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JP4451982B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、低重心化を図りつつ慣性モーメントを増大しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
例えば内部に中空部を形成した金属製のウッド型ゴルフクラブヘッドにあっては、近年ではチタンないしチタン合金などの高強度かつ低比重の材料が好適に用いられている。このようなゴルフクラブヘッドは、柿の木材を用いた従来のヘッドに比べ、ヘッド体積を大型化できる。ヘッド体積の大型化は、慣性モーメント(本明細書で「慣性モーメント」というときは、特に明記しない場合にはヘッドの重心を通る垂直軸回りの左右の慣性モーメントを指すものとする。)の増大をもたらし、スイートエリアの増大やミスショット時のヘッドのぶれを抑制するなど打球の方向安定性を向上しうる。
【0003】
また近年では、図7に示すように、ヘッドaのソール部bに銅合金ないしタングステンといった比重の大きな金属材料からなる錘部材cを固着し、ヘッドaの重心gを低く設計することが行われている(特開2000−116825号参照)。このように、ヘッドを低重心化すると、打球の打ち出し角度を大としかつバックスピン量を適度に減少させることにより、飛距離を増大させ得る。
【0004】
他方、ヘッドの慣性モーメントを増大させるためには、重心gから離れたヘッドの周囲、より具体的にはサイド部dやソール部bの周囲により多くの重量を配分することが効果的となる。しかしながら、ソール部bに錘部材cを固着した上記ヘッドaでは、低重心化を達成しうるものの、ソール部bを局部的に重くしているため、ヘッドaの周囲の重量配分効果が相対的に薄れてしまい前記慣性モーメントが小さくなるという欠点がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、かつ前記クラウン板を、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成するとともに、ヘッド本体部を比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成しこれらをロウ付けにより接合することを基本として低重心化を図りつつも慣性モーメントの低下を防止して打球の方向安定性を向上できしかも耐久性にも優れるゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、内部を中空としたウッド型のゴルフクラブヘッドであって、ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、前記ヘッド本体部には、クラウン部の外面かつ前記クラウン板の周囲を形成するクラウン周縁部が形成され、かつ、前記クラウン周縁部には、前記クラウン板をこのクラウン周縁部と略面一に保持して下方から支える幅が2〜7mmの受け部が形成され、しかも前記受け部は、前記クラウン板の全周縁に亘って形成され、前記クラウン板は、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成され、かつ前記ヘッド本体部は比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成されるとともに、前記クラウン板とヘッド本体部とは、ロウ付により、前記受け部と前記クラウン板との間でロウが固化した重ね継手を設けて接合され、しかも前記受け部と前記クラウン板との重なり面積と、前記クラウン板の端面の面積との総和であるクラウン板とヘッド本体部との接合面積が、200〜800mm 2 であることを特徴としている。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記クラウン板の重量が、前記ヘッド本体部の重量の10〜30%であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記ヘッド本体部は、ボールを打撃するフェース部と、該フェース部の下縁に連なりヘッド底部をなすソール部と、前記ソール部の周囲から立ち上がりかつ前記フェース部のトウ側からバックフェースを通り該フェース部のヒール側にのびるサイド部と、シャフトを装着しうるシャフト差込部とを含んでなる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記クラウン板は、チタン又はチタン合金からなり、かつ前記ヘッド本体部はステンレス鋼を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。また請求項5記載の発明は、前記受け部と前記クラウン板との重なり面積と、前記クラウン板の端面の面積との総和であるクラウン板とヘッド本体部との接合面積が、300〜800mm2 である請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの斜視図、図2は、その分解斜視図を例示している。図1において、ゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1は、ボールを打撃するフェース面Fを表面に具えたフェース部2と、該フェース部2の上縁2aに連なりヘッド上面をなすクラウン部3と、前記フェース部2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部4と、このソール部4の周囲から立ち上がりかつ前記フェース部2のトウt側からバックフェースを通り該フェース部2のヒールe側にのびるサイド部5と、シャフトを装着しうるシャフト差込部6とを具えたものが例示される。また本発明のヘッド1は、金属材料からなりかつ内部に中空部iを設けたウッド型である。
【0011】
図2に示すように、ヘッド1は、前記クラウン部3の主要部をなすクラウン板7と、このクラウン板7が配されるヘッド本体部9とから構成される。前記クラウン部3は、本例では前記フェース部2の上縁2aと、前記サイド部5の上縁5aとがなす輪郭線で囲まれるヘッドの上面の領域をなしかつ前記シャフト差込部6を実質的に除いた部分で構成されている。なおシャフト差込部6と前記クラウン部3との間には、図4に示すように、ヘッド内方に向かって凹む凹み面で形成される滑らかな継ぎ面11が形成されている。
【0012】
前記クラウン板7は、本例では前記クラウン部3の前記輪郭線から小距離Lを内方に隔てた形状で形成された1枚の板状をなすものが例示される。前記小距離Lは特に限定はされないが、例えば2〜10mm程度、好ましくは2〜5mm程度とするのが望ましく、これにより、クラウン板7は、本例では実質的に前記クラウン部3の全域を構成しうる。
【0013】
また前記ヘッド本体部9は、本例では前記フェース部2、ソール部4、サイド部5及びシャフト差込部6と、クラウン部3の外面かつ前記クラウン板7の周囲を形成する小巾のクラウン周縁部3eを含んで構成されている。このようなヘッド本体部9は、好ましくは例えばロストワックス精密鋳造などにより、各部を一体的に形成するのが望ましい他、予め2以上に分割して形成した各パーツを溶接により一体化して形成することもできる。このようにヘッド本体部9は、種々の方法を用いて製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。また本実施形態においては、前記フェース部2、ソール部4、サイド部5及びシャフト差込部6は、同じ金属材料で形成されたものを例示している。
【0014】
前記クラウン周縁部3eは、図2、図4〜6に示すように、前記クラウン板7をこのクラウン部周縁部と略面一に保持して下方から支える受け部12が形成されている。受け部12は、前記クラウン板7の全周縁に亘って形成される。またこの受け部12の巾A(図5に示す。)は、2〜7mm、より好ましくは3〜5mmとすることが望ましい。このような受け部12は、クラウン板7のヘッド本体部9への取り付けに際して、クラウン板7の位置決めを容易として精度良く取り付けし得るほか、後述するロウ付けの接合強度を高めるのに役立つ。
【0015】
また本発明では、前記クラウン板7は、比重が5.0以下の低比重金属材料M1から形成される一方、前記ヘッド本体部9は比重が7.0以上の高比重金属材料M2を用いて形成される。このように、クラウン部3の主要部をなすクラウン板7に低比重金属材料M1を用いることによって、ヘッド1の上部側の重量を軽減することができ、その結果、ヘッド1の重心Gをより低く設定することが可能となる。また、クラウン板7が配される前記ヘッド本体部9に高比重金属材料M2を用いることにより、ヘッド1のさらなる低重心化が可能となるほか、ソール部4だけでなくサイド部5といったヘッド1の周囲部分にもより多くの重量を配分しうる結果、ヘッド1の慣性モーメントも増大しうる。このように、本発明のヘッド1では、ソール部4だけを相対的に重くするのではなく、クラウン部3以外をバランス良く重くしているため、低重心化と慣性モーメントの増大をより効果的に両立しうる。
【0016】
なお本実施形態では、ソール部4に塊状の錘部材などを複合化してはいないが、ヘッド1の慣性モーメントの悪化を招かない範囲でこのような錘部材を取り付けることは可能である。
【0017】
ここで前記クラウン板7を構成する金属材料の比重が5.0を超えると、ヘッド1の上部側をなすクラウン部3の重量が相対的に増す傾向があり、ヘッド本体部9の重量だけでは低重心化を達成し難くなる。このような観点より、前記クラウン板7の低比重金属材料M1の比重は、小さいほど望ましく、より好ましくは4.5以下とすることが望ましい。
【0018】
このようなクラウン板7を形成する低比重金属材料M1としては、特に限定されるものではないが、例えば純チタン(比重約4.5)、チタン合金(比重約4.4〜4.7)、マグネシウム合金(比重約1.8〜2.3)、ジュラルミン(比重約2.8)又はアルミニウム−リチウム(Al−Li)合金(比重約2.6)、等を挙ることができる。中でもクラウン板7には、比強度の確保と低比重の観点よりチタン合金あるいはアルミニウム合金(ジュラルミン)などの材料を用いることが望ましく、本実施形態ではチタン合金(Ti−6Al−4V)を用いたものを例示している。
【0019】
またクラウン板7の厚さは特に限定はされないが、好ましくは軽量化と強度との兼ね合いより、例えば0.7〜1.2mm、より好ましくは0.9〜1.1mmとすることが望ましい。このようなクラウン板7は、鍛造、鋳造、圧延など種々の加工法にて形成することができるのは言うまでもない。
【0020】
またクラウン板7に、繊維強化樹脂といった低比重の複合材を用いることも考えられる。しかしながら、このような材料をクラウン板7に用いると、一般的なヘッドとは打球音が極端に異なったり、またクラウン部3の剛性が不足するためにその厚さを増すなどの工夫が必要となりヘッドの反発性能が著しく低下する不具合があるため採用し難い。
【0021】
逆に前記ヘッド本体部9を構成する金属材料の比重が7.0未満であると、ヘッド1の周囲(サイド部5)ないしヘッドの底部(ソール部4)により多くの重量を配分することが困難となり、ヘッド1の低重心化と慣性モーメントの増大を実現することが困難になる。
【0022】
このようなヘッド本体部9を形成する高比重金属材料M2としては、例えばSUS630(比重7.8)、CUSTOM450(米国カーペンター社製、比重7.8)などのステンレス鋼(比重約7.8〜8.0)、ニッケル−銅合金(比重約8.9)、タングステン合金(比重約12〜15)又はタングステン(比重約18)、白金(比重約21.3)、銅合金(比重約8〜13)、マレージング系合金(比重7.0〜8.2)等を挙ることができる。中でもヘッド本体部9には、強度、加工容易性、経済性などの観点より、SUS630、CUSTOM450などの材料を用いることが望ましく、本例ではSUS630を用いたものを例示している。また実用上の観点から、前記高比重金属材料M2の比重は7.0〜10程度、より好ましくは7〜8.5程度とするのが良い。またヘッド本体部9は、高比重金属材料M2から形成されるものであれば、2種以上の金属材料を用いて形成することもできる。
【0023】
またヘッド本体部9において、各部の厚さは、特に限定されるものではないが、例えばソール部4では、1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上とし、サイド部5では、例えば0.7mm以上、より好ましくは0.7〜1.0mmとするのが望ましい。またフェース部2の厚さは、例えば2.2〜3.0mm、より好ましくは2.4〜2.6mmとすることが望ましい。
【0024】
なおヘッド体積が小さすぎると、ヘッドの慣性モーメントを増大させる効果が低下し、逆に大きすぎると、ヘッド重量が過大となったり、またヘッドの重心が高くなるおそれもある。このような観点より、ヘッド1のヘッド体積は、例えば100〜200cm3 、より好ましくは120〜170cm3 とすることが望ましい。
【0025】
また前記クラウン板7の重量は、前記ヘッド本体部9の重量の10〜30%、より好ましくは10〜25%、さらに好ましくは10〜17%とするのが望ましい。前記クラウン板7の重量がヘッド本体部9の重量の30%を超えると、ヘッド1の上部側の重量が増大化してヘッド1の重心高さが大となる傾向があり、逆に10%を下回ると、実質的にクラウン板7の厚さを小とすることとなる傾向があり、実用上必要な耐久性が得られ難い場合がある。
【0026】
また本発明では、クラウン板7とヘッド本体部9とは異種金属からなるため、クラウン板7とヘッド本体部9とはロウ付けにより接合されている。ロウ付けは、異種金属同士を接合するために母材よりも融点の低い金属ないし合金、すなわちロウを溶融させ、母材間の隙間に例えば毛細管現象を利用してロウを満たし固化させることで異種金属同士を接合する方法である。このような、ロウ付けは接着剤を用いて接合した場合に比して接合強度をより大にでき、これによりヘッドの耐久性が維持されうる。
【0027】
このようなロウ付けを行う場合、図5に拡大して示したように、クラウン周縁部3eの周囲に受け部12を設けることにより、クラウン板7の周縁7eと内外で重なる重ね継手Jを形成することが望ましい。このような重ね継手Jとすることにより、例えば強度の低いロウを用いた場合や多少の欠陥が生じても重ね代を十分に確保することにより、継手部分の強度を向上しクラウン板7とヘッド本体部9との外れを防止できる。
【0028】
また、クラウン板7とクラウン周縁部3eとをロウ付けする場合、上述のように重ね継手Jを形成することが望ましが、とりわけクラウン板7とヘッド本体部3との接合面積を例えば200mm2 以上、好ましくは300mm2 以上、より好ましくは400mm2 以上、さらに好ましくは400〜800mm2 とすることが望ましい。なお該接合面積は、受け部12とクラウン板7との重なり面積とクラウン板7の端面7aの面積との総和として求められる。
【0029】
前記接合面積が200mm2 未満であると、クラウン板7とヘッド本体部9との接合部における強度が十分に得られず、ヘッド1の耐久性が低下する傾向があり、逆に前記受け部12の巾を増すなどにより接合面積を800mm2 よりも大とすると、クラウン部3の剛性が著しく高められる結果、ヘッド1の打球感や打球音が悪化する傾向がある。特にクラウン部の剛性が高くなると、打球音の中でも残響音が短くなってフィーリングが悪くなる。
【0030】
またロウ付けに用いるロウは、接合する金属材料、その融点などに応じて種々選択されるが、強度とロウ付け条件の適正化という理由により、好ましくは銀ロウ(Ag−Al、Ag−Cu(BAg−19)、Ag−Al−Mn、Ti−Zr−Ni、Ti−Cu−Ni、Ti−Cu−Ni−Zr、Ag−Pb−Ga、Pb−Ag−Si)を用いるのが望ましい。
【0031】
銀ロウは、銀−銅合金を主成分とするもので、鉄鋼材料、同、ニッケル及びそれらの合金など、マグネシウムとアルミニウム以外の広範囲の金属材料のロウ付けに好適に用いることができる。添加成分として、Cd、Ni、Sn、Liの元素が挙げられ、例えばJIS Z3261に種々のものが記載されている。融点は概ね620〜800℃であって、本実施形態で用いるチタン合金、SUS630よりも低融点となるなど好適に使用できる。
【0032】
本実施形態では、図2に示したようなクラウン板7とヘッド本体部9とを準備し、クラウン板7を前記クラウン周縁部3eの受け部12上に位置決め載置する。この際、必要であれば、クラウン板7とヘッド本体部9とを治具等により加圧し仮固定する。このときの加圧力が低すぎると、ロウ材料の充填が充分でなく隙間等の外観不良が生じ易く、逆に高すぎると、ヘッド本体そのものを傷付けたり、変形させてしまうおそれがある。このような観点より、前記加圧力は好ましくは0.1〜1.0MPa、より好ましくは0.3〜0.7MPaとするのが望ましい。
【0033】
そして、図3及び図5に一点鎖線で示すように、該クラウン板7とヘッド本体部9のクラウン周縁部3eとの境界部の隙間を中心として本例ではペースト状のロウ13を塗布する。そして、このヘッド1を例えば真空中の雰囲気の炉内で加熱することにより、溶けたロウ13が前記接合部の隙間に毛細管現象で浸入する。しかる後、ヘッド1を炉から取り出して接合部の研磨、塗装等を行ってヘッド1が製造される。
【0034】
なおヘッド1をロウ付けする際に加熱する温度は、クラウン板7、ヘッド本体部9の融点よりも低い温度かつロウ13の融点以上であるが、本実施形態の材料の組み合わせの場合、好ましくは620〜900℃、より好ましくは650〜850℃とすることが望ましい。620℃未満になると、ロウが融解せず、ロウ付けが困難となり、逆に900℃を超えると、クラウン板にβ変態するTi合金を用いたときなど該ロウ付け時にβ変態を生じてしまうためである。
【0035】
またロウ付けの方法としては、前記炉中ロウ付け法以外にも、ガスロウ付法、高周波ロウ付け法、アークロウ付け法、光ビームロウ付け法など種々の方法があり、いずれの方法で行っても良いが、好ましくは大量生産に適した前記炉中ロウ付け法が特に望ましい。また真空雰囲気中以外でロウ付けを行うときには、フラックスなどを先に塗布し接合表面の酸化を抑制する。またクラウン板7とヘッド本体部9とは重ね継手以外にも、例えば突き合わせ継手としても良い。
【0037】
【実施例】
以下、本発明のより具体的な実施例について説明する。
表1に示す仕様にてウッド型のゴルフクラブヘッドを試作し、ヘッドの慣性モーメント、重心高さ、耐久性、打球時のフィーリングなどをテストした。なおヘッド形状はいずれも、ヘッド体積を170cm3 、ヘッド質量を225gに統一した。なお、比較例1、2、4は、クラウン板とヘッド本体とを一体に形成した。テスト内容は次の通りである。
【0038】
<ヘッドの慣性モーメント>
各供試ヘッドを規定のライ角、ロフト角で水平面に載置するとともに、その重心を通る垂直軸回りの慣性モーメントを、INERTIA DYNAMICS Inc社製のMOMENT OF INERTIA MEASURING INSTRUMENTの MODEL NO.005-002を用いて測定した。
【0039】
<耐久性>
各ヘッドにそれぞれ同一のシャフトを装着してウッド型ゴルフクラブを試作するとともに、各クラブをスイングロボットに取り付け、ヘッドスピード50m/sにてフェース部の中央で1000発の試打テストを行い、クラウン板とヘッド本体部との接合はずれ等を確認した。接合部に外れ、亀裂等が生じていなかったものを○、その他を×として評価した。
【0040】
<打球時のフィーリング>
前記各ウッド型ゴルフクラブについて、10名のゴルファによる試打テストを行い、打球感、打球音を5点法で評価し10名の平均点を求めた。数値が大きいほど良好である。テストの結果などを表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0004451982
【0042】
テストの結果、実施例のものは、比較例に比べてヘッドの重心を下げつつ慣性モーメントを増大していることが確認できる。概ね実施例のヘッドでは、慣性モーメントをX(g・mm2 )、重心高さをY(mm)としたときに、比(X/Y)が130以上、好ましくは140以上、さらに好ましくは150以上に設定でき、単位重心高さ当たりの慣性モーメントをより大きく得ることができる。
【0043】
これに対して比較例1では、ヘッド本体部が低比重材料により形成されるとともにソール部に錘部材を配して重量を集中的に配分しているため、ソール部に重量が偏り慣性モーメントが悪化していることが確認できる。また比較例2又は4では、クラウン板を高比重材料により形成しているため、低重心化が図れていない。さらに比較例3では、クラウン板が繊維強化樹脂からなり、またヘッド本体部との接合方法も接着としているため、耐久性が低くかつ打球フィーリングが悪化している。また比較例5は、クラウン板に低比重金属材料を、ヘッド本体部に高比重金属材料を用いてはいるが、両者を接着剤により接合しているため、十分な耐久性が得られていない。また実施例において、接合面積を増大した実施例5は、打球フィーリングがやや劣るものとなった。これは、クラウン部の剛性が過度に高められた結果と考えられる。
【0044】
【発明の効果】
上述したように、請求項1記載の発明では、ゴルフクラブヘッドが、ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、クラウン板は、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成され、かつ前記ヘッド本体部は比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成されるとともに、前記クラウン板とヘッド本体部とをロウ付けにより接合したことにより、ヘッドの重心を下げつつ慣性モーメントを増大でき、しかもヘッドに必要な耐久性を確保することが可能になる。
【0045】
また、請求項2記載の発明では、クラウン板7の重量を、ヘッド本体部の重量に対して一定範囲に限定したことにより、より効果的に低重心化と慣性モーメントの増大を図りうる。
【0046】
また、請求項4記載の発明では、クラウン板に高強度かつ低比重のチタン等を、またヘッド本体部には高強度かつ高比重のステンレス鋼を用いることにより、今までのヘッド素材を用いて容易に低重心かつ慣性モーメントの大きなゴルフクラブヘッドを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のゴルフクラブヘッドを例示する斜視図である。
【図2】その分解斜視図である。
【図3】クラウン板とヘッド本体部との境界部にロウを塗布した状態っっを示す斜視図である。
【図4】ヘッドの断面図である。
【図5】そのA部の拡大図である。
【図6】ヘッドの断面図である。
【図7】従来のヘッドを例示する断面図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース部
3 クラウン部
3e クラウン周縁部
4 ソール部
5 サイド部
6 シャフト差込部
7 クラウン板
9 ヘッド本体部
12 受け部
13 ロウ
M1 低比重金属材料
M2 高比重金属材料

Claims (5)

  1. 内部を中空としたウッド型のゴルフクラブヘッドであって、
    ヘッド上面のクラウン部の主要部をなすクラウン板と、このクラウン板が配されるヘッド本体部とからなり、
    前記ヘッド本体部には、クラウン部の外面かつ前記クラウン板の周囲を形成するクラウン周縁部が形成され、かつ、
    前記クラウン周縁部には、前記クラウン板をこのクラウン周縁部と略面一に保持して下方から支える幅が2〜7mmの受け部が形成され、しかも
    前記受け部は、前記クラウン板の全周縁に亘って形成され、
    前記クラウン板は、比重が5.0以下の低比重金属材料から形成され、かつ前記ヘッド本体部は比重が7.0以上の高比重金属材料を用いて形成されるとともに、
    前記クラウン板とヘッド本体部とは、ロウ付により、前記受け部と前記クラウン板との間でロウが固化した重ね継手を設けて接合され、しかも
    前記受け部と前記クラウン板との重なり面積と、前記クラウン板の端面の面積との総和であるクラウン板とヘッド本体部との接合面積が、200〜800mm 2 であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
  2. 前記クラウン板の重量が、前記ヘッド本体部の重量の10〜30%であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
  3. 前記ヘッド本体部は、ボールを打撃するフェース部と、該フェース部の下縁に連なりヘッド底部をなすソール部と、前記ソール部の周囲から立ち上がりかつ前記フェース部のトウ側からバックフェースを通り該フェース部のヒール側にのびるサイド部と、シャフトを装着しうるシャフト差込部とを含んでなる請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
  4. 前記クラウン板は、チタン又はチタン合金からなり、かつ前記ヘッド本体部はステンレス鋼を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
  5. 前記受け部と前記クラウン板との重なり面積と、前記クラウン板の端面の面積との総和であるクラウン板とヘッド本体部との接合面積が、300〜800mm2 である請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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