JP4462834B2 - カーボンブラックの製造方法およびその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カーボンブラックの製造方法および製造装置に関し、より詳しくはカーボンブラック製造プロセスにおいて炉内に導入される酸素含有ガスを加熱する熱交換プロセスでの熱交換効率を維持するための改良方法およびこれを満たすための手段を備えた製造装置に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
カーボンブラックは、工業用原材料例えばゴム補強剤としてタイヤ製造工業や自動車用ゴム製品製造工業、黒色という特性を生かしての各種塗料、インキ等製造工業、静電トナー製造工業などに広範囲に使用されている重要な工業製品の1つである。
【0003】
カーボンブラックは炭化水素原料を熱分解または不完全燃焼させることにより得られるが、そのほとんどが高温に保持された反応炉(ファーネス)内での熱分解または不完全燃焼によるファーネス法により生産されている。このファーネス法によるカーボンブラック製造プロセスは次のようなフローで行われる。
【0004】
図1で示すように、全体が耐火物で覆われたカーボンブラック反応炉21の前頭部の導入部22からの炭化水素燃料および加熱空気導入部23からの酸素含有ガス(通常は空気)よりなる混合物の燃焼による高温の燃焼ガス生成帯域24、高温燃焼ガス流中に原料油25を導入してカーボンブラックを生成せしめる反応帯域26、この下流側で冷却媒(通常は水)導入部27を介して導入された冷却媒により反応を急速に停止させる反応停止帯域28から構成される反応炉21においてカーボンブラックを含む高温流が生成される。
【0005】
カーボンブラックの生成反応は1500〜1800℃という非常に高温雰囲気下で行われ、炉内に導入される成分(冷却媒を除く)の温度が低い場合は雰囲気温度の低下をもたらすことから、炉内に導入される前に予め加熱しておくことが生成反応において有利に作用するので通常はいずれも予熱して導入される。
【0006】
反応炉内から排出されたカーボンブラック含有高温流(通常は800〜850℃の温度をもつ)は内部に多数の管状物が設置された熱交換器の空間内を通過し、一方、炭化水素燃料の燃焼を保持するための酸素含有ガス(空気)は、熱交換器29の上部の導入部30からブロアーにより送風導入され、前記高温流の流れる管の外壁面との接触により加熱された空気は熱交換器29の下部から取り出されて前記の加熱空気導入部23より反応炉内に導入される。
【0007】
熱交換器29の管内を通過して間接的に冷却されたカーボンブラック含有ガス流は次に固体(カーボンブラック)とガス体に分離するための分離装置31に導入され、ここでカーボンブラックが分離される。
分離後のカーボンブラックは用途に応じて、粉末状のまま、あるいは造粒・乾燥工程を経てユーザーに提供される。
【0008】
加熱空気導入部23から炉内に導入される熱交換器29を通過した後の空気は前述のように温度が高いほどカーボンブラック生成反応にとっては熱的に有利に作用するので、総体的には冷却媒導入部27通過後のカーボンブラック含有ガス流の熱交換器29への供給時の温度はさらに高いものが要求される傾向にある。
【0009】
しかしながら、ガス流の温度が高くなるほど、例えば熱交換器29への入口温度を900℃くらいに上昇させて炉内導入空気の温度を上げようとすると、カーボンブラック含有ガス流が複数管の内部を通過するときに内部壁面に付着したカーボンブラック内に少量存在する未分解炭化水素の炭化反応あるいはガス流中に含まれる炭素酸化物(CO、CO2)からの還元分解反応により管内で炭化カーボン層が生成する。この炭化カーボン層は堆積が進むにつれて断熱材として作用するようになり、熱交換の効率を低下させるとともに、極端な場合には管の閉塞をも招来することになる。特に、カーボンブラック中に未分解の油状成分を多く含有する場合にはこの傾向はより顕著となる。さらにこのカーボン堆積層が管内壁面から脱離して製品に混在した場合、前述のようなカーボンブラックとしての特性(ゴムへの補強性や黒色性など)を示さない異物(コークス)として作用し、品質低下の原因ともなる。
【0010】
カーボンブラックの生成反応および熱交換器29の管内表面での炭化カーボン層の発生は、主に下記の化学反応が関与していると思われる。
CmHn→mC+n/2H2(カーボンブラック生成反応)
CH4+H2O⇔CO+3H2(水添分解)
2CO⇔CO2+C(炭素析出反応)
CO+H2⇔H2O+C(炭素析出反応)
上記の化学反応式において、後段の2つの式が炭化カーボン層の発生、成長に係わるものであって、いずれも可逆反応であるが、炭化カーボン層の発生する右辺への反応速度はその雰囲気温度が高い場合ほど大きくなる。すなわち炭化カーボンが管内に析出・堆積する可能性が大きくなることを意味する。
【0011】
上記の課題を解決する手段に対する従来技術としては、大別して次の3つの技術が開示されている。
(1)熱交換器29へのガス流供給温度を低く抑えて管内への炭化カーボン層の発生を制御し、この熱交換器通過後の予熱空気を別の熱発生源を通過させることにより所定の温度に加熱する(特許文献1、特許文献2など)。
(2)熱交換器29に導入する前にカーボンブラック含有ガス流中に内壁表面上への炭素層生成を減少させる防汚剤を添加する(特許文献3、特許文献4など)。
(3)熱交換器の管内壁をアニーリング処理することにより炭素付着物を減少させる(特許文献5など)。
【0012】
前述の炭化カーボン層の析出、堆積を減少させるための方法ではつぎのような欠点がある。
(1)ではカーボンブラック製造ラインとは全くの別の熱源発生装置、またはこれらに付随するバーナー部などが必要となるので設備面でのコストアップは避けられない。
(2)では原料炭化水素に対して付着防止用の第3成分を添加する必要があり、これに伴って第3成分導入ラインの設置、添加成分の導入によるコストアップがある。
(3)では管内壁をアニーリング処理するためのコストアップを避けることは不可能である。
【0013】
さらに加えて、管内に炭素層が付着、堆積して熱交換効率が低下する、あるいは内部閉塞による圧力損失が発生した場合には一端生産活動を停止し、付着、堆積した炭素層を高圧水を内壁面に噴霧してはぎ落とす、あるいはスチームおよび/または空気を導入することにより分解・燃焼除去するのが一般的である。
しかしながら、内部に設置された管の数が多く、この作業には多大の時間を要することから、中断を含めてこの炭素層の排除による製造時間の損失は極めて大きいものがある(管冷却時間も含めて通常数日を要する)。また、この除去作業はカーボンブラックの製造条件、すなわち内部での付着、堆積状況にも依存するが、2週間〜数ヶ月に1回必要である。
本願出願人はこれらの課題を解決する製造方法および製造装置を創製し、これを特願2001−350198号として出願した。
この発明の要旨は次の通りである。
先願請求項1の発明は、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程を設けると共に、熱交換工程の直前においてカーボンブラック含有ガス流に水を導入する工程を設けることにより、熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法に関するものである。
先願請求項2の発明は、
(A)燃料炭化水素導入管および酸素含有ガス導入管を備えた燃焼ガス発生部、原料炭化水素導入管を備えたカーボンブラック反応生成部および冷却水導入管を備えた反応停止部からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉
(B)反応停止部の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段
および
(C)前記熱交換手段の下板の下方に設けられた水導入手段よりなることを特徴とするカーボンブラックの製造装置に関するものである。
先願請求項3の発明は、前記熱交換手段の下板と水導入手段における水導入部位までの距離(L)に対する前記熱交換手段内の下板の直径(R)との比(L/R)が0.2〜1.0である請求項2記載のカーボンブラック製造装置に関するものである。
先願請求項4の発明は、反応炉への炭素質原料油の導入を停止し、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により生成した燃焼ガス流をそのまま熱交換工程の配管内に導入し、配管内の炭素質付着物を燃焼除去することを特徴とする熱交換系配管内に付着した炭素質付着物を除去する方法に関するものである。
【0014】
すなわち、本出願人より開示された特願2001−350198号の技術(以下、先願技術という)はカーボンブラック生成反応後のプロセスガスでは高温になるほど炭素が析出・堆積する反応速度が大きくなり、熱交換器29の複数の管内に炭素質物質が付着・成長することが予測されるが、これを回避するために熱交換器29の下板よりも上流側(反応炉側)から冷却媒、たとえば水を熱交換器29に入るすぐ前、より詳しくは下板直径の0.2〜1.0倍の範囲で導入し、この水が高温の雰囲気内で瞬間的に爆発的に水蒸気に膨張するときの圧力変化により管内の表面上に析出・堆積して形成された炭素層を剥落させ、層への成長を妨げることのできるカーボンブラック製造プロセスおよび製造装置であり、加えて炭素層が形成された際に生産活動の停止期間を極力短縮することができるプロセスに関するものである。
【0015】
しかしながら、この本出願人が出願した先願技術においては生産されるカーボンブラックの品質、特にカーボンブラックの構成粒子のつながり(当業者ではストラクチャーと呼び、通常DBP吸収量で評価される)が小さい(ストラクチャーが低い)特性を有し、これに付随して付着性の高いカーボンブラックでは熱交換器29の複数管内表面への炭素層への付着、堆積を効果的に回避できないことが判明した。
【0016】
【特許文献1】
特公平2−385号公報
【特許文献2】
特開平11−293141号公報
【特許文献3】
特開平5−222378号公報
【特許文献4】
特許第2944882号公報
【特許文献5】
特表平11−514681号公報
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、付着性の高いグレードのカーボンブラックであっても、反応チューブ内に付着、堆積する炭素層の形成を大幅に遅らせる点にある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本出願人はこの原因についてプロセス、装置から解明を進め、これが熱交換器29へのカーボンブラック含有ガス流に導入される水の導入位置および導入量に関連することを見い出し、本発明を完成させたものである。すなわち、本発明は、先願技術より水の導入位置をもっと上流側としたものである。
本発明の第1は、炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程であって、該熱交換工程は、反応停止帯域の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、前記酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段をもつ熱交換工程であり、カーボンブラック含有ガス流に水を導入する位置を熱交換工程の上流側であって、かつ熱交換手段の下板の直径(R)の1.5〜10.0倍の距離に相当する位置とすることにより熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法に関する。
本発明の第2は、前記カーボンブラック含有ガス流中への水の導入が間欠導入である請求項1記載のカーボンブラックの製造方法に関する。
本発明の第3は、
(A)燃料炭化水素導入部(たとえば燃料炭化水素導入管)および加熱空気導入部(たとえば加熱空気導入管)を備えた燃焼ガス生成帯域、原料炭化水素導入部(たとえば燃料炭化水素導入管)を備えた反応帯域(カーボンブラック生成部)および冷却媒導入部(たとえば冷却媒導入管)を備えた反応停止帯域からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉
(B)反応停止帯域の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、空気の導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段
および
(C)前記反応停止帯域と前記熱交換手段との間の空間内に設けられた水導入手段よりなり、かつ水導入口の位置が下記式を満足するものであるカーボンブラックの製造装置に関する。
L/R=1.5〜10.0
L:熱交換手段の入口から水導入口までの距離
R:熱交換手段の下板の直径
すなわち、この発明の特徴は、熱交換工程の入口部分と反応停止工程の間に水を導入すること、そしてその水の導入口は熱交換工程の入口からLだけ離れた位置とするものである。図2の場合L=L1+L2である。
本発明においても、本出願人により開示された熱交換器29の複数管内への炭素層の付着、堆積が進行した場合で先願技術請求項4に記載の方法が適用できることはいうまでもない。
【0019】
本発明は先願技術と同様な熱交換器29と分離装置31を備えた製造装置において、第1に水の導入位置が異なる。第2に水の導入方法が間欠的である方が好ましいことを新しく見出した点で異なり、この相違点が例えばHAF級グレード低ストラクチャーカーボンブラックなどの付着性の大きい製品に有効な条件となるのであるが、その理由は次のようなものであろうと推定している。
1.水の導入位置が先願技術では熱交換器29に接近しすぎ、また連続的に導入していたために熱交換器29の複数管内への水導入による瞬間的・爆発的蒸発による急激な圧力の相対差が小さく、このために水導入量が多いことによる複数管内の流動速度の上昇にもかかわらず付着性の高いグレード(特に低ストラクチャー品)に対して効果が小さかった。
2.これに対して本請求項2の発明では水の導入を間欠的に、すなわち導入する時間と導入しない時間を設定することにより2つの状態での相対的な圧力差を大きくすることができ、これが付着性の大きなグレードのカーボンブラックに対して有効に作用した。
3.水の導入を間欠的としたことにより、水の使用量が少なくても、また水の導入圧力が小さくても先願技術に優るとも劣らぬ効果を奏することができた。
【0020】
熱交換用の複数管空間に反応停止帯域から出たカーボンブラック含有ガス流を導入する以前の空間内において水導入手段を備えることが本発明の要件の1つであるが、水の導入形態はなるべく噴霧させないままで導入するのがより好ましい。これはあまり水粒子が小さすぎると爆発的に蒸発するときの圧力が弱くなるためである。また水の導入手段としては複数管状物の導入口面である底面よりも上流側とするがこの距離が長すぎる(L/R>10)と導入された水蒸発時の圧力が所期の圧力に到達しないために、効果が発現されず、逆に近すぎる(L/R<1.5)と系の全体にその影響を及ぼすことができなくなることから、底面と水導入部までの距離(L)と熱交換器29内の下板の直径(R)との比(L/R)が1.5〜10.0となる位置に水導入部位を設置するのが好ましい。また、水導入口の向きとしては高温プロセスガス流の流れ方向に対抗する向きの方が望ましい。
【0021】
なお、先願技術による熱交換器29の複数管内への炭素層の付着、堆積の防止(あるいは遅延)は付着性の小さなグレードのカーボンブラックに対しては有効であり、本技術の適用も可能である。また、本発明によれば、付着性の小さいカーボンブラックの場合でも、導入する水量を減少できるので流動ガス体の容積を減少させることができ、また連続的な水導入による熱交換器29への継続的圧力の付与を回逃できるのでより望ましい。間欠的に導入される水は1分〜5分間隔で行い、導入時間は1秒〜10秒が好ましい条件である。導入する水の圧力は0.3〜0.8MPaの範囲とするのが望ましく、また1時間当りの水量は20〜150リットルとするのが好ましい。なお、図面では熱交換器は縦型のものを示しているが横型であってもよい、したがって図面は反応炉が横型で熱交換器が縦型で全体としてL字形になっているが、これに限るものではなく、曲線状であってもよい。
【0022】
【実施例】
次に、実施例、比較例を示しながらさらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。
【0023】
例1〔熱交換手段での水導入の有無の比較〕
図3、図4、図5および図6に示した製造装置(詳細は本出願人の特許第2931117号明細書および図面参照)を用いて、低ストラクチャーカーボンブラック(商品名:旭#70L)を製造した。この製造装置の各構成部の寸法は次の通りとした。
可燃性流体導入室2
内径 450mmφ
長さ 400mm
加熱空気導入管3
長辺 400mm
短辺 100mm
加熱空気円筒4
内径 250mmφ
長さ 300mm
収れん室8
上流端内径 370mmφ
下流端内径 80mmφ
長さ 1600mm
角度(収れんの角度) 5.3°
燃料油導入装置
燃料油導入管72の内径 7mmφ
高圧空気導入導管73の内径 13mmφ
空気圧力 0.3MPa
低圧・低温空気導入導管74の内径 22mmφ
空気圧力 0.05MPa
反応室12
内径 140mmφ
【0024】
また、反応継続兼急速冷却室13内でのa〜hの冷却水噴霧装置は、実開昭58−140147号公報(出願人:旭カーボン株式会社)に開示されていると同様構造のものを取り付けた。
原料油および燃料油としては、表1に示した通りの性状および組成を有するものを使用した。
【0025】
【表1】
【0026】
カーボンブラック製造条件は表2に示したように操作し、低ストラクチャーHAF級カーボンブラックを製造した。これと同時に、このときのカーボンブラックの物理化学特性についても示した。
【0027】
【表2】
【0028】
熱交換器29における運転条件は次の通りである。
熱交換器導入総湿りガス量 8350Nm3/hr
熱交換器入口ガス温度 880℃
熱交換器出口ガス温度 560℃
熱交換器入口空気温度 70℃
熱交換器出口空気温度 750℃
チューブ(配管)本数 84本
チューブ長さ 14m
熱交換器内チューブ直径 8cm
熱交換器下板直径 1.5m
実施例の場合
水導入手段:
1)設置位置・・・図2において熱交換器29および燃焼ガス通路での中心線を描き、熱交換器29の下板からの距離が下板直径(R)の3.5倍(5.25m)の位置
2)間欠条件
・3分間隔で4秒間導入
3)水噴霧チップ(当業界で極く一般的なもの2個を使用)
1200リットル/hrの水供給能力をもつ水噴霧チップを2個使用するので、合計2400リットル/hrの水供給能力がある。これを用いて圧力0.5MPaで、3分間隔で4秒間水を導入する。
4)導入水量
1時間当りの導入時間は4×(60÷3)=80秒であるから水導入量は1時間当り2400×(80÷3600)=53.3、すなわち53.3リットル/hr
対照例(先願技術:特願2001−350198号)の場合
水導入手段:熱交換器の下板の下方筒状体の中心部に水導入手段を設けた。水導入手段の位置は前記下板からの距離が下板直径(R)の0.6倍(0.9m)の箇所とした。水導入量は400リットル/hr、水導入圧力は0.3MPaとした。
比較例の場合
対照例において水を全く導入しない以外は対照例と同一。
【0029】
低ストラクチャーのHAF級カーボンブラックを前記製造装置と製造条件を用いて生産した。この生産において前記の2条件での水導入および比較例として全く水を導入しない場合について熱交換器29の複数管内での炭素物質の付着、堆積状況について調査した。
評価は熱交換器出口温度の変化、すなわちある温度を下回った場合に限界と判断する、ならびに管内での炭素層の付着、堆積により入口側と出口側の圧力差が大きくなることから、複数管の入口の上流側と出口の下流側にそれぞれ圧力計を設置し、これら2つの圧力計の差ΔPの測定から判断するという2つの手段により行った。
【0030】
【表3】
【表4】
【0031】
熱交換器29を通過した出口空気温度が720℃を下回ったときを熱交換器の使用限界、すなわち熱交換器内の配管(チューブ)に炭素層が形成され、これにより熱交換効率が低下したものと判断すると、次の結果となる。
比較例(水導入なし)
24時間経過した頃から熱交換器出口温度の低下と圧力差の上昇が見られ、時間の経過についてこの現象は進行して192時間(8日)後には判定基準の720℃まで低下した。このときの圧力差は8000Paであった。
この期間は先願技術での30日と比較してかなり短くなっているが、これは生産したグレードが“付着性の高い”低ストラクチャーという性質によると考えられる
対照例(先願技術)
120時間(5日)経過後に熱交換器出口温度では明確ではないが圧力差において大きくなる傾向が発現し、192時間(8日)では温度低下と圧力上昇の両者が認められ、チューブ内での炭素層形成の進行が見出された。この炭素層形成の進行により288時間(12日)経過後には判定基準の720℃までの温度低下に要する時間は1.5倍と長くなっているが、先願技術において見られた効果は発現されなかった。
これはカーボンブラックが付着しやすい性質を有しており、チューブ内の通路に導入されるまでの時間が短く、また導入水量が多いために完全な水の蒸発反応がなされず、微細水滴と一緒に移動したカーボンブラックがチューブ内に付着することが一因として考えられる。
実施例
熱交換器29の出口温度および圧力差は表3、表4に見られるようにいずれも狭い範囲で移動するのみで480時間(20日)経過後においても何ら問題なく移動していることが認められる。
【0032】
【発明の効果】
先願技術は付着性の小さい一般的なグレードの生産においては熱交換器内の複数の管内への炭素物質の付着、堆積を防止あるいは遅延させることができるが、付着性の大きなグレードに対してその効果の発現は小さいということが判明した。
これに対して、導入する水の位置、方法および量について種々検討を加えることにより付着性の大きいグレードに関してもチューブ内に付着、堆積する炭素層の形成を大幅に遅延させることができ、これにより製造工程での生産効率の向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【図1】カーボンブラックの概略的製造工程フローシートを示す。
【図2】本発明の要点である熱交換系の1例を示す断面図である。
【図3】本発明でのカーボンブラック製造に用いた反応炉の縦断正面説明図である。
【図4】図3のA−A矢視における断面図である。
【図5】図3の前頭部および燃料導入手段を示す部分拡大図である。
【図6】図5のB−B矢視における断面図である。
【符号の説明】
1 カーボンブラック反応炉
2 可燃性流体導入室
3 加熱空気導入管
4 加熱空気導入用円筒
5 整流板
6 空間
7 燃料油噴霧手段
8 収れん室
9 バーナータイル
10 原料油噴霧装置
11 原料油導入室
12 反応室(反応帯域)
13 反応継続兼急速冷却室(反応停止帯域)
21 反応炉
22 燃料炭化水素導入部
23 加熱空気導入部
24 燃焼ガス生成帯域
25 原料油
26 反応帯域
27 冷却媒導入部
28 反応停止帯域
29 熱交換器
30 空気導入部
31 分離装置
51 リング
71 燃料油噴霧チップ
72 燃料油導入管
73 酸素含有ガス導入管(高圧空気導入導管)
74 酸素含有ガス導入管(低圧低温空気導入導管)
75 酸素含有ガスの導管
76 ガス体の導管
a〜h 急冷水圧入噴霧手段(冷却水噴霧装置)
Claims (3)
- 炭化水素燃料と酸素含有ガスとの反応により燃焼ガス流を生成せしめる燃焼ガス流生成工程と、前記燃焼ガス流中に炭素質原料油を噴霧導入し、原料油の熱分解または不完全燃焼によりカーボンブラックを生成させるカーボンブラック生成工程と、前記で生成したカーボンブラック含有反応ガス流中に冷却媒を導入することにより反応を停止させる反応停止工程と、前記冷却後のカーボンブラック含有ガス流から固体分(カーボンブラック)を捕集分離させる分離工程とからなるオイル・ファーネスカーボンブラックの製造方法において、前記反応停止工程と分離工程との間に前記燃焼ガス流生成工程に用いる前記酸素含有ガスを、反応停止工程から出たカーボンブラック含有ガス流との間で熱交換を行わせる熱交換工程であって、該熱交換工程は、反応停止帯域の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、前記酸素含有ガスの導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段をもつ熱交換工程であり、カーボンブラック含有ガス流に水を導入する位置を熱交換工程の上流側であって、かつ熱交換手段の下板の直径(R)の1.5〜10.0倍の距離に相当する位置とすることにより熱交換系内に圧力変化を発生させることを特徴とするカーボンブラックの製造方法。
- 前記カーボンブラック含有ガス流中への水の導入が間欠導入である請求項1記載のカーボンブラックの製造方法。
- (A)燃料炭化水素導入部および加熱空気導入部を備えた燃焼ガス生成帯域、原料炭化水素導入部を備えた反応帯域および冷却媒導入部を備えた反応停止帯域からなる全体が耐火物で構成されたカーボンブラック反応炉
(B)反応停止帯域の下流側に入口開孔と出口開孔を有する複数の管状物が内部に配列され、前記開孔以外は上板と下板により密閉され、空気の導入口と排出口を備えた筒状の熱交換手段を
および
(C)前記反応停止帯域と前記熱交換手段との間の空間内に設けられた水導入手段よりなり、かつ水導入口の位置が下記式を満足するものであるカーボンブラック製造装置。
L/R=1.5〜10.0
L:熱交換手段の入口から水導入口までの距離
R:熱交換手段の下板の直径
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JP2003065398A JP4462834B2 (ja) | 2003-03-11 | 2003-03-11 | カーボンブラックの製造方法およびその装置 |
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