以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1は、本発明の実施形態に係る自動車V(車両)の主にシートレイアウトを模式的に示す。この自動車Vには、車室最前部のインストゥルメントパネル1を臨む前部シートとして、右側(車体の右側であり、以下、特に断らない限り同様とする)に運転席2が、左側に助手席3が並んで配置されており、それぞれシートクッションを前後及び上下に移動させたり、シートバックの傾きを調整したりできるようになっている。また、それら各前部シート2,3のシートバック背面には、上側にアシストグリップ2a,3aが、また下側に折り畳み可能なシートバックトレイ2b,3bがそれぞれ取り付けられている。
前記前部シート2,3の後方には、それぞれ、左右独立のキャプテンシートからなる後部シート4,5が配設されていて(ベンチシートであってもよい)、その後方には、シートバックによって区画されて荷室6が形成されている。これら後部シート4,5は、前記前部シート2,3と同様にそれぞれシートクッションを前後及び上下に移動させたり、シートバックの傾きを調整したりすることができ、前方にスライド移動させれることによって後方の荷室6を広げることができる。また、後部シート4,5は、それぞれシートバックをシートクッション上に重ねて、両者を一体に前方へ向かって回動させることにより、前部シート2,3の背後に折り畳んで格納することもでき(所謂ダブルフォールディング)、こうすれば、荷室6が前部シート2,3の背後まで拡大される。
そのようなシート位置の調整を自動的に行えるように、この実施形態では、各シート2〜5にそれぞれ対応して電気モータなどのアクチュエータ19,19,…(図1には示さず)が配設されており、図2に示すように、それらの各アクチュエータ19の作動はコントローラ20によって制御されるようになっている。言い換えると、自動車Vには、各シート2〜5毎にアクチュエータ19の作動によって、シートの前後左右の位置や座面の高さ、シートバックの傾きなどを調整し、さらにそれらを折り畳んで格納するといった種々のシートアレンジを自動で行える自動シートアレンジ装置Aが搭載されている。
この自動シートアレンジ装置Aの構成は前記図2に示されており、コントローラ20には、前記各シート2〜5のシークッションにそれぞれ配設されて、乗員の着座などを検出する重量センサ等からなる着座センサ21が接続されている。また、図2にのみ示すが、コントローラ20には、自動車Vのドア7〜11(バックドア11を含む)にそれぞれ配設されて、その開度(角度)を検出可能なドアセンサ22が接続されているとともに、自動車Vに搭載されたキーレスエントリシステムの車載機23も接続されていて、相互に信号を授受可能になっている。
さらに、コントローラ20には、後述の如く、車室内の物品や乗員の携行物に付いているICタグ(記録手段)から無線通信により所定の情報を読み取るためのリーダ装置24(読取装置)が接続されている。このリーダ装置24は、図1に示すように各ドア7〜11に対応して、それぞれドア開口部の外側の所定範囲から(破線で模式的に示す)、即ち車外の乗員の携行物からICタグ情報を読み取れるように、例えば車室の天井部やピラーなどに配設されるとともに(以下、車外向リーダともいう)、各シート2〜5及び荷室6に対応して、シートクッション上乃至荷室6からICタグ情報を読み取れるように、例えば車室の天井部などに配置されていて(以下、車内向リーダともいう)、車内外の荷物や携行物の情報を読み取り可能に設けられている。
また、図2のみに示すが、コントローラ20には、各シート2〜5や各ドア7〜11に対応してピラーなどに配設され、後述の如く自動シートアレンジを許容するための所定の操作が行われる操作ボタン25が接続されているとともに、シート位置の調整について乗員に報知するための報知器26が接続されている。この報知器26は、例えば、シート位置調整の音声ガイドを行うスピーカーや、単にアクチュエータが作動中であることを報知するブザーなどでもよく、それ以外に、シートアレンジの手順を表示するためのLCDやELなどのディスプレイ装置でもよい。
尚、この実施形態では、前部シート2,3及び後部シート4,5にそれぞれ隣接する乗降用ドアとしての左右のフロントドア7,8及びリヤドア9,10がいずれも前側のヒンジを中心に回動して開閉されるヒンジ式のものであるが、これに限らず、左右のリヤドア9,10だけは車体外側面に沿って前後にスライドして開閉されるスライド式のものであってもよいし、全ての乗降用ドア7〜10がスライドドアであってもよい。また、最後部のバックドア11は、この実施形態では上ヒンジのハッチゲートであるが、これに限らず、横ヒンジのものであってもよい。
(自動シートアレンジ装置)
本発明の特徴として、この実施形態の自動シートアレンジ装置Aは、乗員の身体的特徴をその携行物の情報などから自動で判定し、これに応じて自動でシート位置を調整するようになっている。すなわち、近年、物品やその包装に種々の情報(例えば物品の種類、大きさ、重さなど)を記録したICタグ(電子ラベル、電子レッテルなどとも呼ばれる)を直接、張り付けたり、内蔵したりすることが実用化されつつあり、自動車Vに搭載したリーダ装置24によってそれらICタグの情報を読み取れば、この情報に基づいて乗員の体格や衣服の種類などを推定することができる。
前記ICタグは、一般的に無線通信用のアンテナを有しており、リーダ装置からの電波を受信して電磁誘導により起動されて、記録している情報をリーダ装置に対して送信するようになっている。従って、ICタグは、電池などを必要とせず、リーダ装置から所定の距離内であれば非接触で情報を提供することができる。そして、前記携行物の情報などに基づいて、乗員が例えば乳幼児や車椅子の利用者のように乗降時に介助を必要とする者や、高齢者のように必ずしも介助の必要はないが、行動が比較的緩慢で状況に応じて介助をすることが望ましい者、即ち被介助者であると判定したときには、車室への乗り降りがしやすくなるように、或いはその乗り降りを介助しやすいように、シート位置の変更(シートアレンジ)を行う。
以下、前記自動シートアレンジ装置Aの動作を主に図3及び図4のフローチャートに基づいて具体的に説明すると、まず、図3においてスタート後のステップS1では、自動シートアレンジ装置Aの制御に用いる種々のデータを入力する。これは例えば、各シート2〜5の現在位置や乗員の着座状況を確認したり、シートにチャイルドシートが装着されているかどうか確認したり、或いはドアが開いているかどうか確認するためのものである。そして、続くステップS2では、例えば運転席2などの所定シートに乗員が着座しており、自動車Vが走行中であると考えられる状況かどうか判別して、YESであればリターンする一方、NOであればステップS3に進む。
ステップS3では、自動シートアレンジ装置Aの起動を選択する起動操作があったかどうか判別する。すなわち、例えばキーレスエントリシステムのリモコンの解錠ボタンが所定時間内に続けて2回、押されたときや、或いは、自動車Vのドアノブの付近に設けられているエントリボタンが押されたときなど、予め設定されている起動操作が行われたときに、起動操作あり(YES)と判別してステップS4に進む一方、YESと判別されるまではステップS1に戻る。
つまり、この実施形態では、前記キーレスエントリシステムのリモコンの解錠ボタンやドアノブの付近に設けられているエントリボタンが、自動シートアレンジ(シート位置の調整に関する制御)を実行するか否か車外の乗員が選択操作可能な選択操作手段を構成している。尚、前記ステップS3にてYESと判定したときに、前記リモコンなどに設けた装置Aの起動ランプを点灯させるようにしてもよい。
ステップS4では、車外向リーダ装置24を作動させてICタグの情報を読み込み、この情報(携行物情報)をメモリする。これは、例えば、自動車Vの乗降用ドア7〜10のうちのアンロックされたもののリーダ装置24のみを所定時間、作動させるようにしてもよいし、或いは、全てのリーダ装置2をそれぞれ所定時間、作動させるようにしてもよい。また、読み取った携行物情報の全てをメモリするのではなく、乗員の身体的特徴を判定するのに適した主要な携行物を予め設定しておき、この情報(例えば乗員の衣類のサイズや種類、或いは杖、老眼鏡、補聴器、高齢者用IDカード、身体に装着したギブスなどの情報)のみをメモリする。判定に不適な小物(アクセサリ、時計、文具など)の情報は読み込んでも、メモリしない。
続くステップS5では、例えばベビーシート(乳児用シート)やチャイルドシート(幼児用シート、子供用シート)、或いは大型アシストグリップやターンクッション等の乗降補助具が装着されているかどうかなど、シートに関する取付装備(シート装置に装着されている物品)の情報を読み込んでメモリする。尚、ターンクッションというのは、シートクッション上に載置される回転台のことで、乗員が乗り降りしやすいようにその身体の向きを前方から左右方向に回動させて変更できるものである。
前記シートの取付装備の情報は、予めコントローラ20に設定入力して、記憶させておいてもよいし、前記車内向リーダ装置24を作動させて各シート2〜5上の物品のICタグから情報を読み取るようにしてもよい。或いは、着座センサ21からの信号に基づいて取付装備の存在を認識することも可能である。前記車内向リーダ装置24により情報を読み取った場合は荷物などの情報はメモリせず、予め設定したシートへの取付装備(チャイルドシートなど)の情報のみをメモリすればよい。尚、シート取付装備の情報だけでなく、例えば車室が車椅子を搭載可能なレイアウトになっているかどうかなど、その自動車に固有の情報も参照することが望ましい。
続いて、ステップS6では、前記ステップS4,S5にて取得した情報に所定の不整合があるかどうか判定する。これは、上述したように車外向リーダ装置24によって車外の乗員の携行物情報を読み取るようにした場合、ドア近傍の乗員だけでなく、その傍に居る別の乗員の携行物の情報まで読み取ってしまい、例えば靴や衣類や眼鏡の情報が2人分以上になって、大小、様々なサイズの衣服の情報が含まれていたり、或いは子供服と老眼鏡などのように乳幼児のものと高齢者などのものとが含まれていたりして、乗員の身体的特徴を1つに特定する上で不整合が生じるからである。
より詳しくは、図5に一例を示すように、自動車Vに複数の乗員がいるときには、同図(a)の如く自動車Vのいずれか1つのドア(図例では左側リヤドア10)の車外向リーダ装置24の読み取り範囲内に、このドアから乗り込もうとしている乗員以外にも別の乗員が居ることがあり、この状態で該リーダ装置24を作動させると、左側の後部シート5に着座する乗員だけでなく、別のシート(例えば左側の前部シート3)に着座する乗員の携行物の情報まで読み取ってしまい、前記のような情報の不整合を生じることになるのである。
そのような情報の不整合がなければ(ステップS6でNO)、乗員の身体的特徴を1つに特定して、これに対応する最適なシートアレンジを決定することができるので、後述のステップS11に進む一方、情報に不整合があれば(YES)、乗員の身体的特徴を1つに特定し難いので、ステップS7に進んで、再度、車外向リーダ装置24を作動させて、ICタグの情報を読み込む。このときには情報に不整合のあったリーダ装置24のみを所定時間、作動させるようにすればよい。また、読み取った携行物情報のうち、予め設定してある主要な携行物の情報のみをメモリするのは前記ステップS4の場合と同じである。
続いて、ステップS8において、前記の再度、情報を読み込んだリーダ装置24に対応するドア7〜10の開度が設定開度以上かどうか、ドアセンサ22からの信号に基づいて判別する。この設定開度というのはドアが比較的大きく開いた状態を検知するためのものであり、これにより、例えば前記図5(b)に示すように、ヒンジドア10の後端部がリーダ装置24の読み取り範囲を車幅方向外方に越えるまで、該ドア10が大きく(例えば30°以上)開いていることを検知することができる。
そのようにドアが比較的大きく開いているときには、図示の如く、そのドア10から乗り込もうとしている乗員以外は、比較的大きく開いているドア10を避けるように行動すると考えられ、そのように開いているドア10を避けて自身の乗り込もうとするドア(図の例では左側フロントドア8)に向かい移動する別の乗員が、前記開いているドア10のリーダ装置24の読み取り範囲内に入る確率は極めて低くなる。従って、当該リーダ装置24の読み取り範囲内には、このドアから乗り込もうとしている乗員だけしかおらず、この乗員の携行物情報だけを間違いなく読み取ることができる。
そこで、ドア7〜10が設定開度まで開くまではステップS8においてNOと判定し、前記ステップS7に戻って、ICタグ情報の読み込みを繰り返す一方、ドア7〜10が前記設定開度まで開いてYESと判別すれば、ステップS9に進んで、リーダ装置24により最後に読み取った情報を携行物情報として確定する。尚、最後に読み取った情報だけでなく、これを含めて所定回数分の読み取り情報から読み取り頻度の相対的に高いものを選択して、携行物情報を確定するようにしてもよい。また、ドアが所定開度に開いたときにのみ、リーダ装置24によって読み取るようにしてもよい。
続いて、ステップS10において、前記ステップS9にて確定した携行物情報とステップS5にて取得したシート装備の情報とに基づいて、それらの情報に依然として不整合があるかどうか判定し、不整合があるYESならば図4に示す後述のステップS22に進む一方、不整合がなくNOであればステップS11に進んで、それらの情報に基づいて乗員の身体的特徴を判定し、これに応じて最適なシートアレンジ(シート位置)を決定する。
前記最適シートアレンジは、乗員が被介助者であるか介助不要者であるかによって大きく異なり、介助不要者に対しては主にその体格や体型に対応した快適なシートポジションを提供することを目的とする一方、被介助者に対しては、車室への乗り降りがしやすくなる(或いは乗り降りを介助しやすくなる)ようなシートアレンジを主目的とする。
具体的に、この実施形態では、乗員の携行物の情報にシート取付装備の情報などを加味して、まず乗員の身体的特徴を予め設定されている類型(大柄か小柄か、被介助者か介助不要者か、等々)の中から選択し、それからこの類型毎に予め設定されているシートアレンジを採用するようにしている。
すなわち、例えば乗員の携行物に被介助者と判定するためのものが何も含まれておらず、また、シート2〜5上にもチャイルドシートや乗降補助具などが何も装着されていなければ、乗員は介助不要者であると判定できる。この場合には、例えば乗員の衣服のサイズに基づいて大柄であると判定すればシートクッションを後ろに移動させればよく、反対に小柄であると判定すれば前に移動させればよい。
一方、例えば、シート2〜5上にベビーシートがあれば、乳児を後ろ向きに乗せると考えて、その乗せ降ろしがしやすいようにシートクッションを所定量、前に移動させるのが望ましい。また、シート2〜5上にチャイルドシートがあれば、これに幼児が着座しやすいように、或いは着座させやすいように足下を広げるために、シートクッションは後ろに下げるようにすればよい。
さらに、乗員が老眼鏡や杖を携行していて高齢の被介助者であると判定したときや、乗員がギブスをしていたり、裾の長いドレスや和服を着ていて、その動作が規制されると判定したきには、当該乗員の乗り降りがしやすいように、シートバックを略垂直状態に起こすことが望ましい。これに加えて、後部シート4,5であれば、乗員が前部シート2,3のアシストグリップ2a,3aを掴めるようにシートクッションを所定量、前に移動させてもよいし、反対に、前部シート2,3との間の間隔を広げ足下を広くするために、後部シート4,5のシートクッションを後ろに下げるようにしてもよい。
以上のような最適シートアレンジを設定した後に図4のステップS12に進んで、各シート2〜5の現在の状況(現在のシートアレンジ)を確認するとともに、前記最適シートアレンジとするためにシート位置を変更するシート2〜5の周辺の所定の状態を判定する。これは、例えば、シート後方の荷室6に積載されている荷物やシートクッション上或いはシート前方に置かれている物品、或いは位置を変更するシート2〜5の前後左右に隣り合う別のシート2〜5についての状態であり、シート位置の変更動作に伴う荷崩れや物理的な干渉の発生、或いは、乗員のためのスペースの狭小化など種々の不具合が発生することを予想するために行う。
そして、現在のシートアレンジが前記最適シートアレンジと同じであれば、シートアレンジの変更は不要であり、また、シート周辺の状態から、最適シートアレンジを行おうとすると前記荷崩れや干渉などの不具合が発生すると予想される場合には、シートアレンジの変更はすべきではない(不可)と考えて、このようにシートアレンジが不要か又は不可であれば、ステップS13でNOと判定して後述のステップS18に進み、自動シートアレンジは行わないようにする。このことで、前記荷崩れなどの不具合の発生を未然に防止することができる。
尚、自動シートアレンジを一律に行わないようにするだけでなく、周辺の状態に応じて抑制するだけにしてもよく、この場合には、自動シートアレンジにおけるシート位置の調整量を相対的に小さくしたり、調整速度を相対的に遅くしたりすればよい。
一方、前記ステップS13において現在のシートアレンジが最適シートアレンジと異なっていて、且つシートアレンジが可能であれば、シートアレンジを変更する(YES)と判定してステップS14進み、前記ステップS11における乗員の身体的特徴の判定結果から、乗員が被介助者であるか、それ以外の介助不要者であるか判別する。そして、乗員が被介助者であると判別すれば(YES)、続くステップS15においてドアセンサ22からの信号によりドア7〜10が開いているかどうか判別し、ドアが閉じていれば(NO)、開くまで待ってからステップS16に進んで、シート2〜5のアクチュエータ19に駆動信号を出力する。これによりシートアレンジの変更動作が開始されるとともに、この変更動作について報知器26による報知が開始される。
こうして、乗員が被介助者である場合には、乗車しやすいように(或いは乗車を介助しやすいように)、シート2〜5に着座するよりも前にシート位置を変更すべく、ドア7〜10の開放を契機としてシートアレンジのための制御が行われる。そのようにドアが開いているときにのみシート位置の変更作動が行われることで、その作動状況を乗員やその介護者が目視にて確認することができ、安全性も高い。尚、作動状況に応じてシート位置の変更を中止できるように、シート近傍の所定箇所(例えばピラートリムなど)にキャンセルスイッチを設けてもよい。
一方、前記ステップS14において被介助者でないNOと判定して進んだステップS17では、着座センサ21からの信号に基づいて乗員の着座を検出した後、所定時間(例えば60〜120秒)内にそのシートの操作ボタン25が押されたかどうか判定して(所定操作あり?)、この操作があれば前記ステップS16に進み、前記と同様にシートアレンジの変更動作及び報知を開始する一方、所定時間が経過しても操作ボタン25が押されなければ、ステップS18に進んで報知器26を作動させ、シートアレンジを行わない(非動作)ことを報知する。
つまり、乗員が介助不要者であれば、シート2〜5に着座するよりも前にシート位置を変更する必要はないので、乗員を立ったまま待たせることがないように、着座検出後にシートアレンジを行う。しかも、その際に余計なシートアレンジが行われないように、乗員により操作ボタン25が押されてシートアレンジが許容された後に限って、シート位置を変更するようにしている。尚、そのように乗員の判断でシートアレンジが許容されたときでも、自動車Vの走行中はシートアレンジを禁止することが好ましい。
前記のようにアクチュエータ19を駆動して、自動シートアレンジ及びその報知を開始した(ステップS16)後のステップS19では、例えばアクチュエータ19に付設されているエンコーダ(センサ)などから出力されるフィードバック信号に基づいて、当該アクチュエータ19の駆動位相の駆動信号からのずれが所定以上に大きいかどうかによって干渉の有無を判定する。そして、干渉ありでYESと判定すれば自動シートアレンジを中止し、前記ステップS18に進んでシート2〜5の非動作を報知する。こうすることで、実際に周辺との干渉が起きたときに直ちに自動シートアレンジを中止することができる。
一方、前記アクチュエータ19の駆動位相のずれが大きくなく、干渉は起きていない(NO)と判定すれば、ステップS20に進んで、今度は目標動作が完了したかどうか判別する。そして、未だ動作が完了せず、NOならば前記ステップS16に戻ってシートアレンジの変更動作及び報知を継続する一方、動作完了でYESならばステップS21に進んで、前記自動シートアレンジを実行中のシート2〜5に隣接するドア7〜10の開閉状態を判別し、該ドア7〜10が閉じられていれば制御を終了してリターンする。
尚、前記ステップS16におけるシート位置の変更動作速度は、乗員が被介助者である場合には介助不要者の場合と比べて遅くすることが好ましい。これは安全を十分に確認できるようにするためである。また、前記ステップS18においてはシートアレンジを行わないことを報知するだけでなく、その理由も報知するようにしてもよい。
さらに、前記図3のステップS10において情報に依然として不整合があるYESと判定して進んだステップS22では、予め設定した優先度(例えば被介助者用を優先、大柄な人用を優先など)に基づいて情報に重み付けをして、即ち優先度の高い情報に基づいて最適シートアレンジを設定する。すなわち、例えば、シートクッション上にベビーシートや乗降補助具が装着されているにも拘わらず、携行物情報には乳幼児や高齢者などのものと介助不要者のものとが両方、含まれているときには、乳幼児や高齢者などの被介助者の乗り降りを介助不要者が介助していると考えて、被介助者に適したシートアレンジを設定する。
そうして優先度の高い情報に基づいて設定した最適シートアレンジを報知器26により所定時間(例えば60〜120秒間)、乗員に報知し、この所定時間が経過するまでの間に操作ボタン25が押されるか、例えばキーレスエントリシステムのリモコンの解錠ボタンが所定時間以上、続けて押されるなどの所定の操作が行われたときに、これによりコントローラ20に入力する操作信号に応じて、ステップS23にてYESと判別して前記ステップS12〜S21に進み、前記と同様に自動シートアレンジを行う一方、前記所定時間内に所定の操作が行われず、操作信号の入力がなければ、前記ステップS23にてNOと判別して、前記ステップS18に進む。
つまり、携行物情報を複数回、読み取っても依然として情報に不整合があるときには、それらの情報に基づいて選択した複数の身体的特徴の類型のうちから、少なくとも1つの類型に基づいて最適シートアレンジを仮決定し、これを報知して乗員が確認したときにはシート位置を自動で変更するようにしている。こうすることで、誤ったシートアレンジが行われることを防止できる。尚、携行物情報などに不整合がないときでも、念のため乗員に報知して確認した上で、自動シートアレンジを行うようにすることもできる。
前記図3及び図4に示すフローにおいて、ステップS3,S4,S11の制御手順により、所定の条件下で車外向リーダ装置24によって読み取った携行物情報に基づき、これにシート取付装備の情報を加味して乗員の身体的特徴を判定する判定手段20aが構成されている。その所定の条件下というのは、この実施形態では自動シートアレンジ装置Aの起動を選択する起動操作(シート位置の調整に関する制御を実行すると選択する選択操作)がなされたときである。
前記判定手段20aは、この実施形態では、乗員が、車室への乗降時に介助することが望ましい所定の被介助者であるか、或いはそれ以外の介助不要者であるかを判定可能とされていて、携行物情報に前記被介助者に対応して予め設定したものが含まれているときに乗員が被介助者であると判定するようになっている。
また、前記フローのステップS5により、シート2〜5に装着されている物品を認識する装着物認識手段20bが構成され、こうして認識されたシート取付装備の情報が前記判定手段20aによる乗員の身体的特徴の判定に加味されるようになっている。
また、ステップS6により、前記リーダ装置24によって読み取られた複数の携行物情報の間に、乗員の身体的特徴を判定する上で不整合があることを判定する不整合判定手段20cが構成されている。
そして、前記不整合判定手段20cにより情報に不整合ありと判定されたときには、ステップS7の如くリーダ装置24により再度、携行物情報の読み取りを行い、こうして再度、読み取られた携行物情報に基づいて、前記判定手段20aが乗員の身体的特徴を判定するようになっている(ステップS11)。
また、そのようにして判定された乗員の身体的特徴に基づいて、これに対応する最適なシートアレンジを決定し、この最適シートアレンジになるように各シート2〜5のシート位置を自動で調整するとともに、そのシート位置の調整について乗員に報知するという、ステップS11、S16,S18の制御手順によって、前記判定手段20aにより判定された乗員の身体的特徴に基づいてシート位置の調整に関する制御を行う制御手段20dが構成されている。
この制御手段20dは、前記判定手段20aによって乗員が介助不要者であると判定されたときには、着座センサ21による乗員の着座検出後であって且つ操作ボタン25が押された後にシートアレンジなどの制御を行う一方、乗員が被介助者であると判定されたときには、ドア7〜10が開かれたときなど、乗員がシート2〜5に着座するよりも前に制御を行うようになっている。
さらに、ステップS12,S19の制御手順により、前記制御手段20dによる制御によってシート位置が変更されるシート2〜5の周辺の所定の状態を判定するシート周辺状態判定手段20eが構成され、このシート周辺状態判定手段20eは、シート位置の変更動作に伴う荷崩れや物理的な干渉の発生、或いは、乗員のためのスペースの狭小化などの不具合を予想するとともに(S12)、シート位置の変更動作によって実際に周囲との干渉が起きたことを検出する(S19)ように構成されている。
そうして、前記制御手段20dは、前記シート周辺状態判定手段20eにより荷崩れや干渉の発生、或いは乗員スペースの狭小化などが予想されたときには自動シートアレンジを行わず、また、実際に周囲との干渉が検出されたときには直ちに自動シートアレンジを中止するように構成されている。
次に、自動車Vに乗員が乗車する際の自動シートアレンジ装置Aの一連の作動を、乗員が被介助者の場合と介助扶養者の場合とに分けて、さらに、読み取った情報に不整合がない場合と不整合がある場合とに分けて、図6及び図7のタイムチャートにより説明する。
まず、乗員が被介助者の場合について示す図6のタイムチャートにおいて、時刻t1に自動シートアレンジ装置の起動を選択する操作が行われて(図3のフローのステップS3に対応する。以下、同様)、車載機23からコントローラ20に起動操作信号が入力すると、これに応じて携行物情報とシートに関する取付装備情報とが読み込まれて(ステップS4,S5)情報読取信号が入力し、その読み取った情報に不整合がないかどうか判定される(ステップS6)。
その判定の結果、情報に不整合がなければ、その情報に基づいて乗員の身体的特徴が判定され、最適シートアレンジの設定やシート周辺状態の判定などが行われて(ステップS11,S12)、荷崩れや干渉などの不具合が予想されなければ、同図(a)に示すように時刻t2にドア7〜10が開かれてドアセンサ信号が入力すると(ステップS15)、その開かれたドア7〜10に隣接するシート2〜5のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シート位置の変更が開始されるとともに、報知器26により報知が行われる(ステップS16)。尚、前記荷崩れや干渉などが予想されれば、シート位置の変更などは行われない。
その後、時刻t3にシート位置の変更が終了した後、時刻t4にドア7〜10が閉じられると(ステップS21)、制御終了となる。但し、図示しないが、前記アクチュエータ19の作動によるシート位置の変更の途中で、例えばアクチュエータ19側からのフィードバック信号に基づいて、動作中のシート2〜5のシートクッション乃至シートバックの周辺との干渉が判定されると、自動シートアレンジは中止され、そのことが乗員に報知される。
尚、仮に乗員がドア7〜10を開いた後に自動シートアレンジ装置の起動操作を行った場合には、図に破線で示すように、情報の読み込みが終わった時点で既にドア7〜10が開いているので、直ちにシート2〜5のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シートアレンジが行われることになる。
一方、前記時刻t1における携行物情報の読み取り結果に不整合があれば、その後、同図(b)に示すように携行物情報の読み取りが繰り返し行われ(ステップS7)、時刻t2にドア7〜10が設定開度になれば読み取りを終了し(ステップS8)、その最後に読み取られた携行部情報に基づいて乗員の身体的特徴が判定される(ステップS9〜S11)。そして、前記不整合のない場合と同様に最適シートレイアウトの設定やシート周辺状態の判定が行われ(ステップS11,S12)、荷崩れや干渉などが予想されなければ、ドア7〜10は既に開かれているので(ステップS15)直ちに前記と同様のシート位置の変更及び報知が行われる(ステップS16)。
こうして、乗員が被介助者の場合は、その着座前に自動シートアレンジが行われ、被介助者である乗員がシート2〜5へ着座しやすい(或いはその介助がしやすい)ようになる。その際、ドア7〜10が開いていることを条件としてシートアレンジが行われるので、シート位置の変更作動を乗員や介助者が目視にて確認することができる。
一方、乗員が介助不要者である場合の自動シートアレンジ装置Aの作動は、図7に示すようになり、前記図6に示す被介助者の場合と同様に、まず時刻t1に自動シートアレンジ装置の起動を選択する操作が行われて起動操作信号が入力すると、携行物情報とシートに関する取付装備情報とが読み込まれて情報読取信号が入力し、こうして読み取った情報に不整合がないかどうか判定した結果、情報に不整合がなければ、その情報に基づいて直ちに乗員の身体的特徴が判定され、最適シートアレンジの設定やシート周辺状態の判定などが行われる。
また、前記のようにして読み取った情報に不整合があれば、図に仮想線で示すように、携行物情報の読み取りが繰り返し行われ、時刻t2にドア7〜10が設定開度になれば読み取りを終了し、その最後に読み取られた携行部情報に基づいて乗員の身体的特徴が判定されて、最適シートアレンジの設定やシート周辺状態の判定などが行われる。
そして、前記いずれの場合も、荷崩れや干渉などの不具合が予想されなければ、時刻t3に乗員がシート2〜5のいずれかに着座して、着座センサ信号が入力すると、それから所定時間のタイマカウントが行われ、この所定時間が経過する前の時刻t4にそのシート2〜5の操作ボタン25が操作されて、操作信号が入力すると(ステップS17)、そのシート2〜5のアクチュエータ19に駆動信号が出力されて、シート位置の変更が開始されるとともに、報知器26により報知が行われる(ステップS16)。
その後、時刻t5にシート位置の変更が終了すれば、この時点で既にドア7〜10は閉じられているので(ステップS21)、制御終了となる。尚、この介助不要者の場合も、シート周辺状態によって荷崩れなどの不具合が予想されれば自動シートアレンジは行われず、また、シート位置の変更途中で周辺との干渉が検出されれば、自動シートアレンジは直ちに中止される。
このように、乗員が介助不要者であれば、シート2〜5に着座して所定の操作を行ったときに自動シートアレンジを行うようにしており、当該乗員はシートアレンジが終わるまで立って待つ必要がなく、また、余計なシートアレンジが行われる虞れもない。
したがって、この実施形態に係る自動シートアレンジ装置Aによれば、乗員の携行物のICタグなどから得られる情報に基づいて当該乗員の身体的特徴を自動判定し、この判定結果に基づいて決定した適切なシートアレンジになるように、アクチュエータ19を作動させて、シート位置を自動調整するようにしたので、予め好みを設定した乗員でなくでも、その体格や服装などに応じた適切なポジションを極めて容易に得ることができる。
その際、乗員の携行物全ての情報を用いるのではなく、その身体的特徴を判定するのに適した主要な携行物(予め設定しておく)の情報に基づき、さらに、シート2〜5にチャイルドシートやターンクッションなどが装着されているかどうかも加味して、判定を行うようにしているので、精度の高い判定により適切なシートアレンジを決定できる。
また、前記ICタグなどからの携行物情報の読み取りは、それに適した所定の状況下で行うようにしている。すなわち、車外の乗員が自動シートアレンジ装置Aの起動操作を行ったときに、乗降用ドア7〜10の近傍にいる乗員が乗り込むことを予測して、該各乗降用ドア7〜10毎の車外向リーダ装置24によって乗員の携行物情報を読み込むようにしているので、各乗降用ドア7〜10に隣接するシート2〜5に着座する乗員の携行物情報を間違いなく読み取って、その身体的特徴を精度良く判定することができる。
しかも、そうして読み込んだ情報に不整合があるときには、前記乗降用ドア7〜10が或る程度以上、大きく開かれるまでの間、そのドア7〜10の車外向リーダ装置24による携行物情報の読み取りを繰り返し行って、当該リーダ装置24の読み取り範囲内にそのドア7〜10から乗り込もうとしている乗員だけしかいない状況で、この乗員の携行物情報だけを間違いなく読み取れるようにしているので、こうして読み取った携行物情報に基づいて、乗員の身体的特徴を高精度に判定することができる。
さらに、この実施形態では、前記自動シートアレンジを行う前に、シート位置を変更するシート2〜5の周辺の所定の状態、即ちシート後方の荷室6に積載されている荷物やシートクッション上乃至シート前方に置かれている物品、或いは前後左右に隣り合う別のシート2〜5との位置関係など判定し、自動シートアレンジを行うと、大きな荷物の荷崩れやシート2〜5と周辺のものとの干渉が発生したり、或いは乗員のためのスペースを確保できなくなるといった不具合の発生が予想される場合にはシート位置の変更を行わないことで、前記の不具合の発生を未然に防止することができる。
(他の実施形態)
尚、本発明の構成は、上述した実施形態ものに限定されることなく、その他の種々の構成をも包含するものである。すなわち、前記実施形態では、図3のフローのステップS3,S4に示すように、車外の乗員により自動シートアレンジ装置Aの起動を選択する操作が行われたときに(所定状況下)、その携行物の情報を読み取るようにしているが、これに限らず、例えば乗員により乗降用ドア7〜10が開かれたときやそのドアロックが解除されたときに、そのドア7〜10の車外向リーダ装置24によって携行物情報を読み取るようにしてもよい。
具体的に一例を挙げれば、前記図3のフローのステップS3において、ドアセンサ22からの信号によりドア7〜10が開かれたことを検知したときにステップS4に進むようにしてもよいし、或いはドア7〜10の開度が同ステップS8における設定開度(例えば30°以上)よりも小さな別の設定開度になったときに、ステップS4に進むようにしてもよい。こうすることで、開かれたドア7〜10から乗り込む乗員の携行物情報をより確実に読み取ることができる。
また、前記実施形態では、同ステップS4,S5に示すように、乗員の身体的特徴を、ICタグなどから読み取った携行物情報だけでなく、チャイルドシートなどシート取付装備の情報も加味して判定するようにしているが、これに限らず、携行物情報だけで判定するようにしてもよい。
さらに、前記実施形態において、例えば各シート2〜5のアクチュエータ19に付設されているエンコーダなどからの信号に基づいて、シート位置の変更を行うシート2〜5の周辺の別のシート2〜5においてシート位置の変更が行われていることを判定し、この判定時に自動シートアレンジを抑制するようにしてもよい。こうすれば、周辺の別のシート2〜5において乗員が手動でシート位置を変更している場合に、その手動のシート位置変更を優先するとともに、これによる予期し得ぬシート位置の変化によってシート2〜5同士や付属品などの干渉が生じたり、或いは乗員のためのスペースが確保できなくなるといった不具合の発生を抑制できる。
その場合に、自動シートアレンジを抑制するというのは、アクチュエータ19の駆動によるシート位置の調整を行わないということでもよいし、その調整量を小さくしたり、調整速度を遅くしたり、調整を後回しにしたりしてもよい。
また、前記実施形態では、シートアレンジの自動調整とそれについての報知との両方を行うようにしているが、これに限らず、例えば報知はせずに、シートアレンジの自動調整だけを行うようにしてもよく、反対に、最適シートアレンジを乗員に報知するだけに留めることもでき、この場合には乗員の介助者などが手動でシート位置を変更することで、適切なシートアレンジを実現できる。そのように最適シートアレンジを乗員に報知するだけとする場合に、これを抑制するというのは、その報知を行わないということである。
さらにまた、前記実施形態では、乗員の携行物に関する情報が記録されている記録手段として、ICタグなどのように携行物に直接、又は間接的に取り付けられているものを用いており、これに記録されている情報をリーダ装置24により非接触で読み取るようにしているが、これに限らず、記録手段は、例えばICカードのように個人情報が記録された読み書き可能な記録媒体であってもよい。
また、前記実施形態では、各シート2〜5毎に対応して操作ボタン25を配設し、これにより乗員などが自動シートアレンジを許容するかどうか決定できるようにしているが、これに限らず、例えばキーレスエントリシステムのリモコンに操作ボタンを配設してもよいし、或いは、そのリモコンの解錠ボタンやドアノブ付近のエントリボタンなどを通常の操作とは異なる態様で操作したときに、自動シートアレンジが許容されるようにしてもよい。
加えて、本発明は、図1に示す自動車VのようなRV車やハッチバック車などに限らず、4ドアのセダンや3ドアのコンパクトカーは勿論、オープンカーやトラック、バスなどにも適用可能である。