JP4333839B2 - 空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法及び空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法及び空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、多品種少量生産に適し、かつカーカス材のストックスペースを削減することができる空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法及びその方法により製造したカーカス材を用いて製造した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
ゴム層内にタイヤ幅方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に対して90°で配列したカーカス層を設けた空気入りラジアルタイヤ、所謂フルラジアルタイヤに対して、補強コードをタイヤ周方向に対して90°より小さい角度で配列したカーカス層を設けた空気入りタイヤ、所謂ハーフラジアルタイヤがある。
【0003】
このようなハーフラジアルの空気入りタイヤのカーカス層に用いられるカーカス材は、引き揃えた多数の補強コードをカレンダーロールを通してゴム被覆した長尺帯状のシート材をカーカス層の幅に相当する長さに順次バイアスカットし、そのバイアスカットしたシート片を幅方向に順次接合することにより、製造するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
接合されて長尺帯状に形成されたカーカス材は、巻取りロールに巻き取られてストックされ、使用時に巻取りロールから巻き出されて所定の長さに切断される。
【0005】
【特許文献1】
特開平4−182119号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したカーカス材の製造方法は、長尺帯状のカーカス材を予め製造し、使用時に切断して使用することでタイヤの大量生産に適するようになっており、多品種少量生産には不向きである。しかも、巻取りロールに巻き取られたカーカス材をストックする広いスペースが必要になるという問題がある。
【0007】
本発明は、多品種少量生産に適し、かつカーカス材のストックスペースを削減することが可能な空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法及び空気入りタイヤを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法は、ゴム層内にタイヤ周方向に対して90°より小さい角度でタイヤ幅方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に沿って所定の間隔で配列したカーカス層に使用する空気入りタイヤ用カーカス材を製造する方法であって、前記カーカス材の幅に対応した周長Wを有する成形ドラム上に、前記補強コードを未加硫ゴムで被覆したストリップ材を、ドラム周方向に対して90°より小さい巻き付け角度αで隣接するストリップ材同士の端面を当接させながら、前記カーカス材の長さLに対応した所定長さだけ螺旋状に巻き付けて筒状カーカス材を成形する際に、下記式(1),(2)を満足する幅xを有するストリップ材を用いて前記筒状カーカス材を成形した後、該筒状カーカス材を前記ストリップ材の巻き付け開始端を通り、かつドラム軸に平行な線に沿って切断したことを特徴とする。
【0009】
x=W・tan(90−α)・・・(1)
L/x=整数・・・(2)
また、本発明の空気入りタイヤは、上記空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法により製造したカーカス材を用いて製造したことを特徴とする。
【0010】
上述した本発明によれば、式(1),(2)を満足する幅xを有するストリップ材を使用してカーカス材を上記のようにして成形することにより、ユニフォミティに悪影響を及ぼすことなく、多品種少量生産を可能にし、また必要に応じて製造することができるので、ストックスペースの削減が可能になる。
【0011】
また、従来の接合されて長尺帯状に形成されるカーカス材は、バイアスカットしたシート片の端部を重ね合わせて接合するため、剛性に段差を生じた箇所が多数存在し、また接合する際に使用する装置の接合精度上、幅方向に多少のずれが発生せざるを得ず、それらによるユニフォミティの低下が避けられないが、上記のようにストリップ材を巻き付けて形成するカーカス材は、接合箇所がないため、ユニフォミティを向上することも可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の方法で製造したカーカス材を用いて製造した空気入りタイヤの一例を示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。
【0013】
タイヤ内側には、左右のビード部3間にカーカス層4が装架され、その両端部がビード部3に埋設されたビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ内側から外側に折り返されている。
【0014】
カーカス層4は、ゴム層内にタイヤ周方向に対して90°より小さい角度で傾斜してタイヤ幅方向に延在する補強コード(不図示)をタイヤ周方向に沿って所定の間隔で配列した構造になっている。ビード部1のカーカス層4の外周側にはベルト層7が設けられている。
【0015】
ベルト層7の外周側には、アンダートレッドゴム層8を介してキャップトレッドゴム層9が配設され、カーカス層4の内側には、インナーライナー層11が設けられている。カーカス層4の外側には、ビード部3においてビードクッションゴム層12が、サイドウォール2においてサイドゴム層13が配置されている。
【0016】
本発明の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法は、上記カーカス層4に使用するカーカス材を製造するものであり、以下に図2〜4を参照しながら説明する。
【0017】
上記カーカス材の製造にあたり、図2に示すように、カーカス層4の1層分に相当するカーカス材20(図3参照)の幅Yに対応した周長W(W=πD:但し、Dはドラム直径)を有する成形ドラム15を使用する。成形ドラム15は、周長Wを変更することができる拡縮可能な成形ドラムを使用するのがよく、これによりサイズの異なる種々のカーカス材20を1台の成形ドラムで製造することができる。
【0018】
上記成形ドラム15上に、図4に示すように補強コードfを未加硫ゴムkで被覆した1本のストリップ材16を、ドラム周方向に対して90°より小さい巻き付け角度αで隣接するストリップ材16同士の端面16aを隙間なく当接させながら、カーカス材20の長さLに対応する所定長さだけ成形ドラム15を回転させながら螺旋状に巻き付け、筒状カーカス材17を成形する。
【0019】
その際に、下記式(1),(2)を満足する幅xを有するストリップ材16を用いて筒状カーカス材17を成形する。
【0020】
x=W・tan(90−α)・・・(1)
L/x=整数(巻き付け回数)・・・(2)
上記式によるストリップ材16の幅xの決め方は、以下のようにして行う。先ず、所望の巻き付け角度α’を予め設定し、その所望の巻き付け角度α’を巻き付け角度αとして式(1)によりストリップ材16の幅xを算出する。次いで、その算出した幅xの値を用いて式(2)で求めた値が整数になる場合には、式(1)で算出された値をストリップ材16の幅xとし、所望の巻き付け角度α’を巻き付け角度αとする。
【0021】
式(2)で求めた値が小数になる場合には、その小数点第1位を切り捨てまたは切り上げて整数になるように調整し、その整数値から式(2)を用いて求めた値をストリップ材16の幅xとし、その求めた幅xの値から式(1)を用いて巻き付け角度αを算出し、この巻き付け角度αで巻き付ける。
【0022】
更に具体的に説明すると、ストリップ材16の所望の巻き付け角度α’を82°、幅Yが595mm、長さLが1540mmのカーカス材20を製造する場合、先ず巻き付け角度αを82°とし、式(1)から
x=595×tan(90−82)
=83.6mm(小数点第2位を四捨五入)
従って、ストリップ材16の幅xの値は83.6mmとなる。この値を式(2)に代入すると、
1540/83.6=18.4(小数点第2位を四捨五入)
式(2)の値は、ストリップ材16の巻き付け回数を示し、この値が整数にならずに小数になると、ストリップ材16の巻き付け開始端16bと巻き付け終端16cがドラム軸F方向から見た時にずれた位置にあり、得られたカーカス材20が図示するような平行四辺形状にならずに一部欠けた状態になり、タイヤのユニフォミティに悪影響を及ぼす。従って、この巻き付け回数は、必ず整数にする必要がある。
【0023】
そこで、上記のように小数になった際に、小数点第1位を切り捨てまたは切り上げて整数となるように調整する。切り捨てか切り上げは、算出した巻き付け角度αと所望の巻き付け角度α’との差が1°以内となるように選択される。いずれも差が1°以内であれば、どちらを選択してもよいが、好ましくは差が小さくなる方を選ぶのがよい。
【0024】
上記例では、切り捨てて18(調整後の巻き付け回数)とする。この値18から式(2)を用いてストリップ材16の幅xを得ると、
x=1540/18=85.6mm(小数点第2位を四捨五入)
この得られた値85.6mmをストリップ材16の幅x(調整後の幅)とする。この幅xの値から式(1)を用いて巻き付け角度αを求める。
【0025】
85.6=595×tan(90−α)
tan(90−α)=85.6/595
α=81.8°(小数点第2位を四捨五入)
この得られた角度を巻き付け角度αとする。
【0026】
上記のようにして筒状カーカス材17を成形した後、筒状カーカス材17をストリップ材16の巻き付け開始端16bを通り、かつドラム軸Fに平行な線に沿って切断する。これにより、図3に示すカーカス材20を得ることができる。
【0027】
このようにして成形されたカーカス材20は、従来公知のタイヤの製造方法により、従来のカーカス材と同様にして、タイヤ成形ドラム上に巻き付けられたインナーライナー材上に巻き付けられて、最終的にグリーンタイヤが成形され、このグリーンタイヤを加硫することで、図1に示す空気入りタイヤを製造することができる。
【0028】
上述した本発明によれば、式(1),(2)を満足する幅xを有するストリップ材16を用いてカーカス材20を上記のようにして成形することにより、ユニフォミティに悪影響を及ぼすことなく、多品種少量生産に対応することができ、かつ必要に応じて製造することができるので、巻取りロールに巻き取られたカーカス材をストックする広いスペースを必要とするような問題を生じることがない。
【0029】
また、従来の接合されて長尺帯状に形成されるカーカス材は、バイアスカットしたシート片の端部を重ね合わせて接合するため、剛性に段差を生じた箇所が多数存在し、また装置で接合する際の機械的精度により多少幅方向にずれた状態で接合され、それによるユニフォミティの低下が避けられないが、上記のようにストリップ材16を巻き付けて成形するカーカス材20は接合がないため、接合に起因するユニフォミティの低下を招くことがなく、従って、ユニフォミティの改善も可能になる。
【0030】
本発明において、上記巻き付け角度αとしては、70°〜88°の範囲にするのがよい。巻き付け角度αが88°より大きいと、ハーフラジアルタイヤとしての性能を得ることができない。逆に70°より小さいと、調整後に算出した巻き付け角度αと所望の巻き付け角度α’との差が大きくなるため、好ましくない。
【0031】
上記実施形態では、1層のカーカス層4に対応したカーカス材20を製造するため、成形ドラムの周長Wをカーカス材20の幅Yに対応させている。しかし、カーカス材20はカーカス層複数枚分に相当するものであってもよく、その場合カーカス材はカーカス層複数枚分に応じた幅を有するため、その幅に対応した周長Wを有する成形ドラムを使用する。
【0032】
【実施例】
製造するカーカス材の幅Yを600mm、長さLを1500mmとし、周長Wを600mm(ドラム直径:191.1mm)の成形ドラムを使用して、所望の巻き付け角度α’を表1のように変えた各カーカス材(実施例1,2,3)を上記手順で求めた幅xを有するストリップ材により、それぞれ20枚作製した。表1にその手順で得られたストリップ材の幅x、巻き付け回数、巻き付け角度αもそれぞれ示す。また、従来の方法でバイアスカットしたシート片を接合して30mの長尺帯状カーカス材(接合箇所が21か所)を作製し、これを切断して20枚のカーカス材(従来例)を得た。
【0033】
これら各カーカス材を用いて、タイヤサイズを225/60R17で共通にし、図1に示す構成を有する試験タイヤをそれぞれ20本製造した。
【0034】
これら各試験タイヤを以下に示す方法により、LFV(ラテラル・フォース・バリエーション)とRFV(ラジアル・フォース・バリエーション)の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。また、表1には、得られたカーカス材の幅寸法のバラツキ量(20枚の平均)も示す。
LFVとRFV
各試験タイヤをリムサイズ17×61/2 のリムに装着し、空気圧を180kPa にして、JASO 0607「自動車タイヤのユニフォミティ試験方法」に準拠してLFVとRFVを測定し、その結果を従来例を100とする指数値で評価した。この値が小さいほど、LFVとRFVが小さく、ユニフォミティが優れている。
【0035】
【表1】
表1から、本発明タイヤの方法で得られたカーカス材を用いた空気入りタイヤは、LFVとRFVを共に改善することができ、ユニフォミティを向上できることがわかる。
【0036】
【発明の効果】
上述したように本発明は、補強コードをタイヤ周方向に対して90°より小さい角度で配列したカーカス層に使用する空気入りタイヤ用カーカス材を製造する際に、上述した式を満足する幅を有するストリップ材を用いて製造することにより、多品種少量生産を可能にし、かつカーカス材のストックスペースを削減することができ、更にユニフォミティの向上が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法で得られたカーカス材を用いて製造した空気入りタイヤの一実施形態を示すタイヤ子午線要部断面図である。
【図2】本発明の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法を示す説明図である。
【図3】図2で得られたカーカス材の正面図である。
【図4】カーカス材に使用するストリップ材の断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部 2 サイドウォール部
3 ビード部 4 カーカス層
15 成形ドラム 16 ストリップ材
16a 端面 16b 巻き付け開始端
16c 巻き付け終端 17 筒状カーカス材
20 カーカス材 F ドラム軸
L カーカス材の長さ W 成形ドラムの周長
Y カーカス材の幅 f 補強コード
k 未加硫ゴム x ストリップ材の幅
α 巻き付け角度 α’所望の巻き付け角度
Claims (6)
- ゴム層内にタイヤ周方向に対して90°より小さい角度でタイヤ幅方向に延在する補強コードをタイヤ周方向に沿って所定の間隔で配列したカーカス層に使用する空気入りタイヤ用カーカス材を製造する方法であって、
前記カーカス材の幅に対応した周長Wを有する成形ドラム上に、前記補強コードを未加硫ゴムで被覆したストリップ材を、ドラム周方向に対して90°より小さい巻き付け角度αで隣接するストリップ材同士の端面を当接させながら、前記カーカス材の長さLに対応した所定長さだけ螺旋状に巻き付けて筒状カーカス材を成形する際に、下記式(1),(2)を満足する幅xを有するストリップ材を用いて前記筒状カーカス材を成形した後、該筒状カーカス材を前記ストリップ材の巻き付け開始端を通り、かつドラム軸に平行な線に沿って切断した空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法。
x=W・tan(90−α)・・・(1)
L/x=整数・・・(2) - 所望の巻き付け角度α’を予め設定し、該所望の巻き付け角度α’を巻き付け角度αとして式(1)によりストリップ材の幅xを算出し、その幅xの値を用いて式(2)で求めた値が整数になる場合には、式(1)で算出された値をストリップ材の幅x、所望の巻き付け角度α’を巻き付け角度αとし、
式(2)で求めた値が小数になる場合には、その小数点第1位を切り捨てまたは切り上げて整数とし、該整数から式(2)を用いて求めた値を前記ストリップ材の幅xとし、その求めた幅xの値から式(1)を用いて巻き付け角度αを算出する請求項1に記載の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法。 - 前記算出した巻き付け角度αと前記所望の巻き付け角度α’との差が1°以内となるように、前記小数点第1位を切り捨てまたは切り上げて整数とする請求項2に記載の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法。
- 前記巻き付け角度αが70°〜88°の範囲である請求項1,2または3に記載の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法。
- 前記カーカス材がカーカス層複数枚分に相当する幅を有し、前記成形ドラムの周長Wが該カーカス材の幅に対応する請求項1,2,3または4に記載の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法。
- 請求項1,2,3または4に記載の空気入りタイヤ用カーカス材の製造方法により製造したカーカス材を用いて製造した空気入りタイヤ。
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