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JP4480128B2 - マトリックスメタロプロテアーゼ−9の産生を阻害するための薬剤 - Google Patents

マトリックスメタロプロテアーゼ−9の産生を阻害するための薬剤 Download PDF

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Description

本発明は、マトリックスメタロプロテアーゼ−9の産生を阻害するための薬剤に関するものである。
下記式(I):
で示されるレプトマイシンB(Leptomycin B又はLMB)は、本来、抗カビ抗生物質として発見されたが、後に、該レプトマイシンBの誘導体も同様の抗カビ活性があることが判明し、現在では、特に抗癌剤として注目されている。
特開平5−13133号公報には、レプトマイシンBを有効成分とし、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射などの非経口投与又は経口投与法により投与される抗腫瘍剤が記載されている。該抗腫瘍剤によれば、マウスに移植したP388細胞、ルイス・ランダ・カルチノーマ細胞、B16メラノーマ細胞及びエーリッヒ・カルチノーマ細胞などに強い抗腫瘍作用を示すことができるが、レプトマイシンBがいかにして腫瘍細胞に作用するのかが不明であるため、抗腫瘍剤以外の用途の開拓は行われていなかった。
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、細胞外マトリックス蛋白を主要な基質とする一群の金属プロテアーゼの総称である。MMPsは生体内組織代謝において重要な役割を果たしている。なかでもマトリックスメタロプロテアーゼ−9(MMP−9)はゼラチナーゼとしてゼラチン成分を分解するのみではなく、別名IV型コラゲナーゼとも言われるように、各種コラーゲン、エラスチン、ファイブロネクチンなど細胞外マトリックス成分を分解し、さらには腫瘍成長因子(TGF−β)や腫瘍壊死因子(TNF−α)を活性化する可能性が示されてきた。
最近、人為的にMMP−9を欠如させたマウスについての検討、及びMMP−9の発現をモニターしたマウスについての検討から、特に周囲の炎症性細胞から浸潤したMMP−9が、癌の浸潤と転移を引き起こす要因であり、且つ水疱症に際して水疱形成を引き起こす要因であること、表皮由来のMMP−9が紫外線照射時のアポトーシスに関わっており、紫外線皮膚炎に関わっていることが明らかになっている。また、MMP−9が創傷治癒の遅延をもたらすことも明らかにされている。さらには、MMP−9が血管新生をもたらすことも明らかになっている。加えて、上記された水疱症、紫外線皮膚炎、及び創傷治癒の遅延は、皮膚の炎症性疾患であるため、これらの皮膚の炎症性疾患に関わるMMP−9は、湿疹皮膚炎に関わっていると考えられる。
表皮由来のMMP−9と表皮の角化との関係については、本発明者により、好中球由来MMP−9の分離、精製を行い、MMP−9に対する単クローン抗体を作成し、同抗体により皮膚組織におけるMMP−9の局在化について検討したところ、表皮角化組織にMMP−9が局在することを確認した。さらに、培養した表皮角化細胞を用いて、角化細胞への分化刺激を行った際に、MMP−2と比較して、MMP−9の方がより特異的に発現が亢進されることを確認した。この発現の亢進に関わる転写因子結合遺伝子領域として、従来から知られるTPA responsive elementに加えて角化のマーカーであるinvolucrinと共通な遺伝子プロモーター領域であるKRE−M9が、MMP−9プロモーター中に存在することを発見したが、該発見は、角化細胞への分化刺激を行った際のMMP−9の特異的な発現の亢進を支持するものである。元来、角化は、表皮角化細胞のプログラムされた細胞死であり、アポトーシスの1種と考えられ、かかるアポトーシス、特に表皮細胞のアポトーシスに際して、炎症の一症状として、過角化すなわち角化異常症の臨床症状を呈することが多いが、本発明者の研究により角化細胞への分化刺激を行った際にMMP−9が特異的に発現亢進されることが判明したため、かかる表皮の角化におけるアポトーシスに際しての角化異常症についてもMMP−9が関与している可能性が示唆された。
このように、MMP−9は、皮膚科領域においても、癌の浸潤と転移、水疱症における水疱形成、血管新生、創傷治癒の遅延、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、及び角化異常症等の皮膚の炎症性疾患に関わるものである。
よって、MMP−9の産生を阻害することにより、癌の浸潤と転移、並びに水疱症、血管新生、創傷治癒の遅延、湿疹皮膚炎、及び紫外線皮膚炎、角化異常症等の種々の皮膚の炎症性疾患の改善が期待される。
特開平5−13133号公報(請求項1、第1〜2頁、表1)
従って、本発明は、MMP−9の産生を阻害する新規な薬剤を提供することをその課題とする。
かかる実情において、本発明者は鋭意検討を行なった結果、レプトマイシンBが、培養表皮角化細胞に由来するMMP−9の産生を、MMP−2と比較して、特異的に阻害できること、さらには、高濃度のカルシウムを添加することによる刺激又はTGF−βを添加することによる刺激などの分化刺激を行う条件下、及びTNF−αを添加することによる刺激又はIL−1αを添加することによる刺激などの炎症惹起刺激を行う条件下においてもMMP−9の産生を阻害できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明(1)は、下記式(1):


で示されるレプトマイシンBを有効成分として含有し、マトリックスメタロプロテアーゼ−9関連の皮膚の炎症性疾患(皮膚の腫瘍性疾患を除く。)の予防薬又は治療薬(抗黄色ブドウ球菌剤を除く。)であり、該皮膚の炎症性疾患が、水疱症、血管新生、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症であることを特徴とするマトリックスメタロプロテアーゼ−9の産生を阻害するための薬剤を提供するものである。かかる構成とすることにより、MMP−9の産生を、MMP−2と比較して、特異的に阻害でき、さらには、高濃度のカルシウムを添加することによる刺激又はTGF−βを添加することによる刺激などの分化刺激を行う条件下、及びTNF−αを添加することによる刺激又はIL−1αを添加することによる刺激などの炎症惹起刺激を行う条件下においてもMMP−9の産生を阻害することができるという効果を奏するものである。
また、本発明(2)は、前記皮膚の炎症性疾患が、水疱症、血管新生、創傷治癒の遅延、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症であることを特徴とする本発明(1)記載の薬剤を提供するものである
また、本発明(3)は、前記予防薬又は治療薬が、その投与形態が皮膚外用剤である上記発明(2)記載の薬剤を提供するものである。かかる構成とすることにより、上記発明(2)の奏する効果に加えて、MMP−9関連皮膚疾患の予防効果又は治療効果を一層向上させることができるという効果を奏する。
本発明のMMP−9の産生を阻害する薬剤は、MMP−9の産生を、MMP−2と比較して、特異的に阻害でき、さらには、高濃度のカルシウムを添加することによる刺激又はTGF−βを添加することによる刺激などの分化刺激を行う条件下、及びTNF−αを添加することによる刺激又はIL−1αを添加することによる刺激などの炎症惹起刺激を行う条件下においてもMMP−9の産生を阻害することができる。
本発明のMMP−9を阻害するための薬剤は、LMB又はその誘導体を有効成分として含有する。LMBは、放線菌に属するストレプトマイセス属に属するLMB生産菌が生産する抗生物質であり、〔ザ・ジャーナル・オブ・アンティビオテイツクス(The Journal of Antibiotics)、1983年、第36巻、639〜650頁〕に記載される方法に従って、培養したLMB生産菌から分離精製して得ることができる。
また、LMBの誘導体については、下記式(2);
で表されるレプトマイシンA、下記式(3);
で表される物質S−59917a、及び下記式(4);
で表されるエラクトシンからなる群より選ばれるLMBの誘導体を例示することができる。レプトマイシンAは、上記したLMB生産菌が生産する抗生物質であり、〔ザ・ジャーナル・オブ・アンティビオテイツクス(The Journal of Antibiotics)、1983年、第36巻、639〜650頁〕に記載される方法に従って、培養した前記LMB生産菌から分離精製して得ることができ、また、物質S−59917aは、ストレプトマイセス属に属する物質S−59917a生産菌が生産する抗生物質であり、特開平5−39283号公報に記載されるように、培養したS−59917a生産菌から分離精製して得ることができる。
本発明のMMP−9の産生を阻害するための薬剤は、MMP−9関連皮膚疾患の予防薬又は治療薬(抗黄色ブドウ球菌剤を除く。)として用いることができるが、MMP−9関連皮膚疾患としては、水疱症、血管新生、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症等を挙げることができ、好ましくは、水疱症、血管新生、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症を挙げることができ、特に好ましくは、水疱症、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症を挙げることができる。また、本発明のMMP−9の産生を阻害するための薬剤は、MMP−9の産生を抑制するものであるが、TNF−α、IL−1αなどのサイトカインにより細胞に炎症反応を惹起させ、MMP−9産生を誘導する場合においても、MMP−9の産生が阻害されると好ましく、この場合、水疱症、血管新生、湿疹皮膚炎などのMMP−9関連皮膚疾患の治療薬又は予防薬、あるいは水疱症、湿疹皮膚炎などのMMP−9関連皮膚疾患の治療薬又は予防薬として有効である。さらには、高濃度のカルシウム、TGF−βを添加することにより分化刺激を行うことにより細胞に角化などの分化を誘導し、MMP−9産生を誘導する場合においても、MMP−9の産生が阻害されると好ましく、この場合、紫外線皮膚炎、角化異常症などのMMP−9関連皮膚疾患の治療薬又は予防薬として有効である。
本発明の薬剤を医薬品として使用する際には、予防又は治療上有効な量のレプトマイシンBまたはその誘導体が、製薬学的に許容できる担体又は希釈剤とともに製剤化されるとよい。その他にも、結合剤、吸収促進剤、潤沢剤、乳化剤、界面活性剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤、香料、甘味料などを添加してもよい。医薬製剤の剤形としては、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、軟膏、ゲル、ペースト、クリーム、噴霧剤、溶液剤、懸濁液剤などを挙げることができ、その投与形態としては、経口投与の他、注射、外用などの非経口投与など種々の投与形態を挙げることができる。
本発明の薬剤は、その投与形態が皮膚外用剤である治療薬又は予防薬であると好ましく、皮膚に塗布されて使用される皮膚外用剤であると特に好ましい。本発明の薬剤を皮膚外用剤とするには、LMB又はその誘導体に加えて通常薬用外用剤又は化粧料に配合される成分、例えば紫外線吸収剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、粉体、乳化安定剤、pH調整剤、香料、アルコール、水等が配合できる。ここで紫外線吸収剤としては、ジベンゾイルメタン誘導体、ケイ皮酸エステル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、p−アミノ安息香酸誘導体等の有機系紫外線吸収剤、及び亜鉛華、雲母、雲母チタン、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の無機系紫外線吸収剤等が挙げられる。
また、油性成分としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、スクワラン、ミツロウ、カルナバロウ、オリーブ油、ラノリン、高級アルコール、脂肪酸、高級アルコールと脂肪酸の合成エステル油、シリコーン油、フッ素系油剤等が挙げられる。
また、皮膚外用剤中へのレプトマイシンBまたはその誘導体の配合量は、特に制限されないが、0.0001〜50重量%が好ましく、0.001〜20重量%が特に好ましい。本発明の皮膚外用剤は、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック、浴用剤等、皮膚外用剤として用いるものであればいずれでもよく、剤形は特に問わない。
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
MMP−9の産生が、LMBによって阻害されることを検証するために以下の実験を行った。
<ヒト表皮角化細胞の培養>
新生児の包皮を、4℃で、カゼイン分解活性が25.0 caseinolytic units/mlであるディスパーゼで16時間処理した。鉗子を用いて、真皮から表皮をはぎとった後、表皮を0.05%トリプシンで5分間処理した。分離させたヒト包皮角化細胞(HFKs)を、keratinocyte−SFM培地(Invitrogen社製)を有するプレートにて37℃で温置して、3代にわたって継代培養した。次いで、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加し、さらに37℃で24時間温置した。その後、該4つのプレートからkeratinocyte−SFM培地の4種のならし培地を収集して、以下のゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出において用いるまで、−30℃で貯蔵しておいた。
<ゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出>
ゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出を行うのに先立ち、<ヒト表皮角化細胞の培養>において収集した4種のならし培地を全て35℃で1時間温置した。次いで、Tris−HClを0.05M、CaClを5mM、SDS(sodium dodecyl−sulfate)を1%、glycerolを5%それぞれ含有するpH7.4の溶液に前記ならし培地を溶解させて、ゼラチンザイモグラフィー法に用いる試料とした。該試料を、0.5%のゼラチンを含んだポリアクリルアミドゲル7.5%を用いてSDS−PAGE法によりMMP−2及びMMP−9を分離した。SDS−PAGE法による分離の後、分離ゲルをTriton X−100を2.5%含有する溶液で1時間洗浄し、SDSを除去した。分離ゲルにおいて分離されたMMP−2及びMMP−9に分離ゲル中のゼラチンを分解させるために、反応用緩衝液(標準条件 0.05M Tris−HCl(pH7.4)/0.15M NaCl/5mM CaCl/0.02% NaN)中において35℃で所定の時間分離ゲルを温置した。分離ゲルの染色は、Amideblack B−10を0.1%含有する染色液を用いて行い、脱色は、酢酸10体積%、及びメタノール30体積%を含有する脱色液を用いて行った。4種のならし培地中のMMP−2及びMMP−9の検出結果を図1(A)に示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、Caの培地に対する濃度が4つ全て1.5mMとなるように塩化カルシウム水溶液を添加した以外は、実施例1と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、及びゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出を行った。結果を図1(B)に示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、TGF−βの培地に対する濃度が4つ全て1ng/mlとなるようにTGF−βを添加した以外は、実施例1と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、及びゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出を行った。結果を図1(C)に示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、TNF−αの培地に対する濃度が4つ全て10ng/mlとなるようにTNF−αを添加した以外は、実施例1と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、及びゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出を行った。結果を図1(D)に示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた4つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、0.4nM、2nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、IL−1αの培地に対する濃度が4つ全て10−10MとなるようにIL−1αを添加した以外は、実施例1と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、及びゼラチンザイモグラフィー法によるMMP−2及びMMP−9の検出を行った。結果を図1(E)に示す。
図1(A)に示す実施例1の結果から、無刺激下においては、培地に対するLMBの濃度が2nM以上となると、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。また、図1(B)及び図1(C)に示す実施例2及び3の結果から、高濃度カルシウム又はTGF−βによる分化刺激を行いMMP−9の産生が促進される条件下でも、培地に対するLMBの濃度が2nM以上となると、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。さらに、図1(D)及び図1(E)に示す実施例4及び5の結果から、TNF−α又はIL−1αによる炎症惹起刺激を行いMMP−9の産生が促進される条件下でも、培地に対するLMBの濃度が2nM以上となると、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。図1の結果から、LMBは、MMP−2と比較して、MMP−9の産生をより特異的に阻害することがわかる。
LMBの作用により、MMP−9のmRNAの産生が阻害されること、すなわち、MMP−9の産生が阻害されることを検証するために以下の実験を行った。
<ヒト表皮角化細胞の培養>
新生児の包皮を、4℃で、カゼイン分解活性が25.0 caseinolytic units/mlであるディスパーゼで16時間処理した。鉗子を用いて、真皮から表皮をはぎとった後、表皮を0.05%トリプシンで5分間処理した。分離させたヒト包皮角化細胞(HFKs)を、keratinocyte−SFM培地(Invitrogen社製)を有するプレートにて37℃で温置して、3代にわたって継代培養した。次いで、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加し、さらに37℃で24時間温置した。
<RT−PCR法によるヒトMMP−9遺伝子のmRNA及びヒトGAPDH遺伝子のmRNAの検出>
培養したヒト包皮角化細胞(HFKs)からの全RNAの抽出は、Wachiらの方法(Wachi et al.(1995)FEBS Lett.368,215−219)に従って行い、抽出した全RNAは、1μg/mlの濃度の溶液として−80℃で貯蔵した。RT−PCR法は、TaKaRa RNA PCR kit(TaKaRa社製)を用いて行った。ヒトMMP−9に対するcDNAの277塩基対を増幅するために、116〜136塩基対に位置する5’末端に対しては、センスプライマー(配列番号:1)を、372〜392塩基対に位置する3’末端に対してはアンチセンスプライマー(配列番号:2)を用いた。ヒトGAPDHに対するcDNAの478塩基対を増幅するために、547〜566塩基対に位置する5’末端に対しては、センスプライマー(配列番号:3)を、1005〜1024塩基対に位置する3’末端に対してはアンチセンスプライマー(配列番号:4)を用いた。RNAの逆転写は、42℃で1時間温置することにより行った。逆転写して得られたcDNAのPCRにおける温置は、以下の温度プロファイルに従って行った。すなわち、1サイクルごとに、cDNAの変性を94℃で2分間行い、プライマーのアニ−リングを60℃で30秒間行い、DNAポリメラーゼによるDNA鎖の合成を72℃で1分間行った。30サイクル行った後得られた溶液を分取して、臭化エチジウムを含有するアガロースゲルを用いて電気泳動を行い、得られたバンドを紫外線下で観察した。結果を図2に示す。図2中、Sample1が、培地に対するLMB濃度が0nMであった細胞を用いた結果を、Sample2が、培地に対するLMB濃度が10nMであった細胞を用いた結果を示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、Caの培地に対する濃度が2つ全て1.5mMとなるように塩化カルシウム水溶液を添加した以外は、実施例6と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、並びにRT−PCR法によるヒトMMP−9遺伝子のmRNA及びヒトGAPDH遺伝子のmRNAの検出を行った。結果を図2に示す。図2中、Sample3が、培地に対するLMB濃度が0nMであった細胞を用いた結果を、Sample4が、培地に対するLMB濃度が10nMであった細胞を用いた結果を示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、TGF−βが培地に対する濃度が2つ全て1ng/mlとなるようにTGF−βを添加した以外は、実施例6と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、並びにRT−PCR法によるヒトMMP−9遺伝子のmRNA及びヒトGAPDH遺伝子のmRNAの検出を行った。結果を図2に示す。図2中、Sample5が、培地に対するLMB濃度が0nMであった細胞を用いた結果を、Sample6が、培地に対するLMB濃度が10nMであった細胞を用いた結果を示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、TNF−αの培地に対する濃度が2つ全て10ng/mlとなるようにTNF−αを添加した以外は、実施例6と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、並びにRT−PCR法によるヒトMMP−9遺伝子のmRNA及びヒトGAPDH遺伝子のmRNAの検出を行った。結果を図2に示す。図2中、Sample7が、培地に対するLMB濃度が0nMであった細胞を用いた結果を、Sample8が、培地に対するLMB濃度が10nMであった細胞を用いた結果を示す。
ヒト表皮角化細胞の培養において、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加する代わりに、ヒト包皮角化細胞(HFKs)を3代にわたって継代培養して得られた2つのプレートに、培地に対する濃度がそれぞれ0nM、10nMとなるようにLMBを添加するとともに、IL−1αの培地に対する濃度が2つ全て10−10MとなるようにIL−1αを添加した以外は、実施例6と同様の方法でヒト表皮角化細胞の培養、並びにRT−PCR法によるヒトMMP−9遺伝子のmRNA及びヒトGAPDH遺伝子のmRNAの検出を行った。結果を図2に示す。図2中、Sample9が、培地に対するLMB濃度が0nMであった細胞を用いた結果を、Sample10が、培地に対するLMB濃度が10nMであった細胞を用いた結果を示す。
図2のSample1及びSample2で示される実施例6の結果から、無刺激下においては、培地に対するLMBの濃度が10nMである場合に、GAPDHと比較して、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。図2のSample3及びSample4で示される実施例7の結果から、高カルシウム刺激下においても、培地に対するLMBの濃度が10nMである場合に、GAPDHと比較して、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。図2のSample5及びSample6で示される実施例8の結果から、TGF−βによる刺激下においても、培地に対するLMBの濃度が10nMである場合に、GAPDHと比較して、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。図2のSample7及びSample8で示される実施例9の結果から、TNF−αによる刺激下においても、培地に対するLMBの濃度が10nMである場合に、GAPDHと比較して、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。図2のSample9及びSample10で示される実施例10の結果から、IL−1αによる刺激下においても、培地に対するLMBの濃度が10nMである場合に、GAPDHと比較して、MMP−9の産生が阻害されていることがわかる。以上の結果から、LMBの添加が、GAPDHと比較して、MMP−9の産生を阻害することが判明した。
LMBの作用によりMMP−9の産生が阻害されていることを検証するために、MMP−9遺伝子のpromoter配列のKRE−M9と、MMP−9の産生と、LMBとの関係を調べることを目的として以下の実験を行った。
<ヒト表皮角化細胞の培養>
新生児の包皮を、4℃でカゼイン分解活性が25.0 caseinolytic units/mlであるディスパーゼで16時間処理した。鉗子を用いて、真皮から表皮をはぎとった後、表皮を0.05%トリプシンで5分間処理した。分離させたヒト包皮角化細胞(HFKs)を、0.09mMのCaを含有するkeratinocyte−SFM培地(Life Technologies社製)を有する24wellのプレートにて37℃で温置して、3代にわたって継代培養した。
<ルシフェラーゼアッセイ測定用のベクター調製>
Kobayashiらの方法(Kobayashi et al.(2001)EMBO Rep.2, 604-608)に従って、MMP−9 promoter配列のKRE−M9を含んだ−73から+16までの塩基配列、およびKRE−M9を含まない−56から+16までの塩基配列を、ルシフェラーゼ遺伝子を含有するルシフェラーゼ発現ベクターであるpGL3−basic vector(Promega社製)に、それぞれ挿入し、ベクター1及びベクター2を調製した。なお、KRE−M9を含んだ−73から+16までの塩基配列を含有する塩基配列を、図3(C)に示す。
<遺伝子導入>
ベクター1及びベクター2と遺伝子導入用試薬である Fugene 6 (Roche社製)とを用いて、DNA濃度3μg/1mlのベクター1溶液及びベクター2溶液を調製した。次いで、<ヒト表皮角化細胞の培養>で得られた24wellのプレートのHFKs培養液のうち、12wellのプレートに対してベクター溶液1を、残りの12wellのプレートに対してベクター溶液2を、いずれも37℃で添加して遺伝子導入を行い、さらに、ベクター1溶液を添加して得られた12wellのプレートのうち、6wellのプレートに対してLMB10nM加え、6wellのLMB添加プレート1とし、残りの6wellのプレートに対してはLMBを加えず、6wellのLMB無添加プレート1とし、ベクター2溶液を添加して得られた12wellのプレートのうち、6wellのプレートに対してLMB10nM加え、6wellのLMB添加プレート2とし、残りの6wellのプレートに対してはLMBを加えず、6wellのLMB無添加プレート2とし、次いで3時間静置した。以上のようにルシフェラーゼ遺伝子の遺伝子導入を行うことにより、MMP−9の産生とともにルシフェラーゼが産生することとなり、ルシフェラーゼによる発光反応における発光強度をマイクロプレスカウンターで測定することにより、MMP−9の産生をモニターすることができる。
<ルシフェラーゼアッセイによる転写活性の測定>
ルシフェラーゼアッセイによる転写活性の測定を行った。ルシフェラーゼの活性は、ルシフェラーゼアッセイシステム(Luciferase assay system Promega社製)によって測定した。マイクロプレスカウンターとして、Microbeta(Perkin−Elmer社製)を用いた。測定は、6wellのLMB添加プレート1、6wellのLMB無添加プレート1、6wellのLMB添加プレート2、及び6wellのLMB無添加プレート2について、それぞれ6wellのプレートのうち3wellのプレートを用いて12時間後の総転写活性を測定し、さらに、残りの3wellのプレートを用いて24時間後の総転写活性を測定する測定方法とした。結果を図3(A)及び図3(B)に示す。図3(A)及び図3(B)において、上部の数値がKRE−M9を含むベクター1をHFKsに遺伝子導入した場合の総転写活性を示し、下部の数値がKRE−M9を含まないベクター2をHFKsに遺伝子導入した場合の総転写活性を示し、上部及び下部の数値のうち、上段の数値はLMB10nM添加した場合を示し、下段の数値はLMBを添加しなかった場合を示し、数字はarbitary unitによるものであり、3wellのプレートの平均値を示す。標準偏差をerror barで示す。
図3(A)及び図3(B)の結果から、KRE−M9を含むベクター1をHFKsに遺伝子導入した場合において、総転写活性が遺伝子導入後12時間後、24時間後と時間を追って、総転写活性が増強し、且つ総転写活性はLMBを添加することによって、遺伝子導入後12時間後、24時間後ともに、Promoter活性が、それぞれ、約5分の1、及び約7分の1に抑制された。また、KRE−M9を含まないベクター2をHFKsに遺伝子導入した場合においては、転写活性が全く検出されなかった。以上のことから、KRE−M9がMMP−9の転写活性を促進する上で重要であること、及びKRE−M9が、LMBが存在する場合において、MMP−9の転写活性を阻害することを通じて、発現調節に働くことが示され、LMBがMMP−9の産生を阻害する薬剤として有効であることが支持された。
<ヒト表皮角化細胞の培養>は、実施例11と同様に行った。また、MMP−9 promoter配列のKRE−M9を含んだ−73から+16までの塩基配列、およびKRE−M9を含まない−56から+16までの塩基配列の代わりに、MMP−9 promoter配列のKRE−M9及びTPA responsive element(以下TREとも言う)を含んだ−80から+16までの塩基配列1、および該塩基配列1においてKRE−M9配列が4塩基置換された塩基配列2、並びに−714から+16までの塩基配列3、該塩基配列3においてKRE−M9配列が4塩基置換された塩基配列4、該塩基配列4においてTRE配列が3塩基置換された塩基配列5、及び該塩基配列4においてKRE−M9配列が4塩基置換され、且つTRE配列が3塩基置換された塩基配列6を用いた以外は、実施例11と同様に<ルシフェラーゼアッセイ測定用のベクター調製>を行った。KRE−M9配列の4塩基置換配列及びTRE配列の3塩基置換配列を配列番号5及び6に示す。また、<遺伝子導入>及び<ルシフェラーゼアッセイによる転写活性の測定>も、総転写活性を遺伝子導入後24時間後に測定した以外は、実施例11と同様に行った。塩基配列1及び2を用いた場合の転写活性の測定結果、及び塩基配列3〜6を用いた場合の転写活性の測定結果をそれぞれ図4(A)及び図4(B)に示す。図4(A)の上部及び下部、並びに図4(B)の第1部〜第4部は、それぞれ塩基配列1及び塩基配列2、並びに塩基配列1〜4を用いた場合の総転写活性を示し、上部及び下部の数値のうち、上段の数値はLMB10nM添加した場合を示し、下段の数値はLMBを添加しなかった場合を示し、数字はarbitary unitによるものであり、3wellのプレートの平均値を示す。標準偏差をerror barで示す。
また、KRE−M9配列を用いて調製した2本鎖DNA1、配列番号5に示すKRE−M9配列の4塩基置換配列を用いて調製した2本鎖DNA2をコンペティター(competitor)として用い、32Pで標識したKRE−M9配列及びKRE−M9配列の4塩基置換配列をプローブとして用いて実験を行った以外は、Kobayashiらの方法(Kobayashi et al.(2001)EMBO Rep.2, 604-608)に従って、ヒトケラチノサイト核タンパク質を用いたゲルシフトアッセイを行った。結果を図4(C)に示す。図4(C)中で、右の三角矢印がプローブそのものが検出されたバンドを示し、左矢印がシフトしたバンドを示す。
図4(A)の結果から、塩基配列1のみならず、KRE−M9を4塩基置換した塩基配列2を用いた場合においても、LMBの添加によりMMP−9の転写活性が抑制されていることから、TRE及びKRE−M9を含んだ遺伝子領域においては、KRE−M9のみではなく、TREもMMP−9の転写活性の抑制にとって重要であることが示された。また、図4(B)の結果から、KRE−M9及びTREの双方を塩基置換して変異している塩基配列6を用いた場合においても、LMBの添加によりMMP−9の転写活性の抑制が起こっていることから、KRE−M9及びTRE以外の遺伝子領域も、LMBの添加によりMMP−9の転写活性を抑制することが示された。
図4(C)の結果から、KRE−M9プローブに対してヒトケラチノサイト核タンパク質が結合して得られた、シフトしたバンドが検出されている(図4(C)中左から第1段)。また、KRE−M9プローブを用いて、且つコンペティター(competitor)としてKRE−M9配列を用いて調製した2本鎖DNA1を用いた場合には、競合阻害により、シフトしたバンドが検出されなくなった。(図4(C)中左から第2段)さらに、KRE−M9プローブを用いて、且つコンペティター(competitor)としてKRE−M9配列の4塩基置換を用いて調製した2本鎖DNA2を用いた場合には、シフトしたバンドが検出されている(図4(C)中左から3段目)。加えて、配列番号5に示すKRE−M9配列の4塩基置換配列をプローブとして用いた場合には、シフトしたバンドは検出されていない。(図4(C)中右から2段)これらのことから、ヒトケラチノサイト核タンパク質は、KRE−M9配列に結合することがわかる。
へアレスマウス(Hos:HR−1)の8週齢の雌10匹を、一週間予備飼育した。5匹のマウス(マウスA1、マウスB1、マウスC1、マウスD1、マウスE1)に対して紫外線(ultraviolet B(UVB))を背部に300mJ(約3MED(minimal erythema dose、最小紅斑量))を照射し、5匹のマウス(マウスA2、マウスB2、マウスC2、マウスD2、マウスE2)に対しては紫外線を照射しなかった。紫外線照射直後と紫外線照射24時間後に、70%エタノールにレプトマイシンBを溶解させた溶液として、マウスB1及びマウスB2に対して濃度10μg/ml(20μM)の溶液を、マウスC1及びマウスC2に対して濃度1μg/ml(2μM)の溶液を、マウスD1及びマウスD2に対して濃度100ng/ml(200nM)の溶液を、マウスE1、マウスE2に対して濃度10ng/ml(20nM)の溶液を、約0.1mlずつ筆で外用塗布することによりレプトマイシンBを投与した。また、マウスA1及びマウスA2に対して70%エタノールを、約0.1ml筆で塗布した。ついで、照射48時間後に紫外線照射したマウスA1〜マウスE1及び紫外線照射しなかったマウスA2〜マウスE2の皮膚を採取した。採取した皮膚をホルマリン固定して、パラフィン包埋処理をしたのち、切片をヘマトキシリン・エオジン染色した。マウスA1、マウスB1、マウスC1、マウスD1、及びマウスE1から採取し染色した皮膚の切片、並びにマウスA2、マウスB2、マウスC2、マウスD2、及びマウスE2から採取し染色した皮膚の切片をECLIPSE E1000M光学顕微鏡(NIKON社製)で観察した結果を図5に示す。図5においてA1〜E1は、それぞれ、マウスA1〜マウスE1から採取し染色した皮膚の切片に対応し、A2〜E2は、それぞれ、マウスA2〜マウスE2から採取し染色した皮膚の切片に対応するものであり、バーの長さは100μmを示すものである。
図5の結果から、紫外線照射したマウスA1の皮膚では、表皮の角化異常、真皮および皮下組織の炎症性細胞湿潤を生じるのに対して、紫外線を照射するとともにレプトマイシンBを外用投与したマウスB1、マウスC1、マウスD1、及びマウスE1の皮膚では、濃度依存的に、表皮では正常の角化を示すようになり、真皮および皮下組織の炎症性細胞湿潤も抑制されていくことを認めた。また、紫外線を照射しなかったマウスB2、マウスC2、マウスD2、及びマウスE2の皮膚にレプトマイシンBを外用しても、有意な変化を認めなかった。このように、少なくとも、外用投与によって、皮膚の炎症を抑制することが確認され、種々の炎症性皮膚疾患、腫瘍にレプトマイシンBが有用であることが示された。
(A)は無刺激下における、(B)は高濃度カルシウム刺激下における、(C)はTGF−βによる刺激下における、(D)はTNF−αによる刺激下における、(E)はIL−1αによる刺激下における、ヒト表皮角化細胞のMMP−2及びMMP−9の産生に及ぼすLMBの影響を示す図である。 ヒト表皮角化細胞のMMP−9のmRNA及びGAPDHのmRNAの産生に及ぼすLMBの影響を示す図である。 (A)及び(B)は、KRE−M9を含むベクター1をHFKsに遺伝子導入した場合、及びKRE−M9を含まないベクター2をHFKsに遺伝子導入した場合のルシフェラーゼアッセイによるヒト表皮角化細胞のMMP−9の総転写活性の測定結果を示す図であり、(C)は、KRE−M9配列及びTRE配列を含有する塩基配列を示す図である。 (A)及び(B)は、塩基配列1及び2を用いた場合、並びに塩基配列3〜6を用いた場合のルシフェラーゼアッセイによるヒト表皮角化細胞のMMP−9の総転写活性の測定結果を示す図であり、(C)は、KRE−M9配列及び配列番号5に示すKRE−M9配列の4塩基置換配列をプローブとして用いたヒトケラチノサイト核タンパク質によるゲルシフトアッセイの結果を示す図である。 マウスA1〜マウスE1から採取し染色した皮膚の切片、及びマウスA2〜マウスE2から採取し染色した皮膚の切片を光学顕微鏡で観察した結果を示す図である。
配列番号1〜4は、プライマーの配列を示し、配列番号5及び6は、KRE−M9配列の4塩基置換配列及びTRE配列の置換配列を示すものである。

Claims (2)

  1. 下記式(1):


    で示されるレプトマイシンBを有効成分として含有し、マトリックスメタロプロテアーゼ−9関連の皮膚の炎症性疾患(皮膚の腫瘍性疾患を除く。)の予防薬又は治療薬(抗黄色ブドウ球菌剤を除く。)であり、該皮膚の炎症性疾患が、水疱症、血管新生、湿疹皮膚炎、紫外線皮膚炎、又は角化異常症であることを特徴とするマトリックスメタロプロテアーゼ−9の産生を阻害するための薬剤。
  2. 前記予防薬又は治療薬が、その投与形態が皮膚外用剤であることを特徴とする請求項1記載の薬剤。
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