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JP4334459B2 - 光触媒活性化自浄式物品及びその製法 - Google Patents

光触媒活性化自浄式物品及びその製法 Download PDF

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JP4334459B2 JP2004327844A JP2004327844A JP4334459B2 JP 4334459 B2 JP4334459 B2 JP 4334459B2 JP 2004327844 A JP2004327844 A JP 2004327844A JP 2004327844 A JP2004327844 A JP 2004327844A JP 4334459 B2 JP4334459 B2 JP 4334459B2
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Description

関連出願の相互参照
本願は、1997年3月14日に出願された暫定的米国特許出願通し番号(Serial No.)60/040,566の権利を主張するものである。1997年3月14日に出願された暫定的米国特許出願通し番号60/040,565及びそれと同日出願の、「光触媒作用によって活性化された自浄式機器」と題する、グリンバーグ(Greenberg)等の正規の米国特許出願通し番号08/899,265は、本願に関係があり、言及することによって本明細書に取り入れる。
発明の背景
発明の分野
本発明は、光触媒活性化自浄性(photocatalytically-activated self-cleaning, 光触媒作用によって活性化された自己清浄性)被覆を基体(例えば、ガラスシート又は連続的フロート法ガラスリボン)の上に付着させる方法、ナトリウムイオン含有基体上に付着させた光触媒活性化自浄性被覆のナトリウムイオン被毒を防ぐ方法、及びそれらの方法に従って製造された物品に関する。
関連技術の記述
多くの基体(例えば、ガラス基体)について、その基体の表面が「清浄」に留まっている、即ち、表面汚染物、例えば、一般的有機及び無機表面汚染物を持たないことが望ましい。従来、このことは、そのような表面を屡々清浄化しなければならないことを意味する。この清浄化操作は、手動又は機械的装置で行うのが典型的である。どちらの方法でも極めて労力を要し、時間及び(又は)コストがかかるものである。そのような手動又は機械的清浄化の必要性を無くすか、又は減少する、自浄性であるか、少なくとも清浄化し易い表面を有する基材に対する必要性が存在する。
二酸化チタン(TiO)被覆は、基体上に光触媒活性化自浄性(以下「PASC」と呼ぶ)を与えることが知られている。ガラス基体上にPASC二酸化チタン被覆を形成することに関する刊行物には、米国特許第5,595,813号及びパズ(Paz)等の「ガラス上の光酸化性自浄式透明二酸化チタン膜」(Photooxidative Self-cleaning Transparent Titanium Dioxide Films on Glass)、J. Mater, Res., Vol. 10, No. 11, pp. 2842-48, Nov. (1995)が含まれる。更に、一般に有機化合物の光触媒酸化に関する特許及び論文の図書目録は、D.ブレイク(Bleke)による「水及び空気から有害化合物を光触媒除去することに関する研究の図書目録」(Bibliography of Work On The Photocatalytic Removal of Hazardous Compounds from Water and Air)(1994年5月、National Renewable Energy Laborafory)、及び1995年10月最新版及び1996年10月最新版に報告されている。
基体にPASC被覆(例えば、二酸化チタンPASC被覆)を適用する現在入手できる方法は、ゾルゲル法である。ゾルゲル法では、結晶化してないアルコール溶媒含有コロイド懸濁物(ゾル)を、室温又はその近辺で基体上に噴霧、回転、又は浸漬被覆する。次にその基体を約100℃〜800℃(212°F〜1472°F)の範囲内の温度へ加熱し、PASC被覆を基体に結合し且つ(又は)PASC被覆を結晶化し、基体上に結晶化PASC被覆(ゲル)を形成する。
ゾルゲル法によるPASC被覆適用の一つの制約は、ゾルゲル被覆法は経済的でないか、又は或る適用条件又は基体には実質的に適合しないことである。例えば、フロート法リボン上に、その製造中にPASC被覆を与えたい時、そのリボンは余りにも熱過ぎて、一つにはゾル溶液に用いた溶媒によりそのゾルを許容できないことである。ゾルゲル法で用いる多くの溶媒について、高温フロート法リボンをほぼ室温へ冷却して、然る後、ゾルを適用し、そのフロート法リボンをゾルが結晶化してPASC被覆になるのに充分な温度へ再加熱することが必要である。そのような冷却及び再加熱操作は、装置に対する実質的な投資、エネルギー及び取扱いコストを必要とし、製造効率を著しく低下する。
PASC被覆のPASC活性度は、もし基体中にナトリウムイオンが存在し、その基体からPASC被覆へ移動すると、著しく低下するか、又は無くなることがある。この過程は、ナトリウム被毒又はナトリウムイオン被毒として知られている。ナトリウムイオンを含有する多くの基体について、ナトリウムイオンの被覆への移動速度は、基体の温度が上昇するにつれて増大する。従って、ゾルゲル被覆法の別の制約は、基体の再加熱がナトリウムイオンの移動機会を増大し、それが今度はPASC被覆のナトリウムイオン被毒を増大することである。
ゾルゲル法によりPASC被覆を形成する別の制約は、被覆の厚さ、例えば、数μの厚さにある。そのような厚いPASC被覆は、PASC被覆した物品の光学的及び(又は)美的性質に悪影響を与えることがある。
上で述べたことから分かるように、PASC被覆を付着させた製造物品及び当分野で既知の欠点を持たないPASC被覆付着法に対する必要性が存在する。
発明の概要
本発明は、少なくとも一つの表面を有する基体及びその基体の表面上に、化学蒸着(以下「CVD」と呼ぶ)、噴霧熱分解、及びマグネトロンスパッタリング真空蒸着(以下「MSVD」と呼ぶ)からなる群から選択された方法により堆積させたPASC被覆、例えば、二酸化チタン被覆を有するPASC製品に関する。本発明は、そのような製品の製法にも関する。
本発明は、少なくとも一つの表面を有する基体、その基体の表面上に堆積させたナトリウムイオン拡散障壁(以下「SIDB」と呼ぶ)層、例えば、酸化錫、二酸化チタン、酸化アルミニウムの層及びそれらの混合物、前記SIDB層の上に堆積したPASC被覆、例えば、二酸化チタン被覆を有するPASC製品にも関する。PASC被覆及びSIDB層は、夫々CVD、噴霧熱分解、及びMSVDからなる群から選択された方法により夫々堆積する。本発明は、そのような製品の製法にも関する。
好ましい態様の説明
図1に関し、そこには本発明の特徴を有する物品20が示されている。物品20には、PASC被覆24が上に堆積した基体22を有する。基体22は、本発明を限定するものではなく、それにはガラス基体、例えば、ガラスシート又は連続的フロート法ガラスリボン、プラスチック基体、金属基体、及びエナメル塗布基体が含まれる。
PASC被覆24は、図1に示したように、基体22の上に直接存在していてもよく、或は別法として、PASC被覆24と基体22との間に他の層が介在していてもよく、それらの層には図2に示し、後で一層詳細に述べるようなSIDB層26が含まれるが、それに限定されるものではない。更に、PASC被覆24は、基体22上に存在する被覆の多層積層体の一番上の層でもよく、或はPASC被覆24は、一番上の層以外の層の一つとして、そのような多層積層体中に埋め込まれていてもよいことは、当業者によって認められるであろう。但し、PASC被覆24を光触媒的に活性化するのに充分な化学線がPASC被覆24上に堆積したどの被覆でも通過し、活性ラジカルが、PASC被覆24の上に堆積した被覆を通過し、多層積層体の一番上の層の上に存在する有機汚染物と反応することができるものとする。
PASC被覆24は、光触媒作用によって活性化されて自浄性になり、CVD法、噴霧熱分解法、又はMSVD法により堆積することができるいかなる被覆でもよい。例えば、PASC被覆24には、酸化チタン、酸化鉄、酸化銀、酸化銅、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化珪素、錫酸亜鉛、酸化モリブデン、酸化物亜鉛、亜鉛/錫酸化物、チタン酸ストロンチウム、及びそれらの混合物が含まれるが、それらに本発明は限定されない。金属酸化物には金属の酸化物、超酸化物、又は亜酸化物も含まれる。
好ましいPASC被覆24は二酸化チタンである。二酸化チタンは無定形及び3つの結晶形態、即ち、アナターゼ、ルチル及びブルッカイトの結晶形態で存在する。アナターゼ相二酸化チタンが好ましい。なぜなら、それは強いPASC活性度を示し、然も、化学的侵食に対し優れた抵抗性及び優れた物理的耐久性を有するからである。更に、アナターゼ相二酸化チタンは、スペクトルの可視領域で大きな透過性を有し、それは優れた光学的性質を有するアナターゼ二酸化チタンの薄い被覆を与える。ルチル相二酸化チタンもPASC活性を示す。アナターゼ及び(又は)ルチル相と、ブルッカイト及び(又は)無定形相との組合せも、その組合せがPASC活性を示す限り、本発明で許容することができる。
PASC被覆24は、許容可能な水準のPASC活性度を与えるように、充分厚くなければならない。PASC被覆24を「許容可能」又は「許容不可能」にする絶対的な値はない。なぜなら、PASC被覆が許容可能な水準のPASC活性度をもつか否かは、PASC被覆物品を用いる目的及び条件、及びその目的に関連して選択された性能基準により大きく決定されるからである。一般にPASC被覆が厚い程、大きなPASC活性度を与える。しかし、他の考察では、一層薄い被覆を与える方に重点が置かれることがある。例えば、美的又は光学的理由から、物品が大きな透明性を持たなければならない場合には、一層薄い被覆が好ましい。物品の表面上の表面汚染物は、薄いPASC被覆を用いて容易に除去される。被覆は実質的な照射に露出され且つ(又は)PASC被覆24は、以下で一層詳細に説明するナトリウムイオン被毒を受けることがある。極めて多種類の用途に対し、PASC被覆は、好ましくは少なくとも約200Å、好ましくは少なくとも約400Å、一層好ましくは少なくとも約500Åの厚さである。基体22がフロート法ガラス片であり、PASC被覆24が、そのフロート法ガラス片の上にCVD法により直接形成したアナターゼ二酸化チタンPASC被覆である場合、少なくとも約500Åの厚さで、広い範囲の用途に対し許容できるPASC被覆表面で約20W/mの強度を有する、オハイオ州クリーブランドのQ−パネル社から商標名UVA−340として販売されているような光源からの紫外線にPASC被覆を露出した場合、ステアリン酸試験膜の除去に対し、約2×10−3〜約5×10−3/cm−1−1の範囲のPASC反応速度を与えることが判明している。
本発明に従い、薄い、例えば、1μより薄く、一層好ましくは0.5μより薄いPASC被覆を、噴霧熱分解、CVD又はMSVD法により基体22の上に形成する。噴霧熱分解法では、金属含有前駆物質を水性懸濁物又は水性溶液として運び、CVD法ではキャリヤガス、例えば窒素ガスで運び、基体22の表面の方へ送る。その間、基体22を、前記金属含有前駆物質を分解させて基体22の上にPASC被覆24を形成するのに充分な高さの温度に保つ。MSVD法では、金属含有カソードターゲットを、不活性又は酸素含有雰囲気中で減圧中でスパッタリングし、基体22の上にスパッタリング被覆を蒸着する。被覆中又は被覆後の基体22を加熱して、スパッタリング被覆を結晶化させ、PASC被覆24を形成する。
それらの方法の各々は利点及び制約を有し、例えば、CVD法及び熱分解法は、噴霧熱分解法よりも好ましい。なぜなら、噴霧熱分解法の水溶液は、PASC被覆24中にOHイオンを存在させる結果になり、それが今度はPASC被覆24の適切な結晶形成を妨げ、それによって被覆のPASC活性度を低下するからである。CVD法及び熱分解法は、MSVD法よりも好ましい。なぜなら、それは、上昇させた温度で用いられる連続的基体、例えばフロート法ガラスリボンを被覆する場合に適合するからである。PASC被覆24を堆積させるCVD、噴霧熱分解及びMSVD法は、下で一層詳細に論ずる。噴霧熱分解及びCVD法は、基体の上に薄い(例えば、数百Åの厚さの)金属酸化物被覆(二酸化チタン被覆を含む)を堆積させるのに用いることができることは認められるであろう。そのような被覆は、米国特許第4,344,986号、第4,393,095号、第4,400,412号、第4,719,126号、第4,853,257号及び第4,971,843号(これら特許は言及することによって本明細書に取り入れる)に記載されている。
CVD法により二酸化チタンPASC被覆を形成するため、本発明の実施で用いることができる金属含有前駆物質には、四塩化チタン(TiCl)、チタンテトライソプロポキシド〔Ti(OC)〕(以下「TTIP」と呼ぶ)、及びチタンテトラエトキシド〔Ti(OC)〕(以下「TTEt」と呼ぶ)が含まれるが、それらに限定されるものではない。CVD法で用いられるキャリヤーガスには、空気、窒素、酸素、アンモニア、及びそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。好ましいキャリヤガスは窒素であり、好ましい金属含有前駆物質はTTIPである。キャリヤガス中の金属含有前駆物質の濃度は、一般に前記列挙した3種の金属含有前駆物質について、0.1体積%〜0.4体積%の範囲にあるが、これらの濃度は他の金属含有前駆物質の場合には変更できることは当業者によって認められるであろう。
PASC被覆を噴霧熱分解法により形成するため、本発明の実施で用いることができる金属含有前駆物質には、比較的水溶性の有機金属反応物、特に金属アセチルアセトネート化合物が含まれ、それは、ジェットミルで粉砕されるか、又は湿潤粉砕され、約10μより小さい粒径にし、化学的湿潤剤を使用して、水性媒体中に懸濁する。二酸化チタンPASC被覆を形成するために適切な金属アセチルアセトネートは、チタニルアセチルアセトネート〔TiO(C)〕である。水性懸濁物中の金属アセチルアセトネートの相対的濃度は、好ましくは水性懸濁物の約5〜40重量%の範囲にある。湿潤剤は、比較的発泡性の低いどのような表面活性剤でもよく、陰イオン性、非イオン性、又陽イオン性組成物が含まれるが、非イオン性が好ましい。湿潤剤は、約0.24重量%で添加されるのが典型的であるが、約0.01%〜1%以上の範囲にすることができる。水性媒体は蒸留水又は脱イオン水が好ましい。金属含有膜を熱分解堆積させるための水性懸濁物は、米国特許第4,719,127号明細書、特に第2欄第16行〜第4欄第48行(これは言及することによって本明細書に取り入れる)に記載されている。
CVD及び噴霧熱分解法の両方について、基体22の温度は、その上にPASC被覆24を形成中、金属含有前駆物質を分解してPASC活性を有する被覆(例えば、金属酸化物PASC被覆のための結晶相)を形成する範囲内にしなければならない。この温度範囲の下限は、選択した金属含有前駆物質の分解温度によって大きく影響を受けることは認められるであろう。上に列挙したチタン含有前駆物質については、前駆物質の充分な分解を与える基体22の最低温度が、約400℃(752°F)、約500℃(932°F)の温度範囲内にある。この温度範囲の上限は、被覆される基体によって影響を受ける。例えば、基体22がフロート法ガラスリボンで、PASC被覆24をそのフロート法リボンに、その製造中に適用する場合、フロート法ガラスは1000℃(1832°F)を越える温度に達していることがある。フロート法ガラスリボンは、通常800℃(1472°F)より高い温度で薄くしたり大きさを定めたり(例えば、延伸又は圧縮)する。もしフロート法ガラスを薄くする前又は薄くしている間にPASC被覆24を適用するならば、PASC被覆24は、そのフロート法ガラスリボンを夫々延伸又は圧縮した時、亀裂又はしわが入る。従って、本発明を実施する場合、ソーダ石灰シリカガラスの場合、フロート法リボンが、例えば約800℃(1472°F)より低くなって形状が安定し、フロート法リボンが、例えば約400℃(752°F)より高い金属含有前駆物質を分解する温度にある時に、PASC被覆を適用するのが好ましい。
CVD又は噴霧熱分解法によりPASC被覆24を形成することは、フロート法ガラスリボンの製造中に実施するのに特によく適している。一般に、フロート法ガラスリボンは、ガラスバッチ材料を炉の中で溶融し、清澄化溶融ガラスを溶融錫浴上に送ることにより製造する。浴上の溶融ガラスを連続ガラスリボンとして錫浴を横切って引張り、その大きさを定め、制御冷却し、形状が安定したフロート法ガラスリボンを形成する。フロート法リボンを錫浴から取り出し、コンベアロールにより炉に通して移動させ、そのフロート法ガラスリボンをアニーリングする。アニーリングされたフロート法リボンを、次にコンベアロールで切断位置を通って移動させ、そこでリボンを希望の長さ及び幅のガラスシートに切断する。米国特許第4,466,562号及び第4,671,155号明細書(これらは言及によって本明細書に取り入れる)は、ガラスフロート法について論述している。
錫浴上のフロート法リボンの温度は、一般に浴の送出端部での約1093.3℃(2000°F)から、浴の出口端部での約538℃(1000°F)の範囲にある。錫浴とアニーリング炉との間のフロート法リボンの温度は、一般に約480℃(896°F)〜約580℃(1076°F)の範囲にある。アニーリング炉中のフロート法リボンの温度は、一般に約204℃(400°F)〜約557℃(1035°F)ピークの範囲にある。
言及することによって本明細書に取り入れられる、米国特許第4,853,257号、第4,971,843号、第5,536,718号、第5,464,657号及び第5,599,387号明細書には、フロート法リボンを、その製造中に被覆するため、本発明の実施で用いることができるCVD被覆装置及び方法が記載されている。CVD法は、動いているフロート法リボンを被覆することができ、然も、フロート法リボンの製造に伴われる激しい環境に耐えることができるので、フロート法リボンにPASC被覆24を与えるのに、CVD法は非常に適している。フロート法リボン製造工程の幾つかの点で、CVD被覆装置を用いてもよい。例えば、CVD被覆装置は、フロート法リボンが錫浴を通って移動している時、又はそれが錫浴を出た後、又はそれがアニーリング炉に入る前、又はそれがアニーリング炉を通って移動している時、又はそれがアニーリング炉を出た後に、用いることができる。
キャリヤガス中の金属含有量前駆物質の濃度、キャリヤガスの流量、フロート法リボンの速度(線速度)、フロート法リボンの表面積に対するCVD被覆装置の表面積、CVD被覆装置の排気通気口を通る廃棄キャリヤガスの流量及び表面積、特に、「排気適合比(exhaust matching ratio)」として知られている、排気通気口を通る排気速度対CVD被覆装置を通るキャリヤガス導入速度の比、及びフロート法リボンの温度は、CVD法によりフロート法リボン上に形成されるPASC被覆24の最終的厚さ及び形態に影響を与えるパラメータの中に入ることは、当業者によって認められるであろう。
言及することによって本明細書に取り入れられる、米国特許第4,719,126号、第4,719,127号、第4,111,150号及び第3,660,061号明細書には、フロート法リボン製法と共に用いることができる噴霧熱分解装置及び方法が記載されている。CVD法と同様に、噴霧熱分解法は、動いているフロート法ガラスリボンを被覆するのに充分適しているが、噴霧熱分解はCVD装置よりも複雑な装置を有し、通常、錫浴の出口端とアニーリング炉の入口端との間で用いられる。
噴霧熱分解される水性懸濁物の成分及び濃度、フロート法リボンの線速度、噴霧熱分解銃の数、噴霧圧力又は体積、噴霧模様、堆積時のフロート法リボンの温度は、噴霧熱分解によりフロート法リボン上に形成されるPASC被覆24の最終的厚さ及び形態に影響を与えるパラメータの中に入ることは、当業者によって認められる通りである。
当業者に知られているように、溶融錫上のフロート法ガラスリボンの面(通常「錫側」と呼ばれている)は、表面中に錫が拡散しており、それは、溶融錫と接触していない反対側の表面(一般に「空気側」と呼ばれている)とは異なった錫吸収模様をその錫側に与える。この特性は、セイガー(Seiger)J.による「フロート法ガラス表面の化学的特性」(Chemical Characteristics of Float Glass Surfaces)、Journal of Non-crystalline Solids, Vol. 19, pp. 213-220 (1975);コラムビン(Columbin)L.等の、「フロート法ガラスの底面中の錫の浸透:合成」(Penetration of Tin in The Bottom Surface of Float Glass: A Synthesis)、Journal of Non-crystalline Solids, Vol. 38 & 39, pp. 551-556 (1980);及びウイリアムズ(Williams)K.F.E.等の「メスバウァー分光分析によるフロート法ガラスの錫酸化状態、Sn2+及びSn4+の深度プロファイル及び酸素拡散性」(Tin Oxidation State, Depth Profiles of Sn2+ and Sn4+ and Oxygen Diffusivity in Float Glass by Mossbauer Spectroscopy)、Journal of Non-crystalline Solids, Vol. 211, pp. 164-172 (1997)(これらの記載は言及することによって本明細書に取り入れる)に論じられている。PASC被覆24は、フロート法リボンの空気側上に、そのリボンを錫浴上に支持しながら(CVD法により)形成してもよく、或は、CVD法又は噴霧熱分解法により、フロート法リボンの空気側上に、それが錫浴を出た後に形成してもよく、或は、CVD法によりフロート法リボンの錫側上に、それが錫浴を出た後に形成してもよいことは、当業者によって認められるであろう。PASC被覆24を、フロート法リボンの錫側上に形成する場合、ガラス表面中に存在する錫及び(又は)錫酸化物は、その上に堆積したPASC被覆24のためのSIDB層26としての働きをすると予想される。
言及することによって本明細書に取り入れられる、米国特許第4,379,040号、第4,861,669号、第4,900,633号、第4,920,006号、第4,938,857号、第5,328,768号及び第5,492,750号明細書(言及することによって本明細書に取り入れる)には、ガラス基体を含めた基体上に、金属酸化物膜をスパッタリング被覆するMSVD装置及び方法が記載されている。MSVD法は、フロート法ガラスリボン上に、その製造中にPASC被覆を与えることに必ずしも適合するとは限らない。なぜなら、就中、MSVD法はスパッタリング操作中、減圧を必要とし、それは、連続的に移動するフロート法リボン上に形成するのが難しいからである。しかし、MSVD法は、基体22、例えば、ガラスシート上にPASC被覆24を蒸着するのに許容することができる。基体22を400℃(752°F)〜約500℃(932°F)の範囲の温度に加熱して、基体上のMSVDスパッタリング被覆を蒸着工程中に結晶化し、それによって後の加熱操作を省略することができることは、当業者によって認められるであろう。スパッタリング中、基体を加熱することは好ましい方法ではない。なぜなら、スパッタリング中に付加的加熱操作を行うことは、生産性を低下するからである。別法として、スパッタリング被覆は、MSVD被覆装置内で直接結晶化することができ、高エネルギープラズマを用いて後熱処理する必要はないが、この場合もMSVD被覆機による生産性が低下する傾向があるので、これも好ましい方法ではない。
MSVD法を用いてPASC被覆を与える好ましい方法は、基体上に被覆をスパッタリングし、MSVD被覆機からその被覆した基体を取り出し、然る後、その被覆基体を熱処理してスパッタリング被覆を結晶化してPASC被覆24にする。例えば、MSVD法を用いて、約5〜50%、好ましくは約20%の酸素を含むアルゴン/酸素雰囲気中で約5〜10ミリトール(0.67〜1.33パスカル)の圧力でチタン金属ターゲットをスパッタリングすることにより、基体22上に希望の厚さの二酸化チタン被覆をスパッタリング蒸着する。蒸着したままの被覆は結晶化していない。被覆した基体を被覆機から取り出し、約400℃(752°F)〜約600℃(1112°F)の範囲の温度に、PASC結晶形の二酸化チタンの形成を促進し、PASC活性にするのに充分な時間加熱する。一般に約400℃(752°F)〜約600℃(1112°F)の範囲の温度で少なくとも1時間であるのが好ましい。基体22がフロート法ガラスリボンから切り取ったガラスシートである場合、PASC被覆24は、空気側及び(又は)錫側にスパッタリング蒸着することができる。
CVD、噴霧熱分解、又はMSVD法により堆積したPASC被覆24を有する基体22は、後で1回以上のPASC被覆後アニーリング操作にかけてPASC被覆24の自浄活性度を増大する。そのようなPASC被覆後のアニーリングは、希望のPASC結晶相の形成を促進することにより、PASC被覆24の自浄活性度を増大することができると考えられる。アニーリングの時間及び温度は、基体22の構成、PASC被覆24の構成、PASC被覆24の厚さ、及びPASC被覆24が直接基体22の上に形成されているか、又は基体上の多層積層体の一つの層であるか否かを含めた幾つかの因子により影響を受けることは認められるであろう。基体22がフロート法ガラス片で、PASC被覆が噴霧熱分解法により形成された400Å又は625Å厚さのアナターゼ二酸化チタンである場合、被覆を500℃(932°F)で13分までアニーリングすることにより、PASC活性度が増大することが決定されている。
上述した通り、PASC被覆をCVD法により与えても、或は噴霧熱分解法又はMSVD法により与えても、基体22がナトリウムイオンを含み、それが基体22から基体22上に堆積したPASC被覆中へ移動できる場合、ナトリウムイオンはチタンを消費しながら不活性化合物を形成することにより、例えば、チタン酸ナトリウムを形成することにより、又は光励起された電荷の再結合を起こさせることにより、PASC被覆の光触媒活性を阻害又は消滅させることがある。
PASC被覆は、1)与えられるナトリウムイオン被毒をPASC被覆の一部分に限定された部分的なものとし、且つ(又は)2)SIDB層26を与えることにより、光触媒活性度の低下を起こすことなく、ナトリウムイオン含有基体22の上にPASC被覆を形成することができることが見出されている。各方法を、下に詳細に説明する。
PASC被覆の厚さが最小閾値を越える場合、基体が、ナトリウムイオンの基体からPASC被覆への移動を起こさせるのに充分な温度にある間に、ナトリウムイオン含有基体の表面上にPASC被覆を堆積しても、PASC活性度がナトリウムイオンの移動により消滅することは無いことが判明している。この結果の機構は完全には理解されていないが、PASC被覆の厚さがこの最小厚さを越えている場合、ナトリウムイオンの移動を可能にする温度を基体の温度が越えている時間中にナトリウムイオンが移動することができるのは、PASC被覆の全厚さの一部分に過ぎないためであると考えられている。その後で基体の温度が、ナトリウムイオンの移動を起こす温度よりも低く低下すると、ナトリウムイオンの移動は停止、即ち、その場所で「凍結」され、基体表面とは反対側のPASC被覆に、ナトリウムイオン被毒を受けていない厚みを残し、PASC活性度を維持することができる結果になる。このPASC被覆の最小厚さは、ナトリウムイオンの移動が起きる温度より高く基体が維持されている時間、PASC製造物品を用いるその用途、及び希望又は必要となるPASC活性度のような(それらに限定されない)予想される因子によって変化することは、当業者によって認められるであろう。1枚のソーダ石灰シリカ平板ガラスの上にCVD蒸着した二酸化チタンPASC被覆の場合、ナトリウムイオンで被毒していない充分なPASC被覆24部分を与え、そのPASC活性度を維持するためには、PASC被覆の厚さは、約250Åの最小値、好ましくは約400Åの最小値、一層好ましくは約500Åの最小値を持つべきである。
次に図2に関し、PASC被覆のナトリウムイオン被毒を防ぐ別の方法では、PASC被覆24と基体22との間にSIDB層26を与える。SIDB層26は、PASC被覆24と基体22との間の唯一の層でもよく、或はそれは多層積層体の一つの層でもよい。多層積層体を用いる場合、SIDB層26がPASC被覆24と基体22との間に配置され、基体22からPASC被覆24へのナトリウムイオンの移動を防ぐ限り、SIDB層26が基体22と接触している必要はない。
SIDB層26は、酸化コバルト、酸化クロム、酸化鉄、酸化錫、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ素ドープ酸化錫、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及びそれらの混合物(それらに限定されない)を含めた無定形又は結晶質の金属酸化物から形成することができる。混合物には、マグネシウム/アルミニウム酸化物及び亜鉛/錫酸化物が含まれるが、それらに限定されるものではない。金属酸化物には、金属の酸化物、超酸化物、又は亜酸化物が含まれることは、当業者によって認められる通りである。PASC被覆のナトリウムイオン被毒を防ぐのに必要なSIDB層の厚さは、ナトリウムイオンの移動が起きる温度以上に基体が維持される時間、ナトリウムイオンが基体から移動する速度、ナトリウムイオンがSIDB層を通って移動する速度、PASC被覆の厚さ、及び与えられた用途に必要な光触媒活性度を含めた種々の因子によって変化するが、殆どの用途にとって、PASC被覆層のナトリウムイオン被毒を防ぐためには、SIDB層の厚さは典型的には少なくとも約100Åの範囲にあり、好ましくは少なくとも約250Å、一層好ましくは少なくとも約500Åの厚さにあるべきである。SIDB層は、CVD、噴霧熱分解、又はMSVD法により基体22上に堆積することができる。噴霧熱分解又はCVD法を用いた場合、金属含有前駆物質を確実に分解してSIDB層を形成するためには、基体22は少なくとも約400℃(752°F)の温度に維持するのが好ましい。SIDB層は、ゾルゲル法を含めた他の方法によって形成してもよく、上で述べたようなゾルゲル法は、フロート法ガラスリボンの製造とは両立しない。
酸化錫SIDB層は、噴霧熱分解法により、二フッ化ジブチル錫、(C)SnF及び水の水性懸濁物を形成し、その水性懸濁物を噴霧熱分解により基体上に適用することにより基体上に堆積することができる。一般にその水性懸濁物は、典型的には、水1リットル当たり100〜400gの二フッ化ジブチル錫を含有する。懸濁促進剤として湿潤剤を用いてもよい。水性懸濁物の製造中、二フッ化ジブチル錫粒子を粉砕し、1〜10μの平均粒径にする。水性懸濁物は、激しく撹拌して、懸濁物中に均一な粒子分布を与えるのが好ましい。水性懸濁物は、少なくとも約400℃(752°F)、好ましくは約500〜700℃(932°F〜1292°F)の温度にある基体表面に噴霧熱分解により送り、それによって水性懸濁物を熱分解して酸化錫SIDB層を形成する。この方法により形成されたSIDB層の厚さは、種々のパラメータの中で、被覆線速度、水性懸濁物中の二フッ化ジブチル錫濃度、及び噴霧速度によって制御されることは認められるであろう。
別法として、酸化錫SIDB層をCVD法により、水蒸気と混合した空気キャリヤガス中の三塩化モノブチル錫蒸気(以下「MBTTCL」と呼ぶ)のような金属含有前駆物質から基体上に形成することができる。MBTTCL蒸気は、基体上に適用する空気キャリヤガス中、少なくとも約0.5%の濃度で存在し、一方基体は、錫含有層の蒸着を起こすのに充分な温度、例えば、少なくとも約400℃(952°F)、好ましくは約500℃〜800℃(932°F〜1472°F)の温度にし、酸化錫SIDB層を形成する。この方法により形成されるSIDB層の厚さは、種々のパラメータ中、被覆線速度、空気キャリヤガス中のMBTTCL蒸気の濃度及びキャリヤガスの流量によって制御されることは認められるであろう。
MSVD法により形成されるSIDB層は、「アルカリ金属拡散障壁層」(Alkali Metal Diffusion Barrier Layer)と題する1996年2月1日出願の米国特許出願通し番号08/597,543(言及することによって本明細書に取り入れる)に記載されており、そこには、アルカリ金属拡散層の形成が記載されている。そこに記載の拡散層は、約20Å〜約180Åの厚さで一般に効果的であり、障壁の密度が増大するに従って効果性は大きくなる。
本発明のPASC被覆は、通常電磁波スペクトルの約300〜400nmの紫外線範囲の放射線に照射することにより光触媒的に活性化して自浄性になる。紫外線源には、天然の光源、例えば太陽放射線及び人工的光源、例えば紫外線光(black light)又はUVA−340光源のような紫外線光源が含まれる。PASC被覆が天然紫外線とどのように反応するかを決定したい場合に、試験条件下で人工紫外線源を用いる時、UVA−340光源は、紫外線光源(black light source)の光子エネルギー分布よりも太陽光のその分布に一層よく一致する光子エネルギー分布を有し、PASC被覆が太陽光に曝した時どのように働くかを一層精密に近似させるためにUVA−340光源を用いることができる。
紫外線強度は、試験される被覆の表面で、少なくとも約20W/mの強度に較正する。例えば、強度は、カリフォルニア州サン・ガブリエルのウルトラバイアレット・プロダクツ社(Ultraviolet Products, Inc.)により登商標名ブラック・レイ(BLACK-RAY)として型記号J−221で販売されているもののような紫外線メーターで較正することができる。光源は、試験される被覆表面に対し直角に位置させるのが好ましい。
紫外線源及びPASC被覆は、互いに対し、紫外線がPASC被覆を先ず通過し、次に基体を通過するように(即ち、前面又は「被覆側」に)配置する。基体が紫外線を通過する場合、PASC被覆と紫外線源は、互いに対し、紫外線が先ず基体を通り、次にPASC被覆を通過するように(即ち、後ろ側又は「基体側」に)配置する。更に別の態様として、一つ以上の紫外線源を、PASC被覆を一方の表面又は両方の表面に有する基体の各側の上に配置してもよい。
好ましい紫外線源又は紫外線強度又は紫外線源/PASC被覆/基体の相対的位置を特異的に規定することは困難であることは認められるであろう。なぜなら、多くの因子がそのような考察に影響を与えるからである。それら因子には、就中、PASC被覆を用いる目的、例えば、屋内か又は屋外の使用;選択された紫外線源、例えば、天然又は人工;紫外線源が天然である場合の季節又は地理的影響;紫外線照射の希望又は予想される時間;紫外線のPASC被覆表面への入射角;予想される又は希望されるPASC活性度;基体及び(又は)基体の上又はPASC被覆の上に存在する他の被覆又は層によって紫外線が反射又は吸収される程度;除去するように求められる汚染物;PASC被覆の厚さ;PASC被覆の組成;ナトリウムイオン被毒の可能性;及びSIDB層の有無が含まれる。しかし、PASC被覆の表面の上に位置する紫外線源からPASC被覆の表面で測定して、約5〜100W/mの範囲内、好ましくは少なくとも約20W/mの紫外線強度が、多くの自浄性用途に対し充分なPASC活性度を与えるのに充分な強度を生ずることが見出されている。
PASC被覆のPASC活性度を評価するために、PASC効果性又はPASCの活性度を測定及び比較することができることが有用である。既知の容易に入手できる有機汚染物をPASC被覆の上に適用し、そのPASC被覆を光触媒的に活性化して、有機汚染物を除去するPASC被覆の能力を観察し測定する。ステアリン酸、CH(CH)16COOHは、PASC被覆のPASC活性度を試験するための有機「汚染物」のモデルである。なぜなら、ステアリン酸は長い炭化水素鎖を持つカルボン酸であり、従って、家庭用油及びゴミのような一般的汚染物中に存在するものに対する良好な「分子モデル」であるからである。浸漬、噴霧、回転被覆を含めた都合のよい方法により薄い試験膜としてPASC被覆上にステアリン酸を適用する。一般に、約100Å〜約200Åの厚さ範囲のステアリン酸試験膜は、適切な試験膜を与える。ステアリン酸は、メタノール溶液中に入れたステアリン酸として適用することができ、溶液1リットル当たり約6×10−3モルのステアリン酸濃度を有する溶液が満足できることが判明している。
PASC被覆のPASC活性度は、PASC被覆の上にステアリン酸膜を被覆し(その膜は一般にPASC被覆上に施すと明るい褐色の被覆として見える)、そのステアリン酸膜を紫外線に希望の強度で希望の時間露出し、そしてステアリン酸試験膜が完全に消失するか又はPASC被覆上に施したが、紫外線に照射してないステアリン酸試験膜の一部分と比較してステアリン酸膜の暗さの減少についてステアリン酸膜を肉眼で調べることにより定性的に推定することができる。
PASC被覆のPASC活性度も、PASC被覆上に存在するステアリン酸の炭素・水素(以下「C−H」と呼ぶ)伸縮振動吸収帯の積分強度を測定することにより定量的に測定し得る。積分強度は、PASC被覆の表面上に残留するステアリン酸膜の厚さに見合い、光触媒活性化自浄によりステアリン酸膜の除去が、C−H伸縮振動帯強度の低下をもたらすと予想される。ステアリン酸中に存在するC−H結合は、赤外線を吸収する。赤外線は紫外線と異なってPASC被覆を光触媒的に活性化しない。この吸収は、一般に2800〜3000cm−1の波数で起き、フーリエ変換赤外分光光度計(以下「FTIR分光光度」と呼ぶ)を用いて測定することができる。FTIRには、重水素化硫酸トリグリシン検出器(以下「DTGS検出器」と呼ぶ)又はテルル化水銀カドミウム検出器(以下「MCT検出器」と呼ぶ)のような検出器を配備してもよい。MCT検出器は、DTGS検出器よりも遥かに大きな信号対ノイズ比を与えるので好ましい。このことは、基体及び(又は)PASC被覆の外に他の被覆が、吸収スペクトルを発生させるために分光光度計により用いられる赤外線を吸収する場合に重要になる。赤外線が、基体及び(又は)他の被覆により吸収される場合、ステアリン酸膜、被覆したPASC、及び基体を通って検出器へ行く赤外線ビームの強度が著しく減少する。これと、PASC被覆の表面上に存在する低い濃度のステアリン酸(これは非常に弱い赤外線吸収特性を生ずる)とを一緒にしても、得られる赤外線信号は特に強くなることはない。従って、MCT検出器を具えた装置は、DTGS検出器を具えたものよりも約1桁大きな信号対ノイズ比を持つスペクトルを与える。赤外線ビームが通過することができる膜及び基体上に付着したステアリン酸試験膜のPASC活性度を測定する場合、赤外線ビームは、膜及び基体を通って、試験される試料の反対側上に配置した検出器の方へ向ける。膜又は基体が赤外線を通過させない場合、赤外線ビームは或る角度で表面へ向け、ステアリン酸試験膜を通過して、基体から、そこを通過するのではなく、反射されて検出器へ入るようにする。この後者の方法は反射IR分光分析として知られている。
PASC反応速度は、PASC被覆を紫外線に露出した時、PASC被覆が反応してその上に存在するステアリン酸膜を除去する速度を測定することにより、PASC被覆について決定することができる。特に、化学線(今後紫外線であると仮定する)に照射した累積時間でC−H伸縮振動特性の積分強度(表面カバレッジに正比例する)の減少速度がPASC反応速度を与える。例えば、初期PASC活性度を、PASC被覆上に存在するステアリン酸試験膜についてFTIR分光光度計で測定する。この初期PASC活性度測定についてはPASC被覆が紫外線に曝してあっても、なくてもよい。次にステアリン酸被覆PASC被覆を、或る測定される時間の間紫外線に露出し、それが終わった時に第二のPASC活性度測定をFTIR分光光度計を用いて行う。第二測定でのC−H伸縮振動の積分強度は、ステアリン酸試験膜の一部分が紫外線照射により除去されたことにより、最初のものよりも低くなっていると予想される。これらの二つの測定値から、時間に対するC−H伸縮振動の積分強度の曲線をプロットすることができ、その傾きからPASC反応速度が得られる。曲線を与えるのに二つの点で充分であるが、一層正確な曲線を与えるために、PASC活性度測定期間中、幾つかの測定を行うのが好ましい。FTIR測定点の間の紫外線に露出する時間は一定に保つか、或は2回より多いPASC活性度測定を累積する場合(紫外線への露出時間の累積時間を、曲線をプロットするのに用いる場合)には変動させてもよいが、紫外線の強度及び方向(被覆側又は基体側)は、PASC反応速度を決定する時にとる全てのPASC測定に対し一定に保つのがよい。
PASC反応速度は、cm−1−1の単位で報告することができ、その値が大きい程、PASC活性度が大きいことを示す。PASC被覆が許容可能な水準のPASCを持つか否かは、PASC被覆物品を用いる目的及びその目的に関連して選択された性能基準によって大きく決定されるので、PASC被覆を「許容可能」又は「許容不可能」にする絶対的な速度はない。殆どの用途に対し、少なくとも約2×10−3、一層好ましくは少なくとも約5×10−3cm−1−1のPASC活性度が望ましい。
本発明に従って製造されたPASC被覆のPASC活性度を有意に決定し、比較するために、PASC被覆の厚さを測定することも有用である。なぜなら、PASC被覆の厚さは、下の例で示すように、光触媒活性度に影響を与えるからである。PASC被覆24及び(又は)、もし存在するならばSIDB層26の厚さは、角度可変分光偏光解析(以下「VASE」と呼ぶ)によるか、測定された膜の消失縁のプロフィロメータ(profilometer)測定により決定するか、又は当分野で知られているように、干渉色から推定することができる。
PASC被覆24及び(又は)、もし存在するならば、SIDB層26の粒径は、シェラー(Scherrer)の関係を用いてX線回折(以下「XRD」と呼ぶ)データから計算することができる。この関係は当分野で知られており、その論述は、クラグ(Klug)及びアレクサンダー(Alexander)による「多結晶質及び無定形物質のX線回折法」(X-ray Diffraction Procedures for Polycrystalline and Amorphous Materials)(1954年、John Wiley & Sons, Inc.)の第9章に見出すことができる。
本発明の次の諸例は例示するために与えられており、本発明は、それによって限定されない。
参考例1
CVD法により形成された2100Å厚のPASC被覆
約2100Åの厚さを有する二酸化チタンPASC被覆のPASC活性度を次のようにして調べた。ペンシルバニア州ピッツバーグのPPGインダストリーズ社により登録商標名ソレックス(SOLEX)ガラスとして販売されている1枚のソーダ石灰シリカ・フロート法ガラスの空気側である基体22の上に、CVD法を用いてPASC被覆を用いて蒸着した。図3に関し、ソレックスガラス板は、約幅14cm×長さ30.5cm×厚さ0.4cm(幅5.5インチ×長さ12インチ×厚さ0.016インチ)の大きさを持ち、図3に示したように、CVD被覆機88を用いて二酸化チタンPASC被覆で被覆した。CVD被覆機88は、一般に図3に示した垂直点線90及び92によって分離された三つの領域からなる。それら三つの領域は、予熱領域94、被覆領域96及びアニーリング領域98からなる。ソレックスガラス板は、以下、基体22として示すが、循環コンベア102の上に乗って矢印104の方向に三つの領域を通って移動する。
基体22は予熱領域94中へ移動し、コンベア102の上及び下に間隔を開けて配置された複数の加熱器106により約649℃(約1200°F)の温度に予熱される。基体22はコンベア102によりCVD被覆領域94中へ移動する。CVD被覆領域96は、少なくとも一つの被覆装置97を有することは分かるであろう。一つより多くの被覆を連続して蒸着するために、被覆領域96は複数の被覆装置97を持っていてもよい。被覆装置97は、支持用補助装置及び制御機、例えば、ガス搬送補助装置、液体搬送補助装置、温度制御機、排気補助装置及び制御機、温度及び圧力監視補助装置を有するが、それらのいずれも図示されていない。ガス搬送補助装置は、基体22の表面へ行くキャリヤガスの流れを制御する。キャリヤガスとして窒素ガスを用いた。導入窒素流は、加熱器(図示せず)により113℃(約235°F)の温度に制御した。そのキャリヤガスに全流量の20%のNHを含有させた。排気流量は、導入流量の125%に相当した。基体22の上に二酸化チタンPASC被覆を蒸着するのに用いた金属含有前駆物質は、全流量の0.4体積%で存在したTTIPであり、これも約113℃(約235°F)の温度で供給した。CVD被覆機88を通るN、NH及びTTIP蒸気の全流量は、75標準リットル/分(slm)であった。コンベア102の線速度は、約127cm(50インチ)/分であり、被覆装置間隙幅は約0.48cm(3/16インチ)であった。基体22は、被覆装置97の下にある間、約554℃(1030°F)の温度に維持し、その間、被覆24を基体22の上に蒸着し、被覆試料100を形成した。約2100Å厚(VASEにより測定)の二酸化チタンPASC被覆24が被覆試料100の上に形成された。
被覆試料100を、次にアニーリング領域98へ進ませ、そこで約549℃(1020°F)の初期温度から、約121℃(250°F)の最終温度へ約26分の時間に亙ってアニーリングした。
PASC被覆試料100をXRD分析にかけた。PASC被覆24の粒径は、シェラーの関係を用いて計算し、約309Åであることが決定した。被覆試料100は、XRD像中にアナターゼ二酸化チタンに相当する強いピークを示した。
PASC被覆試料100を、次にステアリン酸試験膜で被覆し、その光触媒活性度を測定した。溶液1リットル当り6×10−3モルのステアリン酸濃度を有するステアリン酸/メタノール溶液を、被覆試料100を約1000回転/分の速度で回転しながら、その試料100の中心上に約2ml/10秒の速度でステアリン酸溶液をピペットで落とすことにより適用し、それによりステアリン酸が遠心力で被覆試料100の表面を横切って流れ、被覆試料100の表面上に、約100〜200Åの厚さ範囲の概して均一な厚さのステアリン酸膜を与えた。ステアリン酸層の厚さは、被覆試料100の長さに沿って一定ではなく、適用した遠心力のため、被覆試料100の端部では厚く、被覆試料100の中心部では薄くなっているので、上では「概して」なる言葉を用いる。記載したステアリン酸溶液濃度、回転速度、試料の大きさ及びピペットによる流下速度は、希望の厚さのステアリン酸被覆が得られるように修正することができることは認められるであろう。上述のパラメータの下で、ステアリン酸試験膜の平均厚さは、石英結晶マイクロバランスを用いたIR強度の補正により決定して約150Åであった。
ステアリン酸試験膜/二酸化チタンPASC被覆試料100を、その被覆試料100の被覆側に対し垂直な紫外線光源からの紫外線に露出し、PASC被覆24の表面で約20W/mの強度を約30分間の累積時間与え、ステアリン酸試験膜の光触媒活性化自浄を起こした。MCT検出器を具えたFTIR分光光度計を用いて、紫外線露出時間累積30分間に亙り周期的にFTIR分光光度計測定を行い、光触媒活性度を定量的に測定した。特に、ステアリン酸試験膜/PASC被覆試料100を測定時間に亙り紫外線に露出し、その後で被覆試料100をFTIR分光光度計に入れ、そこでステアリン酸のC−H吸収帯の積分領域を測定し、PASC活性度を決定した。被覆試料100を再び次の測定時間に亙り紫外線に露出し、更にステアリン酸を除去し、然る後、更にFTIR測定を行なった。この方法を繰り返し、紫外線への累積露出時間に対するC−H伸縮振動の積分IR吸収強度をプロットして曲線を得、その勾配からステアリン酸試験膜/二酸化チタンPASC被覆試料100についてのPASC速度を与えた。上で述べたように、ステアリン酸試験膜の厚さの変動による影響を最小にするため、被覆試料100の同じ領域の周辺に亙って全てのFTIR測定を行なったことは判るであろう。光触媒反応速度は、3.53×10−3cm−1−1であることが決定され、それはナトリウムイオンを殆ど又は全く含まないPASC被覆基体(例えば、石英ガラス基体)の場合の値に近く、二酸化チタンPASC被覆は、2100Åの厚さでナトリウムイオン被毒を克服するのに充分であることを示した。
参考例2
CVD法により形成された700〜800Å厚のPASC被覆
約700〜800Åの厚さを有する二酸化チタンPASC被覆24を、ガラス基体上に、参考例1と同じやり方でCVD法により蒸着した。但し次の点を除く。
参考例2で用いたガラス組成物は、3mm(0.12インチ)の厚さの透明(即ち、鉄分の少ないソーダ石灰シリカ)ガラスであった。参考例2の予熱温度は593℃(1100°F)であった。参考例2のTTIP濃度は、全流量を50slmとして0.1%であった。キャリヤガスに全流量の24%としてNHを含有させた。線速度は76.2cm/分(30インチ/分)であった。間隙幅は1/16インチ(0.16cm)であった。二酸化チタンPASC被覆24の厚さを、当分野で知られている薄膜厚さ測定技術である干渉色により推定し、約700〜800Åの範囲内にあることが決定された。
参考例1の記載と同じやり方で、二酸化チタンPASC被覆の上にステアリン酸試験膜を適用し、参考例1に記載のやり方で、UV光に露出した後、PASC活性度のFTIR分光光度計による周期的測定を累積時間33時間に亙って行なった。光触媒反応速度は、約0.17×10−3cm−1−1であることが決定された。
参考例2のPASC活性度が低下しているのは、参考例1参考例2では二酸化チタン被覆の厚さに差があることによるものと考えられる(夫々、約2100Å対約700〜800Å)。特に、参考例2の二酸化チタンPASC被覆のための二酸化チタンPASC被覆の全厚さの%が、参考例1のものより大きいため、参考例2の二酸化チタン被覆中へのナトリウムイオン拡散深さが増大していることにより、参考例2のPASC反応速度が参考例1のものよりも小さくなっていると考えられる。ナトリウムイオンは、アニーリング炉44中でガラス試料から参考例2のPASC被覆中へ移動したと考えられる。参考例1と2の比較から引き出される一つの結論は、SIDB層がないと、厚いPASC被覆はナトリウムイオン被毒を受けにくく、従って一層大きなPASC活性度を維持すると言うことである。
例3
CVD法により形成されたSIDB層の上のPASC被覆
この例では、PASC活性度に対する二酸化錫SIDB層存在の影響を研究する。特に、4枚のフロート法ガラスの空気側の上に、二酸化錫SIDB層を形成し、そのSIDB層の或る物理的特性を研究した。然る後、更に16枚のフロート法ガラスにCVD法により二酸化錫SIDB層を与え、その二酸化錫SIDB層の各々の上を、今度はCVD法により二酸化チタンPASC被覆で被覆した。16枚のPASC被覆/SIDB層被覆/フロート法ガラスの各々から一つずつの試料を切り取り、それら16の試料の上にステアリン酸試験膜を被覆した。16のステアリン酸試験膜被覆/二酸化チタンPASC被覆/二酸化錫SIDB層被覆/試料を紫外線に露出し、それら試料のPASC反応速度を決定した。
3A.SIDB層の研究
約12.7cm×30.48cm×0.4cm(5インチ×12インチ×0.16インチ厚さ)の大きさを持つソーダ石灰シリカ・フロート法ガラスリボンから切り取った4枚のガラスの空気側上に、参考例1に記載のCVD装置を用いて、SIDB層をCVD法により蒸着した。特に、SIDB層は二酸化錫SIDB層であり、金属含有前駆物質濃度、水蒸気濃度、CVD線速度、予熱温度及びSIDB層の厚さの二酸化錫SIDB層に対する影響を研究した。4枚のガラス全てについて、CVD法により酸化錫SIDB層を形成するのに用いた金属含有前駆物質はMBTTCL蒸気であり、それを空気キャリヤガス中の水蒸気と混合した。
4枚のガラス片の第一のものを、空気キャリヤガス中に約1.5%の濃度のMBTTCL蒸気及び約1.5%の濃度の水蒸気を入れたものを、そのガラス片の空気側の方へ送ることにより、参考例1のCVD法及び装置により酸化錫SIDB層で被覆した。予熱温度は約648℃(1200°F)であり、線速度はこのガラスについては約127cm(50インチ)/分であった。それによって形成された酸化錫SIDB層は、VASEにより決定して約3500Åの厚さであった。SIDB層の抵抗率及び粒径を測定し、夫々約4.6×10−3Ω・cm及び198Åであることが判明した。
第二のガラス片を同様に酸化錫SIDB層で被覆したが、線速度は約50.8cm(20インチ)/分に低下し、空気キャリヤガス中、MBTTCL蒸気濃度は約0.5%に減少し、水蒸気濃度も約0.5%に減少した。予熱温度は約648℃(1200°F)に維持した。それにより形成された酸化錫SIDB層は、VASEにより決定して約4340Åの厚さであった。抵抗率は、約3.9×10−3Ω・cmであり、粒径は約185Åであることが判明した。
第三のガラス片を同様に酸化錫SIDB層で被覆したが、予熱温度は約480℃(900°F)に低下し、一方線速度は約127cm(50インチ)/分に増大した。空気キャリヤガス中、MBTTCL濃度は約1.5%であり、水蒸気濃度は約1.5%であった。得られた酸化錫SIDB層は、VASEにより決定して約1000Åの被覆厚さを持ち、約3.8×10−2Ωcmの抵抗率及び約59Åの粒径を持っていた。
第四のガラス片を同様に酸化錫SIDB層で被覆したが、予熱温度は約480℃(900°F)に維持し、線速度は50.8cm(20インチ)/分に低下した。空気キャリヤガス中、MBTTCL濃度は約0.5%であり、水濃度は約0.5%であった。酸化錫SIDB層は、VASEにより決定して約1010Åの厚さを持ち、約2×10−2Ωcmの抵抗率及び約78Åの粒径を持っていた。
前述より、記載した温度範囲、濃度、線速度、及びSIDB層厚さの範囲内で、抵抗率又は粒径は変化するが、4枚のガラス片全てが錫石(cassiterite)構造を持っていたことが判明したことが結論された。
3B.CVD法により酸化錫SIDB層の上に形成された二酸化チタンPASC被覆の形成
12.7×30.48cm×0.4cm厚(5インチ×12インチ×0.16インチ厚)の大きさの16枚の更に別のフロート法ガラス片を、夫々、例3Aに一般的に記述したCVD被覆機及び方法により、酸化錫SIDB層で被覆し、次に参考例1に一般的に記述したように、CVD被覆装置及び方法を用いて二酸化チタンPASC被覆で更に被覆した。この被覆操作のために、オンラインCVD法で一対の連続した被覆装置(一つはSIDB層、一つはPASC被覆用)を用いた。SIDB層の上のPASC被覆は、SIDB層の別々の分析を、不可能ではないとしても、困難し、従って、PASCを上に被覆した酸化錫層は、上の節3Aに記載した被覆されていない酸化錫層と同じ性質を持つものと仮定したが、SIDB層とPASC被覆の両方を、下の表1に記載し、下で詳細に述べる種々の特定の被覆パラメータの下で16枚のガラス片に施した。
一般に、16の酸化錫SIDB層は、空気で運ばれた水蒸気と混合した空気キャリヤーガス中のMBTTCL蒸気の金属含有前駆物質により蒸着した。MBTTCL蒸着温度は、約160℃(320°F)に維持した。全流量は60slmであり、排気適合比は115%であった。間隙幅は0.16cm(1/16インチ)であった。この例で形成されたSIDB層のために変化させた特定の被覆パラメータには、予熱領域94温度、線速度、MBTTCL濃度、水蒸気濃度、及びSIDB層厚さが含まれる。16枚のガラス片の各々についての薄い二酸化錫SIDB層被覆パラメータ及び予期されるSIDB層厚さを下の表1に示す。実際の厚さ測定は行なわなかった。予期される厚さは、上の節3Aで得られた結果に基づいている。16枚の片は予熱温度及び線速度に基づき、表1では夫々四つの基体からなる四つの群に分けてある。
Figure 0004334459
SIDB被覆した16枚のガラス片の各々を、今度は第一SIDB被覆装置の下流に位置する第二CVD被覆装置により、そこを通る時にガラス片のSIDB層被覆面の上に窒素(N)キャリヤガス中に入れたTTIP蒸気キャリヤの金属含有前駆物質を送ることにより蒸着した二酸化チタンPASC被覆でその上を被覆した。16枚のガラス片の内8枚のTTIP/キャリヤガス混合物にアンモニア(NH)を添加した。16枚の片全てに対し、キャリヤガスは約113℃(235°F)の温度に維持した。参考例1の場合のように、16枚の片をアニーリングした。TTIP蒸気化器の温度を約104.4℃(220°F)に維持した。下の表2に、16枚のガラス片についての二酸化チタンPASC被覆パラメータを示す。16枚のガラス片は、表2中、予熱温度計及び線速度に基づき夫々4枚の片からなる四つの群に分けてある。
Figure 0004334459
★ ここでの予熱温度は、予熱領域94の温度を指す。唯一つの予熱操作があり、ここ
に列挙した予熱温度は、ガラス片がアニーリング領域98に入る前に、CVD被覆
機88を通って移動し、最初にSIDB層を受け、次にPASC被覆を受ける時、
予熱領域でそれらガラス片の温度を上昇させた予熱温度と同じ温度である。
★ 1/16インチ=0.16cm、3/16インチ=0.38cm
表2に記載したPASC被覆を適用した後、16枚のガラス片の各々の選択した性質を下の表3に示す。PASC被覆の厚さは測定されていないが、線速度及び前駆物質濃度のような他の蒸着パラメータの変動により、各々の郡内で変動していると予想される。しかし、粗さ及び粒径とPASC活性度とを関係付けるために、PASC被覆の表面粗さ及び粒径を決定した。表面粗さ測定値は、PASC被覆について行われたアトミック・ホース・マイクロスコープ(Atomic Force Microscope)(以下、「AFM」と呼ぶ)測定に基づき推定した。予熱温度の関数として、表面粗さ及び粒径及び結晶相に大きな変動があることが判明した。
Figure 0004334459
★ X線回折像の中にアナターゼ相のピークが検出されなかった(試料1、2、5、
6、8、9及び14)か、又はピークが余りにも広くて弱いため測定できなかっ
た(試料3、4、7及び15)ため、粒径は計算できなかった。
3C.16の基体のPASC活性度試験についての説明
16枚のPASC被覆/SIDB被覆ガラス片の各々の中心部から、2.54cm×10.16cm(1インチ×4インチ)試料又は試験帯を切り取った。16の試験帯の各々を、参考例1に記載したように、回転被覆によりステアリン酸試験膜で被覆した。16の試験帯を、次に紫外線光源からの紫外線に20W/mの強度で累積時間7時間に亙り露出し、ステアリン酸試験膜の光触媒活性化自浄を起こさせた。
ステアリン酸試験膜の厚さは、2.54cm×10.16cm(1インチ×4インチ)試験帯の長さに沿って変動することが判明したので(即ち、上で述べたように回転する試験帯の中心部にステアリン酸を滴下した時にそれに影響を与える遠心力のため、試験帯の長さに沿って干渉色の変化により目で見て観察して、試験帯の各端部ではステアリン酸試験膜が厚く、各試験片の中心部の方へステアリン酸試験膜は薄くなっていた)、MCT検出器を具えたFTIR分光光度計を用いて16の試験帯の各々の各端部で光触媒活性度を測定した。16の試験帯の各々について行なった各一対の試験に対し、FTIR分光分析試験により得られたPASC反応速度を表4に示す。
Figure 0004334459
表4から、或る試験帯の場合、その試験帯の二つの端部で活性度に非常に大きな差があることが明らかである。この差は、試験帯上のステアリン酸層の厚さが不均一であることに関係していると考えられる。
表4に関し、蒸着条件と、SIDB層の上のPASC被覆のPASC活性度との間には相関関係ではないように見える。表4に示したように、三つの最も活性な試験帯は、試験帯の左側の活性度に基づく試料13、10及び14である。これらの帯13、10及び14は、高い予熱温度648.8℃(1200°F)に対応する。PASC活性度によりランク付けをすると、残りの13の試験帯は、ランク中、他の被覆パラメータと同様予熱温度の多様性を示しており、ナトリウムイオン拡散障壁層の存在が、PASC被覆層のナトリウムイオン被毒を防ぐ働きをし、光触媒活性度を依然として達成しながら、被覆条件及びパラメータに一層大きな許容範囲を与えることができることを示している。
参考例4
噴霧熱分解により形成したPASC被覆
本例では、ガラス片を、噴霧熱分解により種々の厚さの二酸化チタンPASC被覆で被覆し、PASC活性度に対するPASC被覆の厚さの影響を研究した。
夫々10.16cm×10.16cm×4mm(4インチ×4インチ×0.16インチ)厚の3枚のフロート法ガラス片の空気側に、噴霧熱分解法により二酸化チタンPASC被覆を被覆した。
ガラス片上にPASC被覆を適用するのに用いた噴霧熱分解装置の基本的部品を図4に示す。噴霧熱分解装置は、予熱領域120及び噴霧熱分解領域122を有する。ガラス片126はコンベア(図示せず)上に乗せて予熱領域120中へ運び、そこで約600〜700℃(1112°F〜1292°F)の範囲の温度へ複数の電気加熱器130により加熱する。次にそのガラス片126を振動噴霧ノズル132を通ってコンベアで運ぶ。そのノズルはガラス片126の空気側の上約25.4cm(10インチ)の所に配置されている。有機金属被覆反応物の水性懸濁物134が、混合室138中の撹拌器136によって懸濁状に維持されている。水性懸濁物134を配管140を通って噴霧ノズル132へ送り、そこで都合のよいやり方で(配管144により噴霧ノズル132の方へ送られる圧縮空気源142からの)圧縮空気と混合する。水性懸濁物134/圧縮空気混合物をノズル132からガラス片126の表面上へ噴霧して噴霧模様146を形成し、熱分解してガラス片126の上にPASC被覆24を形成した。PASC被覆ガラス片126を空気中で冷却した。
この例では、選択した有機金属被覆反応物はチタニルアセチルアセトネートであり、3枚のガラス片126の表面の方へ送られた水性懸濁物の速度は、夫々のガラス片上にPASC被覆の厚さを与えるように制御した。厚さは400Å、725Å及び1000Åであった。全ての他の被覆パラメータを一定に保ち、SIDB障壁層を持たない透明なフロート法ガラス上に噴霧熱分解により堆積した二酸化チタンPASC被覆について、光触媒活性度に対するPASC被覆厚さの影響を決定した。
表5は、この例についての特定の被覆パラメータを示している。
Figure 0004334459
二酸化チタンPASC被覆を堆積した後、3枚のガラス片の各々を、2.54cm×10.16cm(1インチ×4インチ)の四つの試験帯に切断し、全部で12の試験帯を与えた。
夫々、3枚の最初のガラス片の各々からの一つの試験帯を、X線回折分析にかけた。この分析から、この例での3枚のガラス片は、全てX線回折分析によりアナターゼ二酸化チタンに適合する強いX線回折線を有することが判明した。
3枚のガラス片について光触媒活性度を検討するため、夫々3枚のガラス片の各々からの一つの試験帯を、参考例1に記載した方法によりステアリン酸試験フイルムで被覆した。次に三つの試験帯を、各試験帯の被覆側に対し垂直に配置した紫外線光源からの紫外線に、20W/mの強度で累積時間7時間に亙って露出した。三つの試験帯の各々の光触媒反応速度を、上で記載したように、MCT検出器を用いたFTIR分光分析により定量的に決定した。3枚のガラス片についての光触媒反応速度を表5に示す。
上で述べたことから、噴霧熱分解法により形成されたPASC被覆により、PASC被覆のナトリウムイオン被毒を起こすことなく、低いが許容可能な光触媒反応速度が得られることを結論することができる。表5中の試料Cによって示されているように、PASC被覆が厚くなるとPASC活性度が一層高くなることも結論することができる。
例5
噴霧熱分解により形成したPASC被覆の、SIDB層が或る場合と無い場合との比較、及びPASC被覆後のアニーリングの影響についての研究
この実験的基盤では、8枚のガラス片に噴霧熱分解法によりPASC被覆を与え、PASC被覆のPASC反応速度に対する、SIDB層の有無の影響、PASC被覆厚さの影響、及びPASC被覆堆積中の基体温度の影響を検討した。
特に、4mmソレックスフロート法ガラスの8枚のガラス片の内4枚の空気側に、夫々、二フッ化ジブチル錫、(C)SnF及び湿潤剤の水性懸濁物から噴霧熱分解により堆積した500Å厚の二酸化錫SIDB層で被覆した。その二酸化錫SIDB層は、参考例4に記載した噴霧熱分解装置及び手順により適用した。SIDB層で被覆した後、ガラス試料を室温へ冷却し、これら4枚のガラス片及び残りの4枚のガラス片を、夫々SIDB層の上に二酸化チタンPASC被覆を被覆し、室温へ冷却した。SIDB層の適用とPASC被覆との間で室温へ冷却し、次に再加熱した後PASC被覆を適用した4枚のSIDB層被覆ガラス片は、この実験で用いた実験室用噴霧熱分解装置が唯一つの噴霧熱分解位置しか持たなかったためこのやり方で製造し、それにより二フッ化ジブチル錫懸濁物(SIDB層を与えるため)からチタニルアセチルアセトネート懸濁物(PASC被覆を与えるため)へ変換する必要があったことに注意すべきである。そのような中間的冷却工程は、好ましい被覆機では除かれ、例えば、二つの噴霧熱分解位置を配備し、連続的フロート法ガラスリボンのような移動する基体にSIDB層及びPASC被覆を、そのような中間的冷却工程を用いることなく、連続的に被覆するようにする。
8枚のPASC被覆ガラス片を全て室温へ冷却した後、それらガラス片を、参考例1に記載したステアリン酸膜で被覆し、次にその膜を、ステアリン酸試験膜/PASC被覆ガラス片の被覆側に対し直角に配置したUVA−340光源により紫外線に露出し、PASC被覆表面で20W/mの強度を与えた。ステアリン酸試験膜が除去されるPASC反応速度を、参考例1に記載した方法を用いて定量的に決定した。このPASC反応速度は、下の表6中、0.00分の見いだしを付けた欄に示してある。0.00分のパラメータは、PASC被覆を上に有するガラス片が、室温へ冷却された後、未だアニーリングされていないことを意味し、紫外線照射の累積時間について言及したものではないことに注意すべきである。
ステアリン酸除去に対するアニーリング時間の影響は、次のようにして調べた。残留ステアリン酸試験膜を、メタノール浸漬拭き取り布で表面を、ステアリン酸膜又は曇りが観察されなくなるまで拭くことにより、8枚のガラス片の各々のPASC被覆から洗浄除去した。次に8枚のガラス片の各々を、今度は夫々約500℃(932°F)に維持した炉中に約3分間入れ、夫々のガラス片を加熱した。炉加熱のスイッチを切り、炉の扉を開け、夫々のガラス片を炉中でほぼ室温まで冷却した。炉中でのゆっくりした冷却速度によりアニーリングを与えた。次に夫々のガラス片を新しいステアリン酸試験膜で被覆し、紫外線に露出し、この例の直ぐ上で述べたアニーリングしてないPASC被覆と同じやり方で、PASC反応速度を決定した。上に記載したように、再び夫々のガラス片の表面から残留ステアリン酸試験膜を洗浄除去し、夫々のガラス片を更に別の加熱に10分間かけ、同じやり方で炉中でゆっくり冷却し、その結果13分の累積加熱時間を与え、そこでステアリン酸試験膜を、記載したように再び適用し、上述の如くPASC反応速度を決定した。この工程を更に何回か繰り返し、73分の累積加熱時間を与え、次にアニーリングを与えるため炉中でゆっくり冷却した。
8枚のガラス片(D〜K)についての累積アニーリング時間に対するSIDB層及びPASC被覆の性質及びPASC反応速度を、次の表6に示す。
Figure 0004334459
★ ステアリン酸を除去するためのPASC反応速度(×10−3cm−1分−1)。
表6に示した光触媒分析の結果は、障壁層がなく、約625Åの二酸化チタン層の厚さ(試料I)は、SIDB層の上の一層薄い400ÅのPASC被覆(試料K)のPASC活性度に近くなることを示唆している。試料Kの場合、SIDB層は記載した中間的冷却及びその後の再加熱操作を受けており、その再加熱操作が試料KのSIDB層の効果を低下し、それがなければ一層高いPASC活性度を持っていたかも知れないことに注意すべきである。
表6の試料Kは、アニーリング時間がPASC反応速度に対し持つことがある重要な影響力も示している。3分のアニーリング時間後、試料KのPASC活性度は、約4.64から約12.29×10−3cm−1−1へ上昇したが、その後で付加的アニーリングと共に低下した。二酸化チタンPASC被覆にアナターゼ相が、PASC活性度を測定する3分間のアニーリング中に形成され、SIDB層中に酸化錫が存在することにより認め得る程のナトリウムイオン被毒を起こすことなく形成されたと考えられる。この特別な理論に束縛されたくはないが、余りにも長い累積時間アニーリングし続けると、SIDB層の存在にも拘わらず、ナトリウムイオン被毒を起こし、それが試料KのPASC活性度の低下の原因になっていると考えられる。
上記諸例は、本発明を例示するために与えられており、本発明を限定しない。
PASC被覆を与える上述の方法は、そのような被覆を連続的に移動する基体、例えば、連続的フロート法ガラスリボン上に、その製造中に与えることに関連して記述してきたが、これらの方法は、基体製造工程の下流で用いることもできることは分かるであろう。例えば、基体を湾曲及び(又は)強化する工程の一部分として、ガラス基体を含めた基体にPASC被覆を与えることができるが、それらガラス基体に限定されるものではない。例えば、ガラス基体を後で湾曲及び(又は)強化するため加熱する場合、SIDB層を持つか又は持たないPASC被覆を、湾曲/強化の前に、上述の噴霧熱分解又はCVD又はMSVD法により適用することができる。CVD及び噴霧熱分解法は、ガラス基体を湾曲/強化温度へ加熱しながら使用することもできる。SIDB被覆を持つか又は持たないPASC被覆を、湾曲/強化用再加熱操作後に、CVD、噴霧熱分解、又はMSVD法のいずれかによりガラス基体に施してもよい。
ゾルゲル法により製造されたPASC被覆と、上述の方法により製造されたもとには差があると考えられる。例えば、ゾルゲル法により製造されたPASC被覆は、CVD又は噴霧熱分解法により製造されたものよりも多孔質で、密度が低く、一般に厚く、一般に透明体として用いるのには適合性が低く、一層多くのOH基を含む傾向があると予想される。上で述べたように、過剰のOH基は、PASC被覆中に適切な結晶が形成されるのを妨げ、それが今度はPASC活性度を低下するので、望ましくない。CVD又は噴霧熱分解法により製造されたPASC被覆は、ゾルゲル法により製造されたものよりも一層細かな粒子構造を有すると予想される。
PASC被覆を形成するゾルゲル法に勝る本発明の利点には、ゾルゲル被覆法によって得られる遥かに厚い多孔質の被覆とは異なって、基体上に薄い緻密なPASC膜を形成することができることが含まれる。本発明のPASC被覆は薄いので、それらはガラス基体上の透明被覆として用いるのに美的に許容することができる。更に別な利点は、本発明によるPASC被覆を与える方法は、現在入手できるゾルゲル法で要求されるような、被覆又は被覆前駆物質の適用後、基体を加熱する必要がないことである。このことは本発明を一層コストが低く、一層効果的にし、例えば、装置コストを低くし、エネルギーコストを低くし、製造時間を短くする(それらに限定されない)のみならず、本発明のPASC被覆のナトリウムイオン移動の機会、従ってナトリウムイオン被毒を著しく減少する。更に、本発明の方法は、フロート法ガラスリボンのように連続的に移動する基体上にPASC被覆を形成するのに容易に適用されるのに対し、現在入手できるゾルゲル法ではそのように容易に適用することはできない。
次の請求の範囲によって規定される本発明の範囲には種々の修正が含まれる。
分散されたPASC被覆を上に有する基体の一部分の立面図である。 基体とPASC被覆との間に介在するSIDB層を例示する、図1と同様な図面である。 CVD被覆機の選択された部品の模式図である。 噴霧熱分解被覆機の選択された部品の模式図である。

Claims (6)

  1. 少なくとも結晶相を有する、二酸化チタン層を生成する方法であって、前記二酸化チタン層はフロート法ガラスリボン上に形成された光触媒作用により活性化可能な自浄性被覆であり、しかも、前記被覆が紫外線に露出されたときに少なくとも2×10−3cm−1−1の光触媒活性化自浄反応速度を有することができる層であり、前記反応速度は、光触媒活性化自浄性被覆上に堆積した100〜200Å厚の範囲のステアリン酸試験膜を除去する速度として決定されるものであって、光触媒活性化自浄性被覆の上に配置された紫外線源によって与えられた約300〜400nmの範囲の周波数をもち、前記光触媒活性化自浄性被覆の表面で測定して約20W/mの強度を有する紫外線に光触媒活性化自浄性被覆を露出した累積時間に対し、ステアリン酸試験膜の炭素−水素伸縮振動吸収帯の積分強度について複数のフーリエ変換赤外線分光光度計測定値をプロットすることにより得られた曲線の勾配として定量的に決定されたものであり、
    錫浴の上方にまたは錫浴の下流側に被覆装置を配置し;
    前記被覆装置を通して、二酸化チタン前駆物質を少なくとも400℃(752°F)の温度を有し、ナトリウムイオン拡散障壁層を有するガラスリボンの表面上に送り;そして
    その後、ガラスをアニーリングする、
    諸工程を含む、それによって表面粗さ(RMS)が13.13−23.08nmの範囲にある二酸化チタン層を形成する方法。
  2. 光触媒活性被覆物品であって、
    ナトリウムイオンをその中に有する空気側主表面と、その反対側の拡散された錫をその中に有する錫側主表面と定義される主表面とを有するガラス基体;及び
    空気側主表面の上の被覆であって、第一表面と、ガラス基体の空気側主表面側の第二表面と定義される反対側の表面とを有する光触媒活性二酸化チタン層を含み、その層の第二表面は、ナトリウムイオン拡散障壁層を介してガラス基体の空気側主表面に接しており、ガラス基体の空気側主表面からその中に拡散してきたナトリウムイオンを有する場合もある前記被覆;
    を含み、
    光触媒活性二酸化チタン層は、二酸化チタンのアナターゼ相と無定形相の組合せを含み、この層は200−2100Åの範囲の厚さと、少なくとも2×10−3cm−1−1の光触媒活性自浄反応速度と、13.13−23.08nmの範囲にある表面粗さ(RMS)を有し、前記反応速度は、光触媒活性化自浄性被覆上に堆積した100〜200Å厚の範囲のステアリン酸試験膜を除去する速度として決定されるものであって、光触媒活性化自浄性被覆の上に配置された紫外線源によって与えられた約300〜400nmの範囲の周波数をもち、前記光触媒活性化自浄性被覆の表面で測定して約20W/mの強度を有する紫外線に光触媒活性化自浄性被覆を露出した累積時間に対し、ステアリン酸試験膜の炭素−水素伸縮振動吸収帯の積分強度について複数のフーリエ変換赤外線分光光度計測定値をプロットすることにより得られた曲線の勾配として定量的に決定されたものである、前記被覆物品。
  3. 光触媒作用によって活性化可能な自浄性の製造物品であって、
    第一主表面と、第二主表面として定義される反対側の主表面を有し、第一主表面は溶融ガラスを冷却しながらガラスリボンの形状に溶融錫浴を横切って引きながら形成するときにその中に拡散した錫を有しているガラス基体;及び
    第二主表面上にナトリウムイオン拡散障壁層を介して存在する少なくとも400〜800℃の範囲の温度で化学蒸着によって堆積された、少なくとも2×10−3cm−1−1の光触媒活性化自浄反応速度を有することができ、前記反応速度は、光触媒活性化自浄性被覆上に堆積した100〜200Å厚の範囲のステアリン酸試験膜を除去する速度として決定されるものであって、光触媒活性化自浄性被覆の上に配置された紫外線源によって与えられた約300〜400nmの範囲の周波数をもち、前記光触媒活性化自浄性被覆の表面で測定して約20W/mの強度を有する紫外線に光触媒活性化自浄性被覆を露出した累積時間に対し、ステアリン酸試験膜の炭素−水素伸縮振動吸収帯の積分強度について複数のフーリエ変換赤外線分光光度計測定値をプロットすることにより得られた曲線の勾配として定量的に決定されたものであり、13.13−23.08nmの範囲にある表面粗さ(RMS)を有する光触媒作用によって活性化可能な自浄性金属酸化物被覆;
    を含む、前記製造物品。
  4. 光触媒作用によって活性化された自浄性物品であって、
    第1主表面と第2主表面と定義される反対側の主表面を有し、第1主表面は、溶融錫浴上でガラスリボンを形成するときにその中に拡散した酸化錫を含む薄い層を有しているガラス基体であって、前記主表面の少なくとも1つはその上にナトリウムイオン拡散障壁層を介して堆積された光触媒作用により活性化された自浄性金属酸化物被覆を含み、
    前記金属酸化物被覆は、200〜2100Åの範囲の厚さ、13.13−23.08nmの範囲にある表面粗さ(RMS)を有し、少なくとも2×10−3cm−1−1の光触媒活性自浄反応速度を有し、前記反応速度は、光触媒活性化自浄性被覆上に堆積した100〜200Å厚の範囲のステアリン酸試験膜を除去する速度として決定されるものであって、光触媒活性化自浄性被覆の上に配置された紫外線源によって与えられた約300〜400nmの範囲の周波数をもち、前記光触媒活性化自浄性被覆の表面で測定して約20W/mの強度を有する紫外線に光触媒活性化自浄性被覆を露出した累積時間に対し、ステアリン酸試験膜の炭素−水素伸縮振動吸収帯の積分強度について複数のフーリエ変換赤外線分光光度計測定値をプロットすることにより得られた曲線の勾配として定量的に決定されたものである自浄性物品。
  5. 光触媒作用によって活性化された自浄性物品であって、
    第1主表面と第2主表面を有する基体と、
    前記主表面の少なくとも1つの上にナトリウムイオン拡散障壁層を介して堆積された光触媒作用によって活性化された金属酸化物被覆を含み、
    前記金属酸化物被覆は、200〜2100Åの範囲の厚さを有し、少なくとも2×10−3cm−1−1の光触媒活性自浄反応速度と13.13−23.08nmの範囲にある表面粗さ(RMS)を有し、前記反応速度は、光触媒活性化自浄性被覆上に堆積した100〜200Å厚の範囲のステアリン酸試験膜を除去する速度として決定されるものであって、光触媒活性化自浄性被覆の上に配置された紫外線源によって与えられた約300〜400nmの範囲の周波数をもち、前記光触媒活性化自浄性被覆の表面で測定して約20W/mの強度を有する紫外線に光触媒活性化自浄性被覆を露出した累積時間に対し、ステアリン酸試験膜の炭素−水素伸縮振動吸収帯の積分強度について複数のフーリエ変換赤外線分光光度計測定値をプロットすることにより得られた曲線の勾配として定量的に決定されたものである自浄性物品。
  6. ナトリウムイオン拡散障壁層の厚みが0.1μm未満である請求項2−5のいずれか1項に記載の物品。
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