溶射皮膜が形成される面に、前記金属溶射皮膜とは異なる材質の金属部材が接触する面を有し、少なくとも前記異なる金属が接触する面に常温乾燥型塗料または低温焼き付け塗料による塗装皮膜を形成したことを特徴とする屋外用電気機器タンク。
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