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JP4326007B2 - 信号検出方法及び装置、並びに情報再生装置及び方法 - Google Patents

信号検出方法及び装置、並びに情報再生装置及び方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば強誘電体記録媒体等の誘電体に記録された分極情報を再生する際の信号検出方法及び装置、並びに該信号検出方法を用いた情報再生装置及び方法の技術分野に関する。
誘電体記録媒体をナノスケールで分析するSNDM(Scanning Nonlinear Dielectric Microscopy:走査型非線形誘電率顕微鏡法)を利用した記録再生装置の技術について、本願発明者等によって提案されている。SNDMにおいては、AFM(Atomic Force Microscopy)等に用いられる先端に微小なプローブを設けた導電性のカンチレバー(プローブ)を用いることで、測定に係る分解能を、サブナノメートルにまで高めることが可能である。近年では、SNDMの技術を応用して、データを、強誘電体材料からなる記録層を有する記録媒体に記録する超高密度記録再生装置の開発が進められている(特開2003−085969号公報参照)。
このようなSNDMを利用した記録再生装置では、記録媒体の分極の正負の方向を検出することで情報の再生を行う。これは、L成分を含む高周波帰還増幅器とこれに取り付けられた導電性プローブ及び該プローブ直下の強誘電体材料の容量Csを含むLC発振器の発振周波数が、分極の正負の分布に起因する非線形誘電率の大小の結果生ずる微小容量の変化ΔCにより変化することを利用して行う。即ち、分極の正負の分布の変化を、発振周波数の変化Δfとして検出することで行う。
更に、分極の正負の相違を検出するために、発振周波数に対して十分に低い周波数の交番電界を印加することで、発振周波数が交番電界に伴って変化すると共に、符号を含めた発振周波数の変化の割合が、プローブ直下の強誘電体材料の非線形誘電率によって定まる。
そして、このように交番電界の印加に伴う微小容量ΔCの変化に応じてFM(Frequency Modulation)変調されたLC発信器の高周波信号から、交番電界に起因する成分をFM復調して取り出すことで、強誘電体記録媒体に記録された記録情報を再生する。
しかしながら、上述の如く交番電界を印加することで情報を再生する場合、SN比は良好であるという利点を有するが、その再生プロセスにおいてはFM復調が必須となる。従って、再生時における再生速度は、交番電界の周波数に律速される。言い換えれば、更なる高速再生のためには、搬送波に相当する高周波信号の周波数を十分高くすると共に、交番電界の周波数を高くしてより広い変調帯域を確保する必要が生ずる。
しかしながら、広い変調帯域を確保するためには、高周波数域で広い変調帯域の復調を可能とするFM復調回路が必要とされる。現在使用されているFM復調器は、概ね200kHz程度の帯域を復調できるに過ぎない。係る帯域での復調では、上述のSNDMを利用した記録再生装置において必要とされる、例えば1Gbps程度の再生速度を実現することは困難或いは不可能である。従って、記録再生装置における再生速度を十分に向上させることができず、大容量の記録媒体の実現に必要不可欠な高速再生を実現することが困難或いは不可能であるという技術的な問題点を有している。
本発明は例えば上述の課題に鑑みなされたものであって、例えば高周波の搬送波に対して広帯域での変調が施された信号を比較的容易に復調し得、その信号再生速度を向上させ得る信号検出方法及び装置、並びに該信号検出方法を用いた情報再生装置及び方法を提供する。
以下、本発明について説明する。
本発明の信号検出方法は、搬送波と該搬送波に付随する少なくとも2つの側帯波とを有する入力信号より、前記少なくとも2つの側帯波に含まれるデータ情報を示す出力信号を検出する信号検出方法であって、前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット工程と、前記一方の側帯波がカットされた前記入力信号を自乗検波することで前記出力信号を出力する自乗検波工程とを備える。
本発明の信号検出方法によれば、高周波な搬送波を含む入力信号より、音声情報や画像情報等のデータ情報を示す出力信号を比較的容易に且つ適切に検出することが可能となる。
具体的に説明すると、入力信号は、搬送波と側帯波を含んでなる。即ち、入力信号は搬送波に対して、例えばFM変調による変調信号が加えられた信号であってもよい。そして、該入力信号に対して、カット工程において側帯波のカットがなされる。ここで特に、側帯波は、搬送波の周波数を中心周波数として、対称な位置に少なくとも2つ現れる。このため、これらの側帯波のうち高周波数域側に現れる側帯波及び低周波数域側に現れる側帯波のうちいずれか一方をカットする。係る側帯波のカットは、例えばLPF(Low Pass Filter)やHPF(High Pass Filter)の動作により容易に行うことができる。
そして、このように側帯波の一部がカットされた入力信号に対して、自乗検波工程において自乗検波する。そして、自乗検波後の信号より出力信号を検出することができる。
ここで、仮に、カット工程を設けることなく、入力信号に対してそのまま自乗検波を施すと、後に数式を用いて説明するように高周波数域側及び低周波数域側の夫々の側帯波に含まれる夫々の出力信号成分が相殺されることで、該出力信号を検出することができない。しかるに、本発明に係る信号検出方法によれば、高周波数域側及び低周波数域側のうちいずれか一方の側の側帯波をカットすることで、カットされずに残された方の側帯波に含まれる出力信号を適切に検出することが可能となる。
そして、係る信号検出方法を例えば後述の如く情報再生装置に適用すれば、従来のFM復調器において見られる復調の帯域制限によらず、高周波な搬送波において広帯域の変調を施しても、適切に復調を行い、その結果出力信号を検出することが可能となる。即ち、具体的には例えば数GHzの搬送波に対して数十MHzの変調が施されていたとしても、出力信号を検出する(即ち、復調する)ことが可能である。
又、例えば入力信号としてFM信号を用いれば、出力信号に起因する側帯波以外に、例えば、浮遊容量などの変化(即ち、外部雑音等)に起因する側帯波の影響を受けても、搬送波と出力信号に起因する側帯波との周波数軸上における位置関係に変動は生じないという利点を有する。従って、搬送波を基準とした自乗検波を行うことで、浮遊容量等の影響を受けることなく、安定した信号検出が可能となる。
以上の結果、本発明の信号検出方法によれば、例えば従来のFM復調器のような帯域制限がなくなるため、より高周波な搬送波に対してより広帯域の変調を施しても、適切に出力信号を検出することが可能となる。従って、例えば後述の情報再生装置をして、出力信号の検出速度(即ち、再生速度)を向上させることができる。そして、浮遊容量等による外部からの雑音の影響を受けることなく、安定した信号検出を実現することが可能となる。
尚、係る信号検出方法を実現するためには、例えばダイオード等を含む自乗検波器やLPF等の回路素子により実現できるため、該回路素子による回路構成を簡略化することができるという利点も有する。
本発明の信号検出方法の一の態様は、当該信号検出方法は、前記入力信号の周波数を変換する周波数変換工程を更に備えており、前記カット工程においては、該変換された入力信号より前記一方の側帯波をカットする。
この態様によれば、周波数変換工程により、入力信号の周波数(即ち、搬送波の周波数)をより高周波に変換したり、或いはより低周波に変換することができる。そして、例えば搬送波の周波数が高いために信号処理(即ち、例えばカット工程や自乗検波工程等における処理)が実行し難い場合であっても、周波数の変換を施すことで、信号処理が行いやすい周波数とすることが可能となる。そして、その後は、周波数変換した後の入力信号に対して、カット工程及び自乗検波工程における信号処理を比較的容易に行うことが可能となる。従って、信号処理の効率化を図り、更には例えば後述の情報再生装置の再生速度を向上させることが可能となる。
上述の如く周波数変換工程を備える信号検出方法の態様では、前記周波数変換工程においては、前記周波数が相対的に低くなるように変換する。
このように構成すれば、入力信号をより低い周波数に変換することで、その後の信号処理を比較的容易に行うことが可能となる。
具体的には、例えば数GHzの搬送波に対して、数十MHzの変調を施したとしても、係る周波数変換工程により、搬送波の周波数を例えば数百MHz程度に落とすことで、比較的容易に出力信号を検出することができる。
又、変調の帯域を広げることで、単位時間当たりに検出可能な出力信号の容量が増加することとなり、例えば後述の情報再生装置の再生速度を向上させることが可能となる。
尚、入力信号がFM信号であれば、搬送波に対して周波数変換を行っても、搬送波と側帯波との周波数軸上における位置関係(即ち、変調帯域の幅)に変化は生じないという利点を有する。従って、周波数変換した後の入力信号より出力信号を適切に検出することができる。
上述の如く周波数変換工程を備える信号検出方法の他の態様では、前記周波数が所定の値より高いか否かを判定する判定工程を更に備え、前記判定工程において前記周波数が所定の値より高いと判定された場合に、前記周波数変換工程において前記周波数が変換される。
このように構成すれば、入力信号の周波数に応じて、周波数の変換を行ったり或いは行わなかったりすることが可能となる。これにより、必要な場合に周波数の変換を行うことができ、その結果、信号処理をより効率的に行うことが可能となる。
尚、判定工程における閾値となる所定の値は、例えば予め一義的に定める値であってもよいし、或いは信号検出の都度入力する値であってもよい。そして、係る所定の値は、当該信号検出方法を使用するユーザが入力する値であってもよいし、或いは例えばマイコン等により自動的に定められる値であってもよい。
本発明の信号検出方法の他の態様は、前記自乗検波工程においては、前記一方の側帯波がカットされた前記入力信号のうち前記搬送波と第1次の側帯波とに対して自乗検波する。
この態様によれば、第1次の側帯波を用いて出力信号を検出することが可能となる。即ち、側帯波には搬送波を中心周波数として周波数成分の異なる複数の側帯波が現れるが、そのうち第1次の側帯波を抽出すれば、出力信号を検出することができる。
上述の如く第1次の側帯波に対して自乗検波する信号検出方法の態様では、前記搬送波の振幅をVとし、変調指数をmfとし、前記搬送波の角周波数をωとし、前記搬送波と前記第1次の側帯波との角周波数の差をωとすると、前記自乗検波工程においては、前記第1次の側帯波は時刻tで、(Vmf/2)×cos((ω+ω)t)又は(−Vmf/2)×cos((ω−ω)t)にて示されるものとして、自乗検波する。
このように構成すれば、係る数式により示される第1次の側帯波に対して自乗検波を行うことで、出力信号を検出することが可能となる。尚、係る数式のより詳細な説明については、後述の実施例中において述べる。
本発明の信号検出方法の他の態様は、前記カット工程において、前記少なくとも2つの側帯波のうち高周波数域側の側帯波をカットする。
この態様によれば、例えばLPFによって高周波数域側の側帯波をカットする場合は、HPFによって低周波域の側波帯をカットする場合と比べて一般的に信号の位相変化の影響が少ないために、本発明に係る信号検出方法をより容易に実施することが可能となる。
本発明の信号検出方法の他の態様は、前記データ情報は、記録媒体に記録されており、当該記録媒体に対して高周波電界を印加すると共に、前記高周波電界と比較して低周波な交番電界を印加することで前記入力信号を取得する信号取得工程を更に備える。
この態様によれば、例えば後述の如くSNDMの原理を利用した情報再生装置においても、適切に出力信号を検出することができる。なお、SNDMの原理を利用した再生装置については、後に詳述する。
上述の如く信号取得工程を備える態様では、前記記録媒体は、誘電体を含んでなる記録層を備えるように構成してもよい。
このように構成すれば、後述の如くSNDMの原理を利用した情報再生装置においても、適切に出力信号を検出し、データの再生が可能となる。
本発明の信号検出装置は、搬送波と該搬送波に付随する少なくとも2つの側帯波とを有する入力信号より、前記少なくとも2つの側帯波に含まれるデータ情報を示す出力信号を検出する信号検出装置であって、前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット手段と、前記一方の側帯波がカットされた前記入力信号を自乗検波することで前記出力信号を出力する自乗検波手段とを備える。
本発明の信号検出装置によれば、上述した本発明の信号検出方法と同様に、より高周波な搬送波に対してより広帯域の変調を施しても、適切に復調を行い、出力信号を検出することが可能となる。
尚、上述した本発明の信号検出方法の各種態様に対応して、非本発明の信号検出装置も各種態様を採ることができる。
本発明の情報再生装置は、記録媒体に記録されたデータ情報を再生する情報再生装置であって、前記記録媒体から、搬送波と該搬送波に付随し且つ前記データ情報を含む少なくとも2つの側帯波とを有する再生信号を読み込む読込手段と、前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット手段と、前記一方の側帯波がカットされた前記再生信号を自乗検波する自乗検波手段と、前記自乗検波された再生信号より前記データ情報を抽出して再生する再生手段とを備える。
本発明の情報再生装置によれば、高周波な搬送波を含む再生信号より、データ情報を抽出し、比較的容易に且つ適切に再生することが可能となる。
具体的には、先ず読込手段が記録媒体に記録されたデータ情報を含む再生信号を読み込む。ここで、再生信号は、搬送波及びデータ情報を含む少なくとも2つの側帯波を有している。即ち、搬送波に対して例えば変調を施すことで、記録媒体に記録されたデータ情報を含む再生信号を読み込む。係る変調の方式は、例えばFM変調であってもよい。
そして、これらの側帯波は、カット手段により搬送波を基準として高周波数域側及び低周波数域側のうちいずれか一方に位置する側帯波がカットされる。
その後、いずれか一方の側帯波がカットされた再生信号に対して、自乗検波手段が自乗検波を行う。そして、自乗検波された再生信号に従って、再生手段がデータ情報を抽出し、再生する。このとき、再生手段は、自乗検波された再生信号に対して例えば同期検波等の位相検波を施すことで、データ情報を抽出するように構成してもよい。
特に、カット手段と自乗検波手段とを備えることで、上述した本発明の信号検出方法が有する利益を享受することができる。即ち、従来のFM復調器等において見られる復調の帯域制限によらず、高周波な搬送波において広帯域の変調を施しても、適切に復調を行いデータ情報を再生することが可能となる。
以上の結果、本発明の情報再生装置によれば、上述した本発明係る信号検出方法と同様に、搬送波が例えば数GHz程度の高周波であって、該搬送波に対して例えば数十MHz程度の変調が施されていたとしても、適切に復調を行い、変調された再生信号に含まれるデータ情報を再生することが可能となる。又、変調の帯域を広げることができるため、再生速度を向上させることができる。これは、例えば強誘電体記録媒体の如く、大容量の記録媒体の再生において、極めて大きな利点となる。
尚、上述した本発明の信号検出方法の各種態様に対応して、非本発明の情報再生装置も各種態様を採ることができる。
本発明の情報再生装置の一の態様は、前記読込手段は、前記記録媒体の記録層に対し高周波電界を印加すると共に、前記高周波電界と比較して低周波な交番電界を印加することで前記再生信号を読み込む。
この態様によれば、高周波電界に対応した搬送波に対して、低周波な交番電界の周波数に基づく変調が施された再生信号を読み込むことができる。
本発明の情報再生装置の他の態様は、前記再生信号の周波数を変換する前記周波数変換手段を更に備えており、前記カット手段は、該変換された再生信号より前記一方の側帯波をカットする。
この態様によれば、例えば搬送波の周波数が高いために信号処理がしにくい場合であっても、周波数の変換を施すことで、信号処理がしやすい周波数での信号処理が可能となる。従って、信号処理の効率化を図ることができ、また当該情報再生装置の再生速度を向上させることが可能となる。
本発明の情報再生装置の他の態様は、前記記録媒体は、誘電体を含んでなる記録層を備える。
この態様によれば、後に詳述するように、誘電体を含んでなる記録層における例えば分極情報を、データ情報として適切に再生することが可能となる。
本発明の情報再生装置の他の態様は、当該情報再生装置は、非線形誘電率顕微鏡法に基づいて前記データ情報を再生する。
この態様によれば、後に詳述するように、SNDMの原理を利用して(例えば、読込手段においてSNDMの原理を利用して)、記録媒体に記録されたデータ情報を適切に再生することが可能となる。即ち、超高密度情報再生が可能となる。
本発明の情報再生方法は、記録媒体に記録されたデータ情報を再生する情報再生方法であって、前記記録媒体から、搬送波と該搬送波に付随し且つ前記データ情報を含む少なくとも2つの側帯波とを有する再生信号を読み込む読込工程と、前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット工程と、前記一方の側帯波がカットされた前記再生信号を自乗検波する自乗検波工程と、前記自乗検波された再生信号より前記データ情報を抽出して再生する再生工程とを備える。
本発明の情報再生方法によれば、上述した本発明の情報再生装置と同様に、搬送波が例えば数GHz程度の高周波であって、該搬送波に対して例えば数十MHz程度の変調が施されていたとしても、適切に復調を行い、変調された再生信号に含まれるデータ情報を再生することが可能となる。
尚、上述した本発明の情報再生装置の各種態様、或いは上述した本発明の信号検出方法の各種態様に対応して、本発明の情報再生方法も各種態様を採ることが可能となる。
本発明におけるこのような作用、及び他の利得は次に説明する実施例から更に明らかにされる。
以上説明したように、本発明の信号検出方法及び装置によれば、カット工程及び自乗検波工程、又はカット手段及び自乗検波手段を備える。従って、より高周波な搬送波に対してより広帯域の変調を施しても、適切に出力信号を検出することが可能となる。
又、本発明の情報再生装置及び方法によれば、読込手段、カット手段、自乗検波手段及び再生手段、又は読込工程、カット工程、自乗検波工程及び再生工程を備える。従って、搬送波が例えば数GHz程度の高周波であって、該搬送波に対して例えば数十MHz程度の変調が施されていたとしても、適切に復調を行い、変調された再生信号に含まれるデータ情報を再生することが可能となる。
図1は、本発明の信号検出方法を採用する強誘電体再生装置に係る実施例の基本構成を概念的に示すブロック図である。
図2は、実施例に係る強誘電体再生装置の再生に用いられる強誘電体記録媒体を概念的に示す説明図及び断面図である。
図3は、実施例に係る強誘電体再生装置の再生対象となる強誘電体記録媒体へ、データ情報の記録を行う動作を概念的に示す断面図である。
図4は、実施例に係る強誘電体再生装置の再生動作を概念的に示す断面図である。
図5は、実施例に係る強誘電体再生装置の再生時の変調された発振信号を示すスペクトル図である。
図6は、図5に示す発振信号の側帯波をカットした後の信号を示すスペクトル図である。
図7は、図5に示す発振信号の周波数変換を加えた後の信号を示すスペクトル図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。尚、本実施例では、上述した本発明の信号検出方法を用いて、強誘電体記録媒体上に記録されたデータ情報の再生を行う強誘電体再生装置(即ち、本発明の情報再生装置に係る実施例)を例にして説明を進める。
(基本構成)
先ず、本実施例に係る強誘電体再生装置の基本構成について、図1を参照して説明する。ここに、図1は、本実施例に係る強誘電体再生装置の基本構成を概念的に示すブロック図である。
強誘電体再生装置1は、その先端部が強誘電体記録媒体20の強誘電体材料17に対向して電界を印加するプローブ11と、プローブ11から印加された信号再生用の高周波電界が戻るリターン電極12と、プローブ11とリターン電極12の間に設けられるインダクタLと、インダクタLとプローブ11の直下の強誘電体材料17に形成される、記録情報に対応して分極した部位の容量Csとで決まる共振周波数で発振する発振器13と、強誘電体材料17に記録された分極状態を検出するための交番電界を印加するための交流信号発生器14と、プローブ11の直下の強誘電体材料17が有する分極状態に対応した容量で変調されるFM信号を復調する復調器30と、復調された信号からデータを検出する信号検出部34と、復調された信号からトラッキングエラー信号を検出するトラッキングエラー検出部35等を備えて構成される。
プローブ11は、導電性の部材、或いは絶縁性部材に導電性膜を被覆したものであり、強誘電体材料17に対向する先端部は所定の半径を有する球状である。この半径は強誘電体材料17に記録データに対応して形成される分極の半径を決める大きな要素であり、10nmオーダーの極めて小さいものである。そしてプローブ11は、強誘電体材料17に電界を印加する電極であって、例えば針状のものやカンチレバー状等のものが具体的な形状として知られる。
尚、係るプローブ11は、複数備える構造であってもよい。この場合、交流信号発生器14は、夫々のプローブ11に対応して複数設けることが好ましい。また、信号検出部34において夫々の交流信号発生器14に対応する再生信号を弁別可能なように、信号検出部34を複数備え、且つ夫々の信号検出部34は、夫々の交流信号発生器14より参照信号を取得することで、対応する再生信号を出力するように構成することが好ましい。あるいは、交流信号発生器14を夫々のプローブ11に対応して複数設ける代わりに、発信器13および復調器30を複数個設ける構成であっても良い。
リターン電極12は、プローブ11から強誘電体材料17に印加される高周波電界(即ち、発信器13からの共振電界)が戻る電極であって、プローブ11を取り巻くように設けられている。尚、高周波電界が抵抗なくリターン電極12に戻るものであれば、その形状や配置は任意に設定が可能である。
インダクタLは、プローブ11とリターン電極12との間に設けられていて、例えばマイクロストリップラインで形成される。インダクタLと容量Csとを含んで共振回路が構成される。この共振周波数が例えば1GHz程度を中心とした値になるようにインダクタLのインダクタンスが決定される。
発振器13は、インダクタLと容量Csとで決定される共振周波数で発振する発振器である。その発振周波数は容量Csの変化に対応して変化するものであり、従って記録されているデータに対応した分極領域によって決定される容量Csの変化に対応してFM変調が行われる。このFM変調を復調することで記録されているデータを読み取ることができる。
交流信号発生器14は、プローブ11或いはリターン電極12と電極16との間に交番電界を印加する。また、複数のプローブ11を備えている強誘電体再生装置においては、この周波数を参照信号として同期を取り、プローブ11で検出する信号を弁別する。その周波数は、発信器13の周波数が例えば10MHzから10GHz程度の周波数であるとき、最大でもその周波数の1%程度の周波数、つまり100KHzから100MHz程度を中心としたものであり、強誘電体材料17の微小領域に交番電界を印加することになる。
尚、プローブ11、リターン電極12、発振器13及び交流信号発生器14をふくめた構成が、上述した本発明の「読込手段」の一具体例を構成している。
復調器30は、容量Csの微小変化に起因してFM変調された発振器13の発振周波数を復調し、プローブ11がトレースした部位の分極された状態に対応した波形を復元する。記録されているデータがデジタルの「0」と「1」のデータであれば、各々のデータに対応して復調される信号の周波数は交流信号発生器14と同じであり、その位相は強誘電体の分極方向の正負に対応してちょうど180°の差がある。従って、その位相を判別することで容易にデータの再生が行われる。
本実施例では特に、復調器30は、周波数変換器31、LPF32及び自乗検波器33を備えている。
周波数変換器31は、再生信号(即ち、出力信号)を含む発振周波数をより低い周波数へ変換(即ち、ミキシングダウン)する。例えば発振周波数が1GHz程度であれば、周波数変換器31を介することで、例えば100MHz程度の周波数に周波数変換してもよい。
係る周波数変換器31は、例えば発振器13からのFM信号と所定の周波数成分を有する信号とを掛け合わせる乗算器とLPF(又は、HPF)等を含むように構成されていてもよい。
LPF32は、再生信号を含む発振周波数から低周波数成分を選択的に通過させ、高周波成分を遮断する。特に、発振周波数(即ち、再生信号が重畳されている搬送波の周波数)を基準として、該周波数より低い周波数成分を選択的に透過させる。
自乗検波器33は、再生信号を含むFM信号であって且つLPF32を通過したFM信号を自乗検波する。そして、信号検出部34へ検波された再生信号を出力する。係る自乗検波器33として、例えばダイオード等の非線形素子や乗算器を用いることができる。
信号検出部34は、復調器30で復調された信号から記録されたデータを再生する。この信号検出器34として例えばロックインアンプを用い、交流信号発生器14の交番電界の周波数に基づいて同期検波を行うことでデータの再生を行う。尚、他の位相検波手段を用いてもよいことは当然である。
トラッキングエラー検出部35は、復調器30で復調された信号から、装置を制御するためのトラッキングエラー信号を検出する。検出したトラッキングエラー信号がトラッキング機構に入力されて制御がなされる。
続いて、図1に示す強誘電体記録媒体20の一例について、図2を参照して説明する。ここに、図2は、本実施例において用いられる強誘電体記録媒体20の一例を概念的に示す模式図である。
図2(a)に示すように、強誘電体記録媒体20は、ディスク形態の強誘電体記録媒体であって、例えばセンターホール10と、センターホール10と同心円状に内側から内周エリア7、記録エリア8、外周エリア9を備えている。センターホール10はスピンドルモータに装着する場合等に用いられる。
記録エリア8はデータを記録する領域であって、トラックやトラック間のスペースを有し、また、トラックやスペースには記録再生にかかわる制御情報を記録するエリアが設けられている。また、内周エリア7及び外周エリア9は強誘電体記録媒体20の内周位置及び外周位置を認識するために用いられると共に、記録するデータに関する情報、例えばタイトルやそのアドレス、記録時間、記録容量等を記録する領域としても使用可能である。尚、上述した構成はその一例であって、カード形態等、他の構成を採ることも可能である。
また、図2(b)に示すように強誘電体記録媒体20は、基板15の上に電極16が、また、電極16の上に強誘電体材料17が積層されて形成されている。
基板15は例えばSiであり、その強固さと化学的安定性、加工性等において好適な材料である。電極16はリターン電極12(或いは、プローブ11)との間で電界を発生させるためのもので、強誘電体材料17に抗電界以上の電界を印加することで分極方向を決定する。データに対応して分極方向を定めることにより記録が行われる。
強誘電体材料17は、例えばLiTaOやLiNbO等を電極16の上に100nm程度に薄板化された単結晶を接合したり、あるいはスパッタリングやMOCVD等の公知の技術によって形成されている。そして、分極の+面と−面が180度のドメインの関係であるLiTaOやLiNbOのZ面に対して記録が行われる。他の強誘電体材料を用いても良いことは当然である。
又、強誘電体記録媒体20の形状として、例えばディスク形態やカード形態等がある。プローブ11との相対的な位置の移動は媒体の回転によって行われ、或いはプローブ11と媒体のいずれか一方が直線的に移動して行われる。
(動作原理)
続いて、図3から図7を参照して、本実施例に係る強誘電体再生装置の動作原理について説明する。
尚、再生の前提として、当該強誘電体再生装置1が再生するデータ情報は、強誘電体記録媒体20における強誘電体材料17が有する分極の方向により記録されている。ここで、係る記録動作について、図3を参照して説明する。ここに、図3は、データ情報の記録動作を概念的に示す断面図である。尚、本実施例に係る強誘電体再生装置1は、データ情報の再生動作を行うための装置であるが、プローブ11と電極16との間に所定の電界(特に、パルス電界)を印加することで、強誘電体記録装置としての動作を行うこともできる。
図3に示すように、プローブ11と電極16との間に強誘電体材料17の抗電界を超える電界を印加することで、印加電界の方向に対応した方向を有して強誘電体材料は分極する。そして、印加する電圧を制御し、この分極の方向を変えることでデータ情報を記録することができる。例えばプローブ11から電極16に向かう電界が印加されたとき、微小領域は下向きの分極Pとなり、電極16からプローブ11に向かう電界が印加されたときは上向きの分極Pとなるとする。これがデータ情報を記録した状態に対応する。プローブ11が矢印で示す方向に操作されると、検出電圧は分極Pに対応して、上下に振れた矩形波として出力される。尚、分極Pの分極程度によりこのレベルは変化し、アナログ信号としての記録も可能である。
続いて、図4から図7を参照して、本実施例に係る強誘電体再生装置1の再生動作について説明する。ここに、図4は、データ情報の再生動作を概念的に示す断面図である。
強誘電体の非線形誘電率は、強誘電体の分極方向に対応して変化する。そして、強誘電体の非線形誘電率は、強誘電体に電界を印加した時に、強誘電体の容量の違いないし容量の変化の違いとして検出することができる。従って、強誘電体材料に電界を印加し、そのときの強誘電体材料の一定の微小領域における容量Csの違いないし容量Csの変化の違いを検出することにより、強誘電体材料の分極の方向として記録されたデータを読み取り、再生することが可能となる。
具体的にはまず、図4に示すように、不図示の交流信号発生器14からの交番電界が電極16及びリターン電極12の間に印加される。この交番電界は、強誘電体材料17の抗電界を越えない程度の電界強度を有し、例えば5kHz程度の周波数を有する。交番電界は、主として、強誘電体材料17の分極方向に対応する容量変化の違いの識別を可能にするために生成される。尚、交番電界に代えて、直流バイアス電圧を印加して、強誘電体材料17内に電界を形成してもよい。係る交番電界が印加されると強誘電体記録媒体20の強誘電体材料17内に電界が生ずる。
次に、プローブ11の先端と記録面との距離がナノオーダの極めて小さい距離となるまで、プローブ11を記録面に接近させる。この状態で発振器13を駆動する。尚、プローブ11直下の強誘電体材料17の容量Csを高精度に検出するためには、プローブ11を強誘電体材料17の表面、即ち、記録面に接触させることが好ましい。しかし、強誘電体材料17に記録されたデータを高速に読み取るためには、プローブ11を強誘電体記録媒体20上において高速に相対移動させる必要がある。このため、係る高速移動の実現性、プローブ11と強誘電体記録媒体20との衝突・摩擦による破損の防止等を考慮すると、プローブ11を記録面に接触させるよりも、実質的には接触と同視できる程度に、プローブ11を記録面に接近させる方がよい。このために記録面上に極薄の潤滑剤をコートしてもよい。
そして、発振器13は、プローブ11直下の強誘電体材料17に係る容量CsとインダクタLとを構成要因として含む共振回路の共振周波数で発振する。この共振周波数は、上述のとおりその中心周波数をおおよそ1GHz程度とする。
ここで、リターン電極12及びプローブ11は、発振器13による発振回路の一部を構成している。プローブ11から強誘電体材料17に印加された1GHz程度の高周波信号は、図4中点線の矢印にて示すように、強誘電体材料17内を通過してリターン電極12に戻る。リターン電極12をプローブ11の近傍に設け、発振器13を含む発振回路の帰還経路を短くすることにより、発振回路内にノイズ(例えば、浮遊容量成分)が入り込むのを軽減することができる。
付言すると、強誘電体材料17の非線形誘電率に対応する容量Csの変化は微小であり、これを検出するためには、高い検出精度を有する検出方法を採用する必要がある。FM変調を用いた検出方法は、一般に高い検出精度を得ることができるが、強誘電体材料17の非線形誘電率に対応する微小な容量変化の検出を可能とするために、さらに検出精度を高める必要がある。そこで、本実施例に係る強誘電体再生装置1(即ち、SNDM原理を用いた記録再生装置)は、リターン電極12をプローブ11の近傍に配置し、発振回路の帰還経路をできる限り短くしている。これにより、極めて高い検出精度を得ることができ、強誘電体の非線形誘電率に対応する微小な容量変化を検出することが可能となる。
発振器13および、交流信号発生器14の駆動後、プローブ11を情報が記録されている強誘電体記録媒体20上において記録面と平行な方向に移動させる。すると移動によって、プローブ11直下の強誘電体材料17のドメイン(記録情報)が変わり、その分極方向が変わるたびに、交流信号発生器14による容量Csの増減のパターンが反転する。容量Csが変化すると、共振周波数、即ち、発振器13の発振周波数が変化する。この結果、発振器13は、容量Csの変化に基づいてFM変調された信号を出力する。このとき発振器13の高周波電界は交流信号発生器14の周波数で、前記強誘電体材料17のドメインの符号に対応した容量Csの増減パターンの反転に応じて、ちょうど180°位相が異なるように変調されている。
このFM信号は、復調器30によって周波数−電圧変換される。この結果、容量Csの変化は、電圧の大きさに変換される。容量Csの変化は、強誘電体材料17の非線形誘電率に対応し、この非線形誘電率は、強誘電体材料17の分極方向に対応し、この分極方向は、強誘電体材料17に記録されたデータに対応する。従って、復調器30から得られる信号は、強誘電体記録媒体20に記録されたデータに対応して電圧が変化する信号となる。更に、復調器30から得られた信号は、信号検出部34に供給され、例えば同期検波されることで、強誘電体記録媒体20に記録されたデータが抽出される。
このとき、信号検出部34では、交流信号発生器14により生成された交流信号が参照信号として用いられる。これにより、例えば復調器30から得られる信号がノイズを多く含んでおり、又は抽出すべきデータが微弱であっても、後述の如く参照信号と同期をとることで当該データを高精度に抽出することが可能となる。
本実施例では特に、復調器30において、発振器13から出力されるFM信号を、その周波数を低く変換した後に、該信号の高周波数域側の側帯波をカットし且つカットしたFM信号に対して自乗検波を行うことで、記録信号(即ち、データ情報)を再生出力する。
以下、変調された発振信号(即ち、FM信号)の復調動作について、図5から図7を参照して説明する。ここに、図5は、発振器13より出力される、FM変調された発振信号を示すスペクトル図であり、図6は、周波数変換された後のFM信号を示すスペクトル図であり、図7は、LPF32を透過した後のFM信号を示すスペクトル図である。尚、図5から図7に係るスペクトル図においては、発振周波数たる搬送波及びその第1次の側帯波を抜き出して説明するものとし、第2次以降の側帯波については省略して説明を進める。
図5に示すように、発振信号は、共振周波数fにて示される搬送波と容量変化ΔCsに基づく信号を含む側帯波とを含んでなる。
このとき、共振周波数fは、数1にて示される。
数1
Figure 0004326007
そして、共振周波数fの発振器13からプローブ11を介して強誘電体記録媒体20に高周波電界を印加すると共に、強誘電体記録媒体20に発振角周波数ωの交番電界を印加した時、非線形効果によるfの周波数変化Δfは、数2にて示される。但し、交番電界の振幅をAとし、最低次数の非線形係数をkとする。
数2
Figure 0004326007
従って、時刻tにおける高周波電界の角周波数ω(t)は、数3にて示される。
数3
Figure 0004326007
また、角周波数を時間tにて積分すると、位相角θ(t)が得られる。そこで、数3の両辺を時間tで積分すると、位相角θ(t)は数4で示される。
数4
Figure 0004326007
ここで、数5のように定義し、数4に数5を代入すると、位相角θ(t)は数6にて示される。
数5
Figure 0004326007
数6
Figure 0004326007
但し、数5におけるmfは変調指数であり、係るmfに強誘電体再生装置1にて検出するべき再生信号(即ち、分極情報)が含まれる。
このとき、発振角周波数ωの交番電界によってFM変調された発振器13の出力V(t)は、数7にて示される。即ち、出力v(t)は、発振器13の共振角周波数ωを基準として、交番電界の角周波数ωによりその位相を変化させる。但し、出力電圧の振幅をVとする。
数7
Figure 0004326007
ここで、数7に係る最右辺の各項は、ベッセル関数を用いて夫々数8及び数9に示すように展開される。
数8
Figure 0004326007
数9
Figure 0004326007
従って、数8及び数9を数7に代入することで、発振器13の出力V(t)は、数10にて示される。但し、数10では、FM信号のうち、搬送波及び第1側帯波のみを考慮するものとする。即ち、第2次以降の側帯波は、その振幅が小さいため、第1側帯波に対して無視できるものとして取り扱う。
数10
Figure 0004326007
更に、mf<<1のときには、数11及び数12にて示される関係が成り立つ。従って、数7にて示される発振器13の出力V(t)は、数13にて示される。尚、mf<<1となる状態とは、搬送波の振幅が大きく、且つ側帯波の数が少ない状態をいう。即ち、第1側帯波を考慮すれば、適切に変調された信号を再生することができる状態をいい、上述の数10を導く際の条件と同様の状態をいう。
数11
Figure 0004326007
数12
Figure 0004326007
数13
Figure 0004326007
数13に示される各項のうち、第1項はFM信号の搬送波を示しており、第2及び第3項は、その搬送波の上下に現れる第1側帯波を示している。
即ち、図5に示すように、周波数fの位置において、その振幅をVとする搬送波が現れる。そして、搬送波より周波数が+ω/2π又は−ω/2πだけ離れた位置に、その振幅を+Vmf/2又は−Vmf/2とする2つの第1側帯波が現れる。そして、係るFM信号が発振器13より復調器30に出力されることとなる。
図5に示す信号が入力される復調器30では、周波数変換器31により、FM信号の周波数がより低くなるように変換(即ち、ミキシングダウン)する。ここでは、例えば周波数が1/10になるように変換する。即ち、図6に示すように、より低い周波数帯(図6では、f/10)に現れるFM信号が出力される。例えば搬送波の周波数が1GHzであれば、周波数変換器31から出力されるFM信号の周波数は、100MHzとなっている。
従って、高い周波数を搬送波に割り当てたとしても、周波数変換器31の動作により低い周波数に変換した後に復調することができる。また、搬送波はFM変調されているため、周波数変換器31によりミキシングダウンされても、搬送波と側帯波との間隔(即ち、帯域の幅)に変動は生じないという特徴を有する。例えば、1GHzの搬送波に対して、10MHzの帯域を使用して変調を施している場合、変調帯域は搬送波に対して1%の割合を占めている。一方、ミキシングダウンにより搬送波の周波数が100MHzとなれば、変調帯域の間隔は変わらず10MHzであるため、変調帯域は搬送波に対して10%の割合を占めている。
このように、変調帯域の幅が変動しないため、FM信号をミキシングダウンしても、変調されたデータ情報を第1側帯波より適切に再生することが可能である。従って、ミキシングダウンによって、搬送波と側帯波の相対的な間隔を大きくすることができると共に、後述するLPF32による高周波数域側の側帯波のカットを比較的容易に行うことができる。これにより、高い周波数での搬送波を用いることができ、信号の再生速度、即ち強誘電体再生装置1の再生速度をより向上させることが可能という大きな利点を有する。
尚、周波数変換器31によるミキシングダウンは必ずしも行わなくともよい。例えば、搬送波の周波数が予め低ければ、周波数変換器31を介することなく、直接LPF32へFM信号を出力するように構成してもよい。また、発振器13より出力される発振周波数を監視する周波数監視部を備えていてもよい。周波数監視部により、所定の周波数以上の発振周波数が出力された場合に、周波数変換器31を介在させ、それ以外の場合は発振器13よりLPF32へバイパスするように構成してもよい。
加えて、変調帯域の幅が変動しないことは以下のような利点を有する。例えばプローブ11に生ずる微小振動等に起因する周波数変動等の影響を排除して、データ情報を再生することができる。即ち、プローブ11の振動により生ずる側帯波成分を排除し、あくまで交流信号発生器14の周波数に基づく側帯波を検出すれば、データ情報を再生することができる。
続いて、LPF32では、2つの第1側帯波のうち高周波数域側に現れる第1側帯波をカットし、高周波数域側の第1側帯波をカットしたFM信号を自乗検波器33へ出力する。即ち、図7(a)に示されるように、搬送波と低周波数域側の第1側帯波とがLPF32を通過した後のFM信号となり、係るFM信号が自乗検波器33へ出力される。
数13により示されるFM信号より高周波数域側の第1側帯波をカットした後の発振器13の出力を数式にて表すと、数14にて示される。
数14
Figure 0004326007
そして、高周波数域側の第1側帯波をカットした後、自乗検波器33の動作により、FM信号を自乗検波する。数14にて示されるFM信号の自乗検波後の出力V(t)は、数15にて示される。
数15
Figure 0004326007
従って、数15より、自乗検波した後のFM信号をωの信号(即ち、交流信号発生器14の参照信号)にて同期検波することで、分極情報たるmfを検出することが可能となる。
尚、本実施例の比較例として、LPF32を使用することなく、2つの第1側帯波が含まれるFM信号をそのまま自乗検波した場合について、以下に説明する。
数13にて示されるFM信号をそのまま自乗検波器33により自乗検波すると、数16に示すようになる。
数16
Figure 0004326007
ここで、自乗検波した後のFM信号より分極情報たるmfを検出するためには、ωの信号で同期検波すればよいが、数16の第2式における第3項において、大カッコ内のcos(ωt)の項は消去されてしまう。即ち、数16にて示される式の条件の下では、自乗検波後のFM信号よりmfの検出を行うことはできない。
しかるに、本実施例に係る強誘電体再生装置1の如く、2つの第1側帯波のうち高周波数域側の第1側帯波をLPF32によりカットすることで、数15に示すようにmfを検出することが可能となる。
尚、従来のFM変調器(概ね容易に入手可能なもの)は、その帯域幅がせいぜい200kHz程度の復調しか行うことができないという技術的問題を有していた。しかるに、本実施例に係る強誘電体再生装置によれば、自乗検波を行ってFM信号の復調を行うことで、係る帯域の制限を考慮することなく、例えば1GHzを超える搬送波に対して、数十MHzの変調が加えられたFM信号を再生することが可能となる。即ち、高周波な搬送波に対して広帯域の変調が加えられていても、係る信号を復調し、出力信号(即ち、記録データ)を再生することが可能となる。このように例えば数十MHzもの広帯域の変調が施されたFM信号を再生することができるため、強誘電体再生装置の再生速度を、例えば1Gbps程度にまで向上させることも可能となる。
更に、搬送波に対してミキシングダウンを施すことで、その後の復調動作をより容易なものとし、或いは更に高周波な、例えば数GHz程度の搬送波の復調をすることも可能である。また、浮遊容量等による影響で搬送波の周波数が変動しても、上述の如く搬送波を基準とする側帯波の位置に変わりはなく、外部の雑音等に強い安定した再生が可能となる。
尚、LPF32に代えて、HPF(High Pass Filter)を用いてもよい。即ち、2つの第1側帯波のうち低周波数域側の第1側帯波をカットしても、分極情報たるmfを検出することは可能である。係る動作について数式を用いて以下に説明する。
数13により示されるFM信号より高周波数域側の第1側帯波をカットした後の発振器13の出力を数式にて表すと、数17にて示される。
数17
Figure 0004326007
また、HPFにより低周波数域側の第1側帯波がカットされた後のFM信号は、図7(b)に示される。これを自乗検波器33において自乗検波すると、数18に示される。
数18
Figure 0004326007
従って、数18に示されるように、係るFM信号をωの信号で同期検波することで、分極情報たるmfを検出することが可能となる。
尚、LPF32はHPFと比較して製造しやすいこと、また低周波成分の方が高周波成分と比較して信号処理が容易であることから、LPFを用いる方が好ましい。但し、HPFを用いても、上述した数18に示すように、分極情報を検出することは可能である。
また、上述の実施例では、強誘電体材料17を記録層に用いているが、該誘電体材料17は、記録情報を残留自発分極として残すことが可能なその他の誘電体、あるいは記録情報を誘電率の差として残すことが可能なその他の材料であっても構わない。
また、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う信号検出方法及び装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
本発明は、例えば強誘電体記録媒体等の誘電体に記録された分極情報を再生する際の信号検出方法及び装置、並びに該信号検出方法を用いた情報再生装置及び方法の技術分野に利用可能である。

Claims (9)

  1. 搬送波と該搬送波に付随する少なくとも2つの側帯波とを有する入力信号より、前記少なくとも2つの側帯波に含まれるデータ情報を示す出力信号を検出する信号検出方法であって、
    前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット工程と、
    前記一方の側帯波がカットされた前記入力信号を自乗検波することで前記出力信号を出力する自乗検波工程と
    を備え
    前記データ情報は、記録媒体に記録されており、
    当該記録媒体に対して高周波電界を印加すると共に、前記高周波電界と比較して低周波な交番電界を印加することで前記入力信号を取得する信号取得工程を更に備える信号検出方法。
  2. 前記記録媒体は、誘電体を含んでなる記録層を備えることを特徴とする請求項1に記載の信号検出方法。
  3. 搬送波と該搬送波に付随する少なくとも2つの側帯波とを有する入力信号より、前記少なくとも2つの側帯波に含まれるデータ情報を示す出力信号を検出する信号検出装置であって、
    前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット手段と、
    前記一方の側帯波がカットされた前記入力信号を自乗検波することで前記出力信号を出力する自乗検波手段と
    を備え
    前記データ情報は、記録媒体に記録されており、
    当該記録媒体に対して高周波電界を印加すると共に、前記高周波電界と比較して低周波な交番電界を印加することで前記入力信号を取得する信号取得手段を更に備えることを特徴とする信号検出装置。
  4. 記録媒体に記録されたデータ情報を再生する情報再生装置であって、
    前記記録媒体から、搬送波と該搬送波に付随し且つ前記データ情報を含む少なくとも2つの側帯波とを有する再生信号を読み込む読込手段と、
    前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット手段と、
    前記一方の側帯波がカットされた前記再生信号を自乗検波する自乗検波手段と、
    前記自乗検波された再生信号より前記データ情報を抽出して再生する再生手段と
    を備えることを特徴とする情報再生装置。
  5. 前記読込手段は、前記記録媒体の記録層に対し高周波電界を印加すると共に、前記高周波電界と比較して低周波な交番電界を印加することで前記再生信号を読み込むことを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
  6. 前記再生信号の周波数を変換する前記周波数変換手段を更に備えており、
    前記カット手段は、該変換された再生信号より前記一方の側帯波をカットすることを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
  7. 前記記録媒体は、誘電体を含んでなる記録層を備えることを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
  8. 当該情報再生装置は、非線形誘電率顕微鏡法に基づいて前記データ情報を再生することを特徴とする請求項4に記載の情報再生装置。
  9. 記録媒体に記録されたデータ情報を再生する情報再生方法であって、
    前記記録媒体から、搬送波と該搬送波に付随し且つ前記データ情報を含む少なくとも2つの側帯波とを有する再生信号を読み込む読込工程と、
    前記少なくとも2つの側帯波より、前記搬送波と比較して高周波数域側及び低周波数域側のうち一方に位置する側帯波をカットするカット工程と、
    前記一方の側帯波がカットされた前記再生信号を自乗検波する自乗検波工程と、
    前記自乗検波された再生信号より前記データ情報を抽出して再生する再生工程と
    を備えることを特徴とする情報再生方法。
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