JP4461340B2 - リペアラブル組成物およびそれを用いたアウターバンプ補強剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加熱硬化後、さらに高温にさらすと、再溶融する性質を有し、リペア性を有するリペアラブル組成物(リペアラブルレジン)に関する。
【0002】
また、本発明は、半導体装置実装用アウターバンプ補強剤に関する。さらに詳しくは、無溶剤で使用でき、作業性に優れ、塗布後に簡易にタックフリー化でき、バンプ接合部の接合性を阻害せず、半導体装置を実装対象基板へ接合させたのちの接合強度を大きくすることができ、かつ、リペア性に優れた一液型の半導体装置実装用アウターバンプ補強剤に関する。
【0003】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
液状の熱硬化性樹脂組成物は、電気・電子部品の接着・接合、封止など、さまざまな用途に用いられている。しかし、熱硬化性樹脂は、硬化すると3次元網目構造を形成するため、再溶融させることができない。したがって、熱硬化性樹脂組成物を用いて部品の接合などを行なった場合には、のちに取り外す必要が生じても取り外すことが著しく困難であるという問題がある。
【0004】
硬化させたのちに取り外す必要が生じる熱硬化性樹脂組成物として、たとえば半導体装置実装用アウターバンプ補強剤があげられる。以下、半導体装置実装用アウターバンプ補強剤を例にとって説明する。
【0005】
多ピン化、小型・薄型化に対応する半導体装置として、BGA(ボールグリッドアレイ)半導体装置やフリップチップ半導体装置などが存在する(以下、半導体装置がBGA半導体装置である場合について説明する)。
【0006】
BGA半導体装置は、図1の(a)に示すように、シリコンチップが基板上に封止剤で封止された状態で設置され、アウターバンプ(該基板の片面に一方向に突出した多数のハンダバンプ)を有するものである。
【0007】
BGA半導体装置は、通常、110〜130℃程度で10〜24時間程度の乾燥工程を経て真空パックされたのち、より大きな実装対象基板(マザーボード)上に実装される。
【0008】
実装は、アウターバンプをマザーボード上に配置されている接続端子と接触させ、加熱(通常は210〜250℃、以下この温度をリフロー温度ともいう)により該バンプを溶融させ、該バンプと該接続端子とを接合する(この工程をリフロー工程という)ことにより行なわれる。
【0009】
しかし、アウターバンプで接合されるBGA半導体装置とマザーボードとの熱膨張係数が異なるため、リフロー工程が終了して冷却されると、接合部に集中して応力やひずみがかかる。このため、温度サイクル試験の実施や衝撃により、接合部が破損しやすい。
【0010】
そこで、BGA半導体装置をマザーボードに実装する場合、BGA半導体装置とマザーボードとの接合強度を強化するために、実装されたBGA半導体装置とマザーボードとの隙間に、毛管現象を利用して熱硬化性樹脂を注入する方法が行なわれている(特開平4−219944号公報)。
【0011】
しかし、この補強方法では、実装後のBGA半導体装置に不良がある場合、硬化した樹脂が存在するため、リフロー温度に昇温させても、不良なBGA半導体装置を取り外して取りかえること、すなわちリペアすることができないという問題がある。また、前記方法には、樹脂を注入する工程を追加する必要があるだけでなく、実装後に充分なフラックス洗浄が必要という問題もある。
【0012】
前記問題に対しては、アウターバンプの根元を厚く、先端ほど薄く囲むように樹脂を塗布することにより接合部を補強する方法が提案されている(特開平9−232373号公報)。
【0013】
この方法によると、BGA半導体装置とマザーボードとの熱膨張係数の差により発生し、アウターバンプの接合部(以下、バンプ接合部ともいう)に集中する応力を、アウターバンプ全体に分散させることができ、温度サイクル試験の結果がよくなるなどの効果が得られる。
【0014】
しかし、この補強方法では、バンプ接合部の補強にはなるものの、BGA半導体装置とマザーボードとの接合がハンダのみで行なわれているため、補強が充分ではない。そのため、温度サイクル試験の結果はよくなるが、必ずしも充分であるといえるものではなく、また、衝撃により生じる破損の問題を解決するものではない。さらに、溶剤を使用しているため、対環境性に優れているとはいい難い。
【0015】
したがって、加熱硬化後に不良なBGA半導体装置をリペアすることができ、かつ樹脂を注入する工程や実装後のフラックス洗浄を省くことのできるリペアラブル組成物が望まれている。また、かかるリペアラブル組成物への要望は、前記補強剤の分野にとどまらず、各種分野で多岐にわたっている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記実状に鑑み、部品の接合などに用いて硬化させたのちに取り外す必要が生じたときに取り外しが可能なリペアラブル組成物を提供するためになされたものである。また、簡易に使用でき、バンプ接合部の接合性を阻害せず、BGA半導体装置をマザーボードへ接合させたのちの接合強度を大きくすることができ、かつ、リペア性に優れた半導体装置実装用アウターバンプ補強剤を提供するためになされたものである。すなわち、本発明は
(A)2官能エポキシ化合物、
(B)2官能フェノール化合物および
(C)リン系触媒、1,2−アルキレンベンズイミダゾール(TBZ)および2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール(NPZ)から選ばれた1種または2種以上
を含有し、(A)成分と(B)成分とが
(A)成分中のエポキシ基のモル数と(B)成分中のフェノール性水酸基のモル数との比が1/0.8〜1/1.2
となるように配合され、5℃で1月間密封状態で保存しても結晶が析出しないリペアラブル組成物(請求項1)、
(A)成分のうちの30重量%以下を1官能エポキシ化合物におきかえた請求項1記載のリペアラブル組成物(請求項2)、
(B)成分のうちの1〜20重量%を3官能以上のフェノール化合物におきかえた請求項1または2記載のリペアラブル組成物(請求項3)、
さらに、(D)シリコーン系消泡剤を含有する請求項1、2または3記載のリペアラブル組成物(請求項4)および
請求項1、2、3または4記載のリペアラブル組成物からなる半導体装置実装用アウターバンプ補強剤(請求項5)
に関する。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明のリペアラブル組成物に使用する2官能エポキシ化合物(A)としては、分子中にエポキシ基を2つ有するものであればとくに限定なく使用し得るが、低粘度のものほどリペアラブル組成物の粘度を低くすることができる点で好ましい。また、結晶性のものであってもリペアラブル組成物としたときに結晶化しない場合には用いることができる。また、半導体装置実装用アウターバンプ補強剤として用いる場合には、脂肪族系のものより芳香族系のものの方が、表面張力が高い点で好ましい。
【0018】
本発明のリペアラブル組成物に用いることのできる2官能エポキシ化合物(A)としては、たとえばカテコールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、モノ−tert−ブチルヒドロキノンジグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステルなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類、ジメチロールシクロヘキサンジグリシジルエーテル、Celloxide2021P(商品名、ダイセル化学工業(株)製)、リモネンジオキシドなどの脂環式ジエポキシ化合物類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンジグリシジルエーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジグリシジルエーテルなどのビスフェノール型エポキシ化合物類およびこれらが部分縮合したオリゴマー混合物(ビスフェノール型エポキシ樹脂類)、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンジグリシジルエーテル、テトラメチルビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルジグリシジルエーテルなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類や脂環式ジエポキシ化合物類、とくにカテコールジグリシジルエーテルやレゾルシンジグリシジルエーテルが、粘度と表面張力とのバランスがよく、前記補強剤などの低粘度、高表面張力を要する用途に使用するのに適している。前記補強剤に使用する場合、その他のものは、補強剤の粘度調整などのために適量を用いるのがよい。また、リペアラブル組成物の貯蔵安定性、タックフリー性、リペア性、硬化による接着・接合の強度などの点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテルが好ましく、とくに低粘度であることからビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
なお、前記補強剤として用いる場合には,得られるリペアラブル組成物の粘度を低くするために、(A)成分中70重量%(以下、%という)以上が前記一核体芳香族ジエポキシ化合物類であることが好ましい。
【0020】
本発明のリペアラブル組成物は、さらなる低粘度化のために、また、架橋反応がおこるのを防止し、リペアするときに組成物が再溶融する温度を下げさせるために、(A)成分の一部を1官能エポキシ化合物(A−1)(以下、(A−1)成分ともいう)におきかえてもよい。
【0021】
1官能エポキシ化合物(A−1)としては、たとえばp−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族モノエポキシ化合物類があげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらのうちでは、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、sec−ブチルフェニルグリシジルエーテルが好ましく使用される。
【0022】
(A)成分の一部を(A−1)成分におきかえて得られる混合物(以下、(A)/(A−1)混合物ともいう)を用いる場合には、リペアラブル組成物の性能を低下させることのないように(A)/(A−1)混合物中、(A−1)成分が30%以下であるのが好ましい。また、(A−1)成分を用いることによる粘度低下の効果が明確に得られる点から、5%以上であるのが好ましい。
【0023】
なお、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)/(A−1)混合物)は、25℃での粘度が500cP以下であるのが、リペアラブル組成物の粘度が低くなる点から好ましい。
【0024】
2官能フェノール化合物(B)は、2官能エポキシ化合物(A)の硬化剤として使用される分子中にフェノール性水酸基を2つ有する成分である。2官能であるためエポキシ基との付加反応により直鎖状の熱可塑性ポリマーとなることができる。2官能フェノール化合物(B)としては、溶融時の粘度が低く、結晶性が低く、(A)成分あるいは(A)/(A−1)混合物に硬化剤としての必要量を溶解させたときに結晶化しないものが好ましく、また、前記補強剤として使用するときは、表面張力の大きいものが好ましい。
【0025】
2官能フェノール化合物(B)の具体例としては、たとえばカテコール、レゾルシン、ヒドロキノンなどのベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールAD)などのビスフェノール類、ジヒドロキシナフタレンなどの縮合環を有する化合物、ジアリルレゾルシン、ジアリルビスフェノールA、トリアリルジヒドロキシビフェニルなどのアリル基を導入した2官能フェノール化合物などがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらのうちでは、前記ベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジヒドロキシ化合物類が、粘度、接着性などの特性をバランスよく有する点から好ましい。とくに前記補強剤として使用する場合には、カテコール、レゾルシンが結晶性、粘度、表面張力のバランスがよい点から前記記載順に好ましい。
【0029】
(C)成分であるリン系触媒が用いられる。
【0034】
リン系触媒は、エポキシ基のアニオン重合よりもフェノール性水酸基とエポキシ基との付加反応に対して優先的に触媒作用を示すため、架橋構造を形成するのを防ぐことができ、リペア性をよくすることができる。
【0035】
前記リン系触媒の例としては、3個の有機基を有する有機リン系化合物があげられ、その具体例としては、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、シクロヘキシルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体、テトラフェニルホスホニウム−テトラフェニルボレートなどがあげられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。これらのうちでは適度な触媒作用を有し、リペアラブル組成物を貯蔵安定性のよい一液型の組成物とすることができるなどの点から、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体が好ましい。
【0036】
一方、一般にイミダゾール系触媒は、他のアミン系触媒と同様に、エポキシ基のアニオン重合のよい促進剤として働くため、本発明には不適である。しかし、大きな立体障害を有し、芳香環がイミダゾール環に直接結合するなどしてイミダゾール環を構成する窒素原子の電子密度が低下し、求核性が著しく抑えられている1,2−アルキレンベンズイミダゾール(TBZ)および2−アリール−4,5−ジフェニルイミダゾール(NPZ)は、例外的に前記アニオン重合の促進効果がきわめて小さい。そのためエポキシ基とフェノール性水酸基との付加反応に対して優先的に触媒作用を示し、本発明に好適に使用できる。
【0037】
前記(C)成分を用いることで、110〜130℃でタックフリーではあるが反応性を有する段階まで硬化反応を進行させることができ、たとえば前記補強剤として用いる場合には、後述するようにBGA半導体装置を乾燥させる際にタックフリーではあるが反応性を有する段階まで硬化反応を進行させることもできる。なお、110〜130℃で、タックフリーではあるが反応性を有する段階まで硬化反応を進行させるのに要する時間は、一般に12〜16時間である。
【0038】
(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)成分および(A−1)成分)および(B)成分((B−1)成分が使用されるときは(B)成分および(B−1)成分)は、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)成分および(A−1)成分)中のエポキシ基のモル数と(B)成分((B−1)成分が使用されるときは(B)成分および(B−1)成分)中のフェノール性水酸基のモル数との比が1/0.8〜1/1.2好ましくは1/0.9〜1/1.1となるように配合して使用される。(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)成分および(A−1)成分)中のエポキシ基のモル数と(B)成分((B−1)成分が使用されるときは(B)成分および(B−1)成分)中のフェノール性水酸基のモル数との比が1/0.8より大きくなる場合には、組成物の硬化後の強度が低下しやすく、たとえば前記補強剤として用いる場合には、BGA半導体装置をマザーボードへ接合させたのちの接合強度が低下しやすくなり、1/1.2より小さくなる場合にも同様の傾向が生じやすい。リペアラブル組成物として充分に機能するためには、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)成分および(A−1)成分)中のエポキシ基のモル数と(B)成分((B−1)成分が使用されるときは(B)成分および(B−1)成分)中のフェノール性水酸基のモル数との比が1/1に近いほど好ましい。
【0039】
(C)成分の使用量は、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)成分および(A−1)成分)および(B)成分((B−1)成分が使用されるときは(B)成分および(B−1)成分)として使用する化合物の種類や組成、使用する(C)成分の種類により異なるため、適宜好ましい量が選択される。通常は、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)/(A−1)混合物)100重量部(以下、部という)に対して、0.1〜1部、さらには0.1〜0.8部、とくには0.2〜0.6部であるのが、接着・接合強度、リペア性などの点から好ましい。とくに前記補強剤として使用する場合には、0.1部未満では、後述する乾燥工程においてタックフリー化しにくくなる傾向が生じやすくなり、1部をこえると、該乾燥工程で反応が進みすぎ、タックフリー化したがリフロー工程において再溶融しにくくなるなど、流動性が不足する傾向が生じやすくなる。
【0040】
本発明のリペアラブル組成物は、5℃で1月間密封状態で保存した場合にも結晶が析出しないことが必要である。前記のごとき条件で保存した場合に結晶が析出するということは、より高い温度で保存することが必要であり、製品ライフが短かくなることを意味する。結晶が析出したものをそのまま用いると、塗布作業性が悪化したり、リペアラブル組成物が不均一なために本来の性能を得ることができなくなったりする。
【0041】
本発明のリペアラブル組成物には、さらに、シリコーン系消泡剤(D)を添加することができる。シリコーン系消泡剤(D)を添加することにより、たとえば前記補強剤として使用する場合などには、後述する半導体装置の乾燥工程において補強剤をタックフリー化する際に、補強剤自身の表面張力によりアウターバンプの頭頂部が露出するのを促す効果が得られる。
【0042】
シリコーン系消泡剤(D)のうちでは、揺変剤などを含有しないものが揺変剤を含有するものやエマルジョン系のものよりも、前記アウターバンプの頭頂部が露出するのを促す効果が大きい点から好ましい。
【0043】
シリコーン系消泡剤(D)としては、たとえばST86PA(商品名、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)などの純粋なシリコーン系消泡剤が好ましい。
【0044】
また、(D)成分の使用量は、(A)成分((A−1)成分が使用されるときは(A)/(A−1)混合物)100部に対して、0.005〜0.1部、さらには0.01〜0.05部であるのが好ましい。0.005部未満では、(D)成分を使用することによる効果が得られにくくなる傾向が生じやすく、0.1部をこえて使用しても、とくに問題はないが、たとえば前記アウターバンプの頭頂部が露出するのを促す効果がそれ以上よくなることはない。
【0045】
本発明のリペアラブル組成物には、本発明の効果が損われない範囲で3官能以上のエポキシ化合物や1官能のフェノール化合物が不純物などとして入っていてもよいがその量は少ない方が好ましい。
【0046】
また、本発明のリペアラブル組成物には、他にも本発明の効果が損われない範囲で各種カップリング剤、充填剤、顔料、レベリング剤などのその他の添加剤が含まれていてもよい。
【0047】
また、流動性がそれほど重要でない用途に本発明のリペアラブル組成物を用いる場合には、フィラーを添加してもよい。フィラーを用いる場合には、組成物の流動性は低下するが、硬化後の熱膨張係数を低下させる効果がある。
【0048】
前記フィラーとしては、比較的流動性を低下させにくいという点から、粒子の形状が球状であり、比重の大きなものが好ましい。このようなものとしては、たとえば球状溶融シリカ、鉄などの球状金属粉などがあげられる。また、平均粒子径としては、5〜30μmのものが好ましい。
【0049】
前記フィラーの使用量は、用途に応じて選択すればよく、とくに制限はないが、配合物における充填率が1〜70%、さらには30〜60%となるような量が好ましい。
【0050】
本発明のリペアラブル組成物は、前述したように、とくに半導体装置実装用アウターバンプ補強剤として好ましく用いられる。(A)2官能エポキシ化合物および(B)2官能フェノール化合物を所定の割合で含有し、触媒として前記(C)成分を使用するため、溶剤を用いなくても低粘度の液状であり、たとえばBGA半導体装置のアウターバンプ面に塗布しやすい。また、リフロー工程の前に行なわれるBGA半導体装置を110〜130℃に加熱して乾燥させる工程を利用して、タックフリーではあるが反応性を有する段階まで硬化反応を進行させることができ、そのため乾燥工程後には、輸送やその後の作業に適した状態にすることができる。また、乾燥工程中は高温であるため補強剤の粘度が大きく低下するうえに表面張力が大きいため、前記乾燥工程でアウターバンプの頭頂部が補強剤から図1(c)に示すように露出し、該頭頂部に補強剤が残留しないようにすることができ、マザーボードとアウターバンプとの接合を阻害することもない。さらに、タックフリー状態となった補強剤は、リフロー工程でリフロー温度に昇温されるとアウターバンプとともに再溶融するため、BGA半導体装置のアウターバンプが設けられている面およびマザーボードの接合面を補強剤によって接合することができ(図1(d)参照)、BGA半導体装置をマザーボードへ接合させたのちの接合強度を大きくすることができる。しかも、該補強剤は、前記(A)成分および(B)成分を所定の割合で含有し、触媒として(C)成分を使用するため、反応後も熱可塑性ポリマーとなり、実装後にリフロー温度に再加熱して再溶融させることができ、その際に不良なBGA半導体装置を取り外して取りかえる(リペアする)ことができる。なお、図1は、BGA半導体装置に本発明の補強剤を使用するときの実施の形態を示す一連の断面説明図であり、(a)は補強剤が塗布される前のBGA半導体装置を表わし、(b)はアウターバンプ面に補強剤が塗布された状態のBGA半導体装置を表わし、(c)は乾燥工程により補強剤がタックフリー化した状態のBGA半導体装置を表わし、(d)はリフロー工程によりマザーボードに実装された状態のBGA半導体装置を表わす。また、図中、1はBGA半導体装置、2は封止剤、3は基板、4はアウターバンプ、5はシリコンチップ、6は補強剤、7はタックフリー化した補強剤、8はマザーボードの一部を示す。
【0051】
本発明のリペアラブル組成物の好ましい態様としては、前記補強剤として用いる場合には、(A)成分としてレゾルシンジグリシジルエーテル100部に対し、(B)成分としてカテコール40〜50部、(C)成分としてジシクロヘキシルフェニルホスフィン0.2〜0.6部配合したもの、レゾルシンジグリシジルエーテル/p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテルが重量比で70/30〜100/0である(A)/(A−1)混合物100部に対し、(B)成分としてカテコール35〜50部、(C)成分としてトリ−p−トリルフェニルホスフィン0.2〜0.6部配合したもの、これらの配合物にさらに(D)成分としてST86PAを0.01〜0.05部添加したものなどがあげられる。これらの組成物は、25℃で粘度が200〜500cPの液状である。
【0052】
【実施例】
つぎに、本発明のリペアラブル組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
なお、以下の実施例および比較例で使用する各成分とその略号との関係を以下に示す。
【0054】
(A)成分
デナコール EX−201:ナガセ化成(株)製、レゾルシンジグリシジルエーテル、エポキシ当量126g/eq
デナコール EX−203:ナガセ化成(株)製、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、エポキシ当量114g/eq、高結晶性
EPICLON 830LVP:大日本インキ化学工業(株)製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ当量162g/eq)
セロキサイド 2021P:ダイセル化学工業(株)製、脂環式エポキシ樹脂、エポキシ当量135g/eq
(A−1)成分
デナコール EX−146:ナガセ化成(株)製、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、エポキシ当量226g/eq
(C)成分
TPTP:北興化学工業(株)製、トリ−p−トリルホスフィン
TOTP:北興化学工業(株)製、トリ−o−トリルホスフィン
DCPP:北興化学工業(株)製、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン
TPP−S:北興化学工業(株)製、トリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体
(D)成分
ST86PA:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、シリコーン系消泡剤(無溶剤、透明タイプ)
SH5500:東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製、シリコーン系消泡剤(懸濁型)
(その他)
スミエポキシ ELM−100:住友化学工業(株)製、3官能性グリシジルアミン、エポキシ当量107g/eq
ノバキュア HX−3941HP:旭チバ(株)製、マイクロカプセル型イミダゾールアダクト系潜在性硬化剤
キュアゾール 2PHZ−CN:四国化成工業(株)製、1−シアノエチル−2−フェニル−4,5−ジ(2−シアノエトキシ)メチルイミダゾール
FB−201S:電気化学工業(株)製、球状溶融シリカ、平均粒径16μm
また、以下の実施例および比較例で用いた評価方法を以下に示す。
【0055】
(作業性)
組成物の粘度が25℃で500cP未満のものを◎、500cP以上、2000cP未満のものを○、2000cP以上、5000cP未満のものを△、5000cP以上のものを×とした。
【0056】
なお、調製した組成物を5℃で1月間密封状態で保存したときに結晶が析出したものには「結晶化」と、ゲル化したものには「ゲル化」と記し、他の評価は行なわなかった。前記粘度測定および以降の評価は、5℃で1月間密封状態で保存後も結晶の生成やゲル化のおこらなかったもののみについて行なった。
【0057】
(貯蔵安定性)
40℃で2日放置後の組成物の粘度が、該放置前の粘度の5倍未満のものを○、5〜10倍のものを△、10倍より大きいものを×とした。
【0058】
(タックフリー性)
適量の組成物を図1(b)に示すようにBGA半導体装置に塗布し、125℃で12時間放置後に、指触により評価し、補強剤表面に全くべたつきがないものを○、多少べたつきがあるが指に付着しないものを△、べたついて指に付着するものを×とした。
【0059】
(アウターバンプ頭頂部の露出性)
タックフリー性の評価で組成物がタックフリー化したBGA半導体装置において、図1(c)に示すようにすべてのアウターバンプの頭頂部が露出しているものを○とした。露出性は、アウターバンプ頭頂部間の電流の導通を調べて確認した。
【0060】
(再流動性)
アウターバンプ頭頂部の露出性の評価結果が○であったものを、条件240℃/5分で、リフロー工程にて図1(d)に示すようにマザーボード(FR4プラスチック基板)に実装し、アウターバンプ間の空間を完全に埋めたものを○、再流動してマザーボードにも付着したものを△、組成物の形状がタックフリー化直後とわからないものを×とした。
【0061】
(補強効果)
別途作成した接着性試験片(Al/Al)にて、引張せん断接着強さを測定した。測定結果が200kg/cm2以上のものを◎、100kg/cm2以上、200kg/cm2未満のものを○、20kg/cm2以上、100kg/cm2未満のものを△、20kg/cm2未満のものを×とした。
【0062】
(リペア性)
再流動性の評価後に再度240℃に昇温したとき、ピンセットで抵抗なく取り外せるものを○、粘着性があるがピンセットで取り外せるものを△、完全に固化していて取り外せないものを×とした。
【0063】
実施例1〜14および比較例1〜8
表1および2に示す各成分を表1および2に示す組成になるように混合して均一な組成物を調製し、前記各評価を行なった。結果を表1および2に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、部品の接合などの際に用いて硬化させたのちに取り外す必要が生じたときに、取り外しが可能なリペアラブル組成物を得ることができる。
【0067】
また、低粘度の液状であるために無溶剤で使用することができ、環境にやさしく、塗布しやすく、とくに半導体装置実装用アウターバンプ補強剤として用いる場合、BGA半導体装置の乾燥工程を利用してタックフリー化することができ、その際、アウターバンプの頭頂部から自然に流れ落ちて該頭頂部に残留しないためその後のハンダ接合を阻害せず、マザーボードに実装されるリフロー工程でアウターバンプとともに再溶融するため該半導体装置のマザーボードへの接合を補強でき、さらにその後不良な半導体装置のみを再加熱によりマザーボードからリペアすることができる一液型の半導体装置実装用アウターバンプ補強剤を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】BGA半導体装置に本発明の補強剤を使用するときの実施の形態を示す一連の断面説明図である。
【符号の説明】
1 BGA半導体装置
2 封止剤
3 基板
4 アウターバンプ
5 シリコンチップ
6 補強剤
7 タックフリー化した補強剤
8 マザーボードの一部
Claims (5)
- (A)2官能芳香族エポキシ化合物(ただし、2官能芳香族エポキシ化合物が下記一般式(1):
(B)2官能フェノール化合物および
(C)リン系触媒(ただし、リン系触媒が第三ホスフィンとキノン類との付加物である場合を除く)
を含有し、(A)成分と(B)成分とが
(A)成分中のエポキシ基のモル数と(B)成分中のフェノール性水酸基のモル数との比が1/0.8〜1/1.2
となるように配合され、
前記リン系触媒が、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィンおよびトリフェニルホスフィン−トリフェニルボロン錯体から選ばれた1種または2種以上であり、
5℃で1月間密封状態で保存しても結晶が析出しないリペアラブル組成物。 - (A)成分のうちの30重量%以下を1官能エポキシ化合物におきかえた請求項1記載のリペアラブル組成物。
- さらに、(D)シリコーン系消泡剤を含有する請求項1または2記載のリペアラブル組成物。
- (A)成分が、ベンゼン環を1個有する一核体芳香族ジエポキシ化合物類である請求項1、2または3記載のリペアラブル組成物。
- 請求項1、2、3または4記載のリペアラブル組成物からなる半導体装置実装用アウターバンプ補強剤。
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