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JP4466767B2 - 天然ゴムマスターバッチの製造方法 - Google Patents

天然ゴムマスターバッチの製造方法 Download PDF

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本発明は、天然ゴムマスターバッチの製造方法に関し、さらに詳しくは、天然ゴムラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を乾燥して天然ゴムマスターバッチを製造する方法において、天然ゴムマスターバッチの粘度を低減すると共にヒステリシスロスを小さくするようにする天然ゴムマスターバッチの製造方法に関する。
近年、空気入りタイヤを構成するゴム組成物には、ヒステリシスロスを小さくすることにより燃費性能を向上させたり、粘度を低減することにより成形加工性を向上させることが求められている。このような要求性能を向上させるため、ゴム組成物に配合するゴムマスターバッチにも粘度を低減すると共にヒステリシスロスを小さくする性能が求められている。
従来、天然ゴムマスターバッチの製造方法としては、天然ゴムラテックスと無機充填材との混合物を乾燥することにより製造する方法が知られており、例えば凍結凝固法、アルコール凝固法、パルス燃焼衝撃波乾燥法などが提案されている。なかでもパルス燃焼衝撃波乾燥法による製造方法は、天然ゴムの熱劣化やゲル化を抑制するようにした天然ゴムマスターバッチを製造することができる(例えば特許文献1参照)。
しかし、このような製造方法により得られた天然ゴムマスターバッチにおいても、粘度を低減し、かつヒステリシスロスを小さくするという要求性能を達成することはできなかった。
特開2005−298672号公報
本発明の目的は、天然ゴムラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を乾燥して天然ゴムマスターバッチを製造する方法において、天然ゴムマスターバッチの粘度を低減すると共に、ヒステリシスロスを小さくする天然ゴムマスターバッチの製造方法を提供することにある。
上記目的を達成する本発明の天然ゴムマスターバッチの製造方法は、天然ゴムラテックスと、無機充填材を水に分散させた無機充填材スラリーとを混合し、得られた混合液を乾燥する天然ゴムマスターバッチの製造方法において、予め前記天然ゴムラテックスにホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、グリオキサールから選ばれる少なくとも1つのタンパク質を架橋する化合物を添加することにより、前記天然ゴムラテックス中のタンパク質を架橋させる処理を行ない、この処理ラテックスと前記無機充填材スラリーとを混合することを特徴とする。
前記タンパク質を架橋する化合物は、天然ゴムラテックス中の固形成分100重量部に対し0.005〜5.0重量部添加するとよい。
前記無機充填材は、シリカであるとよく、具体的には、湿式シリカ、乾式シリカ又はコロイダルシリカがよい。
前記処理ラテックスと無機充填材スラリーとの混合液は、パルス燃焼による衝撃波の雰囲気下に噴射して乾燥するとよい。
このような天然ゴムマスターバッチの製造方法により得られた天然ゴムマスターバッチは、ゴム組成物に配合することができる。また、そのゴム組成物は、空気入りタイヤの少なくとも1部材を構成するのに好適である。
本発明の天然ゴムマスターバッチの製造方法は、天然ゴムラテックスと無機充填材スラリーとを混合する前に、天然ゴムラテックスにホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、グリオキサールから選ばれる少なくとも1つのタンパク質を架橋する化合物を添加することにより、予め天然ゴムラテックス中のタンパク質を架橋する処理を行なうようにしたので、混合操作及び乾燥操作を通じて天然ゴムラテックス中のタンパク質の影響を小さくして、粘度を低減すると共に、ヒステリシスロスを小さくした天然ゴムマスターバッチを製造することができる。
本発明の天然ゴムマスターバッチの製造方法は、天然ゴムラテックスと無機充填材スラリーとを混合・乾燥する前処理として、天然ゴムラテックスにタンパク質を架橋する化合物を添加する処理を行なう。天然ゴムラテックスとしては、ゴムの木から採取しろ過されたフィールドラテックス又はこれを処理した濃縮ラテックスを使用することができる。天然ゴムラテックスにタンパク質を架橋する化合物を添加する処理により、簡単な処理で、しかもタンパク質を架橋させる効率を高くすることができる。このように天然ゴムラテックス中のタンパク質を予め架橋することにより天然ゴムマスターバッチの製造時にタンパク質の影響を可及的に小さくする。
本発明の製造方法において、タンパク質を架橋する化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、グリオキサールから選ばれる少なくとも1種類である。なかでも、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリンはタンパク質への浸透力が強いため短時間で処理することができる。これらのタンパク質を架橋する化合物は、それぞれを単独で使用してもよく、複数の種類を組合わせて使用してもよい。
タンパク質を架橋する化合物の配合量は、天然ゴムラテックス中の固形成分100重量部に対し、好ましくは0.005〜5.0重量部、より好ましくは0.1〜2.0重量部添加するとよい。タンパク質を架橋する化合物の配合量が0.005重量部未満であると、天然ゴムラテックス中のタンパク質を架橋する処理が不十分になり、タンパク質の影響を小さくすることができない。また、タンパク質を架橋する化合物の配合量が5.0重量部を超えると、タンパク質を架橋する処理が頭打ちになり、却ってタンパク質を架橋する化合物同士が重合反応を起こし、不純物になりヒステリシスロスに悪影響を及ぼすという問題が起きる。なお、天然ゴムラテックス中の固形成分とは、水分(しょう液)を除いたすべての固形成分とし、天然ゴムの粒子とその表面に吸着するタンパク質を含むものとする。
天然ゴムラテックスにタンパク質を架橋する化合物を添加し混合する処理方法は、特に制限されるものではないが、好ましくは室温〜80℃で10分〜1時間混合・撹拌するとよい。混合温度が室温より低い場合、混合・撹拌の効率が低下する。また、混合温度が80℃を超えると、天然ゴムラテックスがコロイド粒子の安定性がくずれゴムが水中に分散できなくなる虞がある。混合時間が10分未満の場合、タンパク質の架橋が不十分になる。また、混合時間が1時間を超えても、タンパク質の架橋が頭打ちになり生産性が低下する。
また、天然ゴムラテックスには界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を配合することにより、ラテックス中のゴム粒子の分散を安定化することができる。このため天然ゴムラテックスが酸性になった場合でもゴム粒子の分散が不安定になるのを抑制し、生産ラインの配管の詰まり等の不具合を防止することができる。
本発明の製造方法では、上述したように天然ゴムラテックスにタンパク質を架橋する化合物を添加し、天然ゴムラテックス中のタンパク質を架橋させた処理ラテックスを、無機充填材スラリーと混合した混合液を調製する。処理ラテックスは、タンパク質を架橋することによりその影響を可及的に小さくしているため、処理ラテックスと無機充填材スラリーとが均一に混合・分散するので、得られた混合液の水分を除去した天然ゴムマスターバッチ中の無機フィラーの分散が均一になる。これによりヒステリシスロスを小さくすることができる。また、耐摩耗性を向上することができる。
無機充填材スラリーは、水を分散媒とし、無機充填材の粒子を均一に分散させた懸濁液である。無機充填材は、ゴム組成物に通常配合されるものであればよく、例えばシリカ、カーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、タルクを例示することができる。なかでも、シリカ、カーボンブラックが好ましい。特にシリカを配合することにより、ヒステリシスロスが小さい天然ゴムマスターバッチを製造することができる。また、シリカの種類としては、特に制限されるものではなく、例えば湿式シリカ、乾式シリカ又はコロイダルシリカを例示することができる。
無機充填材スラリー中の無機充填材の重量分率は、好ましくは15〜40重量%にするとよい。スラリー中の無機充填材の重量分率が15重量%未満の場合、無機充填材スラリーと処理ラテックスとの混合液から水分を除去する労力が多大になる。また、スラリー中の無機充填材の重量分率が40重量%を超えると、処理ラテックスと混合したときに粘度が非常に高くなるため、乾燥するときに水分が不足し温度調整が難しくなる。
本発明の製造方法において、処理ラテックスと無機充填材スラリーとを混合する方法は、特に制限されるものではなく、処理ラテックス中のゴム粒子と無機充填材スラリー中の無機充填材が均一に混合・分散するものであればよい。
上記により得られた処理ラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を乾燥することにより、天然ゴムマスターバッチを製造する。本発明で使用する乾燥方法は、処理ラテックスと無機充填材スラリーとの混合液から水分を除去できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、熱風乾燥法、減圧乾燥法、噴霧乾燥法、せん断をかけながらの乾燥、酸凝固法、凍結凝固法、アルコール凝固法、パルス燃焼衝撃波乾燥法などを例示することができる。なかでもパルス燃焼衝撃波乾燥法が好ましい。
パルス燃焼衝撃波乾燥法は、処理ラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を、パルス燃焼による衝撃波の雰囲気下に噴射する乾燥方法であり、混合液中のゴム粒子に過剰の熱をかけずに低温で乾燥するので天然ゴムの熱劣化やゲル化を防止することができる。このため、天然ゴムマスターバッチの粘度を低減する。また、ゴム粒子と無機充填材との均一な混合状態を崩すことなく天然ゴムマスターバッチを製造することができる。
パルス燃焼衝撃波乾燥は、市販のパルス燃焼衝撃波乾燥装置(例えばパルテック社製ハイパルコン)を使用して行なうことができる。乾燥条件は、パルス燃焼の周波数が好ましくは50〜1200Hz、より好ましくは250〜1000Hz、天然ゴムラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を噴射する乾燥室の温度を好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃にするとよい。パルス燃焼衝撃波乾燥の条件を上述した範囲内にすることにより、天然ゴムの熱劣化やゲル化を防止すると共に、天然ゴムマスターバッチ中のゴム粒子と無機充填材との均一な混合状態で乾燥することができる。
本発明の製造方法により得られた天然ゴムマスターバッチは、ヒステリシスロスを小さくすると共に、粘度を低減し成形加工性を向上することができる。このような天然ゴムマスターバッチを含むゴム組成物は、粘度が低くくヒステリシスロスが小さい優れた特性を有する。ゴム組成物には、天然ゴムマスターバッチ以外にタイヤ用ゴム組成物に通常用いられる充填材や添加剤などの配合剤を添加することができる。充填材としては、天然ゴムマスターバッチ中に含まれる無機充填材と同じ種類又は異なる種類のものを配合することができ、例えばシリカ、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等を必要に応じて配合することができる。添加剤としては、例えば、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、亜鉛華、ステアリン酸、老化防止剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤などを例示することができる。これらの充填剤及び添加剤の配合量は、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
上記により得られたゴム組成物は、空気入りタイヤの少なくとも1部材を構成するのに好適である。空気入りタイヤの構成部材としては、トレッド部、サイドウォール部、ビード部や各種補強コードの被覆ゴムなどが挙げられる。本発明の天然ゴムマスターバッチを含むゴム組成物を用いて成形したゴム部材は、天然ゴムの特性が効果的に引き出されると共に、無機充填材が均一に分散し、成形加工性に優れ安定的に加工成形されるので、高い品質を安定的に発揮することができる。同時に、ヒステリシスロスが小さいためタイヤの燃費性能を向上することができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
天然ゴムマスターバッチの製造
表1に示す配合で天然ゴムラテックス(NRラテックス)又は処理ラテックスと無機充填材スラリーとを混合した混合液を乾燥し5種類の天然ゴムマスターバッチ(実施例1〜4、比較例1)を製造した。実施例1〜4で使用した処理ラテックスは、予め天然ゴムラテックスにパラホルムアルデヒド(PFA)又はホルマリンを表1に示す組成比で配合し、メカニカルスターラーを使用し、室温で1時間撹拌混合した。得られた処理ラテックス(実施例1〜4)又は天然ゴムラテックス(比較例1)と無機充填材スラリーとを混合均一化し、混合液を得た。
次に、得られた混合液を、パルス燃焼衝撃波乾燥装置(パルテック社製ハイパルコン小型ラボ用乾燥機)を使用して、パルス燃焼による衝撃波の雰囲気(周波数1000Hz、温度60℃)下に2L/時の流量で噴射して乾燥し、5種類の天然ゴムマスターバッチ(実施例1〜4、比較例1)を製造した。
天然ゴムマスターバッチの評価
得られた天然ゴムマスターバッチ(表2中、「NRマスターバッチ」と記す。)を含む5種類のゴム組成物(実施例5〜8、比較例2)を表2に示す配合で調製した。調製方法は、それぞれ加硫促進剤と硫黄を除く配合成分を秤量し、0.6Lのバンバリーミキサーで4分間混練し、130〜140℃で混練物を放出して室温まで冷却した。この混練物に加硫促進剤と硫黄を加え電熱ロールを用いて混合し5種類のゴム組成物を製造した。
得られた5種類のゴム組成物(実施例5〜8、比較例2)のムーニー粘度を下記の方法で測定した。また、得られたゴム組成物をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、10分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法によりtanδ及び耐摩耗性を測定した。
ムーニー粘度(ML1+4
得られたゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)をJIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計にてL型ロータ(38.1mm系、5.5mm厚)を使用し、予熱時間1分、ロータの回転時間4分、100℃、2rpmの条件で測定し、得られた結果を表2に示した。ムーニー粘度が小さいほど粘度が低く成形加工性に優れることを意味する。
tanδ
得られた試験片のtanδを、岩本製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、伸長変形歪率10%±2%、周波数20Hzの条件で、温度60℃におけるtanδを測定し、得られた結果を表2に示した。温度60℃のtanδ(60℃)が小さいほどヒステリシスロスが小さく燃費性能が優れることを意味する。
耐摩耗性
得られた試験片の耐摩耗性として、JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、室温、荷重49N、スリップ率25%、時間4分の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、天然ゴムマスターバッチの種類毎に比較例2の摩耗量の逆数をそれぞれ100とする指数で表わし表2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
Figure 0004466767
なお、表1において使用した原材料の種類を下記に示す。
NRラテックス:FELTEX社製濃縮天然ゴムラテックス(固形成分量60重量%になるように遠心分離器で処理したもの)
PFA:パラホルムアルデヒド、和光純薬工業社製パラホルムアルデヒド
ホルマリン:和光純薬工業社製20%ホルマリン液
水:イオン交換水
シリカ:日本アエロジル社製アエロジルR202
Figure 0004466767
なお、表2において使用した原材料の種類を下記に示す。
老化防止剤:大内新興化学工業社製ノクラック MBZ
ステアリン酸:工業用ステアリン酸
亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
シランカップリング剤:デグッサ社製Si69
カーボンブラック:三菱化学社製ダイアブラックA
アロマオイル:昭和シェル石油社製デソレックス3号
加硫促進剤1:大内新興化学工業社製ノクセラー DM
加硫促進剤2:ジフェニルグアニジン DPG
硫黄:不溶性イオウ(20%油処理)

Claims (8)

  1. 天然ゴムラテックスと、無機充填材を水に分散させた無機充填材スラリーとを混合し、得られた混合液を乾燥する天然ゴムマスターバッチの製造方法において、予め前記天然ゴムラテックスに、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ホルマリン、グルタルアルデヒド、グリオキサールから選ばれる少なくとも1つのタンパク質を架橋する化合物を添加することにより、前記天然ゴムラテックス中のタンパク質を架橋させる処理を行ない、この処理ラテックスと前記無機充填材スラリーとを混合する天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  2. 前記タンパク質を架橋する化合物を、前記天然ゴムラテックス中の固形成分100重量部に対し0.005〜5.0重量部添加する請求項1に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  3. 前記無機充填材が、シリカである請求項1又は2に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  4. 前記シリカが、湿式シリカ、乾式シリカ又はコロイダルシリカである請求項3に記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  5. 前記処理ラテックスと無機充填材スラリーとの混合液を、パルス燃焼による衝撃波の雰囲気下に噴射して乾燥する請求項1〜4のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の天然ゴムマスターバッチの製造方法により得られた天然ゴムマスターバッチ。
  7. 請求項6に記載の天然ゴムマスターバッチを含むゴム組成物。
  8. 請求項7に記載のゴム組成物により、少なくとも1部材を構成した空気入りタイヤ。
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