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JP4483172B2 - 酸化チタン分散液 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化チタン分散液に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種材料の表面を光触媒的に親水性にして、汚れを防止する技術が注目され(特許文献1参照)、材料表面に親水性膜を形成するためのコーティング剤が市販されている。また、可視光線の照射に対して活性を示す酸化チタンが見出され、これを触媒成分としたコーティング剤が提案されている。
【0003】
【特許文献1】
特開平9−57912号公報
【0004】
このようなコーティング剤を用いることにより、可視光照射に対して親水性を示す膜を形成することができる。しかし、屋内照明などによる少ない光量または短時間で親水性を回復させるため、可視光照射に対して、より高い親水性を示す膜を形成可能な酸化チタン分散液が要望されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、酸化チタンのもつ光触媒性能を十分に発現させて、可視光照射に対して高い親水性を示す膜を形成可能な酸化チタン分散液について検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、酸化チタンと両イオン性化合物と溶媒を含有する分散液であって、該分散液を乾燥して得られる固形分は、波長450nmの光線を照射したときの反射率が90%以下であることを特徴とする酸化チタン分散液を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の酸化チタン分散液は、酸化チタンと両イオン性化合物と溶媒を含有するものである。
【0008】
この酸化チタン分散液に含有される酸化チタンは、可視光線(例えば、波長430nm〜800nmの光)の照射に対して光触媒活性を示す酸化チタンであればよく、例えば、以下の(a)〜(i)のものなどが挙げられる。
【0009】
(a)X線光電子分光法で酸化チタンの結合エネルギー458eV〜460eVの間にあるチタンのピークの半価幅を4回測定した時の1回目と2回目のチタンのピークの半価幅の平均値をA1とし、3回目と4回目のチタンのピークの半価幅の平均値をB1とし、半価幅A1、B1から式(I)
1=B1/A1 (I)
で示される指数X1が0.97以下、好ましくは0.93以下であり、かつ紫外可視拡散反射スペクトルを測定したときの、波長220nm〜800nmでのスペクトルの吸光度の積分値をC1とし、波長400nm〜800nmでのスペクトルの吸光度の積分値をD1とし、積分値C1、D1から式(II)
1=D1/C1 (II)
で示される指数Y1が0.14以上、好ましくは0.16以上である酸化チタン(特開2001-72419号公報)、
【0010】
(b)電子スピン共鳴スペクトルにおいてg値1.930〜2.030の間に3つ以上のピークを有し、かつそれらピークの内の極大となるピークがg値1.990〜2.020の間に存在する酸化チタン(特開2001-190953号公報)、
【0011】
(c)可視光線照射後に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度X2が1.50×1016spin/g以上、好ましくは3.10×1016spin/g以上であり、かつ可視光線照射後に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度X2と、可視光線照射前に測定した電子スピン共鳴スペクトルから求められるスピン濃度Y2との比(X2/Y2)が1.00超、好ましくは1.15以上である酸化チタン(特開2001-316116号公報)、
【0012】
(d)X線光電子分光法により8回分析し、チタンの電子状態について、1回目と2回目の分析の積算スペクトル及び7回目と8回目の分析の積算スペクトルを求め、それぞれの積算スペクトルのうち結合エネルギー458eV〜460eVにあるピークを求め、1回目と2回目の分析の積算スペクトルにあるピークの半価幅をA3とし、7回目と8回目の分析の積算スペクトルにあるピークの半価幅をB3としたとき、式(III)
3=B3/A3 (III)
により算出される指数X3が0.9以下であり、かつ、紫外可視拡散反射スペクトルを測定して、波長250nm〜550nmの吸光度の積分値をC3とし、波長400nm〜550nmの吸光度の積分値をD3としたとき、式(IV)
3=D3/C3 (IV)
により算出される指数Y3が0.075以上、好ましくは0.110以上である酸化チタン(特開2001-322816号公報)、
【0013】
(e)X線光電子分光法により8回分析し、チタンの電子状態について、1回目と2回目の分析の積算スペクトルおよび7回目と8回目の分析の積算スペクトルを求めたときに、1回目と2回目の分析の積算スペクトルにおける少なくとも1つのピークの位置が結合エネルギー459〜460eVにあり、7回目と8回目の分析の積算スペクトルにおける少なくとも1つのピークの位置が結合エネルギー458〜459eVにあり、遷移金属の含有量が元素換算で酸化チタン中のチタンに対し0.005〜3.0mol%である酸化チタン(特開2002-29749号公報)、
【0014】
(f)熱天秤質量分析同時測定法により求められるマスクロマトグラムについて、質量数mとイオンの電荷数eの比m/eが28である成分の脱離ピークが600℃以上にある酸化チタン、もしくはマスクロマトグラムについて、m/eが28である成分の脱離ピークが600℃以上、950℃以下にあり、m/eが14である成分の脱離ピークが600℃以上、950℃以下にある酸化チタン(特開2002-97019号公報)、
【0015】
(g)酸化チタン結晶の酸素サイトの一部を窒素原子で置換した酸化チタン、酸化チタン結晶の格子間に窒素を原子をドーピングした酸化チタン、酸化チタンの結晶粒界に窒素原子をドーピングしたもの(国際公開第01/10552号パンフレット)、
【0016】
(h)安定した酸素欠陥を有する酸化チタンであって、真空中、77K、暗黒下で測定された電子スピン共鳴スペクトルにおいて、g値が2.003〜2.004であるシグナルが観測され、かつこのg値が2.003〜2.004であるシグナルは、真空中、77Kにおいて少なくとも420〜600nmの光を照射下で測定したとき、暗黒下で測定された場合よりシグナル強度が大きい酸化チタン(特許3252136号公報)、
【0017】
(i)表面にハロゲン化白金化合物(PtCl2、PtCl4、PtCl4・2H2O、H2[Pt(OH)2Cl4]・nH2O、PtBr2、PtBr4、PtI2、PtI4、PtF4、塩化白金酸、塩化白金酸塩、ブロモ白金錯塩、ヨウ化白金酸塩など)を含有している紡錘形状酸化チタン(特開2002-239395号公報)。
【0018】
また、可視光線の照射に対して光触媒活性を示す酸化チタンは、硫酸チタン、オキシ硫酸チタンのようなチタン化合物と、水と、チタン化合物中のチタンに対し0.05モル倍以上、好ましくは0.5モル倍以上、より好ましくは1モル倍以上、また5モル倍以下の過酸化物(例えば、過酸化水素水)とを混合し、次に、この混合物とアンモニア水のような塩基とをpH3〜5、2℃〜65℃の条件で反応させ、得られる生成物をアンモニア存在下に保持した後、110〜200℃の空気中で乾燥し、この乾燥物を300℃〜400℃の空気中で焼成して得られる焼成物、またはこの焼成物に、酸化チタン以外の酸点をもつ金属酸化物(例えば、酸化タングステン、酸化ニオブ)もしくは塩基性金属化合物(例えば、酸化亜鉛、酸化セリウム)を担持したものであってもよく、
【0019】
さらには、水酸化チタンをアンモニアガスおよび水蒸気の存在下で熱処理した後、焼成する方法(特開2001-278625号公報); 非晶質水酸化チタンをアンモニア水に接触させた後、焼成する方法(特開2001-278626号公報); オキシ蓚酸チタンアンモニウムを分子状酸素存在下で焼成する方法(特開2001-278627号公報); 非晶質水酸化チタンに硫酸アンモニウムを添加した後、焼成する方法(特開2001-302241号公報); 窒素原子含有量が、400℃の空気中で焼成した後の重量を基準に、3.3重量%以上である水酸化チタンを焼成する方法(特開2001-335321号公報); 水酸化チタン、チタン酸、オキシ硫酸チタンのような酸化チタン前駆体をアンモニア含有ガス雰囲気下、300〜600℃で焼成する方法(特開2001-354422号公報); 固体であり、かつ非晶質であるオキシ硫酸チタンとアンモニアのような窒素含有化合物とを反応させ、得られる生成物を焼成する方法(特開2002-29750号公報); 純度99%以上のオキシ硫酸チタンと、これを中和するための必要量を越える量のアンモニアを混合し反応させ、得られる生成物を焼成する方法(特開2002-47012号公報); 硫酸チタンもしくはオキシ硫酸チタンと、チタンを除く遷移元素成分と、水とを混合し、これを乾燥して固形物を得、この固形物を熱分解する方法(特開2002-60221号公報); 硫酸チタンもしくはオキシ硫酸チタンの酸性溶液と含窒素塩基性有機化合物を反応させ、得られる生成物を焼成する方法(特開2002-87818号公報); X線吸収微細構造解析法によりチタンK吸収端の広域X線吸収微細構造スペクトルを測定し、このスペクトルをフーリエ変換して得られる動径構造関数を微分して1次微分スペクトルを求めるとき、この一次微分スペクトルの原子間距離1.4〜2.8Åの範囲について、そのスペクトル強度が極大となる原子間距離が1.4〜1.7Åと2.2〜2.5Åにあり、そのスペクトル強度が極小となる原子間距離が1.9〜2.2Åと2.5〜2.8Åにあり、かつ原子間距離1.4〜1.7Åのスペクトル強度の極大値をA4、2.2〜2.5Åのスペクトル強度の極大値をB4、1.9〜2.2Åのスペクトル強度の極小値をC4、2.5〜2.8Åのスペクトル強度の極小値をD4としたときに、式(V)
4=(B4−D4)/(A4−C4) (V)
で表される指数X4が0.06以上である水酸化チタンを焼成する方法(特開2002-193618号公報); 硫酸チタンもしくはオキシ硫酸チタンとアンモニア水をpH2〜5.5、温度90℃以下で反応させ、得られる生成物を焼成する方法(特開2002-249319号公報); 硫酸チタンもしくはオキシ硫酸チタンの酸性溶液とカルボン酸のアンモニウム塩を混合して加水分解し、この生成物を焼成する方法(特開2002-326815号公報)などにより得られるものであってもよい。
【0020】
上の酸化チタンは、結晶相がアナターゼであることが好ましく、また平均粒子径が500nm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明の酸化チタン分散液は、上の酸化チタン以外の無機化合物を含むものであってもよい。このような無機化合物としては、例えば、結晶性酸化珪素、結晶性酸化アルミニウム、ゼオライト、モレキュラーシーブ、活性炭、リン酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ランタン、水酸化セリウム、非晶質酸化チタン、非晶質酸化珪素、非晶質酸化アルミニウムなどが挙げられる。無機化合物は、上の酸化チタン100重量部に対して、通常、1重量部以上、100重量部以下である。
【0022】
上の酸化チタンおよび任意に含まれる酸化チタン以外の無機化合物の含有量は、これらの合計量として、酸化チタン分散液を基準に、通常2重量%以上、30重量%以下である。
【0023】
本発明に用いる両イオン性化合物は、酸性の物質に対して塩基の作用を示し、かつ塩基性の物質に対して酸の作用を示す化合物であればよく、例えば、両性界面活性剤、アミノ酸などが挙げられる。このうち、アミノ酸が好ましく、そのアミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ノルバリン、ロイシン、ノルロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、ジヨードチロシン、スリナミン、トレオニン、セリン、プロリン、ヒドロキシプロリン、トリプトファン、チロキシン、メチオニン、シスチン、システイン、α−アミノ酪酸のようなモノアミノモノカルボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミンのようなモノアミノジカルボン酸、リジン、ヒドロキシリジン、アルギニン、ヒスチジンのようなジアミノモノカルボン酸などがある。これらの中でも、とりわけグリシンとアラニンが好ましい。両イオン性化合物の量は、酸化チタンに対して、通常0.005モル倍以上、好ましくは0.01モル倍以上、より好ましくは0.03モル倍以上であり、また1モル倍以下であることが好ましい。
【0024】
本発明に用いる溶媒としては、例えば、水、過酸化水素水のような水性媒体、エタノール、メタノール、2−プロパノール、ブタノールのようなアルコール性媒体、アセトン、2−ブタノンのようなケトン性媒体、パラフィン化合物媒体、芳香族化合物媒体などが挙げられる。これらは1種または2種以上組合せて用いることができる。
【0025】
また、本発明の酸化チタン分散液は、シリコン系結合剤、アクリル系結合剤のような結合剤を含むものであってもよいし、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、蓚酸のような酸を含むものであってもよい。このときの結合剤の量は、上の酸化チタンおよび酸化チタン以外の無機化合物の合計量100重量部に対して、通常1重量部以上であり、また通常50重量部以下、好ましくは20重量部以下である。他方、このときの酸の量は、酸化チタンに対して、通常0.01モル倍以上、好ましくは0.05モル倍以上であり、また通常1モル倍以下、好ましくは0.5モル倍以下である。
【0026】
さらに、本発明の酸化チタン分散液を乾燥して得られる固形分は、波長450nmの光線を照射したときの反射率が90%以下である。反射率は、低いほど好ましく、例えば、70%以下、さらには60%以下が好ましい。このときの反射率は、酸化チタン分散液を40℃で乾燥して得られる固形分の紫外可視拡散反射スペクトルを測定することにより求めることができる。
【0027】
上で示した酸化チタン分散液は、例えば、媒体攪拌式分散機に上の酸化チタンと両イオン性化合物と溶媒とを入れ、これらの内容物を分散媒体存在下で撹拌して、固形分を分散させる方法などで得られる。分散媒体は、材質が酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウムまたはガラスなどであり、その直径が通常0.65mm以下、好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.3mm以下である。分散は、2段階以上に分けて行ってもよく、例えば、1段目では、直径が相対的に大きい媒体を入れた装置を用い、2段目以降では、直径が順次小さいものを入れた装置を用いて行ってもよい。分散させるときの温度は、通常90℃未満、好ましくは80℃以下、さらに好ましくは65℃以下であり、また通常10℃以上、好ましくは20℃以上である。
【0028】
得られる酸化チタン分散液には、必要に応じて、分散液中に残存する酸化チタン凝集粒のような粗大粒子を除去する操作、酸化チタン含有量を調整する操作またはpHを調整する操作を行ってもよい。
【0029】
本発明で得られる酸化チタン分散液をコーティング剤として用いれば、ガラス、プラスチック、金属、陶磁器およびコンクリートのような基材に、可視光照射によって高い親水性を示す膜を形成することができる。膜形成は、例えばスピンコート、ディップコート、ドクターブレード、スプレーまたはハケ塗りなどで行なえばよい。この酸化チタン分散液を長期間保管するときには、光が当たらないようにすることが好ましく、例えば暗室内に置くこと、または紫外線と可視光線の透過率が各々10%以下の遮光性容器に入れることが好ましい。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。酸化チタン分散液中の固形分の平均粒子径、結晶相およびアナターゼ化率は以下の方法で求めた。
【0031】
平均粒子径(nm):
サブミクロン粒度分布測定装置(商品名“N4Plus”、コールター製)を用いて、試料の粒度分布を測定し、累積50重量%径を求め、これを平均粒子径とした。
【0032】
結晶相、アナターゼ化率(%):
X線回折装置(商品名“RAD−IIA”、理学電機製)を用いて、X線管球:Cu、管電圧:40kV、管電流:35mA、発散スリット:1度、散乱スリット:1度、受光スリット:0.30mm、サンプリング幅:0.020度、走査速度:2.00度/分、測定積算回数:1回の条件で、試料のX線回折スペクトルを測定し、そのスペクトルから結晶相を求めた。またそのスペクトルについて、アナターゼ型酸化チタンの最強干渉線(面指数101)のピーク面積を求め、アナターゼ化率を算出した。なお標準試料には、アナターゼ型酸化チタン(試薬一級、和光純薬工業製)を用い、このアナターゼ化率を100%とした。
【0033】
実施例1
〔酸化チタンの調製〕
オキシ硫酸チタン(商品名“TM結晶”、外観:白色固体、テイカ製)3388gをイオン交換水2258gに溶解させて、オキシ硫酸チタン水溶液を調製した。氷冷下、上のオキシ硫酸チタン水溶液に35%過酸化水素水1297gを添加して、赤紫色の混合溶液を得た。このときの過酸化水素の量は、オキシ硫酸チタン中のチタンに対し1モル倍であった。電極と、このpH電極に接続され、25重量%アンモニア水(試薬特級、和光純薬工業製)を供給してpHを一定に調整する機構を有するpHコントローラーとを備えた反応容器にイオン交換水4700gを入れた。pHコントローラーのpH設定を4とした。またアンモニア水を供給するときの速度は50ml/分に設定した。この反応容器では、容器内の液のpHが設定値より低くなると、アンモニア水が供給されはじめ、pHが設定値になるまで前記速度にて連続供給される。この反応容器に、内容物を145rpmで攪拌しながら、上の混合溶液を50ml/分で添加し、pHコントローラーにより反応容器に供給されるアンモニア水と反応させた。このときの反応温度は、25℃〜55℃の範囲であった。得られた生成物を攪拌しながら25重量%アンモニア水(試薬特級、和光純薬工業製)を供給して、スラリーを得た。反応容器に供給されたアンモニア水の合計量は3630gであり、オキシ硫酸チタンを水酸化チタンに変えるために必要な量の2倍であった。上のスラリーを濾過して得られた固形分をイオン交換水で洗浄し、150℃の空気中で15時間乾燥し、次に310℃の空気中で15時間焼成した後、室温まで冷却して、酸化チタンを得た。この酸化チタンのアナターゼ化率は85%であった。
【0034】
〔酸化チタン分散液の調製〕
グリシン(試薬特級、和光純薬工業製)1.88gと硝酸(試薬特級、65〜66%、和光純薬工業製)2.43gを水75.69gに溶解させ、この水溶液に上の酸化チタン20gを混合した。このときのグリシンの量は、酸化チタンに対して0.1モルであり、また硝酸の量も酸化チタンに対して0.1モルであった。上で得られた混合物を媒体攪拌式粉砕機(商品名“4TSG−1/8”、五十嵐機械製作所製)を用いて、媒体:外径0.3mmのジルコニア製ビーズ、処理温度:20℃、処理時間:9時間の条件で、分散処理して、固形分濃度が20重量%である酸化チタン分散液を得た。この分散液をロータリーエバポレーターにより40℃で6時間乾燥して固形分を得た。この固形分は、平均粒子径が150nmであり、結晶相がアナターゼであり、波長450nmの光線を照射したときの反射率が55%であった。
【0035】
〔酸化チタン膜の形成〕
上の固形分濃度20重量%の酸化チタン分散液を希釈して得られた固形分濃度2重量%の分散液を、縦76mm、横26mm、厚さ1mmのスライドガラスに塗布し、スピンコーター(商品名“1H−D3”、ミカサ製)を用いて、300rpmで5秒間、次に500rpmで30秒間回転させて過剰の分散液を取り除いた後、スライドガラスを110℃で乾燥した。スライドガラスに分散液を塗布、乾燥する操作を合計2回行って、スライドガラスの片面全体に酸化チタン膜を形成した。
【0036】
〔酸化チタン膜の光触媒活性評価〕
上の酸化チタン膜に、その膜から2cm離れた所に設置した20Wブラックライト(商品名“FL20S−BL”、日立GEライティング製)を用いて、光を15時間照射した。その後、酸化チタン膜を有するスライドガラスに、オレイン酸0.2重量%のn−ヘプタン溶液を塗布し、スピンコーター(商品名“1H−D3”、ミカサ製)を用いて、3000rpmで5秒間、次に7000rpmで15秒間回転させて過剰のn−ヘプタン溶液を取り除いた後、スライドガラスを110℃で乾燥して、試験片を作製した。この試験片について、水滴の接触角を接触角計(型式“CA−X”、協和界面科学製)により測定して、親水性を評価した。その後、この試験片に、試験片から2cm離れたところにおいた紫外線カットフィルム(商品名“UV−Guard”、富士写真フィルム製)を装着した18W白色蛍光灯(商品名“サンライン20形FL20SSW/18−B”、日立GEライティング製)を用いて室温で光照射した。光照射したときの水滴の接触角の経時的変化を接触角計を用いて測定した。このときの結果を図1に示す。紫外線カットフィルムを装着した蛍光灯の分光スペクトルを図2に示す。
【0037】
比較例1
市販の光触媒用酸化チタンコーティング剤(商品名“STS−01”、固形分濃度:30重量%、分散液中の酸化チタンの平均粒子径:50nm、石原産業製)を水で希釈して得られた固形分濃度10重量%、pH1.8の分散液を用いた以外、実施例1の〔酸化チタン膜の形成〕と同じ操作を行い、スライドガラスの片面全体に酸化チタン膜を形成した。この酸化チタン膜について、実施例1の〔酸化チタン膜の光触媒活性評価〕と同じ条件で評価した。このときの結果を図1に示す。この分散液は、両イオン性化合物を含まないものであった。この分散液をロータリーエバポレーターにより40℃で6時間乾燥して得た固形分は、波長450nmの光線を照射したときの反射率が96%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 酸化チタン膜の光触媒活性評価結果。
【図2】 紫外線カットフィルムを装着した蛍光灯の分光スペクトル。

Claims (4)

  1. 酸化チタンと両イオン性化合物と溶媒を含有する分散液であって、該分散液を乾燥して得られる固形分は、波長450nmの光線を照射したときの反射率が90%以下であり、前記両イオン性化合物は、グリシンであることを特徴とする酸化チタン分散液。
  2. 酸化チタンは、結晶相がアナターゼである請求項1記載の酸化チタン分散液。
  3. 溶媒は、水性媒体、アルコール性媒体、ケトン性媒体、パラフィン化合物媒体および芳香族化合物媒体から選ばれる請求項1または2のいずれか1項に記載の酸化チタン分散液。
  4. 固形分は、波長450nmの光線を照射したときの反射率が70%以下である請求項1〜のいずれか1項に記載の酸化チタン分散液。
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