JP4470003B2 - 高シリカモルデナイトおよびその合成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は触媒、吸着剤、分離剤等の基材として有用なモルデナイト、特に、従来法では合成不可能であったSiO2/Al2O3比=30〜100のモルデナイト型ゼオライトおよびその合成法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
モルデナイト型ゼオライトは天然にも算出するアルミノシリケートゼオライトの1種であり、その合成方法は多数提案されている。これまでに提案されているモルデナイトの一般的合成法は、有機添加剤を用いることなしにアルミノシリケートゲルスラリーを加熱結晶化する方法である(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
これらの方法で得られるモルデナイトのSiO2/Al2O3比は通常9〜20の範囲である。これに対して、微粉状シリカ原料を用いて攪拌下で合成することにより、SiO2/Al2O3比が12〜30の結晶を合成する方法がある(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
また有機添加剤としてベンジルトリメチルアンモニウムイオンを用いる方法(例えば、特許文献5参照)やアミノ酸を添加する方法(例えば、特許文献6参照)などが提案されている。これらの方法によれば有機添加剤を用いない方法に比べてSiO2/Al2O3比の高い結晶が得られるが、その最大値はそれぞれ26.5および26.4であり、30を超えるSiO2/Al2O3比のモルデナイト結晶の合成は不可能であった。そのために一般的には、SiO2/Al2O3比=10〜20のモルデナイトを脱アルミニウム処理することによってSiO2/Al2O3比を高くする方法が採用されてきた。しかしながらこの方法では、結晶内の一部が構造破壊を起こして結合欠陥が生じるため、細孔径や固体酸強度を任意に制御することが困難であるという不都合が生じていた。
【0005】
一方、さらにSiO2/Al2O3比の高いモルデナイト結晶を合成する試みとして、TEAイオンを添加して合成する方法がある(例えば、特許文献7および非特許文献1)。
【0006】
これらの方法によって得られるモルデナイト結晶のSiO2/Al2O3比の最大値はそれぞれ30.3および35であり、従来法よりもわずかにその値が大きいのみである。
【0007】
【特許文献1】
特公昭41−17854号公報
【特許文献2】
特公昭47−46677号公報
【特許文献3】
特公昭49−10440号公報
【特許文献4】
特公昭63−51969号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
米国特許第3766093号明細書(第6−7頁、実施例8)
【特許文献6】
特公昭62−43927号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】
米国特許第5573746号明細書(第6頁、Example7)
【非特許文献1】
A.A.Shaikh、P.N.Joshi、N.E.Jacob、V.P.Shiralkar著、「ゼオライツ(ZEOLITES)」、(英国)、バーターウォース−ハイネマン(Butterworht−Heinemann)社出版、1993年発行、Vol.13、511−517頁(第517頁、表6)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本願発明の目的は、脱アルミニウム処理をすることなく、合成したままの状態でSiO2/Al2O3比の高いモルデナイト型ゼオライト結晶、即ちその値が30〜100の結晶を合成し、それを用いた優れた高温耐熱性、高い構造安定性、強い固体酸性などが要求される触媒、吸着剤、分離剤等として有用な材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ゼオライトの構造と組成、ゼオライトの結晶化機構について鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。本発明のSiO2/Al2O3比=30〜100のハイシリカモルデナイト型ゼオライトは、TEAOH(テトラエチルアンモニウムヒドロキシド)を有機添加剤として添加し、かつアルカリ成分はTEAOHの解離による成分のみとすることにより、初めて合成可能である。さらに、この反応混合物にNaF(ふっ化ナトリウム)を添加することにより、広い組成範囲で安定的に結晶化させることが可能であることが分かった。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
モルデナイト型ゼオライトは、12員酸素環から成る細孔径6.5×7.0オングストロームの比較的大きな一次元細孔を有することが特徴である。また、モルデナイト型ゼオライト結晶の代表的X線回折図は、表1に示す回折角(2θ)と格子面間隔(d,(オングストローム))およびその回折強度によって特徴づけられ、他のゼオライトと明瞭に区別することができる。
【0012】
【表1】
また、その組成は酸化物のモル比で表して下記の組成式で表わされる。
【0013】
xNa2O・Al2O3・ySiO2・zH2O
ここでxは0.8〜1.2、yは10〜20、zは0以上の数を表す。yの値が比較的高いことがモルデナイトの特徴であり、そのために耐熱性を有し、プロトン交換体は強い固体酸性を示すことが特徴である。しかしながら、従来の方法では30を大きく超えるyの値を有するモルデナイトの合成方法は存在しなかった。したがって、SiO2/Al2O3比の高いモルデナイトが必要な場合には、酸処理やスチーミングを行ってアルミニウムを骨格外に抽出することが行われている。この方法によりSiO2/Al2O3比を上げることは可能であるが必然的に結合欠陥が生じるため、結晶細孔径や固体酸特性が変化してモルデナイト本来の特徴が損なわれる。そのために触媒や吸着剤への応用にも限界があった。
【0014】
本発明のモルデナイト型ゼオライトは、脱アルミニウム処理をすることなく、合成したままの状態で上記組成式のyの値が30〜100であることが特徴である。したがって、構造破壊による結合欠陥が本質的に存在せず、優れた構造安定性、耐熱性および固体酸性を有する。
【0015】
本発明のSiO2/Al2O3比の高いモルデナイト型ゼオライトは、有機添加剤としてTEAOHを反応混合物に添加することにより初めて可能である。その反応混合物組成は酸化物のモル比で表して次の組成
SiO2/Al2O3=30〜100
Na2O/SiO2=0
TEA2O/SiO2=0.01〜0.5
H2O/SiO2=0.5〜50
(ここでTEAはテトラエチルアンモニウムイオンを表す)
の反応混合物を自生圧力下において、100〜200℃の温度で結晶化させることによって可能である。また、この反応混合物にふっ化ナトリウムを添加することにより、不純物の副生を抑え、SiO2/Al2O3比の高い結晶を短時間で結晶化させることができる。その反応混合物組成範囲は下記のとおりである。
SiO2/Al2O3=30〜100
Na2O/SiO2=0(但し、NaFは除く)
TEA2O/SiO2=0.01〜0.5
NaF/SiO2=0.1〜2
H2O/SiO2=0.5〜50
上記組成式において、SiO2/Al2O3比が30未満の場合には、SiO2/Al2O3比が30以上の値を有するモルデナイト型ゼオライトが得られず、100を超える場合には、純粋な結晶が生成しない。Na2Oはアルカリ成分としてのNaOHを指し、Na2O/SiO2=0はフリーのNaOHは系内に存在しないことを示している。すなわち、Na2O/SiO2=0ではアルカリ源は基本的にテトラエチルアンモニウムヒドロキシドの解離によるアルカリ成分のみである。TEA2Oの添加量は、TEA2O/SiO2比が0.01以下ではモルデナイトが結晶化せず、また0.5以上では経済合理性に欠ける。H2O/SiO2比は上記数値の広い範囲で実施可能である。最初にスラリー状混合物を調製してから乾燥し、水分を蒸発させてH2O/SiO2比を小さくして反応収率を高めることも可能である。NaFを添加する場合は、NaF/SiO2=0.1〜2の範囲で不純物抑制および結晶化時間短縮等の効果が現れる。しかしながら、多量に添加しても効果は小さい。
【0016】
これらの反応混合物を調製するための原料として、シリカ源としてはコロイダルシリカ、無定形シリカ、珪酸ナトリウム、アルミノシリケートゲルなどが、またアルミナ源としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、アルミノシリケートゲルなどが用いられ、他の成分とも十分均一に混合できる形態のものが望ましい。したがって、珪酸ナトリウムやアルミン酸ソーダを使用する場合には、そのアルカリ成分を中和するのに必要な酸成分の添加が必要である。また、同様に塩化アルミニウムや硫酸アルミニウムを使用する場合にはその酸成分を中和するのに必要なアルカリ成分の添加が必要である。この酸成分を中和するアルカリ成分としてNaOHを用いることは可能であるが、反応混合物のアルカリ成分(Na2O)とはみなさない。
【0017】
反応混合物の添加順序は特に限定されないが、特にH2O/SiO2比が小さい場合には反応混合物の粘度が高くなるので、均一混合物が得られるような方法で混合することが好ましい。
【0018】
本反応混合物の結晶化において、加熱中の攪拌は特に必要としないが、粒子径の制御等が必要な場合は攪拌してもよい。H2O/SiO2比が小さい場合には、密閉容器に入れて加熱することのみにより結晶化が可能なので、容積あたりの収率を高めることができるので効率的である。
【0019】
結晶化のための加熱温度は、100℃以上が必要であり、100℃未満では反応速度が遅く効率的でない。また、加熱温度の上限は200℃であり、通常、150〜180℃で結晶化される。
【0025】
【実施例】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0026】
実施例1〜5
塩化アルミニウム・6水和物を水に溶解した後、3倍モル量のNaOHを添加して中和した。この水溶液にTEAOHと無定形シリカ粉末(日本シリカ工業製、ニップシール)を添加して均一になるように混合し、表2に示す組成の反応混合物を調製した。実施例3〜5においてはさらにNaFを添加して均一な反応混合物を調製した。いずれの実施例の場合もNa2O/SiO2=0である。これらの反応混合物をステンレス製オートクレーブに入れて密封し、170℃で加熱した。各実施例の加熱時間は表2のとおりである。生成物をろ過、洗浄した後、80℃で乾燥した。マックサイエンス社製、X線回折装置 MXP3HFを用いて測定した実施例1の生成物のX線回折図は図1に示すとおりであり、表1に示すモルデナイト型ゼオライトであった。実施例2〜5で得られた結晶も同等の結晶度を有するモルデナイトであった。理学電機社製、蛍光X線分析装置 RIX2100生成物の蛍光X線分析の結果、SiO2/Al2O3比は表2に示すとおりいずれのモルデナイトも30以上であった。
【0027】
【表2】
【0029】
比較例1〜4
実施例で用いたものと同じ原料を使用して、フリーのNaOHが系内に存在するように添加して表3に示す組成の反応混合物を調製した。実施例で用いたものと同じステンレス製オートクレーブに入れて密封し、170℃で所定時間加熱した。各比較例の加熱時間は表2のとおりである。X線回折による測定の結果、生成物はいずれもβ型ゼオライトであった。
【0030】
【表3】
比較例5
実施例で用いたものと同じ原料を使用して実施例1と同じ組成を有する反応混合物を、実施例で用いたものと同じステンレス製オートクレーブに入れて密封し、90℃で150時間加熱した。X線回折による測定の結果、生成物は無定形であった。
【0032】
【表7】
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で合成したモルデナイト型ゼオライトのX線回折図を示す。図の横軸(X軸)はX線回折における2θ(単位はdeg)を示し、縦軸(Y軸)はX線回折におけるピークの強度を示し、スケールは任意である。
Claims (2)
- 有機添加剤として水酸化テトラエチルアンモニウムを使用し、酸化物のモル比で表して次の組成
SiO2/Al2O3=30〜100
Na2O/SiO2=0
TEA2O/SiO2=0.01〜0.5
H2O/SiO2=0.5〜50
(ここでTEAはテトラエチルアンモニウムイオンを表す)の反応混合物を自生圧力下において、100〜200℃の温度で結晶化させることを特徴とするSiO 2 /Al 2 O 3 モル比=30〜100のモルデナイト型ゼオライトの合成方法。 - 有機添加剤として水酸化テトラエチルアンモニウムを使用し、酸化物のモル比で表して次の組成
SiO2/Al2O3=30〜100
Na2O/SiO2=0(但し、NaFは除く)
TEA2O/SiO2=0.01〜0.5
NaF/SiO2=0.1〜2
H2O/SiO2=0.5〜50
(ここでTEAはテトラエチルアンモニウムイオンを表す)
の反応混合物を自生圧力下において、100〜200℃の温度で結晶化させることを特徴とする請求項1のSiO 2 /Al 2 O 3 モル比=30〜100のモルデナイト型ゼオライトの合成方法。
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