JP4443740B2 - アントラサイクリン抗生物質 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が生産する新規なアントラサイクリン抗生物質に関する。
【0002】
【発明の背景】
放線菌によって生産されるアントラサイクリン抗生物質は、4員環キノン構造を基本骨格とするアグリコン部分(発色団)と、アミノ糖を主体とした糖類から構成される色素配糖体(グリコシド)である。広域の抗がんスペクトラムをもつが、蓄積性心毒作用が難点とされている制がん性抗生物質である。この中には現在もっとも多用されている制がん剤であるドキソルビシン(Doxorubicin:Acramone,F.G. et al.Biotechnol.Bioeng. 11,1101〜1110(1969))やダウノルビシン(Daunorubicin:Dimarco,A. et al.Nature 201,706〜707(1964))、アクラルビシン(Aclarubicin:Oki,T. et al.J.Antibiot. 28,830〜834(1975))などが含まれ、これらの誘導体も臨床開発されている。
【0003】
これらの抗生物質はDNAと結合し、ラジカルを発生してDNA鎖を切断、あるいはトポイソメラーゼII(Topoisomerase II)を阻害する。トポイソメラーゼはDNaseとligase作用を有し、DNA鎖に一時的な切断と再結合を触媒するが、アントラサイクリン抗生物質を含むほとんどの抗がん剤はこの酵素(II型)を阻害することによって、DNA複製に障害を与え、制がん活性を発揮する。
【0004】
一方、アントラサイクリン抗生物質の中でも早くに発見されたロドマイシン(Rhodomycin)群抗生物質は、β−ロドマイシノンをアグリコンにもつグリコシドであり、特に毒性が強いため制がん剤としては使用されていない。しかし、その後発見されたベタクラマイシンA(Betaclamycin A:Oki,T. et al.J.Antibiot. 33,1331〜1340(1980))やオキサノマイシン(Oxaunomycin:Yoshimoto,A et al.J.Antibiot. 39,902〜909(1986))といった抗生物質は実験腫瘍に著効を示しており、いずれもβ−ロドマイシノンをアグリコンに持つ化合物である。
【0005】
制がん剤としてのアントラサイクリン抗生物質は、上述したとおり、各種の類縁化合物が提案されているが、毒性、抗がん作用双方について共に満足できるものはない。しかも、制がん剤は、試験管内試験、動物試験の結果が必ずしも直接人間の制がん作用として反映できないため、多角的な研究が要求される。そのため、制がん剤として一応の評価がされているアントラサイクリン抗生物質類について、さらに新たな部類に属する化合物の提案が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が生産する新規なアントラサイクリン抗生物質、それらの製造方法および生産する微生物を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、より有用なアントラサイクリン抗生物質またはその合成中間体となりうる新規化合物を提案する目的で研究を重ねた結果、ロドマイシン生産菌の一株であるストレプトミセス・ビオラセウス(Storeptomyces violaceus)A262株の変異株が、新規なアントラサイクリン抗生物質を生産することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明により提供される新規アントラサイクリン抗生物質は、下記一般式(I)、
【化9】
(式中、R1およびR2は水素原子または水酸基を表わし、Yは、
【化10】
、
【化11】
または、
【化12】
を表す)で示される化合物である。
【0009】
本発明者らは、これらの化合物のうち、式(I―1)、
【化13】
で示される化合物を抗生物質HU2−705A、
式(I―2)、
【化14】
で示される化合物を抗生物質HU2−705B、
式(I―3)、
【化15】
で示される化合物を抗生物質HU2−705C、
式(I―4)、
【化16】
で示される化合物を抗生物質HU2−705Eとそれぞれ命名した。以後、これらの化合物は、上記名称を用いて説明する。
【0010】
本発明に使用される微生物は、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属し、本発明のアントラサイクリン抗生物質を生産する能力を有する菌株であれば、どのようなものでも使用できる。例えば、ロドマイシン系抗生物質およびその類縁化合物を生産する能力を有する土壌分離株または公知の菌株を、変異源として例えば紫外線あるいはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)を用いる通常の変異処理に供することにより単離され、本発明のアントラサイクリン抗生物質を生産する菌株を挙げることができる。
【0011】
これらの生産菌株のうち具体的なものとしては出願人が保存中のβ−ロドマイシン類生産菌ストレプトミセス・ビオラセウス(Storeptomyces violaceus)A262菌株をNTGで変異処理して得られた変異株HU2−705菌株を挙げることができる。該菌株は、平成12年8月4日付で工業技術院生命工学工業技術研究所に生命研菌寄第17986号(FERM P−17986)として寄託されている。
【0012】
以下に、HU2−705菌株の菌学的性状を示す。
1.形態
良く分岐した基中菌糸より、螺旋状の気中菌糸を形成し、輪生枝は認められない。成熟した胞子鎖は10個〜50個の胞子の連鎖を認める。胞子の表面はとげ状である。
【0013】
2.各種培地における生育状態
培養はすべて28℃で行った。結果を表1に示す。なお、色の記載について、()内に示す標準はH.D.Tresner & E.j.Backus System of color wheels for Streptomycete taxonomy(J.Appl.Microbiel.11,335〜338(1963))を用い、補足的に日本色彩研究所出版の「色の標準」も用いた。
【0014】
【表1】
【0015】
3.生理的性質
(1)生育温度範囲:(イースト・麦芽・寒天培地を使用、pH6.0で、20℃、28℃、30℃、37℃、42℃の各温度で実験)20℃から37℃までの各温度では生育が認められた。42℃では生育しない。
(2)ゼラチンの液化:陽性(グルコース・ペプトン・ゼラチン培地を使用し、20℃で培養)
(3)スターチの加水分解:陽性(スターチ・無機塩寒天培地)
(4)スキム・ミルクの凝固、ペプトン化:はじめはすべて陰性、培養を開始して15日を過ぎる頃ペプトン化をはじめる。
(5)メラニン様色素の生成:(トリプトン・イースト・ブロス培地、ペプトン・イースト・鉄・寒天培地およびチロシン寒天培地使用)いずれの培地でも陽性
【0016】
4.各種炭素源の利用性:(フリドハム・ゴドリープ寒天培地上)
L−アラビノース 陽性
D−キシロース 陽性
D−グルコース 陽性
D−フラクトース 陽性
シュークロース 陽性
イノシトール 陽性
L−ラムノース 陽性
ラフィノース 陽性
D−マンニット 陽性
【0017】
本発明のアントラサイクリン抗生物質は上記菌株を栄養培地に接種し、好気的に培養することにより製造される。上記菌株の培養方法は、原則的には一般微生物の培養方法に準ずるが、通常は液体培養による振とう培養、通気撹拌培養などの好気的条件下で行うのが好適である。
【0018】
培養に用いることのできる培地としては、ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属する微生物が利用できる栄養源を含有する培地であればよく、各種の合成培地、半合成培地、天然培地などいずれも用いることができる。培地組成としては、例えば、炭素源として、グルコース、マルトース、シュークロース、水あめ、糖みつ、デキストリン、澱粉、グリセロール、動物油、植物油などを単独または組み合わせて使用することができ、また窒素源としては、大豆粉、小麦胚芽、コーンスティープリカー、綿実粕、肉エキス、ペプトン、酵母エキス、魚粉、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、などを単独または組み合わせて使用することができる。また必要に応じて、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸塩、金属塩などの無機塩を加えることができる。その他、上記菌株の生育あるいは本発明のアントラサイクリン抗生物質の生産を促進する有機物、例えば、ビタミン類、アミノ酸類を加えることができる。さらに必要に応じて、消泡剤、例えば、アデカノール(商品名:旭電化工業(株)製)、シリコーン(商品名:信越化学工業(株)製)などを添加することができる。
【0019】
培養条件は、上記菌株が良好に生育して本発明のアントラサイクリン抗生物質を生産し得る範囲内で適宜選択すればよい。例えば、培地のpHは、5〜9程度、通常6〜7とすることが好ましい。培養温度は、微生物が良好に生育する温度、通常20〜40℃、好ましくは25〜28℃に保つのがよい。培養時間は、2〜8日間程度でよく、好ましくは4〜5日間である。もちろん上述した各種の培養条件は、使用微生物の種類や特性、外部条件などに応じて適宜変更でき、またそれに応じて上記範囲から最適条件を選択、調整できる。その際、培養液中の目的化合物の蓄積量が最大になったときに培養を停止して得た培養液を以下の精製工程に使用すればよい。
【0020】
このようにして得た培養液中に蓄積された本発明のアントラサイクリン抗生物質は、培養後、濾過、遠心分離等の一般的固液分離手段によって菌体を分離し、濾液または上澄液から回収可能である。また分離した菌体からも回収可能である。濾液または上澄液から回収する場合、まず、pH7〜9において、クロロホルム、トルエン、酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出し、さらにアンバーライトXAD(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオンHP−20(三菱化学(株)製)等のポリスチレン系吸着樹脂、シリカゲル、アルミナ、活性炭などの担体を用いるカラムクロマトグラフィーにより処理することができる。これらの担体から目的物質を溶出させる方法は、担体の種類、性質によって異なるが、一例として、ポリスチレン系吸着樹脂の場合には、溶出溶媒として、含水アルコール、含水アセトン等を用いることができる。
【0021】
さらにセファデックス(Sephadex)LH−20(ファルマシア社製)、バイオ・ゲルP−2(バイオ・ラッド社製)等によるゲル濾過、シリカゲル、アルミナ等による薄層クロマトグラフィー、順相あるいは逆相カラムを用いた分取用高速液体クロマトグラフィー(分取HPLC)等を用いることができ、これらの方法を単独または適宜組み合わせて、場合によっては反復使用することにより、分離、精製することができる。また、分離した菌体から回収する場合はアセトン、メタノール、エタノールまたはブタノール等の適当な有機溶媒を用いて抽出した後、クロロホルムで再抽出し、上記と同様に単離精製することができる。
【0022】
以上のようにして得られる本発明のアントラサイクリン抗生物質は、以下に示す物理化学的性質を有する。
1.アントラサイクリン抗生物質HU2−705Aの物理化学的性質
(1)色および形状:ピンク色、固体。
(2)分子式:C28H31NO8
(3)マススペクトル
FAB−MS:図1に示すとおりである。
HRFAB−MS:m/z 510.2095 [M+H]+
(4)1H−NMRスペクトル(500MHz):重クロロホルム中で測定した結果は図2に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフト、多重度は表2に示すとおりである。
(5)13C−NMRスペクトル(125MHz):重クロロホルム中で測定した結果は図3に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフトは、表3に示すとおりである。
(6)薄層クロマトグラフィーのRf値:シリカゲルプレート(Silicagel 70F254:和光純薬(株)製)にて、0.37(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1)
【0023】
2.アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bの物理化学的性質
(1)色および形状:赤色、粉末。
(2)分子式:C29H33NO11
(3)マススペクトル
FAB−MS:図4に示すとおりである。
HRFAB−MS:m/z 571.2156 [M+H]+
(4)1H−NMRスペクトル(500MHz):重メタノール中で測定した結果は図5に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフト、多重度は表2に示すとおりである。
(5)13C−NMRスペクトル(125MHz):重メタノール中で測定した結果は図6に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフトは、表3に示すとおりである。
(6)薄層クロマトグラフィーのRf値:シリカゲルプレート(Silicagel 70F254:和光純薬(株)製)にて、0.18(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1)
(7)比旋光度:[α]25 D +144°(c 0.1,メタノール)
(8)紫外部吸収スペクトル:90%メタノール中で測定した結果は図7に示すとおりである。また特徴的な吸収は次のとおりである。
UV λmax nm,(ε1% 1cm):233(597)、254(451)、291(162)、493(227)
【0024】
3.アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cの物理化学的性質
(1)色および形状:オレンジ色、粉末。
(2)分子式:C29H33NO11
(3)マススペクトル
FAB−MS:図8に示すとおりである。
HRFAB−MS:m/z 571.2164 [M+H]+
(4)1H−NMRスペクトル(500MHz):重メタノール中で測定した結果は図9に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフト、多重度は表2に示すとおりである。
(5)13C−NMRスペクトル(125MHz):重メタノール中で測定した結果は図10に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフトは、表3に示すとおりである。
(6)薄層クロマトグラフィーのRf値:シリカゲルプレート(Silicagel 70F254:和光純薬(株)製)にて、0.13(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1)
(7)比旋光度:[α]25 D +34°(c 0.076,メタノール)
(8)紫外部吸収スペクトル:90%メタノール中で測定した結果は図11に示すとおりである。また特徴的な吸収は次のとおりである。
UV λmax nm,(ε1% 1cm):208(686)、235(sh570)、258(418)、290(sh230)、491(126)
【0025】
4.アントラサイクリン抗生物質HU2−705Eの物理化学的性質
(1)色および形状:赤色、固体。
(2)分子式:C28H33NO9
(3)マススペクトル
FAB−MS:図12に示すとおりである。
HRFAB−MS:m/z 528.2182 [M+H]+
(4)1H−NMRスペクトル(500MHz):重クロロホルム中で測定した結果は図13に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフト、多重度は表2に示すとおりである。
(5)13C−NMRスペクトル(125MHz):重メタノール中で測定した結果は図14に示すとおりである。また、主要なシグナルの化学シフトは、表3に示すとおりである。
(6)薄層クロマトグラフィーのRf値:シリカゲルプレート(Silicagel 70F254:和光純薬(株)製)にて、0.28(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1)
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
本発明のアントラサイクリン抗生物質は、それぞれ培養白血病細胞L1210に対して増殖抑制作用を示し、それ自体制がん剤として有用である。
【0029】
(マウス白血病L1210細胞に対する増殖および核酸合成阻害作用)
20%仔牛血清を含むRPMI1640培地(ローズウェルバーグ研究所)へL1210細胞を5×104個/ml接種し、同様に本発明のアントラサイクリン抗生物質を各種濃度で添加し、37℃にて炭酸ガス培養器中で培養し対照区に対する50%増殖阻害濃度を求めた。さらに10%仔牛血清を含むRPMI1640培地へ上記のL1210培養細胞を5×104個/mlとなる様に懸濁し、37℃にて炭酸ガス培養器中で1〜2時間培養を行ったのち、本物質を種々の濃度で添加し、15分後にさらに14C−ウリジン(0.05μCi/ml)または14C−チミジン(0.05μCi/ml)を添加し、37℃にて60分間培養した。反応液へ冷10%トリクロル酢酸を添加し、反応を中止すると同時に、酸不溶物を沈殿させ、冷5%トリクロル酢酸にてさらに2回洗浄したのち、ギ酸に溶解し、放射活性を測定し、無添加対照区に対する放射能の取り込み率から50%取り込み阻害濃度(IC50)を求めた。表4に結果を示す。
【0030】
【表4】
【0031】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
実施例1 培養液の調製
ストレプトミセス・ビオラセウス(Streptomyces violaceus)HU2−705菌株(FERM P−17986)のYGS(可溶性デンプン0.5%、酵母エキス0.3%、グルコース0.5%、寒天2.0%、pH7.2)斜面培養より一白金耳を採り、YGS液体培地(可溶性デンプン0.5%、酵母エキス0.3%、グルコース0.5%、pH7.2)5mlを分注、殺菌した試験管に接種し、28℃、130rpmで5日間往復振とう培養し、種母を作成した。
【0032】
次に生産培地(可溶性デンプン2.5%、大豆粉1.5%、酵母エキス0.2%、グルコース0.5%、塩化ナトリウム0.1%、ミネラル混液0.1%、炭酸カルシウム0.2%、10%アデカノール0.1%、pH7.0:但し、ミネラル混液は、塩化亜鉛40mg、塩化第一鉄・6水和物200mg、塩化第一銅・2水和物10mg、塩化マンガン・4水和物10mg、ピロホウ酸ナトリウム・10水和物10mgおよびモリブデン酸アンモニウム・4水和物10mgを蒸留水1000mlに溶解し、塩酸でpH2.2に調整したものである。)50mlを分注、殺菌した500ml容坂口フラスコに、前記種母を1.5ml接種し、28℃、130rpmで4日間往復振とう培養した。これを、生産培地50mlを分注、殺菌した500ml容坂口フラスコ20本に1mlずつ接種し、28℃、130rpmで5日間往復振とう培養し、培養液1000mlを得た。
【0033】
実施例2 アントラサイクリン抗生物質HU2−705BおよびHU2−705Cの精製
実施例1に記載した方法で得た培養液1000mlをリン酸でpH2.0に調製し、室温で1時間穏やかに攪拌した。3,000rpmで10分間遠心分離し、上澄液と菌体を含む沈殿物に分離後、沈殿物にリン酸で、pH2.9に調製したアセトン300mlを添加し、激しく攪拌した。3,000rpmで10分間遠心分離した後、アセトンを含む上澄液を濃縮し、先の上澄液と併せた。この酸性溶液を、リン酸でpH調整した酸性水溶液(pH2.4)で洗浄したHP−20カラム(φ30mm×205mm、145ml)に付した。酸性水(pH2.4)で洗浄後、pH2.4に調整した90%アセトン溶液で溶出した。減圧濃縮後、1M炭酸水素ナトリウム水溶液でpH7.5に調整し、クロロホルム200mlを添加後、激しく攪拌し遠心分離を行った。同クロロホルム洗浄を二回行った後、水相を1M塩酸でpH2.5に調整した。これに1−ブタノール300mlを加え攪拌抽出した後、遠心分離し、生成物を1−ブタノールに転溶した。この操作を二度繰り返し、得られたブタノール溶液を併せ、さらに少量の水を加えて50℃で濃縮乾固し、粗抽出物1.13gを回収した。
【0034】
粗抽出物を混合溶媒(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=400:100:10:1)50mlに溶解し、Wakogel C−200シリカゲルカラム(φ25mm×220mm、108ml)に吸着させた。次いで、クロロホルム:メタノール:水:酢酸系の展開溶媒(400:100:10:1、1000ml→400:200:10:1、200ml)で溶出した。クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1を展開溶媒としてTLC分析(Silicagel 70 F254:和光純薬社製)を行い、各画分に含まれる成分を確認した。そのうちRf値0.18のスポットを示す生成物(赤色、アントラサイクリン抗生物質HU2−705B)と、Rf値0.13のスポットを示す生成物(オレンジ色、アントラサイクリン抗生物質HU2−705C)をそれぞれ回収した。
【0035】
アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bは濃縮乾固後、1M炭酸ナトリウム水溶液(pH7.5)100mlに溶解し、100mlのクロロホルムを用いて洗浄した。残った水相を1M塩酸でpH2.5に調整し、ブタノール抽出を行った。水相の色素が見えなくなるまでこの操作を繰り返し、回収したブタノール層を集め濃縮乾固した。これを混合溶媒(トルエン:メタノール=5:1)に溶解し、濃縮乾固すると次々に赤色粉末が析出した。完全に乾固する直前に濃縮を止め、析出物質および溶液を試験管に移した後、遠心分離した。沈殿物を回収し、トルエン相は再度トルエン、メタノールを加え、濃縮し晶析を繰り返し粉末状のHU2−705B結晶を136.4mg回収した。また、アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cも、アントラサイクリン抗生物質HU2−705B同様トルエン:メタノール系混合溶媒で結晶化を行い、48.6mg取得した。
【0036】
実施例3 アントラサイクリン抗生物質HU2−705AおよびHU2−705Eの精製
実施例1に記載した方法で得た培養液1000mlを3,000rpmで10分間遠心分離し、その上清に0.1Mクエン酸緩衝液を加えpH3.3に調整した。また同緩衝液(pH3.3)で緩衝化した吸着樹脂HP−20カラム(三菱化学社製:φ28mm×250mm、154ml)に、あらかじめ3,000rpmで10分間遠心分離して得たpH調整済の上清を付した。50%アセトン溶液500ml(pH6.5)で溶出を行い、減圧濃縮して、粗抽出物0.5gを回収した。
【0037】
次に得られた粗抽出物を混合溶媒(クロロホルム:メタノール:水:酢酸=200:20:1:1)30mlに溶解し、シリカゲルカラム(φ10mm×150mm、12ml)に付した。次いで、以下に示すクロロホルム:メタノール:水:酢酸系の混合溶媒を用いて順次溶出した。
(1)クロロホルム:メタノール:水:酢酸=200:20:1:1
(2)クロロホルム:メタノール:水:酢酸=200:30:2.5:1
(3)クロロホルム:メタノール:水:酢酸=200:40:5:1.5
(4)クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1
【0038】
各画分を、クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1を展開溶媒としてTLC分析(Silicagel 70 F254:和光純薬(株)製)を行い、Rf値0.37を示す画分を集めて濃縮し、アントラサイクリン抗生物質HU2−705Aを17.7mg取得した。次にHU2−705A以外の画分を集め、濃縮し、分取用TLC(シリカゲル20cm×20cm:Silicagel 70 F254:和光純薬(株)製)にて精製した。クロロホルム:メタノール:水:酢酸=100:30:5:1を展開溶媒として用い、Rf値0.28のオレンジ色のスポットをかき取り、切り落とし短くしたパスツールピペットに詰め、クロロホルム:メタノール=1:1で溶出した。これを濃縮し、アントラサイクリン抗生物質HU2−705Eを8.5mg取得した。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Aのマススペクトルである。
【図2】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Aの重クロロホルム中での1H−NMRスペクトル(500MHz)である。
【図3】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Aの重クロロホルム中での13C−NMRスペクトル(125MHz)である。
【図4】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bのマススペクトルである。
【図5】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bの重メタノール溶液中での1H−NMRスペクトル(500MHz)である。
【図6】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bの重メタノール溶液中での13C−NMRスペクトル(125MHz)である。
【図7】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Bの90%メタノール中での紫外部吸収スペクトルである。
【図8】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cのマススペクトルである。
【図9】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cの重メタノール中での1H−NMRスペクトル(500MHz)である。
【図10】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cの重メタノール中での13C−NMRスペクトル(125MHz)である。
【図11】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Cの90%メタノール中での紫外部吸収スペクトルである。
【図12】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Eのマススペクトルである。
【図13】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Eの重クロロホルム中での1H−NMRスペクトル(500MHz)である。
【図14】 アントラサイクリン抗生物質HU2−705Eの重メタノール中での13C−NMRスペクトル(125MHz)である。
Claims (7)
- ストレプトマイセス(Streptomyces)属に属し、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアントラサイクリン抗生物質を生産する能力を有する微生物を培養し、培養物から請求項1〜5のいずれか1項に記載のアントラサイクリン抗生物質を採取することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアントラサイクリン抗生物質の製造法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアントラサイクリン抗生物質を生産する能力を有するストレプトマイセス・ゼオラセウス(Streptomyces violaceus)HU2−705株(FERM P−17986)。
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