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JP4470758B2 - エンジンの制御装置 - Google Patents

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JP4470758B2
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Description

本発明は、エンジンの制御装置に関し、特に、手動変速機が搭載された車両の発進時のエンジンの制御に関する。
手動変速機が搭載された車両の発進時においては、運転者は、アクセルペダル、クラッチペダルおよびシフトレバーを操作する必要があり、自動変速機が搭載された車両の発進時に比べて、操作負担が大きい。特に上り坂での車両の発進時においては、車両は、重力により後方に下がるため、ブレーキペダルを操作する必要があり、より操作負担が大きくなるという問題がある。
このような問題に鑑みて、たとえば、特開平6−146945号公報(特許文献1)は、手動変速機を備えた車両の坂道発進操作を簡易なものとして運転者の負担を軽減する車両の走行制御装置を開示する。この走行制御装置は、車両の停止状態を検出する停止状態検出手段と、路面の勾配を検出する勾配検出手段と、運転者の車両発進操作を検出する発進操作検出手段と、車両が所定の走行状態に移行したことを検出する走行状態検出手段と、車両の停止状態において発進操作が検出された時から走行状態への移行が検出されるまでの間、路面の勾配に応じて車両エンジンのアイドル運転トルクを増大させるトルク制御手段とを備える。
特許文献1に開示された走行制御装置によると、手動変速機を備えた車両の坂道発進時にも運転者は余裕を持ってペダル操作を行うことができ、発進操作の際の運転者の負担が大幅に軽減される。
特開平6−146945号公報
ところで、手動変速機が搭載された車両の発進時には、好ましくは、クラッチペダルの操作だけで発進できることが望ましい。そこで、特許文献1において開示された走行制御装置を適用することが考えられるが、アイドル運転時のエンジンのトルクは、路面の勾配に応じて増大するように制御されるため、運転者のクラッチの操作状態によっては、車両が急発進する可能性があり、運転者の意図するように車両を発進させることができないという問題がある。
本発明は、上述した課題を解決するためのなされたものであって、その目的は、運転者の操作負担を低減し、かつ、運転者が意図した車両の発進を実現するエンジンの制御装置を提供することである。
第1の発明に係るエンジンの制御装置は、手動変速機にクラッチを介して連結されたエンジンを制御するエンジンの制御装置である。制御装置は、運転者により要求されたエンジンの出力状態を検知するための要求検知手段と、出力状態に基づいて、第1の要求トルクを算出するための手段と、エンジンが搭載された車両が発進できる第2の要求トルクを算出するための算出手段と、車両の発進時において、第1の要求トルクおよび第2の要求トルクのうちの大きい方の要求トルクが発現するようにエンジンの出力を制御するための制御手段とを含む。
第1の発明によると、制御手段は、車両の発進時において、運転者により要求された出力状態(たとえば、アクセルペダルの踏込み量)に基づいて算出された第1の要求トルクと、車両が発進できるように算出された第2の要求トルクとのうちの大きい方の要求トルクが発現するようにエンジンの出力を制御する。これにより、車両の発進時においては、運転者により要求された第1の要求トルクと、車両が発進可能な第2の要求トルクとのうちの大きい方のトルクが発現するようにエンジンの出力が制御されるため、車両に運転者により要求された第1の要求トルクが発現する場合においては、車両が発進可能であり、かつ、運転者が意図するトルクが発現するように、エンジンの出力が制御される。また、アクセルペダルが踏み込まれていない場合、あるいは、アクセルペダルは踏み込まれているが、踏込み量が小さいため第1の要求トルクが小さい場合には、車両が発進可能な第2の要求トルクが発現するようにエンジンの出力が制御される。そのため、エンジンが停止することなく、車両を発進させることができる。したがって、運転者の操作負担を低減し、かつ、運転者が意図した車両の発進を実現するエンジンの制御装置を提供することができる。
第2の発明に係るエンジンの制御装置は、第1の発明の構成に加えて、エンジンの回転数を検知するための手段をさらに含む。算出手段は、検知されたエンジンの回転数に基づいて、目標トルクを算出するための目標トルク算出手段と、目標トルクと、前回算出された第2の要求トルクにクラッチの状態に応じた増加許可トルクを加えたトルクとのいずれか小さい方を第2の要求トルクとして算出するための手段とを含む。
第2の発明によると、算出手段は、検知されたエンジンの回転数に基づいて、算出された目標トルクと、前回算出された第2の要求トルクにクラッチの状態に対応する増加許可トルクを加えたトルクとのいずれか小さい方を第2の要求トルクとして算出する。たとえば、車両の車輪が輪止めに接触するような場合には、目標トルクが前回算出された第2の要求トルクに対して大きく算出される場合がある。そのため、算出された目標トルクを第2の要求トルクとして、第2の要求トルクが発現するように、エンジンの出力を制御すると、エンジンの回転数が急激に上昇する可能性がある。このとき、クラッチの状態が係合状態であると、車両は輪止めを乗り越えようとする場合がある。クラッチの状態が半クラッチ状態であると、オーバレブ(オーバーレボリューション:過回転)する場合がある。そこで、前回算出された第2の要求トルクに対する増加分を制限することにより、エンジン回転数の急激な上昇による輪止めの乗り越えやオーバレブを防止することができる。
第3の発明に係るエンジンの制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、算出手段は、算出された第2の要求トルクが予め定められた上限値よりも大きいと、上限値を第2の要求トルクとして算出するための手段を含む。
第3の発明によると、第2の要求トルクの増加分が許可量以下であっても、算出された第2の要求トルクが予め定められた上限値よりも大きいと、エンジンの回転数が急激に上昇する場合がある。このとき、クラッチの状態が係合状態であると、車両は輪止めを乗り越えようとする場合がある。クラッチの状態が半クラッチ状態であると、オーバレブする場合がある。そこで、算出された今回の第2の要求トルクが予め定められた上限値より大きいと、上限値を第2の要求トルクとして、第2の要求トルクを制限することにより、エンジン回転数の急激な上昇およびオーバレブを防止することができる。
第4の発明に係るエンジンの制御装置においては、第2の発明の構成に加えて、目標トルク算出手段は、検知されたエンジンの回転数の変化量と、クラッチの状態に応じて選択される車両およびエンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントとに基づいて、目標トルクを算出するための手段を含む。
第4の発明によると、目標トルク算出手段は、検知されたエンジンの回転数の変化量と、クラッチの状態に応じて選択される車両およびエンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントとに基づいて、目標トルクを算出する。クラッチの状態に応じて、車両およびエンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントが選択される。たとえば、クラッチの状態が半クラッチ状態であれば、エンジンの慣性モーメントが選択され、クラッチの状態が係合状態であれば、車両の慣性モーメントが選択される。そして、選択された慣性モーメントと、検知されたエンジンの回転数の変化量、すなわち、角加速度とに基づいて、目標トルクを算出することにより、クラッチの状態が半クラッチ状態あるいは係合状態になることによるエンジンの回転数の低下時に、回転数の低下を抑制する目標トルクを算出することができる。また、クラッチの状態に応じて慣性モーメントを選択して目標トルクを算出することにより、車両の動力伝達状態に対応した適切な目標トルクを算出することができる。
第5の発明に係るエンジンの制御装置においては、第4の発明の構成に加えて、目標トルク算出手段は、エンジンの負荷状態に応じて設定される目標回転数と検知されたエンジンの回転数との差に基づいて、検知されたエンジンの回転数の変化量を補正するための手段をさらに含む。
第5の発明によると、目標トルク算出手段は、エンジンの負荷状態に応じて設定される目標回転数と検知されたエンジンの回転数との差に基づいて、検知されたエンジンの回転数の変化量を補正する。すなわち、クラッチの状態が半クラッチ状態あるいは係合状態になることによるエンジンの回転数の低下時に、回転数の低下を抑制するトルクに対応するエンジンの回転数の変化量に、目標回転数と検知されたエンジンの回転数との差に対応する補正量を加えることにより、低下したエンジンの回転数を目標回転数に復帰させる目標トルクを算出することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係るエンジンの制御装置について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に示すように、本実施の形態に係る車両の制御装置が搭載される車両には、エンジン100と、クラッチ102と、手動変速機104と、エンジンECU(Electronic Control Unit)200とが搭載される。なお、本実施の形態に係る車両の制御装置は、エンジンECU200で実行されるプログラムにより実現される。
エンジン100には、燃料噴射装置106が設けられる。燃料噴射装置106は、エンジンECU200からの制御信号に基づいて、エンジン100に対して燃料を供給する。エンジン100は、ポート噴射型のエンジンであってもよいし、直噴エンジンであってもよいし、ディーゼルエンジンであってもよく、特に限定されるものではない。
エンジン100には、さらに、電子スロットル112が設けられる。電子スロットル112は、エンジンECU100からの制御信号に基づいて、スロットル弁(図示せず)の開度を制御する。
エンジン100の内部に設けられる複数のシリンダのそれぞれにおいて、点火プラグ114が設けられる。複数のシリンダのそれぞれに設けられる点火プラグ114は、エンジンECU200からの制御信号に基づいて、予め定められた順序および時期に、高電圧の電気により火花を発生させる。
エンジン100の出力軸には、回転数センサ(1)202が設けられる。回転数センサ(1)202は、検知した出力軸の回転数に対応する検知信号をエンジンECU100に出力する。
また、エンジン100の出力軸は、クラッチ102に連結される。クラッチ102は、手動変速機104に連結される。本実施の形態において、クラッチ102は、たとえば、乾式単板式の摩擦クラッチであるが特にこれに限定されるものではない。クラッチ102は、クラッチ102が解放状態になることによりエンジン100から手動変速機104に伝達する動力を遮断したり、クラッチ102が係合状態になることにより、動力を伝達したりする。
手動変速機104の入力軸には、回転数センサ(2)206が設けられる。回転数センサ(2)206は、検知した入力軸の回転数に対応する検知信号をエンジンECU100に出力する。
クラッチ102と運転席に設けられるクラッチペダル108とは、クラッチシリンダ等を含む油圧回路を介して接続される。すなわち、クラッチ102は、クラッチペダル108の操作に応じて作動する。クラッチペダル108は運転者がクラッチペダル108を踏み込むように操作すると、クラッチ102は、エンジン100の出力軸に設けられるフライホイール(図示せず)から離れて解放状態となり、エンジン100からの動力が遮断される。また、運転者がクラッチペダル108の踏込みを止めるように操作すると、クラッチ102はフライホイールと当接して係合状態となり、エンジン100からの動力を手動変速機104に伝達する。
クラッチペダル108には、クラッチストロークセンサ204が設けられる。クラッチストロークセンサ204は、クラッチペダルの操作量に対応する検知信号をエンジンECU200に出力する。
また、運転席には、クラッチペダル108のほかにブレーキペダル(図示せず)やアクセルペダル110が設けられる。アクセルペダル110には、アクセルポジションセンサ206が設けられる。アクセルポジションセンサ206は、運転者によるアクセルペダル110の操作量に対応する検知信号をエンジンECU200に出力する。
本実施の形態に係る車両の制御装置であるエンジンECU200は、アクセルペダル110の操作量、すなわち、運転者により要求されたエンジンの出力状態に基づいて、エンジンに要求される要求トルク(1)を算出する。一方、エンジンECU200は、エンジン100が停止せずに車両が発進できる要求トルク(2)を算出する。
本発明は、エンジンECU200が車両の発進時において要求トルク(1)および要求トルク(2)のうちの大きい方の要求トルクが発現するようにエンジンの出力を制御する点に特徴を有する。以下の説明においては、エンジンECU200のハードウェア(演算回路)により実現される制御装置について説明するがハードウェアではなく、エンジンECU200で実行されるプログラム(ソフトウェア)により実現されてもよい。
図2に示すように、エンジンECU200には、要求トルク比較演算器302から出力される要求トルクと、回転数センサ(1)202により検知されたエンジン100の回転数に対応する検知信号とが入力される。そして、エンジンECU200は、入力された要求トルクと、検知されたエンジンの回転数とに基づいて、エンジン100が要求トルクを発現するように、電子スロットル112のスロットル弁の開度、点火プラグ114における点火時期および空燃比を制御する。
以下、図3を参照して、エンジンECU200が要求トルクを算出する構成について説明する。エンジンECU200は、要求トルク(1)演算器300と、要求トルク比較器302とを含む。
要求トルク(1)演算器300は、アクセルポジション206からアクセルペダル110の操作量に対応する検知信号を受信する。要求トルク(1)演算器300は、入力された検知信号と、予め定められたアクセル開度と出力トルクとの関係を示すマップとから要求トルク(1)を算出する。
要求トルク比較器302は、要求トルク(1)演算器300から入力される要求トルク(1)と、後述する最終アシストトルクに対応する要求トルク(2)とを比較して、いずれか大きい方のトルクを要求トルクとして出力する。
以下、図4のブロック線図を参照して、エンジンECU200が最終アシストトルクを算出する構成について説明する。エンジンECU200は、増加許可量選択器400と、上限値選択器404と、加算器402と、アシストトルク比較器406とをさらに含む。
増加許可量選択器400は、クラッチ102の状態に対応したアシストトルクの増加許可量を選択する。たとえば、増加許可量選択器400は、回転数センサ(1)202と回転数センサ(2)206とから受信した回転数の差に基づくクラッチ102の状態に対応した増加許可量を選択するようにしてもよい。回転数センサ(1)202により検知されたエンジン100の出力軸の回転数と、回転数センサ(2)206により検知された手動変速機104の入力軸の回転数との差がゼロであると、クラッチ102の状態は係合状態であると判断することができる。一方、エンジン100の出力軸の回転数と、手動変速機104の入力軸の回転数との差がゼロ以上であって、予め定められた回転数以下であると、クラッチ102の状態は半クラッチ状態であると判断することができる。予め定められた回転数は、たとえば、クラッチ102の状態が遮断状態であると判断できる回転数であれば、特に限定されるものではない。
あるいは、増加許可量選択器400は、クラッチストロークセンサ204から受信した検知信号に基づくクラッチ102の状態に対応した増加許可量を選択するようにしてもよい。
増加許可量選択器400は、クラッチ102の状態が半クラッチ状態であると、半クラッチ状態に対応した増加許可量を選択して、加算器402に出力する。一方、増加許可量選択器400は、クラッチ102の状態が係合状態であると、係合状態に対応した増加許可量を選択して、加算器402に出力する。
増加許可量については、エンジン100の回転数が急激な上昇とならない程度の量が設定されれば、特に限定されるものではないが、少なくともクラッチ102の状態が係合状態であるときの増加許可量の方が、半クラッチ状態であるときの増加許可量よりも大きい。これは、クラッチ102の状態が係合状態であるときのエンジン100の出力軸における慣性モーメントが半クラッチ状態であるときのエンジン100の出力軸における慣性モーメントよりも大きくなるためである。
加算器402は、前回算出された最終アシストトルクに、上述した増加許可量選択器400から出力された増加許可量を加算する。
上限値選択器404は、クラッチ102の状態に対応したアシストトルクの上限値を選択する。たとえば、上限値選択器404は、上述したように、回転数センサ(1)202と回転数センサ(2)206とから受信した回転数の差に基づくクラッチ102の状態に対応した上限値を選択するようにしてもよいし、クラッチストロークセンサ204から受信した検知信号に基づくクラッチ102の状態に対応した上限値を選択するようにしてもよい。
上限値選択器404は、クラッチ102の状態が半クラッチ状態であると、半クラッチ状態に対応した上限値を選択して、アシストトルク比較器406に出力する。一方、上限値選択器404は、クラッチ102の状態が係合状態であると、係合状態に対応した上限値を選択して、アシストトルク比較器406に出力する。
アシストトルク比較器406は、後述するアシストトルク目標値と、加算器402から出力された前回算出された最終アシストトルクに、上述した増加許可量を加えた値と、上限値選択器404から出力された上限値とのうちの小さい方のトルクを今回の最終アシストトルクとして出力する。
以下、図5に示すブロック線図を参照して、エンジンECU200がアシストトルク目標値を算出する構成について説明する。エンジンECU200は、減算器500と、乗算器502と、加算器504と、慣性モーメント選択器506と、乗算器508とをさらに含む。
減算器500は、回転数センサ(1)202により検知されたエンジン100の現在回転数と、エンジンの目標回転数との差を算出して乗算器502に出力する。ここで、「エンジンの目標回転数」とは、車両に設けられる補機の負荷、すなわち、エアコンディショナやオルタネータ等の状態に基づいて、エンジンECU200により設定されるエンジン100の目標回転数である。
乗算器502は、減算器500から出力された値に1/αを乗じた値を加算器504に出力する。ここで、「α」は、本実施の形態においては、定数としたが、特に定数であることに限定されるものではない。たとえば、現在回転数と目標回転数との差とαとの関係を示すマップを予め記憶しておき、差に応じてαを設定するようにしてもよい。
加算器504は、回転数センサ(1)202により検知されるエンジン100の回転数の変化量、すなわち、角速度に、乗算器502から出力された値を加算する。
慣性モーメント選択器506は、クラッチ102の状態に対応した慣性モーメントを選択する。たとえば、慣性モーメント選択器506は、上述したように、回転数センサ(1)202と回転数センサ(2)206とから受信した回転数の差に基づくクラッチ102の状態に対応した慣性モーメントを選択するようにしてもよいし、クラッチストロークセンサ204から受信した検知信号に基づくクラッチ102の状態に対応した慣性モーメントを選択するようにしてもよい。
慣性モーメント選択器506は、クラッチ102の状態が半クラッチ状態であると、エンジン100の出力軸におけるエンジンの慣性モーメントを選択して、乗算器508に出力する。一方、慣性モーメント選択器506は、クラッチ102の状態が係合状態であると、エンジン100の出力軸における車両の慣性モーメントを選択して、乗算器508に出力する。
なお、車両の慣性モーメントおよびエンジンの慣性モーメントは、実験的に求めるようしてもよいし、車両およびエンジンを構成する各構成部品の各々の要素情報(たとえば、寸法や重量等)に基づいて近似的に算出するようにしてもよいし、CAE(Computer Aided Engineering)解析により算出するようにしてもよい。車両およびエンジンの慣性モーメントの算出方法については、周知の技術を用いればよく、特に限定されるものではない。好ましくは、手動変速機におけるシフトポジションの位置毎に対応した車両の慣性モーメントを予め算出しておくことが望ましい。たとえば、シフトポジションが1速であるときの車両の発進時と2速であるときの車両の発進時とでは、変速比および動力伝達経路が異なるため、エンジン100の出力軸における車両の慣性モーメントも異なるためである。
乗算器508は、加算器504から出力された値と、慣性モーメント選択器506から出力された慣性モーメントとを乗じた値をアシストトルク目標値として出力する。
なお、エンジンECU200は、要求トルク、最終アシストトルクおよびアシストトルク目標値を、たとえば、予め定められた時間毎に算出する。
以上のような、構造およびブロック線図に基づいて、本実施の形態に係るエンジンの制御装置であるエンジンECU200の動作について説明する。
停車中の車両において、運転者がアクセルペダル110を操作せずにクラッチペダル108を操作して、クラッチ102を係合させる場合、クラッチ102が半クラッチ状態になると、エンジン100の回転数が低下する。エンジンECU200は、車両の負荷状態に応じて、エンジン100の目標回転数を設定している。そのため、エンジンECU200は、回転数センサ(1)202により検知された現在の回転数と目標回転数との間に差が生じると、エンジン100の回転数の変化量に、現在の回転数と目標回転数との差に対応した補正量を加えて、エンジンの慣性モーメントを乗じた値をアシストトルク目標値として算出する。
算出されたアシストトルク目標値は、前回算出された最終アシストトルクと増加許可量との和および上限値よりも小さいと、最終アシストトルクとして算出される。アクセルペダル110が操作されないと、算出された最終アシストトルクに対応する要求トルク(2)が算出され、エンジンECU200は、算出された要求トルク(2)が発現するように、スロットル開度、点火プラグ114の点火時期および空燃比を制御する、すなわち、エンジン100の出力を制御する。要求トルク(2)が随時算出され、エンジンECU200は、算出された要求トルク(2)が発現するように、エンジンの出力を制御するため、エンジン100が停止することなく、車両は発進する。
また、運転者によりアクセルペダル110が踏み込まれていても、要求トルク(2)が要求トルク(1)よりも大きいと、エンジンECU200は、要求トルク(2)を発現するように、エンジンの出力を制御する。すなわち、運転者によるアクセルペダル110の踏込み量が不足していても、エンジン100が停止することなく、車両は発進する。
さらに、運転者によるアクセルペダル100の踏込み量が大きく、要求トルク(1)が要求トルク(2)よりも大きいと、エンジンECU200は、要求トルク(1)を発現するように、エンジンの出力を制御する。要求トルク(1)は、車両が発進できる要求トルク(2)よりも大きいため、エンジン100が停止することなく、車両は発進する。
以上のようにして、本実施の形態に係るエンジンの制御装置によると、車両の発進時においては、運転者により要求された要求トルク(1)と、車両が発進可能な要求トルク(2)とのうちの大きい方のトルクが発現するようにエンジンの出力が制御されるため、車両に運転者により要求された要求トルク(1)が発現する場合においては、車両が発進可能であり、かつ、運転者が意図するトルクが発現するように、エンジンの出力が制御される。また、アクセルペダルが踏み込まれていない場合、あるいは、アクセルペダルは踏み込まれているが、踏込み量が小さいため第1の要求トルクが小さい場合には、車両が発進可能な第2の要求トルクが発現するようにエンジンの出力が制御される。そのため、エンジンが停止することなく、車両を発進させることができる。したがって、運転者の操作負担を低減し、かつ、運転者が意図した車両の発進を実現するエンジンの制御装置を提供することができる。
また、エンジンECUは、検知されたエンジンの回転数に基づいて、算出されたアシストトルク目標値と、前回算出された最終アシストトルクにクラッチの状態に対応する増加許可トルクを加えたトルクのうちのいずれか小さい方のトルクを今回の最終アシストトルクとして算出する。たとえば、車両の車輪が輪止めに接触するような場合には、アシストトルク目標値が前回算出された最終アシストトルクに対して大きく算出される場合がある。そのため、算出されたアシストトルク目標値を最終アシストトルクに対応する要求トルクとして、要求トルクが発現するように、エンジンの出力を制御すると、エンジンの回転数が急激に上昇する可能性がある。このとき、クラッチの状態が係合状態であると、車両は輪止めを乗り越えようとする場合がある。クラッチの状態が半クラッチ状態であると、オーバレブする場合がある。そこで、前回算出された最終アシストトルクに対する増加分を制限することにより、エンジン回転数の急激な上昇による輪止めの乗り越えやオーバレブを防止することができる。
さらに、前回の最終アシストトルクに対する増加分が許可量以下であっても、算出された最終アシストトルクが予め定められた上限値よりも大きいと、エンジンの回転数が急激に上昇する場合がある。このとき、クラッチの状態が係合状態であると、車両は輪止めを乗り越えようとする場合がある。クラッチの状態が半クラッチ状態であると、オーバレブする場合がある。そこで、算出された今回の最終アシストトルクが予め定められた上限値より大きいと、上限値を最終アシストトルクとして、要求トルクを制限することにより、エンジン回転数の急激な上昇およびオーバレブを防止することができる。
そして、エンジンECUは、検知されたエンジンの回転数の変化量と、クラッチの状態に応じて選択される車両およびエンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントとに基づいて、アシストトルク目標値を算出する。クラッチの状態に応じて、車両およびエンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントが選択される。クラッチの状態が半クラッチ状態であれば、エンジンの慣性モーメントが選択され、クラッチの状態が係合状態であれば、車両の慣性モーメントが選択される。そして、選択された慣性モーメントと、検知されたエンジンの回転数の変化量、すなわち、角加速度とに基づいて、アシストトルク目標値を算出することにより、クラッチの状態が半クラッチ状態あるいは係合状態になることによるエンジンの回転数の低下時に、回転数の低下を抑制するアシストトルク目標値を算出することができる。また、クラッチの状態に応じて慣性モーメントを選択してアシストトルク目標値を算出することにより、車両の動力伝達状態に対応した適切なアシストトルク目標値を算出することができる。
また、エンジンECUは、エンジンの負荷状態に応じて設定される目標回転数と検知されたエンジンの回転数との差に基づいて、検知されたエンジンの回転数の変化量を補正する。すなわち、クラッチの状態が半クラッチ状態あるいは係合状態になることによるエンジンの回転数の低下時に、回転数の低下を抑制するトルクに対応するエンジンの回転数の変化量に、目標回転数と検知されたエンジンの回転数との差に対応する補正量を加えることにより、低下したエンジンの回転数を目標回転数に復帰させるアシストトルク目標値を算出することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態における車両の構成を示すブロック図である。 本実施の形態に係るエンジンの制御装置であるエンジンECUの入力と出力との関係を示す図である。 本実施の形態に係るエンジンの制御装置であるエンジンECUのブロック線図(その1)である。 本実施の形態に係るエンジンの制御装置であるエンジンECUのブロック線図(その2)である。 本実施の形態に係るエンジンの制御装置であるエンジンECUのブロック線図(その3)である。
符号の説明
100 エンジン、102 クラッチ、104 手動変速機、106 燃料噴射装置、108 クラッチペダル、110 アクセルペダル、112 電子スロットル、114 点火プラグ、200 エンジンECU、202,206 回転数センサ、204 クラッチストロークセンサ、300 要求トルク(1)演算器、302 要求トルク比較器、400 増加許可量選択器、402,504 加算器、404 上限値選択器、406 アシストトルク比較器、500 減算器、502,508 乗算器、506 慣性モーメント選択器。

Claims (4)

  1. 手動変速機にクラッチを介して連結されたエンジンを制御するエンジンの制御装置であって、
    運転者により要求された前記エンジンの出力状態を検知するための要求検知手段と、
    前記出力状態に基づいて、第1の要求トルクを算出するための手段と、
    前記エンジンが搭載された車両が発進できる第2の要求トルクを算出するための算出手段と、
    前記車両の発進時において、前記第1の要求トルクおよび前記第2の要求トルクのうちの大きい方の要求トルクが発現するように前記エンジンの出力を制御するための制御手段と
    前記エンジンの回転数を検知するための手段とを含み、
    前記算出手段は、
    前記検知されたエンジンの回転数に基づいて、目標トルクを算出するための目標トルク算出手段と、
    前記目標トルクと、前回算出された第2の要求トルクにクラッチの状態に応じた増加許可トルクを加えたトルクとのいずれか小さい方を第2の要求トルクとして算出するための手段とを含む、エンジンの制御装置。
  2. 前記算出手段は、算出された第2の要求トルクが予め定められた上限値よりも大きいと、前記上限値を第2の要求トルクとして算出するための手段を含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記目標トルク算出手段は、前記検知されたエンジンの回転数の変化量と、前記クラッチの状態に応じて選択される前記車両および前記エンジンのうちのいずれか一方の慣性モーメントとに基づいて、前記目標トルクを算出するための手段を含む、請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記目標トルク算出手段は、前記車両の負荷状態に応じて前記エンジンの目標回転数を設定し、設定された前記目標回転数と前記検知されたエンジンの回転数との差に基づいて、前記検知されたエンジンの回転数の変化量を補正するための手段をさらに含む、請求項3に記載のエンジンの制御装置。
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