JP4481462B2 - ピアスナット打ち込み用ピアスダイ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピアスナットを2枚重ねの板材から成るワークに上方から打ち込む際にワークを支持すべく用いるピアスダイに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平11−193808号公報により、ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部に下方に向って拡径するテーパーを付けたピアスナットが知られている。
【0003】
このピアスナットは、ピアスナットの内筒部が嵌合可能なボス部を上面に突設したピアスダイ上にセットされるワークに上方から打ち込むものであり、この打ち込みによりピアスナットの内筒部がピアスパンチとして機能してワークの孔明けが行われると共に、ピアスナットの環状凹部に対向するワークの部分がピアスダイのボス部により環状凹部に押し込まれ、この押し込みで内筒部の外周面に密着するようにワークがかしめられ、ワークにピアスナットが結合される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ワークが2枚重ねの板材から成るものである場合、下側の板材に対するピアスナットの結合力を確保するには、下側の板材もピアスナットの環状凹部内に入り込むようにワークを押し込んで強くかしめる必要がある。
【0005】
然し、このように強くかしめると、ピアスダイのボス部上端面の部分で下側の板材の肉がピアスナットの内筒部に向けて径方向内方に流動すると共に、ボス部外周面の部分で下側の板材の肉が下方に引張られ、下側の板材が薄板である場合、ボス部の上端コーナ部の近傍部分で下側の板材に亀裂が入ることがある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、2枚重ねの板材から成るワークに下側の板材の亀裂を生ずることなくピアスナットを良好に打ち込むことができるようにしたピアスダイを提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく、本発明は、ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部に下方に向って拡径するテーパーを付けたピアスナットを2枚重ねの板材から成るワークに上方から打ち込む際にワークを支持すべく用いるピアスダイであって、上面に、ワークをピアスナットの環状凹部に押し込む、ピアスナットの内筒部が嵌合可能なボス部を突設して成るものにおいて、ボス部の上端面に径方向外方に向う下り勾配を付けている。
【0008】
本発明によれば、ボス部の上端面の勾配により下側の板材のボス部上端面の部分の肉が一部径方向外方に流れ、ボス部の上端コーナ部の近傍部分における下側の板材の板厚が確保され、亀裂の発生が防止される。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、自動車のボンネット等の蓋部材のインナパネルWaの上にスティフナWbを重ねた2枚重ねワークWに、蓋部材用のヒンジ部材を締結するためのピアスナット1を結合した状態を示している。尚、インナパネルWaは厚さtaが例えば1mmのアルミ製薄板から成り、スティフナWbは厚さtbが例えば2mmのアルミ製厚板から成る。
【0010】
ピアスナット1は、鋼鉄製であって、ねじ孔1aを形成したナット本体の下面に、ねじ孔1aと同心の内筒部1bと、内筒部1bとの間に環状凹部1cを画成する外筒部1dとを垂設して成り、内筒部1bの外周面に下方に向って拡径するテーパーを付けている。ここで、外筒部1dの長さは内筒部1bよりも短いが、内筒部1bとの長さの差△LはワークWの下側の板材たるインナパネルWaの板厚taより小さくなっている(図2参照)。また、外筒部1dの下端より上方に位置する環状凹部1cの内容積は、環状凹部1cに後記する如く押し込まれるワークWの体積よりも大きくなるように設定されている。
【0011】
ワークWにピアスナット1を結合する際は、図2に示す如く内筒部1bが嵌合可能なボス部2aを上面に突設したピアスダイ2を用い、ワークWを図2(A)に示す如くピアスダイ2上にセットして、ピアスナット1を上方からワークWに打ち込む。これによれば、内筒部1bをピアスパンチとするワークWの孔明けと、外筒部1dがワークWに当接してからのボス部2aによる環状凹部1cへのワークWの押し込みとが行われる。ここで、内筒部1bと外筒部1dとの長さの差△LはインナパネルWaの板厚taよりも小さく設定されているため、外筒部1dがワークWに当接する図2(B)に示す時点ではインナパネルWaの孔明けが完了しておらず、その後の押し込みによりワークWが或る程度塑性変形されたところで、図2(C)に示す如くインナパネルWaの孔明けが完了する。このように、インナパネルWaの孔明け完了時点ではインナパネルWaが降伏点を越えて塑性変形しており、その後のワークWの押し込みに際してインナパネルWaが容易に伸び、インナパネルWaの孔明け箇所の拡径が抑制される。
【0012】
次に、図2(D)に示す如くワークWの孔明けが完了し、その後の更なるワークWの押し込みでスティフナWbの肉が環状凹部1c内の空隙に流動し、空隙が埋められる。そして、環状凹部1cの内容積を上記の如く設定することで、最終的にインナパネルWaの下面が図2(E)に示す如く外筒部1dの下端と同じかそれより上方の位置に達するまでワークWが押し込まれる。これによれば、インナパネルWaが環状凹部1c内において外筒部1dによりスティフナWbのかしめ部を介して外周拘束された状態で強くかしめられ、内筒部1bとインナパネルWaの孔明け箇所との間の隙間が確実に埋められる。かくて、インナパネルWaに対するピアスナット1の結合力が十分に確保され、ピアスナット1がスティフナWbと共にインナパネルWaから脱落するといった不具合は生じない。
【0013】
尚、ピアスナット1の外筒部1dの内周面には歯溝が形成されており、この歯溝への肉の食い込みでスティフナWbに対しピアスナット1が回り止めされる。また、ピアスダイ2のボス部2aの外周面に下方に向って拡径するテーパーを付け、環状凹部1cに向けて立上るインナパネルWaの部分をテーパー形状に絞り成形している。これによれば、ピアスナット1にヒンジ部材を締結したとき、スティフナWbがピアスナット1を介して作用する軸方向締付け力でインナパネルWaのテーパー形状部に強く圧接し、両者間の摩擦力でインナパネルWaに対するスティフナWbの回り止め機能が得られる。
【0014】
ところで、インナパネルWaを上記の如くかしめると、ピアスダイ2のボス部2aの上端面2bの部分でインナパネルWaの肉が内筒部1bに向けて径方向内方に流れ、ボス部2aの外周面の部分でインナパネルWaの肉が下方に引張られ、ボス部2aの上端コーナー部の近傍部分でインナパネルWaに亀裂が入る可能性がある。そこで、本実施形態では、ボス部2aの上端面2bに径方向外方に向う若干の下り勾配αを付けている。これによれば、ボス部2aの上端コーナー部の近傍部分のインナパネルWaの板厚が確保され、亀裂の発生が防止される。
【0015】
以上、インナパネルWaの上にスティフナWbを重ねたワークWにピアスナット1を打ち込むようにした実施形態について説明したが、対象ワークはこれに限るものではなく、2枚重ねの板材から成るワークにピアスナットを打ち込む際に使用するピアスダイとして本発明は広く適用できる。
【0016】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、2枚重ねの板材から成るワークに下側の板材の亀裂を生ずることなくピアスナットを良好に打ち込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ダイを用いて打ち込むピアスナットの一例を示す縦断面図
【図2】 (A)本発明ダイを用いて行うピアスナットの打ち込み直前の状態を示す図、(B)外筒部がワークに当接した時点の状態を示す図、(C)下側の板材の孔明け完了時点の状態を示す図、(D)ワークの孔明け完了時点の状態を示す図、(E)ピアスナットの打ち込み完了時点の状態を示す図
【符号の説明】
W ワーク Wa インナパネル(下側の板材)
Wb スティフナ(上側の板材) 1 ピアスナット
1a ねじ孔 1b 内筒部
1c 環状凹部 1d 外筒部
2 ピアスダイ 2a ボス部
2b 上端面 α 下り勾配
Claims (1)
- ねじ孔を形成したナット本体の下面に、ねじ孔と同心の内筒部と、内筒部との間に環状凹部を画成する、内筒部よりも短い外筒部とを垂設し、内筒部に下方に向って拡径するテーパーを付けたピアスナットを2枚重ねの板材から成るワークに上方から打ち込む際にワークを支持すべく用いるピアスダイであって、
上面に、ワークをピアスナットの環状凹部に押し込む、ピアスナットの内筒部が嵌合可能なボス部を突設して成るものにおいて、
ボス部の上端面に前記ボス部の内周端部から径方向外方に向う下り勾配を付け、
前記ボス部の外周面には、該ボス部の上端面のうち下り勾配が付けられた部位に連続し、且つ下方に向かって拡径するテーパーが付けられていることを特徴とするピアスナット打ち込み用ピアスダイ。
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